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さらなる米利下げ遅延リスク
  • MRA外国為替レポート

2024年4月22日号

◆先週の市場総括


先週は日経平均が大幅安。前週末に39,500円近辺で引けていたが先週末は一時37,000円の大台を割るなど2,500円近くの急落となった。米国で経済指標やFRB当局者のタカ派発言が相次いで高金利高止まり長期化観測が強まって米長期金利が上昇。ハイテク株の重石に。

そうしたなか半導体関連企業の決算、業績市場見通しが需要懸念を強め軟調。そうしたなか週末にイスラエルがイランに報復攻撃と報じられると一気にリスク回避が強まった。日経平均はかろうじて37,000円を維持して引け。

為替市場ではドル金利高止まり観測、米長期金利上昇がドルを支え。財務相・中央銀行総裁会議が開催され日本の通貨当局からは円安牽制発言が続き介入警戒感が円安に歯止めをかけ概ね154円台半ばを中心とする推移となった。

中東情勢の悪化で一時はリスク回避の円買い戻しで153円台半ばへ円高に振れたが一時的だった。ユーロ円相場も163円近辺から164円台へ上昇して引けた。

月曜日の東京市場では日経平均が下落。前週末の米国株安、中東情勢の緊迫化を受けてリスク回避が強まり、海外短期筋が先物中心に売り。下げ幅は一時▲700円を超えた。ただ売り一巡後は押し目買いに支えられた。

イランとイスラエルの対応が抑制的でエスカレート懸念が後退。引けは前週末比▲290円の39,232円。

為替市場では早朝こそリスク回避を主因に円買い戻しが先行し円高で始まったが、その後は中東情勢への過度な懸念が緩和して円安が進んだ。ドル円相場は153円10銭で始まり午後には90銭台へ。欧州市場から米国市場にかけてさらに154円40銭台まで上昇した。

米国の強い消費関連指標を受けて米長期金利が上昇しドルを押し上げた。その後一時153円90銭に下落する場面もあったがすぐに戻して154円20銭近辺でもみ合い引け。

ユーロ円相場は162円80銭で始まり164円10銭まで上昇し164円ちょうどを挟んでもみ合い。その後はユーロ安ドル高に押されて163円70銭に下落し、引けにかけては80銭~90銭でもみ合い。

ユーロドル相場は1.0630台で始まりやや底固く50~60でもみ合い。米国市場では上値重く1.06台前半で推移し引けは1.0620台。

発表された米国の経済指標は、NY連銀製造業景気指数(3月)が前月▲20.90から▲14.30に改善したが予想▲7.0は下回った。

小売売上高(3月)は前月比+0.7%と予想+0.4%を上回り、前月も+0.6%から+0.9%に上方修正され堅調な消費動向を示した。除く自動車関連支出でも前月+0.3%から+1.1%に大きく加速。

これを受けて高金利長期化懸念が強まり長期金利が上昇。10年債は4.607%へ、2年債は4.922%へ。米国株は中東懸念が燻るなか長期金利上昇を嫌気して全面安。NYダウは前週末比▲250ドル安の37,735ドル、ナスダックは▲290ドル安の15,885ドルで引け。

火曜日の東京市場では日経平均が大幅続落。米長期金利の上昇、ドル高円安の進行による国内でのインフレ懸念、円長期金利の上昇、などが嫌気された。

半導体関連、ハイテク株中心に売りが広がった。一時▲900円安。円安は輸出関連株の支えにならなかった。引けは▲761円安の38,471円。

ドル円相場は154円20銭で始まりじり高。東証引け後には円が全面安。欧州市場から米国市場にかけて154円80銭に上昇した。

ユーロ円相場は163円80銭で始まりもみ合い横ばい。午後3時から円安となりユーロ円相場は164円60銭に上昇した。ユーロドル相場は1.0620台で始まり上値重く推移したあと、米国市場朝方にかけて1.0650へ強含み。

米国市場朝方に発表された住宅着工件数(3月)は季節調整済み年率換算で1,321千戸と前月1,549千戸から大幅減少。

これを受けて一時ドル安円高に振れて154円割れ。ただすぐに反発して60銭~70銭でもみ合い引けた。

ユーロ円相場も163円80銭へ下落したが反発して164円台前半でもみ合い引けは164円20銭。ユーロドル相場は1.0620へユーロ安ドル高に振れて引けた。

FRBのジェファーソン副議長はインフレ長期化なら高金利の維持も長期化すると述べた。さらにパウエル議長は、利下げ時期は従来の想定より遅れる、インフレ低下を確信するには時間を要する、引き締め的な金融政策の効果がでるまで現状維持、とした。

