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リスク選好への向かい風
  • MRA外国為替レポート

2020年1月27日号

◆先週の市場総括


先週は、中国発の新型ウィルス感染拡大がグローバルな景気にマイナスの影響を及ぼすのではないか、との漠たる不安感がリスク選好を後退させた。

為替市場では円が全面高。ドル以外の通貨に対する円高がドル円相場も押し下げた。ユーロ円相場は122円台前半で始まり週末は120円台前半に2円近く下落して安値引け。

ドル円相場は110円20銭から109円20銭台へ概ね1円下落して安値引け。ドルは対ユーロでは上昇した。

株式市場も調整を余儀なくされた。米国株は前週に史上最高値を更新していたが週末にかけて下落。日経平均も24,000円台でスタートしたがじり安となり週末は23,830円近辺で引け。

米10年債利回りは週末にかけて低下基調となり前週末の1.83%から1.69%へ下げた。

月曜日の東京市場は総じて小動き。ドル円相場は110円10銭~20銭でもみ合い。ユーロ円相場は122円10銭~20銭、ユーロドル相場は1.1090近辺で小動き。

日経平均は24,080円~24,100円で底固くもみ合い推移となりそのまま引け。この日の中国株は堅調。連日の中国人民銀行による資金供給が好感された。

海外市場は米国が祝日で休場。そのため小動き閑散となった。ドル円相場はそのまま110円10銭~20銭で引け。ユーロはややしっかり。ユーロドル相場は1.1100、ユーロ円相場は122円20銭~30銭で引け。

火曜日の東京市場では新型ウィルスの感染拡大懸念からリスク回避ムードが広がり、中国株・香港株そしてアジア株全般が下落したことで日経平均も下落。日経平均は24,050円近辺で寄付き23,850円割れ。23,800円台後半でもみ合いとなり引けは23,850円。

ドル円相場は109円90銭~110円ちょうどにやや下げてもみ合い。ユーロ円相場も小幅下落して122円ちょうど中心に推移した。

海外市場では米国株が同様にウィルス感染拡大による景気への悪影響を懸念して主要3指数がそろって反落。リスク回避ムードで米10年債利回りは1.77%に低下。円が全面高となるなかクロス円相場の下げが大きく、ユーロ円相場は122円30銭から121円70銭に下落。ドル円相場は109円80銭へ。ユーロは対ドルで1.1120近辺から1.1080へと下落した。

水曜日の東京市場では円高が一服。ドル円相場は109円80銭で始まり110円ちょうどを回復。ユーロ円相場は122円ちょうどに反発。

日経平均は22,850円近辺で始まり24,000円を回復した。24,000円~24,050円で上下してそのまま引け。

アジア株が総じて反発。重症化率が低いとの情報にウィルス懸念がやや緩和した。またこの日、中国政府が武漢市の事実上封鎖に踏み切ったことも、迅速な対応として評価された。

海外市場でもアジア時間同様に総じてリスク回避に歯止め。米国株は横ばい。決算をにらみ銘柄によってまちまちの動きとなった。

米長期金利も下げ一服。米10年債利回りは1.77%。ドル円相場は109円90銭中心にもみ合い引け。ユーロ円相場は121円80銭~90銭。

発表された米中古住宅販売(12月)は季節調整済み年率換算で554万戸と前月535万戸から増加して予想より強め。一方、シカゴ連銀全米活動指数(12月)は▲0.35と前月0.41から悪化して弱い数字だった。

木曜日のアジア時間には新型ウィルス感染者拡大で懸念が再燃して株安・円高。東京市場のドル円相場は109円90銭で始まり109円60銭に下落してもみ合い。ユーロ円相場は121円80銭台から121円50銭中心のもみ合いに。

日経平均は23,800円割れ。一時23,900円に反発したものの反落して23,800円ちょうど近辺でもみ合い引けた。海外市場でも感染拡大による世界経済への悪影響が意識されてリスク回避的なムードが強まった。

