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新興国通貨のリスク ~先進国通貨より高いボラティリティ
  • MRA外国為替レポート

2018年12月10日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は113円80銭近辺で始まりドルの上値が重い展開。 週末にむけてドル安円高が進み、概ね112円台後半での推移となっ た。週末に米中首脳会談が開催され、追加関税の保留と合意に向け た90日間の協議が決定された。

この「休戦合意」は当初市場に好感されたが、その後は合意に向け た困難な状況が再認識された。また米国で長期金利が低下し、5年 国債の利回りが2年を下回る逆イールドが景気先行き懸念を煽るか たちで米国株が大幅下落。リスク回避心理が広がった。

その後も中国企業・ファーウェイCFOが対イラン制裁違反の疑いで 米国の指示によりカナダで逮捕されたことで米中通商交渉への悪影 響への懸念が広がった。

米国株は金曜日にも大幅安となり週間で安値引け。

FRB当局者からは足元の景気堅調を確認する発言があったが、一部 に今後は利上げに慎重さを求める意見も散見。米10年債利回りは週 初の3.05%から低下して週末には2.85%まで低下して引けた。

こうした状況でドルは軟調。ドル円相場は週後半概ね112円台での 推移となり週末NYは112円70銭で取引を終えた。

日経平均は大幅下落。22,600円近辺で始まったが週後半は米中摩擦 への懸念再燃や米国株の大幅安、上値の重いドル円相場、など悪材 料が重なり21,000円台に下落。ただ割安感が下支えとなり底固く週 末は21,700円近辺で引けた。

月曜日の東京市場のドル円相場は113円80銭近辺で始まったが上値 重く113円50銭近辺でもみ合いに。週末の米中首脳会談で、90日間 の交渉、追加関税はその間見送り、との「休戦合意」がなったが、 リスク選好が大きく持ち直すことにはならず。

日経平均は22,600円近辺で寄り付きしっかり。後場は22,700円で始 まったが結局22,600円割れで引け。

海外市場に入るとドル円相場は113円70銭近辺へ持ち直し。米国株 は一段高となりもみ合い。

米中協議を巡り、トランプ大統領が成果を強調する内容、中国が自 動車輸入関税の引き下げに応じるとの見方をツイッターに記したこ とや、予想より強めのISM製造業景気指数(11月、59.3、予想58.0、 前月57.7)が支え。

一方FRB当局者からはハト派発言が相次いだ。

クラリダ副議長は、低すぎるインフレがむしろ懸念、と述べ、ミネ アポリス連銀総裁は、過度な利上げはリセッションを招く虞がある、 とした。米10年債利回りは3.04%から2.97%に低下。ドルの上値を重 くした。

火曜日の東京市場のドル円相場は113円60銭で始まり、その後は日 経平均の急落・大幅安、アジア時間の米長期金利低下を嫌気してド ル安円高が進み、113円10銭近辺に下げてもみ合いとなった。

日経平均は22,500円台半ばで寄り付いた後、次第に下落して前場引 けには22,400円に。後場は下げ足を速めて22,000円ちょうど近辺で 取引を終えた。

海外市場では米国株が大幅反落。ダウは一時800ドルを超える下げ。 米中問題を巡っては、中国の自動車関税引き下げを巡るスタンスは 確認できていないとされ、問題が何も解決していないことがあらた めて嫌気された。

また相次ぐFRB当局者のハト派発言に長期金利が低下し、5年債利回 りが3年債利回りを下回る逆イールドが発生。逆イールドが景気後 退のシグナルとの見方から、これに不安を煽られて株安を招いた。

米2年債利回りは2.82%から2.79%に、10年債利回りは2.97%から一時 2.9%を割り引けは2.91%。2年債と10年債の利回り格差は0.1%程度 となった。

ドル円相場は112円80銭近辺に下落してもみ合い、その後113円に戻 したが112円60銭に反落。引けは112円80銭近辺。

この日、NY連銀総裁は、さらなる漸進的利上げが適切、と、ハト派 からやや一線を画す意見を述べた。

水曜日の東京市場のドル円相場は112円80銭で始まり底固い値動き。 113円近辺でもみ合いとなった。日経平均は21,800円で始まり小じ っかり。21,900円で引け。

海外市場のドル円相場は引き続き堅調で113円20銭に上昇して引け た。トランプ大統領は再びツイートで、中国からとても強いシグナ ルが送られている、とコメントした。

