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中東情勢不安後退でリスク選好回復
  • MRA商品市場レポート for PRO

2020年1月10日 第1669号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「中東情勢不安後退でリスク選好回復」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、米国とイランの軍事衝突の回避を受けたリスクテイクの再開で、景気循環系商品が物色された。エネルギーは緊張緩和とドル高でやや軟調地合いを維持。また、非景気循環系・非インフレ系資産であるその他農産品も水準を切り下げた。

【本日の価格見通し総括】

本日は、地政学的リスクが鎮静化したことから、再びマクロ経済統計特に米雇用統計に注目が集まることになる。

市場予想は前月比+16万人(前月+26.6万人)と減速はするものの、15万人以上の雇用者数の増加を維持する見込みである。一昨日発表されたADP雇用統計も+20.2万人(市場予想+16万人、前月+12.4万人)と強めの内容であり、恐らく予想通り悪い内容ではないだろう。

金融政策の変更につながる可能性がある賃金上昇率は、前月比+0.3%(前月+0.2%)、前年比+3.5%(+3.5%)と高い水準を維持する見込みだが、金融政策の変更につながる程の上昇にはならない見込み。

雇用・賃金は景気の遅行指標であるが、これらの指標の改善は景気循環系商品価格の上昇要因となるだろう。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

一昨日であるが、米国はイランに対する武力行使を回避することを決定し、同地域の不安定化のリスクは後退することとなった。

今回の一連の問題は、国防省が用意したソレイマニ司令官殺害という「実行の可能性の低いシナリオ」をトランプ大統領があえて選択したことで、事態が複雑化した。

ソレイマニ司令官はイランの国外での工作活動に従事する「コッズ部隊」のトップであり、実はブッシュ(子)、オバマ時代にも場合によっては殺害するべき対象として認識されていたが、殺害してしまうことでより厳しい状況になる、ということが分かっていたため実行が見送られてきた。

それをトランプ大統領が鶴の一声で実行してしまった訳だ。カッとなった部分はあるだろうが、判断の背景には今年の11月に予定されている大統領選挙があったものと考えられる。

ただしそれは、国民の支持率を上げるということよりも、イラン革命後の1979年11月に起きたイランのアメリカ大使館人質事件の対応が不十分だったとして、当時大統領だったカーター氏が大統領選に敗北したことが頭をよぎったことによるものだろう。

しかし、イランが十分に考えた対応を行ったため、米国も無茶をしないで済んだ。仮に米国が反撃した場合、第5次中東戦争に発展する可能性があったので、トランプ大統領もよく我慢したといえる。

しかし、米国兵士が1人でも殺された場合、というのが「レッドライン」に設定されてしまった可能性が高く、現在でも局地的な小競り合いが発生していることを考えると、再び米兵が死亡して両国の対立が深まり、原油価格の高騰や、株価の調整をもたらすリスクは無くなっていない。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.2%→+3.0%)ている。2020年も+3.4%(▲0.1%)に引き下げた。

ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっている。あったとしても後1回程度(▲25bp程度)の利下げに留まる(金融面の価格下支え期待の後退)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商交渉は部分合意。しかし関税が撤廃されたわけではなく、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護を中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。

通商面のみならず、資本フローの規制や、人権問題への制裁なども加わっており、通商面で妥協があったとしてもその他の分野での制裁発動の可能性は高い。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。EUは英国のEU離脱期限延長で合意し、英総選挙では保守党が圧勝した。目先は無秩序離脱の可能性が後退するため価格の上昇要因。ただし、2020年12月末の移行期間までに条件で合意できなければ、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・中国政府が「法律に基づき」過去のGDPの見直しを行うと発表しているが、この見直しによって統計が悪化する可能性は高く、景気循環銘柄価格の下落要因に。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は低水準での推移となった。米国とイランの対立懸念が急速に後退する中で、実質金利が上昇し、ドルが高値圏で推移したことや、原油価格に対する説明力の高い米製造業の景況感悪化が価格を下押しした。

【原油価格見通し】

原油価格はイランが報復を行ったが、米政府が抑制した対応を採択したため材料としては一巡。年初に発表されたISM製造業指数の減速や、米中合意への期待といった材料を合わせて考えると、しばらくは現状水準での推移になると予想される。

