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エネルギーはOPEC減産観測で上昇もその他は総じて軟調
  • MRA商品市場レポート for PRO

2020年1月29日 第1678号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「エネルギーはOPEC減産観測で上昇もその他は総じて軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はエネルギーセクターと、ソフトコモディティ(その他農産品)、貴金属の一角が物色された。

新型肺炎封じ込めに向けた取り組みが加速していることが、株式市場では材料視されて株価が上昇、主に実需と思われる安値拾いの買いが入ったことがエネルギーセクターの価格を押し上げた。

しかし、最大消費国である中国が中国正月入りしており、さらには休みの期間が延長され「工場がどのタイミングで再稼働するのか」がよくわからない中で工業金属価格は軟調な推移となった。

そのように考えると、エネルギー価格の上昇はOPECプラスの減産やリビアの内戦悪化による供給不安が材料視されたと考えるのが妥当であり、まだ市場は新型肺炎問題が解決した、とみている訳ではない。少なくとも商品市場ではそのような反応だった。

【本日の価格見通し総括】

本日も、世界中に症例が広がっている中国発の新型ウイルスの影響拡大の状況をにらみながら、基本的には景気への懸念が強まる形で景気循環銘柄価格が軟調に推移し、非景気循環系商品が物色される流れが継続すると見る。

ただ、新しい材料が出ている訳ではなく、「現在織り込める材料」は市場は織り込んだと考えられるため、追加報道がなければ現状水準でもみ合うことになると予想される。ただ、ニュースを見る限り新型肺炎を巡る状況はより悪化している。

本日、予定されている材料としては欧米企業の決算発表本格化、FOMC声明。企業決算は好調が維持されるとの見方が大勢だが、市場が注目しているのは今後の見通し。特に新型肺炎の影響がどの程度のものになるか不透明な中では、積極的に株が物色される、という流れにはなり難いのではないか。

FOMCは恐らく政策が据え置かれると予想される。ただ、新型肺炎の影響によっては利下げの可能性を示唆することもあり得るために注目したい。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

新型肺炎の影響が拡大している。致死率が高くないため「さほど懸念していない」と考えていた人も、急速に増加する中国の感染者数を見るに、実は影響は大きいのではと再認識しているところだろう。感染者数に関してもやはり中国は「実際の数字よりも小さく」報じていたようだ。

中国の研究者がHIV薬が今回の肺炎のコロナウィルスに対して効果がある、という論文を発表しているようだが本当に正しく、効果があるのかは分からないし、結果が分かるまで恐らく数週間はかかるだろう。もちろんそれが事実であれば朗報である。

潜伏期間が2週間程度あることを考えると、中国正月で症状が出ていない保菌者が世界中に拡散している可能性は高く、このままだと大規模な物流やヒトの移動の封鎖が起きる可能性も否定できない。

前回、SARSの時は11月から翌年の7月まで終息まで8ヵ月掛かった。今回も11月頃からそれらしき感染者がいたようだが、同じ期間がかかったとしてもやはり7月までかかることになる。

7月のオリンピックを必ず開催しなければならないもの、とするのであれば、現在の中国の感染拡大を見るに、相当早いタイミングで職場や公共施設等の封鎖も検討しなければならなくなるだろう。結局、経済活動を鈍化させることでヒトやモノの流れを制限して、感染拡大を防ぐしか方法がない(もちろん特効薬が見つかれば話は別だが)。

政府からは今後の明確な対応方針が出されておらず、このままだと最悪、オリンピックが開催できない(過去に3回、戦争を理由に開始されなかったことはある)あるいは過去に例がないようだが、延期される可能性もあり得る。この場合、インバウンド消費も当然落ち込むことになるため、景気への打撃は計り知れない。

今年はアベノミクスの一巡や循環的な景気の減速で、日本の景気は減速が予想されるが、オリ・パラ関連需要や公共投資が下支えし、年後半の世界的な景気回復につなげる、というのがメインシナリオなのだがそうならない可能性がある。

SARSの例では4月頃に新しい症例の報告がなくなり、終息となった。SARSの時よりも確実に感染者数が多いためそのようになるとは思えないが、仮に同じようなタイミングで終息したとすると、今年の景気の「底」になると予想されるQ220がピークとなる。