米長期金利はさらに上昇。10年債は4.669%へ、2年債は4.985%へ。

米国株はまちまち。前日までの大幅下落のあとで主力株の一角に押し目買いが入った。しかしFRB副議長、パウエル議長の発言を受けた長期金利上昇が重石。NYダウは+63ドル高の37,798ドル、ナスダックは▲19ドル安の15,865ドルで引けた。

水曜日の東京市場では日経平均が大幅安。朝方は押し目買いで自律反発も午後に急落した。オランダ半導体製造装置大手ASML社の決算で受注予測が予想を下回ったことで半導体需要落ち込み懸念が広がった。

翌日に台湾半導体製造大手TSMCの決算を控えていることで警戒感が高まり、値がさ半導体関連が下落し、下げが幅広い銘柄に広がった。引けは▲509円安の37,961円。38,000円の大台を割り込んだのは2月14日以来。

ドル円相場はもみ合い横ばい。介入警戒感もあり154円台後半では上値が重かった。東京市場では154円60銭~70銭で横ばい、夕刻には40銭台に下落。欧州市場から米国市場にかけては60銭~70銭に持ち直したが、米国時間午後には下落して20銭~30銭でもみ合い引けた。

ユーロ円相場は164円20銭で始まり50銭に上昇したが夕刻は164円ちょうどに反落。欧州市場では持ち直し40銭~60銭で上下し底固く米国市場では60銭~80銭で推移し引けは164円70銭。

ユーロドル相場は1.0620で始まり40に上昇。欧州市場でも1.0640近辺でもみ合い、米国市場ではやや上昇して1.0670で引けた。米長期金利はやや低下。

発表された米国の地区連銀経済報告(ベージュブック)では、前回報告以降、米国経済の拡大はわずかだった、とした。個人消費がほぼ伸びず、企業の価格転嫁は次第に困難になっている、と報告された。

米国株は個別企業の決算を受け上下。ASML社の受注見通し悪化で半導体関連、ハイテク株中心に下落。ナスダックは▲181ドル安の15,683ドル。NYダウは▲45ドル安の37,753ドルで引けた。

この日、G7財務相中央銀行総裁会議が開催され、鈴木財務相は最近の円安について日本の立場を説明した、と述べた。

木曜日の東京市場では日経平均が4営業日ぶりに反発。朝方は米半導体関連株の下落を受け前日比▲300円超下げた。

しかし午後に台湾の半導体製造大手TSMC社の決算が良好な内容となり反発した。また3月の訪日外国人数が始めて3百万人を超えたと発表されるとインバウンド関連にも買いが入った。一時前日比+250円超まで反発。引けは+117円高の38,079円。

ドル円相場は154円30銭で始まり154円台前半で上下動。欧州市場から米国市場にかけてドルが堅調となり154円半ばで推移し引けは154円60銭近辺。強い米経済指標、FRB当局者のタカ派発言がドルを支えた一方、引き続き介入警戒感が上値を抑制した。

米国で発表されたフィラデルフィア連銀製造業景気指数(4月)は前月3.2から15.5へ大幅改善。2年振りの高水準となった。

週次の失業保険新規申請件数は212千人と前週とほぼ変わらず。景気先行指数(3月)は前月比▲0.3%と弱め。中古住宅販売(3月)は季節調整済み年率換算で419万戸と前月438万戸から減少したものの予想409万戸を上回った。

NY連銀ウィリアムズ総裁は、リスクシナリオだがデータ次第で利上げもありうる、と発言。高金利がインフレを鈍化させる過程にあり利下げは急ぐ必要がない、と述べた。

アトランタ連銀総裁も、インフレが目標に向かって進展を継続できなくなれば利上げにオープンにならざるを得ない、と語った。米長期金利は上昇。10年債は4.636%、2年債は4.99%と5%目前。

ユーロドル相場は東京市場では1.0670近辺でもみ合い横ばい。欧州市場に入ると一時1.0690に上昇したがユーロ安ドル高に転じて引けは1.0640台。

ユーロ円相場は164円70銭で始まり一時40銭に下落したが夕刻から欧州市場にかけては164円80銭中心にもみ合い横ばい。米国市場に入るとユーロ安ドル高に押されて60銭近辺に下落して引け。

米国株は高金利継続が意識されハイテク株が軟調。TSMC社の決算は良好だったが半導体市場全体の需要見通しが下方修正されたこともハイテク関連株の重石となった。一方、ディフェンシブ銘柄の一角には買い。ナスダックは2ヵ月ぶりの安値、前日比▲81ドル安の15,601ドル。NYダウは+22ドル高の37,775ドル。