ただし、今回米国側は、「米兵が1人死んでもそれはレッドライン」と定義したこと、それに対する報復としてイラク以外の米軍ないしは米国人が在留している周辺国も攻撃対象に加えると、イラン側が声明を出していることから、類似の事象が顕在化した場合の上昇リスクは残存している。

次の注目は3月のOPECプラス会合での減産延長議論だが、今のところ減産規模が縮小されるないしは減産が終了する可能性が高い。原油価格は一時的に4月以降、下値余地を試すことになるだろう。

米中交渉は通商面で合意の見通しだが、香港やウイグル族の人権問題まで米国が対象を拡大して中国も報復、先行きが引き続き不透明。結局、部分的な合意には至るものの、長期的には米中いずれかがあきらめるまで継続するため、やはり景気循環銘柄価格の下落要因、と整理しておくべきである。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。

財政出動は使途にもよるが、エネルギー価格の押し上げ要因になると考える。今のところ米政権は中間層への減税を検討しているようだ。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

なお、景気の減速に伴う価格下落(歳入確保のための増産)やサウジアラビアに対するドローン攻撃(テロの低コスト化・大規模化に伴う供給途絶)の影響で、供給側(特にOPECプラス)の動きが価格に与える影響は無視できなくなっている。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は上昇した。中国の輸入再開観測が強まっていることや、環境規制強化に伴う特に欧州で供給が減少すると見られていることが価格を押し上げている。

ただし天然ガス価格が低水準で推移していることが上昇余地を限定した。

【石炭価格見通し】

石炭価格はピークシーズン入りしていること、中国の輸入再開観測を受けて上昇すると考える。ただしバルチック海運指数にまだ上昇の兆しは見えておらず、実際に上昇を始めるのは2月以降になると予想される。

また、欧州で急速に環境規制強化への機運が高まっていることが大西洋地区での石炭供給を制限することから、供給面でも石炭価格を押し上げる可能性が高まっている。

11月の中国の貿易統計では、石炭輸入は燃料炭・原料炭合計で2,078万トンと前月から減速、過去5年平均を下回った。

同時に11月の中国石炭生産が、同じ時期の過去5年の最高を上回る3億3,406万トンとなった。中国の国内供給は増加している状況であり、貿易市場の緩和圧力は去っていない。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPEC総会では現状追認の▲50万バレルの追加減産が決定され、さらにサウジアラビアが▲40万バレルの自主減産を決定、原油価格の上昇要因に。

ただし、減産は3月末までであること、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、OPEC減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオ。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入増加。11月の貿易統計では、原油の輸入が4,574万トン(1,128万バレル/日)と過去最高を更新。

今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。

また、トルコ軍のシリアへの侵攻により、イスラム国の兵士16,000人が域外に逃亡、このほかリビアにも派兵するなど中東・北アフリカの地政学的リスクが高いことは要注意。

サウジアラビアのアブカイクへのドローン攻撃でテロが低価格化・大規模化することが分かったことは、中東の供給途絶リスクを従来よりも高めるものであり、従来以上に中東情勢は重要に。

・ブラジルのOPEC加盟。ブラジルの生産量は2018年で268万バレルであり、世界供給の2.8%に達するため、実際に加盟し、サウジアラビアの意向に沿う生産を行うならば、OPECの価格支配能力は若干の改善が見込まれる。

仮に期待通り来年の世界景気が夏頃にかけて底入れした場合、生産制限は顕著な価格上昇要因となり得るため、その点は注意。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロングが増加、ショートが減少している。景気への楽観と減産への期待が強気のポジションテイクとさせている。

