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高値圏維持も利食い売りで一部調整
  • MRA商品市場レポート

2020年7月15日 第1785号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「高値圏維持も利食い売りで一部調整」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:上昇。OPEC月報で比較的強気な需要見通しが示されたことや、株価の回復を受けたリスク選好の回復で上昇した。

本日はOPECプラスの共同閣僚監視委員会で減産規模の縮小が提案される見通しであり、需給緩和観測が強まることから本日は下落すると予想。

◆非鉄金属:供給不安をテーマに上昇を続けてきたが、やや上げペースが速すぎることもあり一旦調整売りに押された形。

引き続き供給不安が材料となり、公共投資期待も根強いことから価格は堅調地合いを維持。

◆鉄鋼原料:中国の貿易統計の改善を受けた需要増加観測を背景に堅調。

中国の経済活動改善観測と、ブラジルの情勢が悪化していることによる供給面から堅調地合いを持続の公算。

◆貴金属:高安まちまち。ドル安進行などが材料で金銀は上昇、PGMは前日比マイナスで引けた。

目立った手掛かり材料に乏しいため高値圏で推移を継続とみられるが、本日はOPECプラスの共同閣僚監視委員会で減産規模の縮小が提案される見通しであり、期待インフレ率の低下を受けてやや下押し圧力が強まる展開を予想。

◆穀物:シカゴ穀物市場は堅調。中国政府によるトウモロコシ大量購入が全体の地合いを強くしたが、天候状況の改善による豊作期待で上値重い。

生産地の天候状況改善に伴う豊作期待が価格を下押し。

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は下落した商品が目立ったが、その他農産品や貴金属の一角、エネルギーは小幅高となった。

昨日発表された独ZEW景況感指数は、期待指数が59.3(市場予想 60.0、前月63.4)、現状指数が▲80.9(▲65.0、▲83.1)と、現状指数がやや前月から改善したものの、市場予想を大きく下回り、期待指数に関しても前月、市場予想とも下回った。

これまでの市場は「予想よりも強い統計」を受けた景気回復「期待」が価格を押し上げてきたが、その期待が過剰になりつつあるといえる。

期待先行が過ぎるのでは、との見方は原油価格と株価の乖離などを受けたものであるが、同時に株価がPERの上昇で上昇する場合は市場のリスク選好が回復し、循環的に原油が物色されるということも起こり得る。

現在の過剰な流動性供給が続けば、早晩市場は需給以外の要因が価格を決定する金融相場に移行する可能性があると予想される。

しかし、特殊要因の影響が大きい鉱物資源市場を除けば需給ファンダメンタルズがタイトなわけではないため、金融相場に移行するのはもうすこし先になると予想される。

なお、昨日最も価格が上昇したのはシカゴ木材。2020年7月2日付MRA's Eye「木材価格の上昇余地」で解説した通り、需要減少観測を受けた生産者の減産はあったが、想定以上に経済活動が戻っていることで需給が急速にタイト化しているとみられる。

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【本日の見通し総括】

本日の商品相場も高値圏を維持するものが目立つと予想される。経済活動の再開に伴う経済の過熱観測と同時に、各地で発生している再ロックダウンの動き、拡大への懸念、といった強弱材料が混在するため。

ただ、本日はOPECプラスの共同閣僚監視委員会に注目している。おそらく、足元の経済活動の回復を受けて減産規模の予定通りの縮小が提案される見込みであり、原油価格を押し下げよう。

結果、期待インフレ率が押し下げられるため、インフレ資産価格の下押し要因となる。

また、発生源であるが中国のコロナの影響が抑制されている一方で、拡大が続いている欧米諸国が中国に対する不満を強めていることはほぼ間違いがなく、コロナを契機とする中国との対立が経済活動を鈍化させる可能性は、リスクシナリオというよりは徐々にメインシナリオになりつつあると考えるべきかもしれない。

【昨日のトピックス】

昨日発表された中国の貿易統計は、輸出が前年比+0.5%(市場予想▲2.0%、前月▲3.3%)、輸入が+2.7%(▲9.0%、▲16.7%)と予想も前月も上回る回復となった。市場が想定している以上に、中国の経済活動、欧米のロックダウン解除に伴い中国外の経済活動が回復していることを確認する内容だった。

北半球の経済活動はコロナウイルスの影響が弱まる夏場に関しては、市場が想定していたよりも悲観的なものにならない可能性が出てきた。また、輸入の大幅な回復は、中国の経済対策に伴う国内需要の回復を示唆している。

しかし、コロナウイルスの感染第2波(第1波が終了していない、という見方も)の襲来し、感染力が高まる冬場に再び経済活動が鈍化する可能性が高いと見られること、米中の対立がこれから激化する見通しであることを考えると、このまま順調に回復するかどうかは微妙である。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の改善。

