パンデミック懸念高まり総じて軟調
- MRA商品市場レポート for PRO
2020年2月27日 第1694号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「パンデミック懸念高まり総じて軟調」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は、パラジウムやその他農産品、穀物などの供給側の理由で需給がタイトな商品と、非景気循環銘柄が物色される流れとなった。
新型コロナウイルスの影響が世界的に拡大しており、パンデミック懸念が強まり、世界同時景気後退への懸念が強まったため。
海外の対応は日本の対応よりも苛烈であり、イタリアは感染者が出た地域を封鎖するといった対応を行っている。イタリアはペストが流行した時に、疫病が船でやってくることを経験しており、この類の検疫に対しては一日の長がある。
米国も、「ゴッド・ファーザー」でビトー・コルレオーネがシシリー島からニューヨークに上陸する際、天然痘の疑いで隔離されるシーンがあるが、海外からの渡航者に対する隔離措置を行うことを当たり前に行ってきたし、疫病が国家運営を揺るがすリスクになるとの認識があったといえる。
実際、米国はまだ感染拡大期ではないが、ペンス副大統領が新型コロナウイルス対策の責任者に指名された。米国は「本気」ということだ(もちろん背景には感染防止に失敗した場合、選挙戦に不利になるからということもあるからであるが)。
このような背景もあり、世界的には今回のウイルス対策に対して、より厳しい措置を取るのがスタンダードになると予想され、短期的な景気への下押し圧力の強まりは回避できない見込み。
PCR検査も積極的に行われると考えられ、今後、中国以外の感染者数は増加することが予想される。結果、景気循環銘柄価格には、下押し圧力が掛かる展開になると見ている。
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【本日の価格見通し総括】
本日も新型コロナウイルス関連情報が市場動向を左右すると考えるが、パンデミックへの懸念が強まる中、終息観測が強まっている中国以外の地域での感染拡大状況が注目され、総じて景気循環系商品が売られる流れが続くことになるだろう。
本日は米GDP改定値(市場予想 前期比年率+2.1%、速報比変わらず)、米個人消費(市場予想 前期比+1.7%、速報+1.8%)、米コア資本財受注(市場予想 前月比+0.1%、▲0.8%)と比較的強めの内容になると見られるが、ウイルス問題の方が材料視されているため、大きく価格を動かすことにはならないと見る。
【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】
連日、コロナウイルスの影響拡大が市場のテーマとなっているが、この数日、欧州での感染例が増加している。やはり、中国の春節中か、それより前に移動した中国滞在者の移動が、感染を拡大させたと考えられる。
その中でも特に感染拡大を強く懸念しているのは、欧州である。欧州はヒトとモノの移動を制限しない「シェンゲン協定」を結んでいるため、基本的に国境が存在しないため、コロナウイルスの拡大に歯止めが掛からない可能性があるためだ。
シェンゲン協定の第26条には例外的な状況の場合に、同協定に参加する加盟国で最長2年間、国境での入国審査の再導入ができることになっているため、この条項を適用すればウイルスの拡大は抑制できるだろうが、報道では今のところシェンゲン協定の停止は検討されていないとされている。
となれば人の移動の制限がない状態が続くため、欧州全域にコロナウイルスが広がる可能性は排除できなくなる。EU加盟国(除くEU)の2018年名目GDPは159兆ドルと、米国に次ぐ2位でありこの地域の経済が停止した場合、そのリスクは無視できない。
また、米疾病対策センター(CDC)は、米国内での感染拡大は時間の問題であると発言しており、仮に米国も同様の状態となれば世界経済が「同時に」停止するリスクが高まる。もしこうなった場合、これは「影響拡大に時間がかかるリーマンショック」といえるだろう。
リーマンショックは瞬時に世界全体にリスクを波及させ、それに対して対応しきれなかった企業が多数破綻した。今回のケースはリーマンショックとは異なるが、その影響はじわじわと広がっていくことになると予想される。リーマンショックと東日本大震災が同時に世界的に発生している、という印象である。
一刻も早く現状を把握し、資金繰りや失業時の補償の拡充などの対策を打たねば、取返しが付かないことになる、ということを強く意識するべきだろう。
国内ではPCR検査が十分に行われていない。制度やキャパシティに問題があるとされているが、リスクマネジメントのためには現状を把握することは必要条件である。
検査の精度に問題があるとしても、その誤差を考慮してどの程度の人に感染の疑いがあり、どのように感染、発症し、治癒していくのかのデータを収集することは、今後の対策を立案する上でも重要だ。
データ収集が終わっており、感染後どのような治療や投薬をすれば、このようなパスを経て治癒に至る、ということがすでに分かっているインフルエンザなどの感染症と比較するのは、今後の「終息への予想」をする上での参考にはなるが、適切ではないだろう。
「まだはもうなり」とは昔の言葉であるが、「火事になっては保険に入れない」のであり、すでに小火の状態と考えられるが、対応できることは今のうちに行うべきであろう。
【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】
(マクロ要因)
・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。
・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを引き下げ(+3.4%→+3.3%)ている。2021年も3.4%(▲0.1%)に引き下。
ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。
