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リスク回避の円安・リスク選好の円安
  • MRA外国為替レポート

2020年2月24日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は110円手前で小動き推移した後、週央にかけて大きく円安・ドル高が進み112円台をつけた。ユーロ円相場は119円近辺で始まり一時は118円台半ばに軟化したものの、週後半には121円台に大きく反発した。

市場心理は、中国政府がウィルス感染拡大による経済への悪影響を抑制するべく金融・財政面で下支え策をいくつも打ち出してきたことで改善。また発表された米国の経済指標が軒並み強めの数字となりリスク選好を回復させた。

もっとも週末にかけて米国株は軟調。これまでの堅調推移からひとまず調整。感染拡大や米国のPMI景況感指数が弱い数字だったことから利食いが優勢となった。

米10年債利回りは週初1.55%で始まったが週末にかけて低下して1.47%。堅調だったドルは調整。ドル円相場は111円50銭台で引けた。ユーロ円相場は121円近辺。

日本では感染拡大が進み、また企業のオペレーションが停滞するなか業績懸念から円安ドル高にもかかわらず日経平均は上値が重く、週初とほぼ同水準23,400円近辺で取引を終えた。

月曜日の東京市場の為替相場は109円80銭割れで始まりその後は80銭~90銭でもみ合い。ユーロドル相場は1.0840近辺で、ユーロ円相場は119円ちょうど近辺で、それぞれ小動きとなった。

日経平均は23,400円割れで寄付きその後はしっかり。23,500円を中心に上下して引けは23,500円台前半だった。

この日発表された日本のGDP(10-12月期)は前期比▲0.9%、同年率換算▲6.3%と予想を大きく下回るマイナス成長となった。消費増税による駆け込み需要の反動減や、天候不順による消費への悪影響が要因とされた。

中国共産党は3月5日から北京で開催予定だった全国人民代表大会(全人代)を事実上延期することを決定した。

この日は米国市場が祝日で休場のため欧州市場でも為替相場は小動き。ドル円相場は109円90銭で引け。ユーロドル相場は1.083、ユーロ円相場は119円10銭。

この日は米国時間の夕刻に米国アップル社が1-3月期の業績が売上高ガイダンスを達成できない見通しとなったことを公表。未達見込み幅は現時点では明らかにはされなかった。中国で生産が一部機能停止となりi-phoneの供給制約が生じていること、販売店も中国国内で一部閉鎖・時短で悪影響が生じている、ことが要因。

火曜日の東京市場ではやや円高の動き。ドル円相場は109円90銭近辺で始まり70銭~80銭でもみ合い。ユーロ円相場は119円10銭から下落して118円80銭~90銭で上下。ユーロドル相場は1.0830中心で概ね横ばい、もみ合い。

日経平均は続落。朝方のアップル決算が重石。23,400円割れで安寄りした後さらに下落。後場は下げ一服となり23,150円~200円でもみ合い23,200円近辺で引けた。

欧米市場では株価が軟調、リスク回避が強まるなかドルが堅調、ユーロの下落が目立った。

発表されたドイツZEW景況感指数(2月・期待指数)は8.7と前月に大きく改善した26.7から一転して大きく悪化。欧州景気への懸念をあらたにした。

一方米国NY連銀製造業景気指数(2月)は12.9と前月4.8から大きく改善して昨年5月以来の高水準。ユーロドル相場は1.08割れへ下落して引けは1.0790。

ユーロ円相場も118円50銭に下落し、その後やや反発する場面があったがじり安となり引けは118円60銭。ドル円相場は小動きで109円90銭台から一時80銭されとなったが持ち直し109円90銭手前でもみ合い引けた。

3連休明けの米国株はアップル社の業績見通し下方修正で企業業績への懸念が広がり下落。米長期金利は低下して10年債利回りは1.55%。

水曜日の東京市場のドル円相場は109円90銭で始まり昼前には110円ちょうど~10銭に上昇してその後もみ合い。ユーロ円相場は118円60銭で始まり上昇して80銭近辺でもみ合い。ユーロドル相場は1.0830~40で上下。

日経平均は23,300円近辺に小幅高寄り。その後はじり高となり23,400円近辺で引けた。中国本土の感染者数増加数が減少し拡大がペースダウンしつつあるとの安心感が支え。

