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不安定な新年の滑り出し~今年のイベント
  • MRA外国為替レポート

2020年1月6日号

◆先週の市場総括


23日月曜日に始まる週は海外市場がクリスマス休暇のなか材料も少なくドル円相場は小動きだった。109円40銭台で始まり30銭~70銭の狭いレンジで上下。週前半は40銭近辺でほぼ動かず。週後半は109円50銭中心に概ね40銭~60銭で上下動となった。

米国株は堅調に推移。ナスダック指数は9,000ドルの大台に乗せた。米中通商交渉第一段合意の具体化の動きをうけて全般的にリスク選好が維持された。

トランプ大統領は習近平主席と合意署名の調印式を行うと述べ、中国外務省は合意の署名式に関して密接に米国と連絡をとっているとコメント。また米国の年末商戦がネット販売を中心に好調との報道も支え。

米10年債利回りは1.9%を中心に上下。リスク選好が強まるなかユーロが堅調。対ドルで週初の1.1080から1.1180へ、対円で121円20銭台から122円40銭へと上昇した。

日経平均は23,900円で始まり底固く、堅調ながらも、週末にかけてはやや利食い売りに押されて23,800円台前半で引けた。経済指標の発表は海外の休日もあり少なかった。米国の耐久財受注(11月)は弱め。リッチモンド連銀製造業指数(12月)も▲5と弱く前月▲1から悪化した。

30日月曜日に始まる年末年初はポジション調整が先行。30日月曜日の東京市場は年内最終営業日。日経平均は23,800円割れで安寄り。その後も利食い売りに押されてじり安。大納会は23,650円近辺で引けた。

ドル円相場は109円50銭近辺で始まり軟調。109円20銭中心にもみ合い小動きとなった。ユーロ円相場は122円30銭~40銭で始まり夕刻にかけてやや円高となり122円20銭~30銭で上下。ユーロドル相場は1.1180で始まり1.12ちょうどを中心としてもみ合い。

海外市場では米国株が下落。為替市場では円高。ドル円相場は108円80銭~90銭に下落してもみ合い。ユーロ円相場も下落して122円ちょうどを中心に上下。ユーロドル相場は1.12ちょうどを中心に上下動。

米長期金利は概ね横ばい。10年債利回りは1.88%。

シカゴ購買部協会景気指数(12月)は48.9と前月46.3から改善。ダラス連銀製造業活動指数(12月)は▲3.2に前月▲1.3からやや悪化。

31日の東京市場は休場。アジア時間は円買い戻しが続いた。ドル円相場は108円60銭~70銭に下落してもみ合い。ユーロ円相場もやや下落して121円80銭中心にもみ合い。ユーロドル相場は1.1200~1.1210でもみ合い。

欧米市場に入ると年末のポジション調整からドル安。ドル円相場は108円50銭に下落。ユーロドル相場は1.1240にユーロ高ドル安。傍らでユーロは堅調でユーロ円相場は122円ちょうどに上昇。リスク選好が維持されるなか円高は一服。

米国株は引けにかけて上昇。NYダウは80ドル弱上昇して28,540ドル近辺で引け。S&P500は3,230ドル、ナスダック指数は8,970ドルに上昇したが9,000ドルには届かず。米10年債利回りは1.92%に上昇して引けた。

ドル円相場は108円60銭~70銭に反発して引け。ユーロドル相場は1.1210に反落。ユーロ円相場は121円80銭で引け。

中国の製造業PMI(12月)は50.2で前月と不変。米国の消費者信頼感指数(12月)は126.5で前月126.8からわずかに悪化。

トランプ大統領は、米中通商交渉第一段かい合意の署名を1月15日に行うとコメントした。

1日は各国市場が休場。ただ、この日、中国人民銀行は1月6日から預金準備率を0.5%引き下げることを発表した。これにより流動性が8,000億元増加する見込み。李克強首相は、中小企業の資金調達コストを低下させる方針を示していた。

2日のアジア市場は小動き。ドル円相場は108円70銭~80銭でもみ合い。ユーロ円相場は121円90銭~122円ちょうどで始まり狭いレンジで上下。昨年年初のような急激な円高は生じなかった。

