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株高・リバランスで景気循環系商品買い戻される
  • MRA商品市場レポート for PRO

2020年2月6日 第1684号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「株高・リバランスで景気循環系商品買い戻される」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は景気循環系商品が買い戻され、非景気循環系商品が売られる流れとなった。実需が回復した、というよりは、新型肺炎対策の進捗期待と昨晩発表された欧米経済統計が良好だったことを受けて、株価が上昇を続けているため、ファンド勢がリバランスのための買いを入れたと考えられる。

ファンドの種類や方針にもよるが、通常、各セクターへの投資比率が決められているため、運用主体である株価が上昇すると必然、商品への投資比率が低下するため、リバランスの買いが入りやすい。WTIやBrent、銅などのベンチマークが上昇すれば、その他の同じセクターに分類される商品価格は上昇しやすくなる。

なお、トランプ大統領の弾劾裁判の評決が上院で行われたが、あっさり無罪が確定した。ほぼ市場の予想通りであり影響は限定。

新型肺炎の終息の見通しを商品市場がどのように判断しているかを考える上で、期間構造を把握することは有効だ。例えば、WTI・Brentともつい先日まで、直近1年の期間構造はバックワーデーションだった。

■新型肺炎関連情報

新型肺炎の感染も拡大しており、どのように終息するかは全く予想がつかない状況。

※新型コロナウイルスの感染拡大状況は、こちらのリンクからどうぞ。
https://marketrisk.jp/news-contents/contents/8141.html

※より詳しい解説は、MRA商品市場レポート(有料)の「昨日の世界経済・市場動向のトピックス」「MRA's Eye」などで解説しています。

※レポートのお申込みはこちらから。
https://marketrisk.jp/news-contents/news/3592.html

【本日の価格見通し総括】本日は目立った手がかり材料に乏しい中、引き続き新型肺炎対策を受けた株価動向に左右される展開が続くことになると考える。

ただ、上述の通り新型ウイルスは全く終息している訳ではないことから、株価上昇を受けた投機的な買い圧力による買いは長続きしないと考えている。

予定されている材料としては、ECBラガルド総裁の講演、独製造業受注(前月比+0.6%、前月▲1.3%、前年比▲6.6%、▲6.5%)、米週間新規失業保険申請件数(前週比+21.5万人、前週+21.6万人)。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日発表された非製造業・サービス業系のPMIは、アジアの統計がやや弱気な内容だったが、その他の地域では軒並み速報値から水準を切り上げる形となった。

大きなトレンドで見た場合、昨年後半から世界的には景況感に底入れの兆しが見え始めており、今回の米ISM非製造業指数もそれを裏付けるような結果だった。

FRBの連続利下げや、米中通商戦争の一時休戦などが市場参加者のマインドを改善したことで循環的な回復を阻害せずに済んだ、ということだろう。

しかし、今回の新型肺炎の感染拡大は、こうした循環的な回復に水を差すものであり、不連続な景気の減速をもたらす可能性がある。前回のSARSと同じであれば、終息は8月頃になるのではないだろうか。

ただ、前回と大きく違うのが、中国の遺伝子解析技術が劇的に向上しており、想像よりも早く特効薬が見つかったり、ワクチンが開発されたりする可能性はある。とはいっても、仮にワクチンができたとしても、専門家の話ではそれを投与できるようになるには、通常のステップで3年程度はかかるようだ。

中国が強権発動して投与を開始したとしても、実際に投薬が可能になるのはやはり8月頃になるのではないだろうか。

ということを考慮すると、足元の株式市場の急速な反発はやや事態を楽観しすぎている感があり、商品価格がさほど戻っていないことを考えるとやはり足元の状況は悪化していると考えるのが妥当だろう。

終息の見通しを商品市場がどのように判断しているかを考える上で、期間構造を把握することは有効だ。例えば、WTI・Brentともつい先日まで、直近1年の期間構造はバックワーデーションだった。

しかし新型肺炎の影響が拡大する中でどちらの油種も期近が下落し、期近はコンタンゴに転じている(なお、供給が比較的十分なWTIは12月の雇用統計の悪化を受けて、1月上旬から直近限月のみコンタンゴに転じている)。

