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中国との往来停止措置の広がりで総じて軟調
  • MRA商品市場レポート for PRO

2020年2月3日 第1681号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「中国との往来停止措置の広がりで総じて軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、非景気循環系商品が物色され、前々日のWHOの緊急事態宣言を時間的に織り込めなかったLME非鉄金属価格と金銀、債券が上昇したが、その他は軒並み水準を切り下げる動きとなった。

新型肺炎の影響に加え、週末発表された米シカゴ購買部協会指数の大幅悪化(48.2→42.9)が景気循環系商品価格を押し下げた。

なお、エネルギー価格の下落が顕著になれば、米ジャンク債市場でのエネルギー関連企業の業績悪化につながり、ハイ・イールド市場が混乱する可能性があるため、注意が必要だ(近々、MRA's Eyeで解説の予定です)。

新型肺炎の影響は世界中で拡大しており、北朝鮮は早々に国境を封鎖したが、米国やシンガポールも中国からの渡航者の入国を認めないとすることを決定、イタリアは中国・イタリアの両国間の航空便の運航を当面停止するとした。

日本は中国武漢・湖北省に2週間以内に滞在歴のある人の入国を拒否する措置を発動したが、ウイルスは中国全土に広がっていることを考えると、他国と比較して対応は遅いといわざるを得ない。

中国での影響は逐次、いろいろなサイトで公開されているが、市場の観点からは、「ドクター・カッパー」の動きを見ていると参考になるだろう、

※新型コロナウイルスの感染拡大状況は、こちらのリンクからどうぞ。https://marketrisk.jp/news-contents/contents/8141.html

なお、注目していたボルトン前大統領補佐官の証人尋問は、賛成49、反対51で上院で否決された。これにより弾劾裁判は実質審理を終了、2月5日(日本時間2月6日)に上院で評決が行われるが恐らくトランプ大統領の罷免は否決され、一連の問題は終了することになる。

【本日の価格見通し総括】

本日も、世界中に症例が広がっている中国発の新型ウイルスの影響拡大の状況をにらみながらの展開が予想されるが、世界的に中国への渡航禁止、中国からの入国禁止の動きが加速しており、ヒトとモノの移動の減速が続く見込みであることから、総じて景気循環系商品が売られる流れになると考える。

予定されている統計では1月の米ISM製造業景況指数と中国工業利益に注目している。

ISM製造業指数は昨日発表された、ISM製造業景況指数の先行指標である、シカゴ購買部協会指数が大幅な悪化となったことから、47.8→48.5への改善が見こまれているものの、市場予想を下回る可能性が高いと考えている。

中国の工業利益は工業金属価格動向を占う上で重要だが、11月は前年比5.4%と前月の▲9.9%から大きく改善している。中国政府の景気テコ入れ策によって恐らく利益は前年比で改善していると見るが、今後、という意味では肺炎の影響次第であり、正直何とも言えないところ。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日発表された中国の製造業PMIは50の閾値は維持したものの、50.2→50.0と市場予想通り減速することとなった。

内訳を細かく見ると、生産活動は鈍化(53.2→51.3)したが、新規受注に回復(51.2→51.4)している。しかし、輸出新規受注は50.3→48.7と減速しており、中国国内の需要の増加が全体を押し上げた、と考えるのが妥当だ。

中国政府の公共投資や預金準備率の引き下げ、といった経済対策が奏功したためと考えられる。なお、この間、在庫水準に大きな変化はみられておらず、やや在庫の水準は低い(完成品在庫45.6→46.0、原材料在庫47.1→47.2)。

中国は製造業の国から徐々に消費主体の国に移行しつつあるため、非製造業PMIの重要性は増していると考えられるが、総合指数が53.5→54.1と改善し、新規受注、新規輸出も回復基調にあることが確認されていた。

米国との通商協議合意を受けて米国向けの輸出が回復、輸出向け需要の回復と国内需要の回復で、この春以降に「緩やかな」回復基調に戻る、というのがメインシナリオだった。

しかし、この調査も新型肺炎の影響が拡大する前のものと考えられ、現在の経済封鎖が実質的に行われている状況を反映したものは来月末にならなければ取得できない。恐らく、状況は今月から悪化することが予想される。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを引き下げ(+3.4%→+3.3%)ている。2021年も3.4%(▲0.1%)に引き下。

ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっている。あったとしても後1回程度(▲25bp程度)の利下げに留まる(金融面の価格下支え期待の後退)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大(パンデミックリスクの顕在化)を受けた経済滑動の鈍化(景気循環系商品価格の下落要因)。

・米中通商交渉は部分合意。しかし関税が撤廃されたわけではなく、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護、国有企業への補助金撤廃などを中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。

通商面のみならず、資本フローの規制や、人権問題への制裁なども加わっており、通商面で妥協があったとしてもその他の分野での制裁発動の可能性は高い。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げによって、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は上昇後大きく下落した。WHOの非常事態宣言を受けて対策が進むのでは、との期待が価格を押し上げたが、感染が拡大しており需要への影響は不可避な状況の中、発表された米個人所得や支出が低迷、シカゴPMIも予想外の大幅な減速となり、需要への懸念が強まったことが背景。

最大消費国である米国は新型肺炎発生前から石油製品の出荷に鈍化が見られており、そもそも需要減速観が強まっていたことから、下げが大きなものとなった。

【原油価格見通し】

原油価格は現状の低水準でもみ合うものと考える。新型肺炎の影響の拡大が続いており、中国との航空便の運航を停止、中国からの撤退や渡航禁止を決定する国が増える中、輸送需要が減少すると見られることが背景。

ただし、この事態を受けてOPECプラスの減産観測、リビアからの供給減少は価格を下支えすると考える。

このようなパニック状態になると、需給バランスなどのファンダメンタルズ分析はほとんど役に立たず、チャートのテクニカル分析などの方がより重要になる。情報開示とともにファンダメンタルズ分析が可能になるが、まだそのステージにはない。

プットオプションの積み上がり具合を見ると、Brentは55ドルに積み上がっているが、その他の価格帯には大きくポジションが積み上がっていない、いわば「真空地帯」であり、さらに大きく水準を切り下げるリスクは視野に入れておくべきだろう。

トランプ大統領は中東和平案を発表したが、イスラエル寄りの内容でありパレスチナ側の反発は必至。すでにイスラム国がイスラエルに攻撃を仕掛けるとも表明している、

米国は中東原油への依存度が低下しているため、中東政策が「雑」になる傾向があり、中東情勢不安は今まで以上に高まっていると考えるべきだろう。

なお、米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、数ヵ月にわたって材料とされてきたこと、第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は下向きリスクとなる可能性がある。

合意の影響は、毎月の統計や実績を見ながら判断せざるを得ない。エネルギーに関しては原油やLNG、石化素材が合意に含まれるが、仮に履行されればWTIや米天然ガスの上昇要因となり、Brent、ドバイ、JKMの対北米原燃料プレミアムの縮小圧力が強まることになると予想される。

2月に行われる見通しとなったOPECプラス会合での減産延長については、新型肺炎の影響がどの程度になっているかによるが、足元の報道では減産規模が拡大する可能性が出ており、原油価格の下支え要因となる。

米・イラン問題は国同士の衝突リスクは低下したものの、武装勢力による小規模な攻撃は継続している。このような状況だと、米国人が1人死ぬことがレッドラインとするならば、局地的攻撃が偶発的な事故を誘発し、大規模な軍事行動につながる可能性は排除できず、今回と同様のイベントリスク顕在化で価格が上昇するリスクはあると見ている。

なお、ウクライナ機の誤射・撃墜をイラン政府が正式に認めた。ただし、搭乗者の大半はイラン人であり、イラン国内で指導部への反発が強まる可能性がある(すでに強まっている)。

リビア情勢は当事者不在の中、恒久停戦に向けて協力するという共同声明が発表された。実質的に「何もできない」ということである。再びリビア国内では戦闘が始まったと伝えられており、同国からの原油供給が途絶する可能性は高まっている。

トルコはリビアの暫定政権側を支持しているが、それはイスラエルやギリシャが欧州向けに進めているガスパイプラインを遮断することが目的だ。これまではトルコを通じて欧州に輸出されていたが、地中海ガスパイプラインが通ればトルコの権益や影響力が低下するためだ。

大規模戦争にはならないとみるが、リビアの停戦は非常に困難とみられる。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。

財政出動は使途にもよるが、エネルギー価格の押し上げ要因になると考える。今のところ米政権は中間層への減税を検討しているようだ。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅安。目立った新規手掛かり材料に乏しい中、ピークシーズンでもあり季節的な需要が価格を下支えしている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は中国の新型肺炎の影響が拡大、封鎖された都市の数が増加する中、エネルギー需要が鈍化するとみられることから、軟調な推移になると考える。

