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なおも利下げに慎重なFRB、日銀は半歩前進
  • MRA外国為替レポート

2025年9月22日号

◆先週の市場総括


先週は日米で金融政策決定会合が開催された。FRBは0.25%の利下げを実施。ミラン理事が0.50%の利下げを主張したが想定内。公表されたメンバーの予測の中央値では年内利下げがあと0.50%となり、6月時点の予測から0.25%利下げ幅が拡大した。

ただ来年以降の利下げ幅は変わらず。利下げ継続姿勢は確認されたが市場の期待ほど緩和姿勢は確認されず。米長期金利はやや反発した。

日銀は政策金利を据え置き。2人の委員が0.25%利上げを主張して反対した。今会合ではETFの売却を決定。年間3,300億円のペースで売却する方針を示した。

ドル円相場は146円台に下落する場面もあったがFRBの利下げ慎重姿勢を受けて148円に反発。日銀の決定でも147円台に下落したが慎重な利上げ姿勢を受けて反発し148円近辺で引けた。

株価は内外で堅調。米国株は利下げ継続で景気が下支えられるとの期待から主要3指数が史上最高値を更新。日本株も値がさ半導体株を中心に堅調。日銀のETF売却方針で水を差されたものの週末の引けは45,000円の大台を維持した。

月曜日の東京市場は休場。為替市場は総じて小動き。アジア時間のドル円相場は147円60銭で始まり30銭~60銭でもみ合い横ばい。欧米市場にかけても狭いレンジでもみ合いが続き引けは147円40銭。

ユーロドル相場は1.1730で始まりもみ合い。欧州市場に入ると1.1770に強含み。1.1750~60でもみ合い引けた。

ユーロ円相場は173円20銭で始まり午後には172円90銭に下落。ただ欧州市場では173円40銭に持ち直し20銭~40銭でもみ合い引けは173円40銭近辺。

米国株は上昇。米中閣僚級会合の開催、利下げ期待、ハイテク株中心に上昇。ナスダックは前週末比+207ドル高の22,348ドル。NYダウは+49ドル高の45,883ドル。

米長期金利は低下。10年債は4.037%、2年債は3.538%。

発表された中国の8月の主要経済指標は、小売売上高が前年同月比+3.4%と前月+3.7%から鈍化。鉱工業生産は+5.7%から+5.2%へ、固定資産投資は+1.6%から+0.55へ、それぞれ鈍化した。

NY連銀製造業景気指数(9月)は▲8.70と前月11.90から大きく悪化した。

火曜日の連休明けの東京市場では日経平均が4営業日続伸。前日の米ハイテク株が堅調。値がさ半導体関連株が買われ指数を押し上げた。

一時45,000円の大台乗せ。海外短期筋の先物買いが押し上げた。一方、大台乗せによる目標達成感から利益確定売りが上値を抑えた。引けは前週末比+134円高の44,902円。

為替市場ではFOMCを前にドル売りが広がった。ドル円相場は147円40銭で始まり午後には軟調。夕刻には146円70銭。欧州市場では反発して147円20銭に戻したが、米国市場ではドル安が進み146円30銭割れに下落して引けは146円50銭近辺。

ユーロドル相場は1.1760で始まりもみ合いのあと午後から欧州市場にかけて1.1820へ上昇。米国市場でも一段高となり1.1880へ上昇して引けは1.1870近辺。

ユーロ円相場は173円40銭で始まり軟調。173円ちょうど近辺へ下落した。ただ欧州市場にかけて持ち直し173円60銭中心に上下動。米国市場では173円80銭近辺へ上昇して引けた。

米国株は小幅反落。FOMCが始まったことで様子見姿勢が強まるなか、最高値圏で推移していることから主力株に利益確定売り、持ち高調整の売りが入った。NYダウは前日比▲125ドル安の45,757ドル、ナスダックは▲14ドル安の22,333ドル。

米長期金利は低下。10年債は4.029%、2年債は3.509%。ドルインデックスは96.67へ下落した。

発表された米小売売上高(8月)は前月比+0.6%と前月+0.5%からやや加速。除く自動車でも+0.7%と消費の底固さを示した。鉱工業生産(8月)は+0.1%、設備稼働率は77.4%と前月77.5%からやや低下した。

水曜日の東京市場では日経平均が5営業日ぶりに反落。前日の米国株が軟調。利益確定売りに押されたことで東京市場でも同様の動き。再び45,000円の大台を回復する場面もあったが売りに押された。ドル安円高も重石。引けは▲111円安の44,790円。

