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米中合意で総じて堅調 製品需要減少でエネルギー安い
  • MRA商品市場レポート for PRO

2020年1月16日 第1671号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米中合意で総じて堅調 製品需要減少でエネルギー安い」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は米石油統計で製品需要の減速が確認されたエネルギーセクターが軟調だったが、それ以外の商品は総じて堅調な推移となった。

数ヵ月にわたって材料とされていたが米中が通商面で第一弾の合意に至ったことで、市場のリスク選好が回復したことが材料となった。米ベージュブックでは米製造業の雇用環境の減速が指摘されたが積極的には材料視されず。

【本日の価格見通し総括】

本日は急に減速感が強まっている米国の経済統計に注目している。

フィラデルフィア連銀景況指数は3.7(前月0.3)と改善見込み。小売売上高は前月比+0.3%(+0.2%)、除く自動車で+0.5%(+0.1%)とやはり改善見込みであり、景気循環銘柄価格を押し上げよう。

ただし、昨日発表された米石油統計では石油製品出荷が急減速しており、統計程米国内の個人商品は堅調ではない可能性がある。需要が減速すればモノの輸送が減速するため、石油製品出荷が減速するため。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

※昨日、2月にイラン大統領選挙があるとコメントしましたが、議会選挙の誤りです。大統領選挙は2021年の予定です。大変失礼をいたしました。謹んで訂正します。

ロウハニ大統領がそのまま在職しますので、大きな混乱にはならないものと予想されます。

米中が通商協議で合意に至った。ここに至る過程では相当の紆余曲折があったがどうにか大統領選挙年の月初までに、合意に至ることができた。

しかし今回の合意は両国とも不満の残る内容である上、米国が最も重要と考えていた知的財産権の保護や技術強制移転については中国が監視強化を約束したが、あくまで中国による監視強化であるため効果は疑問だ。

また、中国国有企業への補助金といった分野については議論が先送りされた。

米トランプ大統領は直ちに第二弾協議を始めるとしたが、11月の大統領選挙が終わるまでに合意することはないのではないか。恐らくこの1年、米中の間で更なる合意があることはなさそうである。

中国からすれば米国から関税引き下げが次の目標だろうが、人民元を切り下げることでこの影響をある程度緩和できるため、中国の軍事力の向上につなげると考えられる、中国が第二弾合意で米国から得られるものはあまりない。

中国は持久戦に持ち込んだとしても、人口動態的には後10年程度しか体力は持たないと考えられるが、その間に米国に頼らないハイテク技術を確立する方針であり、長期的な視点では中国の勝利ともいえる。

しかし、米国は人権問題や、中国企業の米市場への上場停止などのカードを切ってくる可能性もあるためなんとも言えないが、現在、テーブルに載っている材料だけで考えると、大統領選挙を無難に乗り切りたい米政権からすれば、米中問題が11月3日の大統領選挙まで問題として取り上げられる可能性は、昨年に比べれば低下したと考えられる。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.2%→+3.0%)ている。2020年も+3.4%(▲0.1%)に引き下げた。

ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっている。あったとしても後1回程度(▲25bp程度)の利下げに留まる(金融面の価格下支え期待の後退)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商交渉は部分合意。しかし関税が撤廃されたわけではなく、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護、国有企業への補助金撤廃などを中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。

通商面のみならず、資本フローの規制や、人権問題への制裁なども加わっており、通商面で妥協があったとしてもその他の分野での制裁発動の可能性は高い。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。EUは英国のEU離脱期限延長で合意し、英総選挙では保守党が圧勝した。目先は無秩序離脱の可能性が後退するため価格の上昇要因。ただし、2020年12月末の移行期間までに条件で合意できなければ、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・中国政府が「法律に基づき」過去のGDPの見直しを行うと発表しているが、この見直しによって統計が悪化する可能性は高く、景気循環銘柄価格の下落要因に。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は小幅下落した。米・イランの対立軟化と米統計の減速や、米石油統計げ製品在庫が大幅な増加となったことで軟調推移していたが、米中通商合意や、米ニューヨーク連銀製造業指数の予想を上回る改善を受けて引けにかけて水準を切り上げた。

【原油価格見通し】

原油価格は米・イランの緊張が緩和したことや、米経済統計の減速を受けて下押し圧力が強まるが、200日移動平均線がテクニカルなサポートラインとして強く意識されているため、現状の水準でもみ合うものとみている。

