新興国通貨のリスク ~先進国通貨より高いボラティリティ
- MRA外国為替レポート
2018年12月10日号
◆先週の市場総括
先週のドル円相場は113円80銭近辺で始まりドルの上値が重い
この「休戦合意」は当初市場に好感されたが、その後は合意に向け た困難な状況が再認識された。また米国で長期金利が低下し、5年 国債の利回りが2年を下回る逆イールドが景気先行き懸念を煽るか たちで米国株が大幅下落。リスク回避心理が広がった。
その後も中国企業・
米国株は金曜日にも大幅安となり週間で安値引け。
FRB当局者からは足元の景気堅調を確認する発言があったが、
こうした状況でドルは軟調。
日経平均は大幅下落。22,
月曜日の東京市場のドル円相場は113円80銭近辺で始まったが
日経平均は22,600円近辺で寄り付きしっかり。後場は22,
海外市場に入るとドル円相場は113円70銭近辺へ持ち直し。
米中協議を巡り、トランプ大統領が成果を強調する内容、中国が自 動車輸入関税の引き下げに応じるとの見方をツイッターに記したこ とや、予想より強めのISM製造業景気指数(11月、59.3、
一方FRB当局者からはハト派発言が相次いだ。
クラリダ副議長は、低すぎるインフレがむしろ懸念、と述べ、ミネ アポリス連銀総裁は、
火曜日の東京市場のドル円相場は113円60銭で始まり、
日経平均は22,500円台半ばで寄り付いた後、
海外市場では米国株が大幅反落。
また相次ぐFRB当局者のハト派発言に長期金利が低下し、
米2年債利回りは2.82%から2.79%に、
ドル円相場は112円80銭近辺に下落してもみ合い、
この日、NY連銀総裁は、さらなる漸進的利上げが適切、と、
水曜日の東京市場のドル円相場は112円80銭で始まり底固い値
海外市場のドル円相場は引き続き堅調で113円20銭に上昇して
この日は、
大半の地区で緩慢ないし緩やかに景気拡大、企業は引き続き明るい 見方をもっているが一部では関税・金利上昇・労働市場の逼迫で不 透明感が強まり楽観が後退、関税によるコスト上昇は製造業・建設 業から小売業・外食産業に広がった、と記された。
木曜日の東京市場は朝方からリスク回避が強まった。中国ファーウ ェイのCFOが対イラン制裁違反の疑いで米国の指示によりカナダ
米10年債利回りはアジア時間に2.88%へと低下。
日経平均は21,
海外市場に入るとあらためて警戒感が台頭。
ドルはユーロに対しても下落。ユーロドル相場は1.
この日開催されたOPEC総会では概ね減産に対するコミットメン
金曜日の東京市場は112円70銭台でもみ合い。
日経平均は21,700円で高寄りしたものの反落。
ドル円相場は海外市場に入ると112円80銭近辺でもみ合いとな
結果は、非農業部門雇用者数・前月比が+155千人と予想+
これを受けてドルはやや軟調。ドル円相場は112円60銭~
米国株は引き続き米中通商摩擦への懸念や景気減速への思惑から大 幅下落。前日の安値近辺に押し戻された。米長期金利は弱めの雇用 統計や株価の大幅下落を受けて低下。2年債利回りは2.76%
他には、発表されたミシガン大学消費者マインド指数(12月)は 97.5と予想97.0より強めで前月と同水準。
この日発言したFRBブレーナード理事は、
一方、セントルイス連銀総裁は、さらなる利上げを実施する理由は 見当たらない、とした。
原油価格は反発。
◆今週の3つの注目ポイント
1.イギリス下院EU離脱合意案めぐり採決
今週11日火曜日にイギリス下院で、
国内には合意なき離脱反対派、秩序なき離脱でもやむなしとする勢 力、様々な勢力、考え方がなお入り乱れていることから、収集がつ かない状況となり、
こうした結果に、短期的にリスク回避が強まり、ポジション調整の 動きが広がる可能性があり留意が必要だ。為替市場においては円買 戻しにより円高となるリスクがある。
2.ECB理事会、EU首脳会議
13日木曜日にECB理事会、EU首脳会議、
このところ景気の勢いが鈍っていることやイギリス離脱問題による 影響などをどのように評価するか。
ユーロはこのところドル金利先高感の後退によるドル安の反面で底 固いが先安感が再燃する可能性がある。
3.米国の経済指標
米国では米中通商摩擦への懸念もあり景気減速懸念が広がっている
火曜日生産者物価指数(11月、前年同月比、予想+2.5%、前月 +2.9%) 水曜日消費者物価指数(同、予想+2.2%、前月+2.5%、コア、
このほか、金曜日に日銀短観が発表される。大企業から中小企業に 至るまで、製造業から非製造業全般で、若干の景況感悪化が予想さ れている(大企業製造業、現状判断、予想18、前回19、
日経平均を支える結果となるか。また中国で主要経済指標(小売売 上高、工業生産、都市部固定資産投資、いずれも11月)
◆今週のMRA's Eye
新興国通貨のリスク ~先進国通貨より高いボラティリティ
米中通商交渉の混迷、米国経済の先行き、中国景気の明確な減速、 イタリア財政不安、イギリスのEU離脱問題、
そうしたなかドル円相場はこのところ概ね112円~
ドル円相場に関して長期的にみれば、米国経済発の世界経済・金融 危機をもたらしたリーマンショックや、さらに遡れば明確な米国経 済の構造的不振とドル安誘導の90年代前半を除き、
長期的には購買力平価による緩やかなドル安円高傾向があるなか、 逆に130円を超えてドル高円安に振れたのは日本の金融危機のと
それに比べて新興国通貨の変動は激しい。対ドルでも大きく変動す るが、対円ではより大きな変動が観察される。
新興国通貨の変動、
政権の不安定性やそれに伴う政策の不安定性が、経済変動の不安定 性に直結する。また新興国経済は多くの場合、成長資金を海外に依 存せざるを得ない。
