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期待先行のリスク選好回復・楽観は続くか
  • MRA外国為替レポート

2020年2月10日号

◆先週の市場総括


先週は新型ウィルスの企業活動への悪影響・企業からの慎重な見方が相次ぐ一方、中国政府の経済下支え策や春節休暇明けの中国市場・中国株が落ち着いた値動きとなったことで、市場においてはリスク回避が後退。米国の経済指標が強めだったこともあり、米国株は月曜日から連騰となり大幅反発となった。

木曜日にかけて指数は史上最高値を更新。米長期金利も持ち直し、一時1.5%を割り込みかけていた10年債利回りは1.65%近辺に反発。ドル円相場は週初108円40銭で始まり週末にかけて110円ちょうど近辺まで上昇した。

しかし金曜日にはウィルス感染の悪影響があらためて意識されて米国株が5営業日ぶりに反落。米長期金利も小幅低下。ドル円相場も押されて一時109円50銭台。109円70銭~80銭で引けた。

ユーロ円相場は120円ちょうどちかくで週初とかわらず。ユーロドル相場は1.1090から1.0940へユーロ安ドル高。

日経平均は週初に22,800円割れに下落して始まったがその後は急速に反発して24,000円に迫った。週末は伸び悩み23,800円台前半で引け。

月曜日の東京市場は108円40銭で始まり概ね50銭を中心にもみ合い。ユーロは夕方にかけてじり安となり、ユーロドル相場は1.1090から1.1060へ、ユーロ円相場は120円20銭台から120円ちょうど近辺へ下落した。

日経平均は大幅安の22,800円割れで寄付き、一時前週末比▲400円を超える下落。ただその後は持ち直し23,000円を回復。引けは22,970円。

この日中国市場が春節休暇明けで取引を再開。上海総合指数は一時休暇前対比で9%近く下落したが引けにかけて下落幅を縮めて7%台の下落。中国人民銀行はおよそ18.7兆円の資金供給を発表。企業の資金繰り支援とともに、市場心理の安定を図った。

中国株の下げ幅が想定内となり、引けにかけて持ち直したことで過度な不安が緩和。円高も一服した。

中国で発表された財新・製造業PMI景況感指数(1月)は51.1と前月51.5から悪化した。欧米市場に入ると安心感から株価は堅調に推移。米国株は寄付きから大きく反発。ただ引けにかけてやや上昇幅を縮めた。

発表されたISM製造業景気指数(1月)は50.9と前月47.2から大きく反発して予想48.4を大きく上回った。雇用指数は46.6と前月45.2から改善。新規受注指数も52.0と47.6から上昇した。

ただ今後についての懐疑的な見方が残るなか好感も半ば。米10年債利回りは一時1.57%に反発したが1.52%に押し戻されて引け。

為替市場ではやや円安の流れ。ドル円相場は一時108円80銭に上昇した後50銭まで上下してじり高。108円90銭近辺で引け。ユーロ円相場は120円20銭近辺でもみ合い。ユーロドル相場は1.1060で引け。WTIは一時50ドルを割ったが51ドルに戻して引け。

火曜日の東京市場のドル円相場は108円60銭で寄付き夕刻にかけて109円ちょうど近辺まで上昇。ユーロ円相場は120円20銭で始まり120円60銭へ。ユーロ円相場は1.1060近辺でもみ合い。ユーロドル相場は1.1050近辺で概ね横ばい。市場の安心感・リスク選好が回復するなか円が軟調となった。

日経平均は22,850円近辺で小幅高寄りした後はじり高となり23,000円を回復。引けは23,080円。

中国株・上海総合指数が上昇。香港株・ハンセン指数は前日比+2.3%の上昇。中国市場の落ち着きでアジア株が軒並み大幅高となった。中国人民銀行による大規模資金供給など中国政府の経済下支え姿勢を好感した。

欧米市場ではリスク選好回復のなかドルが堅調、円が軟調。欧州株は大幅高。米国株は大幅続伸。NYダウは大幅高寄りして前日比一時+500ドルの上昇。引けにかけてやや下落したものの+400ドル超で引け。ナスダック指数は前日比+2.1%。

米長期金利は上昇し、10年債利回りは1.60%、2年債利回りは1.42%。ドル円相場は109円50銭に上昇してもみ合い。ユーロ円相場は121円近辺に上昇。ユーロドル相場は1.1030~40にユーロ安ドル高。米景気後退懸念が緩和した。

