FRBのタカ派シフト・日銀のハト派シフト、市場の織り込みとリスクバイアス
- MRA外国為替レポート
2024年12月23日号
◆先週の市場総括
先週は日米の金融政策決定会合を受けて、為替市場で、ドル、円、双方が急変動。FOMCでは予想通り0.25%の利下げが実施されたものの、据え置きを主張して反対したメンバーが1名。またメンバーの景気物価政策金利予測が上方修正された。
2025年末、2026年末、の政策金利水準予測値はいずれも9月会合の予測から0.50%ポイント上方修正された。来年の利下げ回数は4回から2回へ。
全体としてタカ派寄りのトーンに米長期金利が上昇し10年債利回りは4.5%台へ。ドルが大幅に上昇。ドルインデックスは前週末の106ポイント台前半から108ポイント台半ばへ。
一方日銀は利上げを見送り。植田総裁が春闘の賃上げ動向を見極めたいと述べたことで、次回1月会合でも利上げが見送りとなるとの見方が強まった。FRBとは逆に、日銀は想定よりハト派スタンスと受け止められた。
円は急落、全面安。ドル円相場は158円目前まで上昇。ユーロ円相場は一時163円台後半へ上昇した。ただ週末にかけてはドル高・円安とも一服。ドル円相場は156円ちょうど近辺へ。ユーロ円相場は163円ちょうど近辺。
米国株は軟調。NYダウは10営業日続落となり、とくにFOMCの結果を受けて1日で1,000ドルを超える急落。ハイテク株も下落した。週末には反発したが上値が重い展開となった。日経平均は米国株安を受けた一方円安が支えとなったが小幅安も交えて6営業日続落。週末の引けは38,700円近辺。
月曜日の東京市場では日経平均が小幅続落。米半導体株高で関連株に買い。発表された機械受注(10月)が強めの数字だったことで設備投資が堅調との見方から機械関連の一角が買われた。
一方消費関連に売り。日米の金融政策イベント前に様子見姿勢も強かった。引けは前週末比▲12円安の39,457円。
日本の機械受注(10月)は前月比+2.1%、前年同月比+5.6%で予想より大幅に強い数字だった。中国の11月の主要経済指標は、小売売上高が前年同月比+3.0%と前月+4.8%から鈍化して予想+4.6%を大きく下回った。
鉱工業生産は+5.3%からやや加速して+5.4%。都市部固定資産投資は+3.4%からやや減速して+3.3%。総じて弱い数字だった。
ドル円相場は153円70銭で始まり朝方30銭台に下落したがすぐに持ち直し154円ちょうどに上昇。夕刻にかけて153円50銭近辺に軟化したが欧州市場から米国市場昼前にかけて154円50銭近辺まで上昇した。ただ上昇はそこまでで引けにかけては154円ちょうど~20銭でもみ合い引けは154円20銭。
ユーロ円相場は161円10銭台で始まり午前中に162円ちょうど近辺に上昇。夕刻にかけては161円20銭へジリ安。その後は20銭~70銭で上下し米国市場終盤は161円ちょうど近辺で推移し引けた。
ユーロドル相場は東京市場では1.0490で始まり1.0520近辺でもみ合い。夕刻以降は上値重く、欧州市場、米国市場午前中は1.0470~1.05ちょうど近辺で上下。米国市場終盤はやや持ち直し1.05ちょうど~1.0510でもみ合い引けた。
米国株はまちまち。ディフェンシブ株が売られる一方ハイテク株は引き続き堅調。NYダウは前週末比▲110ドル安の43,717ドル、ナスダックは+247ドル高の20,173ドル。
発表されたPMI景況感指数(12月速報)はユーロ圏製造業が45.2で前月45.2と変わらず、サービス業が51.4と前月49.5から改善。ドイツは製造業が43.0から42.5へ悪化、サービス業は49.3から51.0へ改善。米国は製造業が49.7から48.3へ悪化、サービス業が56.1から58.5へ予想を上回る改善。
総じて製造業の不振、サービス業の堅調。欧米景況感格差の拡大を示した。米長期金利は上昇。10年債は4.402%、2年債は4.253%。
火曜日の東京市場では日経平均が小幅ながら3営業日続落。朝方は米ハイテク株の堅調から上昇したものの、値がさ半導体関連株の一角、アドバンテスト株が個別材料で大幅安となり市場心理が悪化。売りが全体に広がった。引けは前日比▲92円安の39,364円。