一方Brentは限月交代があったこともあるが、期近がコンタンゴに転じたのは2月に入ってからだ。

なお、通常期先の価格の方が高いにも関わらず、期近の価格が高いバックワーデーションの状態になるのは、需給バランスがタイト化して、「現物を保有することにメリットがある」状態にあるためであり、コンタンゴになると現物保有の便益がないことになる。

その観点でWTI・Brentの期間構造を見てみると、コンタンゴからバックワーデーションに転じるのは今年の6-7月に入ってからであり、需要の回復は今年のQ220になると見ている市場参加者が多いことが伺われる。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを引き下げ(+3.4%→+3.3%)ている。2021年も3.4%(▲0.1%)に引き下。

ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっていたが、新型肺炎の影響であと2回弱の利下げを市場は織り込みつつある(▲50bp程度)。景気の減速が懸念されているため追加利下げは景気循環系商品価格の下支え要因に。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・中国の新型肺炎の影響拡大(パンデミックリスクの顕在化)を受けた経済滑動の鈍化(景気循環系商品価格の下落要因)。

・米中通商交渉は部分合意。しかし関税が撤廃されたわけではなく、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護、国有企業への補助金撤廃などを中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。

ただし、新型肺炎の影響で当面は中国の合意不履行は問題視されない可能性が高まった。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げによって、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

昨日の原油相場は上昇した。新型肺炎のワクチン開発が進捗するとの期待を受けた株の上昇を受けたファンドのウェイト調整目的の買戻しと、実需の安値拾いの買い、欧米の経済統計が良好だったことを受けて。

ただし、ドル指数が上昇したことで引けにかけては水準を切り下げた。

【原油価格見通し】

原油価格は現状の水準でもみ合うものと考える。市場では新型肺炎の影響に対する過度な悲観が後退、リスク選好の回復で買戻しが優勢となっているが、現実的には新型肺炎の影響の拡大に伴う輸送需要の強制的な減少や、工場の稼働停止など需要面が回復しているとは言い難いため。

この事態を受けてOPECプラスが減産に動くと見られていること、リビアからの供給減少は価格を下支えすると考える。

中国の航空機の発着が2割程度減少していることを前提とすると、中国需要は日量▲300万バレル程度減少することになる。しかし、300万バレルはOPEC生産量の10.2%に相当するため、このような規模の減産は不可能だろう。

報道ではOPECプラスで▲50万バレル、場合によるとサウジが追加で▲60万バレル程度の減産を検討しているようだが、価格の下支え効果は限定されると予想される。結局、多くのケースと同様、需要がどのタイミングで回復するか(新規感染者数がいつ減少を始めるか)で、今後の価格動向は決定されるだろう。

このようなパニック状態になると、需給バランスなどのファンダメンタルズ分析はほとんど役に立たず、チャートのテクニカル分析などの方がより重要になる。情報開示とともにファンダメンタルズ分析が可能になるが、まだそのステージにはない。

プットオプションの積み上がり具合を見ると、Brentは55ドルに積み上がっているが、それよりも低い価格では1ドル刻みに50ドルまで小さな山がある。

これらの価格帯が防衛ラインとなるため、今後、事態が悪化した場合の下落ペースは緩やかなものになるだろう。

トランプ大統領は中東和平案を発表したが、イスラエル寄りの内容でありパレスチナ側は反発、アラブ連盟も受け入れ拒否を表明、国連も非難した。イスラム国がイスラエルに攻撃を仕掛けるとも表明しており、特にシーア派三日月地帯の治安は悪化しよう。

米国は中東原油への依存度が低下しているため、中東政策が「雑」になる傾向があり、中東情勢不安は今まで以上に高まっていると考えるべきである。

なお、米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、数ヵ月にわたって材料とされてきたこと、第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は下向きリスクとなる可能性がある。

ただ、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

米・イラン問題は国同士の衝突リスクは低下したものの、武装勢力による小規模な攻撃は継続している。このような状況だと、米国人が1人死ぬことがレッドラインとするならば、局地的攻撃が偶発的な事故を誘発し、大規模な軍事行動につながる可能性は排除できず、今回と同様のイベントリスク顕在化で価格が上昇するリスクはあると見ている。

なお、ウクライナ機の誤射・撃墜をイラン政府が正式に認めた。ただし、搭乗者の大半はイラン人であり、イラン国内で指導部への反発が強まる可能性がある(すでに強まっている)。