ただし、今回米国側は、「米国人が1人死んでもそれはレッドライン」と定義した可能性が高いうえ、局地的な攻撃は現在も続いていることから、偶発的な事故が大規模な軍事行動につながる可能性は排除できず、今回と同様のイベントリスク顕在化で価格が上昇するリスクはあると見ている。

なお、ウクライナ機をイラン側が誤射・撃墜してしまった。100%イランの過失によるものであり、ウクライナ政府とは粛々と事故後の賠償を進めていくことになる。しかし今回の誤射に対する指導部への不満が国民の中で強まっており、体制転覆ということはないと思われるが、デモがさらに激化する可能性がある。

この場合、「米国がデモを煽っている」という名目のもと、国民の不満をそらすために米軍基地が再び攻撃にさらされる可能性がある。それでも米軍との衝突にならないような攻撃になると見るが、今回のウクライナ機撃墜のように「誤って」米国人を殺害してしまう可能性もあり、今回の件は地政学的リスクを高めるもの。

3月のOPECプラス会合での減産延長については、今のところ減産規模が縮小されるないしは減産が終了する可能性が高い。原油価格は一時的に4月以降、下値余地を試すことになるだろう。

米中交渉は通商面で合意の見通しだが、香港やウイグル族の人権問題まで米国が対象を拡大して中国も報復、先行きが引き続き不透明。結局、部分的な合意には至るものの、長期的には米中いずれかがあきらめるまで継続するため、やはり景気循環銘柄価格の下落要因、と整理しておくべきである。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。

財政出動は使途にもよるが、エネルギー価格の押し上げ要因になると考える。今のところ米政権は中間層への減税を検討しているようだ。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は下落した。12月の石炭輸入が大幅に減少したことが引き続き材料視されている。

しかし、今後に関しては年が変わって中国の輸入再開観測が強まっていることや、環境規制強化に伴う特に欧州で供給が減少すると見られていることが価格を押し上げよう。ただし天然ガス価格が低水準で推移しているため、上昇余地も限定されると見る。

【石炭価格見通し】

石炭価格はピークシーズン入りしていること、中国の輸入再開観測を受けて上昇すると考える。ただしバルチック海運指数にまだ上昇の兆しは見えておらず、実際に上昇を始めるのは2月以降になると予想される。

また、欧州で急速に環境規制強化への機運が高まっていることが大西洋地区での石炭供給を制限することから、供給面でも石炭価格を押し上げる可能性が高まっている。

12月の中国の貿易統計では、石炭輸入は燃料炭・原料炭合計で277万トンと前月(2,078万トン)から大幅に減速、過去5年平均を下回った。

11月の中国石炭生産が、同じ時期の過去5年の最高を上回る3億3,406万トンとなった。中国の国内供給は増加している状況であり、貿易市場の緩和圧力は去っていない。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPEC総会では現状追認の▲50万バレルの追加減産が決定され、さらにサウジアラビアが▲40万バレルの自主減産を決定、原油価格の上昇要因に。

ただし、減産は3月末までであること、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、OPEC減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオ。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入増加。12月の貿易統計では、原油の輸入が4,548万トン(前月4,574万トン)と高い水準を維持。

今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。

また、トルコ軍のシリアへの侵攻により、イスラム国の兵士16,000人が域外に逃亡、このほかリビアにも派兵するなど中東・北アフリカの地政学的リスクが高いことは要注意。

サウジアラビアのアブカイクへのドローン攻撃でテロが低価格化・大規模化することが分かったことは、中東の供給途絶リスクを従来よりも高めるものであり、従来以上に中東情勢は重要に。

・ブラジルのOPEC加盟。ブラジルの生産量は2018年で268万バレルであり、世界供給の2.8%に達するため、実際に加盟し、サウジアラビアの意向に沿う生産を行うならば、OPECの価格支配能力は若干の改善が見込まれる。

仮に期待通り来年の世界景気が夏頃にかけて底入れした場合、生産制限は顕著な価格上昇要因となり得るため、その点は注意。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTI、Brentともはロングが増加、ショートが減少している。中東情勢不安で特にBrentの買戻しが顕著であったが、各々、ショートポジションの水準が低かったため、新規のロングが積み上がった。