そうしたなかECB理事会が開催され、ラガルド総裁が会見。潜在的なインフレの緩やかな上昇の兆しがみえ、景気予測の下振れリスクは以前ほど顕著ではない、とした。

ただインフレ回復に向けてすべての選択肢を議論し、あらゆる観点から政策を見直す、として追加策の導入を排除しない姿勢を示した。

ユーロ円相場は大きく下落して120円70銭割れ。つれてドル円相場は109円30銭割れ。ユーロは対ドルで1.1040に下落した。ただその後は持ち直し。

WHOが緊急事態宣言を見送ったことはやや安心感に。ユーロ円相場は121円10銭に反発。ドル円相場は109円50銭に戻して引けた。ユーロドル相場は1.1060。米国株はまちまち。NYダウは小幅安。米10年債利回りは安全志向の資金が流入して1.73%に低下した。

金曜日のアジア時間、東京市場は小動き。ユーロは前日からの軟調が続きユーロドル相場は1.1060から1.1040台へじり安。ユーロ円相場も121円ちょうど近辺へやや軟化。ドル円相場は109円50銭を中心にもみ合い。

日経平均は23,850円にやや反発して高寄りもすぐに反落して23,750円。ただ後場は持ち直して23,830円近辺で取引を終えた。夕刻から海外市場にかけてはユーロ安ドル高。またユーロ円相場の下落につれてドル円相場も下落した。

欧州のPMI景況感指数(1月)は、ユーロ圏が47.8(前月46.3)、ドイツが45.2(同43.7)と概ね持ち直し。景気底入れの兆しがみられた。

しかしラガルド総裁が前日に続き、強力なフォワードガイダンスがあり市場は自動操縦(政策据え置き)を想定すべきではない、と発言。

また仏中銀総裁は、インフレ目標を明確に2%として上下に許容幅を設けるべき、目標未達であることに誠実に虚心になるべき、と緩和寄りのスタンスを示した。

ユーロドル相場は指標による上下動の後1.1020~30に下落。ユーロ円相場は121円割れ。さらに米国のPMI景況感指数(1月)製造業が51.7と前月の52.4から悪化して予想を下回り失望を誘った。

米国株はウィルス懸念も漂うなか主要3指数がそろって下落。NYダウは170ドル安となり29,000ドルを割り込んで週末の取引を終えた。

ユーロ円相場は120円50銭近辺に下落してもみ合い引け。ドル円相場は一時109円20銭に下落して引けは109円30銭。ユーロドル相場は1.1020~30でもみ合い引けた。

安全な米国債への資金流入・逃避により米10年債利回りはさらに低下して1.7%を割り1.69%で引け。2年債利回りは1.50%。

◆今週の3つの注目ポイント


1.中国の春節、新型ウィルス関連情報

すでに中国は春節の休暇シーズンに入り、中国市場は木曜日まで休場。再開は金曜日。この間、まずは新型ウィルスによる感染拡大、感染者・死者の増加、などの情報に市場は引き続き過敏になりそうだ。

本件による世界経済全体への悪影響についてはなお未知数。過度に懸念する必要は現時点ではなさそうだが、不透明がゆえにリスクポジションを積み上げることは難しく、また追加的な悪いニュースに接して既存のポジションを手仕舞う動きも生じよう。

中国市場が休場で中国株の下落が顕在化しないことは市場心理悪化の加速を防ぐ可能性もある。ただアジア株の下落ヘッジで流動性のある日本株売りが増すリスクにも留意が必要だろう。

2.FOMC、米国の経済指標

米国経済は基本的に個人消費を中心に堅調に推移している。ただ企業景況感指数は、とくに製造業を中心になおも冴えない。市場に安心感をもたらすような数字はみられるか。

月曜日 ダラス連銀製造業活動指数(1月、予想▲3.1、前月▲3.2)、新築住宅販売(12月、季節調整済み年率換算、予想728千戸、前月719千戸)

