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FOMCを控えて高安まちまち
  • MRA商品市場レポート for PRO

2018年12月20日 第1457号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「FOMCを控えて高安まちまち」

昨日の商品価格は高安まちまち。FOMCを控えて様子見気分が強い中、前日と同様、その農産品・畜産品が物色され、売られすぎからの買戻しでエネルギーも上昇した。

注目のFOMCはほぼ予想通り25bpの利上げが行われた。そして来年以降の利上げ見通しが引き下げられ、2019年の利上げは3回から2回に引き下げられた。

株価が下落する中での利上げであり、足元の株急落に配慮せざるを得なかったこと、その一方でトランプ大統領の要求をはねつけ、中銀の独立性を維持した、という意味でFOMCとパウエル議長は上手くやった、と思うのだが市場は利上げ継続を受けてネガティブに反応している。

しかし、長期金利の低下が既に始まっており、総じてインフレ系資産に対しては今回のFOMCの決定は価格を下支えする要因になると考えている。

来年の最大のリスクの1つとして挙げていたBrexitであるが、このままだと英国内のコンセンサスが得られず、無秩序な離脱となる可能性が極めて高くなっていたが、ここにきてEU側が英国に譲歩、金融商品の英国での決済継続などの一時的な緩和措置の検討を始めている、と報じられている。

また、Bloombergは投資銀行がスワップ取引をフランクフルトに移管するテストを始めた、と伝えている。本件に関して目立った動きは出ていなかったが、事前のポジション移管が進む可能性はあり、市場に安心感をもたらすことになるだろう。(こちら

ただ、なし崩し的に英国に対する対応が緩和していく、ということはその他の国が離脱をしようとする動きを加速させるリスクを高めることになる。EUも非常に難しい選択を迫られているといえる。

本日も引き続き、上記のBrexitの動向や中国中央経済工作会議の動向、米中貿易交渉の行方に注目があつまるが、年末ということもあって方向感に欠ける転嫁が継続すると考える。

予定されている経済統計では、米フィラデルフィア連銀指数(市場予想15.0、前月12.9)に注目しているが、市場予想はやや改善を見込んでいるため景気循環系商品価格を押し上げるとみる。

ただ、足元の米サプライズ指数(統計と実測値の差を指数化したもの。マイナスだと予想よりも実測値が悪くなる傾向が強まる)はマイナスであり、予想外に価格の下落要因になる可能性はあるが、逆に米利上げ観測を後退させるため、下がったとしても影響は限定されるとみている。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

昨日の原油価格は上昇した。特段目立った材料がない中で米国時間に入ってから水準を切り上げる動きとなった。米石油統計の解釈の仕方はいろいろあるが、単純に売られすぎに伴う買戻しが入ったと考えるのが適切だろう。

OPECの減産が不十分であるから下落しているという意見は多く、追加減産の論陣を張るアナリストも多いが、景気が減速する局面ではOPECが減産をしても価格を維持できないことが多いため、足元の下落は景気への懸念が強いためと整理するべきだろう。

ただし、まだ景気が後退局面入りしたわけではなく、市場参加者が少ない中で相場が上下に振れやすい環境にある中での下落、と整理したほうが良く、FOMCでの利上げ打ち止め観測も強まっていることから底堅い推移になると考える。

なお、米中貿易戦争がどのように決着するか、現時点で誰も見通すことはできないが、恐らく米国は「中国が西側の仕組みに組み入れられることを承諾します」というまで継続すると予想する。

しかし、中国はアフリカなどの今後成長が見込める新興国を囲い込み、毛沢東が中国を農村から掌握していった戦略と同様の戦略を推し進め、数の力で米国の思惑を挫く戦略を採用するとみられ、いずれも時間との戦いになる。

そして、それほど短期決戦にはならないと考えられるため、比較的長い間景気にマイナスに作用することになるため、原油を始めとする景気循環系商品価格の下押し要因となるだろう。

短期的には投機筋動向が価格に影響を与えやすいが、12月11日付のWTIの投機筋ポジションは、ロングが前週比▲708枚の503,584枚、ショートが+19,932枚の195,078枚、Brentは12月11日付でロングが+7,731枚の261,433枚、ショートは+4,600枚の121,836枚となっている。

WTIはロングの減少が減速したものの、ショートの積み上がりが顕著である。Brentはロングが増加したが、やはり同様にショートが増加している。

今年の後半にかけては、投機のショートポジション動向の影響が小さくないが、ショートが新規で積み上がっているということは、供給懸念発生時の買戻し速度が速くなることを示唆している。景気に焦点が当たり、下落リスクを強く意識する展開となっているが、むしろ投機的な観点ではアップサイドを意識したい。

中長期的には中国の人口ボーナス期が2030年頃まで続く事、2020年頃からはインドも人口ボーナス期に入り需要の増加が見込まれることから構造的に需要増加が見込めるため強気である。

なお、EVが普及して原油需要は2035年~2040年頃にピークを迎えるとの見方が市場のコンセンサスとなりつつあるが、財政的なサポートが必要なEVは、市場の期待するようなペースで拡大するとは見ていない。