クドロー国家経済会議(NEC)委員長は、ウィルスの米経済への影響は最小限にとどまる、と述べた。米国の製造業新規受注(12月)は前月比+1.8%と予想より強め。

水曜日の東京市場のドル円相場は109円50銭で始まり上値の重い値動き。ユーロ円相場も120円90銭から70銭近辺へと下落した。

日経平均は23,300円台後半で高寄りし一時23,400円台に上昇。引けは23,320円。欧米市場ではさらにリスク選好回復が継続し、株高のなかドルが堅調。

米国株は大幅続伸。高寄りした後そのまま上昇を続けた。NYダウは前日比+480ドル。S&P500指数は史上最高値を更新。ウィルスに対するワクチン開発に進展があったとの報道、強い米国の経済指標が株価を押し上げた。

発表されたADP雇用報告(1月)は雇用者数・前月比+291千人と前月の+202千人から増加ペースが加速し予想+150千人を大きく上回った。またISM非製造業景気指数(1月)は55.5と前月55.0から改善して2019年8月以来の高水準となった。

米長期金利はさらに上昇して10年債利回りは1.65%、2年債利回りは1.44%。ドル円相場は109円80銭近辺へ。ユーロドル相場は1.1000近辺へ下落してもみ合い。ユーロ円相場は120円80銭で変わらず。

木曜日の東京市場もリスク選好回復で株高・円安。ドル円相場は109円80銭近辺で始まり堅調で110円手前でもみ合い。ユーロ円相場も120円80銭で始まり120円90銭近辺でもみ合い。ユーロドル相場は1.1000近辺でもみ合い横ばい。

日経平均は23,700円近辺で高寄りしじり高。24,000円に迫った。日経平均は前日比+550円、+2.4%。引けは23,870円近辺。TOPIX指数は+2.1%。中国株、アジア株も大幅続伸となり香港ハンセン指数は前日比+2.6%上昇。

中国財政省は、昨年発動した一部追加関税の引き下げを発表。米中通商第一段階を受け税率を半分にする、とした。相次ぐ中国政府の措置を市場は好感。欧米市場でもリスク選好の流れが継続。

米国株は4営業日続伸。じり高小幅続伸。ウィルスへの過度な懸念は緩和したが、事業への影響を見極めようという流れに。

原油価格WTIは低迷。債券は小動きで翌日の雇用統計待ち。米10年債利回りは前日とほぼ変わらず1.64%。ドル円相場は109円80銭に小幅下落のあとは110円ちょうど近辺でもみ合い引け。ドルが堅調。ユーロは軟調。ユーロドル相場は1.097~1.098で推移。ユーロ円相場は120円70銭近辺。

金曜日の東京市場のドル円相場は110円ちょうど近辺で始まり109円90銭を中心にもみ合い、小動き。

ユーロドル相場お1.098近辺でもみ合い。ユーロ円相場は120円70銭中心に上下。夕刻から欧州市場にかけてユーロ安・円高となった。ユーロ円相場は120円10銭近辺に下落。ユーロドル相場は1.0950へ。ドル円相場は連れて109円80銭割れに小幅下落した。

雇用統計待ちながらウィルス感染拡大はやや心理的な重石に。日経平均は小幅下落して23,800円台前半でもみ合いに終始し引けた。欧米市場ではリスク選好の回復・株高が一服。先走った楽観論が後退し米国株は5営業日ぶりに反落。

米国株は安寄りした後一段安。サプライチェーンの停滞、売上への悪影響に関する慎重な見解をいくつかの企業が示した。

またFRBは議会に半年に1度提出する金融政策報告書において、経済規模の大きな中国での深刻な機能不全はリスク選好の後退やドルの上昇、貿易および商品市況の落ち込みを通じて米国や世界市場に波及する可能性がある、と記した。

注目の雇用統計(1月)は、非農業部門雇用者数・前月比が+225千人と予想+160千人を上回り前月+145千人から増加が加速。平均時給は前年同月比+3.1%と上昇率が前月+3.0%からやや加速した。

失業率は前月の3.5%から3.6%へ上昇したが労働参加率が前月の63.2%から63.4%へ上昇したことが影響したとみられる。全体としては強めの数字となったが、1月が例年に比べ温暖だったことも影響した模様。

米10年債利回りは1.58%に、2年債利回りは1.40%にそれぞれ低下。ドル円相場は109円台後半で上下した後109円70銭~80銭でもみ合い引けた。ドルが堅調に推移するなか円も堅調、一方ユーロは下落。ユーロ円相場は120円10銭~20銭で、ユーロドル相場は1.0940~50でもみ合い引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.新型ウィルス感染状況、企業の対応状況・影響に関する報道

