景気への懸念から手仕舞い売り続く
- MRA商品市場レポート for PRO
2018年12月25日 第1459号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「景気への懸念から手仕舞い売り続く」
昨日の商品価格はその他農産品や貴金属、債券などの安全資産が物色され、景気循環銘柄は広く売られることとなった。世界景気の先行きが懸念される中で、景気循環銘柄が売られる流れが継続している。
ただ、ここまで下落するほど足下の経済統計が顕著に悪化しているわけではなく、例えば欧州についていえばこのコラムでの主張しているように昨年の12月にピークアウトしているため、
米国の景気押し上げはトランプ減税の効果によるところが大きいが
その中で、足元の景気過熱を背景に、
特に、商品価格は「需要と生産のタイムラグ」の影響で、景気拡大の最終局面で最も価格が上昇しやすい。
今後は各種マクロ経済統計を睨みつつ、景気動向により焦点が当たることになるがこの2ヵ月の間の相場急落で市場参加者の体力は急速に低下していると考えられ、多くのファンドが閉鎖を余儀なくされている。
「ファンド・閉鎖」というキーワードで検索すると、相当な数のファンド閉鎖のニュースがヒットする。これにより買い手が減少することになるため特に株式市場が低迷することが予想され、株式市場の低迷はリスクテイカーの体力低下で、リスク資産価格を下押しすることになる。
まだ世界の景気がクラッシュしているわけではないこと、価格下落が需要を喚起することは間違いがないことから、しばらく下値余地を探る動きになったとしても、価格には上昇圧力が掛かる展開になると考えている。
少なくともそのためには切っ掛けが必要で、カレンダーが変わり、OPECの物理的な減産が始まる年明けが、
このコラムでは、商品市場のリスクについて多方面から分析を行っているが、ほとんどの商品が国際商品であるため海外情勢分析が中心となっている。その意味で、国内の分析はそれ程頻繁に行っていない。
しかし、2019年は日本の地域金融機関の経営問題が意識され、
国内の融資シェアはメガバンクが2009年の調査開始以来初めて
このことは裏返すと、仮に借り入れ元の地銀の体力が低下した場合に、資金調達面で問題が生じる可能性があることを示唆している。
地銀は黒田日銀の異次元緩和の継続を受けた長短金利差の消失により、本業の業務純益が減少、さらにゼロ金利政策に伴う投資対象の減少から外債などへの投資を余儀なくされてきた。
しかしその結果、VIX連動債やイタリア国債、トルコ国債など、「今年火を噴いた商品」に手を出さざるを得なくなった地域金融機関も多いようで、「海外情勢の混乱が地域金融機関の経営に悪影響を及ぼす」環境をもたらしてしまった。
なお、外貨調達手段が外銀に比べて盤石ではない邦銀は、外債投資を行う場合に3ヵ月タームで外貨を調達することが多い。仮に地銀を含む邦銀が外貨をファンディング(資金調達)できなくなった場合、これらの海外商品に売り圧力が高まり、それが国際市場に波及する可能性もあり得る。
安倍政権になってからの日本経済は、長期循環的・短期循環的な設備投資需要と海外景気の回復が重なって回復を続けてきたがこの間
このことは来年、仮に景気が悪くなった時に国内で打てる手がほとんどないことを意味しており、体力のない国内金融機関の破綻や貸出金の回収などのリスクは想定しておくべきだろう。このようなリスクが顕在化しないことを心から祈る。
本日はクリスマスで多くの欧米市場が休場のため、相場に大きな波乱はないとみており、基本的には様子見気分強く、方向感に欠ける展開になると見ているが、地合いが悪いため、総じてリスク資産価格の上値は重いだろう。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
昨日の原油価格は大幅に続落した。そもそもクリスマス休暇で市場参加者が少ない中、引き続き世界景気への懸念が強く株価の調整が継続していることで手仕舞い売り圧力が強い上、景気の先行き懸念が強まったことで需要減速観測が強まったことが背景。
OPECの減産が不十分であるから下落しているという意見は多く