また、EV化が進むにつれて同時に発生する、軽量化目的の樹脂利用(化学製品向け需要の増加)も期待できること、液体燃料は保存や輸送の観点からみて依然割安であり、アフリカなどの新興国では引き続き利用されると予想されることから、2035年に「需要の伸びは鈍化」するものの、減少に転じると判断するのは早計と見る。。

実際に減少に転じるのは世界的に人口伸びの鈍化が実感される頃(2050年頃か)になるのではないか。

この見通しの上昇リスクを現物の需要・供給に分けてみてみると、需要面は原発事故などの突発事象で他のエネルギーを原油で代替せざるを得なくなった時がこれに当たるが、これはなかなか想定し難い。

供給面は、以下のようなものが上昇リスクと考えられる。

1.中東情勢の悪化

2.PDVSA(ベネズエラ)の生産減少

3.上流部門投資低迷の影響

この中で顕在化の可能性が高まっているのが1.で、2.については顕在化している(もはやメインシナリオ)。

1.中東情勢はより混迷を極めている。年初は、「米国+イスラエル+サウジ」vs「イラン+ロシア」という構図だったが、米国の大使館移転や、サウジアラビアムハンマド皇太子のジャーナリスト殺害疑惑などで、米国・サウジアラビアの関係がギクシャクしてきている。

OPECもカタールが脱退、反サウジアラビアの姿勢を強め、イランもOPECの継続についてやや懐疑的な見方を示すなど、「景気後退局面・需要減速局面での産油国のエゴ」がむき出しになりつつある。

通常であれば増産攻勢が強まり、価格の下落要因となりそうだが、軍事的な衝突やサウジ対する制裁やそれに対する報復としての原油輸出停止も、ムハンマド皇太子が今のポジションにいる以上ない話ではない。

仮に、イランやサウジが軍事的に衝突した場合や、米国のイランに対する制裁が貫徹され、本当にイランが原油輸出できなくなるような場合には、ホルムズ海峡封鎖の可能性が高まるため、原油価格が100ドルを超えても何ら不思議はない。

金融面・政策面では、以下の要因が上昇リスクとなる。

1.米金融規制緩和

2.米景気拡大ペースの鈍化に伴う利上げペースの減速

3.2.に限らず長期金利が日欧の低金利政策の継続で低下する場合

1.は中間選挙で民主党が下院を押さえたため、その可能性はほぼゼロになった。

2.は足元の統計減速で、来年の利上げペースが鈍化する可能性が出高まっている。FOMCメンバーもハト派的な論調が増えてきており、2019年以降の利上げペースは当初予想よりも減速するのではないだろうか。

下落リスクは需要面は何かしらの信用リスクが顕在化することが材料となる。

1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速

2.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化

3.北朝鮮戦争の開戦や中東情勢悪化を受けたリスク回避の動きの強まり

4.株価の調整

5.トランプ政権の保護主義政策推進

6.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを見直すなど緩やかに調整が起きているが、景気をクラッシュさせるほどのものにはなっていない。

2.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・極左が台頭することや、Brexitがハードなものになる可能性は2019年以降の重要なリスクの1つである。

中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続がリスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視できない。

5.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動きになりつつある。しかし大統領選挙まで「戦う大統領」のポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決しない。

6.は米国の利上げ継続などで新興国からの資金流出が継続すると、現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。

供給面は、以下の要因が主な下落リスクシナリオだ。

1.北米の増産加速

2.OPECの出口戦略が意識される

3.イスラエルを中心とした中東情勢絵不安でサウジアラビアやイランなどの足並みが揃わず、OPECの結束が崩壊する場合

1.は米国のパイプラインのキャパシティ問題もあり、増産ペースは鈍化している。原油価格が採算ラインに乗ってから増産が始まるまでの時間差や新しいパイプラインの稼働時期を考えると、再び増産ペースが加速するのはQ119になってからだろう。

2.は、12月のOPEC総会の結果を見てもわかるように、出口を模索する状態にはないためこの可能性は低下した。

3.はイランに対する制裁の度合いによるが、今のところは崩壊までには至らないとみられる。ただ、ムハンマド皇太子の強硬姿勢に嫌気が指し、財政状況も厳しくなったカタールがOPEC脱退を決定するなど、結束にはほころびが出始めている。

石炭価格はじりじりと水準を切り下げながら、高値圏での推移を続けている。中国の国内の生産が減少しているうえに北朝鮮の制裁が続いていることが影響している。価格の減速は、価格に対する説明力が高い、「中国の景況感の鈍化」が影響していると見る。

北朝鮮への制裁解除は当面ない見込みだが、年明けに米朝首脳会談が開催される可能性があり、一気に解除に向かう可能性も無視できなくなってきた。

COP24は目標達成時期で新興国や先進国の間で合意が得られず、期間設定は先送りされることになった。なお、弊社が注目していた石炭に関する問題についても取り上げられたが、明確な答えは出てない。

---≪LME非鉄金属≫---

LME非鉄金属価格は上昇した。米中古住宅販売が市場予想を上回る内容だったことで、建材需要増加観測が強まったため。

しかし、それよりはFOMCを控えて様子見気分が強い中、「前日売られた商品が買い戻される流れ」を受けての上昇、と整理したほうが適切かもしれない。

なお、長らくアルミ価格を押し上げてきた要因の1つであるRusalの制裁解除であるが、大株主であるデリパスカ氏が保有株の比率を5割以下に削減することで、解除となる見通しとなっている。この場合、アルミ価格は1,800ドル台に下押しされるのではないか。