ロックダウン解除の動きが世界的に拡大しており、最悪水準まで低下したPMI・ISM指数には改善圧力が掛かり、景気循環銘柄価格の上昇要因に。ただし、本格解除には至らず、改善余地も限定される公算。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(▲3.0%→▲4.9%)ている。2021年に関しても+5.8%→+5.4%と下方修正した。

結局、コロナウイルスの影響が2021年意向も残存することが前提となっている。ただ、この冬場の再ロックダウン時の経済への影響は、2020年初に見られたほどの過激なものにはならず、半分程度にとどまるケースをメインシナリオとしている。

・各国中央銀行、特に先進国の中央銀行はコロナ対策で政策金利をほぼゼロ近傍まで引き下げており量的緩和規模も拡大、これ以上打てる手がなくなった状態。

もちろん、量的緩和規模の拡大や投資対象の拡大などの追加手段は考えられるが、経済への直接的な影響は、先行事例である日本や欧州を見るにそれほど大きくない。

クライシスが再び発生した場合のリスクはより高まっていると考えるべき。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・コロナウイルスの感染長期化の可能性。現在でも感染は世界的に拡大しており、北半球の冬場に再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。

・米中の対立激化による新冷戦構造の発現。

米国が中国と共生体制になっていのは経済的なメリットがあったからだが、リーマンショック、コロナショックを通じて中国よりもデメリットが大きい(人民元安誘導など)ことがわかったため、米国が中国からのデカップリングを進める可能性は高い。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国(資源国の多くも新興国)の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。ジョンソン首相は移行期間の延長を拒否しており、EUとFTAで合意できなければ関税引き上げが発生し、合意なき離脱に匹敵する混乱となる可能性(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・ロックダウン解除の動きと量的緩和・信用緩和を受けた株高による、リスク資産の再物色の流れ。

コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は上昇した。OPEC月報で比較的強気な原油需要の回復見通しが示されたことや、米国時間の株価の上昇を受けたリスク選好の回復を受けて水準を切り上げる展開となった。

本日はOPECプラス合同閣僚監視委が予定されているが、恐らく8月からの減産規模の縮小について提案があると予想される。こうなると今まで減産を順守していた小規模生産国が抜け駆け増産に走ると考えられ、原油需給が緩和する可能性があると考えられる。

【原油価格見通し】

原油価格は最大消費国である米国の経済活動が回復していることから目先強含み易いものの、OPECの減産幅縮小観測や、世界的なコロナの再拡大懸念を受けて上値も重いと考える。

DOEは2019年対比で元の水準に戻るのは2022年以降と想定しており、原油需要の戻りや価格の戻りは制限されると考えられるが、OPECの減産によってすでに原油需給バランスが供給不足になっているとの見通しも示しており、下落余地も限定されるとみている。当面はレンジワークとなるだろう。

しかし、米中対立やコロナの影響継続、実は世界のコロナ感染者数の増加ペースが加速していることを考えると、このタイミングでプレ・コロナの頃の水準に経済活動が戻るとは考え難く、常に価格急落への備え(場合によってはプットオプションの活用など)を検討すべき時期にあると考える。

原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で40ドル近辺(27ドル~50ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末のリスクは高まるだろう。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

すでに全ての産油国が追加減産を実施しているが、減産後の稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

ただ、今のところ今年の冬に感染拡大の第2ラウンドが来る可能性は高く、むしろメインシナリオになりつつある。この場合、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところエネルギー価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に上昇した。固有の材料に乏しい中、過去5年レンジの最低水準を季節性通りフォローする値動きとなっていたが、ここにきて上昇も、下落もしなくなってきている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。

6月の中国の石炭輸入は前月から回復したが、前年水準を▲6.7%下回った。中国は国内の石炭産業の強化を目的に国内生産を増加させる方向性に舵を切っており、輸入を抑制する可能性を否定していない。

また、コロナ問題を受けて対中国批判を強める豪州に対し、牛肉や鉄鉱石、石炭輸入を削減ないしは停止すると中国政府が表明しており、実際にその通りとなれば豪州炭価格を押し上げよう(他国産石炭は上昇)。

しかし、水準を切り上げていた中国の港湾在庫は急速に減少し、過去5年レンジを大きく下回っていることから、一定の輸入需要が見込めると考えられさらなる価格下落余地も限定される。

石炭期間構造はコンタンゴで限月交代によるジャンプも起きにくく、価格変動性は12%程度(VaRの概念では、現在の価格を50ドル程度とすれば、7割の確率で1年後の価格が±6ドル程度しか変化しない)と通貨の変動率程度まで変動性が低下している。

結局、燃料炭価格は狭いレンジの中で、低いボラティリティを維持しつつ現状水準での推移を続けると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲2割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国小売売上高は前年比▲13.5%13兆8,730億元(1-4月期▲16.2%の10兆6,758億元)と回復は遅れており、5月単月でも▲2.8%の3兆1,973億円(前月▲7.5%の2兆8,178億元)と回復はしているがマイナスは継続(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし前年比マイナスの状態が続き、回復ペースは緩慢。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

