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市場は短期的に安定も、中期的には予測が一段と困難・波乱含みに
  • MRA外国為替レポート

2018年12月3日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は113円近辺で始まり週央にかけてドル高円安が 進み、一時114円ちょうどをつけた。感謝祭明けの米国株が堅調に 推移。好調な年末商戦や米中首脳会談に向けた期待感の高まりが株 価を押し上げた。

またFRBパウエル議長が今後の利上げに慎重ととれる発言をしたこ とでドル金利先高感が後退。

株式市場は当局の慎重姿勢を好材料ととらえた。米国株は金曜日に 一段高となり週間で高値引け。

一方、ドルはパウエル発言を受けて反落。ドル円相場は週末にかけ て113円台前半に押し戻された。ドル円相場は113円50銭近辺で取引 を終えた。米10年債利回りは3%割れ、2.99%に低下して引け。

日経平均は週初に21,700円近辺で始まった後、米国株の堅調、ドル 円相場の安定に支えられ堅調。週末には上値が重くなったものの 22,350円近辺で引けた。

月曜日の東京市場のドル円相場は112円90銭で始まり113円台に乗せ、 113円20銭近辺でもみ合い。海外市場に入ると一段高となり113円60 銭をつけた。

ユーロ円相場は128円で始まり右肩上がり。夕刻には128円80銭まで 上昇した。

日経平均は21,700円で寄り付きしっかり。21,800円中心にもみ合い 引け。米国株は大幅高。年末商戦が好調、オンラインショッピング の売上がこの日「サイバー・マンデー」に過去最高となったとの報 道から消費関連株、ハイテク株主導で上昇した。

米10年債利回りは横ばい、もみ合い。3.05%~3.07%で推移した。

火曜日の東京市場のドル円相場は113円50銭~60銭で始まりやや押 されて40銭~50銭で推移。日経平均は米国株の大幅高を受けて 21,900円台で寄り付き、21,800円台半ばでもみ合い。後場は900円 台で始まり22,000円手前まで上昇して引けた。

海外市場のドル円相場はしっかり。113円60銭近辺でもみ合いの後、 80銭まで上昇して引け。米国クドローNEC(国家経済会議)委員長 は、米中首脳会談は12月1日に開催される、我々が取引できる可能 性がかなりありその可能性を排除していない、と述べた。

米中首脳会談の開催決定、何らかの進展期待、で懸念がやや後退。 米国株はじり高、上昇。

この日、講演したFRBクラリダ副議長は、政策の漸進的正常化を支 持、としてハト派のトーンはみられなかった。これをうけてドルは しっかり。米10年債利回りの水準は前日と変わらず。

水曜日の東京市場のドル円相場は、113円80銭中心にもみ合い、そ の後90銭に上昇した。日経平均は22,100円で始まり小じっかり。じ り高となり22,200円近辺で引けた。

米国市場では米国株が大幅高。FRBパウエル議長のハト派スタンス を好感した。

パウエル議長はこの日講演し、堅調な景気動向は強調しつつ、政策 に既定路線はない、政策金利は中立をわずかに下回る水準にきた、 と述べた。10月には、中立金利にほど遠い、と述べていたことから、 その発言の変化を、来年の利上げ回数の下振れを示唆している、と 市場は受け止めた。

金利先物でみる来年の利上げ回数は1回まで低下。ドル金利先高感 が後退し、ドルを押し下げた。2年債利回りは2.80%に低下。10年債 利回りは3.05%中心に上下。

ドル円相場は114円をつけていたが113円40銭台に下落。ユーロドル 相場も1.1280から1.1380へとユーロ高ドル安が進んだ。ドル円相場 は113円60銭に戻して引け。

木曜日の東京市場のドル円相場は113円60銭で始まり、その後は海 外市場の流れのままにドル安円高が進み113円20銭~30銭に下落。 アジア時間に米長期金利が低下。ドルを押し下げた。

2年債利回りが2.78%へ、10年債利回りは欧州時間早々に3.00%割れ。 日経平均は22,400円で寄り付いた後は22,300円台前半中心にもみ合 い。後場には引けにかけて軟調となり22,200円台後半で引けた。

海外市場のドル円相場は113円20銭~40銭で上下動。その後はやや ドル高となり40銭~50銭で上下して引け。ユーロドル相場は概ね1. 1350~1.14で上下動を繰り返した。

米国株はもみ合い横ばい。米中首脳会談を巡っては、トランプ大統 領は、中国と何かすることに近づいている、と発言。また、米中新 貿易協議検討で制裁拡大は来春まで保留、会談での摩擦悪化は回避、 との報道もみられた。