非鉄金属価格は年初にかけて上昇する局面はあるが、年半ばに向けて世界景気の循環的な減速を受け、水準を切下げる動きになると考える。結局景気循環系商品価格を決めるのは景気動向である。

とはいっても、12月のFOMCでは来年の利上げ見通しが2回に引き下げられており、名目金利の低下を受けた実質金利の低下を通じて金融面が価格を下支えすると予想する。

ただし、米中貿易戦争は今後も継続する見込みであること、欧州の景況感悪化に伴う政情不安の高まり、英Brexitがハードなものになる可能性があること、といった現在顕在化しつつあるリスク要因が景気に対する懸念を強めるため、より大きな下落になる可能性はある。

なお、米中貿易戦争がどのように決着するか、現時点で誰も見通すことはできないが、恐らく米国は「中国が西側の仕組みに組み入れられることを承諾します」というまで継続すると予想する。

しかし、中国はアフリカなどの今後成長が見込める新興国を囲い込み、毛沢東が中国を農村から掌握していった戦略と同様の戦略を推し進め、数の力で米国の思惑を挫く戦略を採用するとみられ、いずれも時間との戦いになる。

そして、それほど短期決戦にはならないと考えられるため、比較的長い間景気にマイナスに作用することになるため、非鉄金属を始めとする景気循環系商品価格の下押し要因となるだろう。

そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益は、年初来ベースで前年比+13.6%の5兆5,212億元(1-9月期+14.7%の4兆9,713億元)、10月は+3.6%の5,480億元(前月+4.1%の5,455億元)と大幅に伸びが減速している。構造的・循環的な景気減速に加え、米国の制裁の影響が徐々に顕在化していることの証左だ。

なお、構造的に工業金属需要が増加し、価格が上昇するのはおそらく次の需要のけん引役となるインドが人口ボーナス期入りする2020年頃からになるとみているため、長期的には強気の見通しである。

短期的には投機筋の動向が重要になるが、12月14日付のLMEポジションを見ると、ベンチマークの銅はロングの減少とショートの増加で完全に弱気相場入りしている。亜鉛と鉛はロング・ショートとも減少しておりリスク回避姿勢が強まっていることを映じているようだ。

アルミとニッケル、錫はロング・ショートとも増加しているが総じてショートの増加圧力が強く弱気である。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は140.1億ドル(前週157.8億ドル)と買い越し額が減少、買い越し枚数もトン数換算ベースで4,217千トン(4,456千トン)と減少している。

中長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は2030年頃まで続く事、2020年頃からインドが人口ボーナス期に入ることから構造的な需要増加はまだ継続すると見ており、強気のスタンスを崩していない。

一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとなった。

また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,069億元と大幅に積み増しされており、中国が軍事的に周辺国を支配しようとしているのは明らかである。

恐らく、市場が期待していたほどのペースで一帯一路政策が進行することはないだろう。そんな中、10月の米中首脳会議で安倍首相は透明性を高めることなどを前提に、一帯一路構想への協力を約束した。

中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を欲しがっている、とも考えられる。軍事衝突を回避しつつ、中国をたたく戦略を採用している米国がこれを看過するかは疑問である。

この見通しの上昇リスクは需要面では、

1.中国の財政出動並びに住宅価格上昇容認

2.環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台が使われる)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

3.トランプ政権のインフラ投資計画実施

などが考えられる。

1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セクターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。

2.の環境規制強化の流れの中でのEVブームは、若干鎮静化している。EV普及のためには補助金負担は必須であり、景気が減速する中ではなかなか積極的にEV政策を推し進められないことが背景にある。よって、市場が期待しているほどのペースで普及するとは見ていない。

3.はそもそも大きな政府を目指している民主党の理解が得られやすいため、メキシコとの壁は作らないと思うが一部実施される可能性は高まった。

供給面は個別性が強いが、以下が上昇リスク要因として挙げられる。

1.大規模鉱山の減少に伴う安価な資源確保環境の悪化(コストを掛ければ採掘できる。リサイクルの充実は必須)

2.中国の環境規制強化に伴う減産の継続

3.石炭価格上昇による生産コスト(電力コスト)の高止まり

金融面・政策面では、以下が主な上昇リスク要因だ。

1.米金融規制緩和

2.米景気拡大ペースの鈍化に伴う利上げペースの減速

3.2.に限らず長期金利が日欧の低金利政策の継続で低下する場合

1.は中間選挙で民主党が下院を押さえたため、その可能性はほぼゼロになった。

2.は足元の統計減速で、来年の利上げペースが鈍化する可能性が出てきた。FRBパウエル議長を含むFOMCメンバーもハト派に傾きつつある。

下落リスクは多く、以下があげられるが主に信用リスクの拡大が要因の軸となる。

1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速

2.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化

3.株価の調整

4.米輸入規制強化並びにそれに対する報復

5.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを見直すなど緩やかに調整が起きているが、景気をクラッシュさせるほどのものにはなっていない。

2.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・極左が台頭することや、Brexitがハードなものになる可能性は2019年以降の重要なリスクの1つである。

中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続がリスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視できない。