欧米市場でもリスク選好が強まり株価が上昇。中国政府による追加刺激策への期待、経済への悪影響懸念の後退が背景。中国政府は刺激策を強化しており、上海当局は補助付き融資の適格企業に多国籍企業の現地法人もリストアップ。また人民銀行は銀行貸出基準金利を20日木曜日にも引き下げると報じられた。

米国株は上昇し、S&P500指数とナスダック指数が史上最高値を更新。米長期金利は前日比横ばいで10年債利回りは1.56%。そうしたなか円が独歩安。ドル円相場は上昇を鮮明にして一貫してドル高円安となり111円60銭に上昇。その後NY引けにかけてやや反落して111円30銭で取引を終えた。

ユーロ円相場も119円ちょうど近辺から120円50銭に上昇して引けは120円30銭。ユーロドル相場は1.0800近辺でもみ合い推移。公表されたFOMC議事録(1月28日・29日開催分)では、ウィルス感染拡大に伴うリスクを認める一方、年内の金利据え置きに慎重ながらも楽観的な見方が示された。

木曜日の東京市場のドル円相場も底固い値動き。111円30銭で始まり一時10銭まで下げたが底固く、夕刻にかけては111円70銭~80銭に上昇。ドルは対ユーロでも堅調でユーロドル相場は1.0810から1.0780へ下落。

ユーロ円相場は120円30銭で始まりドル円相場と同様の値動きで夕刻は120円50銭~60銭。

日経平均は23,700円台で高寄りも、その後は反落して23,500円割れで推移しそのまま引けた。

中国政府は、雇用情勢の変化を注視し政策調整を行い、社会保険料の減免拡大で企業負担を8兆円規模で軽減する、と報じられた。

欧米市場では株価が下落。人民日報傘下の環球時報が、北京で36人が感染と報じたことでウィルス感染拡大への懸念があらたになり、前場終盤にかけて急速に下落。IT関連やグローバル景気関連株が売られ、内需・小売がしっかり。米長期金利は低下して10年債利回りは1.52%、2年債利回りは1.39%。

為替市場ではさらに円売りが強まった。ドル円相場は1112円20銭に上昇。その後は111円80銭に押されたが持ち直して引けは112円10銭近辺。ユーロ円相場は121円ちょうどまで上昇した後、120円80銭~121円20銭を方向感なく上下。ユーロドル相場は1.0800~1.0820~1.0780で上下して引け。

日本のウィルス感染拡大や景気後退懸念も円売り材料とされた。

この日発表された米国の経済指標は堅調。フィラデルフィア連銀製造業景気指数(2月)は36.7と前月17.0から大幅改善して予想を大きく上回った。また景気先行指数(1月)も前月比+0.8%と予想+0.4%を上回った。

金曜日の東京市場のドル円相場は112円ちょうどを中心にもみ合い。ユーロ円相場は120円90銭中心に上下。ユーロドル相場は1.0780から1.0800近辺に小じっかり。

日経平均は23,500円近辺で寄付きじり安。23,400円割れで引け。欧米市場に入って早々はやや円高に振れ、ドル円相場は111円50銭近辺に、ユーロ円相場は120円40銭近辺に、それぞれ下落。その後はドル安ユーロ高が際立った。

発表されたPMI景況感指数(2月)は欧州の数字が強めで米国の数字が弱め。ユーロ圏の数字は製造業が49.1、サービス業が52.8といずれも予想より強く前月から改善。

一方米国は製造業が50.8、サービス業が49.4といずれも予想を下回り前月から悪化した。サービス業が景況感の分かれ目である50を割り込んだ。

ユーロドル相場は1.080近辺から1.086へ上昇。ユーロ円相場は120円台後半で上下した後121円30銭に上昇。ドル円相場は111円台後半で上下。ドル円相場は111円50銭台、ユーロ円相場は121円ちょうど近辺で引け。ユーロドル相場は1.0840台。

米国株は寄付きから下落してもみ合い。感染拡大の勢いが衰えず、米国のPMI景況感指数が冴えなかったことから半導体関連株を中心に大きく下げた。ナスダックは大幅安。リスク選好が後退するなか、米10年債利回りは1.47%、2年債利回りは1.35%に低下した。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