米長期金利は海外市場で反発。2年債利回りは2.80%へ、10年債利回 りは、ともにアジア時間からは持ち直した。

金曜日の東京市場のドル円相場は113円40銭近辺でもみ合い小動き。 日経平均は22,300円近辺で始まり狭いレンジで上下動。後場は底固 い値動きで引けは22,350円近辺。

海外市場に入るとユーロが下落。反面でドルは堅調。ドル円相場は 113円70銭に上昇。ユーロドル相場は1.14から1.13台前半へユーロ 安ドル高が進んだ。

ユーロは対円でも129円台から128円台半ばへ下落した。

欧州ではイタリア財政、イギリスEU離脱を巡る不透明感が継続。一 方で米中双方の発言から週末の米中首脳会談に対する期待感が高ま った。

米国株は上昇。ただ株価上昇はドル金利先高感、FRBの慎重スタン スにも支えられた。この日、NY連銀ウィリアムズ総裁は、インフレ が高まるリスクよりも低すぎる状況にならないように努めることに なる、とハト派な意見を表明。米10年債利回りは3%を割って2.99% で引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

FRBは漸進的な利上げスタンスは維持しているものの、政策判断は 次第に柔軟化しつつあるようだ。経済指標次第ということになり従来以上に指標の重要性は増してくる。

今週は重要指標の発表が多い。

月曜日ISM製造業景気指数(11月、予想58.0、前月57.7)
水曜日ADP雇用報告(同、雇用者数前月比、予想+200千人、 前月+227千人)、ISM非製造業景気指数(同、予想59.5、 前月60.3)
木曜日貿易収支(10月)、製造業受注(同)
金曜日雇用統計(11月、非農業部門雇用者数・前月比、 予想+205千人、予想+250千人、平均時給・前年同月比、予想+3.2%、 前月+3.1%)、ミシガン大学消費者マインド指数(12月、予想97.0、 前月97.5)

2.パウエル議長議会発言、ベージュブック

今週水曜日にFRBパウエル議長が上下両院合同経済委員会で証言を 行う。この間のトーンと同じだとすれば、足元の景気の強さを認め、 漸進的利上げスタンスは維持しつつも、今後の政策のフリーハンド を確保するような発言、景気・数字次第、といったところになりそ うだ。

ベージュブック(地区連銀経済報告)は12月のFOMCでの政策判断の 前提となる。定性的な判断がどのように示されるか。とくに企業部 門、設備投資動向について、いかなる景気判断となっているかが注 目される。

3.中国の経済指標

引き続き米中通商摩擦による中国経済へのダメージ、とくに企業部 門へのダメージは市場の関心事だ。

月曜日財新・製造業PMI景況感指数(11月)
水曜日財新・サービス業PMI景況感指数(同)
金曜日外貨準備高(11月) 土曜日貿易収支(11月)

外貨準備高が減っているようなら、当局が人民元安に歯止めをかけ 安定化のために為替介入を実施している証左となる。

◆今週のMRA's Eye


市場は短期的に安定も、中期的には予測が一段と困難・波乱含みに

先週はFRBパウエル議長が今後の利上げに慎重なスタンスを示した ことからドル金利先高感が後退。また米中首脳会談では一旦追加関 税を見送ることとして今後90日間で通商協議を行い、合意を目指す こととなった。

これらは週明けの株式市場には好感されるとみられる。不透明感は 残りながらも市場全体にはリスク選好が回復することとなりそうだ

一方、これらの材料はドルにとって全般的に逆風となる。ドルは弱 いリスク選好、株価が軟調の際に買われ、またそれはドル金利先高 感が強いときに顕著となるため。

もっとも、リスク選好が回復し株価が堅調ななかでは円も軟調とな るため、ドル円相場は底固く推移しそうだ。

113円割れが底固い状況となり、114円を試す場面もありそうだ。

FRBは市場の慎重論に擦り寄るかたちとなった。この間、FRBが足元 の景気および先行きに自信を示し、漸進的利上げ姿勢を堅持してき た。

一方、市場は米中貿易摩擦や長年にわたる景気拡大の継続、インフ レ圧力が弱いことから、利上げに懐疑的な見方が強かった。

FOMCで示される政策金利見通しに比べ、市場の予測は常に下回る状 態が続いている。実際には、市場の慎重な見通しは実現せず、FRB は淡々と漸進的に利上げを実施してきた。

ただここにきてパウエル議長は漸進的利上げスタンスを維持しなが らも、政策に既定路線はないと述べ、今後の利上げについてFOMCで 示されている予測通りに利上げが実施されない可能性を示した。

11月上旬に開催されたFOMCの議事録が公表されたが、そこには12月 の利上げ実施後、より柔軟なアプローチを採用することが示唆され ている。

声明文における文言「さらなる漸進的な利上げを想定している」と いう部分は今後数回の会合で修正する必要があるとの判断のようだ

今後は入手データの重要性をより強調した声明文に変化していくと みられる。

またパウエル議長は現在の政策金利水準について、中立水準をわず かに下回る、と評価している。その結果、来年の利上げ回数はより 不透明になってきた。市場予想は1回まで低下した。