ただし、まだ景気が後退局面入りしたわけではなく、市場参加者が少ない中で相場が上下に振れやすい環境にある中での下落、と整理したほうが良く、
買戻しを入れるには理由が必要になるが、「カレンダーが変わること」「OPECの減産が実際に始まること」は、
足元の景気循環銘柄価格下落の主因の1つである米中貿易戦争であるが、
しかし、中国はアフリカなどの今後成長が見込める新興国を囲い込み、毛沢東が中国を農村から掌握していった戦略と同様の戦略を推し進め、数の力で米国の思惑を挫く戦略を採用するとみられ、いずれも時間との戦いになる。
そして、それほど短期決戦にはならないと考えられるため、比較的長い間景気にマイナスに作用することになるため、原油を始めとする景気循環系商品価格の下押し要因となるだろう。
短期的には投機筋動向が価格に影響を与えやすいが、
WTI・Brentともロング・
中長期的には中国の人口ボーナス期が2030年頃まで続く事、
なお、EVが普及して原油需要は2035年~
また、EV化が進むにつれて同時に発生する、
実際に減少に転じるのは世界的に人口伸びの鈍化が実感される頃(2050年頃か)になるのではないか。
この見通しの上昇リスクを現物の需要・供給に分けてみてみると、需要面は原発事故などの突発事象で他のエネルギーを原油で代替せざるを得なくなった時がこれに当たるが、これはなかなか想定し難い。
供給面は、以下のようなものが上昇リスクと考えられる。
1.中東情勢の悪化
2.PDVSA(ベネズエラ)の生産減少
3.上流部門投資低迷の影響
この中で顕在化の可能性が高まっているのが1.で、2.
1.中東情勢はより混迷を極めている。年初は、「米国+
OPECもカタールが脱退、反サウジアラビアの姿勢を強め、
通常であれば増産攻勢が強まり、価格の下落要因となりそうだが、軍事的な衝突やサウジ対する制裁やそれに対する報復としての原油輸出停止も、ムハンマド皇太子が今のポジションにいる以上ない話ではない。
仮に、イランやサウジが軍事的に衝突した場合や、米国のイランに対する制裁が貫徹され、本当にイランが原油輸出できなくなるような場合には、ホルムズ海峡封鎖の可能性が高まるため、原油価格が100ドルを超えても何ら不思議はない。
金融面・政策面では、以下の要因が上昇リスクとなる。
1.米金融規制緩和
2.米景気拡大ペースの鈍化に伴う利上げペースの減速
3.2.
1.は中間選挙で民主党が下院を押さえたため、その可能性はほぼゼロになった。
2.は足元の統計減速で、来年の利上げペースが鈍化する可能性が出高まっている。
下落リスクは需要面は何かしらの信用リスクが顕在化することが材料となる。
1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速
2.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化
3.北朝鮮戦争の開戦や中東情勢悪化を受けたリスク回避の動きの強まり
4.株価の調整
5.トランプ政権の保護主義政策推進
6.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト
1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを見直すなど緩やかに調整が起きているが、足元は米国の制裁強化の影響でむしろこちらにブレーキを踏む動きになっている。
2.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・極左が台頭することや、
中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続がリスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視できない。
4.は既に顕在化した。
5.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動きになりつつある。しかし大統領選挙まで「戦う大統領」のポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決しない。
6.
仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、
この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。
供給面は、以下の要因が主な下落リスクシナリオだ。
1.北米の増産加速
2.OPECの結束の揺らぎ
1.は米国のパイプラインのキャパシティ問題もあり、増産ペースは鈍化している。原油価格が採算ラインに乗ってから増産が始まるまでの時間差や新しいパイプラインの稼働時期を考えると、再び増産ペースが加速するのはQ119になってからだろう。
2.は、12月のOPEC総会の結果を見てもわかるように、
ムハンマド皇太子の強硬姿勢に嫌気が指し、財政状況も厳しくなったカタールがOPEC脱退を決定するなど、
石炭価格はじりじりと水準を切り下げながら、高値圏での推移を続けている。中国の国内の生産が減少しているうえに北朝鮮の制裁が続いていることが影響している。価格の減速は、価格に対する説明力が高い、「中国の景況感の鈍化」が影響していると見る。
北朝鮮への制裁解除は当面ない見込みだが、年明けに米朝首脳会談が開催される可能性があり、一気に解除に向かう可能性も無視できなくなってきた。
COP24は目標達成時期で新興国や先進国の間で合意が得られず
---≪LME非鉄金属≫---
LME非鉄金属価格は総じて軟調な推移となった。
非鉄金属価格は年初にかけて上昇する局面はあるが、年半ばに向けて世界景気の循環的な減速を受け、水準を切下げる動きになると考える。結局景気循環系商品価格を決めるのは景気動向である。
とはいっても、
ただし、米中貿易戦争は今後も継続する見込みであること、欧州の景況感悪化に伴う政情不安の高まり、
足元の景気循環銘柄価格下落の主因の1つである米中貿易戦争であるが、
しかし、中国はアフリカなどの今後成長が見込める新興国を囲い込み、毛沢東が中国を農村から掌握していった戦略と同様の戦略を推し進め、数の力で米国の思惑を挫く戦略を採用するとみられ、いずれも時間との戦いになる。
そして、それほど短期決戦にはならないと考えられるため、比較的長い間景気にマイナスに作用することになるため、非鉄金属を始めとする景気循環系商品価格の下押し要因となるだろう。
そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益は、年初来ベースで前年比+13.6%の5兆5,212億元(
なお、構造的に工業金属需要が増加し、価格が上昇するのはおそらく次の需要のけん引役となるインドが人口ボーナス期入りする20
短期的には投機筋の動向が重要になるが、
アルミとニッケル、錫はロング・ショートとも増加しているが総じてショートの増加圧力が強く弱気である。
投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は140.
中長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は2030年頃まで続く事、
一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとなった。
また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,
恐らく、市場が期待していたほどのペースで一帯一路政策が進行することはないだろう。そんな中、
中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を欲しがっている、とも考えられる。軍事衝突を回避しつつ、中国をたたく戦略を採用している米国がこれを看過するかは疑問である。
この見通しの上昇リスクは需要面では、
1.中国の財政出動並びに住宅価格上昇容認
2.環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、
3.トランプ政権のインフラ投資計画実施
などが考えられる。
1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セクターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。
2.の環境規制強化の流れの中でのEVブームは、
3.はそもそも大きな政府を目指している民主党の理解が得られやすいため、メキシコとの壁は作らないと思うが一部実施される可能性は高まった。
供給面は個別性が強いが、
1.大規模鉱山の減少に伴う安価な資源確保環境の悪化(コストを掛ければ採掘できる。リサイクルの充実は必須)
2.中国の環境規制強化に伴う減産の継続
3.石炭価格上昇による生産コスト(電力コスト)の高止まり
金融面・政策面では、以下が主な上昇リスク要因だ。
1.米金融規制緩和
2.米景気拡大ペースの鈍化に伴う利上げペースの減速
3.2.
1.は中間選挙で民主党が下院を押さえたため、その可能性はほぼゼロになった。
2.は足元の統計減速で、来年の利上げペースが鈍化する可能性が出てきた。
下落リスクは多く、以下があげられるが主に信用リスクの拡大が要因の軸となる。
1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速
2.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化
3.株価の調整
4.米輸入規制強化並びにそれに対する報復
5.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト
1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを見直すなど緩やかに調整が起きているが、足元は米国の制裁強化の影響でむしろこちらにブレーキを踏む動きになっている。
2.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・極左が台頭することや、
中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続がリスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視できない。
3.は既に顕在化した。
4.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動きになりつつある。しかし大統領選挙まで「戦う大統領」のポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決しないだろう。
5.
仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、
この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。
---≪鉄鋼原料≫---
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ価格は下落、原料炭スワップ先物は小幅上昇、鉄鋼製品価格は小幅下落した。中国の経済対策期待はあるものの、景気の先行きへの懸念が強まっていることで鉄鋼製品価格が下落、鉄鉱石価格の下押し要因となった。
鉄鉱石価格は現状水準で推移すると考える。季節的に中国の生産が減少、輸入が増加する時期に当たること、米国の制裁を受けて中国政府は国内鉄鋼製品需要を刺激する政策を採らざるを得なくなる可能性が高いこと、冬場の鉄鋼生産抑制継続による鉄鋼製品価格の高止まりが、投機的な観点での鉄鉱石買いを誘うと考えられること、冬場の鉄鋼製品減産が需給面で鉄鋼製品価格を下支えすると予想されることが背景(詳しくは2018年10月31日付のMRA's Eyeをご参照ください)。
11月の中国鉄鋼PMIは45.2(前月52.1)
より注目すべきは輸出向け新規受注の落ち込みが47.3→43.