仮にこの時に景気が底割れしてしまうと、金融・財政政策の余地がほとんどない中で長期のリセッション入りとなる可能性もあり得る。とはいっても今、民間部門や個人レベルで打てる手立ては限られる。結局、政府当局や信頼できる国際機関の発表を信じて、パニックにならないように対応するしか方法がない。

「福島原発がメルトダウンする」、「放射性物質で東京は死の街になる」といったような出元がはっきりしない「噂」で大パニックになった3.11から学べるものは多いのではないだろうか。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを引き下げ(+3.4%→+3.3%)ている。2021年も3.4%(▲0.1%))に引き下げた。

ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっている。あったとしても後1回程度(▲25bp程度)の利下げに留まる(金融面の価格下支え期待の後退)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大(パンデミックリスクの顕在化)を受けた経済滑動の鈍化(景気循環系商品価格の下落要因)。

・米中通商交渉は部分合意。しかし関税が撤廃されたわけではなく、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護、国有企業への補助金撤廃などを中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。

通商面のみならず、資本フローの規制や、人権問題への制裁なども加わっており、通商面で妥協があったとしてもその他の分野での制裁発動の可能性は高い。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。EUは英国のEU離脱期限延長で合意し、英総選挙では保守党が圧勝した。目先は無秩序離脱の可能性が後退するため価格の上昇要因。ただし、2020年12月末の移行期間までに条件で合意できなければ、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・中国政府が「法律に基づき」過去のGDPの見直しを行うと発表しているが、この見直しによって統計が悪化する可能性は高く、景気循環銘柄価格の下落要因に。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は反発した。世界的な新型肺炎に対する対応強化や、OPECプラスが4月以降の減産規模拡大を検討していると報じられたこと、リビア情勢が悪化し、原油生産が▲20万バレル規模で減少する見通しが示されたことが材料となった。

ただ、この数日のパニック的な売りによって値ごろ感が出てきたことから、OPECプラスの減産観測を背景に、実需筋などを中心に安値拾いの買いが入ったと考えられる。

また、昨日はトランプ大統領が中東和平案を発表した。しかし明確にイスラエル寄りの内容でありパレスチナ側の反発は必至。すでにイスラム国がイスラエルに攻撃を仕掛けるとも表明しており、米国主導で中東情勢が不安定化する可能性が出てきた。

【原油価格見通し】

原油価格は現状の低水準でもみ合うものと考える。中国の新型肺炎の影響が世界的に広がりを見せる中、ヒトやモノの移動が停滞し、輸送需要が減少するとみられることが需要を押し下げる一方、新型肺炎への対策期待やOPEC減産、リビアの減産、値ごろ感から安値拾いの買いが入ると予想されるため。

ただし肺炎問題は終息するどころかまだ拡大を続けており、ヒトヒト感染が発生していることから米国や欧州、日本でも影響が拡大する可能性があり予断を許さない状況。

このようなパニック状態になると、需給バランスなどのファンダメンタルズ分析はほとんど役に立たず、チャートのテクニカル分析などの方がより重要になる。情報開示とともにファンダメンタルズ分析が可能になるが、まだそのステージにはない。

今では世界的に一般化した、「一目均衡表」の雲を下抜けしていることから、さらに下値余地を試す可能性が出てきた。

また、プットオプションの積み上がり具合を見ると、Brentは60ドル、55ドル1に積み上がっているが、その他の価格帯には大きくポジションが積み上がっていない、いわば「真空地帯」であり、さらに大きく水準を切り下げるリスクは視野に入れておくべきだろう。

1月28日、トランプ大統領が中東和平案を発表したが、イスラエル寄りの内容でありパレスチナ側の反発は必至。すでにイスラム国がイスラエルに攻撃を仕掛けるとも表明している、

米国は中東原油への依存度が低下しているため、中東政策が「雑」になる傾向があり、中東情勢不安は今まで以上に高まっていると考えるべきだろう。

なお、米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、数ヵ月にわたって材料とされてきたこと、第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は下向きリスクとなる可能性がある。