引き続きウィルスに関する情報が市場心理を左右しよう。日本では感染者が増加しているが、厳密には国内というよりもクルーズ船や中国滞在者など限られたエリア・空間・関係者に抑制されている。水際での予防が万全なら数字ほどの懸念は生じないだろう。

一方で中国での工場操業停止などがグローバル企業全般に広がっている。企業の慎重な対応が緩和する兆しはなく、むしろ操業停止が拡大・延長される気配。業績への悪影響を懸念する声が広がれば市場心理の悪化につながることから注意を要する。

2.パウエル議長議会証言、FRB当局者発言

今週は火曜日に下院金融サービス委員会で、水曜日に上院銀行委員会で、パウエル議長が半年に1度の議会証言を行う。足元の景気動向、リスク、政策金利についてのスタンスはどうか。景気下振れリスクの認識を強め、追加利下げにどの程度傾いているか。あるいはなお政策金利は据え置き・様子見が基本線で、それほど悲観的にはみていないか。

また今週は他のFRB関係者の発言が相次ぐ。FOMCメンバーは金利据え置きで一致していたが、現時点でどの程度変化がみられるか。

3.米国の経済指標

先週の米国の経済指標は良好な数字が目についた。ISM製造業景気指数は50を回復。雇用統計では雇用者数の増加が予想以上に加速した。

市場の安心感・リスク選好の回復、株価急反発は、こうした数字にも支えられた面がある。

ただウィルス懸念、サプライチェーンへの悪影響が顕在化するなか、弱い数字に反応しやすいことは変わらない。今週の数字はどうか。

木曜日 消費者物価指数(1月、前年同月比、予想+2.5%、前月+2.3%、コア、予想+2.2%、前月+2.3%)

金曜日 小売売上高(1月、除く自動車、前月比、予想+0.3%、前月+0.7%)、鉱工業生産(1月、前月比、予想▲0.2%、前月▲0.3%)、設備稼働率(予想76.8%、前月77.0%)、ミシガン大学消費者マインド指数(2月、予想99.2、前月99.8)

◆今週のMRA's Eye


期待先行のリスク選好回復・楽観は続くか

先週、米国株は木曜日にかけて主要指数が史上最高値を更新するなど急速・大幅に反発した。市場のリスク選好が早くも回復。円高も一服してドル円相場は110円ちょうどをつけた。

こうした市場の楽観はいくつかの材料に支えられているが、ウィルス感染拡大による実体経済への悪影響が深まっている事実との乖離が拡大している点には留意が必要だ。株価上昇の持続力は懐疑的にみざるをえず、リスク選好による円安が継続し110円台で安定していく流れとなるには時期尚早とみえる。

先週は中国市場が春節休暇明けで取引再開。中国株は大きく下落したが、休暇前から10%を上回る下落とはならず、月曜日は9%近い下落から下落幅を縮めて7%~8%の下落に持ち直した。下げ幅は想定の範囲内ないし予想より小幅で、まずこの値動きそのものが、この間大きく下落したアジア株、日本株、そして欧米株に安心感をもたらした。

その背景にあるのが中国政府の対応。中国人民銀行は3日月曜日に1.2兆元(日本円でおよそ12.7兆円)の資金供給を実施することとした。

中小企業を中心とする資金繰りを支援することが主眼だが、心理的な効果で市場の安定化を図ろうという意図がみえる。

また木曜日には米国からの輸入品に対して昨年発動した追加関税を一部引き下げ、税率を半分とする旨を発表した。米中通商交渉第一段階合意を受けたものという。これら中国政府が経済的悪影響を最小限に止めようとする取組を市場は好感した。

米国では民主党がアイオア州で党員集会を開催。開票を巡るトラブルは民主党にネガティブで、また候補者は混戦のなか優劣が定まらない。そうしたなか水曜日にはトランプ大統領に対する弾劾裁判は上院で評決し無罪が確定。トランプ政権の大きな足かせが外れた。市場にとってはこれも安心材料となった。

また発表された米国の経済指標に良好な数字が相次いだことも安心感・リスク選好を後押しした。

月曜日のISM製造業景気指数は景況感の分かれ目である50を一気に回復。50台をつけたのは昨年7月以来。前月の47.2から一気に回復した。週央のADP雇用報告では雇用者数前月比が29万人の増加。

ISM非製造業景気指数は55.5と前月から改善して昨年8月以来の高水準となった。週末の雇用統計も良好な数字だった。

これらは市場に心理的な好影響を与え、リスク選好を急速に回復させたが、これが持続するかは予断を許さない。足元の景気悪化、企業の慎重な対応、サプライチェーンへの悪影響拡大と、方向感が180度異なっている。