・FRBの利下げに打ち止め感が広がっていたが、新型肺炎の影響であと2回弱の利下げを市場は織り込みつつある(▲50bp程度)。景気の減速が懸念されているため追加利下げは景気循環系商品価格の下支え要因に。
・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。
※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。
・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。
(特殊要因)
・中国の新型肺炎の影響拡大(パンデミックリスクの顕在化)を受けた経済滑動の鈍化(景気循環系商品価格の下落要因)。
・米中通商交渉は部分合意。しかし関税が撤廃されたわけではなく、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護、国有企業への補助金撤廃などを中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。
ただし、新型肺炎の影響で当面は中国の合意不履行は問題視されない可能性が高まった。
・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。
・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。
・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。
・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。
(投機・投資要因)
・米利下げによって、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油市場動向総括】
昨日の原油価格は続落した。前日の大幅下落で買戻しが入り、米石油統計がやや予想比強気な内容だったことから上昇したが、米FDA(食品医薬品局)高官がパンデミックへの懸念を示したことでリスク回避姿勢が強まり、水準を大きく切下げて引けた。
【原油価格見通し】
原油価格は中国の新規感染者数の増加が減少しているものの、中国以外の地区での感染者数拡大を受けてパンデミックへの懸念が台頭、国際的にヒトとモノの移動が制限されつつある中、軟調な推移になると考える。
Brent・WTIとも昨日は期近の下落が顕著で、需要減少に伴う需給緩和観測が強まっている状況。
中国は早期終息を国際的に喧伝している一方、中国以外の国での感染者数が増加していること、米国でも感染拡大が懸念されていることを考えると、やはり終息宣言が出るのは早くても4-5月頃になるのではないか。
唯一、参考になるデータは新規感染者数の推移のみであり、しばらくこれに左右される展開が続くと考えられる。ただし今後はより、中国以外の感染者数の増加に注目する必要がある。
OPECプラスの追加減産に対しては、ロシアが否定的(原油価格は依然、ロシアの予算レートを上回っているため)であり、予算的にも厳しいサウジアラビアが強く望んでいる。
米国の中東撤退方針強化以降、中東へのプレゼンスを高めようとしているロシアが、サウジアラビアに一定の配慮をせざるを得ない状況にあるため、応分の協力はするだろう。恐らく現時点では6月末までの減産期間延長が落しどころになると見ている。
一方、トランプ大統領の中東和平案を受けて、イスラエルとパレスチナの軍事的な衝突は激しさを増している。
ただ、今回の中東和平案は思いつきでやった、というよりも長年の米国のイスラエルに対する政策によって、動かしがたいところまでイスラエルのプレゼンスが上がり、アラブ諸国も経済的に無視できなくなっているため、「反発はするが、果実を得られなければ意味がない」という考えにシフトし始めているのも事実だろう。
イデオロギー的にはアラブ諸国の敗北といえるが、武装集団や反イスラエル勢力がこの状況を看過するとは考え難い。イスラム国がイスラエルに攻撃を仕掛けるとも表明しており、特にシーア派三日月地帯の治安は悪化し、供給懸念が高まっているのも事実だ。
米国は中東原油への依存度が低下しているため、中東政策が「雑」になる傾向があり、中東情勢不安は今まで以上に高まっていると考えるべきである。
米・イラン問題は国同士の衝突リスクは低下したものの、武装勢力による小規模な攻撃は継続している。イランの選挙では反米の保守派が大勝しており、今後、反米機運が高まる可能性が高いことも中東の地政学的リスクを高めることになるだろう。また、新型コロナウイルス関連で米・イランが対立していることも懸念だ。
シリアとリビアに対する関与を強めているトルコの動向も、地政学的リスクを高めるため懸念されるところ。シリアへの介入はイドリブ県のクルド人を巡る対立で、シリアと全面戦争の可能性もある。リビア介入は、イスラエルのガス田からのガス輸送にかかわる権益の問題。
この他、新型コロナウイルスが中東でも拡大しており、政府への対応の不満がさらに高まって、暴動に発展する可能性が出てきた(暴動事態が感染拡大につながるため、感染拡大中は起きないだろうが、終息後に生活困窮で暴動が起きる可能性)。
米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。
FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、新型肺炎の影響で追加利下げの可能性が出てきており、価格に一定の下支え効果をもたらすと見られる。
仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。
米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。
【石炭市場動向総括】
石炭先物市場は小幅に下落した。足元の中国の需要が減速していることと、ピークシーズンであることによる買い圧力が拮抗しているため、レンジワークを続けている。
【石炭価格見通し】
石炭価格は新型肺炎への対策進捗期待が市場参加者のリスク選好を回復させているものの、新型肺炎の影響拡大は継続しており終息までは時間がかかることから、電力需要が鈍化、現状水準でもみ合うものと考える。