先週末に発表されたPMI景況感指数は市場の安心感に水を差した。グローバルに不安が広がるなか米国経済が堅調に推移していることがリスク選好を支えてきたが、今週の指標が堅調な数字を示して市場心理を維持できるか。とくに企業の景況感や設備投資の先行指標は注目されそうだ。

月曜日 シカゴ連銀景気指数(1月)、ダラス連銀製造業活動指数(2月)水曜日 新築住宅販売(1月)、木曜日に耐久財受注(1月)金曜日 個人所得・消費支出(1月)、ミシガン大学消費者信頼感指数(2月)

いずれも前月からやや弱めの数字が予想されているが市場の反応はどうか。

2.日本の経済指標、日本政府の対応

このところ日本経済に対する悲観的な見方、懸念がグローバルに広がっている。国内でも感染拡大が続くなか、サプライチェーンへの悪影響による企業部門の停滞とともに、インバウンドの減退とともに消費が大きく落ち込むようなら、1-3月期も厳しい状況となりそうだ。

市場は弱い数字に敏感とみられる。週末金曜日になるが、1月の経済指標、有効求人倍率、鉱工業生産などが発表される。今のところ国内では有効な景気下支え策、資金繰り支援策などは打ち出されていないが、何らかの動きはあるか。また感染拡大対応に何らかの安心できる材料がみられるか。

3.中国政府の対応、中国市場の動向

このところ市場の安心感の拠り所は、中国政府による数々の景気下支え策。資金供給や利下げ、企業の負担軽減などが相次いで打ち出されている。実際の景気動向、企業の苦境はそれでも続いているとみられるが、どこまで市場心理の下支えが継続できるか。

中国市場はそうした対策によって安定した状態を維持できるか。株価急落や市場が混乱した場合、グローバルに悪いシグナルと受け止められる可能性があり注意を要する。

◆今週のMRA's Eye


リスク回避の円安・リスク選好の円安

ドル円相場は112円台に乗せてきた。週末にはさすがに一服したものの、この間のドル高円安のピッチは想定を上回る、メインシナリオである緩やかなドル高円安、とは異なる動きだ。

ましてやリスク回避による円高を予想していた市場参加者にとっては想定外のことだろう。しかし冷静にみれば、米国経済の相対的な強さやドル資産の安全性からドルが堅調に推移することは理にかなう。

一方で、もはやリスク回避の根源であるウィルス感染拡大による悪影響をもっとも受けそうな状況となってきた日本、円が買われる理由はない。

過去においては、北朝鮮がミサイルを発射したケース、東日本大震災による被害拡大、いずれでもリスク回避を材料に円高に振れる動きがみられた。

本来、円が買われる理由はないはずだが、市場の値動きの「慣行」として、円を買う動きが自動的に発生したとみられる。しかし今回は様子が異なる。円全面高とはならずドル高の勢いが勝り、ドル円相場は底固く、むしろドル高円安に動いた。

この間の市場心理の悲観・楽観と円相場の動きをみると、とくに対ドルでは、リスク回避でも円安、リスク選好でも円安となっているようにもみえる。

リスクイベントで円高に動かなかったという事実は、この間の売買プログラム、アルゴリズムに修正を余儀なくさせる可能性がある。リスク回避ならなんでも円買い、とはならないことが、新たにインプットされれば、今後の行動に変化を生ずるだろう。

これまではリスク回避的な環境で円高が進んだために、日本経済の困難は増大した。仮にリスク回避でも円高にならないなら、市場からくる相乗的な悪影響は回避されるが、ただ喜んでばかりはいられない。

円高・円安に良し悪しはないかもしれないが、リスク選好のもとでの円安は、いわば良い円安だ。しかしリスク回避のもとでの円安、とくに今回のようにリスクの震源地が日本である場合の円安は、かつての日本の金融危機における円安と同様に、悪い円安、というべきものかもしれない。

とくにウィルス問題とは原因を異にしているが、国内投資家の外債投資の活発化、海外への資金流出が円安を主導しているのならなおさらだ。

現時点ではなお、海外投機筋がリスク回避を理由に円売りを加速する動きはみられない。政策対応、とくに中国政府の幾多の景気下支え策への期待感から、いずれのリスク選好局面を先取りした株高・円安の範囲内だ。

