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深まるリスク回避行動~米10年債利回り動向を注視
  • MRA外国為替レポート

2020年2月3日号

◆先週の市場総括


先週も新型ウィルスへの懸念が市場を支配。各国の対策強化に一時は懸念が一服する場面もあったが、最終的には中国国内のみならず各国と中国との移動が制限される措置となったことで懸念があらたになった。

中国経済の悪化のみならず、グローバルなサプライチェーンの機能停止を懸念して米国株は大幅安。世界経済の悪化を先取りするかたちでリスク回避が深化した。

週央のFOMCでは中国経済の悪化が確実視され、不確実性が強まっていることから米国経済への影響を慎重に注視するとのスタンスに。米長期金利は安全志向の資金流入で大幅低下。米10年債利回りは1.5%近辺に低下した。

株価や長期金利が大きく動いたのに対して為替市場は相対的に落ち着いた値動き。ドルはリスク回避のもとでも堅調に推移していたが、週末には対円、対ユーロ双方で下落。ドル円相場は週初に109円ちょうど近辺だったが週末は108円30銭台で引け。一方ユーロ円相場は120円20銭と週初とほぼ変わらず。

日経平均は前週末の23,800円台から一時23,000円の大台を割り込んだものの週末には踏みとどまった。ただ週末の米国株大幅安を受けて週初は大幅安で始まり市場のリスク回避心理が高まった状況が続きそうだ。

月曜日の東京市場では為替相場は方向感なく横ばい。108円90銭台で始まり109円近辺を中心に狭いレンジで上下。ユーロ円相場は120円10銭台で始まり120円ちょうど~120円30銭で推移。ユーロドル相場は1.1030近辺でもみ合いとなった。

日経平均は前週末の米国株安を受けて23,300円で大幅安寄り。一時23,400円に戻したが反落して23,340円近辺で引けた。中国関連・インバウンド関連株が大きく下落して下げを主導した。

海外市場ではさらにリスク回避が強まり株価が大きく下落した。欧州株・米国株ともに大幅安。NYダウは一時前週末比500ドル安。ナスダックは年初来最大の下げ。

航空・カジノ関連など観光関連株からハイテク株・景気敏感株へ下げが拡大して幅広く下落。サプライチェーンへの懸念が広がった。

この日、中国は春節休暇を2月2日まで延長することを発表。上海、蘇州では企業が2月9日まで休業するとされた。産業集積地のこうした決定に、中国製造業の停止・サプライチェーンへの影響が懸念された。

米長期金利は低下。米10年債利回りは1.60%、2年債利回りは1.44%に。安全な米国債への資金流入が金利低下を後押し。ドル円相場は底固い値動き。108円90銭~109円ちょうどで推移した。ユーロ円相場は120円ちょうど~120円10銭。ユーロドル相場は1.1020近辺。

ドイツIFO景況感指数(1月)は95.9と前月の96.3から低下して弱め。米国の新築住宅販売(12月)は季節調整済み年率換算694千戸と前月719千戸から減少して3か月連続の前月比マイナス。

火曜日の東京市場のドル円相場は108円90銭で始まり緩やかに上昇して夕刻には109円10銭。ユーロ円相場は120円ちょうどで始まり120円20銭に。ユーロドル相場は1.1020近辺でもみ合い。

日経平均は23,100円に続落、安寄りして始まり、23,100円台前半でもみ合い。引けにかけて持ち直して23,200円台で引け。

この日は米政府が対中渡航制限を決めるなど世界的に新型ウィルス感染拡大を食い止める動きが始まったことでややリスク選好が回復した。

米10年債利回りはアジア時間夕方から欧州市場にかけて1.58%に低下していたが1.64%に持ち直し。米国株は反発。ドル円相場は108円80銭に下落した後持ち直して109円10銭近辺でもみ合い。ユーロ円相場は119円90に下落した後反発して120円30銭。ユーロドル相場は1.100に下落した後1.1020に戻した。

発表された米耐久財受注(12月)は前月比+2.4%となったが除く輸送機器では▲0.9%と弱め。一方消費者信頼感指数(1月)は131.6と前月128.2から改善。リッチモンド連銀製造業指数(1月)も20と前月の▲5から大きく改善した。

米国株引け後に発表されたアップル社の10-12月期の決算は最高益となり不安感を鎮静化した。

水曜日の東京市場では小動きながらやや円高。ドル円相場は109円10銭~20銭で始まり夕刻は109円ちょうどへ。ユーロ円相場は120円30銭~40銭で始まり120円ちょうどへ。ユーロドル相場は1.1020からじり安となり1.100近辺へ。