関税の追加引き上げが見送られ、一部関税が引き下げられたことから、フロー需要の増加につながると見られる。ただこれも毎月の統計や実績を見ながら判断する、ということにならざるを得ない。

エネルギーに関しては原油やLNG、石化素材が合意に含まれるが、仮に履行されればWTIや米天然ガスの上昇要因となり、Brent、ドバイ、JKMの対北米原燃料プレミアムの縮小圧力が強まることになると予想される。

3月のOPECプラス会合での減産延長については、新型肺炎の影響がどの程度になっているかによるが、足元の報道では減産規模が拡大する可能性が出ており、原油価格の下支え要因となる。

米・イランの対立は一旦鎮静化した。ただし、米国人が1人死んでもそれはレッドラインと設定した可能性が高いうえ、局地的な攻撃は現在も続いていることから、偶発的な事故が大規模な軍事行動につながる可能性は排除できず、今回と同様のイベントリスク顕在化で価格が上昇するリスクはあると見ている。

なお、ウクライナ機の誤射・撃墜をイラン政府が正式に認めた。ただし、搭乗者の大半はイラン人であり、イラン国内で指導部への反発が強まる可能性がある(すでに強まっている)。

この場合、「米国がデモを煽っている」という名目のもと、国民の不満をそらすために米軍基地が再び攻撃にさらされる可能性がある。それでも米軍との衝突にならないような攻撃になると見るが、今回のウクライナ機撃墜のように「誤って」米国人を殺害してしまう可能性もあり、今回の件は地政学的リスクを高めるものといえる。

リビア情勢は当事者不在の中、恒久停戦に向けて協力するという共同声明が発表された。実質的に「何もできない」ということである。再びリビア国内では戦闘が始まったと伝えられており、同国からの原油供給が途絶する可能性は高まっている。

トルコはリビアの暫定政権側を支持しているが、それはイスラエルやギリシャが欧州向けに進めているガスパイプラインを遮断することが目的だ。これまではトルコを通じて欧州に輸出されていたが、地中海ガスパイプラインが通ればトルコの権益や影響力が低下するためだ。

大規模戦争にはならないとみるが、リビアの停戦は非常に困難とみられる。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。

財政出動は使途にもよるが、エネルギー価格の押し上げ要因になると考える。今のところ米政権は中間層への減税を検討しているようだ。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅安。中国正月入りで市場参加者が減少する中、新型肺炎の影響が需要を減じる、との見方が強まっており価格を下押しした。

【石炭価格見通し】

石炭価格は中国の新型肺炎の影響が拡大、封鎖された都市の数が増加する中、エネルギー需要が鈍化するとみられること、IMFの景気見通しも下方修正されていることから、軟調な推移になると考える。

ただし、ピークシーズン入りしていること、年度が変わったことによる、中国の輸入再開観測を受けて下値余地も限定されると予想される。

ドイツが脱石炭火力推進で、大規模な補償を伴う法案を可決、2038年までに石炭火力発電所撤廃の方針が強まることから、アジア太平洋地区の石炭需給は構造的な緩和圧力が強まることが予想される。

ただし長期的には同様の環境規制の強化が石炭供給を減じるため、価格の押し上げ要因となる。欧州の脱炭素の動きは非常にトリッキーだ。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPEC総会では現状追認の▲50万バレルの追加減産が決定され、さらにサウジアラビアが▲40万バレルの自主減産を決定、原油価格の上昇要因に。

ただし、減産は3月末までであること、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、OPEC減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオ。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入増加。12月の貿易統計では、原油の輸入が4,548万トン(前月4,574万トン)と高い水準を維持。

今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、景気減速懸念の強まり。

・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。

また、トルコ軍のシリアへの侵攻により、イスラム国の兵士が域外に逃亡(イラクなど)、このほかリビアにも派兵するなど中東・北アフリカの地政学的リスクが高いことは要注意。