しかし、米国・イランの緊張が緩和したことや、米雇用統計の悪さから、今後ロングの解消が進むものと予想される。ポイントは200日移動平均線のサポートラインまで下落しているため、さらに売り込まれるか否か。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが639,009枚(前週比 +12,161枚)、ショートが71,737枚(▲254枚)、ネットロングは567,272枚(+12,415枚)、Brentが499,529枚(前週比+13,020枚)、ショートが73,766枚(▲2,213枚)、ネットロングは425,763枚(+15,233枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格はまちまち。米統計の減速を受けて軟調に推移していたが、米中合意や米ニューヨーク連銀製造業指数の改善を受けて値を戻す流れとなった。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は底堅い推移になると見る。最大消費国である中国は景気テコ入れのための預金準備率引き下げや、3月の全人代以降の公共投資拡充などの対策期待、季節的に2月から3月にかけては中国の在庫積み増し時期であることから、総じて堅調な推移になると予想される。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないと予想される。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めていることが、非鉄金属においても今後の大きなテーマとなると見られる。

財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。今のところ米政権は中間層への減税を考えているようだ。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

中長期的にはインドの構造的な需要増加や、環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想されるが、より短期的には、中国、欧州の景気がどこで底入れするのか、米国経済の後退がいつから始まるのかに依拠する。

今年の大統領選挙を睨んで米国がどのような対応をしてくるかが不透明であるが、こうした政策期待効果を除けば、底入れ感が出てくるのは来年の春~夏にかけてになると見ている。中期的には現状水準でのもみ合いが続こう。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか(従来見通しを変更)。

ニッケルは、1月から供給が停止されたが、中国の前倒し調達の影響でそれほど大きな問題にならないと予想され、むしろ軟調jに推移している。しかし、インドネシアの供給が止まれば、シェアはニッケル含有分ベースで25%であるため、原油に例えれば、サウジアラビアとロシアの供給が同時に停止するぐらいのインパクトがある話であり、やはり価格には上昇圧力が掛かりやすい。

2014年の規制開始後の動きを勘案にすると、輸出規制開始となる1月から価格が上昇し(価格がすでに大きく調整しており、割安感があることから上昇タイミングを前倒し)、来年7月頃(下期)からの下落が予想される。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは回復し、閾値の50を維持。しかし、規模別でみた場合、中小企業の景況感はまだ50を上回っていない。価格へのプラスの影響は緩やかなものに止まろう。

在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-11月期中国工業生産は前年比+5.6%(1-10月期+5.6%)と横ばいだったが、11月は+6.2%(前月+4.7%)と改善(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-11月期中国固定資産投資は前年比+5.2%の53兆3,718億元(1-10月期+5.2%の51兆880億元)と横ばい、公的部門+6.9%(+7.4%)は減速したが民間部門は若干の改善が見られる(+4.4%→+4.5%)。ただし全体では横ばいであり、減速トレンドに大きな変化はない(ストック需要の減速=価格下落要因)。

・1-11月期中国不動産開発投資は前年比+10.2%の12兆1,265億元(1-10月期+10.3%の10兆9,603億元)と減速している。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・11月の銅地金・製品の輸入量は43万3,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準。また、銅鉱石の輸入も215万7,000トンとやはり過去5年の最高水準を大きく上回っている。公共投資(電線網整備)などの公的需要が需要を下支えしているとみられ、中国の取引所在庫は過去5年平均を下回っている。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、Valeの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

HydroのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・1月10日付のLMEロング・ショートポジションの動向はまちまちとなったが、ネットロングポジションはすべて前週比で減少した。12月末に向けて進んでいた売り越しポジションの解消が進んでいたが、米ISM製造業指数の減速などを受けて再び投機筋が弱気に転じたものとみられる。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は+5.5億ドル(前週+16.1億ドル)と買い越し幅を縮小した。買い越し額の増加率は▲65.8%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲32千トン(前週+244千トン)と売り越しに転じた。そもそも取り扱い数量の多いアルミが売り越し幅を拡大したことが背景。ネット買い越しの減少率は▲113.1%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅安、原料炭スワップ先物も小幅安、中国鉄鋼製品先物価格は小動きだった。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、最大消費国である中国の公共投資に伴う需要増加や、冬場の鉄鋼製品生産規制から鉄鋼製品価格が高止まりしていること、豪州の供給懸念、Valeの販売調整観測で価格は底堅い推移になると考える。

米中が貿易交渉で部分合意、これ自体は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る対立を見るに、まだ両国関係は鉄鉱石価格の波乱要因になると見る。