日経平均は米国株の反発を受けて23,200円台後半で小幅高寄り。その後は23,200円からじり高となり23,380円近辺で高値引けとなった。

海外市場では米国株はまちまち。堅調に推移していたが、FOMC声明後のパウエル議長の会見を受けてリスク回避ムードが漂って上昇を失った。

FOMCは2日目で結果を発表(日本時間木曜日4:00)。政策変更はなし。声明文では、消費に関して、力強く拡大している、から、緩やかに拡大している、へやや下方修正された。

パウエル議長は、ウィルスが中国経済に打撃を与える可能性が強いが米国にどのような影響を及ぼすか判断するのは時期尚早、非常に慎重に状況を見守っている、少なくとも短期的に中国の生産に影響するのは明白、世界経済成長が安定する若干の兆しがあるが見通しに不確実性が残る、と述べた。

米長期金利は会見後に低下。10年債利回りは1.59%、2年債利回りは1.42%へ。一方為替相場は落ち着いた値動き。ドル円相場は109円10銭中心に上下して引けも109円ちょうど~10銭。ユーロ円相場は120円20銭に上昇する場面もあったが引けは120円ちょうど。ユーロドル相場は1.1010。

木曜日の東京市場でも為替相場は小動きながらやや円高に振れた。ドル円相場は109円台から108円90銭近辺に下落してもみ合い。ユーロ円相場は120円から119円80銭に下落。ユーロドル相場は1.1000~1.1010でもみ合い横ばい。

日経平均は23,300円割れに小幅安寄り。その後は一貫して下落して22,900円へ。引けは22,980円と大台23,000円を割り込んで前日比▲400円の大幅安。香港株・アジア株が大幅安・全面安。サプライチェーン不安の広がりが下げを促した。

海外市場に入っても株安の流れは継続。欧州株は下落。米国株も当初は大幅安。ただWHOが緊急事態を宣言すると対策強化への期待からリスク回避が一服して株価は持ち直し。米国株は引け際にかけて大きく戻して前日の高値近辺に上昇し前日比プラスで引けた。

米10年債利回りも一時1.54%に低下したが1.59%に反発。2年債利回りは1.42%。いずれも前日同水準にとどまった。

ドル円相場は一時108円60銭に下落したが反発して引けは108円90銭。ユーロ円相場は120円ちょうど中心の上下から一時119円80銭に下落したが引けは戻して120円20銭。ユーロドル相場はじり高となり1.1030で引けた。

発表された米国の10-12月期GDP速報は前期比年率+2.1%と前期と同様で予想通りだった。ただ実質個人消費は前期から減速し前期比+1.8%となった。

金曜日の東京市場の為替相場は引き続き小動き。ドル円相場は108円90銭で始まり持ち直して109円ちょうど~109円10銭でもみ合い。ユーロ円相場は120円10銭~20銭ではじまり20銭~30銭でもみ合い。ユーロドル相場は1.1020~30で小動き。

日経平均は23,150円で高寄りした後、23,400円に上昇して一時前日比+400円。しかしその後は23,200円~250円でもみ合い引けは23,200円。

海外市場に入るとリスク回避が一気に高まり株価は大幅安。WHOの緊急事態宣言を受けて各国が対策を強化。米国政府も緊急事態宣言により2週間以内に中国渡航歴のある外国人の入国を禁止。米国航空会社は中国便を当面運休。米企業による中国の施設閉鎖が相次いだ。

これに弱めの経済指標が重なって米国株は大幅安。NYダウは前日比▲600ドルの下落。米長期金利は10年債利回りが1.51%に低下。30年債は2%割れ。

ドルは対円、対ユーロで下落した。ドル円相場は108円90銭から108円40銭に下落してもみ合い引け。ユーロドル相場は1.1030から1.1090へ上昇。ユーロ円相場は120円ちょうど~10銭から120円20銭へ小じっかり。

発表されたシカゴ購買部協会景気指数(1月)は42.9と前月48.9から大きく悪化。一方でミシガン大学消費者マインド指数(1月確報)は99.8にやや改善した。

FRBクラリダ副議長は、米経済は好位置にあるがウィルスは不確定要素。中国・世界経済見通しがどう変わるか、米国への影響を注視、一時的な足踏みは吸収可能で、1~2四半期の減速でも全体像はおそらく不変だが、難しい状況であるとの見方には同感、と述べた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

市場心理はリスク回避に傾いており弱い経済指標に反応しやすい。今週は主要経済指標が相次ぐが予想を下回ることでリスク回避が後押しされる可能性には留意したい。

月曜日 ISM製造業景気指数(1月、予想48.4、前月47.2)