ただ少なくとも、リスク回避でも円安・ドル高、リスク選好でも円安・ドル高、という動きになりつつあることには留意したい。

メインシナリオは、景気回復とくに企業景況感の持ち直しによる緩やかなリスク選好の回復、それにともなう緩やかなドル高円安、だった。そしてタイミングとして110円台への定着は春以降、と想定していた。

しかし、この間のウィルス問題と景況感の変化、各国への影響の差異、金融・財政を動員した景気持ち直し策によって、その想定以上にドル高円安に振れる状況変化、リスクバイアスが生じていた。その結果が早期の112円到達につながった。足元では110円割れが底固くなった状況だろう。

市場はややアップサイドのリスクシナリオに傾いているようだ。足元の感染拡大やグローバルなサプライチェーンへの悪影響、それを阻止するために各国政府、とくに中国政府が金融財政両面で強烈なアクセルを踏み支える。

欧州も金融緩和や財政出動に傾く。日本も日銀が金融緩和に傾き、政府は景気対策を強化するのではないか。米国は被害が少ないものの減税策が取り沙汰されている。

そうした政策が発動される傍らで、ウィルス感染拡大ペースが鈍化し、企業活動が正常化に向けて動き始める。そうすれば政策が打たれた分だけ、従前よりはむしろ景気回復が加速するのではないか、との考え方だ。

そうした楽観的な見方通りとなるかは予断が許されないが、中国・習政権には必至で景気を支えなければならない事情があり、それをメインシナリオに据えつつあることは道理だ。

一方でなおダウンサイドのリスクシナリオも払しょくされていない。実弟経済・生産活動そのものの機能不全が、すでに資金循環の停滞につながっているが、それが金融リスクとして顕在化する場合。

とくに中国で企業倒産が続発して不良債権問題がにわかに顕在化するケース。米国企業の業績悪化や格付け悪化、信用スプレッドの急拡大など、業績悪化と資金調達環境の悪化が併存して相乗的に状況が悪化するケース。各国政府はそれだけは避けるべく動くだろう。

そして現に動いているので、これが実現する確度は低いとみられる。ただ引き続き株価調整や、今は低位安定している信用スプレッド、信用市場の動向については、注意しておく必要がある。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :111.61(▲0.49)
ユーロ :120.99(+0.07)
英ポンド :144.653(+0.24)
豪ドル :73.943(▲0.21)
カナダドル :84.387(▲0.16)
スイスフラン :114.069(+0.11)
ブラジルレアル :25.4148(▲0.10)
中国人民元 :15.88(▲0.07)
韓国ウォン(日本円=100) :9.243(▲0.05)

【対ドルレート】
ユーロ :1.0847(+0.006)
英ポンド :1.2964(+0.008)
豪ドル :0.6627(+0.001)
カナダドル :1.3225(▲0.003)
スイスフラン :0.9782(▲0.006)
ブラジルレアル :4.3885(▲0.001)
中国人民元 :7.0271(+0.004)
韓国ウォン :1209.15(+10.78)

【主要国政策金利】
米国 :1.75
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.47(▲0.04)
米2年債 :1.35(▲0.03)
日本10年債利回り :▲0.06(▲0.02)
日本2年債利回り :▲0.06(+0.01)
独10年債利回り :▲0.43(+0.01)
独2年債利回り :▲0.64(+0.00)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :28,992.41(▲227.57)
NASDAQ :9,576.59(▲174.38)
S&P500 :3,337.75(▲35.48)
日経平均株価 :23,386.74(▲92.41)
ドイツ DAX :13,579.33(▲84.67)
インド センセックス :休場( - )
中国上海総合 :3,039.67(+9.52)
ブラジル ボベスパ :113,681.40(▲904.80)
英国FT250 :21,780.20(▲86.49)
ビットコイン :9674.01(+63.45)

【主要商品価格】
WTI :53.38(▲0.40)
Brent :58.50(▲0.81)
米ガソリン :165.06(▲1.91)
米灯油 :168.66(▲1.10)

金 :1643.41(+23.85)
銀 :18.49(+0.12)
プラチナ :975.40(▲4.67)
パラジウム :2709.92(+11.13)
銅 :5727.00(▲19:25C)
アルミニウム :1703.00(▲12:26C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :890.50(▲2.25)
シカゴ とうもろこし :377.00(▲1.50)
シカゴ小麦 :551.00(▲9.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。