<<投機・投資要因>>・WTI、Brentともロングの解消売りが顕著。ロックダウン再開への懸念が影響したものと考えられる。

WTIはショートの買戻しが多く、Brentはショートの新規積み増しが顕著だった。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが686,543枚(前週比 ▲17,850枚)ショートが151,226枚(▲9,341枚)ネットロングは535,317枚(▲8,509枚)

Brentはロングが254,623枚(前週比▲10,315枚)ショートが55,367枚(+4,570枚)ネットロングは199,256枚(▲14,885枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME市場は下落した。取引序盤から水準を切り下げる流れとなり、アジア株の下落を受けて下げが加速した。中国の防疫統計は予想比強めの内容だったものの、昨日に関してはあまり材料視されず。結局、需給ファンダメンタルズのタイト化を材料に上昇してきたが、「やや上げすぎ」ということもあって、利食い売りの動きが強まったものと考えられる。

昨日発表された中国の貿易統計は、銅市場の需給がタイト化していることを再確認する内容だった。

6月の中国の銅地金輸入は前年比+98.8%の66万トン(前月+20.8%の44万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比+8.4%の159万4,000トン(▲8.3%の169万ト)となった。

銅地金輸入は過去5年の最高水準を大きく上回ったが、銅鉱石は4月に大きく増加していたが、6月にかけて減少し、過去5年平均に向かって水準を切り下げている。

生産国の週間ベースの輸出統計が取得できないため正確にはわからないが、中国の国内のインフラ投資が過熱していることに伴い銅需要が増加しているが、生産国の鉱石供給がコロナの影響で相当厳しくなっている可能性が高く、中国の消費者は精錬品を物色しているようだ。

実際、銅のTC/RCは7月13日段階で54.5ドルと2014年以降の最低水準になっており、鉱石市場の需給がタイト化していることを伺わせる。

低下していた銅現物プレミアムも上昇を始めており、しばらくの間(少なくとも北半球の夏場はコロナの影響が緩和しているため、この状況が続くことになると予想。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は高値圏を維持すると考える。今のところ市場参加者は、北半球の主要国は夏場のロックダウンを想定していないと見られること、中国・米国のインフラ投資実施による公的セクターの需要下支えが期待されるうえ、コロナの影響による南半球、特に南米生産者の供給減少が意識されており、ベンチマークである銅価格が堅調に推移すると予想されることから。

弊社は7月2日に見通しをリバイスしたが、非鉄金属価格の多くはこの予想数値を10%~15%上回る可能性が高い。いきなり見通しを外してしまった可能性が高い。

ここにきて特に市場参加者は、鉱山供給の停止リスクを強く意識し始めている。鉱山を保有する国の多くが新興国であり、医療体制が充実していないなどコロナウイルスに対する体制が脆弱である。

特に南米はブラジルを中心に対策が遅れており、ベンチマークの銅の供給懸念は日に日に強まっている状況。これに米中のインフラ投資需要が重なっているため、通常は工場の稼働が夏休みで低下する夏場にかけて、相場は強含み易い。

今回の米中の公共投資は、5G分野やEVステーションの整備、通常の公共投資が行われる見込みであり、銅、亜鉛、アルミの需要がその恩恵を受けると予想される。

割安に推移してきたアルミは中国の製錬キャパシティの拡大が2020前年比で▲130万トンの減少が見込まれ、アルミナの供給能力も、中国で180万トン程度が停止していることから、秋口にかけての上昇リスクは小さくないとみる。

しかし、今年は北半球の冬場に再びロックダウンとなる懸念がぬぐえないため、北半球の夏場の非鉄相場は強いものの、大統領選後の冬場は南半球が夏になり、供給制限が緩和される見込みであることを考えると、年後半は需給両面で価格が下落するリスクは小さくないと考えている。

なお、米中が通商面で昨年・一昨年に行われたような「大規模な制裁」を実施することは両国にとってデメリットが大きいため、行われないと考えるのが常識的な見方だ。

ただし、コロナウイルスへの中国の対応(情報隠ぺい)を受けて、欧米の中国に対する今までの積年の不満が、香港・新疆ウイグル自治区問題、台湾問題で爆発しており、今後、欧米が協調して中国からのデカップリングを進める可能性は高い。むしろメインシナリオだろう。

特に、反中に転じたバイデン候補が勝利した場合、欧州と連携して中国包囲網を強めると予想される。

結果、貿易量の減少を通じて非鉄金属価格には下押し圧力が掛かることになる。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところ非鉄金属価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

冬場に突入する南半球の感染状況は、今後注意すべき需要指標になるだろう。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・6月中国製造業PMIは50.9(前月50.6)と改善した。内訳を見ると生産が回復、新規受注も50.9→51.4と改善、輸出向けの新規受注も大きく改善(35.3→42.6)しており、ロックダウン解除による国内の経済活動の回復と、海外市場の稼働再開が影響したことが鮮明となった。