4.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動きになりつつある。しかし大統領選挙まで「戦う大統領」のポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決しないだろう。

5.は米国の利上げ継続などで新興国からの資金流出が継続すると、現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。

---≪鉄鋼原料≫---

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ価格は小幅高、原料炭スワップ先物は横這い、鉄鋼製品価格は小幅上昇した。目立った新規手がかり材料に乏しく、方向感に欠ける展開が続いている。

鉄鉱石価格は現状水準で推移すると考える。季節的に中国の生産が減少、輸入が増加する時期に当たること、鉄鉱石在庫日数の低下、米国の制裁を受けて中国政府は国内鉄鋼製品需要を刺激する政策を採らざるを得なくなる可能性が高いこと、冬場の鉄鋼生産抑制継続による鉄鋼製品価格の高止まりが、投機的な観点での鉄鉱石買いを誘うと考えられること、冬場の鉄鋼製品減産が需給面で鉄鋼製品価格を下支えすると予想されることが背景(詳しくは2018年10月31日付のMRA'sEyeをご参照ください)。

11月の中国鉄鋼PMIは45.2(前月52.1)と大幅に減速した。特に新規受注が35.4(52.3)と急落、完成品在庫も58.8(42.3)、原材料在庫も54.8(54.2)と大きく積み上がった。

より注目すべきは輸出向け新規受注の落ち込みが47.3→43.2にとどまっている一方で、全体では52.3→35.4となっていることだ。このことは中国国内の鉄鋼需要が減少していることを意味し、鉄鋼製品価格の下落要因となる。当然、鉄鉱石価格にもマイナスに作用するだろう。

こうした国内の減速による、景況感の悪化、とくに中小企業の景況感悪化を回避するために中国政府は何らかの経済対策(インフラ投資)を実施するとみられる。

ただし、同時に地方政府の財政状況も厳しく、バブルを誘発するほどの公共投資も実施できないため、鉄鋼製品、鉄鉱石価格の下支え要因にはなるが、価格を大きく押し上げるほどの効果はないと見る。

なお、米中貿易戦争がどのように決着するか、現時点で誰も見通すことはできないが、恐らく米国は「中国が西側の仕組みに組み入れられることを承諾します」というまで継続すると予想する。

しかし、中国はアフリカなどの今後成長が見込める新興国を囲い込み、毛沢東が中国を農村から掌握していった戦略と同様の戦略を推し進め、数の力で米国の思惑を挫く戦略を採用するとみられ、いずれも時間との戦いになる。

そして、それほど短期決戦にはならないと考えられるため、比較的長い間景気にマイナスに作用することになるため、非鉄金属を始めとする景気循環系商品価格の下押し要因となるだろう。

そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益は、年初来ベースで前年比+13.6%の5兆5,212億元(1-9月期+14.7%の4兆9,713億元)、10月は+3.6%の5,480億元(前月+4.1%の5,455億元)と大幅に伸びが減速している。構造的・循環的な景気減速に加え、米国の制裁の影響が徐々に顕在化していることの証左であろう。

結局、工業金属の最大消費国である中国への制裁は緩和はすれども継続する見込みであるため、工業金属需要にとってマイナスに作用することは避けえない。

中国最大の鉄鋼生産地区である河北省の高炉稼働率は、現在74.6%と過去5年平均の83.1%を下回っている。しかし、強制的に生産削減となった昨年の58.1%よりかなり高い水準を維持している。

今後、昨年と同様、生産抑制される見込みであるため、鉄鋼製品価格は冬場、高い水準を維持することになるのではないか。

鉄鋼製品在庫が前週比▲12.9万トンの794.3万トン(過去5年平均947.7万トン)であり鉄鋼製品価格は例年よりも高い水準を維持しそうだ。

鉄鋼製品が高止まりするため、鉄鉱石に関しても、冬場に向けた国内生産の減速時期に突入していることから、季節的に鉄鉱石価格は高止まりするだろう。

直近の統計では、鉄鉱石在庫が前週比+90万トンの1億3,710万トン、(過去5年平均1億706万トン)、在庫日数は前週比+0.2日の30.6日(過去5年平均30.6日)と、例年の水準まで低下している。粗鋼生産が駆け込み前の増産で増加したことが影響したためだが、在庫水準の低下は価格を下支えするだろう。

長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は2030年頃まで続く事、2021年からインドが人口ボーナス期に入ることから構造的な需要増加はまだ継続すると見ており、強気である。

なお、アジア開発銀行は2016年~2030年のアジアのインフラ投資規模は26兆ドル(3,000兆円、年間1兆7,000億円)に達すると試算している。

一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとなった。

また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,069億元と大幅に積み増しされており、中国が軍事的に周辺国を支配しようとしているのは明らかである。

恐らく、市場が期待していたほどのペースで一帯一路政策が進行することはないだろう。そんな中、10月の米中首脳会議で安倍首相は透明性を高めることなどを前提に、一帯一路構想への協力を約束した。

中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を欲しがっている、とも考えられる。軍事衝突を回避しつつ、中国をたたく戦略を採用している米国がこれを看過するかは疑問である。