火曜日 耐久財受注(12月、コア、前月比、予想+0.2%、前月▲0.1%)、消費者信頼感指数(1月、予想128.1、前月126.5)、リッチモンド連銀製造業指数(1月、予想9、前月▲5)

木曜日 GDP(10-12月期、速報、前期比年率、予想+2.1%、前期+2.1%)

金曜日 個人所得・消費支出(12月、前月比、予想+0.3%・+0.3%、前月+0.5%・+0.4%)、シカゴ購買部協会景気指数(1月、予想49.0、前月48.9)

また火曜日・水曜日の2日間にわたりFOMC(連邦公開市場委員会)が開催される。政策変更はない見込みだが、足元の景気動向、やや弱めにみえる製造業の動向についていかなる判断がされるか。

3.米国企業決算と株価動向

米国株は史上最高値を更新し今年に入ってからもなお堅調に推移してきた。そこに新型ウィルスへの懸念からやや調整している。大手ハイテク企業の決算発表が株価をもう一段押し上げることができるか。逆に弱めの内容となり、ウィルスへの懸念とともに調整をさらに長引かせることとなるか。

このほか、金曜日に中国の製造業PMI(1月)が発表される。景気底打ち・持ち直しの兆候が確認できるか。

◆今週のMRA's Eye


リスク選好への向かい風

年初からリスク回避とリスク選好が交互に持ち上がり市場の方向感は定まらない。中東情勢の緊迫化と懸念後退、米中通商合意によるリスク選好の後押しと追加的な進展期待の後退。

米国株が史上最高値を更新するなかで、今度は中国発の新型ウィルスの感染拡大が市場に不安感を投げかけた。

ベースラインで米国経済が堅調に推移している限り、基本的なリスク選好が崩れることはないだろう。ただ足元でリスク回避センチメントが勝っている。米中合意の進展、貿易摩擦の緩和、中国経済の持ち直し、米国製造業の景況感回復、はセットで考えられている。

そこに今回のウィルス問題が中国経済をまず直撃しつつある。中国政府が景気てこ入れのため財政金融政策を発動。その効果か経済指標に底入れ・持ち直しの兆しがみえてきたところだっただけに好事魔多しだ。

リスク回避には二段階・ふたつの形態がある。ひとつは単に不透明感そのものがリスク回避行動をもたらす場合。もうひとつは実際に状況が悪化していることが経済指標や企業業績などで明確となりリスク回避につながった場合。

現在のウィルス感染拡大は、まずは不透明感・不安感からリスク回避・リスクポジションの削減をもたらしている段階。円相場に関しては、米国株が最高値を更新するなどリスク選好が回復する状況で円安が進んだ。

シカゴ通貨先物の円ポジションは、直近のデータ、先週火曜日21日時点で44.7千枚の売り越しと昨年末の円売りポジション量に回復していた。

そこにウィルス問題による不透明感が高まり、ひとまず円買い戻しが生じている。中東情勢の緊迫化によって生じた年初の円高局面でドル円相場は一時108円を割り込んだ。

年初の時点でも漠たる不安感がリスク回避・ポジション調整をもたらしたが、今回も感染問題の実体経済へのインパクトが不明な段階でポジションの解消がさらに進めば108円近辺までのドル安円高となる可能性がある。

年初と現在の違いは、ユーロドル相場のレベル。年初は1.11台後半だったが、現在は1.10台前半。年初もドルは底固かったが、今回はさらにドルは堅調だ。

雇用・消費が堅調な米国経済に比べ欧州経済の方が中国経済による影響が大きいこと、ECBが緩和スタンスを明確にしていること、などが大きい。

したがってポジション調整の段階までであれば、年初のように108円割れを試す可能性は小さいとも考えられる。

問題は次の段階、感染拡大は事実として、これが経済活動・景気にどの程度悪影響をもたらすか。実体経済の悪化が経済指標などで顕在化するようだと、もう一段、リスク回避が進む可能性がある。

