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ドル資産の相対的安心感
  • MRA外国為替レポート

2020年2月17日号

◆先週の市場総括


先週は引き続き新型ウィルスの影響が取り沙汰されるなか、懸念と楽観が入り混じり、あるいは判断できずにリスク選好・回避いずれにも大きく傾かず。

米国株は週央に主要3指数がそろって史上最高値を更新したが週末にかけては調整。中国での感染症例急増が嫌気された。米10年債利回りは1.6%近辺で上下横ばい。

そうしたなか欧州経済・ドイツ経済に対する懸念やユーロ金利低水準の長期化が意識されてユーロが対ドルで2年ぶりの安値をつけた。ユーロは対円でも軟調で週初の120円近辺から119円割れへ。

一方ドルは総じて堅調。ドル円相場は110円を回復する場面もありつつ109円台後半での極めて狭いレンジでのもみ合いに終始した。

日本株は上値の重い展開。日経平均は前週末の23,800円台から600円台に下落して始まり週央には23,800円台に反発したものの、週末には反落して23,700円割れで引けた。日本国内での新型ウィルス感染拡大が新たなステージに入ったとの見方が重石となった。

月曜日の東京市場の為替相場は総じて小動き。ドル円相場は109円70銭中心のもみ合いから80銭にやや強含み上下。ユーロ円相場は120円10銭で始まり20銭~30銭でもみ合い。

日経平均は前週末に米国株が5営業日ぶりに反落したことから23,600円台前半で安寄り。ただその後は底固く800円近辺に持ち直して引けは23,700円近辺。

海外市場でもドル円相場は変わらず。その傍らでユーロが下落。対ドルでは1.0950から1.0910へ、対円では119円70銭に下落してもみ合い。米国株は安寄りしたものの持ち直して高値引け。S&P500指数は史上最高値を更新した。米長期金利はやや低下。10年債利回りは1.56%、2年債利回りは1.39%。

火曜日の東京市場は祝日で休場。アジア時間の為替相場は小動き。ドル円相場は109円80銭近辺でもみ合い、やや底固い値動き。ユーロドル相場は1.0910中心に小動きもみ合い。ユーロ円相場はやや反発して119円90銭中心にもみ合い。

欧米時間に入るとユーロが軟調。ユーロドル相場は一時1.09割れ、ユーロ円相場は119円60銭に下落。ただその後は持ち直してユーロドル相場は1.0920中心にもみ合い引け。ユーロ円相場は120円戻して119円90銭で引け。

米国株はまちまち。NYダウは高寄りした後反落してほぼ前日と同水準。ナスダックは小幅プラス。米長期金利は小幅上昇。10年債利回りは1.60%に戻した。

水曜日の東京市場のドル円相場は109円80銭~90銭で小動きもみ合い。ユーロドル相場は1.0920でもみ合い。ユーロ円相場は119円80銭~90銭で上下。

日経平均は23,850円近辺で高寄りし750円に下落。ただ底固く反発して23,800円近辺でもみ合い、引けにかけて23,850円に上昇して引けた。日経平均はソフトバンク株が上昇の大半をけん引。TOPIX指数は3営業日続落となった。

企業の生産再開立ち上がりが遅いことが意識され1-3月期業績への懸念が重石となった。

欧米市場に入るとユーロ安が進み一方でドルは堅調。ユーロドル相場は一旦1.0920に小幅上昇したがその後は一貫して下落し1.0870へ。ユーロ円相場は120円30銭から119円60銭~70銭で引け。ドル円相場はじり高となって110円10銭で引けた。

ECB総裁や理事らから現状の低金利を擁護する発言が相次ぎ、ドイツでは景気後退懸念が強まった。

米国株はウィルスへの警戒感が後退したことを背景に高寄りの後じり高。主要3指数がそろって史上最高値を更新した。原油価格WTIは51.7ドルに反発。50ドル割れでの底固さを示した。米長期金利はリスク選好の回復・株価堅調を受けて小幅上昇。10年債利回りは1.64%、2年債利回りは1.45%。

