NEWS & CONTENTSニュース & コンテンツ

米経済ヘの楽観から景気循環系商品買われる
  • MRA商品市場レポート

2022年6月7日 第2211号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米経済ヘの楽観から景気循環系商品買われる」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はエネルギーや非鉄金属などの景気循環系商品が物色され、畜産品や農産品の一角が下落した

米国の金融引締めがあってもソフトランディングが可能ではないか、との見方や、中国のロックダウン解除に伴う経済活動の再開、などが材料となった。

現在、商品市場の先行きについては株式市場と同様に見方が分かれている。

基本的には多くの商品で、人手不足や資材不足、ロシアとの対立やコロナ問題の残存による物流障害の継続を背景に、供給環境の改善が遅れていることが需給をタイト化している。

この状況で、インフレを抑制するために金融引締めを強化してあるいみ需要側を減速させざるを得ない状況に欧米は追い込まれており、その金融引締めにより、オーバーキルになるのか、ソフトランディングになるのかまだはっきりしたことが分からない状況である(この分析に関しては、有料レポートの「昨日のトピックス」をご参照ください)。

商品に関しては即時の増産が難しく、足下の価格が上昇するのは不思議はないが、年末を目標とした場合着地点が当初想定していたよりも高い水準になるのか、オーバーキルとなり、下回る水準なのかがなんとも言い難い。

引き続き、先行き景況感の指標としてPMIやISMに注目が集まり、金融政策の判断材料となる遅行指標である雇用や賃金、CPIなどの数値の重要性も増すことになるだろう。

【本日の見通し】

本日は昨日の流れを受けたドル高進行と、中国の景気回復期待、といった強弱材料が混在する中で高値件を維持しつつもみ合い推移になると考える。

昨日の市場概況のところでも説明したとおり、市場は「今後の見通し」をどのように整理するべきか逡巡しているところであり、予定されている材料の中では世銀の世界経済見通しには注目したいところ。

後は米国の金融政策動向を市場がどのように判断しているかの指標となる米3年債入札動向にも注目したい。

【昨日のトピックス】

昨日、為替市場でドル円が132円台まで上昇し、実に20年2ヵ月振りの円安となった。しかし本日も円安が加速して133円を目指す展開になっている。円安加速の背景は、そもそもの金融政策格差(米国が利上げを行い、QTも行う中で日本の金融政策は変更なし)を見越したドル高圧力が強まる中、原油価格や石炭価格などの資源価格が想定以上に高止まりしており、この夏に向けた調達圧力の強まりもあって、資源価格の上昇による貿易収支の赤字圧力が強まっていることも円安加速の一因と考えられる。

となると、今後のドル円動向を占う上では、原油価格との関係性を注視する必要がある、ということになる。

「ドル指数は原油価格と逆相関」と、為替市場では解釈されることが多いが、それは必ずしも正しくない。

ドル高は、ドル価の上昇を受けて資源などの本源的価値の変化がない商品(為替レートが変動しても、物質としてのその商品の価値は毀損しない)のドルベースの名目価格を押し下げる効果があり、これが上述の逆相関の要因である。

米国は未だに世界最大の原油消費国であり、原油市場への同国の経済状況が与える影響は大きい。

即ち、現在のドル高が

「米国の景気回復によるもの」であれば、「景気回復で原油の需要も増加」するため、ドル高と原油高が同時に成立してもおかしくない。

と考えると、「ドル指数が上昇するが、原油価格が下落する」、という局面に入れば

「景気回復期待<ドル高の影響」

即ち

「需給ファンダメンタルズ要因<ファイナンシャルな材料の影響」

となるため、ドル高進行によって原油価格が下落を始めれば、それは景気の転換点、ともいえる。

実際、ドルと原油が正の相関になったのは2020年11月のファイイザー社のワクチン開発成功以降であり、上記の推測を裏付けるものだ。足下ドル高ペースを受けて原油価格の上値が徐々に重くなっていることを考えると、(引き続きドル指数や原油価格の動向を注視する必要があるが)景気は転換点に差し掛かっているといえるかもしれない。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。米国の金融引締めは加速する可能性があるものの、「ソフトランディングが可能ではないか」という楽観が広がっていることが背景。