ただし、ピークシーズン入りしていること、年度が変わったことによる、中国の輸入再開観測を受けて結局は現状水準でのもみ合いになると予想される。

ドイツが脱石炭火力推進で、大規模な補償を伴う法案を可決、2038年までに石炭火力発電所撤廃の方針が強まることから、アジア太平洋地区の石炭需給は構造的な緩和圧力が強まることが予想される。

ただし長期的には同様の環境規制の強化が石炭供給を減じるため、価格の押し上げ要因となる。欧州の脱炭素の動きは非常にトリッキーだ。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPECプラスは新型肺炎の影響で2月に会合を開催、追加減産を行う可能性が出てきている。

ただし、需要面の減速感が強まっているときの減産効果は限定されるうえ、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、追加減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオ。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入増加。12月の貿易統計では、原油の輸入が4,548万トン(前月4,574万トン)と高い水準を維持。

今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、景気減速懸念の強まり。

・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。

・米国の中東への関与低下や原油価格の下落による、中東・北アフリカでの暴動発生。特にシーア派三日月地帯とリビアでの発生リスク。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTI・Brentともにロングが減少、ショートが増加した。明らかに需要減速を意識したロングの解消と、生産調整が覚束ない中でのショートの積み上がりの流れ。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが588,255枚(前週比 ▲10,973枚)ショートが126,493枚(+47,833枚)ネットロングは461,762枚(▲58,806枚)

Brentはロングが480,539枚(前週比▲18,197枚)ショートが78,182枚(+8,436枚)ネットロングは402,357枚(▲26,633枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は上昇した。WHOの緊急事態宣言を織り込めなかったためこれを織り込む形で上昇したが、日本以外のアジア市場が軒並み下落したため、引けにかけてほぼ一貫して水準を切り下げる展開となった。

また、中国製造業PMIの悪化や、米シカゴ購買部協会指数の悪化も、工業金属需要の減少観測を強め、価格の下押し要因となった。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は新型肺炎の影響が拡大し、最大消費国である中国各都市の封鎖や、正月休み期間の延長などで工場の稼働が停止する見込みであり、各国も中国への渡航を禁止する動きに踏み切るなど、さらにヒトやモノの移動が制限される見通しであることが需要面で価格を下押しするため、軟調な推移になると考える。

非鉄金属市場の焦点は、休日明けの中国勢がどの程度買いを入れてくるかだろう。ただし、景気の底入れはQ220頃になる可能性が高く、下値余地を探りやすい地合いにあるため、大幅な戻りにはならないと考える。

なお、米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、数ヵ月にわたって材料とされてきたこと、第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は下向きリスクとなる可能性がある。

制裁緩和の影響は今後の統計を睨みながらになる。ただ、中国が米国との合意を順守した場合、日本の中国向け工業品輸出が減少して、日本企業にとってはマイナスに作用する恐れがある。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないと予想される。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めていることが、非鉄金属においても今後の大きなテーマとなると見られる。

財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。今のところ米政権は中間層への減税を考えているようだ。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

中長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。具体的には社会インフラとして「バッテリー」としての需要が高まると予想される、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは減速したが、閾値の50を維持。しかし、新型肺炎の影響が統計に表れるのは2月以降であり、さらなる減速の可能性は高い(価格の下落要因。

在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているため伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・12月の銅地金・製品の輸入量は52万7,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準。また、銅鉱石の輸入も192万8,000トンと、過去最高となった前月は下回ったものの、同じ時期の過去5年の最高水準を大きく上回っている。公共投資(電線網整備)などの公的需要が需要を下支えしているとみられ、中国の取引所在庫は過去5年平均を下回っている。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、景気減速懸念の強まり。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・1月24日付のLMEロング・ショートポジションの動向は、亜鉛とアルミのロングが増加したが、それ以外の金属はロングが減少した。中国の新型肺炎の影響が意識されたためと考えられる。

しかし同時に、中国の一連の経済対策による景気への楽観からショートの買戻しが入っていたのも事実だろう。

しかし今後は新型肺炎の状況をにらみながらのポジション取りとなり、ロングの解消が進むと予想される。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は+12.8億ドル(前週+15.7億ドル)と買い越し幅を縮小した。買い越し額の増加率は▲18.1%。買い越し枚数が増加しているため、価格下落によるもの。