前日の中国人民銀行の金融緩和がリスク選好を支え。発表された中国の財新・製造業PMI景況感指数(12月)は51.5と前月51.8からやや悪化したものの、景況感の分かれ目である50を上回った。

欧米市場ではポジション調整からユーロ円相場を中心に円買い戻しが活発化。ユーロ円相場は121円ちょうど近辺まで下落した。ドル円相場は108円80銭台から20銭台に下落。

ユーロドル相場は1.1170から一時1.12に上昇していたが1.1170に押し戻されてもみ合い。その後円買いは一服してドル円相場は108円50銭台でもみ合い引け。ユーロ円相場は121円20銭台。

年初初日の取引となった米国株は中国の金融緩和を好材料として高寄りした後も終始堅調で大幅高。ダウは年末日対比+330ドルの高値引け。ナスダックは+120ドルで9,092ドル。米長期金利はやや低下して10年債利回りは1.88%。

3日のアジア市場では午前中にリスク回避が強まった。米国がイラクにおいてイラン革命防衛隊の司令官を爆殺。イランは報復を示唆し、にわかに中東情勢が緊迫化。

為替市場ではクロス円相場を中心に円高。ドル円相場は108円60銭近辺から108円ちょうど近辺に、ユーロ円相場は121円30銭から120円70銭台に下落して上下。夕刻にはドル円相場は108円割れ、ユーロ円相場は120円30銭まで下落し海外市場にかけて20銭に下落した。

ドルは対ユーロでは堅調でユーロドル相場は1.1150から1.1130割れへユーロ安ドル高。米国株は下落。

中東情勢の緊迫化に加え発表されたISM製造業景気指数(12月)が47.2と2009年6月以来の低水準。前月48.1から49.0への改善を見込んでいた予想に反して悪化したことが嫌気された。

ダウ指数は前日比▲350ドルの大幅安で始まった。ただその後は持ち直して▲230ドルで引け。ナスダックも下落したが9,020と大台は維持された。

米10年債利回りは1.79%へ大きく低下。ただ株安一服で円高も一服。ドル円相場はISM指数を受けて108円割れに下落していたが下げ止まり、引けは108円10銭近辺。ユーロ円相場は120円60銭に持ち直してもみ合い引け。ユーロドル相場は1.1180に反発した後1.1160で引け。

公表されたFOMC議事録(12月会合)では、FOMC内での意見が明確に一致し、実施した3回の利下げで景気下振れリスクへの対応は十分との認識が改めて確認された。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

先週末はISM製造業景気指数(12月)が予想外に47.2に悪化して景気回復期待の出鼻をくじかれた。今週も新年の景気動向、滑り出しのイメージを左右するうえで米国の指標は注目される。不安感に歯止めがかかるか。

火曜日 ISM非製造業景気指数(12月、予想54.4、前月53.9)、製造業新規受注(11月、前月比、予想+0.2%、前月+0.3%)、貿易収支(11月)

水曜日 ADP雇用報告(12月、雇用者数前月比、予想+143千人、前月+67千人)

金曜日 雇用統計(12月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+172千人、前月+266千人、平均時給・前年同月比、予想+3.1%、前月+3.1%)

2.欧州の経済指標

欧州経済の見通しはこのところ改善しているが、その流れを後押しする数字が示されるか。リスク選好の回復とあいまってユーロドル相場の一段の上昇をもたらすか。

火曜日 ユーロ圏消費者物価指数(12月、前年同月比、予想+1.3%、前月+1.0%)、同・小売売上高(11月、前年同月比、予想+1.5%、前月+1.4%)

木曜日 ドイツ鉱工業生産(11月)

3.中東情勢

にわかに高まった中東情勢の緊迫、米国とイランの対立の行方、動向はどうか。イラン側の報復が現実のものとなりリスク回避が強まることはないか。市場では短期間でリスク回避的な状況は解消するとの見方もあり、ひとまず落ち着いている。