Brentはロングが増加、ショートも増加している。景気への楽観とOPECプラスの減産が3月で終了する見込みであることがショートを増加させた。

しかし、米国とイランの対立懸念が強まっており、主に供給側のリスクが意識されるため今週はショートの買戻しが加速すると予想される。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが626,848枚(前週比 +1,546枚)、ショートが71,991枚(▲3,234枚)、ネットロングは554,857枚(+4,780枚)、Brentが486,509枚(前週比+13,297枚)、ショートが75,979枚(+5,222枚)、ネットロングは410,530枚(+8,075枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は上昇した。米・イランの対立が回避されたことで、市場参加者のリスク回避姿勢が弱まったこと、劉鶴副首相が米中通商合意に署名のため訪米の予定であると報じられたことが背景。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、米・イランの衝突リスクが後退したことでリスクテイク意欲が回復すること、米中通商合意が正式に署名される見込みであること、中国の預金準備率引き下げなどの景気テコ入れ策が意識され、買戻しが優勢になると考えるが、中国の公共投資の影響が季節的に一巡すると見られることから上昇余地も限定されよう。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めとなったが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないと予想される。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めていることが、非鉄金属においても今後の大きなテーマとなると見られる。

財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。今のところ米政権は中間層への減税を考えているようだ。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

中長期的にはインドの構造的な需要増加や、環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想されるが、より短期的には、中国、欧州の景気がどこで底入れするのか、米国経済の後退がいつから始まるのかに依拠する。

今年の大統領選挙を睨んで米国がどのような対応をしてくるかが不透明であるが、こうした政策期待効果を除けば、底入れ感が出てくるのは来年の春~夏にかけてになると見ている。中期的には現状水準でのもみ合いが続こう。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか(従来見通しを変更)。

ニッケルは、1月から供給が停止されたが、中国の前倒し調達の影響でそれほど大きな問題にならないと予想される。しかし、実際にインドネシアの供給が止まれば、シェアはニッケル含有分ベースで25%であるため、原油に例えれば、サウジアラビアとロシアの供給が同時に停止するぐらいのインパクトがある話であり、やはり価格には上昇圧力が掛かりやすい。

米中通商合意が1月上旬に署名される見通しであること、2014年の規制開始後の動きを勘案にすると、輸出規制開始となる1月から価格が上昇し(価格がすでに大きく調整しており、割安感があることから上昇タイミングを前倒し)、来年7月頃(下期)からの下落が予想される。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは回復し、閾値の50を維持。しかし、規模別でみた場合、中小企業の景況感はまだ50を上回っていない。価格へのプラスの影響は緩やかなものに止まろう。

在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-11月期中国工業生産は前年比+5.6%(1-10月期+5.6%)と横ばいだったが、11月は+6.2%(前月+4.7%)と改善(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-11月期中国固定資産投資は前年比+5.2%の53兆3,718億元(1-10月期+5.2%の51兆880億元)と横ばい、公的部門+6.9%(+7.4%)は減速したが民間部門は若干の改善が見られる(+4.4%→+4.5%)。ただし全体では横ばいであり、減速トレンドに大きな変化はない(ストック需要の減速=価格下落要因)。

・1-11月期中国不動産開発投資は前年比+10.2%の12兆1,265億元(1-10月期+10.3%の10兆9,603億元)と減速している。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・11月の銅地金・製品の輸入量は43万3,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準。また、銅鉱石の輸入も215万7,000トンとやはり過去5年の最高水準を大きく上回っている。公共投資(電線網整備)などの公的需要が需要を下支えしているとみられ、中国の取引所在庫は過去5年平均を下回っている。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、Valeの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

HydroのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・1月3日付のLMEポジションは全ての金属のロングポジションが減少した。米ISM製造業指数の悪化などが意識され、景気への懸念が強まったことが背景。需給緩和観測でアルミ以外の金属はショートも増加。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は+16.1億ドル(前週+15.6億ドル)と買い越し幅を拡大した。買い越し額の増加率は+3.1%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで+244千トン(前週+147千トン)と買い越しに転じた。しかし買戻しが進んだのはCME銅とアルミのみであり、その他は買い越し幅を縮小している。ネット買い越しの増加率は+66.2%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅に下落、原料炭スワップ先物は下落、中国鉄鋼製品先物価格は小動きだった。

特段目立った材料がない中で、中国の鉄鋼ミルの在庫積み増しの動きが一巡したとの指摘があったことが先物価格主導で価格を押し下げたようだ。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、最大消費国である中国の公共投資に伴う需要増加や、冬場の鉄鋼製品生産規制から鉄鋼製品価格が高止まりしていること、豪州のサイクロン発生懸念や山火事の影響による出荷の遅れへの懸念、Valeの販売調整観測で価格は底堅い推移になると考える。