リビア情勢は当事者不在の中、恒久停戦に向けて協力するという共同声明が発表された。実質的に「何もできない」ということである。再びリビア国内では戦闘が始まったと伝えられており、同国からの原油供給が途絶する可能性は高まっている。

トルコはリビアの暫定政権側を支持しているが、それはイスラエルやギリシャが欧州向けに進めているガスパイプラインを遮断することが目的だ。これまではトルコを通じて欧州に輸出されていたが、地中海ガスパイプラインが通ればトルコの権益や影響力が低下するためだ。

大規模戦争にはならないとみるが、リビアの停戦は非常に困難とみられる。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、新型肺炎の影響で追加利下げの可能性が出てきており、価格に一定の下支え効果をもたらそう。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。

財政出動は使途にもよるが、エネルギー価格の押し上げ要因になると考える。米政権は中間層への減税を検討している。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は上昇した。新型肺炎への対応加速への期待と、ピークシーズンであることから買いが入った。

【石炭価格見通し】

石炭価格は新型肺炎への対策進捗期待が、市場参加者のリスク選好を回復させているものの、新型肺炎の影響拡大は継続しており、電力需要が鈍化するとみられることから、現状水準でもみ合うものと考える。

また、欧州で天然ガス価格の低迷や環境規制の強化に伴う脱石炭の動きが強まっていることも、石炭価格を下押ししよう。

ただし、ピークシーズン入りしていること、年度が変わったことによる、中国の輸入再開観測を受けて結局は現状水準でのもみ合いになると予想される。

また、長期的には同様の環境規制の強化が石炭供給を減じるため、価格の押し上げ要因となる。欧州の脱炭素の動きは非常にトリッキーだ。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPECプラスは新型肺炎の影響で2月に会合を開催、追加減産を行う可能性が出てきている(OPECプラスで▲50万バレル、サウジ単独で▲60万バレル程度の追加減産か)。

ただし、需要面の減速感が強まっているときの減産効果は限定されるうえ、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、追加減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオ。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入増加。12月の貿易統計では、原油の輸入が4,548万トン(前月4,574万トン)と高い水準を維持。

今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、景気減速懸念の強まり。

・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。

・米国の中東への関与低下や原油価格の下落による、中東・北アフリカでの暴動発生。特にシーア派三日月地帯とリビアでの発生リスク。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTI・Brentともにロングが減少、ショートが増加した。明らかに需要減速を意識したロングの解消と、生産調整が覚束ない中でのショートの積み上がりの流れ。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが588,255枚(前週比 ▲10,973枚)ショートが126,493枚(+47,833枚)ネットロングは461,762枚(▲58,806枚)

Brentはロングが480,539枚(前週比▲18,197枚)ショートが78,182枚(+8,436枚)ネットロングは402,357枚(▲26,633枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は総じて堅調な推移となった。欧米の経済統計の改善や、新型肺炎に対する各国のワクチン開発の加速期待で株価の上昇が継続、ファンドのウェイト調整のための買戻しが入ったためと考えられる。

なお、LMEの投機筋ポジションが発表されたが、1月31日時点で亜鉛と鉛を除いて売り越しに転じている。明らかに新型肺炎の影響によるもの。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は新型肺炎のワクチン開発の進捗期待などで株価が上昇、投機的な観点からの買戻しが入りやすい地合いになっている一方、新型肺炎の影響が拡大し、最大消費国である中国各都市の封鎖や工場の稼働停止が需要を減じるため、現在の低水準でもみ合うものと考える。

新型肺炎の影響で投機筋が明確に売り越しに転じており、しばらくこの動きが続くものと考えられる。ただ、ショートも積み上がっているため早期に事態が改善すれば、比較的強い上昇圧力になるものと考えられる。

なお、米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、数ヵ月にわたって材料とされてきたこと、第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は下向きリスクとなる可能性がある。

制裁緩和の影響は今後の統計を睨みながらになる。ただ、中国が米国との合意を順守した場合、日本の中国向け工業品輸出が減少して、日本企業にとってはマイナスに作用する恐れがある。

ただ、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、新型肺炎の影響で追加利下げの可能性が出てきており、価格に一定の下支え効果をもたらそう。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、非鉄金属セクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。

財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。今のところ米政権は中間層への減税を考えているようだ。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