また、冬場の鉄鉱石価格は季節的には強含みやすいものの、冬場の鉄鋼製品生産規制により鉄鋼向け需要が減速するため(短期的には鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鉱石価格の上昇要因となる)、今年は例年よりは低い水準での推移になるのではないか。

なお、2020年はValeの生産本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。

原料炭は鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格短期~中期見通しはやや強気である。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは43.1(前月45.4)と再び減速した。新規受注の落ち込み(43.8→36.2)によるものであり、内外需とも不調である。これに伴い在庫水準も積み上がっており、需給ファンダメンタルズが緩和しつつあることを示唆している。価格には下押し要因に。

・1-11月期中国工業生産は前年比+5.6%(1-10月期+5.6%)と横ばいだったが、11月は+6.2%(前月+4.7%)と改善(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-11月期中国固定資産投資は前年比+5.2%の53兆3,718億元(1-10月期+5.2%の51兆880億元)と横ばい、公的部門+6.9%(+7.4%)は減速したが民間部門は若干の改善が見られる(+4.4%→+4.5%)。ただし全体では横ばいであり、減速トレンドに大きな変化はない(ストック需要の減速=価格下落要因)。

・1-11月期中国不動産開発投資は前年比+10.2%の12兆1,265億元(1-10月期+10.3%の10兆9,603億元)と減速している。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

12月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は468万トン(前月458万トン)と過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に減速し、277.2万トン(前月2,078.1万トン)となった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入減少である。

今後に関しては輸入規制が導入されると見られる、石炭の国内生産も11月時点で3億3,406万トンと過去5年の最高水準を大きく上回っている。このことから、今後も輸入は減少すると予想される。

・中国の12月の鉄鉱石の輸入量は加速し、1億130万トン(前月9,065万トン)と高い水準を維持した。一方で、今年の鉄鉱石生産は3月以降漸増しており、11月は7,924.5万トンに達している。

しかし、中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲185万トンの1億2,790万トン(過去5年平均1億2,089万トン)、在庫日数は▲0.4日の29.4日(過去5年平均 32.6日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られる。

・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比97.8万トンの889万トン(過去5年平均925.4万トン)と例年を下回っている。新規受注の減速があるため何とも言えないが、原料・製品とも需給はタイトで価格をサポートしやすい。

なお、12月の鉄鋼製品の輸出は468万トン(前月458万トン)と過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む金融市場の緩和を進めているほか、地方政府にも債券発行枠の前倒しを認めるなど、景気テコ入れのため公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は堅調な推移となった。米生産者物価指数の減速を受けて実質金利が低下したことが材料となった。

PGMは金銀価格が堅調に推移したことや米中合意が材料視され、そもそもの供給不足感から大幅な増加となりプラチナは1,000ドルを回復、パラジウムは2,300ドルを目指す動きとなった。

【貴金属価格見通し】

金価格は米国とイランの衝突リスクが回避されたことで価格を切り下げたが、中東有事のリスクがなくなったわけではないこと、月末に予定されているブレグジットへの警戒感、実質金利の低下から高い水準を維持すると考える。

このほか、ブラジル・アルゼンチンに対する関税引き上げなどの通商問題は解決しておらず、米中問題も完全に解決したわけではないこと、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡り、米中の対立が激化する可能性があることもリスクプレミアムの押し上げ材料となる。

仮に地政学的リスクが完全に解消した場合、リスクプレミアムがはげ落ちる形で金価格は下落することになる。実力ベースでは金価格は1,300ドル程度だろう。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は上昇していたが、再び下落に転じている。それでも現在の金銀レシオは在庫レシオで見た場合やや高すぎで、金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられる。

PGM価格は金銀価格が高値圏で推移するとみられることから、同様に高値圏での推移になると予想する。特にすでに認知されていることだが、パラジウムはどこが天井かもはやわからなくなってきたが、供給面からさらに上値を試しやすい地合いが続いている。

また、世界の自動車販売減速に底入れの兆しが見えること、米中合意などの影響で下値余地も限定されるだろう。

中国の自動車販売が2年連続(18ヵ月連続)の前年比割れとなるなど、需給ファンダメンタルズ面は需要面の減速が懸念される状況。世界自動車販売も15ヵ月連続の前年比マイナス。しかしいずれも前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていることから、需要面で価格を押し上げる可能性は高まっている。