実際、中国の石炭輸入需要は減速しており、バルチック海運指数も低水準で推移している。
また、欧州で天然ガス価格の低迷や環境規制の強化に伴う脱石炭の動きが強まっていることも、石炭価格を下押ししよう。
長期的には同様の環境規制の強化が石炭供給を減じるため、価格の押し上げ要因となる。欧州の脱炭素の動きは非常にトリッキーだ。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・OPECプラスは減産期間の延長で協議を行っているようだが、今のところ合意は形成されておらず。
・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。
・世界2位の消費国である中国の輸入増加。12月の貿易統計では、原油の輸入が4,548万トン(前月4,574万トン)と高い水準を維持。
今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。
・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。
・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。
・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。
(特殊要因)
・中国の新型ウイルスの世界的な影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。
・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。
・米国の中東への関与低下や原油価格の下落、新型コロナウイルスの影響拡大に伴う不満爆発で、中東・北アフリカでの暴動発生。特にシーア派三日月地帯とリビアでの発生リスク。
・シリアイドリブ県を巡る、トルコとシリアの武力衝突懸念(中東の不安定化による供給懸念と、難民流入による南欧州の景況感悪化)。
・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。
(投機・投資要因)
・WTI・Brentともロング・ショートの解消が続いた。WTIはショートの増加の反動でショート買戻し圧力が強かったが、Brentはロングの解消圧力の方が強かった。
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
WTIはロングが571,252枚(前週比 ▲5,903枚)ショートが159,488枚(▲20,898枚)ネットロングは411,764枚(+14,995枚)
Brentはロングが377,915枚(前週比▲9,383枚)ショートが95,325枚(▲8,542枚)ネットロングは282,590枚(▲841枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属市場動向総括】
LME非鉄金属価格は総じて軟調な推移となった。新型コロナウイルスが世界的に拡大するとの懸念が強まる中、需要減少への懸念が強まったことが背景。
上海在庫の水準を見ると、そもそも在庫水準が高いニッケル、錫の在庫が減少しているが、その他の在庫は急速に増加しており、中国の需要減少が続いていることが確認されている状況。
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は、中国の新型コロナウイルスの新規感染者数の減少傾向が継続しているものの、中国以外の国の感染者数の拡大報告が続いており、世界的にヒトやモノの移動が制限されるとの見方が強まっていることが、価格を下押しすると考える。
ただ、最大消費国である中国の対策進捗と、工場の再稼働を受けて下値余地も限定されるだろう。
なお、価格が顕著に上昇するには景気への影響が限定されることが必要条件で、さらに中国国内の詳細な情報がもたらされることや、WHOが終息宣言を出すことが必要条件となるが、現在の感染状況を見ると早くても4~5月ではないか。
米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、新型コロナウイルスの影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。
FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、新型肺炎の影響で追加利下げの可能性が出てきており、価格に一定の下支え効果をもたらすと見られる。
仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、非鉄金属セクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。
財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。
中長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。具体的には社会インフラとして「バッテリー」としての需要が高まると予想される、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。
再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・最大消費国である中国の製造業PMIは減速したが、閾値の50を維持。しかし、新型肺炎の影響が統計に表れるのは2月以降であり、さらなる減速の可能性は高い(価格の下落要因。
在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。
・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。
・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。
・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。