上昇リスクについては、以下のようなものが考えられる。

1.中国の財政出動並びに住宅価格上昇容認

2.一帯一路構想が市場予想を上回るペースで実施される場合

3.米国のインフラ投資計画が実際に実施される場合

1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内需刺激しかなくなっており、固定資産投資も公的セクターが伸びるなど、実際に行動に移し始めている。ただ、景気が過熱するほどの緩和策や景気刺激策は取られない、というのが現在のメインシナリオだ。

2.はそのプロジェクトの質(たち)の悪さから導入を見送る国が増えており、中国自体の資金繰りの問題もあって以前ほど高いリスクではない。

3.は民主党が選挙で下院の過半数を占めたことから実施の可能性が後退した。しかしそもそも民主党は大きい政府を標榜しているため、部分的に実施される可能性はある。

下落リスクは信用リスク系のものが多いが以下が主なところだ。

1.中国の住宅バブル崩壊

2.中国のインフラ投資が財政悪化で規模が期待ほどにはならない場合

3.何らかの理由で北朝鮮に対する制裁が解除され、原料炭価格が下落する場合

4.地政学的リスクの顕在化

5.米輸入規制強化並びにそれに対する報復

6.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

4.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・極左が台頭することや、Brexitがハードなものになる可能性は2019年以降の重要なリスクの1つである。

中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続がリスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視できない。

5.は常識的な落としどころを探る動きになる、とみていたが結局、米中の貿易戦争は開戦となった(その他の地域に対する関税引き上げはこれとは別に存在)。

関税引き上げは消費税引き上げのような緊縮財政と同様の経済効果をもたらすため、景気には明らかにマイナスだ。今のところ、中間選挙を睨んだ対策であるため、目に見える効果が上がらない限りは解除はしないだろう。

結果、中国国内の鉄鋼製品価格を押し下げ鉄鉱石価格の押し下げ要因となるだろう。

6.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。

---≪貴金属≫---

金価格は下落した。実質金利が低下したものの、米利上げ実施や株価の下落を受けてドルがリスク回避的に物色されたこと、イタリアの財政問題への懸念が後退したことが安全資産需要を後退させたため。

パラジウムは引き続き、足元の需給タイト化を映じて堅調な推移となっている。

金価格は再び上昇余地を探る動きになると考える。依然、Brexitがハードなものになる懸念が強まっていること、米国の中国制裁は本気である可能性が高く、長期化懸念が強まっていることが価格を押し上げると考える。

また、こうした一連の政策や循環的な景気の減速を受けて米国の利上げが想定よりも早く打ち止めになるのではないか、との見方も金融面で価格を下支えしよう(ただし足元は原油価格の下落がこれを相殺)。

英国は予定されていた議会の採決を延期した。延期してEU案に反対している勢力の説得に回ると考えられるが、今の状況だととてもEU合意案が通るとは思えない。

EUは再交渉には応じないとしているが、これはEU司法が判断したように「EUの承認を得ない、英国のEU離脱取りやめ」が最も被害が少ない選択なのではないだろうか。

しかし、メイ首相がそれを否定している上、国民投票の実施も否定していることから、どちらに転ぶかわからないが、メイ首相の不信任案を可決し、解散、総選挙、国民投票再度実施、という流れになるのではないか。

一番現実的な解は、「とりあえずBrexitの期限を延期する」であるが、足元の報道ではこちらに向けて一時的に英国に対する規制を緩和するなどの案が検討されているようだ。

なお、金価格は、地政学がフルに影響すれば1,400ドル程度までの上昇はあると考えていたが、現在の実質金利水準や、過去の実質金利からの乖離(いわゆるリスクプレミアム)を考えると、あと50ドル程度しかリスクプレミアム分の上昇余地はなさそうだ(詳しくは2018年10月18日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

なお、地政学的リスクの影響がないとすれば、実質金利で説明可能な水準である1,050ドル程度までの下落はあると考える。

銀は、Silver Instituteなどの分析では供給の減少と電気製品向けの需要増加で供給不足になっていると指摘されているが、それよりは金価格動向や貿易戦争の影響が強く意識され、対金で軟調な推移となっている。

今後についても金価格が軟調に推移することから水準を切り下げる動きになると考える。現在の金銀レシオは80に大きなチャートポイントが重なり、底堅い推移となりつつ過去最高水準を維持している。

足元、COMEXの金銀在庫レシオの金銀レシオに対する説明力が高いが、足元でも金銀在庫レシオは高い水準を維持している。記録的な水準まで積み上がった銀の取引所在庫の影響で、しばらくはこの80越えの水準を維持するだろう(詳しくは2018年10月19日付のMRA'sEyeをご参照ください)。

金銀レシオが80である前提であれば、地政学的リスクがフルに影響して1,300ドルになった場合、リスクプレミアムがはげ落ちて1,150ドルまで下落した場合に対応する銀価格は、16.25ドル、14.4ドルとなる。

金銀レシオが鉱工業生産などから説明可能な、長期の平均的な水準である74程度であれば、17.6ドル、15.5ドルとなる。

短期的な価格動向を占う上で参考になる投機筋の売買動向は、12月11日時点で金のロングが▲3,419枚の169,600枚、ショートが▲14,917枚の109,101枚、銀のロングが+1,822枚の71,136枚、ショートが▲10,069枚の59,880枚となっている。