米中が貿易交渉で部分合意、これ自体は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る対立を見るに、まだ両国関係は鉄鉱石価格の波乱要因になると見る。

また、冬場の鉄鉱石価格は季節的には強含みやすいものの、冬場の鉄鋼製品生産規制により鉄鋼向け需要が減速するため(短期的には鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鉱石価格の上昇要因となる)、今年は例年よりは低い水準での推移になるのではないか。

なお、2020年はValeの生産本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。

原料炭は鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格見通しはやや強気である。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは43.1(前月45.4)と再び減速した。新規受注の落ち込み(43.8→36.2)によるものであり、内外需とも不調である。これに伴い在庫水準も積み上がっており、需給ファンダメンタルズが緩和しつつあることを示唆している。価格には下押し要因に。

・1-11月期中国工業生産は前年比+5.6%(1-10月期+5.6%)と横ばいだったが、11月は+6.2%(前月+4.7%)と改善(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-11月期中国固定資産投資は前年比+5.2%の53兆3,718億元(1-10月期+5.2%の51兆880億元)と横ばい、公的部門+6.9%(+7.4%)は減速したが民間部門は若干の改善が見られる(+4.4%→+4.5%)。ただし全体では横ばいであり、減速トレンドに大きな変化はない(ストック需要の減速=価格下落要因)。

・1-11月期中国不動産開発投資は前年比+10.2%の12兆1,265億元(1-10月期+10.3%の10兆9,603億元)と減速している。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

11月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は457万5,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入もほぼ季節性通り減少し、2,078万1,000トンとなった。予想通り輸入は減速している。

今後に関しては輸入規制が導入されると見られる、石炭の国内生産も11月時点で3億3,406万トンと過去5年の最高水準を大きく上回っている。このことから、今後も輸入は減少すると予想される。

・中国の11月の鉄鉱石の輸入量は前月からは減速したが9,290万トンと高い水準を維持した。一方で、今年の鉄鉱石生産は3月以降漸増しており、7,804.8万トンに達しているため、冬場の鉄鋼製品生産規制がやはり実施される見込みであることを考えると、輸出市場における鉄鉱石需給は緩和する可能性が高い。

・中国の鉄鋼製品在庫水準のが低下していることは価格の上昇要因。鉄鋼製品在庫は前週比+25.8万トンの791.2万トン(過去5年平均865.11万トン)と例年を下回っている。

なお、11月の鉄鋼製品の輸出は457万5,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲100万トンの1億2,975万トン(過去5年平均1億2,026万トン)、在庫日数は▲0.2日の29.8日(過去5年平均 32.4日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化している。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・Vale、Rio Tintoの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む金融市場の緩和を進めているほか、地方政府にも債券発行枠の前倒しを認めるなど、景気テコ入れのため公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は下落した。米国とイランの軍事衝突が回避されたことで安全資産需要が減少したことが背景。

PGMは金銀価格の下落が価格の下げ圧力となったが、株価の上昇とそもそもの供給不足観の強まりから、前日比プラスで引けている。

【貴金属価格見通し】

金価格は米国とイランの衝突リスクが回避されたことで価格を切り下げたが、中東有事のリスクがなくなったわけではないこと、月末に予定されているブレグジットへの警戒感、実質金利の低下から高い水準を維持すると考える。

このほか、ブラジル・アルゼンチンに対する関税引き上げなどの通商問題は解決しておらず、米中問題も完全に解決したわけではないこと、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡り、米中の対立が激化する可能性があることもリスクプレミアムの押し上げ材料となる。

仮に地政学的リスクが完全に解消した場合、実質金利を基にすれば、▲250ドル程度(地政学リスクプレミアム)金価格は下落することになる。実力ベースでは金価格は1,300ドル程度だろう。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は上昇していたが、再び下落に転じている。それでも現在の金銀レシオは在庫レシオで見た場合やや高すぎで、金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられる。

PGM価格は金銀価格が高値圏で推移するとみられることから、同様に高値圏での推移になると予想する。特にすでに認知されていることだが、パラジウムは供給面からも価格が上昇しやすい。