やや懸念されるのが、12月の米自動車販売は1,670万台(前月 1,709万台)と再び失速している点。今後、米国政府が宣言通り中間所得者層向けの減税が実施できるか、長期金利上昇を抑制できるかに注目が集まろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBは米統計の悪化懸念がやや後退していることから、追加利下げの可能性が大きく後退している。仮に追加利下げがあったとしても来年1回程度とみられるため、下支え効果は限定。

ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に向け、各国政府に働きかけを強めることになるだろう(これは中央銀行の権限外であるが)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するにはまだ時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・中東・北アフリカ有事発生に伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・米中通商交渉が部分合意したが、基本的に覇権争いであるためこの問題が簡単に片付くことはなく、安全資産需要を下支えする見込み。

米国は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決と、それによって民間技術が軍事転用されないようにすることが最終目標であり、根本的な解決には相当な時間がかかる見込み(価格の下支え要因)。

・トルコ政府はシリアへの侵攻で発生した空白地帯に、シリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も(金銀価格の上昇要因)。

・英議会は1月末のEU離脱案を可決、安全資産需要の後退で金価格の下落要因に(ただし、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金・銀共にロングが増加したが、ショートの増加の方が顕著だった。中東情勢が不透明な中、安全資産需要は堅調であるものの、一旦米・イランの対立懸念が後退したため、同時にショートも積み上がった形。

むしろ今後の展開ではショートの巻き戻しを警戒する必要。

PGMはプラチナ・パラジウムともロング・ショートが積み上がったが、景気への楽観からロングの増加の方が顕著。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが383,480枚(前週比 +1,860枚)、ショートが61,189枚(+7,494枚)、ネットロングは322,291枚(▲5,634枚)、銀が109,224枚(+2,914枚)、ショートが41,971枚(+5,389枚)、ネットロングは67,253枚(▲2,475枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが73,584枚(前週比 +2,009枚)、ショートが11,303枚(+1,891枚)、ネットロングは62,281枚(+118枚)、パラジウムが16,246枚(+982枚)、ショートが4,669枚(+727枚)、ネットロングは11,577枚(+255枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物は小麦が上昇、トウモロコシ、大豆は小動きだった。小麦はエジプトが1週間に2回入札を行い、トルコも追随したことが小麦では材料視された。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は堅調な推移になると考える。米中が通商面で合意したことで、米国産穀物の輸出増加観測が強まること、アルゼンチンが穀物に輸出税を賦課すると決定したことが要因。

ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシ・大豆の受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、供給に懸念は少なく、価格には下押し圧力が掛かりやすい地合い。

小麦は冬小麦の作況が悪化していることが買い材料視されており、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、こちらには上昇圧力が掛かりやすい。

ただし「小麦は雑草」の格言通り、最終的には供給は間に合うと予想され、上昇余地も限定されると考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・1月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9.200万Bu(市場予想135億207万Bu、前月136億6,100万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億1,307万Bu、35億5,000万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・1月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ 18億9,200万Bu(市場予想17億7,641万Bu、前月19億1,000万Bu)大豆 4億7,500万Bu(4億3,100万Bu、4億7,500万Bu)小麦 9億6,500万Bu(9億7,046万Bu、9億7,400万Bu)

・12月末の四半期在庫トウモロコシ 113億8,900万Bu(市場予想114億7,171万Bu、前月22億2,100万Bu)大豆 35億5,200万Bu(31億9,033万Bu、9億900万Bu)小麦 183億4,000万Bu(190億300万Bu、23億4,600万Bu)

(特殊要因)

・米中通商交渉は部分合意したと伝えられており、足元シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、長期化の可能性は高くシカゴ定期の下落要因に。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・エルニーニョ現象は終息したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・投機のポジションは、トウモロコシのロング・ショートが減少、大豆もロング・ショートが減少、小麦はロング・ショートとも増加した。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが313,678枚(前週比 ▲1,429枚)、ショートが273,447枚(▲5,411枚)、ネットロングは40,231枚(+3,982枚)、大豆はロングが127,873枚(▲4,261枚)、ショートが99,422枚(▲3,133枚)、ネットロングは28,451枚(▲1,128枚)、小麦はロングが135,753枚(+8,500枚)、ショートが101,427枚(+8,225枚)、ネットロングは34,326枚(+275枚)

◆本日のMRA's Eye


「中東の今後-その1」

1月8日、米トランプ大統領はイランに対する武力行使を回避することを決定した。同時にイランに対して経済制裁を強化する方針を表明、武力行使の意図がないことも表明。これによってイラン側の組織だった大規模反抗の可能性が後退し、中東地域の不安定化リスクは一旦沈静化する形となった。