中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているため伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。
・12月の中国の銅地金・製品の輸入量は52万7,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準。また、銅鉱石の輸入も192万8,000トンと、過去最高となった前月は下回ったものの、同じ時期の過去5年の最高水準を大きく上回っている。公共投資(電線網整備)などの公的需要が需要を下支えしているとみられ、中国の取引所在庫は過去5年平均を下回っている。
・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)
・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。
・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。
・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。
(特殊要因)
・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。
・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。
・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。
・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。
・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。
・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)
・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。
(投機・投資要因)
・2月21日付のLMEロング・ショートポジションの動向はまちまち。鉛と錫のロングが増加したが、それ以外の金属はロングが減少した。新型コロナウイルスの影響を懸念したものか。
ショートはアルミと錫で減少したが、それ以外では増加。やはり新型コロナウイルスの影響を懸念したもの。
投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲75.1億ドル(前週▲67.5億ドル)と売り越し幅を拡大した。買い越し額の増加率は+11.3%。
買い越し枚数はトン数換算ベースで▲2,141千トン(前週▲1,902千トン)とCME銅を除く全ての金属で売り越し幅を拡大している。ネット売り越しの増加率は+12.6%。
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料市場動向総括】
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅下落、原料炭スワップ先物は変わらず、中国鉄鋼製品先物価格はまちまちだった。
中国の新型肺炎の新規感染者数の減少傾向が買い材料となる一方、世界的な感染者数の拡大、特に欧州への感染拡大が懸念されていることが売り材料となり方向性が出難い。
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は中国の工場が徐々に稼働を始めたこと、Valeの生産調整、Rio Tintoの減産見通しの影響、中国政府の景気刺激策への期待が価格を押し上げるものの、コロナウイルスの影響が世界的に拡大していることが上値を抑えるため、現状水準での推移が続くと考える。
中国河北省の高炉稼働率は2月21日時点で72.9%(前週73.6%)と再び減速した。通常、高炉は再稼働時のコストがかかるため、稼働している高炉は稼働させ続けることが前提であるが、その中で稼働の調整が行われているようだ。
米中の通商合意は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る対立を見るに、まだ両国関係は鉄鉱石価格の波乱要因になると見る。
ただ、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。
また、冬場の鉄鉱石価格は季節的には強含みやすいものの、冬場の鉄鋼製品生産規制により鉄鋼向け需要が減速するため(短期的には鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鉱石価格の上昇要因となる)、今年は例年よりは低い水準での推移になるのではないか。
なお、Valeは生産計画を下方修正したが、それでも2020年は同社の生産が本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。
原料炭は新型肺炎の影響に加え、鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格中期見通しはやや強気である。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・直近の中国鉄鋼業PMIは47.1(前月43.1)と回復した。生産活動の回復(44.1→46.7)と、新規受注の回復(36.2→46.8)が影響した。
しかし、そもそも水準が閾値の50を下回っており、原材料在庫の水準も51.1(前月48.9)と閾値の50を上回っていることを考えると、そこまで鉄鋼セクターの業況が良い、というわけではない。
・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。
・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。
・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。