しかし、米国の金融政策は需要を落してインフレを抑制するための金融引締めであり、基本的には年後半に掛けて景気は減速するため原油価格には低下圧力がかかることになる。ただ、基本は「ソフトランディング成功(ないしは若干の景況感悪化)」で済むと考える市場参加者が多いことを考えると、それほど大きな調整にならない(需要の減速が充分ではない)可能性が出てきた。

これに加えて、今年の夏の北半球の猛暑、各地で発生している渇水が水力発電を減じ、特にディーゼルオイルの需要を増加させること、そもそも石油製品の在庫水準が低い状態が続いていることから買いが入りやすくなっている。

一方、供給面の状況が全く改善しておらず、米国ですら増産がまだ始まっていないことを考えると年内は高止まり、となる可能性が出てきた(年末の着地点が弊社の4月予想よりも高くなる可能性)。

米国のシェールオイルの掘削~生産開始までのリードタイムが1年程度に長くなってしまった。北米の生産者の上流部門投資は増加しているのだが、いろいろな制限の下、恐らく増産が始まるのは年後半以降になると予想される。

今後の比較的短期的な見通しは以下の通り。現在は3,の状態にあると考えられる。

ただ、今までの増産の延長線上で、予定通り増産は9月で打ち止めとなれば、2.の状態に戻ると予想される。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない Brent 120-150ドル

2.戦闘状態が継続し、欧州をはじめとする西側諸国がロシア原油を段階的に禁輸とし、それが実行されるBrent 100-130ドル

3.1.ないしは2.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 90-125ドル

4.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 85-120ドル

5.4.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

↑ 上記は戦闘が継続する場合のシナリオ

↓ 下記は戦闘が完全に終結した場合のシナリオ

6.ロシアがウクライナから撤退するが原油の脱ロシアが進むBrent 95-120ドル

7.6.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 75-110ドル

8. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)Brent 60-90ドル

9. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)Brent 40-60ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。OECD諸国の戦略備蓄130万バレル放出は半年の時限付。

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次微修正している。

長期的な視点では、以下のような流れが想定される。基本的には下りのエスカレーターに乗る中で、供給面の材料が価格を高止まりさせる、という見通し。

2024年以降は、現在のインフレ抑制がどの程度進むか、脱ロシアがどのような形になるか、に依拠するためまだなんともいえないところ。

現在~Q123 需要の伸び減速・供給不足期Q223~Q423 需要減速底入れ・供給回復期2024年以降 需要回復・脱ロシア進捗(非OPECプラスの増産)

本日は米国の景気先行き楽観とドル高進行が相殺しあう形で高値維持の公算。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物市場は小幅に下落した。ロシアからの輸入が実質的に止まっていないこと、季節的に需要が減少するタイミングに有ること、が材料となった。しかし基本的にTTFの期間構造や絶対水準は変化していない。

現在の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下の6点に集約される。

1.脱ロシアの継続(スポットカーゴ価格の上昇要因)2.欧州vsロシアの対立(価格の上昇要因)3.景気減速(価格下落要因)4.気象状況(今のところ需要増加で価格上昇要因)5.季節要因6.そもそもの在庫不足(在庫積増しバイアスで価格上昇要因)

日々これらに関わる材料が処理されて価格が動いているが、欧州が脱ロシアを進める方針に変わりはなく、スポットのガス調達を増やして調達構造を変化させる見通しであり、「脱ロシアの供給ソースの完全確保」が出来るまではスポット価格は高い水準を維持、その後は下落、というのがメインシナリオとなる。

LNGのターミナルを持たない域内最大のエネルギー消費国であるドイツは、あと数年は

1.域内供給の増加2.その他の熱源の利用(風力、太陽光含む)3.需要の削減

によってガス在庫を積み上げるしかない。結局その大半をロシアからの輸入に頼らざるを得ない。なお、欧州全体のガス在庫は6月4日時点で50.8%(前日50.1%)と順調に在庫が積み上がっている。