サウジアラビアのアブカイクへのドローン攻撃でテロが低価格化・大規模化することが分かったことは、中東の供給途絶リスクを従来よりも高めるものであり、従来以上に中東情勢は重要に。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロング・ショート共に減少したが、ロングの減少幅が大きく総じて弱気に、Brentはロング・ショートとも増加したが、ロングの増加の方が顕著であった。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが599,228枚(前週比 ▲11,216枚)、ショートが78,660枚(▲1,472枚)、ネットロングは520,568枚(▲9,744枚)、Brentが498,736枚(前週比+3,794枚)、ショートが69,746枚(+966枚)、ネットロングは428,990枚(+2,828枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は続落した。中国の新型肺炎拡大の影響で封鎖対象地域が拡大、他国にも波及していること、中国正月で積極的な買い手が不在の状態になっていることが引き続き材料視されている。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は新型肺炎の影響が拡大していることに伴う製造業活動の鈍化観測や、IMF経済見通しの下方修正、最大の買い手である中国勢が中国正月で不在であることから、軟調地合いを持続すると考える。

そもそも景気の底入れはQ220頃になる可能性が高く、その意味でも下値余地を探りやすい地合いにある。

最大消費国である中国は景気テコ入れのための預金準備率引き下げや、3月の全人代以降の公共投資拡充などの対策期待、季節的に2月から3月にかけては中国の在庫積み増し時期であることから、野放図な価格下落にはならないと見てはいる。

しかし本当に底入れするかどうかは、新型肺炎の影響がどの程度で済むか、に依拠するため中国正月明けの2月中旬以降の特に中国情勢に注目する必要があろう。

なお、米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、数ヵ月にわたって材料とされてきたこと、第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は下向きリスクとなる可能性がある。

関税の追加引き上げが見送られ、一部関税が引き下げられたことから、フロー需要の増加につながると見られる。ただこれも毎月の統計や実績を見ながら判断する、ということにならざるを得ない。

金属に関しては非鉄金属に関しては米国向けの製品輸出需要の増加、という形で影響が出ると見られるが、この影響も様子を見ながらにならざるを得ない。

中国が輸入を増加させる対象にレア・アースが含まれているようだが、最大生産国である中国が輸入を増加させる、というのは難しかろう。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないと予想される。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めていることが、非鉄金属においても今後の大きなテーマとなると見られる。

財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。今のところ米政権は中間層への減税を考えているようだ。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

中長期的にはインドの構造的な需要増加や、環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想されるが、より短期的には、中国、欧州の景気がどこで底入れするのか、米国経済の後退がいつから始まるのかに依拠する。

今年の大統領選挙を睨んで米国がどのような対応をしてくるかが不透明であるが、こうした政策期待効果を除けば、底入れ感が出てくるのは来年の春~夏にかけてになると見ている。中期的には現状水準でのもみ合いが続こう。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか(従来見通しを変更)。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは回復し、閾値の50を維持。しかし、規模別でみた場合、中小企業の景況感はまだ50を上回っていない。価格へのプラスの影響は緩やかなものに止まろう。

在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているため伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・12月の銅地金・製品の輸入量は52万7,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準。また、銅鉱石の輸入も192万8,000トンと、過去最高となった前月は下回ったものの、同じ時期の過去5年の最高水準を大きく上回っている。公共投資(電線網整備)などの公的需要が需要を下支えしているとみられ、中国の取引所在庫は過去5年平均を下回っている。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、景気減速懸念の強まり。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、Valeの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

HydroのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・1月17日付のLMEロング・ショートポジションの動向は、錫のロングが減少したがその他は増加した。

中国の経済対策に伴う工業生産の回復などが材料となり、過度な悲観が弱まったため。アルミやニッケル、錫はショートも減少しており全体として強気なポジション取りに。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は+15.7億ドル(前週+5.5億ドル)と買い越し幅を拡大した。買い越し額の増加率は+185.3%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで+201千トン(前週▲32千トン)と買い越しに転じた。そもそも取り扱い数量の多いアルミが売り越し幅を縮小させたことが背景。ネット売り越しの減少率は▲731.2%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、原料炭スワップ先物は変わらず、中国鉄鋼製品先物価格は休場だった。

中国勢が正月入りして積極的な買い手が不在となる中で、新型肺炎の影響が拡大し、中国の工場稼働の目処が立たず生産活動に悪影響が出るとの見方が強まっていることが、総じて鉄鋼原料価格に下押し圧力を掛ける展開となっている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、新型肺炎の感染拡大による経済活動の鈍化懸念や、最大の買い手である中国の中国正月入り、IMFの経済見通し下方修正を受けて軟調な推移になると考える。