ドル円相場は154円20銭で始まり上値の重い展開。朝方153円80銭に下落したあと午後には154円20銭に戻したが欧州市場にかけて下落して153円80銭近辺でもみ合い。
米国市場朝方にかけて154円ちょうどに戻したが米国の小売売上高が発表された時間帯から下落し153円20銭割れ。引けは153円40銭。
ユーロ円相場は欧米市場にかけて1円ほど円高が進んだ。162円ちょうどで始まり朝方162円40銭に上昇したが反落して161円90銭~162円ちょうど近辺でもみ合い。その後、欧州市場にかけて161円10銭へ下落した。
米国市場では161円60銭に反発したが引けにかけて大幅反落。160円80銭へ下落し引けは161円ちょうど近辺。
ユーロドル相場は小動き。東京市場では1.0510で始まり30に上昇したあと夕刻にかけて1.0480へじり安。米国市場では1.05ちょうど近辺でもみ合い引けは1.0490。
米国株は下落。NYダウは9営業日続落。46年10か月ぶり。FOMCの結果を前に様子見姿勢が強かった。NYダウは▲267ドル安の43,449ドル、ナスダックは▲64ドル安の20,109ドル。
発表された米国の小売売上高(11月)は前月比+0.7%と前月+0.4%から伸びが加速。ただ除く自動車関連では+0.2%と前月+0.1%からわずかな加速にとどまり予想+0.4%より弱かった。
鉱工業生産(同)は▲0.1%、設備稼働率は前月77.1%から76.8%へ低下。米長期金利は小幅低下。10年債は4.396%、2年債は4.246%。
ドイツIFO企業景況感指数(12月)は前月85.7から84.7へ悪化する一方、ZEW景況感指数は期待指数が7.4から15.7へ予想を上回る上昇とまちまち。
水曜日の東京市場では日経平均が4営業日続落。前日の米国株が全般的に調整し重石。日米の金融政策決定会合の結果発表を前に様子見姿勢が強かった。引けは▲282円安の39,081円。ドル円相場は153円40銭で始まり底固く推移。60銭~80銭でもみ合ったが午後には反落して153円40銭中心に上下。
欧州市場に入ると円安が進行。米国市場では154円10銭へ上昇した。その後は一時153円10銭に下落したがFOMCの結果、パウエル議長の会見を受けて154円80銭まで上昇して高値引け。
FOMCでは市場予想通り0.25%の利下げが実施されFF金利誘導水準は4.50-4.75%から4.25-4.50%へ引き下げられた。ただ全会一致が通例のところ1人が据え置きを主張して反対票を投じた。
公表されたメンバーの予測では、成長率見通し、インフレ見通し、いずれも9月会合の予測から上方修正された。注目の政策金利予測は、25年末、26年末、いずれも0.50%ずつ上方修正された。来年の利下げは4回から2回へ。
パウエル議長は会見で、今回の利下げがギリギリの判断だった、とし、一部のメンバーがトランプ政策の影響やインフレ再燃リスクを織り込み始めている、と述べた。ただ織り込むのは時期尚早としている。
ユーロドル相場は東京市場では1.0490で始まりFOMC前まで1.05近辺で小動きもみ合い横ばい。FOMCの結果を受けて1.0350近辺までユーロ安ドル高が進んだ。
ドルインデックスは前日の107ポイント近辺から108.24へ上昇した。ユーロ円相場は161円ちょうどで始まり欧米市場にかけて161円ちょうど~161円50銭で上下を繰り返した。その後FOMCを受けたドル高ユーロ安の影響、ユーロ安の勢いに押されて159円80銭へ下落。引けは160円20銭台。
米長期金利は上昇。10年債は4.512%、2年債は4.358%。米国株は全面安となり急落。
NYダウは10営業日続落。利下げのペースダウン、タカ派的なスタンス、長期金利の上昇により割高感が意識された。NYダウは▲1,123ドル安の42,326ドル、ナスダックは▲716ドル安の19,392ドル。VIX指数は27.62へ急上昇した。