今回の一連の問題は、国防省が用意したソレイマニ司令官殺害という「実行の可能性の低いシナリオ」をトランプ大統領があえて選択したことで、事態が複雑化した訳だが、なぜこのような選択をしたのか。

ソレイマニ司令官はイランの国外での工作活動に従事する「コッズ部隊」のトップであり、米国に例えるとCIAの長官に当たるポストである。ソレイマニ司令官は、ブッシュ(子)、オバマ時代から場合によっては殺害するべき対象として認識されていたが、殺害するとイラン情勢がさらに悪化するとの判断で実行は見送られてきた。

それをトランプ大統領が実行に移したが、判断の背景には今年の11月に予定されている大統領選挙があったものと考えられる。

真実はトランプ大統領しか分からないが、自身の支持率を上げるということよりも、イラン革命後の1979年11月に起きたイランのアメリカ大使館人質事件の対応が不十分だったとして、カーター大統領が大統領選に敗北したことが頭をよぎったことによるもののようだ。

そのため、その後の両国の軍事衝突の事態までは瞬時に想定していなかった可能性が高い。

しかし、米グローバル・ファイヤーパワーの軍事力ランキング(https://www.globalfirepower.com/countries-listing.asp)では、イランの軍事力は世界で14位であり、同地域で覇権を争うサウジアラビア(25位)を上回る。核兵器を保有している可能性があるため評価が難しいが、イスラエル(17位)も凌ぐ。

米国はもちろん世界1位の軍事力であるが、広大な国土を持ち軍も精強なイランの政権を転覆させるような戦闘行為の選択は難しい。

イランも米国を相手にしてまで交戦をしたいと考えているはずがない。仮に米国がイランを攻撃した場合、イラク以外の米軍基地への攻撃や、イスラエルへの攻撃も辞さないとの声明を発表しているため、その場合は第5次中東戦争の可能性も排除できなくなる。

米国・イランの軍事衝突はあり得ないこと、と米国・イランとも再認識したのではないだろうか。常識的な判断が可能であるなら、やはり両国の軍事的な衝突は発生しない、というのがメインシナリオだろう。

しかし、今回の一連の事件で米国人が1人でも死亡した場合を攻撃実施のレッドラインと位置付けたと見られ、レッドラインとしては比較的低い。そのため、今後も両国の小規模な武力衝突は継続すると考えられることから、今回のような緊張が走る可能性は排除できない。

また、今回の件とは直接関係ないが、米軍が中東から撤退する方針を打ち出していることも域内情勢を不安定化させると見られる。

中東から米軍撤退はオバマ政権時代からの流れだが、トランプ政権は各地に展開している軍事的な負担を権限させる方向性をより強く打ち出している。地域の安定に貢献していた米軍の撤退は現地のパワーバランスを崩し、地政学的なリスクを高めることになる。

一つの例を挙げるとするとトルコのシリア侵攻だろう。米国はイスラム国の掃討が終わったことを理由に、シリアやイラクを含む中東地区から米軍を撤退させる方針を強く押し出し、2018年から米軍はシリアから撤退を開始した。

これを受けてトルコはIS掃討に尽力したシリア民主軍(SFD)、その主力部隊であるクルド人民防衛隊(YPG)を対象とした軍事行動を起こす。その後、停戦で合意し事態は一旦沈静化しているが、この時捕らえられていたイスラム国の戦闘員が多数逃走、イラクなどにも逃げ込んだようだ。

イラク国内の政情はまだ落ち着いておらず、イスラム国の戦闘員が集結して再びイラク国内が混乱する可能性もある。

米軍撤退によってイラク・シリア・レバノンといった親イランのシーア派国の結束が強まれば、イランと激しく敵対するイスラエルが武力行使をする、イランがテロを装って宗教的に対立するサウジアラビアに実施する、というシナリオも排除できなくなる。

昨年9月にサウジアラビアのアブカイクがドローンで攻撃されたが、これはテロ行為が効率的かつ安価に行えるものになったことを意味しており、今まで以上に油田や石油施設がテロの脅威にさらされることになるだろう。情報収集・索敵に優れる米軍の撤退はその可能性を高めるものである。

また、米軍とは直接関係ないが、現在、世界景気はまだ底入れしておらず下振れリスクが残る状態であり、原油価格も決して高くない。この状態では産油国の特に若年層の不満が高まることになり、暴動に発展することもあり得る。