ただ市場参加者は敏感になっており、何か動きがあれば、株価下落、円安になりにくい状況、ないしさらなる円買い戻しを招くリスクがある。

◆今週のMRA's Eye


不安定な新年の滑り出し~今年のイベント

昨年の年初ほどではないが、今年も早々にリスク回避からポジション調整、為替市場では円買い戻しが先行して海外市場の取引が始まった。クリスマス休暇前は平穏なまま閑散小動きでドル円相場は109円台半ば。休暇明けもとくに動きはなかったが、日本市場が休場となった年末から年初にかけて、図ったように例年のごとく円高に。

ISM製造業景気指数が予想外に悪化してこの間の悪化局面のなかで最も悪い数字となった。加えて中東情勢の緊迫化も重なった。年末年初はいつも「魔の時間帯」だ。

ただ今年は去年ほどのリスク回避あるいはポジション調整による円買い戻しは生じていない。米国株は年末年初に堅調なまま取引を終えた。年初初日は大幅高となり、市場参加者の大勢が、今年の相場を強気でみていることが窺われる。

そうしたなかで生じた米国によるイラン革命防衛隊司令官の爆殺事件、中東情勢の緊迫化だったが、それでも米国株の下落は限定的だった。リスク選好の後退で、為替市場では従来の値動き通り円は買い戻されたが、ドルもまた堅調となった。

円、ドル、双方ともに安全通貨とみなされている状況は不変。ユーロ円相場ほか、ドル以外の通貨の対円相場、クロス円相場を中心に円高となった。それでもユーロ円相場は122円ちょうど近辺から120円を割り込むまでに至らない下落にとどまり、昨年初のショックに比べれば穏やかな反応だ。

シカゴ通貨先物で示される投機的な円ポジションは12月末にかけて売り越しだったが、そのボリュームは1年前の半分程度。根底にある2020年のリスク選好シナリオと相対的に抑制された円買い戻し圧力が、年初の円高ショックを緩和している。

今年の市場が足元の大勢の見方通り、リスク選好に支えられた展開となるのかどうか。鍵を握るのは米国経済の動向であり、主要なイベントリスクの行方にかかっている。

まずは米国の経済指標で企業部門の景況感持ち直しが示されるのかどうか。ISM製造業景気指数は12月になおも悪化して市場の期待を裏切るかたちとなった。

これまでの懸念は企業の景況感の悪化が雇用所得情勢の悪化につながり、景気トレンドが暗転しないかどうかだった。差し当たり、改善期待は数字の裏付けを得られていない。

そこに雇用悪化が示されれば、一時的かつ振れの大きい指標の数字であっても、市場の不安心理が高まるリスクがある。雇用統計が穏やかながらも良好な数字を示し続けることが重要だ。

インフレ懸念が大きく後退するなか、毎回の雇用者数増減の数字に注目が集まる。ISM景気指数は、1月分こそ改善、悪化トレンドの反転を示せるか。2か月、3か月、改善しなければ、トレンド反転とは受け止めにくく、そうなると、早くとも市場心理が明確に好転するのは4月にずれ込みそうだ。

米中通商交渉第一段階合意は1月中旬にも署名の運びという。市場は、すでに米中摩擦の悪化には歯止めがかかり、さらに最悪期を脱して改善に向かい始めたのではないか、との期待に満ちている。

悲観論は後退しているが、これも第二段階の合意への交渉進展など、トレンドとしての改善を明確に示せるか。

その前に1月末には英国が離脱期限を迎える。離脱そのものは既定路線として織り込み済みだが、問題はEUとのFTA交渉期限が年末から延長されるのかどうか。

延長を認めない法案が成立すれば、実質的に、経済的に、英国がEUから秩序なき離脱をするのと同等の影響が生じる。英国経済に悪影響が生じる可能性があるが、これを市場がリスク回避要因と受け止めるか。

単に英国のみの問題とすれば、グローバル市場への影響は限定的だが、そうした反応とみてよいか。

今年の最大のイベントは米国大統領選挙だ。2月から3月にかけて、党員集会や予備選挙が佳境を迎える。とくに3月3日のいわゆるスーパーチューズデー、14州における大統領予備選挙は、大勢を左右する重要な1日となる。