木曜日の東京市場では日経平均が続落。前日の米国株主要3指数が大幅安となり売り先行。一時▲700円超下落。一方、円安ドル高進行が支えとなり下げ幅を縮小。引け後の植田日銀総裁の会見を前に次第に様子見となった。引けは前日比▲268円安の38,813円。
ドル円相場は154円80銭で始まり50銭~80銭で上下して日銀金融政策決定会合の結果待ち。昼に利上げ見送り、政策金利現状維持との結果が公表され円安に。155円20銭~40銭での推移となった。
その後15時半からの植田総裁の会見を受けて一段と円安が加速した。総裁は春闘の賃上げ動向を見極めたいと述べ、想定より利上げに慎重なハト派スタンスと受け止められた。また次回1月の会合でも利上げが見送られるとの見方が強まった。
ドル円相場は157円ちょうどへ上昇して欧州市場では156円70銭~157円ちょうどで上下。米国市場に入るとさらに157円80銭へ上昇。引けはやや下落して157円40銭近辺。
ユーロ円相場も同様の値動き。160円20銭台で始まり日銀の金利据え置きを受けて円安となり161円ちょうど~40銭での上下に。さらに総裁会見で163円60銭台まで急騰した。
米国市場朝方は163円ちょうど~30銭で推移したが80銭まで上昇し引けは163円10銭近辺。
ユーロドル相場は総じて小動き。東京市場では1.0350で始まり1.0380近辺で小動き。欧州市場では一時1.0430へ小幅高も1.0350台へ押し戻され引けは1.0360近辺。
米国株はまちまち。前日の大幅安さらにこのところの下落を受けて短期的過熱感が解消。自律反発狙いの買いにNYダウは一時+460ドル高。ただ引けにかけて伸び悩み+15ドル高の42,342ドルで引け。ナスダックはハイテク株が長期金利上昇に押されて上値重く、引けは▲19ドル安の19,372ドル。
VIX指数は低下したが24ポイント台で高め。米長期金利は小幅続伸。10年債は4.566%、2年債は4.319%。
金曜日の東京市場では日経平均が6営業日続落。米ハイテク株がアジア時間も先物で下落。投資家心理が悪化した。日銀の利上げ先送りで銀行株が下落。円安は支えとなったが押し上げる力は弱かった。引けは前日比▲111円安の38,701円。
ドル円相場は157円40銭で始まり朝方90銭台に上昇。70銭~90銭で推移。その後156円90銭に反落、157円30銭に反発、と高下したあとは軟調。
発表された日本の消費者物価指数(11月)は総合指数前年同月比が前月+2.3%から+2.9%へ予想とおり加速。除く生鮮食品が+2.3%から+2.7%と予想よりやや強め。除く生鮮食品・エネルギーでは+2.3%から+2.4%へ加速した。
欧州市場では156円60銭~80銭で推移した。さらに156円30銭に下落、80銭に反発、ののち156円ちょうど近辺に下落してもみ合い、引けは156円40銭近辺。
指標でインフレが想定より弱く米長期金利が低下、ドルが下落した。ユーロドル相場は東京市場では1.0360~70でもみ合い小動き横ばい。欧州市場にかけて1.0420に上昇しその後米国市場を通じて1.04台前半で上下した。
ドルインデックスは前日の108.40近辺から107.80近辺へ下落。ユーロ円相場は東京市場では163円10銭で始まり早々に60銭台へ上昇。その後反落して欧米市場を通じて162円台後半で上下した。米国市場引けは強含み163円10銭近辺で引け。
米国で発表された個人所得・消費支出(11月)は前月比+0.3%・+0.4%と予想よりともに0.1%ポイントやや弱め。
消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前年同月比+2.4%と前月+2.3%から上昇したものの予想+2.5%を下回った。コア指数は前月と同水準の+2.8%で+2.9%への加速予想を下回った。
シカゴ連銀総裁が、このところの強い指標は一時的の可能性がある、と述べたこともあり、利下げペースダウンへの過度な懸念が後退。米10年債利回りは4.53%へ低下、一時4.48%をつけた。2年債も一時4.25%まで低下したあと4.319%。米国株は反発。