2010年から2012年に起きたアラブの春は若年層の高失業率・食品価格の高騰が引き起こした大規模な反政府デモを中心とする争乱であるが、この頃の原油価格は100ドルを超えていたが現在は60ドル程度であり、予算面での産油国政府の「危機対応能力」は大きく低下している。

これらのイベントはその発生場所や規模が全く不明であるため、発生してからしか市場はリスクとして織り込むことができない。

しかし、特にシーア派ベルト(シーア派の三日月地帯)やトルコ周辺でこうしたイベントリスクが発生する可能性は決して低くなく、すでに反政府デモは各地で頻発している。これらのイベントリスクの顕在化は総じて原油価格を押し上げることになるだろう。

また大量に難民が発生するため南欧州の政情不安にもつながるため、株などのリスク資産価格には下押し圧力が掛かる要因となる。

◆主要ニュース


・12月日本マネーストックM2 前年比+2.7%(前月+2.7%) M3 前年比+2.3%(+2.2%)

・12月日本工作機械受注速報 前年比▲33.6%の899.69億円(前月37.9%の816.69億円)、外需 ▲32.7%の527.61億円(▲32.1%の503.00億円)

・2019年独GDP 前年比+0.6%(前年+1.5%)、財政赤字 1.5%(1.9%)

・12月ユーロ圏製造業PMI改定 46.3(速報比+0.4、前月改定 46.9)
 サービス業 52.8(速報比+0.4、51.9)
 コンポジット 50.9(+0.3、50.6)

・11月ユーロ圏貿易収支(季節調整済) 192億ユーロの黒字(前月 240億ユーロの黒字)
 調整前 207億ユーロの黒字(280億ユーロの黒字)

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 +30.2%(前週+13.5%)
 購入指数+15.5%(+3.0%)
 借換指数+42.7%(+24.6%)
 固定金利30年 3.87%(3.91%)、15年 3.30%(3.35%)

・12月米生産者物価指数 前月比+0.1%(前月±0.0%)、前年比+1.3%(+1.1%)
 除く食品エネルギー 前月比+0.1%(▲0.2%)、前年比+1.3%(+1.1%)
 除く食品エネルギー・貿易 前月比+0.1%(±0.0%)、前年比+1.5%(+1.3%)

・1月ニューヨーク連銀製造業景況感指数 4.8(前月3.3)
 新規受注 6.6(1.7)
 受注残 ▲2.7(▲13.8)
 在庫水準 ▲0.7(2.2)
 雇用者数 9.0(10.4)
 6ヵ月先景況指数 23.6(26.1)

・12月インド貿易収支 ▲112億5,000万ドルの赤字(前月▲121億2,000万ドルの赤字)
 輸出 前年比▲1.8%(▲0.3%)、輸入 ▲8.8%(▲12.7%)

・米地区連銀経済報告、「景気は緩慢なペースで拡大。製造業は雇用環境が悪化。」

・米中通商交渉、第一弾で合意。中国による米国企業及び政府機関による技術移転と企業秘密の窃盗に関し、中国が取り締まること、米国からのモノとサービスの輸入2,000億ドルの概要が盛り込まれた。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油▲2.5MB(クッシング+0.3MB)
 ガソリン+6.7MB
 ディスティレート+8.2MB
 稼働率▲0.8

 原油・石油製品輸出 8,947KBD(前週比▲77KBD)
 原油輸出 3,601KBD(▲38KBD)
 ガソリン輸出 827KBD(+4KBD)
 ディスティレート輸出 1,280KBD(+35KBD)
 レジデュアル輸出 186KBD(▲22KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,132KBD(+1KBD)
 その他石油製品輸出 1,673KBD(▲44KBD)。