これに伴い、原材料・完成品在庫とも水準を切り下げており、新規受注の増加と合わせた両要因で、新規受注・在庫レシオは水準を切り上げることになった。

中国国内の原材料・完成品需給はタイト化が予想され、特に鉱物資源価格の上昇要因となる。

・6月中国銅線生産者 97.1%(前月101.7%、過去4年平均 87.1%) 銅棒生産者 77.8%(80.4%、76.1%) 銅板生産者 63.5%(65.9%、70.8%) 銅管生産者 86.2%(83.4%、85.6%)

・5月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 90.9%(前月90.3%) 中規模事業者 73.3%(65.9%) 小規模事業者 73.1%(73.1%)

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国固定資産投資は前年比▲6.3%の19兆9,194億元(1-4月期▲10.3%の13兆6,824億元)と回復基調を持続(ストック需要の回復=価格の上昇要因)

しかし、公的セクター▲1.9%(▲6.9%)は回復しているものの、より規模の大きな民間セクターの回復は▲9.6%(▲13.3%)と遅れており、回復力は然程強くない。

・1-5月期の中国不動産開発投資は前年比▲0.3%の4兆5,920億元(1-4月期▲3.3%の3兆3,103億元)とマイナス幅を縮小(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

ただし、前年比マイナスは続いており回復力は弱い。

・6月の中国の銅地金輸入は前年比+98.8%の66万トン(前月+20.8%の44万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比+8.4%の159万4,000トン(▲8.3%の169万ト)と、地金輸入が大幅な増加、銅鉱石輸入は減少傾向となっている。

銅のTC/RCは7月13日段階で54.5ドルと2014年以降の最低水準になっており、鉱石市場の需給がタイト化しており、中国の消費者は精錬品を物色している。

低下していた銅現物プレミアムも上昇しており、少なくとも北半球の夏場はコロナの影響が緩和しているため、この状況が続くことに。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・7月3日付のLMEロング・ショートポジションは、亜鉛と錫を除いて引き続き総じてショートの買戻しが顕著だった。その他、鉛と錫を除き、ロングの積み増しも進んだ。需給両面で価格が上昇し易くなっていることを示唆。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は34.3億ドル(前週20.5億ドル)と、買い越し幅を拡大している。アルミ・亜鉛以外は買い越しに。買い越し幅の増加率は+67.1%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで424千トン(前週101千トン)と買い越し幅を拡大した。買い越し枚数の増加率は+318.7%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は下落、中国鉄鋼製品先物価格は変わらずだった。

中国の貿易統計が市場予想を上回る内容で、特に輸入が市場予想を上回ったことは中国国内の需要回復が順調であることを伺わせるものであったため、鉄鋼原料価格の押し上げ要因となった。

昨日発表された6月の中国の鉄鉱石・精鉱輸入量は記録的な水準となり、過去2番目の水準となり、1億168万トンとなった。中国の港湾在庫の水準は絶対水準が過去5年平均を下回り、在庫日数は過去5年の最低水準で推移しており、やはり国内のインフラ向け需要が旺盛であることを伺わせる内容。

一方で週次の鉄鉱石輸入は6月に入ってから減少を始めており、ブラジルや豪州の鉄鉱石週間輸出も減少を始めている。さらに減速するかどうかはブラジルについてはコロナウイルスの感染拡大状況、豪州はコロナを巡る中国との対立次第であるが、仮にそうなった場合、さらに海上輸送鉄鉱石価格は上昇することになるだろう。

鉄鋼製品の輸入は平均で110万トン程度なのだが、6月は188万トンと記録的な水準となった。国内生産は5月時点で9,227万トンと記録的な水準。一方で鉄鋼製品の輸出は370万トンと過去5年レンジを下回り、この5年の最低水準である。

以上を整理すると、鉄鋼製品に関しても銅などの非鉄金属と同様、国内のインフラ投資向けの需要が旺盛であるが、1.鉱石の供給が減少するリスクを警戒しているため、前倒しの調達が起きている、2.国内の需要を満たす十分な鉄鋼製品の供給が出来ていない、可能性があるということだ。

6月の中国の石炭輸入は前月から回復したが、前年水準を▲6.7%下回った。中国は国内の石炭産業の強化を目的に国内生産を増加させる方向性に舵を切っており、輸入を抑制する可能性を否定していない。

しかし、原料炭の主要な輸入港である京唐港の石炭港湾在庫の水準は過去5年平均程度まで低下しており、国内の鉄鋼製品需要が旺盛であることを考えると、海上輸送原料炭価格も底堅い推移になると予想される。