中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。
12月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は468万トン(前月458万トン)と過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。
また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に減速し、277.2万トン(前月2,078.1万トン)となった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入減少である。
今後に関しては輸入規制が導入されると見られる、石炭の国内生産も11月時点で3億3,406万トンと過去5年の最高水準を大きく上回っている。このことから、今後も輸入は減少すると予想される。
・中国の12月の鉄鉱石の輸入量は加速し、1億130万トン(前月9,065万トン)と高い水準を維持した。一方で、今年の鉄鉱石生産は3月以降漸増しており、11月は7,924.5万トンに達している。
中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲205万トンの1億2,860万トン(過去5年平均1億2,438万トン)、在庫日数は▲0.4日の26.3日(過去5年平均 29.7日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られる。
・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+278.8万トンの2,161.2万トン(過去5年平均1,452.1万トン)とコロナウイルスの影響で工場の稼働が低迷しているためか、急速に増加している。
なお、12月の鉄鋼製品の輸出は468万トン(前月458万トン)と過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。
・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。
(特殊要因)
・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。
・中国政府の経済対策(金融緩和や公共投資など)は価格の上昇要因。
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。
(投機・投資要因)
・特になし。
---≪貴金属≫---
【貴金属市場動向総括】
金価格は株価動向を受けて米長期金利が乱高下したことでもみ合ったが、結局前日比プラスで引けた。銀価格は小幅上昇。
昨日の金のリスクプレミアムは242ドルで前日から▲1ドル低下しているがほぼ状況は変わらず(毎日回帰分析を行っているため、前日の数字も変化している点にはご注意ください)。
PGMはパラジウムが一転売られたが、需給がタイトなパラジウムは堅調な推移を続けている。
【貴金属価格見通し】
金価格は新型コロナウイルスが中国では沈静化傾向となっているものの、世界的に影響が拡大していること、米国では強烈な社会主義者のサンダース議員が大統領候補となる可能性が高いことが株価を押し下げるため、実質金利の低下を通じて金価格を押し上げ、高値圏での推移が続くと考える。
コロナウイルス関連ニュースが日々の報道の大半を占める中、あまりニュースになっていないが中東ではシリアとトルコの全面衝突の可能性が高まっていることや、コロナウイルスの影響が中東にも及び、国民の不安や不満が高まる可能性があること、米中東和平案を受けてイスラエル・パレスチナの対立が深まっていることから、金のリスクプレミアムには上昇圧力が掛かると見られる。
仮に地政学的リスクが完全に解消した場合、リスクプレミアムがはげ落ちる形で金価格は下落することになる。現在のプレミアムは250ドル程度であり、実力ベースでは金価格は1,400ドル程度と考えられる。実質金利の低下で、金のベース価格は切り上がっている。
ただ実際は過去の実質金利からの乖離幅は平均で160ドル程度であるため(リスクが完全になくなることはあまりない)、リスクが回避された場合の下落余地は1,560ドル程度となる。
なお、米中合意は第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は金銀価格の上昇リスクとなる可能性がある。
ただ、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。
銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は再び上昇を始めている。金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられ、20ドル前後まで価格が上昇してもおかしくない。
特にリスク回避姿勢が強まり金が割高となる局面では、割安な銀が投機的な観点から物色される可能性は高かろう。
PGM価格は金銀価格が高値圏を維持する見込みであることから同様に高値を維持すると考えるが、新型肺炎が世界的に拡大していることや、米大統領選挙への不透明感が強まっていることが株価の重石となっているため、対金銀で割安に推移しよう。
パラジウムは供給懸念が強く意識されているため、下落余地も限定されると考える。
中国・世界の自動車販売は前年比マイナスが続いているが、徐々に前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていることから、需要面で価格を押し上げる可能性は高い。
1月の米自動車販売は1,684万台(市場予想 1,677万台、前月 1,670万台)と利下げの影響もあり回復している。今後、米国政府が宣言通り中間所得者層向けの減税が実施できるか、長期金利上昇を抑制できるかに注目が集まろう。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・市場はFRBの年2回の利下げをすでに織り込んでいる状況。
ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に向け、各国政府に働きかけを強めることになるだろう(これは中央銀行の権限外であるが)。
・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。
・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。
パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、
(特殊要因)
・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、安全資産需要の高まり。
・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発で、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。
・米中通商交渉が部分合意したが、第二弾合意は中国側にメリット少なく、むしろ今後は状況が悪化する可能性の方が高いか。この場合安全資産需要増加で価格の上昇要因。
・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立が激化しており、全面衝突の可能性も出てきていることは金の安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。
・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。
(投機・投資要因)
・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。
・金はロングが増加、ショートが小幅に増加。銀もロングが増加、ショートが小幅に増加している。新型肺炎の影響に伴う低金利政策の継続観測が価格を押し上げている状況。
PGMはプラチナがロング・ショートとも増加したが、ショートの増加が大きく、パラジウムはロングが減少、ショートが増加して明確に弱気なポジション取りに。
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが408,349枚(前週比 +51,814枚)、ショートが54,700枚(+6,139枚)、ネットロングは353,649枚(+45,675枚)、銀が107,940枚(+11,545枚)、ショートが30,063枚(+1,305枚)、ネットロングは77,877枚(+10,240枚)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
プラチナはロングが72,059枚(前週比 +321枚)ショートが10,444枚(+546枚)、ネットロングは61,615枚(▲225枚)
パラジウムが10,513枚(▲90枚)、ショートが5,518枚(+80枚)ネットロングは4,995枚(▲170枚)
---≪農産品≫---
【穀物市場動向総括】
シカゴ穀物市場は小動き、ドル高の進行や新型コロナウイルスの影響拡大が価格を下押ししたものの、コロナウイルスの影響の判断は難しく方向感が出難い状態が続いている。
【穀物価格見通し】
シカゴ穀物価格はコロナウイルスの感染拡大を受けて軟調な推移になると考えるが、必需品であること、株が調整する中では安全資産としての需要が高まることから下落余地も限定されると考える。
新型コロナウイルスの影響は世界各地で五月雨式に発生しており、影響の評価が非常に難しい。
ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシの受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、大豆も過去5年平均を大幅に上回っている。
しかし、小麦は豪州火災や干ばつ、ロシア・ウクライナの悪天候の影響で供給に懸念が出ていること、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、上昇圧力が掛かりやすい展開が予想されるが、最終的には帳尻が合いやすい(世界各地で生産されているため)。
今後の市場の注目は大豆、トウモロコシの作付け意向面積。米農務省の予想では、トウモロコシが9,400万エーカー(2019年 8,970万エーカー)、大豆は8,500万エーカー(7,610万エーカー)、小麦が4,500万エーカー(4,520万エーカー)と、トウモロコシの作付けが増加すると見られている。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・2月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9,200万Bu(前月136億9,200万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億5,800万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)
・2月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ18億9,200万Bu(市場予想18億7,972万Bu、前月18億9,200万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億4,832万Bu、4億7,500万Bu)小麦 9億4,000万Bu(9億5,888万Bu、9億6,500万Bu)
・12月末の四半期在庫トウモロコシ 113億8,900万Bu(市場予想114億7,171万Bu、前月22億2,100万Bu)大豆 35億5,200万Bu(31億9,033万Bu、9億900万Bu)小麦 183億4,000万Bu(190億300万Bu、23億4,600万Bu)
(特殊要因)
・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。