中長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。具体的には社会インフラとして「バッテリー」としての需要が高まると予想される、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは減速したが、閾値の50を維持。しかし、新型肺炎の影響が統計に表れるのは2月以降であり、さらなる減速の可能性は高い(価格の下落要因。

在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているため伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・12月の銅地金・製品の輸入量は52万7,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準。また、銅鉱石の輸入も192万8,000トンと、過去最高となった前月は下回ったものの、同じ時期の過去5年の最高水準を大きく上回っている。公共投資(電線網整備)などの公的需要が需要を下支えしているとみられ、中国の取引所在庫は過去5年平均を下回っている。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、景気減速懸念の強まり。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・1月31日付のLMEロング・ショートポジションの動向は、全ての金属でロングが急速に減少し、ショートも増加した。亜鉛と鉛以外はネット売り越しに。明らかに新型肺炎の影響で中国の需要が減少すると見られたためである。

当面は新型肺炎の状況をにらみながらのポジション取りとなり、ロングの解消とショートの積み上がりが進むと予想される。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲27.6億ドル(前週+12.8億ドル)と売り越しに転じた。買い越し額の減少率は▲315.4%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲894千トン(前週+266千トン)と、亜鉛と鉛以外売り越しに転じた。ネット売り越しの減少率は▲436.0%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、原料炭スワップ先物は上昇、中国鉄鋼製品先物価格は小幅高となった。

新型肺炎のワクチン開発が進むのでは、との見方が強まる一方、新型肺炎の影響が拡大する中、方向感に欠ける展開が続いている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、新型肺炎の感染拡大による経済活動の鈍化懸念や、最大の買い手である中国勢の不在(一部)が続くことが価格を下押しするが、各国の経済対策期待や、鉄鉱石の港湾在庫日数の水準は過去5年平均を下回っており、鉄鋼製品価格水準の高さを背景に粗鋼生産も高水準で推移するとみられることから、下落余地も限定されると考える。

米中の通商合意は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る対立を見るに、まだ両国関係は鉄鉱石価格の波乱要因になると見る。

ただ、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

また、冬場の鉄鉱石価格は季節的には強含みやすいものの、冬場の鉄鋼製品生産規制により鉄鋼向け需要が減速するため(短期的には鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鉱石価格の上昇要因となる)、今年は例年よりは低い水準での推移になるのではないか。

なお、2020年はValeの生産本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。

原料炭は新型肺炎の影響に加え、鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格中期見通しはやや強気である。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは47.1(前月43.1)と回復した。生産活動の回復(44.1→46.7)と、新規受注の回復(36.2→46.8)が影響した。

しかし、そもそも水準が閾値の50を下回っており、原材料在庫の水準も51.1(前月48.9)と閾値の50を上回っていることを考えると、そこまで鉄鋼セクターの業況が良い、というわけではない。

・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

12月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は468万トン(前月458万トン)と過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に減速し、277.2万トン(前月2,078.1万トン)となった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入減少である。

今後に関しては輸入規制が導入されると見られる、石炭の国内生産も11月時点で3億3,406万トンと過去5年の最高水準を大きく上回っている。このことから、今後も輸入は減少すると予想される。

・中国の12月の鉄鉱石の輸入量は加速し、1億130万トン(前月9,065万トン)と高い水準を維持した。一方で、今年の鉄鉱石生産は3月以降漸増しており、11月は7,924.5万トンに達している。

しかし、中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲55万トンの1億2,735万トン(過去5年平均1億2,184万トン)、在庫日数は▲0.1日の29.3日(過去5年平均 32.9日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られる。

・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+130.4万トンの1,019.4万トン(過去5年平均962万トン)と例年を上回った。新規受注の減速があるため、徐々に鉄鋼製品受給は緩和するとみられる。

なお、12月の鉄鋼製品の輸出は468万トン(前月458万トン)と過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、景気減速懸念の強まり。

・中国政府の経済対策(金融緩和や公共投資など)は価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は小幅に上昇実質金利が上昇する局面では大きく水準を切り下げたが、株が大幅に上昇する中、リバランス目的の需要が多少回復したためと考えられる。

PGMは上昇。投機的な色彩が強いプラチナは、昨日はどちらかといえば投機の買戻しが旺盛だったと見られ、比較的大きな上昇に。パラジウムはそもそもの水準の高さもあり、小幅高となった。