買い越し枚数はトン数換算ベースで+266千トン(前週+201千トン)と買い越し幅を拡大した。ネット売り越しの増加率は+32.2%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅安、原料炭スワップ先物は小幅上昇、中国鉄鋼製品先物価格は休場だった。

中国勢が正月入りして積極的な買い手が不在となる中で、新型肺炎の影響が拡大し、中国の工場稼働の目処が立たず生産活動に悪影響が出るとの見方が強まっていることが、総じて鉄鋼原料価格に下押し圧力を掛ける展開となっている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、新型肺炎の感染拡大による経済活動の鈍化懸念や、最大の買い手である中国勢の不在(一部)が続くことが価格を下押しするが、鉄鉱石の港湾在庫日数の水準は過去5年平均を下回っており、鉄鋼製品価格も水準が高いことから粗鋼生産も高水準で推移するとみられることから下落余地も限定されると考える。

米中の通商合意は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る対立を見るに、まだ両国関係は鉄鉱石価格の波乱要因になると見る。

また、冬場の鉄鉱石価格は季節的には強含みやすいものの、冬場の鉄鋼製品生産規制により鉄鋼向け需要が減速するため(短期的には鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鉱石価格の上昇要因となる)、今年は例年よりは低い水準での推移になるのではないか。

なお、2020年はValeの生産本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。

原料炭は鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格短期~中期見通しはやや強気である。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは47.1(前月43.1)と回復した。生産活動の回復(44.1→46.7)と、新規受注の回復(36.2→46.8)が影響した。

しかし、そもそも水準が閾値の50を下回っており、原材料在庫の水準も51.1(前月48.9)と閾値の50を上回っていることを考えると、そこまで鉄鋼セクターの業況が良い、というわけではない。

・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

12月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は468万トン(前月458万トン)と過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に減速し、277.2万トン(前月2,078.1万トン)となった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入減少である。

今後に関しては輸入規制が導入されると見られる、石炭の国内生産も11月時点で3億3,406万トンと過去5年の最高水準を大きく上回っている。このことから、今後も輸入は減少すると予想される。

・中国の12月の鉄鉱石の輸入量は加速し、1億130万トン(前月9,065万トン)と高い水準を維持した。一方で、今年の鉄鉱石生産は3月以降漸増しており、11月は7,924.5万トンに達している。

しかし、中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲55万トンの1億2,735万トン(過去5年平均1億2,184万トン)、在庫日数は▲0.1日の29.3日(過去5年平均 32.9日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られる。

・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+130.4万トンの1,019.4万トン(過去5年平均962万トン)と例年を上回った。新規受注の減速があるため、徐々に鉄鋼製品受給は緩和するとみられる。

なお、12月の鉄鋼製品の輸出は468万トン(前月458万トン)と過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、景気減速懸念の強まり。

・中国政府の経済対策(金融緩和や公共投資など)は価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は上昇した。新型肺炎の影響拡大で、中国への渡航禁止を決定する国が増加、これを受けた景気の減速懸念から株価が調整、債券利回りも低下したことで実質金利が上昇したことが背景。

安全資産需要の度合いをしめす「リスクプレミアム(回帰分析との乖離)」は216ドルとなり、むしろ前日の220ドルから低下している。

PGMは下落した。株価の下落で工業金属的な色彩が強いプラチナ・パラジウムは売られた。ただし、供給懸念と構造的な需要増加が見込まれているパラジウムの下げ幅は限定された。

【貴金属価格見通し】

金価格は新型肺炎リスク拡大の懸念を受けた株安・債券高が実質金利を押し下げるため、高値圏での推移を継続すると考える。

仮に地政学的リスクが完全に解消した場合、リスクプレミアムがはげ落ちる形で金価格は下落することになる。現在のプレミアムは220ドル程度であり、実力ベースでは金価格は1,350ドル程度だろう。

ただ実際は過去の実質金利からの乖離幅は平均で160ドル程度であるため(リスクが完全になくなることはあまりない)、リスクが回避された場合、1,500ドル程度までしか下げ余地はないと見ている。