とはいえ、最大消費国である中国の公共投資に伴う需要増加や、冬場の鉄鋼製品生産規制から鉄鋼製品価格が高止まりしていること、豪州の供給懸念、季節的な在庫積み増しの時期に当たることから下値余地も限定されるだろう。。

米中が貿易交渉で部分合意、これ自体は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る対立を見るに、まだ両国関係は鉄鉱石価格の波乱要因になると見る。

また、冬場の鉄鉱石価格は季節的には強含みやすいものの、冬場の鉄鋼製品生産規制により鉄鋼向け需要が減速するため(短期的には鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鉱石価格の上昇要因となる)、今年は例年よりは低い水準での推移になるのではないか。

なお、2020年はValeの生産本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。

原料炭は鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格短期~中期見通しはやや強気である。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは43.1(前月45.4)と再び減速した。新規受注の落ち込み(43.8→36.2)によるものであり、内外需とも不調である。これに伴い在庫水準も積み上がっており、需給ファンダメンタルズが緩和しつつあることを示唆している。価格には下押し要因に。

・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

12月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は468万トン(前月458万トン)と過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に減速し、277.2万トン(前月2,078.1万トン)となった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入減少である。

今後に関しては輸入規制が導入されると見られる、石炭の国内生産も11月時点で3億3,406万トンと過去5年の最高水準を大きく上回っている。このことから、今後も輸入は減少すると予想される。

・中国の12月の鉄鉱石の輸入量は加速し、1億130万トン(前月9,065万トン)と高い水準を維持した。一方で、今年の鉄鉱石生産は3月以降漸増しており、11月は7,924.5万トンに達している。

しかし、中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲55万トンの1億2,735万トン(過去5年平均1億2,184万トン)、在庫日数は▲0.1日の29.3日(過去5年平均 32.9日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られる。

・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+130.4万トンの1,019.4万トン(過去5年平均962万トン)と例年を上回った。新規受注の減速があるため、徐々に鉄鋼製品受給は緩和するとみられる。

なお、12月の鉄鋼製品の輸出は468万トン(前月458万トン)と過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、景気減速懸念の強まり。

・中国政府がシャドーバンキングを含む金融市場の緩和を進めているほか、地方政府にも債券発行枠の前倒しを認めるなど、景気テコ入れのため公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格はまちまち。金価格は新型肺炎の封じ込め策への期待がたかまる中で、株に買戻しが入り長期金利が上昇したことが価格を下押しした。銀はこのような局面だと金以上に下落する傾向が強く、水準を切り下げた。

PGMは新型肺炎の影響の織り込みが一巡、割安感から一旦買戻しが入った形。

【貴金属価格見通し】

金価格は新型肺炎リスク拡大の懸念が広がっており、株価の調整が債券利回りの低下を通じて実質金利を押し下げること、株安に備えるための安全資産需要が高まることから、高値圏での推移を継続すると考える。

仮に地政学的リスクが完全に解消した場合、リスクプレミアムがはげ落ちる形で金価格は下落することになる。実力ベースでは金価格は1,300ドル程度だろう。

ただ実際は過去の実質金利からの乖離幅は平均で160ドル程度であるため(リスクが完全になくなることはあまりない)、リスクが回避された場合、1,450ドル程度までしか下げ余地はないと見ている。

なお、米中合意は市場に一定の安心感をもたらし、金銀価格の下落要因となっている。しかし数ヵ月にわたって材料とされてきたこと、第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は上昇リスクとなる可能性がある。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は再び上昇に転じており、金銀レシオの上昇を肯定しやすくなっている。しかし、現在の金銀レシオは在庫レシオで見た場合やや高すぎで、金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられ、20ドル前後まで価格が上昇してもおかしくない地合い。

特にリスク回避姿勢が強まり金が割高となる局面では、割安な銀が投機的な観点から物色される可能性は高かろう。

PGM価格は金銀価格が高値圏を維持する見込みであることから同様に高値を維持すると考えるが、ここにきて新型肺炎の感染拡大が経済活動に悪影響を及ぼす、との見方が強まっており、金銀に比べて景気循環系商品としての色彩が強いことから、下押し圧力が掛かりやすい。