【貴金属価格見通し】

金価格は、新型肺炎リスク拡大の懸念を受けた株高が継続しているが、新型肺炎問題が解決している訳ではなく、経済活動の鈍化で株価の下落リスクが意識される中、ヘッジ目的の需要が価格を支えると考える。結局、高値圏での推移となるだろう。

仮に地政学的リスクが完全に解消した場合、リスクプレミアムがはげ落ちる形で金価格は下落することになる。現在のプレミアムは220ドル程度であり、実力ベースでは金価格は1,350ドル程度と考えられる。

ただ実際は過去の実質金利からの乖離幅は平均で160ドル程度であるため(リスクが完全になくなることはあまりない)、リスクが回避された場合、1,500ドル程度までしか下げ余地はないと見ている。

なお、米中合意は第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は金銀価格の上昇リスクとなる可能性がある。

ただ、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は再び上昇に転じており、金銀レシオの上昇を肯定しやすくなっている。しかし、現在の金銀レシオは在庫レシオで見た場合やや高すぎで、金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられ、20ドル前後まで価格が上昇してもおかしくない地合い。

特にリスク回避姿勢が強まり金が割高となる局面では、割安な銀が投機的な観点から物色される可能性は高かろう。

PGM価格は金銀価格が高値圏を維持する見込みであることから同様に高値を維持すると考えるが、新型肺炎の影響拡大が無視できないため、金銀価格対比では割安に推移しよう。

パラジウムは供給懸念が強く意識されているため引き続き、高値圏での推移となると予想される。

なお、パラジウムは投機の買いが押し上げているというよりも実際に顕著な供給不足によって上昇しているものであり、「どこまで上昇するのか」「調整した時のめどはどこか」といったことは正直不明である。

中国・世界の自動車販売は前年比マイナスが続いているが、徐々に前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていることから、需要面で価格を押し上げる可能性は高い。

やや懸念されるのが、12月の米自動車販売は1,670万台(前月 1,709万台)と再び失速している点。今後、米国政府が宣言通り中間所得者層向けの減税が実施できるか、長期金利上昇を抑制できるかに注目が集まろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・市場はFRBの年1回の利下げを見込んでいるが、政策変更はないとの見方が現在のメインシナリオ。しかし新型肺炎の影響次第では追加利下げの可能性も否定できず。

ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に向け、各国政府に働きかけを強めることになるだろう(これは中央銀行の権限外であるが)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するにはまだ時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、安全資産需要の高まり。

・中東・北アフリカ有事発生に伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・米中通商交渉が部分合意したが、第二弾合意は中国側にメリット少なく、むしろ今後は状況が悪化する可能性の方が高いか。この場合安全資産需要増加で価格の上昇要因。

・トルコ政府はシリアへの侵攻で発生した空白地帯に、シリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も(金銀価格の上昇要因)。

・英国のブレグジットは1月末に確定したが、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金はロングが増加、ショートが減少。新型肺炎問題の勃発で金需要は増加している。銀は逆にロングが減少、ショートが増加した。

プラチナはロングが減少、ショートも減少。どちらかというとポジション解消の動き。パラジウムも同様だが、ロングの減少が大きかったため、買いポジションは縮小。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが376,401枚(前週比 +1,608枚)、ショートが46,309枚(▲10,789枚)、ネットロングは330,092枚(+12,397枚)、銀が105,637枚(▲3,507枚)、ショートが42,220枚(+1,951枚)、ネットロングは63,417枚(▲5,458枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが77,440枚(前週比 ▲512枚)ショートが9,844枚(▲717枚)、ネットロングは67,596枚(+205枚)

パラジウムが12,234枚(▲3,234枚)、ショートが5,322枚(▲302枚)ネットロングは6,912枚(▲2,932枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物はトウモロコシが下落、大豆と小麦が小幅高となった。特段目立った新規手掛かり材料がない中で、様子見気分が強まっている。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は新型肺炎の影響で米国からの輸出が鈍化する、との懸念が広がっていることから現状の水準でもみ合うものと考える。

しかし、米中の通商面の合意や、異常気象による小麦の生産減少観測などへの懸念も根強く、また、景気減速から非景気循環系商品が物色されやすい地合いになるため下げ幅も限定され、結局はレンジでの推移になると予想する。

ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシ・大豆の受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、供給に懸念は少なく、価格には下押し圧力が掛かりやすい地合い。

小麦は豪州火災の影響や、ロシア・ウクライナの悪天候の影響で供給に懸念が出ていること、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、上昇圧力が掛かりやすい。

今後の市場の注目は大豆、トウモロコシの作付け意向面積。今の価格水準だとトウモロコシの作付け面積が増加する見込み。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・1月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9.200万Bu(市場予想135億207万Bu、前月136億6,100万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億1,307万Bu、35億5,000万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・1月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ 18億9,200万Bu(市場予想17億7,641万Bu、前月19億1,000万Bu)大豆 4億7,500万Bu(4億3,100万Bu、4億7,500万Bu)小麦 9億6,500万Bu(9億7,046万Bu、9億7,400万Bu)

・12月末の四半期在庫トウモロコシ 113億8,900万Bu(市場予想114億7,171万Bu、前月22億2,100万Bu)大豆 35億5,200万Bu(31億9,033万Bu、9億900万Bu)小麦 183億4,000万Bu(190億300万Bu、23億4,600万Bu)

(特殊要因)

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米中通商交渉は部分合意、シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、二次合意も難しく中国の合意不履行を材料に両国関係が再び悪化する可能性も考えられ、シカゴ定期の下落要因に。

ただし新型肺炎の影響で、しばらくの間、中国が合意を履行しなくても問題視はされないと予想される。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・エルニーニョ現象は終息したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に今年の春先以降、価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが320,909枚(前週比 ▲9,626枚)、ショートが247,489枚(▲35,023枚)ネットロングは73,420枚(+25,397枚)

大豆はロングが134,873枚(+10,178枚)、ショートが141,169枚(+34,118枚)ネットロングは▲6,296枚(▲23,940枚)

小麦はロングが158,579枚(▲374枚)、ショートが117,438枚(+6,210枚)ネットロングは41,141枚(▲6,584枚)

◆本日のMRA's Eye


「アラビカ豆価格は下落~新型肺炎の影響も」

2019年11月の当コラムで価格上昇を予想していたアラビカ豆価格は高騰を続け、12月には2017年9月以来となる138.4セント/ポンドを付けたが、その後下落して急速に水準を切り下げ、現在は昨年11月の価格高騰前の価格で取引されている。

なお、アラビカ豆価格の年初来のパフォーマンスを見ると、弊社が重要と考えてウォッチしているコモディティ群の中で欧州天然ガスに続いて最も下落幅が大きい商品である。

今後を見通す上で、昨年11月にアラビカ豆価格上昇見通しを掲載して以降のアラビカ豆の動きを少しレビューしてみる。そもそも今年6月の米農務省データでは、2019-2020年は最大生産国であるブラジルが裏年に当たり世界の需給バランスが121万1,000袋の供給過剰が見込まれていた。

しかしこれは前年の1,061万3,000袋の供給過剰から、かなり大きく供給過剰幅を縮小する見通しであり、在庫率もこの10年で3番目に低い20.0%への低下が見込まれていた。これに加えて10月22日にブラジル上院で年金法案が可決され、財政状況の改善期待がレアルを押し上げ、ブラジルからのコーヒー豆(アラビカ豆・ロブスタ豆)輸出が減速すると見られたことが、国際市場の需給タイト化観測を醸成し、価格を押し上げる形となった。

その後ブラジル・レアルは、11月6日、7日に行われた油田入札を石油メジャーが見送ったことや、景気刺激のための断続的な利下げでレアル安となったが、それでもこの間アラビカ豆価格は上昇を続けた。純粋に需給ファンダメンタルズが意識されたためと考えられる。

これに加えて、レアル防衛のためにブラジル当局がレアル買い介入を行ったことによるレアル高進行が輸出減速観測を強め、アラビカ豆価格の上昇ペースが加速した。

しかし、このタイミングで米農務省が2019-2020年の需給バランスは296万9,000袋の供給過剰と前回見通しから緩和幅が上方修正され、アラビカ豆価格の上昇に歯止めが掛かることとなった。

年明け以降は予期していなかったイベントが多数顕在化しており、米農務省の見通しを背景としたアラビカ豆需給の緩和観測に加え、その他の市場動向がアラビカ豆価格を大きく左右することとなった。