木曜日の東京市場ではウィルスへの懸念が再燃し株安・円高。中国で感染症例が急増したことで不安が新たになった。

中国景気の影響を受けやすい機械、鉄鋼、海運を中心に軟調。日経平均は前日引値近辺23,850円で寄付き800円~900円で上下。23,800円前半で引けた。

ドル円相場は110円10銭からじり安となり夕刻には109円70銭。ユーロ円相場は119円70銭から119円40銭へ下落。ユーロドル相場は1.087から1.089へ小じっかり。ただ欧米市場に入るとユーロ安が進んだ。

欧州経済、とくにドイツ経済への悪影響が懸念されるなかユーロドル相場は1.084へ下落してもみ合い。ユーロ円相場は118円90銭に下落し、その後はやや持ち直して119円ちょうど近辺でもみ合い引けた。

傍らでドル円相場は底固い値動き。109円80銭近辺でもみ合い、横ばい。

米国株は感染拡大懸念で大幅安寄り。その後は持ち直したが主要3指数とも前日比マイナス。米長期金利は小幅低下。10年債利回りは1.62%、2年債利回りは1.44%。

金曜日の東京市場の為替相場は動意に欠ける展開。ドル円相場は109円80銭近辺で、ユーロドル相場は1.084近辺で、ユーロ円相場は119円ちょうど近辺で、それぞれ小動き、もみ合い横ばいとなった。

日経平均は23,700円割れで安寄りし600円近辺に下落。その後は23,750円に反発したが引けは23,700円割れ。欧米市場ではユーロがやや反発した後反転続落した。

発表されたドイツのGDP(10-12月期)が弱く前期比0.0%。ユーロドル相場は1.0860に持ち直したが1.0830に下落して安値引け。ユーロ円相場も119円20銭から118円90銭に下落した。

米国株はまちまちの値動き。NYダウは小幅マイナス、ナスダックは小幅プラス。感染拡大は懸念材料だが経済指標は堅調で心理的な支えとなった。

発表された米国の小売売上高(1月)は前月比+0.3%と4か月連続のプラス。ミシガン大学消費者マインド指数(2月)は100.9と前月99.8から改善して2018年以来2年ぶりの高水準となった。

ただ鉱工業生産は同▲0.3%、製造業生産は▲0.1%とマイナス。米長期金利は小幅低下して10年債利回りは1.59%、2年債利回りは1.43%。そうしたなかドル円相場は欧米市場でも109円80銭近辺で小動き、もみ合い引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


月曜日の米国市場は祝日で休場。

1.新型ウィルス感染状況、企業の対応状況・影響に関する報道

引き続きウィルス関連の情報は市場心理を左右しよう。とくに日本では新たなステージに移行したとみられ、心理的な悪影響が懸念される。

一方、グローバルな視点からは、中国での企業のオペレーション再開がどうなるか。サプライチェーンへの悪影響に歯止めがかかる兆しがみられるか。

ここまではリスク回避はさほど強まらず、引き続き大幅な金融緩和や景気下支え策を好感してV字回復シナリオを前提としている。その見方が大きく揺るがないか。

また海外投資家の日本経済への警戒感、日本市場への警戒感が強まることはないか。日本株や円相場への影響はないか。

2.米国の経済指標

米国経済が堅調推移していることが現状の世界経済にとって救い。発表される経済指標は1月から2月初の数字でウィルス問題の悪影響はなお反映していないとみられる。ただ良好な数字であれば一定の安心感はもたらそう。逆に想定より弱ければ懸念を後押ししかねない。

火曜日 NY連銀製造業景気指数(2月、予想5.0、前月4.8)水曜日 生産者物価指数(1月、前年同月比、予想+1.6%、前月+1.3%)、住宅着工件数(1月、季節調整済み年率換算、予想1,410千戸、前月1,608千戸)木曜日 フィラデルフィア連銀製造業景気指数(2月、予想11.0、前月17.0)、景気先行指数(1月、前月比、予想+0.4%、前月▲0.3%)金曜日 中古住宅販売(1月、季節調整済み年率換算、予想545万戸、前月554万戸)、PMI景況感指数(2月、製造業、予想51.5、前月51.9、サービス業、予想53.5、前月53.4)