ドル円相場はFOMCの結果を前に動意薄。146円50銭近辺でもみ合い小動き。欧州市場ではやや水準を切り下げて146円20銭~40銭で上下動してFOMC結果待ち。結果を受けて一時145円50銭近辺に急落したが、なお利下げに慎重と受け止められ急速に反発して引けは147円ちょうど近辺。

FOMCでは政策金利が0.25%引き下げられた。FF金利誘導水準は4.25~4.50%から4.00~4.25%へ。一部には0.50%の利下げ予想もあったが大幅利下げには踏み切らず。

新たに加わったミラン理事が0.50%の利下げを主張して反対した。

声明文では、経済活動の伸びは緩やか、雇用の下振れリスクが高まった、として前回の見通しから下方修正した。さらなる調整の程度と時期を検討する際リスクバランスを慎重に評価する、として慎重姿勢を維持。

メンバーの予測はばらつきがあったが、中央値では年内利下げがあと2回、0.50%となり、6月時点の予測から0.25%増加。来年以降の利下げ回数はそのまま金利水準を0.25%下方修正した。

一方、景気、物価、見通しは上方修正されており、金利見通しの下方修正と矛盾する動きとなった。

パウエル議長は会見で、労働市場は堅調とはもはやいえず、関税によるインフレ警戒感が残る旨、発言した。こうしたことから市場は引き続き利下げ姿勢が慎重と受け止めたとみられる。

ユーロドル相場は東京市場では1.1870近辺で小動きもみ合い横ばい。欧州市場では1.1840近辺で推移。FOMC結果発表直後には1.1920へ上昇したがその後は反落して1.1810近辺で引け。

ユーロ円相場は173円80銭近辺で始まり60銭~70銭で小動きもみ合い。欧州市場では173円10銭に下落したあと40銭近辺で推移。米国市場の引けは173円60銭と値動きは限定的だった。

米長期金利は小幅上昇。10年債は一時4%を割ったが4.080%。2年債は3.551%。

米国株はまちまち。ダウは一時+500ドル上昇したが利下げ慎重姿勢をみて上げ幅を縮めた。引けは+260ドル高の46,018ドル。ナスダックは▲72ドル安の22,261ドル。

木曜日の東京市場では日経平均が大幅高。反発して2営業日ぶりに最高値を更新した。終値で初の45,000円台。前日のNYダウが堅調。主力半導体関連株に買い。一時前日比+700円高。

米国の利下げが景気を下支えするとの期待が市場心理を強気に傾けた。一方、大台乗せで利益確定売りが入り内需関連が売られた。引けは+513円高の45,303円。

ドル円相場は底固く推移。147円ちょうどで始まり午後には50銭へ上昇。その後は147円ちょうど~50銭で上下した。米国市場では朝方の強めの雇用指標を受けて148円30銭近辺まで上昇。ただ上昇一服、引けにかけては147円ちょうど近辺でもみ合った。

ユーロドル相場は1.1810近辺で始まり午後には1.1780へユーロ安ドル高。その後1.1850へ反発したが米国市場朝方には1.1750へユーロ安ドル高。引けにかけては1.1790近辺で小動きもみ合い。

ユーロ円相場は堅調。173円60銭~80銭でもみ合いのあと欧州市場では174円40銭まで上昇した。その後は174円20銭~40銭でもみ合い横ばい、引けは174円40銭。

米国株は上昇。NYダウは5営業日ぶりに史上最高値を更新した。前日に下げたハイテク、半導体関連株中心に買い。利下げ期待があらためて株価を支えた。指標が経済の底固さを示したことも安心感。NYダウは前日比+124ドル高の46,142ドル、ナスダックは+209ドル高の22,470ドル。

米長期金利は上昇。10年債は4.108%、2年債は3.572%。

発表された米国の週次の失業保険申請件数は新規申請が231千件と前週263千件から減少。フィラデルフィア連銀製造業景気指数(9月)は前月▲0.3から大きく改善し23.2だった。

金曜日の東京市場では日経平均が乱高下し下落して引け。寄り付きは前日の米国株高、最高値更新を受けて上昇して始まり45,800円台へ上昇した。

しかし日銀金融政策決定会合でETFの売却が決定されると急反落し44,500円台へ。この日の高値から1,300円ほど急落。一時前日比▲800円超。その後は冷静さを取り戻し、下げ幅を縮めて引けは▲257円安の45,045円と大台は維持した。