この日は、米国株式債券市場はブッシュ大統領葬儀のため臨時休場。 指標の発表なども延期。ただ地区連銀経済報告(ベージュブック) は予定通り公表された。

大半の地区で緩慢ないし緩やかに景気拡大、企業は引き続き明るい 見方をもっているが一部では関税・金利上昇・労働市場の逼迫で不 透明感が強まり楽観が後退、関税によるコスト上昇は製造業・建設 業から小売業・外食産業に広がった、と記された。

木曜日の東京市場は朝方からリスク回避が強まった。中国ファーウ ェイのCFOが対イラン制裁違反の疑いで米国の指示によりカナダで 逮捕された。これを受けて市場では米中通商交渉が打ち切りになる のではないか、との不安が台頭。リスク回避から株安円高が進んだ。

米10年債利回りはアジア時間に2.88%へと低下。ドル円相場は113円 20銭で始まり昼過ぎに112円60銭まで下落。その後は反発して夕方 にかけて113円台へ戻した。

日経平均は21,800円で寄り付いたが一貫して下落基調となり、後場 には21,400円割れ。ただ引けはやや戻して21,500円近辺。

海外市場に入るとあらためて警戒感が台頭。ドル円相場は112円60 銭~80銭での推移に。ただ米国株が大幅続落となり、FRB当局者か らハト派発言が続くと112円20銭台までドル安円高が進んだ。

ドルはユーロに対しても下落。ユーロドル相場は1.1320から1.14台 にユーロ高ドル安となった。

この日開催されたOPEC総会では概ね減産に対するコミットメントは 得られたものの、具体的な減産規模の提示に至らず、ロシアの正式 な回答待ちとなった。ロシアが難色を示しているとの思惑から原油 価格は下落。WTIは1バーレル50ドルに迫った。

金曜日の東京市場は112円70銭台でもみ合い。その後は小幅上昇し て80銭~90銭。

日経平均は21,700円で高寄りしたものの反落。前日からの上昇分を 失ったが、その後、後場には一転して堅調となりじり高、21,680円 で週末の取引を終えた。

ドル円相場は海外市場に入ると112円80銭近辺でもみ合いとなり、 米雇用統計(11月)の発表待ち。

結果は、非農業部門雇用者数・前月比が+155千人と予想+198千人を 下回り、前月の数字も+250千人から+237千人に下方修正された。ま た平均時給は前月比+0.2%と予想+0.3%より弱かった。前年同月比で は+3.1%と予想通り。

これを受けてドルはやや軟調。ドル円相場は112円60銭~70銭へ。 ユーロドル相場は1.14台にユーロ高ドル安が進んだ。

米国株は引き続き米中通商摩擦への懸念や景気減速への思惑から大 幅下落。前日の安値近辺に押し戻された。米長期金利は弱めの雇用 統計や株価の大幅下落を受けて低下。2年債利回りは2.76%から2.71 %へ、10年債利回りは2.90%から2.85%へ。

他には、発表されたミシガン大学消費者マインド指数(12月)は 97.5と予想97.0より強めで前月と同水準。

この日発言したFRBブレーナード理事は、政策の道筋は今後の見通 しの変化の仕方に一層左右されるが、漸進的利上げによるアプロー チは依然として適切、と述べた。

一方、セントルイス連銀総裁は、さらなる利上げを実施する理由は 見当たらない、とした。

原油価格は反発。ロシアを含めたOPECプラスは日量120万バレルの 減産を合意。予想の100万バレルを上回った。WTIは一時54ドルをつ け、引けは52.6ドル。原油価格の低位安定を期待し減産に難色を示 してきたトランプ大統領の対応がどうなるか。

◆今週の3つの注目ポイント


1.イギリス下院EU離脱合意案めぐり採決

今週11日火曜日にイギリス下院で、先に政府とEUが合意した離脱案 を巡り採決が行われる。否決されれば混迷が深まる。

国内には合意なき離脱反対派、秩序なき離脱でもやむなしとする勢 力、様々な勢力、考え方がなお入り乱れていることから、収集がつ かない状況となり、結局は再度の国民投票となる可能性も浮上する。