3.欧州の経済指標

欧州経済への懸念が強まっている。弱い経済指標には反応しやすい状況は続こう。

火曜日 ドイツ・ZEW景況感指数(2月、予想22.0、前月26.7)木曜日 ユーロ圏消費者信頼感指数(2月、予想▲8.2、前月▲8.1)金曜日 PMI景況感指数(2月、製造業、ユーロ圏、予想47.5、前月47.9、ドイツ、予想44.8、前月45.3、サービス業、ユーロ圏、予想52.3、前月52.5、ドイツ、予想53.9、前月54.2)、ユーロ圏消費者物価指数(1月、コア指数、前年同月比、予想+1.1%、前月+1.1%)

木曜日にはECB理事会の議事要旨が公表される。景気への警戒感や金融緩和スタンスを強調する姿勢がみえるか。

◆今週のMRA's Eye


ドル資産の相対的安心感

日本では新型ウィルスの感染拡大に歯止めがかからず、市中感染の新たなステージに移行しつつある。先週は中国での感染も増加。ピークアウトの目途はまだ先になりそうだ。

個人の心理的なリスク回避感、あるいは企業オペレーションの停滞をよそに、市場はV字回復を織り込んでいる。ウィルス封じ込め対策に加え、大規模な金融緩和や景気下支え策によって、いわば金融相場的にリスク資産を後押ししている。

市場の期待通りに悪影響が軽微一時的にとどまるかどうか、あるいは長期化して株価等が調整局面を迎えるか、なお予断は許さない。ただ米国市場、ドル資産(米国株や米国債)の堅調が目に付く。リスク選好・回避の強弱にかかわらず、当面はドル資産への資金流入は続きそうだ。

今回のウィルス問題によるリスク回避の特徴はふたつある。エリアとしては中国が根源であり、アジアとくに日本が懸念されていること。そして金融市場の混乱ではなく、もっぱら実体経済の混乱が懸念されていること。

これらが中国経済とのつながりが深い欧州・ドイツ経済への懸念をもたらし、グローバルなサプライチェーンへの懸念も広がっている。いうまでもないことではあるが、欧米金融市場発で欧米実体経済をも景気後退に陥れグローバルに大混乱となったショックとは大きく異なる。

国際金融市場は健全に機能しており、また米国経済は堅調だ。そうしたなかで景気下支え策や大規模な金融緩和が打たれれば、その副次的効果として金融相場、金融のみならず財政的な追加支出も想定されるが、それによるリスク資産の押し上げが期待先行で発生するのは自然なことだ。あとは実体経済の悪化が、期待通り、軽微にとどまれば万事よしということになる。

そう上手くことが運ぶかどうかはまだ不透明だが、いずれにしてもドル資産が選好されやすい。リスク回避の視点からは、通貨としては、ドル、円、スイスフラン、金、が選好されるが、円は今回に限っては安心とはいえない。円資産を保有する積極的な理由を欠いている。

ファンダメンタルズが堅調かつ震源地から遠い米国、ドル、とくに安全で流動性が高い米国債に資金が流入するのが自然だ。米長期金利が低下しあるいは上昇せずに低位安定するなかでドルが堅調な理由はそこにある。

米国経済の後退懸念が広がり、数次の利下げが実施されていた昨年秋まで、米金利先安感がドル安をもたらしていた状況とは異なる。ドル選好が米債利回りの抑制として働く主客逆転している点には留意が必要だろう。

一方で政策期待によるV字回復シナリオ、リスク選好のもとでは、米国株が堅調ということになる。中国が大規模な金融緩和、景気下支え策で景気後退や経済混乱を回避しにかかっている。

現政権は、ただでさえ対応に批判的な意見にさらされており、疾病対策のみならず景気対策は必死に行うはずだ。良くも悪くも、習近平政権のなりふり構わない対応に期待を寄せる動意がある。

欧州でも景気悪化が懸念され、超低金利の継続ないし強化が再び期待され始めた。これが為替市場ではユーロ安をもたらし、相対的なドル高を強めている。欧州金利の超低位安定やユーロ安は欧州株を金融相場として押し上げている。

ただこうしたグローバルな景気下支え対応は、もともと堅調な経済に支えられている米国株にもっとも有利に働いているようだ。

投資家は、リスク選好が決定的に損なわれることはない、との前提に立って、相対的に魅力的な米国株を志向している。

なお不透明感が残るなか安全志向の資金が米国債に流入し、米長期金利が低下して低位安定している。このことは、株価が史上最高値を更新するなかでも、相対的な割高感を生じず、株価上昇を支えている。