こうした国内の減速による、景況感の悪化、とくに中小企業の景況感悪化を回避するために中国政府は減税や公共投資実施などの対策を行う方針を、中央経済工作会議で示している。
ただし、同時に地方政府の財政状況も厳しく、バブルを誘発するほどの公共投資も実施できないため、鉄鋼製品、鉄鉱石価格の下支え要因にはなるが、
なお、米中貿易戦争がどのように決着するか、現時点で誰も見通すことはできないが、恐らく米国は「中国が西側の仕組みに組み入れられることを承諾します」というまで継続すると予想する。
しかし、中国はアフリカなどの今後成長が見込める新興国を囲い込み、毛沢東が中国を農村から掌握していった戦略と同様の戦略を推し進め、数の力で米国の思惑を挫く戦略を採用するとみられ、いずれも時間との戦いになる。
そして、それほど短期決戦にはならないと考えられるため、比較的長い間景気にマイナスに作用することになるため、非鉄金属を始めとする景気循環系商品価格の下押し要因となるだろう。
そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益は、年初来ベースで前年比+13.6%の5兆5,212億元(
結局、工業金属の最大消費国である中国への制裁は緩和はすれども継続する見込みであるため、工業金属需要にとってマイナスに作用することは避けえない。
鉄鋼製品在庫は前週比+0.8万トンの795.1万トン(
鉄鋼製品が高止まりするため、鉄鉱石に関しても、冬場に向けた国内生産の減速時期に突入していることから、季節的に鉄鉱石価格は高止まりするだろう。
直近の統計では、鉄鉱石在庫が前週比▲20万トンの1億3,
長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は2030年頃まで続く事、
なお、アジア開発銀行は2016年~
一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとなった。
また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,
恐らく、市場が期待していたほどのペースで一帯一路政策が進行することはないだろう。そんな中、
中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を欲しがっている、とも考えられる。軍事衝突を回避しつつ、中国をたたく戦略を採用している米国がこれを看過するかは疑問である。
上昇リスクについては、以下のようなものが考えられる。
1.中国の財政出動並びに住宅価格上昇容認
2.一帯一路構想が市場予想を上回るペースで実施される場合
3.米国のインフラ投資計画が実際に実施される場合
1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内需刺激しかなくなっており、固定資産投資も公的セクターが伸びるなど、実際に行動に移し始めている。ただ、景気が過熱するほどの緩和策や景気刺激策は取られない、というのが現在のメインシナリオだ。
2.はそのプロジェクトの質(たち)の悪さから導入を見送る国が増えており、中国自体の資金繰りの問題もあって以前ほど高いリスクではない。
3.は民主党が選挙で下院の過半数を占めたことから実施の可能性が後退した。しかしそもそも民主党は大きい政府を標榜しているため、部分的に実施される可能性はある。
下落リスクは信用リスク系のものが多いが以下が主なところだ。
1.中国の住宅バブル崩壊
2.中国のインフラ投資が財政悪化で規模が期待ほどにはならない場合
3.何らかの理由で北朝鮮に対する制裁が解除され、原料炭価格が下落する場合
4.地政学的リスクの顕在化
5.米輸入規制強化並びにそれに対する報復
6.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト
4.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・極左が台頭することや、
中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続がリスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視できない。
5.は常識的な落としどころを探る動きになる、
関税引き上げは消費税引き上げのような緊縮財政と同様の経済効果をもたらすため、景気には明らかにマイナスだ。今のところ、中間選挙を睨んだ対策であるため、目に見える効果が上がらない限りは解除はしないだろう。
結果、中国国内の鉄鋼製品価格を押し下げ鉄鉱石価格の押し下げ要因となるだろう。
6.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,
仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、
この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。
---≪貴金属≫---
金価格は上昇した。株価の急落を受けて債券が物色され実質金利が低下したこと、米政府閉鎖が年末年始にかかることが確実であるうえ、国防の要であるマティス国防長官の退任を「カッとなった」大統領が2ヵ月は止めるなど、ワシントンの政治動向の混乱を受け、安全資産需要が高まったため。
PGMは上昇していたが、
金価格は再び上昇余地を探る動きになると考える。米国の政府閉鎖が始まったこと、国防の要である国防長官が実質上更迭され、米国の軍事的な政策が強硬になる可能性があること、米国の中国制裁は本気であり簡単に解除されない見込みであることが、安全資産需要を高めるため。
また、こうした一連の政策や循環的な景気の減速を受けて米国の利上げが想定よりも早く打ち止めになるのではないか、との見方も金融面で価格を下支えしよう(ただし足元は原油価格の下落がこれを相殺)。
英国は予定されていた議会の採決を延期した。
EUは再交渉には応じないとしており、
一番現実的な解は、「とりあえずBrexitの期限を延期する」
なお、金価格は、地政学がフルに影響すれば1,
なお、地政学的リスクの影響がないとすれば、実質金利で説明可能な水準である1,050ドル程度までの下落はあると考える。
銀は、Silver Instituteなどの分析では供給の減少と電気製品向けの需要増加で供給不足になっていると指摘されているが、それよりは金価格動向や貿易戦争の影響が強く意識され、対金で軟調な推移となっている。
今後についても金価格が軟調に推移することから水準を切り下げる動きになると考える。
足元、
金銀レシオが80である前提であれば、
金銀レシオが鉱工業生産などから説明可能な、長期の平均的な水準である74程度であれば、17.6ドル、15.5ドルとなる。
短期的な価格動向を占う上で参考になる投機筋の売買動向は、12月18日時点で金のロングが+12,568枚の182,
先週から様子が変わり、金銀ともロングが増加、
PGM価格は金銀価格が上昇するため同様に上昇するとみるが、
ただし、パラジウムはリースレートが30%
米国の11月の自動車販売は1,740万台(市場予想1,
11月の米消費者信頼感は135.7と引き続き高い水準を維持、
FRBの利上げも継続する見込みであり、自動車メーカーのディーラー向けのインセンティブ負担も重くなることが予想され、自動車関税引き上げが宣言通り実施されるのであれば、自動車販売は減速する可能性が高く、PGM価格を下押しすると予想される。
中国の10月の自動車販売(工場出荷台数)は前年比▲11.7%
弊社は需給面の見通しに関しWPICの見通しを参考にしているが
2019年の自動車向けの触媒需要は前年比▲
この結果、地上在庫は312万オンス(2018年 266万5,000オンス))に増加する見込みで、在庫日数も146.8日(128.
なお、南アフリカのPGM生産指数は9月時点で108.00(
12月18日現在、CFTCのプラチナポジションはロングが▲
---≪農産品≫---
シカゴ穀物市場は下落後買戻しが入り、高安まちまちで引けた。米中対立の継続でシカゴ需給が緩和するとの見方は根強く、水準を切下げたがドル安が進行したため、クリスマス休暇前のポジション調整による買い戻しが入ったためとみられる。
穀物価格は下押し圧力が強まる展開が予想される。現状の水準でもみ合うものと見ている。米中の対立解消には相当の時間がかかるだろうとの見方が強まっていること、
中国が米国から再び大豆を購入したと報じられていたが、米中首脳会談の結果や北半球と南半球の季節の違いに加え、シカゴ大豆が割安になったことが背景。結局、これ以上中国は米国以外の国からの調達シェアを引き上げる余地はないため、シカゴ大豆は下支えされるだろう。
12月の米需給報告では、トウモロコシの在庫見通しが17億8,
12月18日付のCFTC投機筋ポジションは、
ポストハーベストプレッシャーの買戻しでショートが減少する中で
◆主要ニュース
・11月日本全国消費者物価指数 前年比+0.8%(前月+1.4%)
除く生鮮+0.9%(+1.0%)
除く生鮮エネルギー+0.3%(+0.4%)
・10月日本全国スーパー売上高 前年比 ▲2.5%の1兆625億円(前月▲0.7%の1兆641億円)
・11月日本全国百貨店売上高 前年比▲0.6%の5,304億円(前月+1.6%の4,718億円)
東京都区部百貨店売上高+0.2%の1,498億円(+2.6%
・11月独輸入物価指数 前月比▲1.0%(前月+1.0%)、前年比+3.1%(+4.8%)
・1月独GFK消費者信頼感調査 10.4(前月 10.4)