・米中通商交渉は部分合意、シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、二次合意も難しく中国の合意不履行を材料に両国関係が再び悪化する可能性も考えられ、シカゴ定期の下落要因に。
ただし新型肺炎の影響で、しばらくの間、中国が合意を履行しなくても問題視はされないと予想される。
・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。
・エルニーニョ現象は終息したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に今年の春先以降、価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。
・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。
・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。
(投機・投資要因)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
トウモロコシはロングが330,723枚(前週比 +17,468枚)、ショートが286,950枚(+11,916枚)ネットロングは43,773枚(+5,552枚)
大豆はロングが168,811枚(+3,810枚)、ショートが184,675枚(▲4,010枚)ネットロングは▲15,864枚(+7,820枚)
小麦はロングが167,767枚(+9,870枚)、ショートが105,564枚(▲11,094枚)ネットロングは62,203枚(+20,964枚)
◆本日のMRA's Eye
「中国高炉稼働率に注目」
鉄鋼原料価格は年明け以降下落している。中国で発生した新型肺炎の影響で中国国内の製鉄所の稼働率が低下し、鉄鉱石需要が減少したことが影響したためと考えられる。
中国最大の生産地区である河北省の主要都市、唐山市の高炉稼働率データを見ると、米中合意期待や、中国政府の金融緩和、公共投資などへの期待から鉄鋼製品価格が比較的高止まりしていたため、高炉の稼働率は年初から過去5年平均程度の稼働を維持してきた。
しかし、1月末頃から新型肺炎問題が実は深刻であることが判明する中で、2月の稼働率は、鉄鋼製品の在庫積み増しを行う時期であるにも関わらず、稼働率は低下している。
一方、中国の鉄鋼製品港湾在庫は、季節的に在庫積み増しの時期にあるため在庫の増加は不思議ではないが、過去5年の最高水準をはるかに上回る水準まで急速に在庫が積み上がっている。
高炉の稼働率が低下し、粗鋼生産が減少すると見られる中での鉄鋼製品在庫の積み上がりであり、これは生産増加というよりは需要が減少していると考えるのが妥当だろう。
この結果、鉄鋼瀬品価格はじりじりと水準を切り下げており、このままだと高炉の稼働も回復せず、鉄鉱石価格は現在の水準からさらに上昇するのは難しいと考えられる。
原油や銅などの景気循環系商品は、新型肺炎の新規感染者数の減少が確認されたタイミングで価格が上昇を始めたが、鉄鉱石も同様である。ただ、中国の統計が本当に信頼できるのか、中国の春節中に数多くの感染者が世界に拡散、世界的なパンデミックの懸念が強まっていることを考えると、そう簡単に今回の肺炎問題が片付くとは考え難い。
需要減少を背景にValeは減産を発表、Rio Tintoは豪州のサイクロンなどの影響でやはり生産目標を引き下げているため、鉄鉱石価格の下支え要因になるだろう。しかし、今後も回復するかどうかはやはり新型肺炎の影響次第といえる。
減産今後の展開は新型肺炎の影響に左右されるためなんとも言えないが、中国国内の感染拡大が終息するのは(中国政府の情報を正しいとするならば)少なくとも3月一杯はかかる見込みであり、鉄鋼製品価格の下落を受けて鉄鉱石価格も低迷する見込み。重要な鉄鋼生産地域である欧州でも新型コロナウイルスの影響が拡大しているため、初夏頃まで影響が続く可能性も出てきた。
中国の実情を占う上では高炉の稼働率や製油所の稼働率をウォッチしていくことが推奨されるが、2月21日時点の中国北東部の製油所稼働率は72.9%(前週79.5%)と低下している。
◆主要ニュース
・1月日本全国スーパー売上高 前年比▲2.0%の1兆44億円(前月▲3.3%の1兆1,884億円)
・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 +1.5%(前週▲6.4%)
購入指数+5.7%(▲3.4%)
借換指数▲0.8%(▲8.0%)
固定金利30年 3.73%(3.77%)
15年 3.18%(3.22%)
・1月米新築住宅販売件数 前月比+7.9%の76.4万戸(前月改定+2.3%の70.8万戸)
・FRBクラリダ理事(投票権あり・中間派)、「新型ウイルスの影響推計は時期尚早。」
・ダラス連銀カプラン総裁(投票権なし・ハト派)、「まだ利下げを考える方向にない。」
・米FDA(食品医薬品局)高官、「どう見てもパンデミックの瀬戸際。」
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油+0.5MB(クッシング+0.9MB)
ガソリン▲2.7MB
ディスティレート▲2.1MB
稼働率▲1.5
原油・石油製品輸出 8,992KBD(前週比▲41KBD)
原油輸出 3,401KBD(+37KBD)
ガソリン輸出 805KBD(+48KBD)
ディスティレート輸出 1,283KBD(▲44KBD)
レジデュアル輸出 178KBD(+15KBD)
プロパン・プロピレン輸出 1,202KBD(▲111KBD)
その他石油製品輸出 1,851KBD(+3KBD)
・米シェールガス生産大手Chesapeake、8月、11月に満期を迎える社債の償還3億ドルに備え、資産5億ドルを売却の見込み。
・米軍、ソマリアでアルカイダ系過激派シャバブの指導者2名を殺害。
・イランと欧州、核合意維持の意思確認。
【メタル】
・1月日本伸銅品生産 前年比▲7.3%の5万7,930トン(前月▲8.2%の6万146トン)
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.パラジウム ( 貴金属 )/ +2.43%/ +42.90%