なお、米中合意は第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は金銀価格の上昇リスクとなる可能性がある。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は再び上昇に転じており、金銀レシオの上昇を肯定しやすくなっている。しかし、現在の金銀レシオは在庫レシオで見た場合やや高すぎで、金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられ、20ドル前後まで価格が上昇してもおかしくない地合い。

特にリスク回避姿勢が強まり金が割高となる局面では、割安な銀が投機的な観点から物色される可能性は高かろう。

PGM価格は金銀価格が高値圏を維持する見込みであることから同様に高値を維持すると考えるが、新型肺炎の影響拡大が無視できないため、金銀価格対比では割安に推移しよう。

パラジウムは供給懸念が強く意識されているため引き続き、高値圏での推移となると予想される。

なお、パラジウムは投機の買いが押し上げているというよりも実際に顕著な供給不足によって上昇しているものであり、「どこまで上昇するのか」「調整した時のめどはどこか」といったことは正直不明である。

中国・世界の自動車販売は前年比マイナスが続いているが、徐々に前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていることから、需要面で価格を押し上げる可能性は高い。

やや懸念されるのが、12月の米自動車販売は1,670万台(前月 1,709万台)と再び失速している点。今後、米国政府が宣言通り中間所得者層向けの減税が実施できるか、長期金利上昇を抑制できるかに注目が集まろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・市場はFRBの年1回の利下げを見込んでいるが、政策変更はないとの見方が現在のメインシナリオ。しかし新型肺炎の影響次第では追加利下げの可能性も否定できず。

ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に向け、各国政府に働きかけを強めることになるだろう(これは中央銀行の権限外であるが)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するにはまだ時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、安全資産需要の高まり。

・中東・北アフリカ有事発生に伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・米中通商交渉が部分合意したが、第二弾合意は中国側にメリット少なく、むしろ今後は状況が悪化する可能性の方が高いか。この場合安全資産需要増加で価格の上昇要因。

・トルコ政府はシリアへの侵攻で発生した空白地帯に、シリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も(金銀価格の上昇要因)。

・英国のブレグジットは1月末に確定したが、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金はロングが増加、ショートが減少。新型肺炎問題の勃発で金需要は増加している。銀は逆にロングが減少、ショートが増加した。

プラチナはロングが減少、ショートも減少。どちらかというとポジション解消の動き。パラジウムも同様だが、ロングの減少が大きかったため、買いポジションは縮小。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが376,401枚(前週比 +1,608枚)、ショートが46,309枚(▲10,789枚)、ネットロングは330,092枚(+12,397枚)、銀が105,637枚(▲3,507枚)、ショートが42,220枚(+1,951枚)、ネットロングは63,417枚(▲5,458枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが77,440枚(前週比 ▲512枚)ショートが9,844枚(▲717枚)、ネットロングは67,596枚(+205枚)

パラジウムが12,234枚(▲3,234枚)、ショートが5,322枚(▲302枚)ネットロングは6,912枚(▲2,932枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物はトウモロコシが小幅高となったが、大豆と小麦は売られた。週末発表された米輸出検証高で、トウモロコシは668.56千トン(前週比+271.95千トン)、大豆は1,038.84千トン(▲167.30千トン)、小麦は223.99千トン(▲292.32千トン)となったことが素直に材料視された。

新型肺炎の影響が拡大する中で輸出需要が減速するのでは、との見方が価格を押し下げるものの、景気減速を受けて非景気循環系商品の需要が高まっていることが相殺している。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は新型肺炎の影響で米国からの輸出が鈍化する、との懸念が広がっていることから軟調地合いになると考える。

しかし、米中の通商面の合意や、異常気象による小麦の生産減少観測などへの懸念も根強く、また、景気減速から非景気循環系商品が物色されやすい地合いになるため、底堅い推移になると予想する。

ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシ・大豆の受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、供給に懸念は少なく、価格には下押し圧力が掛かりやすい地合い。

小麦は豪州火災の影響や、ロシア・ウクライナの悪天候の影響で供給に懸念が出ていること、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、上昇圧力が掛かりやすい。

ただし「小麦は雑草」の格言通り、最終的には供給は間に合うと予想され、上昇余地も限定されると考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・1月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9.200万Bu(市場予想135億207万Bu、前月136億6,100万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億1,307万Bu、35億5,000万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・1月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ 18億9,200万Bu(市場予想17億7,641万Bu、前月19億1,000万Bu)大豆 4億7,500万Bu(4億3,100万Bu、4億7,500万Bu)小麦 9億6,500万Bu(9億7,046万Bu、9億7,400万Bu)