まず、米国とイランの対立が激化し、武力衝突になるのではないかとの見方がドル高・レアル安を促し、国際市場でのアラビカ豆需給緩和観測が広がったことが価格をさらに押し下げた。

また、昨年末から発生した中国の新型肺炎の影響で、世界のヒトとモノの移動が強制的に制限される動きが加速、特に貿易面で中国とつながりの深いブラジル経済が悪化するとの見方からレアル安が進行したことも、アラビカ豆価格の更なる押し下げに寄与することとなった。

以上を総括すると、そもそもロブスタ豆を含むコーヒー豆の需給は裏年ながら緩和的に推移する見込みであること、中国の新型肺炎が終息しない中では、経済的につながりの深い最大生産国であるブラジルへの影響は無視できず、レアル安圧力が掛かりやすいことから、アラビカ豆価格はさらに下値を探りやすい。

しかし、新型肺炎の影響により景気の減速懸念が強まっていることから、景気循環系の商品(原油や工業金属等)を売って、非景気循環系商品(貴金属や農畜産品など)が物色されやすい流れになると予想され、この景気循環系商品に該当せず、かつ、商品セクターの中で今年最も下落している商品の1つであるアラビカ豆は、需給バランスとは関係なく物色される可能性があると見ている。

◆主要ニュース


・1月日本サービス業PMI改定 51.0(速報比▲1.1、49.4)、コンポジット 50.1(▲1.0、48.6)

・1月中国財新サービス業PMI 51.8(前月52.5)、コンポジット 51.9(52.6)

・1月インドサービス業PMI 55.5(前月53.3)、コンポジット 51.9(52.6)

・1月独サービス業PMI改定 54.2(速報比変わらず、52.9)、コンポジット 51.2(+0.1、50.2)

・1月ユーロ圏サービス業PMI改定 52.5(速報比+0.3、52.8)、コンポジット 51.3(+0.4、50.9)

・12月ユーロ圏小売売上高 前月比▲1.6%(前月+0.8%)、前年比+1.3%(+2.3%)

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 +5.0%(前週+7.2%)
 購入指数▲9.5%(+5.3%)
 借換指数+15.3%(+7.5%)
 固定金利30年 3.71%(3.81%)、15年 3.19%(3.24%)

・1月米ISM非製造業景況指数 55.5(前月54.9)
 新規受注 56.2(55.3)
 受注残 45.5(47.5)
 在庫増減 46.5(51.0)
 在庫景況感 54.9(60.0)
 雇用 53.1(54.8)

・1月米ADP雇用統計 前月比+291千人(前月改定+199千人)

・1月米サービス業PMI改定 53.4(速報比++0.2、52.8)、コンポジット 53.3(+0.2、52.7)

・12月米貿易収支赤字 ▲489億ドル(前月改定▲437億ドル)

・WHO、新型肺炎を巡り専門家会合を来週開催。

・ミクロネシア、日本からの直接入国を拒否。流行地域ではない国で14日以上の滞在がなく、発症がなければ入国を拒否。

・英国、2035年にハイブリッド車を販売禁止。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油+3.4MB(クッシング+1.1MB)
 ガソリン▲0.1MB
 ディスティレート▲1.5MB
 稼働率+0.2

 原油・石油製品輸出 8,899KBD(前週比+230KBD)
 原油輸出 3,454KBD(+87KBD)
 ガソリン輸出 763KBD(+45KBD)
 ディスティレート輸出 1,167KBD(▲63KBD)
 レジデュアル輸出 101KBD(▲5KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,322KBD(+68KBD)
 その他石油製品輸出 1,862KBD(+100KBD)

・OPECプラス合同専門委員会(JTC)、「減産で合意できなければOPECプラス会合を2月に前倒しすることはない。」▲50万バレルの減産拡大を検討。

・インド、ロシア北極油田の開発に参画。

【メタル】
・Q419 Glencoreの銅生産 前年比▲9%の355,400トン(前年390,600トン) 
 2020年生産目標 130万トン(±5万トン)
 亜鉛生産 268,300トン(282,100トン)
 石炭生産 3,550万トン(3,270万トン)