先週から様子が変わり、金はロングが減少、ショートがそれ以上に減少、銀はロングが増加、ショートが減少している。

PGM価格は金銀価格が上昇するため同様に上昇するとみるが、米中貿易戦争がやはりこれから激しくなるとの見方から景気循環系商品が売られる流れを受けて、対金銀での割安感が強まる展開になると予想する。

ただし、パラジウムは既にリースレートが30%を超えており、実際の需給が非常にタイトであることを示している。景気の減速が明確にならない限り、しばらくは供給面が強く意識され、価格は高止まりするだろう。

米国の11月の自動車販売は1,740万台(市場予想1,720万台、前月1,750万台)と再び減速した。駆け込み需要の剥落や長期金利の上昇(足元は下落)が影響したとみられる。

11月の米消費者信頼感は135.7と引き続き高い水準を維持、6ヵ月以内に自動車を購入すると答えた人の比率も13.8と前月の14.0から小幅に低下している。自動車関税引き上げ前の駆け込み需要の剥落の影響だろう。

FRBの利上げも継続する見込みであり、自動車メーカーのディーラー向けのインセンティブ負担も重くなることが予想され、自動車関税引き上げが宣言通り実施されるのであれば、自動車販売は減速する可能性が高く、PGM価格を下押しすると予想される。

中国の10月の自動車販売(工場出荷台数)は前年比▲11.7%の238万台(前月▲11.55%の239万4,100台、前々月▲3.75%の210万3,400台、前々々月▲4.02%の188万9,100台)と4ヵ月連続でマイナス成長となり、同国の耐久財需要が減少していることが伺える。

弊社は需給面の見通しに関しWPICの見通しを参考にしているが、直近の見通しでは2018年のプラチナの需給は50万5,000オンスの供給過剰と、前回発表の29万5,000オンスから供給過剰幅が引き上げられた。2019年についても45万5,000オンスの供給過剰が見込まれている。

2019年の自動車向けの触媒需要は前年比▲40万オンスとなる一方、供給は、南アフリカ(+5.5万オンス)、北米(+4.5万オンス)の増産がロシアの減産(▲2万オンス)を相殺、供給が+13万オンスとなることで需給の緩和感が強まる見込み。

この結果、地上在庫は312万オンス(2018年266万5,000オンス))に増加する見込みで、在庫日数も146.8日(128.4日)と増加見込みであり、在庫の顕著な増加が価格上昇を抑制することになろう。

なお、南アフリカのPGM生産指数は9月時点で108.00(季節調整前)と過去5年平均を回復した。今の需要動向をみるとよりプラチナ需給が緩和し、パラジウムの供給は不十分で両者のスプレッドは、需給面からまた拡大する可能性が出ている。

12月11日現在、CFTCのプラチナポジションはロングが+2,249枚の48,259枚、ショートが+5,884枚の37,268枚、パラジウムはロングが▲941枚の17,777枚、ショートが▲215枚の3,532枚となっている。

---≪農産品≫---

シカゴ穀物市場は下落した。目立った手がかり材料に乏しい中、FOMC後にリスク回避的にドル高が進行したことが材料となった

穀物価格は引き続き、現状の水準でもみ合うものと見ている。米中の対立解消には相当の時間がかかるだろうとの見方が強まっていること、Brexit懸念を受けてドル高圧力が高まっていることが背景。

中国が米国から再び大豆を購入したと報じられていたが、米中首脳会談の結果や北半球と南半球の季節の違いに加え、シカゴ大豆が割安になったことが背景。結局、これ以上中国は米国以外の国からの調達シェアを引き上げる余地はないため、シカゴ大豆は下支えされるだろう。

12月の米需給報告では、トウモロコシの在庫見通しが17億8,100万ブッシェル(市場予想17億4,400万ブッシェル、前月17億3,600万ブッシェル)、大豆が9億5,500万ブッシェル(9億4,400万ブッシェル、9億5,500万ブッシェル)、小麦が9億7,400万ブッシェル(9億6,500万ブッシェル、9億4,900万ブッシェル)と、総じて在庫は市場予想を上回っている。

12月11日付のCFTC投機筋ポジションは、トウモロコシのロングが+11,788枚の404,390枚、ショートが▲36,193枚の232,680枚、大豆のロングが▲10.077枚の144,809枚、ショートが▲7,057枚の138,878枚、小麦のロングが+1,243枚の137,470枚、ショートが▲2,509枚の135,810枚となっている。

ポストハーベストプレッシャーの買戻しでショートが減少する中で、価格が下支えされている。

◆本日のMRA's Eye


「市場価格と価格交渉」

先日、日経新聞に以下の様な記事が掲載されていた。有料記事であるため購読していない方のために簡単に概要を説明すると、樹脂メーカーが値上げを行おうとしたものの、足元の原油価格急落を受けて、ナフサの価格が下落し、値上げを消費者側が飲まなかった、という内容だ。

こういった動きは樹脂に限らず、多くの原料や製品で起きている。価格リスクを議論するときに、「かかったコストは最終消費者に転嫁する」のが最も分かりやすく、効果が大きい手法の1つであるが、実際に企業決算を見ると、必ずしも価格転嫁が十分にできているわけではない。それはこの日経新聞の記事が解説している通りである。