こうした結果に、短期的にリスク回避が強まり、ポジション調整の 動きが広がる可能性があり留意が必要だ。為替市場においては円買 戻しにより円高となるリスクがある。

2.ECB理事会、EU首脳会議

13日木曜日にECB理事会、EU首脳会議、がともに開催される。ECB理 事会では政策変更は予想されていないが、その後のドラギ総裁の定 例会見において、金融正常化の道筋、マイナス金利を解消するため の利上げの道筋がどのように示されるか。

このところ景気の勢いが鈍っていることやイギリス離脱問題による 影響などをどのように評価するか。EU首脳会議はイギリス下院の投 票結果を受けてどのような議論となるか。

ユーロはこのところドル金利先高感の後退によるドル安の反面で底 固いが先安感が再燃する可能性がある。

3.米国の経済指標

米国では米中通商摩擦への懸念もあり景気減速懸念が広がっている。 そうしたなか市場は弱い経済指標に反応しやすい。足元の景気動向 はなお堅調だが今週発表される指標はどうか。

火曜日生産者物価指数(11月、前年同月比、予想+2.5%、前月 +2.9%) 水曜日消費者物価指数(同、予想+2.2%、前月+2.5%、コア、予想 +2.2%、前月+2.1%) 金曜日小売売上高(同、前月比、除く自動車・ガソリン、予想+0. 6%、前月+0.3%)、鉱工業生産(同、予想+0.3%、前月+0.1%)

このほか、金曜日に日銀短観が発表される。大企業から中小企業に 至るまで、製造業から非製造業全般で、若干の景況感悪化が予想さ れている(大企業製造業、現状判断、予想18、前回19、先行き判断、 予想17、前回19)。

日経平均を支える結果となるか。また中国で主要経済指標(小売売 上高、工業生産、都市部固定資産投資、いずれも11月)が発表され る。景気減速基調がさらに鮮明となるか。

◆今週のMRA's Eye


新興国通貨のリスク ~先進国通貨より高いボラティリティ

米中通商交渉の混迷、米国経済の先行き、中国景気の明確な減速、 イタリア財政不安、イギリスのEU離脱問題、米国株の大幅な調整、 など、不透明要因を挙げれば枚挙にいとまがない。

そうしたなかドル円相場はこのところ概ね112円~114円で安定して 推移している。またユーロ円相場はドル円相場よりも変動が大きい ものの、120円台後半を中心の値動きから大きくは逸脱していない。 様々な材料があるわりには安定して推移しているといえよう。

ドル円相場に関して長期的にみれば、米国経済発の世界経済・金融 危機をもたらしたリーマンショックや、さらに遡れば明確な米国経 済の構造的不振とドル安誘導の90年代前半を除き、この四半世紀、 100円割れは観察できない。

長期的には購買力平価による緩やかなドル安円高傾向があるなか、 逆に130円を超えてドル高円安に振れたのは日本の金融危機のとき ぐらいだろう。概ね100円~120円を大きく逸脱していない。

それに比べて新興国通貨の変動は激しい。対ドルでも大きく変動す るが、対円ではより大きな変動が観察される。

新興国通貨の変動、ボラティリティが高くなる理由はいくつかある。 まず経済規模が小さいことが第一の理由だ。規模が小さいために経 済政策の変化によって短期的に、また大きく経済が変動することに なる。

政権の不安定性やそれに伴う政策の不安定性が、経済変動の不安定 性に直結する。また新興国経済は多くの場合、成長資金を海外に依 存せざるを得ない。

インフラ投資や国内消費など、急速に拡大する場合、貯蓄投資バラ ンスは悪化し、経常収支が悪化する。それを海外資金で埋め合わせ するかたちとなるのが通例だ。

先進国経済では、政権の政策により経済は変化するものの、規模が 大きいだけに、それほど大きな変化には至らない。

次に、上記と重なるが、金融市場が未成熟、あるいは経済規模が小 さいために、それに応じて金融市場の規模が小さいことが挙げられ る。

株式市場の時価総額が小さく、また財政規模も小さいために国債市 場の規模も小さい。通貨供給量も経済規模に応じて先進国に比べて 小さい。そうしたなかで内外資本移動の規制がされていない場合、 国内の貯蓄形成が十分でなく国内投資家が未成熟なため、海外投資 家の投資動向で市場価格が大きく変動することになる。