リスク回避、リスク選好、いずれに転ぶとしても、結果的にドル資産に資金を寄せていればよいということになりそうだ。足元のドル堅調はこうした事情に支えられている。

今回に限っては、リスク回避でもドルが相対的に最も強く、ドル安円高に振れにくい。米長期金利の低下・低位安定は市場のドル志向の結果であり、米国債利回りの低下=価格の上昇がドル堅調につながっている。結果として米債利回りとドル円相場の相関は崩れた状況が続くとみられる。

今回は金融市場が健全なまま推移しており、過度なリスク回避、過度な安全志向や母国回帰は今後も生じないとみられる。これが資本動向や投機筋の売買動向による円高に一定の歯止めとなるだろう。

一方で、今後は実体経済への影響が顕在化するなかで、国際収支の変化による為替需給がどのように円相場に影響するかも気にとめる必要がある。

日本の貿易収支、輸出・輸入動向が、今後2~3ヵ月でどのように変化するか。確実なのはインバウンド需要の大幅減少により、円高圧力が緩和していると想定されること。

輸入については中国での生産が止まることや国内消費が減退することにより減少する可能性。

原油価格の低迷も円売り圧力・円安圧力の緩和につながる。中国での生産停止あるいは内需減退は日本からの輸出にもマイナスとなる。こちらは円買い圧力・円高圧力の緩和となる。

過去には、東日本大震災の直後に輸出停滞や原発停止によるエネルギー輸入急増で貿易収支が大幅赤字に転落。これがやがて円安反転につながった。今回の動きがどの程度極端な収支の変化につながるか、結果として円相場にどちらのバイアスをかけるか、留意したい。

当面はドル堅調が支えとなり、ドル円相場に限っては、ユーロ円相場の低迷にもかかわらず、少なくとも109円割れでは底固い値動きとなりそうだ。

一方110円台で定着、さらにドル高円安に動くには、一連の懸念が緩和する必要があるだろう。各国の対策が打たれたなかで、企業のオペレーションが正常化に向かうなら、政策を打った分だけ、リスク選好の後押しとなる。以外にドル高円安に振れるリスクシナリオもありえるだろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :109.78(▲0.04)
ユーロ :118.95(▲0.11)
英ポンド :143.208(▲0.10)
豪ドル :73.685(▲0.11)
カナダドル :82.839(+0.06)
スイスフラン :111.753(▲0.40)
ブラジルレアル :25.543(+0.30)
中国人民元 :15.705(▲0.02)
韓国ウォン(日本円=100) :9.276(+0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.0831(▲0.001)
英ポンド :1.3047(+0.000)
豪ドル :0.6714(▲0.001)
カナダドル :1.3252(▲0.002)
スイスフラン :0.9823(+0.003)
ブラジルレアル :4.2921(▲0.062)
中国人民元 :6.9869(+0.010)
韓国ウォン :1183.15(+0.25)

【主要国政策金利】
米国 :1.75
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.59(▲0.03)
米2年債 :1.43(▲0.02)
日本10年債利回り :▲0.03(+0.01)
日本2年債利回り :▲0.03(+0.02)
独10年債利回り :▲0.40(▲0.02)
独2年債利回り :▲0.66(▲0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :29,398.08(▲25.23)
NASDAQ :9,731.18(+19.21)
S&P500 :3,380.16(+6.22)
日経平均株価 :23,687.59(▲140.14)
ドイツ DAX :13,744.21(▲1.22)
インド センセックス :41,257.74(▲202.05)
中国上海総合 :2,917.01(+10.94)
ブラジル ボベスパ :114,369.20(▲1,293.20)
英国FT250 :21,790.08(+116.18)
ビットコイン :10385.26(+205.13)

【主要商品価格】
WTI :52.02(+0.60)
Brent :57.20(+0.86)
米ガソリン :158.40(+0.38)
米灯油 :169.81(+1.76)

金 :1583.55(+7.55)
銀 :17.74(+0.09)
プラチナ :966.15(▲4.04)
パラジウム :2434.08(+0.58)
銅 :5753.00(+13:16C)
アルミニウム :1734.00(+7:29.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :893.75(▲2.50)
シカゴ とうもろこし :377.75(▲1.75)
シカゴ小麦 :542.75(▲1.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。