・日鉄ステンレス、ニッケル系鋼板価格を3月から▲1万トン、厚鋼板も▲1万円引き下げる。クロム系薄鋼板は据え置き。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ビットコイン ( その他 )/ +6.26%/ +35.67%
2.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +5.01%/ ▲6.18%
3.CME木材 ( その他農産品 )/ +3.97%/ +5.87%
4.NYM灯油 ( エネルギー )/ +3.88%/ ▲18.88%
5.SHF天然ゴム ( その他農産品 )/ +3.29%/ ▲11.74%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ ▲2.47%/ ▲12.91%
69.TCM天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲1.67%/ ▲17.09%
68.CME肥育牛 ( 畜産品 )/ ▲1.33%/ ▲6.64%
67.SHF 金 ( 貴金属 )/ ▲1.22%/ +1.33%
66.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲1.13%/ ▲14.66%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :29,290.85(+483.22)
S&P500 :3,334.69(+37.10)
日経平均株価 :23,319.56(+234.97)
ドル円 :109.84(+0.32)
ユーロ円 :120.79(▲0.16)
米10年債利回り :1.65(+0.05)
独10年債利回り :▲0.36(+0.04)
日10年債利回り :▲0.04(+0.01)
中国10年債利回り :2.86(+0.03)
ビットコイン :9,711.88(+572.11)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :23.49(+0.49)
エネルギー :30.03(+2.75)
ベースメタル :20.41(▲0.15)
貴金属 :26.42(▲0.43)
穀物 :15.15(+0.3)
その他農畜産品 :24.76(+0.14)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :27.98(+4.75)
Brent :30.57(+1.3)
米天然ガス :31.80(+1.45)
米ガソリン :30.78(+4.98)
ICEガスオイル :32.59(+3.54)
LME銅 :17.26(+0.66)
LMEアルミニウム :9.47(▲0.59)
金 :9.81(▲0.11)
プラチナ :24.54(+0.02)
トウモロコシ :22.50(+0.04)
大豆 :9.81(▲0.11)

【エネルギー】
WTI :50.75(+1.14)
Brent :55.28(+1.32)
Oman :54.31(+1.26)
米ガソリン :148.63(+4.31)
米灯油 :164.54(+6.15)
ICEガスオイル :506.25(+14.50)
米天然ガス :1.86(▲0.01)
英天然ガス :22.79(▲0.23)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :55.28(+1.32)
SPO380cst :274.92(+5.20)
SPOケロシン :79.82(▲0.48)
SPOガスオイル :66.35(+1.96)
ICE ガスオイル :67.95(+1.95)
NYMEX灯油 :201.65(+2.93)

【貴金属】
金 :1556.53(+3.61)
銀 :17.61(+0.02)
プラチナ :984.34(+19.50)
パラジウム :2435.25(+2.80)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,735(+69:21C)
亜鉛 :2,215(+3:7.5B)
鉛 :1,835(▲9:8.5B)
アルミニウム :1,716(+3:28C)
ニッケル :13,075(+200:70C)
錫 :16,325(+125:10B)
コバルト :34,116(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5721.50(+87.00)
亜鉛 :2222.50(+40.00)
鉛 :1826.00(▲14.00)
アルミニウム :1725.00(+26.00)
ニッケル :13210.00(+260.00)
錫 :16510.00(+170.00)
バルチック海運指数 :453.00(▲13.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :79.71(▲2.02)
NYMEX鉄鉱石 :79.87(▲1.76)
NYMEX原料炭スワップ先物 :148.58(+2.50)
上海鉄筋直近限月 :3,372(+20)
上海鉄筋中心限月 :3,300(+15)
米鉄スクラップ :270(▲8.00)

【農産物】
大豆 :880.00(+0.50)
シカゴ大豆ミール :287.40(▲1.10)
シカゴ大豆油 :31.32(+0.59)
マレーシア パーム油 :2853.00(+136.00)
シカゴ とうもろこし :380.75(▲1.50)
シカゴ小麦 :562.00(+4.75)
シンガポールゴム :153.50(+0.90)
上海ゴム :11130.00(+355.00)
砂糖 :14.73(+0.02)
アラビカ :97.75(▲0.40)
ロブスタ :1264.00(▲8.00)
綿花 :67.51(+0.16)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :57.10(+0.35)
シカゴ生牛 :120.75(▲0.88)
シカゴ飼育牛 :135.68(▲1.83)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。