ただ、現時点では材料としては一旦織り込み済みであり、追加の材料待ちの状態であることから現状水準を維持すると見る。

パラジウムは供給懸念が強く意識されているため引き続き、高値圏での推移となるだろう。

なお、投機の買いが押し上げているというよりも実際に顕著な供給不足によって上昇しているものであり、「どこまで上昇するのか」「調整した時のめどはどこか」といったことは正直不明である。

中国・世界の自動車販売は前年比マイナスが続いているが、徐々に前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていることから、需要面で価格を押し上げる可能性は高い。

やや懸念されるのが、12月の米自動車販売は1,670万台(前月 1,709万台)と再び失速している点。今後、米国政府が宣言通り中間所得者層向けの減税が実施できるか、長期金利上昇を抑制できるかに注目が集まろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBは米統計の悪化懸念がやや後退していることから、追加利下げの可能性が大きく後退している。仮に追加利下げがあったとしても来年1回程度とみられるため、下支え効果は限定。

ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に向け、各国政府に働きかけを強めることになるだろう(これは中央銀行の権限外であるが)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するにはまだ時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、安全資産需要の高まり。

・中東・北アフリカ有事発生に伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・米中通商交渉が部分合意したが、基本的に覇権争いであるためこの問題が簡単に片付くことはなく、安全資産需要を下支えする見込み。

米国は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決と、それによって民間技術が軍事転用されないようにすることが最終目標であり、根本的な解決には相当な時間がかかる見込み(価格の下支え要因)。

・トルコ政府はシリアへの侵攻で発生した空白地帯に、シリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も(金銀価格の上昇要因)。

・英議会は1月末のEU離脱案を可決、安全資産需要の後退で金価格の下落要因に(ただし、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金はロング・ショートともに減少したが、イラン問題の解消を受けてロング解消圧力の方が強かった。

銀はロング・ショートとも減少したが、ショートの解消圧力の方が強く強気のポジション取りに。

プラチナはロングが増加、ショートが減少して強気のポジション。パラジウムはロングが減少、ショートが増加した。大幅な価格上昇を受けた利益確定の売り圧力が強まった。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが374,793枚(前週比 ▲2,016枚)、ショートが57,098枚(▲476枚)、ネットロングは317,695枚(▲1,540枚)、銀が109,144枚(▲1,618枚)、ショートが40,269枚(▲3,120枚)、ネットロングは68,875枚(+1,502枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが77,952枚(前週比 +1,485枚)、ショートが10,561枚(▲1,381枚)、ネットロングは67,391枚(+2,866枚)、パラジウムが15,468枚(▲1,140枚)、ショートが5,624枚(+356枚)、ネットロングは9,844枚(▲1,496枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物はまちまち。米週間輸出検証高が発表され、トウモロコシの輸出が増加、大豆・小麦の輸出が減少したことが材料となった。

新型肺炎がモノの輸送を低下させるのでは、との見方が広がってはいるが食品に関してはその影響を受け難い。

なお、米国の穀物の週間輸出検証高は、トウモロコシが668.56千トン(+271.95千トン)、大豆は1,038.84千トン(▲167.30千トン)、小麦が223.99千トン(▲292.32千トン)となった。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は新型肺炎の影響で米国からの輸出が鈍化する、との懸念が広がっていることから軟調地合いになると考える。

しかし、米中の通商面の合意や、異常気象による小麦の生産減少観測などへの懸念も根強く、また、景気減速から非景気循環系商品が物色されやすい地合いになるため、底堅い推移になると予想する。

ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシ・大豆の受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、供給に懸念は少なく、価格には下押し圧力が掛かりやすい地合い。

小麦は豪州火災の影響や、ロシア・ウクライナの悪天候の影響で供給に懸念が出ていること、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、上昇圧力が掛かりやすい。

ただし「小麦は雑草」の格言通り、最終的には供給は間に合うと予想され、上昇余地も限定されると考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・1月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9.200万Bu(市場予想135億207万Bu、前月136億6,100万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億1,307万Bu、35億5,000万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・1月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ 18億9,200万Bu(市場予想17億7,641万Bu、前月19億1,000万Bu)大豆 4億7,500万Bu(4億3,100万Bu、4億7,500万Bu)小麦 9億6,500万Bu(9億7,046万Bu、9億7,400万Bu)