欧州はまだ良いのだが、現在戦闘状態にあるウクライナのガス在庫の水準が著しく低い。ウクライナは欧州域内で最大の貯蔵能力を有するが、現在の在庫積増し進捗状況は17.5%(17.4%)とほとんど在庫が積み増しできていない状況。

仮に冬場にガスが不足した場合、欧州諸国からウクライナへの融通も視野に入れる必要があり、冬場に天然ガスが不足するリスクはまだ回避できていない。

なお、一部の国ではLNGの受入キャパシティ上限まで輸入が増加しており、これ以上輸入量を増加させるのは技術的に困難とみられる。

これらのリスクが顕在化した場合、自国民の生活や産業に著しい不利益が生じるため、欧州域内からロシア制裁解除の声が高まる可能性はある。ロシアが音を上げるか、欧州か、まさにチキンゲームの様相を呈している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米国天然ガス先物市場は大幅に上昇した。米国の気温上昇見通しが引き上げられ、南部・西部の気温が平年よりも大幅に上昇する見通しであること、かねてから渇水が指摘されている西部のガス需要増加観測が強まったことが背景。

そもそも、米国全体の天然ガス在庫水準は過去5年平均を下回っており、充分ではない。

なお、HHの直近限月価格は9.3ドル程度であるが、カリフォルニア南部のガス価格は9.7ドルまで上昇(5月25日時点では10.15ドルまで上昇)しており、足下の需給がタイトであること示唆している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物は期近が下落し、期先が上昇した。期近の下落は欧州の輸入需要鈍化や、中国の輸入需要鈍化が影響し、期先の上昇は需給構造に大きな変化がないことが意識されているためと考えられる。

目に見える将来(2年程度)では今のところ市場は天然ガスのスポット価格は20ドルを下回っていない。足下の「適正な」価格、即ち供給に問題が全くない場合の価格は期先の価格を参考にする必要があるが、この20ドル程度が今後の「基準」になると考えられる。

5月29日時点の日本の発電用LNG在庫は199万トン(前年同月末194万トン、過去4年平均198万トン)と減少。今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくない。

5月23日~29日のLNGトレードだが、取引量は730万トン(前週720万トン)、スポット取引のシェアは25%(前週33%)と低下した。

スポット契約は日本・韓国・中国・台湾の輸入が前週比▲46万トンの大幅な減少となったことがスポット取引のシェアを低下させた。また、欧州・イタリア向けも▲25万トンの減少となった。

長期契約ベースの輸入は日本(+21万トン)、中国(+16万トン)の増加となったが全体として緩やかな増加に止まった。

本日も欧州の需要の鈍化が価格を下押しするが、中国の経済活動再開による需要増加や米国からのカーゴ減少(域内需要の高まり)観測が価格を下支えすると考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆石炭

豪州石炭スワップ先物価格は全体的に小幅上昇。欧州排出権価格が水準を切下げたため、テクニカルに石炭に買いが入ったとみられる。とはいえ、基本的には石炭需給がタイトであることに変わりはなく、高値維持が続いている。

中国のロックダウンの解除は、国内供給増加で価格の調整要因になると考えていたが、消費者にとっては好ましくないが、経済活動再開による需要増加がより意識されている状態。

中国6大電力会社の石炭在庫、インドの石炭在庫水準も低く、まだ需給はタイト。

中国政府は2022年の石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日(3億9,060万トン/月)に設定しているとされ、これが達成されるとほぼ輸入が不要となる。

なお、4月の中国の石炭生産は、前年比+12.6%の3億6,300万トン(1,209万トン/日)と前月の+16.1%の3億9,600万トン(1,277万トン/日)からは減少している。

結局、海上輸送炭の輸入需要は昨年までよりは低下しているものの、完全に不要という訳ではない。4月の国別の燃料炭輸入はインドネシアからの輸入が前月比+191万トン、ロシアが+43万トン、カナダが13万トン増加している。

結局、ロックダウンは中国の電力需要を減じるものの、生産も制限するため海上輸送炭市場をタイト化させているといえるだろう。

日本も対岸の火事ではなく、今年の夏は猛暑が予想されているため、石炭価格の高騰が電力会社の業績を圧迫するのみならず、逆ざや発生に伴う電力供給制限が起きる可能性も意識しなければならない状況。