それは極端に少なすぎるとしても、9月のFOMCにおける予測である3 回から上振れる可能性は少なく、2回程度で落ち着く可能性が高ま っている。

こうした市場の予測からドル金利先高感が後退、利上げ打ち止め感 が台頭し、先週米10年債利回りは3%を切った。これがドル高を抑制 する要因となりそうだ。

ただ景気動向次第で利上げ回数がどうなるかは不透明。市場の予測 が慎重すぎるため、利上げが実際に打ち止めとなる前に、今一度、 予測が上方修正される可能性がある。

とくに米中通商交渉の進展がみられるようなら、経済データとくに 企業の景況感が改善し、利上げの前提条件が整うことになる。

その米中通商交渉は「一旦停戦」となった。米中首脳会談では具体 的な合意には至らなかったが、今後90日間交渉を継続することとし、 その間、追加関税が見送られる。

米国は第三弾として対中輸入2,000億ドル相当に対する税率を2019 年1月に10%から25%に引き上げるとしていたが、これを10%に据え置 く。

この、今回は合意に至らず継続協議、その間は追加関税を猶予、と いう結果は概ね想定通りだろう。

90日間の協議の結果、決裂となれば追加関税が実施されることにな るため、依然として不透明感は残るが、ひとまず交渉のテーブルに 双方がついたことは市場に好感されよう。年末年始は不安感が高ま らずに済みそうだ。

ただ来年2月が新たな期限となり、年明けには徐々に警戒感が高ま る可能性がある。

結果として、リスク回避が高まることによる円高の可能性は年内に ついては後退。ただし、ドル金利先高感の後退やリスク選好の回復 はドルの上値を抑える要因となる。

ドル円相場は113円割れが底固くなり、リスク選好の回復で114円台 を試す可能性がある。12月18日、19日の両日に開催されるFOMCでは 追加利上げが決定されるとみられ、それも足元ではドルを支えるだ ろう。

ただ同時に示される今後の予測が下方修正されるようなら、一時的 にせよドル安となるリスクもあり、留意が必要だ。短期的にはドル 円相場は比較的下値上値ともに限定されるようにみえる。

ただ米中通商交渉は単に先延ばしになったのみ。またFRBのスタン スがデータ次第となったことは、年明け以降、中期的な相場展開が 波乱含み、予測がつきにくく、とくにリスクバイアスはダウンサイ ドリスクが高まっている、ということはいえそうだ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :113.57(+0.09)
ユーロ :128.44(▲0.85)
英ポンド :144.792(▲0.36)
豪ドル :82.978(▲0.08)
カナダドル :85.448(+0.00)
スイスフラン :113.808(▲0.12)
ブラジルレアル :29.344(▲0.11)
中国人民元 :16.315(▲0.00)
韓国ウォン(日本円=100) :10.128(▲0.02)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1317(▲0.008)
英ポンド :1.2749(▲0.004)
豪ドル :0.7306(▲0.001)
カナダドル :1.3292(+0.001)
スイスフラン :0.9979(+0.002)
ブラジルレアル :3.8671(+0.015)
中国人民元 :6.9605(+0.018)
韓国ウォン :1120.75(+1.35)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.99(▲0.04)
米2年債 :2.79(▲0.02)
日本10年債利回り :0.09(+0.01)
日本2年債利回り :0.09(+0.01)
独10年債利回り :0.31(▲0.01)
独2年債利回り :▲0.60(+0.00)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :25,538.46(+199.62)
NASDAQ  :7,330.54(+57.45)
S&P500 :2,760.17(+22.41)
日経平均株価 :22,351.06(+88.46)
ドイツ DAX :11,257.24(▲40.99)
インド センセックス :36,194.30(+23.89)
中国上海総合 :2,588.19(+20.75)
ブラジル ボベスパ :89,504.03(▲205.53)
英国FT250 :18,480.83(▲128.20)
ビットコイン :3930.38(▲253.20)

【主要商品価格】
WTI :50.93(▲0.52)
Brent :58.71(▲0.80)
米ガソリン :144.13(▲1.34)
米灯油 :184.55(+0.19)

金 :1220.52(▲3.69)
銀 :14.20(▲0.11)
プラチナ :798.10(▲21.70)
パラジウム :1181.09(▲1.98)
銅 :6202.00(▲39:36B)
アルミニウム :1938.50(+6:3.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :894.75(+7.50)
シカゴ とうもろこし :366.50(+6.25)
シカゴ小麦 :515.75(+19.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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