・12月末の四半期在庫トウモロコシ 113億8,900万Bu(市場予想114億7,171万Bu、前月22億2,100万Bu)大豆 35億5,200万Bu(31億9,033万Bu、9億900万Bu)小麦 183億4,000万Bu(190億300万Bu、23億4,600万Bu)

(特殊要因)

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米中通商交渉は部分合意したと伝えられており、足元シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、長期化の可能性は高くシカゴ定期の下落要因に。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・エルニーニョ現象は終息したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・投機のポジションは、トウモロコシのロング・ショートが増加、大豆は米中合意でロングが増加、ショートが減少、小麦は需要が旺盛でロングが増加している。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが330,535枚(前週比 ▲1,186枚)、ショートが282,512枚(▲13,294枚)、ネットロングは48,023枚(+12,108枚)、大豆はロングが124,695枚(▲6,111枚)、ショートが107,051枚(+10,906枚)、ネットロングは17,644枚(▲17,017枚)、小麦はロングが158,953枚(+12,892枚)、ショートが111,228枚(+3,372枚)、ネットロングは47,725枚(+9,520枚)

◆主要ニュース


・12月日本企業向けサービス価格指数 前年比+2.1%(前月+2.1%)

・1月独IFO企業景況感指数 95.9(前月96.3)、期待指数 92.9(93.9)、現状指数 99.1(98.8)

・12月米新築住宅販売件数 前月比▲0.4%の69.4万戸(前月改定▲1.1%の69.7万戸)

・12月米製造業耐久財受注速報 前月比+2.4%(前月改定▲3.1%)
 除く輸送機器▲0.1%(▲0.4%)
 製造業新規受注資本財非国防除く航空▲0.9%(+0.1%)

・11月米S&Pコアロジック住宅主要20都市価格指数 前月比+3.54%(前月改定+3.25%)、前年比+2.55%(+2.22%)

・1月米コンファレンスボード消費者信頼感指数 131.6(前月改定 128.2)
 現況指数 175.3(170.5)
 期待指数 102.5(100.0)
 6ヵ月以内自動車購入 11.5(13.2)、住宅 6.0(5.7)

・1月リッチモンド連銀製造業指数 20(前月▲5)、出荷 29(▲6)、新規受注 13(▲13)、受注残 9(▲11)

・ジョン・ボルトン前大統領補佐官の証人喚問、共和党上院議員2名が賛同に回る。証人喚問実施まで後2名。

・新型肺炎、ドイツで初めてのヒトヒト感染が確認される。

・英国、華為技術の5G参入、一部容認。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米在庫統計市場予想 原油+259KB(前週▲405KB)
 ガソリン+1,613KB(+1,745KB)
 ディスティレート▲600KB(▲1,185KB)
 稼働率▲0.55%(▲1.70%)

・API石油統計 原油在庫▲4.27MB
 クッシング+1.02MB
 ガソリン+3.27MB
 ディスティレート▲0.14MB

・リビア石油担当局、「原油生産は現在の26万2,000バレルから、7万2,000バレルに減少する見込み。」

・OPEC、ロシアと追加減産を協議。

・在イラク米大使館にロケット弾攻撃、3人負傷。

・米トランプ大統領、中東和平案を発表、「聖地エルサレムはイスラエルの主権下にあり、分割されることはない。パレスチナ側はイスラエルが建設した壁の外側を首都にせよ。ヨルダン川西岸にイスラエルが建設した入植地は、ほとんどがイスラエルのものだ。」

・ハマス、トランプ政権の中東和平案に反発、ガザ地区でデモ。

【メタル】
・12月日本伸銅品生産 前年比▲8.2%の6万146トン(前月▲13.5%の6万2,011トン)、2019年 前年比▲8.1%の75万3,005トン。