また、夏場の電力供給不足のリスクは米国でも指摘されており、北米電力安定供給審議会(NERC)は、米国では五大湖周辺から西海岸に掛けて猛暑や干ばつなどの影響で電力不足に陥るリスクに警鐘を鳴らしている。

これに加えて電力供給不足を補うため、ドイツがロシアからのガス供給途絶に備えるため、休止予定だった石炭火力発電所を利用する方針を表明しており、構造的な石炭需要は底堅く、価格を高値に維持するとみる。

本日も発電燃料を巡る需給環境はタイトな状態が続くと見られるため、高値維持の公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属市場は4日間のロンドン休場明けとなったが、中国の経済活動再開と、経済対策期待で上昇した。

固有のニュースとしては米ヘッジファンドのElliottがLMEのニッケル取引に絡む強制溶け合いに関して4億6,500万ドル相当の損害賠償を請求して提訴した、と報じられた。

現物取引の9割以上がLMEベースである、ということに感けたとは言わないがそうした奢りや、そもそも産業界重視の市場であるためファンドなどヘの対応が劣後下、といったことも合ったのではないか。

また救済対象が中国の企業だったということも親会社の香港取引所(ひいては当局)に忖度した、と受け取られかねないため、本件はきっちりと背景を調べて開示してほしいものである。

懸念すべきはこうした不明瞭な取引が取引所主導で行われた場合、その取引所の信頼低下につながり流動性も低下、ヘッジ市場としての機能が失われる可能性がある点だ。

本日も中国の経済活動回復期待で上昇すると見るが、米国の景気先行きを楽観して長期金利上昇、ドル全面高となっていることがファイナンシャルな面で価格を押し下げるため、上値も重いと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は横這い、上海鉄筋先物は直近限月・中心限月共に大幅に上昇した。

中国の鉄鋼製品価格はロックダウンからの再稼働に伴う需要の増加で水準を切り上げ、在庫水準が低下していた鉄鉱石に予想通り買いが入り、そもそも供給がタイトな状態が続く原料炭価格は高値を維持した。

今回の上昇で鉄鋼製品価格で説明可能な水準(期間3年データを元にした回帰分析の結果:142ドル)を鉄鉱石価格は上回ったが、原料炭は回帰分析の結果である240ドルを遙かに上回る水準での取引となっている。

鉄鉱石同様、期間3年の鉄鋼製品価格データを元に原料炭価格を推定すると、期先の価格水準とほぼ同じ240ドルとなるが、足下はこの価格よりも遙かに高く、250ドル程度が流動性プレミアムと考えられる。

本日も中国の経済活動再開を受けて高値維持の公算。

◆貴金属

昨日の金価格は下落した。米長期金利の上昇が継続し、期待インフレ率の上昇を上回って実質金融引締めが継続したこと、ドル高の進行が金の基準価格を押し下げたため。

銀価格も金とほぼ同じ相場展開となり、ドル高進行局面で水準を切下げたが株価が高値を維持したこともあって下げ幅を削り、前日比プラスで引けた。

プラチナ・パラジウムも銀と同様で、上昇後下落したが高値維持、という形になった。

本日も米長期金利の上昇やドル高バイアスを背景に金銀には下押し圧力が強まり、工業金属としての色彩が(金銀よりも)強いプラチナ、パラジウムなどは株の戻りや中国の経済活動再開期待を受けて高値を維持する見込み。

◆穀物

シカゴ穀物市場は総じて堅調。需給ファンダメンタルズがタイトであることから基本的には買いが入りやすい環境にあるが、夜間に発表された米週間輸出検証高で、トウモロコシ・小麦が先週の実績を上回った一方、大豆は先週の実績を下回ったため、比較的素直にこの統計の結果が反映された形。

なお、ロシアはウクライナ産(か、ウクライナから強奪した)小麦輸出に関して、

1.オデーサからの輸出(ウクライナが設置した機雷除去が条件。トルコが機雷を除去し、小麦を積み込み、ロシア戦艦が護衛してトルコまで運ぶ、との報道も)

2.ロシア支配下のマリウポリなどアゾフ海の港から出荷

3.ベラルーシ経由(ベラルーシへの制裁解除)