当面、鉱物資源価格は高水準での推移が続くことになるだろう。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏での推移になると考える。中国鉄鉱石在庫が日数ベースで過去5年の最低水準で推移していること、中国政府のインフラ投資が今後も継続する見込みであることから、中国国内の足元の鉄鋼原料需給並びに今後の需給見通しがタイト化しているため。

中国のインフラ投資(公的需要)、米国の1兆ドルインフラ投資、ブラジルの供給減少が顕在化しつつあることも価格の押し上げ材料。足元、ブラジルなどの主要生産国からの供給面のほうが強く意識されつつある状況。

なお、足元のバルチック海運指数の上昇が続いていたが、ここにきて若干水準を切り下げた。同指数は石炭輸送状況の影響を強く受けるが、ブラジル・豪州の中国向け鉄鉱石輸出が急速に減少している影響が顕在化しているためと考えられる。

コロナウイルス感染拡大や、人権問題をめぐって欧米と中国の対立が強まっており、両者の対立は交易量の減少を通じて鉄鋼製品価格・鉄鉱石価格を下押ししすることになる。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が好況投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。但し、中国の国内生産の増加もあり、上値も重い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年平均程度での推移が続いており、鉄鉱石よりは需給が緩和している。

インドネシア・豪州の中国向け石炭輸出は増加していたが、週間輸出実績は急減速している。バルチック海運指数にも低下圧力が掛かっており、今後の動向に注目したい。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・6月の鉄鋼業PMIは49.3(前月50.9)と前月から悪化した。生産は引き続き高水準であるが(56.4→57.5)、新規受注が急減速(52.9→46.4)したことが影響した。輸出向け新規受注の水準も低下しており、鉄鋼製品の国内外向けの需要は急減速しているといえる。

鉄鋼業は中国政府の公共投資を受けて公的需要が増加していたと見られるが、それが一服したためと考えられる。やはり、中国もそこまで財政的にゆとりはないということだろう。

結果、完成品在庫・原材料在庫とも指数が上昇しており、今後、鉄鋼製品価格や鉄鉱石価格の下押し要因になると予想される。

・中国河北省の高炉稼働率は7月10日時点で78.6%(前週78.9%)と小幅に低下。鉄鋼製品生産の回復は頭打ちとなっていることをうかがわせる内容。

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国固定資産投資は前年比▲6.3%の19兆9,194億元(1-4月期▲10.3%の13兆6,824億元)と回復基調を持続(ストック需要の回復=価格の上昇要因)

しかし、公的セクター▲1.9%(▲6.9%)は回復しているものの、より規模の大きな民間セクターの回復は▲9.6%(▲13.3%)と遅れており、回復力は然程強くない。

・1-5月期の中国不動産開発投資は前年比▲0.3%の4兆5,920億元(1-4月期▲3.3%の3兆3,103億元)とマイナス幅を縮小(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

ただし、前年比マイナスは続いており回復力は弱い。

・中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、6月は188万トンと記録的な水準に。国内生産は5月時点で9,227万トンと記録的な水準。一方で鉄鋼製品の輸出は370万トンと過去5年レンジを下回り、この5年の最低水準。圧倒的に国内需要が旺盛であることを示唆。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+12.3万トンの1,471.7万トン(過去5年平均 1,040万トン)となった。例年よりも在庫水準は高く、今週も例年と異なり在庫が増加している。

・6月の中国の鉄鉱石・精鉱輸入量は過去2番目の水準となり、1億168万トンとなった。中国の港湾在庫の水準は絶対水準が過去5年平均を下回り、在庫日数は過去5年の最低水準で推移しており、やはり国内のインフラ向け需要が旺盛であることを伺わせる内容。

一方で週次の鉄鉱石輸入は6月に入ってから減少を始めており、ブラジルや豪州の鉄鉱石週間輸出も減少を始めている。さらに減速するかどうかはブラジルについてはコロナウイルスの感染拡大状況、豪州はコロナを巡る中国との対立次第であるが、仮にそうなった場合、さらに海上輸送鉄鉱石価格は上昇することに。

鉄鉱石の港湾在庫水準は、絶対水準ベース、在庫日数ベースとも過去5年平均を下回っており一定の在庫積み増し需要があると考えられる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+30万トンの1億1,005万トン(過去5年平均1億1,961.6万トン)、在庫日数は+0.1日の22.0日(過去5年平均 29.0日)と例年と比較して在庫水準が低く、需給ファンダメンタルズはタイト。

・5月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比▲19.7%の2,205万7,000トン(前月+22.3%の3,095万トン)と減速し、過去5年平均程度まで落ち込んだ。中国の石炭国内生産が増加しているためとみられる。

原料炭の輸入は4月は前年比▲15.4%の628万トン(前年比▲8.1%の564万トン)と急減速した。おそらく国内生産が増加したことによるもの。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格はもみ合った結果、前日比プラスで引けた。実質金利は乱高下していたが、株価の上昇を受けたリスク選好のドル安進行も価格を押し上げた。「安全資産としての需要」というよりは、低金利政策やリスクテイクに伴うドル安が価格を押し上げている状況。