火曜日 製造業新規受注(12月)

水曜日 ADP雇用報告(1月、雇用者数・前月比増減、予想+150千人、前月+202千人)、ISM非製造業景気指数(1月、予想55.1、前月55.0)、貿易収支(12月)

金曜日 雇用統計(1月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+160千人、前月+145千人、平均時給・前年同月比、予想+3.0%、前月+2.9%)

2.新型ウィルスの感染状況、各国・企業の対応

先週は週末にかけて中国経済、世界経済への懸念が市場参加者に織り込まれていった。ある程度の事態悪化は想定されているが、それを上回る悪化となるか、ある程度の安心材料が示されるか。中国の対応状況、感染拡大抑制状況はどうか。

報道の信ぴょう性も疑われるところ、何らかの「正確な」情報が示されるか。また海外企業の中国国内拠点の当面活動停止が発表されているが、その広がり、サプライチェーンへの懸念がさらに高まることはないか。

3.中国の経済指標

現時点で中国経済の悪化は確実視されており、それがどの程度になるか、市場は懸念している。そうしたなか未だ感染拡大・深刻化前の経済指標ながら注目が集まろう。

月曜日 財新・製造業PMI景況感指数(1月、予想51.0、前月51.0)

水曜日 財新・サービス業PMI景況感指数(同、予想52.0、前月52.5)

金曜日 貿易収支(1月)

政府の景気対策により持ち直し期待が高まっていたなかだが、悪化ないし底割れ懸念が強まれば、あらためて市場にリスク回避が蔓延しかねず留意を要する。

ほか、3日月曜日に民主党がアイオワ州で党員集会を開催。大統領選挙が本格的にスタートし、民主党候補者の初戦での優劣が示される。

◆今週のMRA's Eye


深まるリスク回避行動~米10年債利回り動向を注視

先週、米10年債利回りは1.5%ちょうど近辺まで低下した。昨年9月に一時1.5%を割り込んだがそれ以来。当時は、世界的に製造業不況が長引き、米国でもISM製造業指数が悪化の一途。FRBは予防的利下げを実施の過程にあった。景気後退懸念、ドル金利先安感、が背景だった。

足元では、新型ウィルスによりグローバルなサプライチェーンへの悪影響が現実のものとなりつつあることが背景だ。

先週、米国ではFOMCが開催された。FRBは中国経済に対する悪影響は必至とみているようだが、ただ米国経済への影響は注視する段階。1~2四半期の景気低迷であれば一時的な調整圧力として、足元の景気動向、トレンドを変えるものではない、としている。

昨年夏から秋の長期金利低下との違いは2年債利回りと10年債利回りの逆転が生じていないこと。

10年債利回りは政策金利であるFF金利まで低下したが、現在はそこまでに踏みとどまっている。不透明感、不確実性が高まっている、景気下押し圧力が再燃していることは確かだが、また景気後退、利下げ再開に至る事態になるかどうかもまた不確実だ。

ただ市場は先行して、景気後退や若干の利下げまで織り込んだ。第一段階の不透明感そのものによるリスク回避から、第二段階の景気悪化が顕在化した場合のリスク回避へと、早々一歩前進したというのが現在の状況。

米長期金利がここからさらに低下するには、実際に景気後退が経済指標で確認されることが必要だ。

今週、米国ではISM景気指数が発表される。製造業指数は、12月の47.2から48.4へと改善が見込まれている。予想通りなら、市場の不安感がさらに深まることはないだろう。

逆に予想外に悪化し、この間の悪化トレンドがさらに継続していることを示すようだと、もう一段、市場がリスクを織り込む可能性がある。ただそれでも堅調な雇用・所得・消費動向が崩れない限り、米国経済に対する不安感は高まらないだろう。

週末の雇用統計に対する警戒感はいつにも増して高まった状態となろう。

ただ企業部門への悪影響が顕在化するのはこれから。指標としては2月分以降となる。ISM景気指数は来週の1月分数字ではなく、2月分の数字がどうなるかがポイント。

雇用情勢は、企業の景況感にタイムラグをもって影響されることから、2月から3月以降に影響がみえるかどうか。

それまで市場は、景気悪化を確実視しつつリスク回避を強めたまま、さらなる悪化を示すニュースを待つ状況が続くことになりそうだ。

不確実性の高まりにより、市場が求めるリスクプレミアム、要求利回りが高まったことで株価は調整局面を迎えつつある。一方、米長期金利10年債利回りが1.5%まで低下したことは、株価の相対的な優位性を高め、要求リスクプレミアムの増加を補っている。株価の下支え要因としても働く。