NYダウは前日比+498ドル高の42,840ドル、ナスダックは+199ドル高の19,572ドル。VIX指数はさらに低下して20割れ、18.36ポイント。ミシガン大学消費者態度指数(12月確報)は速報と変わらず74.0。期待インフレ率は1年が速報2.9%から2.8%へ、5年が3.1%から3.0%へ、それぞれ下方修正された。
◆今週の3つの注目ポイント
25日はクリスマスのため欧米市場は休場
年内取引最終日は、日本は30日月曜日、海外は31日火曜日。1月1日水曜日は内外市場がいずれも休場。
海外は2日木曜日から取引開始。日本は6日月曜日が年初取引初日。
1.米国の経済指標
引き続き米国景気への楽観が維持されるか。
月曜日 消費者信頼感指数(12月、予想113.0、前月111.7)
火曜日 耐久財受注(11月、前月比、予想▲0.3%、前月+0.2%)
新築住宅販売(11月、季節調整済み年率換算、予想663千戸、前月610千戸)リッチモンド連銀製造業指数(12月、前月▲14)
木曜日 週次の失業保険申請件数
30日 月曜日 シカゴ購買部協会景気指数(12月、予想42.5、前月40.2)
1月2日 火曜日 PMI製造業景気指数(12月改定値、ユーロ圏、速報45.2、ドイツ、同42.5、米国、同48.3) 週次の失業保険申請件数
3日 金曜日 ISM製造業景気指数(12月、予想48.8、前月48.4)
2.日本の経済指標、日銀政策決定会合議事要旨
24日火曜日に10月末に開催された日銀金融政策決定会合の議事要旨が公表される。ハト派に傾く論拠がみられるか。
26日木曜日には企業向けサービス価格指数(11月)、27日金曜日には11月の失業率(予想、限月同水準2.5%)、有効求人倍率(同、1.25倍)、鉱工業生産(前年同月比、予想▲3.6%、前月+1.4%)、都区部消費者物価指数(12月、除く生鮮食品、前年同月比、予想+2.5%、前月+2.2%)、が発表される。
3.クリスマス休暇、年末、年初、の取引動向
年末年始には休場が続き、薄商いや内外営業日のずれなどから波乱相場となりやすい。25日はクリスマスで休場。24日火曜日は営業日だがクリスマスイブ。
週初23日月曜日が実質的にクリスマス休暇前の最終日。年末にかけて薄商いとなり相場が変動しやすいので注意を要する。
日本は長い年末年始休暇に入る。年初営業日は6日月曜日。海外はクリスマス休暇明けから徐々に通常業務に戻り、年初は取引が活発化する。
年初はその年のシナリオに沿って動く場合が多く、各市場の動向に留意。とくに、すでにドル高円安に振れたドル円相場がいずれに動くか。
◆今週のMRA's Eye
FRBのタカ派シフト・日銀のハト派シフト、市場の織り込みとリスクバイアス
先週の日米の金融政策決定会合の結果はいずれも事前の市場予想通りだった。ただ、声明文やメンバーのスタンス、予測、議長・総裁の会見を通じたメッセージから、FRBのタカ派シフト、日銀のハト派シフト、をあらためて確認した。
FOMCでは0.25%の利下げが実施されたがこれは予想通り。ただ全員一致が原則のところ1名は据え置きを主張した。
注目されたのはメンバーの景気物価政策金利予測。景気物価予測では、2024年の数値が9月会合時点の予測からいずれも上方シフト。
成長率は2.0%から2.5%へ大幅上方修正。失業率は4.4%から4.2%へ下方修正。インフレ率(コアPCE、消費支出価格指数)は2.6%から2.8%へ。2025年についても幅は24年ほどではないものの上方修正した。
成長率は2.0%から2.1%へ、失業率は4.4%から4.3%へ、インフレ率は2.2%から2.5%へ。
すなわち、景気物価見通しを低く見積もりすぎる過ちを確認するかたちとなった。この回の予測で、足元の景気の底固さ、極めて緩慢な景気減速、ソフトランディングシナリオ、加えてインフレの根強さを明示した。
もっとも注目される政策金利予測は、2024年はすでに4.25-4.50%で着地したが、これは9月時点の予測中央値4.40%と一致。予測通りに利下げを実施したことになる。