・12月末の四半期在庫トウモロコシ 113億8,900万Bu(市場予想114億7,171万Bu、前月22億2,100万Bu)大豆 35億5,200万Bu(31億9,033万Bu、9億900万Bu)小麦 183億4,000万Bu(190億300万Bu、23億4,600万Bu)

(特殊要因)

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米中通商交渉は部分合意したと伝えられており、足元シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、長期化の可能性は高くシカゴ定期の下落要因に。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・エルニーニョ現象は終息したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが320,909枚(前週比 ▲9,626枚)、ショートが247,489枚(▲35,023枚)ネットロングは73,420枚(+25,397枚)

大豆はロングが134,873枚(+10,178枚)、ショートが141,169枚(+34,118枚)ネットロングは▲6,296枚(▲23,940枚)

小麦はロングが158,579枚(▲374枚)、ショートが117,438枚(+6,210枚)ネットロングは41,141枚(▲6,584枚)

◆本日のMRA's Eye


「中国の商品市場での役割変化」

中国のGDPが発表され、58年ぶりの低水準となる6.1%となった。これは政府目標である6.0%?6.5%の範囲に収まるため、一応、目標は達した形となる。現在中国は工業セクターから第三次産業へ構造転換を図る局面に入っており、今後はIT技術や人工知能などの分野に積極的に乗り出すと予想され、現に共産党政権はその方針でそれが米中冷戦の開戦に繋がった。

通常、人口動態がピークアウトすると景気の成長ペースが鈍化を始める。中国の場合人口ボーナスのピークが2010年だった。重要指標の減速が顕著になったのはこの頃からである。

しかし、中国はひとりっ子政策の影響で、他の国と比較して労働人口比率の上昇ペースも早かったが減速ペースも速い。通常、この人口ボーナス期に至るまで中間所得者層が増加し、それに対応するサービス業の多様化が起きて高所得国入りする、という流れになるが、歴史に類を見ないひとりっ子政策の影響で、中国経済がこのパスを経て発展していくとは考え難い。

そこで共産党政権は一計を講じ、1.他国の企業を買収して顧客基盤や知見を取得する、2.中国に進出する企業の技術を強制移転し、ノウハウを吸収する、という方針を打ち出した。顧客を抱えている企業や国が強い、ということの典型である。

中国政府が急ぐ理由は、国連データを元にすれば人口オーナス期入りは2035年頃であり、残された時間はあと15年程度である。加えて2016年から採用した「ふたりっ子政策」が国民にあまり受け入れられておらず、想定よりも速いペースで人口オーナス期入りする可能性もあるためだ。

ふたりっ子政策は、中国国内からは「今さら子供を2人持て、と命令される話ではない」とか「住宅価格が高騰する中で2人目の子供を持つゆとりはない」といったことで政府が期待しているような効果は出ていない。もし子供が2人以上欲しければ、他の国に移住する、という選択をする中国人も多いのだろう(富裕層に限るが)。

今まで世界の工場だった中国だが、少子化に伴う労働人口不足、それに伴う労働コストの上昇から、これまで以上に周辺諸国への工場移転が進み、消費行動は変化することが予想される。

おそらく、インフラ投資需要が旺盛な国(インドなど)、工場として中国を代替し得る国(今はベトナムがブーム)、が工業金属価格に影響を与えると予想される。

その一方でまだ自動車が完全に普及していないため、ガソリンなどの石油製品需要に占める中国の影響度は増すことになると予想される。電気自動車が普及して石油の影響を受けなくなるのは、国の補助なしで成り立ち得るといったコスト面、充電回数などの技術面を考えると人口オーナス期入りする2035年頃からになるのではないだろうか。

◆主要ニュース


・12月日本鉱工業生産速報  前月比+1.3%(前月改定▲1.0%)、前年比▲3.0%(▲8.2%)
 出荷±0.0%(▲1.7%)、▲3.7%(▲7.7%)
 在庫+1.6(▲0.9%)、+2.1%(+1.6%)

・12月日本失業率 2.2%(前月2.2%)、有効求人倍率 1.57倍(1.57倍)

・12月日本小売売上高 前年比▲2.6%(前月▲2.1%)、前月比+0.2%(+4.5%)

・12月日本百貨店スーパー販売額 前年比▲3.0%(前月▲8.2%)