金曜日の東京市場では日経平均が急落。米半導体株安を受けて売りが先行。さらに午前中にイスラエルがイランを攻撃と報じられるとリスク回避が加速。一時前日比▲1,300円超の急落となり大台の37,000円を割り込んだ。引けはやや戻して▲1,011円安の37,068円。

為替市場ではリスクポジション解消の円買い戻しで一時円高に振れた。ドル円相場は154円60銭から153円60銭へ。ただすぐに反発して154円30銭~40銭でもみ合い。欧州市場ではさらに50銭~60銭にやや上昇してもみ合い。米国市場でも堅調に推移し引けは154円60銭台。

欧米が紛争拡大の回避を訴え双方に自制を求めたことで、過度な警戒感が緩和した。ユーロ円相場も東京市場では164円60銭で始まり163円ちょうど近辺に急落。ただすぐに戻して欧州市場にかけて右肩上がり。165円ちょうど近辺まで上昇した。その後は164円台後半で上下し引けは164円80銭。

ユーロドル相場は1.0640台で始まり上下しつつ欧州市場では1.06台半ば近辺でもみ合い。米国市場に入ると1.0670に上昇してもみ合ったが上昇一服。引けは1.0650台。

米長期金利は概ね前日から横ばい水準。利下げ先送り観測は根強く長期金利は高止まり。10年債は4.623%、2年債は4.988%。

シカゴ連銀総裁は、インフレ鈍化の基調が停滞したため金利据え置き様子見を支持、利下げにさらなる時間が必要、と述べた。

米国株はまちまち。半導体需要見通しの悪化に加え、金利高止まり、なお残るリスク回避心理からハイテク関連株が大きく下げた。ナスダックは▲319ドル安の15,282ドル。一方、ディフェンシブ関連株は買われた。NYダウは+211ドル高の37,986ドル。

◆今週の3つの注目ポイント


1.日銀金融政策決定会合、植田総裁会見

木曜日・金曜日の2日間、日銀金融政策決定会合が開催され、結果公表後に植田総裁が定例会見を行う。今会合では政策変更は予想されていないが、追加利上げについてどれほど前向きな議論がなされるか注目される。

植田総裁は先週、ワシントンで開催されたG7財務相・中銀総裁会議のあとで利上げに前向きな発言を行った。なおも進む円安やインフレ圧力を踏まえ、他のメンバーも含めた全体のニュアンスが注目される。

植田総裁はあらためて何を語るか。また今会合では展望レポートも公表される。景気動向、さらにインフレ率が2%目標近辺に定着するとの見方が一段と強まったか。

2.米国の経済指標

米国景気の底固さ、インフレ低下の停滞から、利下げ遅延との見方が一段と強まっている。そうした見方をさらに強めるか。なかでも今週はFRBがインフレ指標として最も重視するPCEデフレーターが発表され注目される。

火曜日 PMI景況感指数(4月速報、製造業、予想52.0、前月51.9、サービス業、予想52.0、前月51.7) 新築住宅販売(3月、季節調整済み年率換算、予想670千戸、前月662千戸) リッチモンド連銀製造業指数(4月、前月▲11)

水曜日 耐久財受注(3月、前月比、予想+2.9%、前月+1.4%)

木曜日 GDP(1-3月期速報、前期比年率、予想+2.5%、前期+3.4%、個人消費、同、予想+2.6%、前期+3.3%) 週間新規失業保険申請件数

金曜日 個人所得・消費支出(3月、前月比、予想+0.5%・+0.6%、前月+0.3%・+0.8%) 個人消費支出(PCE)デフレーター(前年同月比、予想+2.6%、前月+2.5%、コア、予想+2.7%、前月+2.8%) ミシガン大学消費者信頼感指数(4月・確報)

3.欧州の経済指標、ラガルド総裁発言

欧州ではECBが6月会合での利下げを示唆している。一方、その後の利下げについては慎重に進めるべきとの意見もみられる。景気動向はどうか。またラガルド総裁は利下げにいかなるスタンスを示すか。

月曜日 ユーロ圏消費者信頼感指数(4月速報、予想▲14.4、前月▲14.9)

火曜日 PMI景況感指数(4月速報、ユーロ圏、製造業、予想46.5、前月46.1、サービス業、予想51.8、前月51.5)

水曜日 ドイツIFO景況感指数(4月)

ほか、中東情勢の推移、3月期企業決算発表、それらを受けた株価動向にも注目。

◆今週のMRA's Eye


さらなる米利下げ遅延リスク

先週はFRB当局者からさらにタカ派発言が相次いだ。これまでは利下げ時期についての先延ばしの可能性を示唆する発言にとどまっていたが、リスクシナリオながら次の一手が利上げになる可能性に言及するメンバーも散見されるようになった。