・米トランプ政権、2018年3月に導入したアルミに対する追加関税の適用範囲を一部の加工品にまで拡大することを決定。現在、鉄鋼製品に25%、アルミ製品に10%の関税が上乗せされている。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.DME Oman ( エネルギー )/ +3.73%/ ▲8.04%
2.ICEガスオイル ( エネルギー )/ +3.37%/ ▲13.88%
3.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +3.00%/ ▲9.43%
4.NYM灯油 ( エネルギー )/ +2.74%/ ▲14.92%
5.ICE粗糖 ( その他農産品 )/ +2.32%/ +8.35%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ ▲9.74%/ ▲13.19%
69.SGX天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲5.29%/ ▲6.31%
68.銀 ( 貴金属 )/ ▲3.47%/ ▲2.13%
67.TCM天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲2.14%/ ▲9.76%
66.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ ▲1.87%/ +0.35%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :28,722.85(+187.05)
S&P500 :3,276.24(+32.61)
日経平均株価 :23,215.71(▲127.80)
ドル円 :109.15(+0.25)
ユーロ円 :120.31(+0.31)
米10年債利回り :1.66(+0.05)
独10年債利回り :▲0.34(+0.04)
日10年債利回り :▲0.04(+0.01)
中国10年債利回り :休場( - )
ビットコイン :9,042.56(+97.06)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :23.16(+0.17)
エネルギー :26.17(+0.48)
ベースメタル :21.39(▲0.03)
貴金属 :25.93(+1.29)
穀物 :14.99(▲0.38)
その他農畜産品 :25.35(+0.03)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :27.74(+1.12)
Brent :28.15(+0.41)
米天然ガス :28.48(▲4.55)
米ガソリン :27.68(+1.86)
ICEガスオイル :28.25(+4.52)
LME銅 :16.21(+0.22)
LMEアルミニウム :13.45(+0.11)
金 :10.16(▲0.29)
プラチナ :24.58(▲0.11)
トウモロコシ :22.34(+0.75)
大豆 :10.16(▲0.29)

【エネルギー】
WTI :53.98(+0.84)
Brent :60.02(+0.70)
Oman :62.00(+2.23)
米ガソリン :151.39(+2.99)
米灯油 :172.56(+4.61)
ICEガスオイル :528.75(+17.25)
米天然ガス :1.93(+0.03)
英天然ガス :28.14(+0.82)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :60.02(+0.70)
SPO380cst :294.41(+6.49)
SPOケロシン :79.82(▲0.48)
SPOガスオイル :69.75(+2.40)
ICE ガスオイル :70.97(+2.32)
NYMEX灯油 :201.65(+1.81)

【貴金属】
金 :1567.17(▲14.89)
銀 :17.47(▲0.63)
プラチナ :988.35(+2.30)
パラジウム :2283.14(+16.03)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,746(▲63:31C)
亜鉛 :2,254(▲25:16B)
鉛 :1,899(+19:16B)
アルミニウム :1,760(▲6:15C)
ニッケル :12,830(+85:90C)
錫 :16,350(▲250:5C)
コバルト :32,646(+496)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5702.50(▲44.50)
亜鉛 :2245.00(▲4.00)
鉛 :1887.00(▲5.00)
アルミニウム :1752.00(▲16.00)
ニッケル :12595.00(▲110.00)
錫 :16310.00(+140.00)
バルチック海運指数 :546.00(▲11.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :91.85(▲1.75)
NYMEX鉄鉱石 :93.6(▲0.41)
NYMEX原料炭スワップ先物 :149(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :休場( - )
上海鉄筋中心限月 :休場( - )
米鉄スクラップ :284(+1.00)

【農産物】
大豆 :895.00(▲2.25)
シカゴ大豆ミール :297.60(▲0.20)
シカゴ大豆油 :31.46(▲0.06)
マレーシア パーム油 :2640.00(▲285.00)
シカゴ とうもろこし :386.50(+6.00)
シカゴ小麦 :569.75(▲2.50)
シンガポールゴム :155.80(▲8.70)
上海ゴム :休場( - )
砂糖 :14.54(+0.33)
アラビカ :105.05(▲1.55)
ロブスタ :1327.00(+13.00)
綿花 :70.36(+0.85)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :66.23(+0.28)
シカゴ生牛 :122.15(▲0.10)
シカゴ飼育牛 :142.05(+0.15)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。