インフラ投資や国内消費など、急速に拡大する場合、貯蓄投資バラ ンスは悪化し、経常収支が悪化する。それを海外資金で埋め合わせ するかたちとなるのが通例だ。
先進国経済では、政権の政策により経済は変化するものの、規模が 大きいだけに、それほど大きな変化には至らない。
次に、上記と重なるが、金融市場が未成熟、あるいは経済規模が小 さいために、それに応じて金融市場の規模が小さいことが挙げられ る。
株式市場の時価総額が小さく、また財政規模も小さいために国債市 場の規模も小さい。通貨供給量も経済規模に応じて先進国に比べて 小さい。そうしたなかで内外資本移動の規制がされていない場合、 国内の貯蓄形成が十分でなく国内投資家が未成熟なため、海外投資 家の投資動向で市場価格が大きく変動することになる。
結果として為替相場も大きく変動することになる。先進国経済では 市場規模も国内投資家の厚みもあるため、相対的に海外投資家の動 きに左右される度合いが小さい。
また一般に先進国に比べて成長率が高く、インフレ率も高いのが通 常だ。インフレ率が高いことから自ずと政策金利も高くなる。
金利が高いことは投資家にとって大きな魅力でとくに相対的に金利 の低い先進国投資家の資金を引き寄せる。金利高が資本流入により 通貨高につながる。
一方、インフレ率が高いことは通貨価値が下落傾向にあることを意 味する。インフレ率10%の国の通貨は、インフレ率ゼロ%
つまり、高成長高金利の新興国通貨は、短期的には資本収支面で通 貨高圧力を受け、中長期的に購買力平価面で通貨安圧力を受ける、 という相異なる方向の圧力を受けた状態となる。
往々にして購買力平価から資本流入によって過大評価されて通貨高 となり、
最後に、新興国投資が、当然のことながら、リスク選好が強まった 場合に最も活発となることが挙げられる。とくにドルと円に対して 新興国通貨が大きく変動する理由だ。
ドルと円は、ともに安全通貨としてリスク選好が弱い場合、リスク 回避が強まった場合に買われる通貨。新興国通貨とは対極にある。 グローバルな景気拡大局面では新興国通貨が大きく上昇し、景気後 退局面では大きく下落する。
リーマンショックのようなリスク回避イベントが発生した場合、そ れが先進国発だとしても、先進国投資家の資金によって新興国市場 が左右されているため、大きなダメージを受けることになる。
とくに、円とは全く対極にあるために、新興国通貨の対円相場は最 も激しく変動することになる。
新興国通貨をみる場合、とくに対円相場をみる場合、グローバルな 景気動向、投資動向、リスク選好・回避の状況、各国の政策動向、 など、様々な見地から検討する必要がある。
またそもそも極めて大きな変動率となる通貨であり、また政権・政 策動向によって想定外の値動きとなることも前提に、リスクを大き めに評価しておくことに越したことはない。
◆主要指標
【対円レート】
ドル :112.69(+0.01)
ユーロ :128.32(+0.15)
英ポンド :143.553(▲0.46)
豪ドル :81.208(▲0.31)
カナダドル :84.589(+0.39)
スイスフラン :113.606(+0.09)
ブラジルレアル :28.848(▲0.17)
中国人民元 :16.397(+0.08)
韓国ウォン(日本円=100) :10.019(▲0.05)
【対ドルレート】
ユーロ :1.1379(+0.001)
英ポンド :1.2726(▲0.006)
豪ドル :0.7208(▲0.003)
カナダドル :1.3322(▲0.006)
スイスフラン :0.992(▲0.001)
ブラジルレアル :3.9065(+0.024)
中国人民元 :6.8743(▲0.008)
韓国ウォン :1119.69(▲1.13)
【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00
【主要国長期金利】
米10年債 :2.85(▲0.05)
米2年債 :2.71(▲0.05)
日本10年債利回り :0.06(▲0.01)
日本2年債利回り :0.06(+0.00)
独10年債利回り :0.25(+0.01)
独2年債利回り :▲0.60(+0.02)
【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :24,388.95(▲558.72)
NASDAQ :6,969.25(▲219.01)
S&P500 :2,633.08(▲62.87)
日経平均株価 :21,678.68(+177.06)
ドイツ DAX :10,788.09(▲22.89)
インド センセックス :35,673.25(+361.12)
中国上海総合 :2,605.89(+0.71)
ブラジル ボベスパ :88,115.07(▲731.41)
英国FT250 :17,844.11(+90.80)
ビットコイン :3388.91(▲207.50)
【主要商品価格】
WTI :52.61(+1.12)
Brent :61.67(+1.61)
米ガソリン :148.58(+5.24)
米灯油 :188.62(+2.80)
金 :1249.31(+11.53)
銀 :14.63(+0.15)
プラチナ :793.30(+3.05)
パラジウム :1225.19(+14.16)
銅 :6162.50(+61:10.5B)
アルミニウム :1958.50(+17:3.5B)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
シカゴ大豆 :916.75(+7.25)
シカゴ とうもろこし :374.00(+2.00)
シカゴ小麦 :519.50(+14.25)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。