日銀はこの日金融政策決定会合の2日目を開催。昼頃に結果を公表。政策金利は0.50%で据え置きとなったが2人の委員が0.25%の利上げを主張して反対した。

また市場にとって想定外だったのはETF売却方針の決定。年間3,300億円のペースで売却することを決定した。時価にして6,200億円程度で一日当たり30億円程度との計算。市場に影響を与えないようにきわめて緩慢に実施していく方針を示した。なおRFITも年間50億円のペースで売却を決定した。

この日発表された日本の消費者物価指数(8月)は前年同月比で総合指数が+2.7%、除く生鮮食品が+2.7%、除く生鮮食品エネルギーが+3.3%といずれも予想通りだった。

ドル円相場は147円90銭台で始まり148円ちょうど~10銭でもみ合い。日銀の決定を受けて147円20銭に下落したが、その後夕刻にかけて持ち直し、欧州市場では147円80銭~148円ちょうどでもみ合い。

さらに米国市場では148円30銭に上昇したが反落し引けにかけては147円80銭~148円ちょうど。

ユーロドル相場は1.1790で始まり夕刻にかけてじり安。欧州市場では1.1730へ下落。その後は1.17台半ばで上下し引けは1.1740。

ユーロ円相場は174円40銭で始まり日銀の決定で173円50銭へ下落。その後は緩やかに持ち直し174円20銭をつけたが欧米市場では軟調に推移して引けは173円60銭~80銭。

米国株は前日に続き史上最高値を更新。利下げ継続で景気が下支えされるとの見方が買いを促した。米中首脳電話協議で対話継続姿勢も好感された。

米長期金利は上昇。10年債は4.129%、2年債は3.576%。

◆今週の3つの注目ポイント


1. 米国の経済指標、PMI景況感指数

火曜日 PMI景況感指数(9月速報)製造業 予想51.5、前月53.0 サービス業 前月 54.5。 ユーロ圏の製造業 予想50.8、前月50.7 サービス業 予想50.5、前月50.5 リッチモンド連銀製造業指数(9月、前月▲7)

水曜日 新築住宅販売(8月、季節調整済み年率換算、予想650千戸、前月652千戸)

木曜日 GDP(4‐6月期確報) 耐久財受注(8月、前月比、予想▲0.5%、前月▲2.8%) 週次の失業保険申請件数 中古住宅販売(8月、季節調整済み年率換算、予想397万戸、前月401万戸)

金曜日 個人所得・消費支出(8月、前月比、予想+0.3%・+0.5%、前月+0.4%・+0.5%) 個人消費支出価格指数(PCEデフレーター、前年同月比、予想+2.7%、前月+2.6%、コア、予想+2.9%、前月+2.9%) ミシガン大学消費者態度指数(9月確報、速報55.4)

2. FRB当局者発言

FOMCが終わり、ブラックアウト(発言禁止期間)が終了。今週はFRB当局者の発言が相次ぐ。

FOMCでの政策金利予測は大きくばらついており、19名のうち7名が年内利下げなしとの見方を示した。今後の利下げについての見方、景気物価動向の認識、何が判断基準となるのか、などが注目される。

月曜日にNY連銀総裁、水曜日にサンフランシスコ連銀総裁、木曜日にシカゴ連銀総裁、サンフランシスコ連銀総裁、ボウマン副議長、が発言する。

3. 自民党総裁選挙候補者政策

自民党総裁選の候補者が出そろい、今週は各候補が政策を提示し、あるいは議論の機会も多くなるとみられる。また現時点での優劣も報道されよう。

各候補の示す政策、財政金融政策が円相場に与える影響が、先週よりも想定しやすくなる可能性がある。あわせて候補の優劣が円相場に影響する可能性がある。

ほか、週末には東京都区部のCPI(9月)が発表される。除く生鮮食品で前年同月比で予想は+2.8%と前月+2.5%から上昇が加速するとみられている。

◆今週のMRA's Eye


なおも利下げに慎重なFRB、日銀は半歩前進

先週のFOMCでは0.25%の利下げが実施された。声明文では、経済活動の伸びは緩やかになり雇用の下振れリスクが高まった、と記された。

パウエル議長は会見で、労働市場が堅調とはもはや言えない、と述べた。ただ、なおも関税によるインフレ警戒も残る、とも述べた。今回の利下げは、リスクを管理するため、と語った。