また、世界の自動車販売減速に底入れの兆しが見えること、米中合意などの影響で下値余地も限定されるだろう。

中国の自動車販売が17ヵ月連続のマイナスとなるなど、需給ファンダメンタルズ面は需要面の減速が懸念される状況。世界自動車販売も15ヵ月連続の前年比マイナス。しかしいずれも前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていることから、需要面で価格を押し上げる可能性は高まっている。

やや懸念されるのが、12月の米自動車販売は1,670万台(前月 1,709万台)と再び失速している点。今後、米国政府が宣言通り中間所得者層向けの減税が実施できるか、長期金利上昇を抑制できるかに注目が集まろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBは米統計の悪化懸念がやや後退していることから、追加利下げの可能性が大きく後退している。仮に追加利下げがあったとしても来年1回程度とみられるため、下支え効果は限定。

ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に向け、各国政府に働きかけを強めることになるだろう(これは中央銀行の権限外であるが)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するにはまだ時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・中東・北アフリカ有事発生に伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・米中通商交渉が部分合意したが、基本的に覇権争いであるためこの問題が簡単に片付くことはなく、安全資産需要を下支えする見込み。

米国は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決と、それによって民間技術が軍事転用されないようにすることが最終目標であり、根本的な解決には相当な時間がかかる見込み(価格の下支え要因)。

・トルコ政府はシリアへの侵攻で発生した空白地帯に、シリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も(金銀価格の上昇要因)。

・英国のEU離脱はEUが離脱期限延長で合意、選挙でも保守党が勝利したため合意離脱の可能性が高まったことは、金価格の下落要因に(ただし、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金・銀共にロングが増加、ショートが減少しており積極的に強気のポジション取りとなっている。リスク回避姿勢の強まりが背景。

PGMはプラチナのロング増加が顕著、パラジウムは価格上昇もあってロングの解消圧力が強まっている。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが381,620枚(前週比 +17,310枚)、ショートが53,695枚(▲4,963枚)、ネットロングは327,925枚(+22,273枚)、銀が106,310枚(+5,280枚)、ショートが36,582枚(▲2,026枚)、ネットロングは69,728枚(+7,306枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが71,575枚(前週比 +4,527枚)、ショートが9,412枚(▲1,144枚)、ネットロングは62,163枚(+5,671枚)、パラジウムが15,264枚(▲412枚)、ショートが3,942枚(▲727枚)、ネットロングは11,322枚(+315枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物は小麦が上昇、トウモロコシ、大豆は下落した。エジプトが水曜日に30万トンの小麦を黒海地区の生産者から購入したこと、CBOTの小麦在庫の水準が低いことが価格を押し上げている。

トウモロコシ・大豆はドル高進行もあって水準を若干切り下げた。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は堅調な推移になると考える。米中が通商面で合意したことで、米国産穀物の輸出増加観測が強まること、アルゼンチンが穀物に輸出税を賦課すると決定したこと、英選挙結果を受けてユーロ高・ドル安が進行しやすいことが金融面で価格を押し上げるため。

ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシ・大豆の受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、供給に懸念は少なく、価格には下押し圧力が掛かりやすい地合い。

小麦は冬小麦の作況が悪化していることが買い材料視されており、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、こちらには上昇圧力が掛かりやすい。

ただし「小麦は雑草」の格言通り、最終的には供給は間に合うと予想され、上昇余地も限定されると考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・12月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億6,100万Bu(前月136億6,100万Bu)大豆 35億5,000万Bu(35億5,000万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・12月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ 19億1,000万Bu(市場予想18億6,119万Bu、前月19億1,000万Bu)大豆 4億7,500万Bu(4億7,381万Bu、4億7,500万Bu)小麦在庫 9億7,400万Bu(10億878万Bu、10億140万Bu)

・9月末の四半期在庫トウモロコシ 21億1,400万Bu(市場予想24億1,804万Bu)大豆 9億1,300万Bu(9億8,126万Bu)小麦 23億8,500万Bu(23億1,858万Bu)

(特殊要因)