現在の市場心理のもとでは弱い経済指標に反応しやすいことにも留意する必要がある。中国経済は実際に物流や生産・消費活動に大きな支障を生じることになりそうだ。

今回の感染拡大が景気後退をもたらすまでには至らないものの、せっかくの持ち直しの兆しに冷や水を浴びせていることは確か。どこまで一時的な停滞に留められるか、中国政府の対応力にかかるところが大きい。

ここはなお数週間、推移を見守る必要がある。さらに感染が中国国外にどの程度拡大するか。実際にグローバルレベルに経済活動を停滞させるようだと、さらに事態の収拾に時間がかかろう。

その間に円のポジションは円売りの解消から円買い持ちに転ずるリスクもある。現時点では不透明感の解消だけでも春先まで時間がかかるとみられる。楽観的な見方に立っても、ドル円相場が110円からもう一段ドル高円安にシフトするのは4-6月期以降となりそうだ。

あくまでもリスクシナリオとして、事態がさらに悪化するケースでは夏の東京オリンピックあたりまで、市場のムードが回復しない可能性もある。

米10年債利回りは先週末に1.7%を割り込んだ。振り返れば昨年秋から年末にかけて、FRBの予防的利下げが終了するとともに米長期金利は底打ちから緩やかな上昇に転じた。その上昇トレンドが足元でチャレンジを受けている。

現時点では安全志向の逃避資金が債券市場に流入して長期金利を押し下げたにとどまる。ただこれが実体経済の悪化・景気後退懸念を背景として追加利下げ観測の台頭による事態となれば、107円割れを試す可能性もある。

それでも一過性のリスクイベントであり、根底の経済の強さ、とくに米国経済を脅かさないのであれば、中期的な景気トレンドを左右することなく、よって大幅かつ長期のドル安円高とはならないだろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :109.28(▲0.21)
ユーロ :120.49(▲0.57)
英ポンド :142.855(▲0.82)
豪ドル :74.58(▲0.39)
カナダドル :83.155(▲0.25)
スイスフラン :112.476(▲0.52)
ブラジルレアル :26.1323(▲0.13)
中国人民元 :15.814(+0.06)
韓国ウォン(日本円=100) :9.339(▲0.02)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1025(▲0.003)
英ポンド :1.3073(▲0.005)
豪ドル :0.6832(▲0.002)
カナダドル :1.3143(+0.002)
スイスフラン :0.9716(+0.003)
ブラジルレアル :4.1821(+0.012)
中国人民元 :6.9109(▲0.032)
韓国ウォン :1167.48(▲1.22)

【主要国政策金利】
米国 :1.75
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.68(▲0.05)
米2年債 :1.49(▲0.02)
日本10年債利回り :▲0.02(▲0.00)
日本2年債利回り :▲0.02(+0.00)
独10年債利回り :▲0.34(▲0.03)
独2年債利回り :▲0.61(▲0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :28,989.73(▲170.36)
NASDAQ :9,314.91(▲87.57)
S&P500 :3,295.47(▲30.07)
日経平均株価 :23,827.18(+31.74)
ドイツ DAX :13,576.68(+188.26)
インド センセックス :41,613.19(+226.79)
中国上海総合 :休場( - )
ブラジル ボベスパ :118,376.40(▲1,151.20)
英国FT250 :21,763.94(+223.38)
ビットコイン :8497.52(+114.65)

【主要商品価格】
WTI :54.19(▲1.40)
Brent :60.69(▲1.35)
米ガソリン :151.52(▲4.50)
米灯油 :173.40(▲5.76)

金 :1571.53(+8.59)
銀 :18.10(+0.30)
プラチナ :1006.43(+1.42)
パラジウム :2426.42(▲37.55)
銅 :5996.00(▲86:28C)
アルミニウム :1786.00(▲8:10.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :902.00(▲7.50)
シカゴ とうもろこし :387.25(▲6.50)
シカゴ小麦 :573.50(▲7.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。