銀価格は金価格の上昇を受けて水準を切り上げ。プラチナ・パラジウムはもみ合った結果前日比小幅マイナスで引けた。

【貴金属価格見通し】

金銀は再び上昇基調を強めると考えられる。FRBが実質金利をマイナスにする緩和策を容認していることもあり、かつ、2022年までは現状の政策が維持される見込みであること、景況感とは乖離して上昇している株価下落への備え、といった観点で需要が高まると予想されるため。

また、米中対立激化がほぼ確実な情勢になっていることや、コロナ不況を背景とした新興国経済の混乱も安全資産需要を高めることになる。

コロナウイルス対策で各国とも財政支出を拡大しており、アルゼンチンで発生したようなデフォルト発生が意識されることが安全資産需要を高めることも、価格を押し上げると考える。

ただしFOMCメンバーがYCCに関して否定的なスタンスであるため、現時点では政策金利絡みでの価格上昇余地は限定されることになろう。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスク・プレミアム)は222ル(前日比▲1ドル)。

一方、現在の実質金利で説明可能な価格水準は長期金利の低下もあって、1,580~1,600ドル程度まで上昇しており、緊急時の換金による下落余地が限定されている。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では110倍程度が妥当、となっているが現在は94.2と大幅に低下している。銀÷金在庫レシオの低下が要因となったようだ。

過去1年平均を基準にすると95倍程度が妥当であり、これ以上の上昇があるかどうかに関しては、金価格動向次第か、更に金在庫の増加・銀在庫の減少が進む場合だろう。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

金価格の上昇余地がそろそろ限界では、との見方が強まっていることも、割安な大体安全資産として銀が物色される可能性は高い。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)している点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによるが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のほどの安全資産としては認知されていないため、金価格に主導される形で価格が形成されやすい。

しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになると予想する。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、自動車セクターの回復は緩やかなものにとどまる見通しであることから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

6月の米自動車販売は年率1,305万台(市場予想 1,309万台、前月 1,221万台)と、市場予想には届かなかったが大幅な改善となった。ただし、経済活動が再開されているが、プレ・コロナの水準に戻るには相当の時間がかかる見込みであり、PGM価格の押し上げ効果は限定的なものとなろう。

中国の6月の自動車販売は前年比+11.6%の230万台(前月+14.5%の219万台)と前月比プラスとなったが、前年比では伸びが減速した。引き続き年初来の販売累計は▲16.9%の1,026万台となっており、コロナの影響に伴う販売遅れを取り戻せていない状況。

中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻ることは難しく、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・各国とも政策金利をゼロ近傍に下げており、量的緩和規模も拡大。あとは更に規模を拡大するか、量的緩和時の投資対象を拡大するぐらいしかなくなってきた。

これで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が不安定であることによる供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となるリスクが残存しており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが337,030枚(前週比 +8,088枚)、ショートが69,672枚(+7,400枚)、ネットロングは267,358枚(+688枚)、銀が80,741枚(+1,995枚)、ショートが42,916枚(+1,771枚)、ネットロングは37,825枚(+224枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが27,680枚(前週比 +955枚)ショートが10,365枚(▲512枚)、ネットロングは17,315枚(+1,467枚)

パラジウムが3,251枚(+217枚)、ショートが1,737枚(▲178枚)ネットロングは1,514枚(+395枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は総じて堅調。中国が米国産トウモロコシを大量に購入した、との報道を受けて下支えされたが、生産地の好天予想を受けた生産への楽観から上値も重かった。

大豆も中国のトウモロコシ大量購入を受けて前日比高寄りしたが、生産への楽観から上値も重かった。小麦も小動きで前日と変わらずで引けた。

米農務省によれば、中国は米国産トウモロコシを136万5,000トン、176万2,000トン購入したと発表した。

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格はロックダウン解除後のガソリン出荷が再び回復基調にあることが統計で確認されたことを受けて投機の買戻しも入りやすく、堅調な推移になると予想。但し、生産地の生育環境の改善を受けて上値も重いと考える。

大豆も飼料向け需要の回復と、中国の合意履行遵守期待、トウモロコシの上昇を受けて堅調。

小麦は北米の冬小麦の作柄が良好ではなく、そもそも取引所在庫の水準が低い中、ウクライナやロシアの供給懸念が強まっていること、競合飼料であるトウモロコシも米石油製品出荷の回復で上昇し易くなっていることから、上昇余地を探る展開に。

東アフリカ・中東地域で激増しているサバクトビバッタであるが、現在はインド・パキスタン・イランにまたがる地域で猛威を振るっている。

懸念はアフリカ西部にバッタが飛来する可能性がある点。こうなると影響がアフリカ北部全域に広がることになり、食料危機を通じて北アフリカの治安が不安定化するリスクは無視できず。