・米中通商交渉は部分合意したと伝えられており、足元シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、長期化の可能性は高くシカゴ定期の下落要因に。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・エルニーニョ現象は収束したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・投機のポジションは、トウモロコシのロング・ショートが増加、大豆はロング・ショートとも減少、特にショートの減少が顕著。小麦はロングが増加、ショートが減少している。米小麦在庫の水準の低さが影響しているとみられる。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが315,107枚(前週比 +10,577枚)、ショートが278,858枚(+962枚)、ネットロングは36,249枚(+9,615枚)、大豆はロングが132,134枚(▲9,559枚)、ショートが102,555枚(▲19,897枚)、ネットロングは29,579枚(+10,338枚)、小麦はロングが127,253枚(+3,786枚)、ショートが93,202枚(▲2,189枚)、ネットロングは34,051枚(+5,975枚)

◆本日のMRA's Eye


「原油価格は年央の急騰・急落リスクを警戒」

2020年の原油相場を振り返ると、政治的なイベントに左右され乱高下しBrent原油ベースで50ドルから75ドルで推移した。この10年で最も値幅が小さかったのが2013年で22.42ドル、次いで2017年の22.75ドル、それに次ぐ低い水準であることを考えると、米中通商戦争の激化や、サウジアラビアの主要石油設備攻撃などのイベントリスクの発生があった年の割には、値動きは安定した年だったといえる。

実際、価格の変動率をヒストリカル・ボラティリティで見てみると、この5年で見ても現在の価格変動性は極めて低い水準にある。2020年を占う上で、価格急騰・急落が発生する要因やメカニズムについて少し整理したい。

ボラティリティが低い状態にある場合は、相場がジリジリと上昇しているケースがほとんどである。低ボラティリティだからリスクテイク意欲が増して価格が上昇する、というよりは基本的には価格ジリ高→低ボラティリティ化→水準上昇(投機筋の買いポジションの積み上がり)→リスク顕在化で価格急落、という展開になりやすい。

価格急落の切っ掛けとなる代表的な要因は、「●●ショック」の顕在化だ。OPECが今までの枠組みを放棄して減産を見送った2014年のOPECショックもこれに該当するが、頻繁に発生するケースは何らかの信用リスクが顕在化する中で、株式市場が急落するリーマンショックのような場合だろう。

需要が突如増加して原油価格が急騰することはほとんど起きないので、価格が急騰する場合は供給途絶リスクが顕在化した場合である。このリスクの顕在化は、1.台風被害(主に米国)、2.産油国の地政学的リスク顕在化(戦争・テロなど)、3.地震発生による石油設備の崩壊、などが可能性として考えられるが、この中で比較的高頻度で顕在化するのが1.であり、次いで2.となる。

1.に関してはエルニーニョ現象が発生している年などに台風被害が集中して、価格への影響が大きくなること、2.の場合は大規模な供給途絶に繋がる可能性があるため、供給面の問題は顕在化した時の価格への影響は大きい。

実際、2019年9月にサウジアラビアのアブカイクが物理的に攻撃を受けて一時570万バレルの原油供給に障害が生じた際には、Brent原油は62ドルから72ドルまで10ドルも急騰している。

今回のイランと米国の緊張に伴う原油価格上昇は、イランがホルムズ海峡を封鎖する可能性が発生するため、市場のショートカバーが優勢となり敏感に反応した。軍事大国である米国・イランの直接戦闘の可能性はほとんどない、というのが専門家も含めた「コンセンサス」であるためだ。しかし、米国が抑制的な対応をしたため、両軍の衝突という最悪の事態は回避できた。

しかし、米兵が1人でも死亡した場合は「レッドライン」とみなされた。これはレッドラインとしては低く、散発的な小競り合いであっても米軍が行動を起こす切っ掛けとなりかねない。イランも国内の反米派(特に革命防衛隊などの軍関係)の結束という観点から、無視はできないため応戦することが予想される。今回のように限定した攻撃であればよいが、「周辺諸国やイスラエルへの攻撃」を本当に選択するなら、話は非常に大きくなる。

しかしいずれにしても、そのリスク顕在化のタイミングが想定できないため、ハリケーンが発生したタイミングや、ムハンマド皇太子が行動を起こしたときなど、ニュースで把握できる状態になるまで材料としては価格動向に織り込まれない。