・1月東京消費者物価指数 前年比+0.6%(前月+1.0%)
 除く生鮮+0.7%(+0.8%)
 除く生鮮エネルギー+0.9%(+0.9%)

・11月日本国内自動車販売 前年比▲9.3%(前月▲11.9%)

・12月日本住宅着工戸数 前年比▲7.9%の85.2万戸(前月▲12.7%の84.8万戸)

・12月日本建設工事受注 前年比+21.4%(前月▲1.2%)

・1月中国製造業PMI 50.0(前月50.2)
 生産 51.3(53.2)
 新規受注 51.4(51.2)
 輸出新規受注 48.7(50.3)
 受注残 46.3(45.0)
 輸入 49.0(49.9)
 完成品在庫 46.0(45.6)
 原材料在庫 47.1(47.2)
 雇用 47.5(47.3)

・1月中国鉄鋼業PMI 47.1(前月43.1)
 生産 46.7(44.1)
 新規受注 43.8(36.2)
 輸出新規受注 49.7(35.6)
 完成品在庫 45.3(43.7)
 原材料在庫 51.1(48.9)

・1月中国非製造業PMI 54.1(前月53.5)
 新規受注 50.6(50.4)
 新規輸出 48.4(47.8)
 受注残 43.6(44.5)
 在庫 47.2(47.2)
 雇用 48.6(48.3)

・Q419ユーロ圏実質GDP速報 前期比+0.1%(前期確定+0.3%)、前年比+1.0 %(+1.2%)

・1月ユーロ圏消費者物価指数 前月比▲1.0%(前月+0.3%)、前年比予想+1.4%(+1.3%)、コア指数 +1.1%(+1.3%)

・12月インド財政収支1兆2,389億1,000ルピーの黒字(前月8,738億9,000万ルピーの黒字)

・12月米個人所得 前月比 +0.2%(前月+0.4%)
 個人支出+0.3%(+0.4%)
 実質支出+0.1%(+0.3%)
 PCEデフレータ 前月比+0.3%(+0.1%)、前年比+1.6%(+1.5%)
 コアデフレータ 前月比+0.2%(+0.1%)、前年比+1.6%(+1.5%)
 貯蓄率 7.6%(7.8%)

・Q419米雇用コスト指数 前期比+0.7%(前期+0.7%)

・1月シカゴ購買部協会指数 42.9(前月 48.2)

・1月米ミシガン大学消費者マインド指数改定 99.8(速報比+0.7、前月99.3)
 現況指数 114.4(▲1.4、115.5)
 先行指数 90.5(+2.2、88.9)
 1年期待インフレ率 2.5%(±0.0%、2.3%)
 5年期待インフレ率 2.5%(±0.0%、2.2%)

・米国、新型肺炎で中国全土への渡航禁止を勧告。

・米上院、ボルトン前大統領補佐官の証人尋問を否決、実質審理終了。2月5日に上院による評決が行われる見込み。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数675(前週比▲1)、 ガスリグ112(前週比▲3)。

・ロシア、「2月にOPECプラスとの会合を開く用意。」

・Q419Chevron
 石油換算総生産量307万8,000バレル(前年308万3,000バレル)

 液体石油生産 189万3,000バレル(186万2,000バレル)
  米国 77万1,000バレル(67万4,000バレル)

 天然ガス生産 7,110MCFD(7,328MCFD)
  米国 1,130MCFD(980MCFD)

 CAPEX 60億1,600万ドル(57億6,100万ドル)

・Q419ExxonMobil
 石油換算総生産量401万8,000バレル(前期389万9,000バレル、前年401万バレル)

 液体石油生産 243万6,000バレル(239万2,000バレル、234万8,000バレル)
  米国 66万5,000バレル(65万4,000バレル、58万3,000バレル)

 天然ガス生産 9,495MCF(9,045MCFD、9,974MCFD)
  米国 2,713MCFD(2,883MCFD、2,581MCFD)

 CAPEX 84億6,000万ドル(77億1,900万ドル、78億4,300万ドル)
 上流部門投資 60億9,100万ドル(57億9,100万ドル、62億5,000万ドル) 