結果として為替相場も大きく変動することになる。先進国経済では 市場規模も国内投資家の厚みもあるため、相対的に海外投資家の動 きに左右される度合いが小さい。

また一般に先進国に比べて成長率が高く、インフレ率も高いのが通 常だ。インフレ率が高いことから自ずと政策金利も高くなる。

金利が高いことは投資家にとって大きな魅力でとくに相対的に金利 の低い先進国投資家の資金を引き寄せる。金利高が資本流入により 通貨高につながる。

一方、インフレ率が高いことは通貨価値が下落傾向にあることを意 味する。インフレ率10%の国の通貨は、インフレ率ゼロ%の国の通貨 に対して、1年間で通貨価値が10%下落するとみるのが自然だ。これ が購買力平価の考え方となる。

つまり、高成長高金利の新興国通貨は、短期的には資本収支面で通 貨高圧力を受け、中長期的に購買力平価面で通貨安圧力を受ける、 という相異なる方向の圧力を受けた状態となる。

往々にして購買力平価から資本流入によって過大評価されて通貨高 となり、何らかのネガティブイベントによって一気に購買力平価へ、 さらにはそれ以下へと通貨安になる、ということが生じ、為替相場 が大きく変動することになる。

最後に、新興国投資が、当然のことながら、リスク選好が強まった 場合に最も活発となることが挙げられる。とくにドルと円に対して 新興国通貨が大きく変動する理由だ。

ドルと円は、ともに安全通貨としてリスク選好が弱い場合、リスク 回避が強まった場合に買われる通貨。新興国通貨とは対極にある。 グローバルな景気拡大局面では新興国通貨が大きく上昇し、景気後 退局面では大きく下落する。

リーマンショックのようなリスク回避イベントが発生した場合、そ れが先進国発だとしても、先進国投資家の資金によって新興国市場 が左右されているため、大きなダメージを受けることになる。

とくに、円とは全く対極にあるために、新興国通貨の対円相場は最 も激しく変動することになる。

新興国通貨をみる場合、とくに対円相場をみる場合、グローバルな 景気動向、投資動向、リスク選好・回避の状況、各国の政策動向、 など、様々な見地から検討する必要がある。

またそもそも極めて大きな変動率となる通貨であり、また政権・政 策動向によって想定外の値動きとなることも前提に、リスクを大き めに評価しておくことに越したことはない。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :112.69(+0.01)
ユーロ :128.32(+0.15)
英ポンド :143.553(▲0.46)
豪ドル :81.208(▲0.31)
カナダドル :84.589(+0.39)
スイスフラン :113.606(+0.09)
ブラジルレアル :28.848(▲0.17)
中国人民元 :16.397(+0.08)
韓国ウォン(日本円=100) :10.019(▲0.05)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1379(+0.001)
英ポンド :1.2726(▲0.006)
豪ドル :0.7208(▲0.003)
カナダドル :1.3322(▲0.006)
スイスフラン :0.992(▲0.001)
ブラジルレアル :3.9065(+0.024)
中国人民元 :6.8743(▲0.008)
韓国ウォン :1119.69(▲1.13)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.85(▲0.05)
米2年債 :2.71(▲0.05)
日本10年債利回り :0.06(▲0.01)
日本2年債利回り :0.06(+0.00)
独10年債利回り :0.25(+0.01)
独2年債利回り :▲0.60(+0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :24,388.95(▲558.72)
NASDAQ  :6,969.25(▲219.01)
S&P500 :2,633.08(▲62.87)
日経平均株価 :21,678.68(+177.06)
ドイツ DAX :10,788.09(▲22.89)
インド センセックス :35,673.25(+361.12)
中国上海総合 :2,605.89(+0.71)
ブラジル ボベスパ :88,115.07(▲731.41)
英国FT250 :17,844.11(+90.80)
ビットコイン :3388.91(▲207.50)

【主要商品価格】
WTI :52.61(+1.12)
Brent :61.67(+1.61)
米ガソリン :148.58(+5.24)
米灯油 :188.62(+2.80)

金 :1249.31(+11.53)
銀 :14.63(+0.15)
プラチナ :793.30(+3.05)
パラジウム :1225.19(+14.16)
銅 :6162.50(+61:10.5B)
アルミニウム :1958.50(+17:3.5B)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :916.75(+7.25)
シカゴ とうもろこし :374.00(+2.00)
シカゴ小麦 :519.50(+14.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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