つまり調達した原材料価格の原価が高くても、価格転嫁のタイミングがずれることによって、100%の価格転嫁ができなくなる(場合によると値上がり分を回収することなく、販売価格が値下がりすることもあり得る)。

また、取り扱う商品によって異なるが、商品価格は市場で決定される「市場価格」に販売者側の利益(スプレッド)を乗せて決定されるが、このニュースは「市場価格が上昇したので、その値上げを価格に転嫁するように要求したところ、足元の価格が下落しているので拒否された」ということなのだが、市場価格は基本、生産者や消費者の努力でどうにかなるものではない。それを交渉で決めようとしてもなかなか決まるものではない。

本件に関して業界の方からは、「輸入平均価格と参照月がずれているので、足元の原油価格の上下を反映できないから、交渉するしかない」という意見を頂いた。

つまり、上記に加えて参照している指標が特殊な指標(該当する月に輸入している原油やナフサの通関統計の平均値)であり、それを参照する月も異なるので、交渉が必須、ということである。それは現時点においてはその通りだろう。

このリスクを回避しようとした場合、これらの指標を数式化し、(フォーミュラ化し)を売り手と買い手の間で合意する必要がある。少なくともこうすることで、市場価格の変動(自社の努力でどうにもならない)に伴う価格交渉のリスクを低減させることが可能になるだろう。長年の業界慣行を変更することは容易ではないが、取り組む意義はあると考えられる。

そしてこの場合、価格変動リスクは最終消費者が取ることになるが、通関統計値などの「市場でリスクマネジメントができない指標」を用いて数式化しても、最終消費者は何らかのリスクを取らなければこの価格リスクを先物やデリバティブでヘッジすることができなくなる。

そのためフォーミュラ化を行うならば、できる限り市場でリスクヘッジが可能な指標を用いるべきである。自身で主体的に先物取引やデリバティブを使ってリスクマネジメントができる、ということは大きなメリットだ。こうすることで現物調達とは関係なく、値決めが可能になるためだ。

もちろん、通関統計をベースとした価格体系であっても、一定のリスク(ベーシスリスク)を取れば、一定のヘッジ効果は得られる。

このように、業界慣行的に複雑な値決めの体系が維持されている、あるいはシンプルにしているようでもリスクマネジメントが不可能な価格で販売されている(電気はその典型)ことは多い。市場リスクにさらされない体制を確保するには、まずこうしたフォーミュラの調整が必要ではないだろうか。

◆主要ニュース


・11月日本貿易収支季節調整前 ▲7,373億円の赤字(前月4,501億円の赤字)
 輸出 前年比+0.1%の6兆9,276億円(+8.2%の7兆2,439億円)
 輸入+12.5%の7兆6,649億円(+19.9%の7兆6,940億円)

 米国向け
 輸出 前年比+1.6%の1兆3,905億円(+11.6%の1兆4,299億円)
 輸入+8.1%の7,671億円(+34.3%の8,566億円)

 欧州向け
 輸出+3.9%の7,452億円(+7.7%の8,113億円)
 輸入+15.1%の8,834億円(+10.0%の8,843億円)

 アジア向け
 輸出▲1.9%の3兆8,187億円(+7.3%の3兆9,816億円)
 輸入+5.6%の3兆6,528億円(+17.2%の3兆7,577億円)

 中国向け
 輸出+0.4%の1兆3,844億円(+9.0%の1兆4,756億円)
 輸入+4.2%の1兆8,875億円(+16.1%の1兆8,817億円)

・11月独生産者物価指数 前月比+0.1%(前月+0.3%)、前年比+3.3%(+3.3%)

・10月ユーロ圏建設業生産高 前月比▲1.6%(前月改定+2.0%)、前年比+1.8%(+4.6%)

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 ▲5.8%(前週+1.6%)
 購入指数▲6.8%(+2.5%)
 借換指数▲2.3%(+1.8%)
 固定金利30年 4.94 %(4.96%)、15年 4.37%(4.41%)

・11月米中古住宅販売 前月比+1.9%の532万戸(前月+1.4%の522万戸)

・FOMC経済予測、2018年(前回予想)/2019年(前回予想)/2020年(前回予想)

 実質GDP予測中央値
 3.0-3.1%(3.0-3.2%)/2.3-2.5%(2.4-2.7%)/1.8-2.0%(1.8-2.1%)

 失業率中央値
 3.7%(3.7%)/3.5-3.7%(3.4-3.6%)/3.5-3.8%(3.4-3.8%)

 PCE価格指数
 1.8-1.9%(2.0-2.1%)/1.8-2.1%(2.0-2.2%)/2.0-2.1%(2.1-2.2%)

 PCEコア指数
 1.8-1.9%(1.9-2.0%)/1.9-2.2%(2.0-2.1%)/2.0-2.2%(2.1-2.2%)

 政策金利予想中央値
 2.375%(2.375%)/2.875%(3.125%)/3.125%(3.375%)