足元の悪化のその先のV字回復を見越した動きともいえるが、そうした期待先行には限界があり、また現在の状況をみると時期尚早で調整リスクが大きいようにみえる。

発表された米国の経済指標はいずれも1月分であり、これから悪影響が生じることを考えれば、好感することはできない。今後3月にかけて発表される2月以降の経済指標には弱い数字が散見される可能性がある。

クドロー国家経済会議(NEC)委員長は米経済への影響は最小限にとどまると述べた。しかし米国企業の中国でのオペレーション停止は拡大している。業績への悪影響が顕在化するのはこれからだろう。サプライチェーンの停止による業績への影響は今後相乗的に広がる可能性がある。

FRBも半期の金融政策報告書で、中国での深刻な機能不全がリスク選好の後退をもたらす可能性がある、と警戒している。実体経済の需給を反映する商品市況が軒並み低迷していることは、株価上昇が実体経済の動きと乖離して強い期待先行で支えられていることを示している。

鍵を握るのは感染拡大がピークアウトすること、さらに企業のオペレーションが再開されること、だ。その前に弱い経済指標が実体経済の悪化を顕在化させれば、市場のリスク選好は調整を余儀なくされる可能性があり留意が必要だ。

リスク選好が調整すれば足元で進んだ円安も反転し円高に押し戻されるリスクがある。ただし、FRBが報告書で指摘しているように、グローバルなリスク選好の後退がドル高をもたらすこともある。

外需に支えられ、インバウンド需要の恩恵を受け、アジア圏のサプライチェーンに深く組み込まれた日本経済への悪影響が相対的に大きく、内需が大きく地理的に離れた米国への影響が相対的に小さいのも事実。

リスク回避のもとでは円、ドル、ともに買われやすいが、よりドルが買われる可能性もある。この場合には、ドル円相場に限っては、ドル安円高は限定的となり、あるいは予想外にドル高円安が維持される可能性もある。

総じてドル円相場が108円割れから105円を試す可能性は引き続き低そうだ。実際、ユーロドル相場は1.094~1.095に下落し、ユーロ円相場は120円ちょうど近辺に下落するなか、ドル円相場が109円台後半から110円をつけている。

今後もドルインデックスの動き、ユーロドル相場の動向には留意が必要だ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :109.75(▲0.24)
ユーロ :120.14(▲0.65)
英ポンド :141.484(▲0.72)
豪ドル :73.229(▲0.80)
カナダドル :82.446(▲0.35)
スイスフラン :112.245(▲0.60)
ブラジルレアル :25.3992(▲0.28)
中国人民元 :15.657(▲0.11)
韓国ウォン(日本円=100) :9.2(▲0.07)

【対ドルレート】
ユーロ :1.0946(▲0.004)
英ポンド :1.2892(▲0.004)
豪ドル :0.6673(▲0.006)
カナダドル :1.3308(+0.002)
スイスフラン :0.9777(+0.003)
ブラジルレアル :4.3176(+0.035)
中国人民元 :7.0024(+0.032)
韓国ウォン :1186.36(+6.44)

【主要国政策金利】
米国 :1.75
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.58(▲0.06)
米2年債 :1.40(▲0.04)
日本10年債利回り :▲0.04(▲0.02)
日本2年債利回り :▲0.04(+0.02)
独10年債利回り :▲0.39(▲0.02)
独2年債利回り :▲0.64(▲0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :29,102.51(▲277.26)
NASDAQ :9,520.51(▲51.64)
S&P500 :3,327.71(▲18.07)
日経平均株価 :23,827.98(▲45.61)
ドイツ DAX :13,513.81(▲61.01)
インド センセックス :41,141.85(▲164.18)
中国上海総合 :2,875.96(+9.45)
ブラジル ボベスパ :113,770.30(▲1,419.70)
英国FT250 :21,499.29(▲73.57)
ビットコイン :9744.46(+7.10)

【主要商品価格】
WTI :50.32(▲0.63)
Brent :54.47(▲0.46)
米ガソリン :152.39(+2.59)
米灯油 :164.33(▲2.21)

金 :1570.44(+3.78)
銀 :17.70(▲0.12)
プラチナ :967.70(+3.90)
パラジウム :2320.60(▲24.75)
銅 :5670.00(▲70:17C)
アルミニウム :1721.00(▲3:27.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :882.00(+1.00)
シカゴ とうもろこし :383.50(+4.25)
シカゴ小麦 :558.75(+2.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。