パウエル議長が明確に利下げに慎重なスタンスになったことからハト派からタカ派寄りにスタンスを変更したと受け止められている。また重要な総裁ポストであるNY連銀ウィリアムズ総裁が、リスクシナリオとしつつも、データ次第で利上げもありうる、としたことは注目される。

アトランタ連銀総裁も、インフレが目標に向かって進展を継続できなくなれば、という前提条件つきで、利上げの検討が必要にならざるをえない、として利上げにオープンなスタンスを示した。

ハト派で知られるシカゴ連銀総裁も、インフレ鈍化基調が停滞したため金利据え置き・様子見を支持する、として利下げにさらなる時間を要するとの見解を示した。ハト派も利下げ回数の縮小を明確にしている。

今週はFRBが政策判断でインフレ指標として最も重視する個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が発表となる。

コア指数は前年同月比+2.7%と前月+2.8%から上昇率が鈍化すると予想されている。総合指数は+2.6%から+2.5%への鈍化予想。予想通り、わずかながらも目標である2.0%へ向けてインフレが鈍化していることを示せば、利下げ先送りへの過度な懸念は沈静化。また利上げは依然として確度の低いリスクシナリオに留まる。

しかし横ばいとなれば市場の利下げ先送りないし利上げ懸念が高まる可能性がある。その先も重要な経済指標が続く。ISM景気指数は製造業・サービス業の景況感のさらなる好転を示すか。受注動向や雇用判断はどうか。さらに来月初の雇用統計が引き続き強いデータを示すか。雇用増加そのものは悪くないが、問題は賃金動向。上昇加速がみえればタカ派の意見が勢いを増す。

パウエル議長ほかハト派がタカ派寄りにスタンスを調整、またタカ派が利上げのリスクに言及し始めたことからみれば、利下げ時期や年内利下げの回数判断は状況が変化。

初回利下げは6月の可能性がほぼなくなったが、さらに7月の可能性が低下。9月ないし11月会合となりそうだ。ただ11月となると大統領選挙の直後。動きにくい可能性もあり、9月を逃すと次は12月となる可能性もある。

こうなると年内利下げ回数は2回の可能性が後退し1回に減少したとみられる。

また今後の経済指標が強い数字となるリスクも踏まえ、米長期金利は上昇。2年債利回りは5%近辺に達した。より期間の長い10年債利回りは反応が鈍いが、それでも4.6%台に乗せてきた。

欧州ではECBが6月会合での利下げを示唆している。ユーロドル相場は欧米の金融政策スタンス格差を反映し1.08近辺での推移から1.06台半ばへ下落。ドルインデックスは106ポイント台に上昇した。

こうした状況で円安を牽制する日本の通貨当局は一段と苦戦を強いられそうだ。米長期金利の水準は利上げ局面で達していたレベルまでは反発していない。

日銀の政策修正により日本の長期金利も上昇したことで、日米長期金利差は22年秋にドル円相場が150円台に乗せた時点よりも縮小している。金利差だけが理由ではない、と投機的な動きを牽制している。

確かに、シカゴ通貨先物ポジションの投機的円売り残高は、4月16日時点で165,600枚と前週9日の162,200枚からさらに増加して2007年以来の高水準を更新している。

FRBに動きがないとみられるなか、日銀の利上げも先とみられ、政策不変の安心感からドル買い円売りが高水準に積み上がっている。実弾の介入実施は一定の効果があるとみられるが、それも米国の経済指標に弱い数字がみられたタイミングでこそ効果が大きい。

しかしそうしたタイミングであれば自ずとドル安円高に振れる可能性がある。

介入効果を求めればタイミングは一段と難しくなる。円安を踏まえ、日銀植田総裁は想定より早い利上げをほのめかしつつある。政策委員のなかには早期利上げに反対のメンバーもおり、来週の会合での議論が注目される。

円安でも株価は下落。さらなる価格引き上げが予定されるなか、円安の弊害だけが際立ち始めたことにどう対処するか。

米国の利下げ先送りが相応に織り込まれたこと、投機的ポジションが過剰に積み上がっていること、などを踏まえれば、ドル円相場が155円を超えてさらに上昇していく展開はリスクシナリオだ。150円台前半での高止まりが長期化するとの見方が妥当だろう。ただ高止まり期間は7月ないし8月まで長期化しそうだ。

ドル安円高に振れるとすれば、米国景気への懸念が指標で明確になる、ないし介入が実施される、リスクイベントが生じ市場のボラティリティが高まる、株価がさらに下落してリスク回避が強まる、といった事態だが、これはあらかじめ想定が難しい。


主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
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