共和党はトランプ大統領のまま行くのか、民主党の有力候補は誰に絞られてくるのか。その結果として共和党の勝機はどうか。そうした最中にその後9月末に始まる両党候補者の討論会がどのような展開となるか。11月3日の大統領選挙、上院・下院議会選挙に向けてどんでん返しはあるのか。

その前に重要なポイントとして、トランプ政権が打ち出した中間層への減税策が具体化してくるのか。現実のものとなれば、景気にポジティブ、リスク選好を後押しする材料となる。

今年、各国の財政政策が拡張方向に向かうのかどうか、どの程度の具体的な動きとなるかは重要だ。

各国で金融緩和が一服して様子見となるなか、財政政策の動静が市場のマインドを左右する大きなファクターとなる。

そして中国景気の動向、米国景気の動向、とくに両国の企業景況感が明確に改善するかどうかが、結局のところ、市場のリスクマインドを大きく左右する。

財政政策の発動が期待ほどでなく、他のリスクイベントが生じた場合には、想定外のダウンサイドが生じるリスクシナリオもありうる。

中東情勢緊迫化は今のところ短期間で落ち着くとの見方があるが、イランが報復措置に出た場合には長期化のリスクもある。当面はその行方を見守る必要がある。

メインシナリオは緩やかなリスク選好の継続。米国の中間層向け減税が具体化、さらに企業景況感が明確に改善を示せば、リスク選好は想定よりも強まるだろう。

その場合、米長期金利10年債利回りは2%を上回って上昇する可能性があり、リスク選好のなかでドル高円安が113円~114円程度まで進むだろう。一方、これらが実現せず、企業景況感が低迷し、米中通商交渉も進展せず、となれば107円~110円程度で低迷を続ける可能性もある。

そして難しいのは大統領選挙後だ。いずれにしても2021年の見通しは政治的な景気押し上げニーズが後退するために不透明となる可能性がある。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.09(▲0.48)
ユーロ :120.49(▲0.83)
英ポンド :141.512(▲1.22)
豪ドル :75.13(▲0.78)
カナダドル :83.174(▲0.47)
スイスフラン :111.093(▲0.68)
ブラジルレアル :26.5924(▲0.37)
中国人民元 :15.508(▲0.06)
韓国ウォン(日本円=100) :9.274(▲0.10)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1161(▲0.001)
英ポンド :1.3083(▲0.006)
豪ドル :0.695(▲0.004)
カナダドル :1.3001(+0.002)
スイスフラン :0.9729(+0.001)
ブラジルレアル :4.0584(+0.034)
中国人民元 :6.9663(+0.002)
韓国ウォン :1166.93(+8.75)

【主要国政策金利】
米国 :1.75
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.79(▲0.09)
米2年債 :1.52(▲0.04)
日本10年債利回り :▲0.01(±0.0)
日本2年債利回り :▲0.01(+0.00)
独10年債利回り :▲0.28(▲0.06)
独2年債利回り :▲0.62(▲0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :28,634.88(▲233.92)
NASDAQ :9,020.77(▲71.42)
S&P500 :3,234.85(▲23.00)
日経平均株価 :休場( - )
ドイツ DAX :13,219.14(▲166.79)
インド センセックス :41,464.61(▲162.03)
中国上海総合 :3,083.79(▲1.41)
ブラジル ボベスパ :117,706.70(▲866.40)
英国FT250 :21,988.19(▲120.10)
ビットコイン :7269.82(+309.24)

【主要商品価格】
WTI :63.05(+1.87)
Brent :68.60(+2.35)
米ガソリン :174.88(+4.46)
米灯油 :206.14(+3.73)

金 :1552.20(+23.07)
銀 :18.06(+0.04)
プラチナ :982.00(+1.83)
パラジウム :1989.83(+28.38)
銅 :6105.00(▲87:28C)
アルミニウム :1794.00(▲10:36C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :930.50(▲13.75)
シカゴ とうもろこし :386.50(▲5.00)
シカゴ小麦 :554.50(▲5.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。