といった3つの案を提案しているが、いずれもロシアにとって都合の良いものであり、1.についても関係を維持しているトルコ向けとみられるため、エルドアン大統領はウクライナのため、というよりは自国のため、というスタンスだろう。到底、ウクライナ側が承服出来る話ではない。

結局、ロシアが強奪した物を除けば、ウクライナ産の小麦2,500万トンは輸出出来ない可能性が高まっている、といえるだろう。

本日も需給ファンダメンタルズがタイトな状態に変わりなく、上昇余地を探る展開を予想。ただしドル指数が上昇していること、トウモロコシ・大豆に関しては米国での作付が急速に進捗し、作況も悪くないこと、から上値も重かろう。

小麦に関しては米国産冬小麦の作況、春小麦の作付共に非常に悪く、ウクライナ情勢の改善がないことを考えると高値維持の公算。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

・渇水に拠る水不足や、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

◆本日のMRA's Eye


「商品価格の高ボラティリティは継続か」

米国を筆頭に、欧米は金融引締めに舵を切り始めた。主に食料品やエネルギーなどの生活必需品価格が記録的なペースで上昇し、全く沈静化の兆しが見えないことが背景にある。

基本、インフレの継続は国民の不満を高めるだけに止まらず、価格上昇が企業の調達コストを押し上げ、特にコストプッシュ型のインフレの場合は業績への影響が小さくない。

しかし、総合CPIとコアCPI(国によって定義が異なるが、概ねエネルギーと食料品を除いた消費者物価)を比較してみると、今回はコア物価指数がエネルギーや食料品を含む物価上昇率を下回っている国が大半であり、「エネルギー価格・食料品価格の上昇」が消費者物価を顕著に押し上げているが、その他の物価がそこまで上昇していないことを示唆しており、今回の利上げで経済が必要以上に減速してしまうリスクは残る。

消費者物価上昇の背景には、コロナやそれに伴う人材不足を背景としたサプライチェーンの混乱が寄与していることはほぼ間違いがないが、足下、米国のサプライチェーン圧力指数は頭打ち感が出始めており、コスト押し下げのために中国に対する制裁関税も撤廃の議論が出始めるなど、徐々に物価には下押し圧力が掛る公算(ただし中国のロックダウンが長びいた場合などは長期化の恐れも).

また、これまでの物価上昇の遠因となった量的緩和も解除の方針であり、このことも消費者物価を押し下げへ。

ただし、今回の宇露対立で経済の東西分裂の可能性が高まっており、2%台の物価上昇率に復帰出来るかどうかは、現時点ではまだ不透明である。

もし本当に東西が分裂すれば、消費者物価は1989年以前の3~5%程度の水準までしか低下しない可能性も充分にありえる状況だ。

斯様な環境下、主要商品価格の変動性は高まっている。

1.供給制限の中の景気回復に伴う需要増加

2.異常気象やコロナの影響によるサプライチェーンの混乱継続

3.インフレ沈静化のための金融政策動向を巡る思惑

4.ロシアのウクライナに対する侵略戦争を背景とする制裁(政治的な意図で供給制限や代替品の需要が増加する)

5.2~4を踏まえたリスクオフの流れ

6.価格変動性の高さを背景とする証拠金の引き上げ、米金融引締めによる流動性の低下

などが重なったことによるもの。

このとき、「一定期間の値幅(対象期間の最高値-対象期間の最安値)」はほとんどの商品で拡大しており、企業の期間損益に与える影響が小さくなくなってきている。

今回の値幅拡大で特徴的なのは通常、「●●ショック」という景気にとって下向きの材料が顕在化した時に相場が急落して値幅が広がることが多いのだが、今回は「価格が上昇したときに値幅が拡大する」という、オイルショック時などの特殊な供給制限が発生した時と同様の状況となっている。

かなり珍しい状況であることは事実だが、当面、価格変動性が高い状態が続くと予想され、企業の調達コストや販売価格の変動性が増すことにより、業績が不安定化する可能性は高い。価格変動性の高さに対して準備を始める時期にあるのではないか。


主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
【MRA商品市場レポート】について