・サウジアラムコ、プロパン価格を505ドル(前月比▲60ドル)、ブタン価格を545ドル(▲45ドル)に引き下げ。

【メタル】
・チリ銅委員会、「銅価格はウイルスに過剰反応している。」

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.LME鉛 3M ( ベースメタル )/ +2.71%/ ▲2.39%
2.LME錫 3M ( ベースメタル )/ +2.49%/ ▲4.11%
3.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ +2.30%/ ▲1.48%
4.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ +1.63%/ ▲9.03%
5.TCM天然ゴム ( その他農産品 )/ +1.19%/ ▲8.69%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲6.81%/ ▲20.02%
69.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲4.58%/ ▲22.18%
68.CME肥育牛 ( 畜産品 )/ ▲4.48%/ ▲6.37%
67.CBT大豆油 ( 穀物 )/ ▲2.25%/ ▲13.19%
66.NYB綿花 ( その他農産品 )/ ▲2.24%/ ▲2.24%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :28,256.03(▲603.41)
S&P500 :3,225.52(▲58.14)
日経平均株価 :23,205.18(+227.43)
ドル円 :108.35(▲0.61)
ユーロ円 :120.19(▲0.01)
米10年債利回り :1.51(▲0.08)
独10年債利回り :▲0.43(▲0.03)
日10年債利回り :▲0.07(▲0.01)
中国10年債利回り :休場( - )
ビットコイン :9,354.31(▲197.87)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :22.40(▲0.91)
エネルギー :24.72(▲1.21)
ベースメタル :21.04(▲0.22)
貴金属 :26.22(+0.16)
穀物 :15.06(▲0.32)
その他農畜産品 :24.05(▲1.65)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :27.17(▲0.23)
Brent :21.68(▲4.83)
米天然ガス :30.10(+0.59)
米ガソリン :28.56(▲0.22)
ICEガスオイル :25.81(▲1.66)
LME銅 :16.11(▲0.32)
LMEアルミニウム :12.42(▲0.02)
金 :10.23(▲0.17)
プラチナ :25.36(+0.89)
トウモロコシ :22.53(▲0.24)
大豆 :10.23(▲0.17)

【エネルギー】
WTI :51.56(▲0.58)
Brent :58.16(▲0.13)
Oman :59.66(+0.56)
米ガソリン :148.87(▲0.50)
米灯油 :162.45(▲1.51)
ICEガスオイル :501.00(▲8.00)
米天然ガス :1.84(+0.01)
英天然ガス :24.18(▲1.16)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :58.16(▲0.13)
SPO380cst :279.07(▲14.73)
SPOケロシン :79.82(▲0.48)
SPOガスオイル :66.53(▲1.15)
ICE ガスオイル :67.25(▲1.07)
NYMEX灯油 :201.65(▲0.63)

【貴金属】
金 :1589.16(+14.88)
銀 :18.04(+0.20)
プラチナ :961.04(▲18.42)
パラジウム :2287.77(▲11.71)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,588(▲47:18C)
亜鉛 :2,200(▲20:19B)
鉛 :1,852(+25:22.5B)
アルミニウム :1,725(▲12:15C)
ニッケル :12,760(+135:85C)
錫 :16,175(▲25:100B)
コバルト :34,638(+2,000)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5560.50(▲4.50)
亜鉛 :2208.00(+21.00)
鉛 :1877.00(+49.50)
アルミニウム :1725.00(▲3.50)
ニッケル :12790.00(+205.00)
錫 :16435.00(+400.00)
バルチック海運指数 :487.00(▲11.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :92.44(▲0.17)
NYMEX鉄鉱石 :92.44(▲0.46)
NYMEX原料炭スワップ先物 :149.28(+0.28)
上海鉄筋直近限月 :休場( - )
上海鉄筋中心限月 :休場( - )
米鉄スクラップ :275(±0.0)

【農産物】
大豆 :872.50(▲3.75)
シカゴ大豆ミール :291.00(▲0.50)
シカゴ大豆油 :29.94(▲0.69)
マレーシア パーム油 :2640.00(▲44.00)
シカゴ とうもろこし :381.25(+1.75)
シカゴ小麦 :553.75(▲6.75)
シンガポールゴム :156.30(±0.0)
上海ゴム :休場( - )
砂糖 :14.61(+0.02)
アラビカ :102.65(+1.15)
ロブスタ :1334.00(+30.00)
綿花 :67.50(▲1.55)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :57.13(▲4.18)
シカゴ生牛 :121.38(▲0.40)
シカゴ飼育牛 :136.08(▲6.38)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。