問題は今後。2025年末の予測値は9月時点の3.4%から3.9%へ引き上げられた。同様に2026年末は2.9%から3.4%へ。2025年の利下げ回数が0.25%×4回から0.25%×2回に半減。
来年から利下げをペースダウンさせる具体的な数字を明らかにしたこと、その根拠となる景気物価見通しを提示したこと、これまでの見方が過小評価だったことを認めたことの意義が大きい。
問題はトランプ政権の政策を織り込んでいるのか否か。パウエル議長は会見で、一部のメンバーは影響を織り込み始めている、と述べた。
一方、判断は時期尚早としている。予測値にはある程度リスクは反映されているものの、まだわずかとみたほうが良さそうだ。
となると、政権が発足し具体的な政策が実行に移された段階で、さらにその効果が顕在化する段階で、政策決定に具体的な影響が生じるということになる。景気刺激的な政策となる可能性が高いとなれば、リスクバイアスは利下げ休止サイドとなる。
今後2年間の利下げペースが年2回で一定のペースとすれば、3月、9月、と置くことになる。3月の利下げは経済指標次第ながら実施される可能性が高いとみられるが、9月の利下げは状況次第で実施されるか不透明ということになる。
ここからは景気物価動向次第。目先はクリスマス商戦がどうか。雇用情勢はじわじわと緩和しており消費者の警戒感が高まっているが、インフレ率の下げ止まりとともに、消費マインドを抑制することはないか。
またここまでFRBは利下げを実施してきたが、今後の利下げ織り込みの後退で長期金利が上昇。加えてドル高が進んだことで景気全般の抑制要因となる可能性はないか。
また利下げペースダウンや長期金利上昇で株価上昇が一服し調整している。この間の株価上昇が消費を押し上げていた可能性もあり、株価調整が悪影響をもたらす可能性はないか。
シカゴ連銀総裁は、このところの強い経済指標は一時的な可能性があるとしている。FRBはタカ派シフト、政策金利のリスクバイアスは上方だ。ただ景気物価動向のリスクバイアスはトランプ政策による上方リスク、市場の織り込みによる副反応としての下方リスク、双方がありそうだ。
日銀は先週の金融政策決定会合で利上げを見送った。事前の複数の報道で利上げ見送りとされていたため結果は予想通り。ただ植田総裁の会見で想定よりハト派なスタンスが確認されると急速に円安が進んだ。
総裁は、利上げを決定するにはもう少し情報が必要、春闘の賃上げ動向を見極めたい、と述べた。このため、12月の利上げが実施されなくても1月会合では利上げ、とみていた市場の見方は大きく修正された。
春闘の結果を待つとすれば、少なくとも利上げは3月ないし4月となる可能性がある。事前の交渉状況で判断するなら1月会合での利上げもありうるが疑念が生じている。
こうした慎重な姿勢から2025年末の政策金利水準予測も下方修正されている。来年の利上げが2回でも年末は0.75%。1%に到達するとの見方は後退した。
結果、来年はFRBが0.50%利下げ、日銀が0.50%利上げ、政策金利差は1.00%縮小する可能性が高いが、金利差そのものは2.5%程度残ることになる。
金利差縮小を前提とすれば基調はドル安円高と想定されるが、縮小ペースが極めて緩慢なこと、金利差が相応に残ることから、150円割れにも時間を要し、140円台半ば程度までの下落にとどまる可能性が高まった。
米国を除く先進各国が利下げ姿勢を強めてきたこと、スイスと日本の政策金利が逆転する可能性が高いこと、など内外金融政策動向は逆方向が続く。
日銀の利上げ慎重姿勢にもかかわらず、円安修正の基調は変わらないとみる。問題は米国経済のひとり勝ち、ドルの独歩高が続きそうな点だ。
さらにトランプ政策による不透明感、リスクバイアスは、FRBの利下げ休止のリスクから今のところドル高サイド。ドル全面高が強まるようなら150円台での定着の可能性が高まる。
主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
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