また、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家があったが、今度は収穫期にコロナウイルスの影響で人員が確保できず、収穫に影響が出る可能性がある。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億Bu(150億4,085万Bu、前月159億9,500万Bu)大豆 41億3,500万Bu(41億5,430万Bu、41億2,500万Bu)小麦 18億2,400万Bu(18億4,372万Bu、18億7,700万Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 24億4,800万Bu(27億3,052万Bu、33億2,300万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億2,389万Bu、3億9,500万Bu)小麦 9億4,200万Bu(9億5,019万Bu、9億2,500万Bu)

・6月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 52億2,400万Bu(49億5,862万Bu、79億5,300万Bu)大豆 13億8,600万Bu(13億9,113万Bu、22億5,300万Bu)小麦 10億4,400万Bu(9億8,661万Bu、14億1,200万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが256,472枚(前週比 ▲13,802枚)、ショートが363,711枚(▲64,007枚)ネットロングは▲107,239枚(+50,205枚)

大豆はロングが218,135枚(+14,579枚)、ショートが67,626枚(▲13,059枚)ネットロングは150,509枚(+27,638枚)

小麦はロングが116,056枚(+2,524枚)、ショートが130,325枚(+2,169枚)ネットロングは▲14,269枚(+355枚)

◆主要ニュース


・5月日本鉱工業生産海底  前月比▲8.9%(速報比▲0.5%、前月改定▲9.8%)、前年比▲26.3%(▲0.4%、▲15.0%)
 出荷▲8.9%(▲0.5%、▲9.5%)、▲26.8%(▲0.3%、▲16.6%)
 在庫▲2.6%(▲0.1%、▲0.3%)、▲0.5%(▲0.1%、+2.7%)

・5月日本設備稼働率 前月比▲11.6(前月▲13.3%)

・6月中国貿易収支 464.2億ドルの黒字(前月629.3億ドルの黒字)
 輸出総額 前年比 +0.5%(▲3.3%)、輸入総額 +2.7%(▲16.7%)
 輸出年初来ベース
  対米国 前年比 ▲11.1%(1-5月期▲14.3%)
  対欧州 ▲1.5%(▲4.1%)
  対日本 ▲3.1%(▲1.6%)
  対アセアン諸国 ±0.0%(▲0.4%)

 輸入
  対米国 前年比 ▲4.8%(▲7.6%)
  対欧州 ▲9.6%(▲11.8%)
  対日本 ▲2.6%(▲5.0%)
  対アセアン諸国 +5.0%(+2.6%)

・6月独消費者物価指数 前月比+0.7%(前月+0.7%)、前年比+0.8%(+0.8%)

・6月インド卸売物価指数 前年比▲1.81%(前月▲3.21%)

・5月ユーロ鉱工業生産 前月比 +12.4%(前月▲18.2%)
 前年比▲20.9%(▲28.7%)

・7月ZEW独景況感調査期待指数 59.3(前月63.4)、現況指数 ▲80.9(▲83.1)
 ユーロ圏期待指数 59.6(58.6)

・6月米消費者物価指数 前月比+0.6%(前月▲0.1%)、前年比 +0.6%(+0.1%)
 コア 前月比+0.2%(▲0.1%)、前年比+1.2%(+1.2%)

・6月米実質平均賃金 前年比+4.3%(前月+6.4%)
 実質平均時給+4.6%(+7.3%)

・ダラス連銀カプラン総裁(投票権あり・中間派)、「2021年はトレンドを上回る経済成長の可能性。」

・英国、5G通信網からファーウェイを排除。

・イタリア政府、200億ユーロの追加刺激策を準備。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・6月中国石炭輸入 2,529万トン(前月 2,206万トン)

・6月中国原油輸入 5,318万トン、1,312万バレル/日(前月4,797万トン、
1,145万バレル/日)
 精製石油製品輸入 350万トン(393万トン)
 輸出 388万トン(389万トン)

※原油1トン=7.4バレルとして算出。石油製品は種類の内訳が不明のためバレル換算していない。

・6月中国天然ガス輸入 833万トン(前月 784万トン)

・米バイデン氏、クリーンエネルギーで2兆ドルの投資を提案(4年間)。

・OPEC月報
 世界石油需要 Q120:92.4、Q220:82.0、Q320:92.2、Q420:96.2、2020:90.7
 非OPEC供給(含むNGLs) Q120:66.4、Q220:61.0、Q320:59.5、Q420:60.2、2020:61.8
 Call on OPEC Q120:26.0、Q220:21.0、Q320:32.7、Q420:36.0、2020:28.9

※2021年の需要は700万バレル増加。ただし2019年の水準は回復せず。

・DOE米在庫統計市場予想 原油▲88KB(前週+5,654KB)
 ガソリン▲1,080KB(▲4,839KB)
 ディスティレート+1,384KB(+3,135KB)
 稼働率+0.45%(+2.00%)