2.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +2.31%/ ▲25.78%
3.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +1.87%/ ▲15.88%
4.CBT大豆ミール ( 穀物 )/ +1.68%/ ▲2.87%
5.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ +1.04%/ ▲6.35%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ブラジル・ボベスパ ( 株式 )/ ▲7.00%/ ▲8.58%
69.ビットコイン ( その他 )/ ▲6.79%/ +22.20%
68.ICEガスオイル ( エネルギー )/ ▲6.23%/ ▲25.81%
67.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲5.27%/ ▲14.50%
66.NYM灯油 ( エネルギー )/ ▲4.25%/ ▲25.96%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,957.59(▲123.77)
S&P500 :3,116.39(▲11.82)
日経平均株価 :22,426.19(▲179.22)
ドル円 :110.43(+0.23)
ユーロ円 :120.16(+0.24)
米10年債利回り :1.34(▲0.02)
独10年債利回り :▲0.51(+0.01)
日10年債利回り :▲0.09(+0.02)
中国10年債利回り :2.79(▲0.02)
ビットコイン :8,747.24(▲637.16)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :24.21(+0.44)
エネルギー :35.20(+2.08)
ベースメタル :15.96(+0.5)
貴金属 :23.52(+0.14)
穀物 :15.07(+0.06)
その他農畜産品 :27.15(▲0.03)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :29.30(+0.81)
Brent :38.13(+0.85)
米天然ガス :36.09(▲0.29)
米ガソリン :39.75(+4.91)
ICEガスオイル :39.99(+6.23)
LME銅 :13.15(+0.31)
LMEアルミニウム :10.55(▲0.1)
金 :11.25(+0.04)
プラチナ :25.31(+0.16)
トウモロコシ :12.07(▲1.46)
大豆 :11.25(+0.04)
【エネルギー】
WTI :48.65(▲1.25)
Brent :53.38(▲1.57)
Oman :51.39(▲2.26)
米ガソリン :145.16(▲8.08)
米灯油 :150.18(▲6.67)
ICEガスオイル :455.50(▲30.25)
米天然ガス :1.82(▲0.03)
英天然ガス :23.06(+0.52)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :53.38(▲1.57)
SPO380cst :273.65(▲6.56)
SPOケロシン :57.76(▲2.99)
SPOガスオイル :58.86(▲3.04)
ICE ガスオイル :61.14(▲4.06)
NYMEX灯油 :150.02(▲2.75)
【貴金属】
金 :1640.96(+5.82)
銀 :17.92(▲0.08)
プラチナ :914.39(▲13.33)
パラジウム :2780.34(+65.96)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,640(▲48:25.5C)
亜鉛 :2,036(▲26:22C)
鉛 :1,840(▲6:30B)
アルミニウム :1,698(▲7:21.5C)
ニッケル :12,365(▲260:75C)
錫 :16,625(▲10:55C)
コバルト :33,168(▲250)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5660.50(▲18.00)
亜鉛 :2044.00(+6.50)
鉛 :1823.00(▲27.00)
アルミニウム :1702.00(±0.0)
ニッケル :12490.00(▲35.00)
錫 :16630.00(▲85.00)
バルチック海運指数 :508.00(+2.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :86.69(▲0.49)
NYMEX鉄鉱石 :86.67(▲0.06)
NYMEX原料炭スワップ先物 :155.5(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,461(▲12)
上海鉄筋中心限月 :3,464(+3)
米鉄スクラップ :293(+2.00)
【農産物】
大豆 :881.00(+2.00)
シカゴ大豆ミール :291.30(+4.80)
シカゴ大豆油 :29.07(▲0.16)
マレーシア パーム油 :2460.00(▲20.00)
シカゴ とうもろこし :370.50(▲2.00)
シカゴ小麦 :540.25(+1.25)
シンガポールゴム :163.10(▲0.30)
上海ゴム :11295.00(▲5.00)
砂糖 :14.79(▲0.36)
アラビカ :109.10(+2.00)
ロブスタ :1268.00(+13.00)
綿花 :65.55(▲0.78)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :65.15(+0.48)
シカゴ生牛 :114.08(▲0.95)
シカゴ飼育牛 :134.08(+1.10)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。