株価調整がどこまで進むかは現時点では不明だが、景気後退や企業業績の悪化、さらにそれが一時的ではなくトレンドとして中期的な悪化局面入りとなる証拠がなければ、短期的に終了するとみられる。

今回のウィルスは、感染力が強く、その感染力の強さに対する脅威が先行して、対応が過剰になっている感もある。致死率は低く、無症状感染者もいることから、通常のインフルエンザへの対処と同様でよいのかもしれない。

今後は感染の広がりとともに、社会・経済への影響を踏まえた適切な、バランスのとれた対処が模索されるのではないか。一方で、企業の活動停止などが長期化すれば、感染拡大以上に社会・経済へのダメージは大きくなる可能性がある。

市場のリスク回避の緩和は、現在厳格化する方向にしかない政府・企業の対応がピークアウトするかどうか、にかかっている。懸念されるのは、中国政府・習政権が、対外的な面子を重視するあまり、経済活動・生産活動の停止を必要以上に長期化させるケースだ。

悲観的な見方をすれば、ネガティブな対応、警戒的な対応が数か月長期化し、4-6月期で収まらないようなら、経済への影響は甚大となりかねない。

一方、1-3月期である程度の目途がついて冷静な対応に回帰するなら、一時的な混乱で収束する可能性がある。経済指標はこの先、3月に発表される数字(2月分)までは悪い数字となるだろう。その3月までに不安感が鎮静化、警戒が緩和しているかどうか。

ドル円相場はポジションの解消という点からはまだ円高に振れる余地がある。シカゴ通貨先物の直近1月28日火曜日時点のポジションは、円が36千枚の売り越し。前週の45千枚の売り越しから減少したものの変化は少なかった。

ユーロは58千枚の売り越しとなり前週47千枚から増加。その後週末にかけて進んだドル安は、こうしたポジションの手仕舞いによるドル売りが主導した可能性がある。

これが7日金曜日に発表される2月4日火曜日時点の数字でどの程度減少しているか。一方、世界経済の後退、とくに米国景気の後退まで視野に入らなければ、積極的に円買いポジションを構築する理由はない。

米10年債利回りがさらに1.4%台に低下し、昨年9月の水準を下回るかどうか。新たな悲観材料がなければそれは難しいと考えられるが、ともあれ、市場がどの程度のリスクシナリオを織り込んでいるかをみるうえでは、最も重要なリトマス試験紙となる。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.35(▲0.61)
ユーロ :120.17(▲0.04)
英ポンド :143.11(+0.45)
豪ドル :72.508(▲0.72)
カナダドル :81.861(▲0.63)
スイスフラン :112.465(+0.08)
ブラジルレアル :25.2999(▲0.37)
中国人民元 :15.728(▲0.03)
韓国ウォン(日本円=100) :9.059(▲0.10)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1093(+0.006)
英ポンド :1.3206(+0.011)
豪ドル :0.6692(▲0.003)
カナダドル :1.3237(+0.003)
スイスフラン :0.9634(▲0.006)
ブラジルレアル :4.2828(+0.035)
中国人民元 :休場( - )
韓国ウォン :1191.74(+6.57)

【主要国政策金利】
米国 :1.75
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.51(▲0.08)
米2年債 :1.31(▲0.10)
日本10年債利回り :▲0.07(▲0.01)
日本2年債利回り :▲0.07(+0.00)
独10年債利回り :▲0.43(▲0.03)
独2年債利回り :▲0.67(▲0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :28,256.03(▲603.41)
NASDAQ :9,150.94(▲148.00)
S&P500 :3,225.52(▲58.14)
日経平均株価 :23,205.18(+227.43)
ドイツ DAX :12,981.97(▲175.15)
インド センセックス :40,723.49(▲190.33)
中国上海総合 :休場( - )
ブラジル ボベスパ :113,760.60(▲1,767.40)
英国FT250 :21,143.49(▲148.39)
ビットコイン :9354.31(▲197.87)

【主要商品価格】
WTI :51.56(▲0.58)
Brent :58.16(▲0.13)
米ガソリン :148.87(▲0.50)
米灯油 :162.45(▲1.51)

金 :1589.16(+14.88)
銀 :18.04(+0.20)
プラチナ :961.04(▲18.42)
パラジウム :2287.77(▲11.71)
銅 :5588.00(▲47:18C)
アルミニウム :1724.50(▲12:15C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :872.50(▲3.75)
シカゴ とうもろこし :381.25(+1.75)
シカゴ小麦 :553.75(▲6.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最
新データを取得できなかった場合を指します。