・API石油統計 原油在庫▲8.32MB、クッシング+0.55MB
 ガソリン▲3.61MB、ディスティレート+3.03MB

・サウジアラムコ、下流事業を、1.精製やトレーディングなどの燃料、2.石油化学、3.電力、4.パイプラインの4つのユニットに再編すると発表。

・イラク アブドルジャバル石油相、「OPECプラスの減産合意を完全にコミットしている。」

【メタル】
・6月中国銅輸入 66万トン(前月44万トン)
 銅鉱石・精鉱 159万トン(169万トン)
 アルミ(未加工品含む) 輸出 35万トン(38万トン)

・6月中国鉄鉱石輸入 1億168万トン(前月8,703万トン)
 鉄鋼製品輸入 188万トン(128万トン)
 鉄鋼製品輸出 370万トン(440万トン)

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CME木材 ( その他農産品 )/ +9.30%/ +43.84%
2.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +4.44%/ ▲58.38%
3.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +2.30%/ ▲16.47%
4.SGX天然ゴム ( その他農産品 )/ +1.90%/ ▲9.86%
5.CBT大豆油 ( 穀物 )/ +1.82%/ ▲17.43%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.CBTエタノール ( エネルギー )/ ▲7.29%/ ▲10.33%
69.LME亜鉛 3M ( ベースメタル )/ ▲2.77%/ ▲3.65%
68.ICE粗糖 ( その他農産品 )/ ▲2.25%/ ▲15.65%
67.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ ▲2.13%/ +30.20%
66.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲2.04%/ ▲26.53%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,642.59(+556.79)
S&P500 :3,197.52(+42.30)
日経平均株価 :22,587.01(▲197.73)
ドル円 :107.24(▲0.05)
ユーロ円 :122.25(+0.54)
米10年債 :0.62(+0.00)
中国10年債利回り :2.99(▲0.06)
日本10年債利回り :0.03(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.45(▲0.03)
ビットコイン :9,272.83(+23.03)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :27.88(▲0.44)
エネルギー :37.96(▲0.87)
ベースメタル :20.43(▲0.52)
貴金属 :17.01(+0.14)
穀物 :27.10(▲0.1)
その他農畜産品 :29.46(▲0.51)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :35.92(▲0.65)
Brent :31.29(▲1.59)
米天然ガス :70.73(▲0.25)
米ガソリン :46.29(▲0.48)
ICEガスオイル :31.06(▲3.33)
LME銅 :19.03(+0.2)
LMEアルミニウム :18.61(+0.35)
金 :11.98(+0.15)
プラチナ :21.32(+0.07)
トウモロコシ :27.50(▲0.02)
大豆 :11.98(+0.15)

【エネルギー】
WTI :40.29(+0.19)
Brent :42.90(+0.18)
Oman :43.35(▲0.40)
米ガソリン :124.74(▲2.60)
米灯油 :122.08(▲0.27)
ICEガスオイル :366.50(▲2.00)
米天然ガス :1.75(+0.01)
英天然ガス :12.93(+0.55)

【貴金属】
金 :1809.36(+6.60)
銀 :19.22(+0.14)
プラチナ :829.31(▲5.19)
パラジウム :1974.04(▲21.24)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,491(▲46:1.5C)
亜鉛 :2,199(▲25:11C)
鉛 :1,858(▲12:18.5C)
アルミニウム :1,675(▲21:35C)
ニッケル :13,567(+43:49C)
錫 :17,170(▲108:55B)
コバルト :28,438(▲3)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6500.00(▲45.50)
亜鉛 :2192.00(▲62.50)
鉛 :1851.00(▲33.50)
アルミニウム :1682.50(▲7.50)
ニッケル :13600.00(▲125.00)
錫 :17285.00(▲95.00)
バルチック海運指数 :1,792.00(▲18.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :110.82(+4.70)
SGX鉄鉱石 :109.22(+0.66)
NYMEX鉄鉱石 :107.45(+0.52)
NYMEX原料炭スワップ先物 :113.86(▲1.00)
上海鉄筋直近限月 :3,651(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :3,735(±0.0)
米鉄スクラップ :275(+1.00)

【農産物】
大豆 :882.25(+5.75)
シカゴ大豆ミール :283.70(+0.60)
シカゴ大豆油 :28.48(+0.51)
マレーシア パーム油 :2540.00(+57.00)
シカゴ とうもろこし :334.75(+0.75)
シカゴ小麦 :524.75(±0.0)
シンガポールゴム :149.90(+2.80)
上海ゴム :10700.00(±0.0)
砂糖 :11.32(▲0.26)
アラビカ :96.70(▲0.70)
ロブスタ :1185.00(▲9.00)
綿花 :62.69(▲1.06)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :46.80(+0.13)
シカゴ生牛 :98.80(▲0.85)
シカゴ飼育牛 :136.73(▲0.33)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。