・DOE月報
 世界石油需要 Q120:101.2、Q220:102.5、Q320:102.9、Q420:102.8、2020:102.4

 非OPEC供給(含むNGLs) Q120:67.0、Q220:68.3、Q320:68.6、Q420:68.6、2020:68.1

 OPEC生産 Q120:34.3、Q220:34.2、Q320:34.3、Q420:34.2、2020:34.2

※需要見通し下方修正でCall on OPEC減少。

・イラクの米軍基地にロケット弾。

・イスラエル、リヴァイアサンガス田からの天然ガスをヨルダンに輸出開始。

【メタル】
・台湾華新麗華、インドネシアにニッケル銑鉄向上建設の方針。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.プラチナ ( 貴金属 )/ +3.74%/ +5.64%
2.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ +3.24%/ +1.99%
3.パラジウム ( 貴金属 )/ +3.22%/ +16.60%
4.欧州排出権 ( 排出権 )/ +2.78%/ ▲0.37%
5.LME鉛 3M ( ベースメタル )/ +2.72%/ +4.21%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.SHFニッケル ( ベースメタル )/ ▲2.96%/ ▲2.93%
69.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲2.93%/ ▲3.02%
68.TCM天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲2.09%/ ▲2.14%
67.CBTエタノール ( エネルギー )/ ▲1.62%/ ▲3.05%
66.NYB綿花 ( その他農産品 )/ ▲1.48%/ +1.84%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :29,030.22(+90.55)
S&P500 :3,289.29(+6.14)
日経平均株価 :23,916.58(▲108.59)
ドル円 :109.90(▲0.09)
ユーロ円 :122.53(+0.13)
米10年債利回り :1.79(▲0.02)
独10年債利回り :▲0.20(▲0.03)
日10年債利回り :0.01(▲0.01)
中国10年債利回り :3.09(▲0.01)
ビットコイン :8,803.33(+67.18)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :19.73(▲1.75)
エネルギー :22.26(▲0.33)
ベースメタル :16.38(+0.32)
貴金属 :18.34(+0.91)
穀物 :12.95(▲2.86)
その他農畜産品 :23.39(▲3.54)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :24.35(▲0.04)
Brent :26.14(+0)
米天然ガス :27.21(▲0.65)
米ガソリン :23.59(+0.04)
ICEガスオイル :18.15(▲1.51)
LME銅 :8.87(▲0.43)
LMEアルミニウム :11.85(+0.08)
金 :9.24(▲1.51)
プラチナ :23.47(+3.24)
トウモロコシ :8.90(▲13.34)
大豆 :9.24(▲1.51)

【エネルギー】
WTI :58.05(▲0.18)
Brent :64.29(▲0.20)
Oman :64.93(▲0.56)
米ガソリン :164.78(▲0.66)
米灯油 :188.39(▲2.64)
ICEガスオイル :576.25(▲3.25)
米天然ガス :2.12(▲0.06)
英天然ガス :29.05(▲0.13)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :64.29(▲0.20)
SPO380cst :297.93(▲3.73)
SPOケロシン :79.82(▲0.48)
SPOガスオイル :75.03(▲0.68)
ICE ガスオイル :77.35(▲0.44)
NYMEX灯油 :201.65(▲1.01)

【貴金属】
金 :1556.12(+9.73)
銀 :18.00(+0.20)
プラチナ :1021.10(+36.78)
パラジウム :2268.61(+70.86)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,270(▲10:38C)
亜鉛 :2,373(+19:17B)
鉛 :1,964(+50:3.5C)
アルミニウム :1,806(+9:27C)
ニッケル :14,050(+280:100C)
錫 :17,475(+140:45C)
コバルト :32,450(▲6)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6302.00(▲8.50)
亜鉛 :2391.50(+16.50)
鉛 :2004.00(+53.00)
アルミニウム :1800.00(▲8.00)
ニッケル :14340.00(+450.00)
錫 :17500.00(+65.00)
バルチック海運指数 :763.00(▲2.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :94.79(▲0.44)
NYMEX鉄鉱石 :94.59(▲0.24)
NYMEX原料炭スワップ先物 :151.03(▲0.18)
上海鉄筋直近限月 :3,875(▲9)
上海鉄筋中心限月 :3,556(+10)
米鉄スクラップ :295(▲5.00)

【農産物】
大豆 :928.75(+0.25)
シカゴ大豆ミール :300.10(+2.90)
シカゴ大豆油 :33.30(▲0.35)
マレーシア パーム油 :3030.00(±0.0)
シカゴ とうもろこし :387.50(▲1.50)
シカゴ小麦 :573.25(+4.75)
シンガポールゴム :173.30(▲0.90)
上海ゴム :12725.00(▲15.00)
砂糖 :14.52(+0.20)
アラビカ :114.30(▲0.60)
ロブスタ :1298.00(+7.00)
綿花 :70.32(▲1.06)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :67.88(+0.20)
シカゴ生牛 :126.60(▲0.25)
シカゴ飼育牛 :145.43(▲0.48)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。