こうした見方を総合すれば、今回の利下げは、景気悪化に対処するための積極的な利下げ、というよりは、いわば調整利下げという位置づけになりそうだ。

景気はさほど悪くなっておらず、インフレ警戒も払しょくされないが、雇用の悪化リスクが高まっていることから、予防的に利下げを実施する、といったところか。

市場では今会合で一部に0.50%の大幅利下げの可能性も取り沙汰されていた。その背景には、労働市場の悪化が想定よりも速く、これまで利下げに慎重な姿勢を続けてきたことから、いわば慌てて利下げを実施する必要が生じている、との見方だろう。

雇用統計が後出しのように下方修正され悪い状況が明らかになったことで、大幅な利下げに追い込まれるとの思惑だ。しかし実際には、FRBメンバーの見方はさほど変わっておらず、慌てるそぶりもなかったということになる。

トランプ政権から送り込まれた新任のミラン理事が、0.50%の利下げを主張して反対した。これは想定通り。前回7月会合で急速な雇用悪化リスクを指摘し利下げを主張、据え置きに反対していたウォラー理事も、0.25%の利下げで納得している。

注目はメンバーによる景気物価予測だった。

政策金利予測は下方修正されたものの微調整にとどまった。年内の利下げ幅が今回の0.25%の利下げを含めて0.75%、あと0.50%となり、6月の年内0.50%利下げから拡大した。

ただ来年0.25%、再来年0.25%、の利下げ予測はそのまま。全体として0.25%だけ水準が下方修正されたにとどまった。

利下げペースが加速する姿にはならず。また成長率予測はやや上方修正、失業率予測はやや下方修正、インフレ率予測はやや上方修正、と、景気物価見通しは全体としてやや強めに修正された。

一見すると、そうした強気見通しと金利の下方修正予測は矛盾する。しかし、景気物価が底固いという前提で、利下げをやや強めにすることで、景気物価がやや持ち直すとみれば矛盾はない。

景気悪化に対処する急速な利下げではなく、緩やかな景気減速のもとでの調整利下げを続ける、との絵が透けてみえる。

今回の結果をそのまま受け止めれば、利下げは緩慢、景気は底固さを次第に増していく、となる。ドル金利先安観が継続するもののさほど強くはならず、金利面からドルに下押し圧力がかかるが緩慢、ということになる。

米長期金利は弱い雇用関連指標やFOMC前の利下げ期待から低下していたが会合後は持ち直し。米国株は利下げ継続で景気が下支えられるとの期待で史上最高値を更新している。いわば金融相場が再び力を得たかたちだ。

このシナリオが崩れるとすれば、さらに雇用情勢の悪化が鮮明となるケース。予防的利下げが本格的な利下げに転じる場合。

10月会合で確実に利下げが実施されるか、その際の景気物価判断に変化がないか。さらに12月会合で示されるメンバーの予測に変化がみられるか。今後も雇用統計のみならず、週次・月次の雇用関連指標全般が注目される。

一方、日銀は金融政策決定会合で政策金利を予想通り据え置いた。ただ2人の委員が利上げを主張して反対。今後の利上げ実施に向けた地ならしともとれる。

市場では自民党総裁選挙および総裁選候補者の政策スタンス、新政権発足や野党との連立など政治日程、などから10月会合での利上げは困難、さらには年内も難しいとの見方が強まっていた。

今回の反対票は12月利上げの可能性を引き上げ、さらには10月利上げの可能性も幾分か織り込ませる結果となった。市場では利上げに向けて一歩後退したとの見方が強まっていたが、それに反して半歩前進した、とはいえそうだ。

ETF売却決定は金融正常化が続いていることを示す。その意味では、政治的な思惑で利上げが遅延するとの市場の見方には楔を打った。ただ植田総裁の物言いはなお慎重だ。関税による悪影響や米国景気の悪化リスクが利上げに躊躇する要因となりうるとのニュアンスが残る。

一連の日米金融政策決定会合の結果からは、想定より緩やかなドル安円高が示唆される。ドル先安観は想定より緩慢に。

一方、にわかに高まった円先安懸念は後退。ただ円先高観が強まるまでには至らず。ドル円相場には緩やかなドル安円高圧力がかかりつつも、当面はその勢いは緩慢。保ち合い気味の相場が続く可能性が高まった。

当面のリスクは月末月初の米国の雇用関連指標。それとほぼ同時の自民党総裁選挙。ドル円相場には下振れ・上振れ双方のリスクが高まる。


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