・FOMC、政策金利であるFFレートの誘導目標を2.25%~2.50%に25bp引き上げ。

・FOMC声明要旨、「中長期的なインフレ基調は変わっていない。FF金利をさらに漸進的に引き上げ得ることが適切と判断。」来年の利上げ予想は2回に減少。

・中国人民銀行、小規模・零細企業への融資拡大に意欲的な銀行を対象に、最長3年間、低金利の資金を供給する。

・EU、イタリアへの制裁を見送り。

・EU、英国が無秩序な離脱になった場合でも、金融取引の清算業務を英国内で継続させ、航空便や物流規制を現状に据え置くなどの一時策を検討中。

・カナダ人、また中国で拘束の可能性。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油▲0.5MB(クッシング+1.1MB)
 ガソリン+1.8MB
 ディスティレート▲4.2MB
 稼働率+0.3%

 原油・石油製品輸出 8,339KBD(前週比+152KBD)
 原油輸出 2,561KBD(+89KBD)
 ガソリン輸出 1,080KBD(+15KBD)
 ディスティレート輸出 1,456KBD(+51KBD)
 レジデュアル輸出 280KBD(+18KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 925KBD(▲44KBD)
 その他石油製品輸出 1,834KBD(+24KBD)。

・サウジ ファリハ石油相、「OPECプラスは来年も減産を続けると確信。」

・米国、シリアから軍の撤退を開始。イスラム国の掃討にめどが立ったとして。

【メタル】
・特になし。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +6.89%/ ▲20.09%
2.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +3.73%/ ▲12.48%
3.CME木材 ( その他農産品 )/ +3.29%/ ▲25.00%
4.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +2.61%/ +19.16%
5.DME Oman ( エネルギー )/ +2.52%/ ▲11.50%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲3.48%/ ▲15.50%
67.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲3.02%/ +26.04%
66.TCM灯油 ( エネルギー )/ ▲3.02%/ ▲12.11%
65.CBT小麦 ( 穀物 )/ ▲1.92%/ +22.37%
64.S&P500 ( 株式 )/ ▲1.79%/ ▲6.47%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :23,386.51(▲289.13)
S&P500 :2,500.52(▲45.64)
日経平均株価 :20,987.92(▲127.53)
ドル円 :112.60(+0.08)
ユーロ円 :128.08(+0.25)
米10年債利回り :2.77(▲0.04)
独10年債利回り :0.24(▲0.01)
日10年債利回り :0.04(+0.01)
中国10年債利回り :3.35(▲0.03)
ビットコイン :3,726.14(+190.96)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :25.17(+0.28)
エネルギー :46.66(▲0.07)
ベースメタル :18.26(▲0.1)
貴金属 :15.40(▲0.13)
穀物 :15.01(+0.44)
その他農畜産品 :26.08(+0.65)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :51.86(▲2.38)
Brent :43.40(▲0.45)
米天然ガス :81.45(+4.86)
米ガソリン :49.98(▲2.74)
ICEガスオイル :41.39(+0.31)
LME銅 :14.80(+0.24)
LMEアルミニウム :14.75(▲0.22)
金 :15.52(+0.24)
プラチナ :16.74(▲0.26)
トウモロコシ :12.62(+0.7)
大豆 :15.52(+0.24)

【エネルギー】
WTI :47.20(+0.96)
Brent :56.57(+0.31)
Oman :56.62(+1.39)
米ガソリン :136.97(+1.92)
米灯油 :179.66(+4.27)
ICEガスオイル :534.50(+4.25)
米天然ガス :3.72(▲0.12)
英天然ガス :67.24(+1.71)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :56.57(+0.31)
SPO380cst :339.71(+12.58)
SPOケロシン :71.29(+1.44)
SPOガスオイル :69.33(+1.54)
ICE ガスオイル :71.74(+0.57)
NYMEX灯油 :178.69(+1.66)

【貴金属】
金 :1242.25(▲7.17)
銀 :14.58(▲0.06)
プラチナ :786.15(▲4.70)
パラジウム :1257.32(+6.07)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,013(▲57:26C)
亜鉛 :2,535(+3:61.5B)
鉛 :1,953(+12:11C)
アルミニウム :1,929(▲13:1C)
ニッケル :10,855(▲115:80C)
錫 :19,185(▲65:75B)
コバルト :55,000(▲2,000)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6065.00(+109.00)
亜鉛 :2545.50(+32.00)
鉛 :1956.50(▲1.50)
アルミニウム :1908.00(▲18.50)
ニッケル :10980.00(+140.00)
錫 :19305.00(+165.00)
バルチック海運指数 :1,395.00(▲11.00)
※C=Cash2M コンタンゴ、B=Cash2M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :68.86(+0.18)
NYMEX鉄鉱石 :68.69(+0.20)
NYMEX原料炭スワップ先物 :226(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,769(+17)
上海鉄筋中心限月 :3,431(+13)
米鉄スクラップ :390(±0.0)

【農産物】
大豆 :900.00(▲7.75)
シカゴ大豆ミール :307.80(▲2.60)
シカゴ大豆油 :28.46(+0.05)
マレーシア パーム油 :2139.00(+77.00)
シカゴ とうもろこし :381.75(▲3.75)
シカゴ小麦 :522.50(▲10.25)
シンガポールゴム :144.20(▲0.30)
上海ゴム :11055.00(▲80.00)
砂糖 :12.47(+0.17)
アラビカ :100.85(+6.50)
ロブスタ :1477.00(+19.00)
綿花 :76.71(▲1.14)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :62.70(+0.05)
シカゴ生牛 :119.73(▲0.05)
シカゴ飼育牛 :146.20(±0.0)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。