・Q318米GDP確定 前期比年率 +3.4%(改定比▲0.1%、前期確定+4.2%)
個人消費+3.5%(▲0.1%、+3.8%)
総民間国内投資 +15.2(+0.1%、▲0.5%)
設備投資 +2.5%(±0.0%、+8.7%)
輸出▲4.9%(▲0.5%、+9.3%)
輸入+9.3%(+0.1%、▲0.6%)
政府支出+2.6%(±0.0%、+2.5%)
GDPデフレータ+1.8%(+0.1%、+3.0%)
コアPCE +1.6%(+0.1%、+2.1%)
・11月米製造業耐久財受注速報 前月比+0.8%(前月改定▲4.3%)
除く輸送機器▲0.3%(+0.4%)
製造業新規受注資本財非国防除く航空▲0.6%(+0.5%)
・11月米個人所得 前月比 +0.2%(前月 +0.5%)
個人支出+0.4%(+0.8%)、実質支出+0.3%(+0.
PCEデフレータ 前月比+0.1%(+0.2%)、前年比+1.9%(+1.8%
コアデフレータ 前月比+0.1%(+0.1%)、前年比+1.9%(+1.8%
貯蓄率 6.0%(6.1%)
・12月米ミシガン大学消費者マインド指数改定 98.3(速報比+0.8、前月97.5)
現況指数 116.1(+0.9、112.3)。先行指数 87.0(+0.9、88.1)
1年期待インフレ率 2.7%(±0.0%、2.8%)
5年期待インフレ率 2.5%(+0.1%、2.6%)
・12月カンザスシティ連銀製造業活動 3(前月 15)
・12月ブラジルIBGEインフレ率IPCA-15 前月比 ▲0.16%(前月+0.19%)、前年比+3.86%(+4.39%)
・米財務長官、米銀大手6行に相次いで電話。市場の安定巡り。
・イスラエル、国会解散へ。来年4月に総選挙。汚職疑惑が指摘されるネタニヤフ首相の去就が焦点。
・中国、強制的な技術移転禁止を法制化。ただし、技術移転は双方の協議で決め、行政手段で強制してはならないとしているのみであり、元々国が関与していないとのスタンスであるため実効性は不透明。
・米トランプ大統領、マティス国防長官の退任を2ヵ月前倒しへ。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数883(前週比+
・OPECマズルーイ議長、「
・11月ロシア原油生産改定 前月比▲0.4%、前年比+3.9%の1,137.6万バレル(前月+0.4%、+4.4%の1,141.
輸出 ▲4.2%、+1.8%の562.8万バレル(+6.3%、+
【メタル】
・中国ベースメタル貿易統計(11月)、単位:千トン、錫:トン
精錬銅輸入 309.0(前月比 UC, 前年比 ▲20.2)
銅精鉱 1,700.0(前月比 +130.7, 前年比 ▲76.5)
銅スクラップ 170.1(前月比 ▲26.5, 前年比 ▲100.9)。
精錬銅輸出 22.6(前月比 UC, 前年比 ▲1.0)。
精錬亜鉛輸入 43.8(前月比 +1.5, 前年比 ▲88.0)
精錬亜鉛輸出 1.5(前月比 +0.3, 前年比 +0.9)。
精錬鉛輸入 1.8(前月比 ▲0.9, 前年比 ▲5.6)
精錬鉛輸出 6.0(前月比 +4.1, 前年比 +1.5)。
ニッケル輸入 0.5(前月比 ▲2.0, 前年比 ▲25.8)
ニッケル輸出 0.6(前月比 ▲0.4, 前年比 ▲1.2)。
錫輸入 272.0(前月比 +76.0, 前年比 +86.0)
錫輸出 686.0(前月比 +75.0, 前年比 +599.0)
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +2.51%/ ▲19.02%
2.ICEココア ( その他農産品 )/ +1.94%/ +22.36%
3.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ +1.64%/ ▲13.36%
4.LIFFEココア ( その他農産品 )/ +1.31%/ +23.66%
5.LME鉛 3M ( ベースメタル )/ +1.30%/ ▲20.46%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲9.36%/ +17.14%
67.DME Oman ( エネルギー )/ ▲6.88%/ ▲21.69%
66.NYM WTI ( エネルギー )/ ▲6.38%/ ▲29.36%
65.ICE Brent ( エネルギー )/ ▲6.22%/ ▲24.53%
64.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲4.46%/ ▲30.00%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :21,792.20(▲653.17)
S&P500 :2,351.10(▲65.52)
日経平均株価 :休場( - )
ドル円 :110.44(▲0.78)
ユーロ円 :125.91(▲0.57)
米10年債利回り :2.74(▲0.05)
独10年債利回り :0.25(±0.0)
日10年債利回り :0.05(±0.0)
中国10年債利回り :3.34(+0.02)
ビットコイン :4,040.55(+191.95)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :24.38(▲0.36)
エネルギー :44.22(+0.02)
ベースメタル :16.95(▲0.43)
貴金属 :15.41(▲0.08)
穀物 :14.63(▲0.94)
その他農畜産品 :25.81(▲0.33)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :47.40(+3.61)
Brent :45.33(+3.17)
米天然ガス :75.92(▲5.82)
米ガソリン :44.48(▲0.01)
ICEガスオイル :40.66(▲0.73)
LME銅 :14.87(▲0.06)
LMEアルミニウム :14.89(+0.54)
金 :14.04(▲2.16)
プラチナ :17.61(▲0.04)
トウモロコシ :13.73(▲0.49)
大豆 :14.04(▲2.16)
【エネルギー】
WTI :42.68(▲2.91)
Brent :50.47(▲3.35)
Oman :50.10(▲3.70)
米ガソリン :125.95(▲5.88)
米灯油 :166.22(▲7.05)
ICEガスオイル :514.00(▲1.25)
米天然ガス :3.46(▲0.36)
英天然ガス :67.34(▲1.71)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :50.47(▲3.35)
SPO380cst :305.93(▲23.25)
SPOケロシン :65.54(▲2.85)
SPOガスオイル :63.29(▲2.85)
ICE ガスオイル :68.99(▲0.17)
NYMEX灯油 :165.43(▲2.86)
【貴金属】
金 :1269.22(+12.28)
銀 :14.77(+0.12)
プラチナ :785.84(▲1.32)
パラジウム :1244.38(+12.20)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,961(▲45:29C)
亜鉛 :2,480(▲55:56B)
鉛 :1,982(+19:5.5C)
アルミニウム :1,899(▲13:0.5C)
ニッケル :10,910(+25:110C)
錫 :19,400(▲50:5B)
コバルト :55,000(±0.0)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5959.00(▲19.00)
亜鉛 :2485.00(▲4.00)
鉛 :1987.00(+25.50)
アルミニウム :1883.00(▲24.00)
ニッケル :10875.00(±0.0)
錫 :19300.00(▲90.00)
バルチック海運指数 :1,279.00(▲39.00)
※C=Cash2M コンタンゴ、B=Cash2M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :69.2(▲0.20)
NYMEX鉄鉱石 :68.79(▲0.20)
NYMEX原料炭スワップ先物 :226.5(+0.50)
上海鉄筋直近限月 :3,816(▲13)
上海鉄筋中心限月 :3,465(▲38)
米鉄スクラップ :375(±0.0)
【農産物】
大豆 :884.00(▲0.75)
シカゴ大豆ミール :307.50(+1.90)
シカゴ大豆油 :27.74(▲0.15)
マレーシア パーム油 :2055.00(▲48.00)
シカゴ とうもろこし :377.75(▲0.75)
シカゴ小麦 :516.50(+2.50)
シンガポールゴム :146.80(±0.0)
上海ゴム :11010.00(▲50.00)
砂糖 :12.40(+0.06)
アラビカ :102.20(+2.50)
ロブスタ :1485.00(+24.00)
綿花 :72.55(▲0.63)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :60.30(▲0.83)
シカゴ生牛 :120.88(±0.0)
シカゴ飼育牛 :147.38(+0.03)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。