3.はイランなどで過去になかったわけではないが、発生頻度が高いわけではない。

そのため、市場はより需要面=景気に注目するようになる。特にこの傾向は2000年前後にIT革命が起きてから強まった。すなわち、今までなかなか取得することが難しかった生産者側の情報が比較的容易に取得できるようになり、主に生産者側が有利だった消費者との間の情報格差が縮小したことで、より需要動向に焦点が当たるようになったためと考えられる。この状況をデータで見てみよう。

2014年のOPECショックの前後でロシアも含む非OPEC産油国の多くがOPECとの協調減産に参加、産油国側の振る舞いが大きく変化したため、そのため2015年以降のデータを用いて分析をしてみると、世界最大のエネルギー消費国である米国の製造業の景況感を示すISM製造業指数と足元の需給バランスでは、ISM製造業指数の方がBrent原油価格に対する説明力が高いことが分かった。

ISM製造業指数は景気に若干先行するため、原油価格がさらに上昇するには、ISM製造業景況観指数が改善することが必要条件になると考えられる。

では原油の需給バランスが価格に影響を与えないか、と言われるとそうではない。グラフをよく見てみると、需給バランスが供給不足の場合には原油価格が上昇していることが多いが、需給バランスが原油価格の絶対水準を決定しているわけではない。

つまり、原油価格が上昇するためには、需給バランスが何らかの理由で供給不足になっている必要があるが、供給不足幅が拡大したからといって、直ちに価格が高騰するということはなく、価格に反映されるまでにはある程度の時間差が生じている可能性があるということである。

これは価格の変化を受けて生産調整を行い、その生産調整が時間差を以て価格に影響していることを示している。別の言葉を使うと、需要主導で価格が変化した後、増産ないしは減産の判断が行われるということである。

従来、OPECは需給バランスを調整して価格を適切(OPEC諸国が望む)価格に誘導する役割を担っていると考えられてきたが、現在の原油価格の水準を睨みながら増減産の判断をしているという点では、この価格水準で増産して利益を確保できるか否かという目線で増減産を判断しているシェール・オイル企業と似ている。

ただし、シェール・オイル生産者が利益を重視して生産している一方、OPEC諸国は売上金額(=歳入)を意識して生産しており、根本的な生産調整のスタンスが異なっていることには変わりがない。

以上を勘案すると、1.ISM製造業景況観指数や製造業PMIが底入れして閾値の50を上回り、2.需給バランスが供給不足になっている、ことが原油価格上昇の必要条件になると考えられる。

先行きの生産については、直近の米エネルギー省の見通しを参考にすると、6月頃までは供給過剰感が強いが、年後半にかけて供給不足に転じると予想している。

OPECは減産を少なくとも3月までは継続する見込みであるが、ノルウェーが2019年10月から来夏にかけて74万バレル低度増産を実施する計画であることやブラジルなどの増産がこれを相殺しているためと考えられる。

このことは来年の初夏頃までは原油価格に下押し圧力が掛かりやすく、下期にかけて上昇圧力が掛かりやすい地合いになることを示唆している。

しかし、中東情勢不安が再び顕在化した場合や、3月に開催予定の臨時OPEC総会・OPECプラス会合で4月以降の減産延長が決定されれば、年央から年後半にかけて供給不足感が強まるため、原油価格は現在の高い水準を維持することになるだろう。

今のところ規模を縮小するものの、OPECプラスの減産は継続する、との見方が一般的だ。しかし、もしこのタイミングでOPECが想定外の減産継続見送りを行った場合、2014年のOPECショックほどではないが、原油価格が大きく低下してボラティリティが上昇する展開は十分にあり得る。

先行きの景況感については、景気に3ヵ月程度先行すると考えられる各国の製造業PMIは米国・中国が50の閾値を上回ったが、欧州や日本は50の閾値を下回ったままである。

米国に関してもISM製造業景況観指数ベースでみればまだ50割れの状態であり、強弱はまちまちだ。これを勘案するとまだ世界経済は底入れをしたと判断するのは早計と言え、Q120はまだ不安定な状態が続くのではないだろうか。Q220は減産規模が縮小されることや、景気に6ヵ月先行するとされるOECD景気先行指数でみてみると、来年の4月頃に米国、欧州の景気が底入れしている可能性があることを示唆していることから、やはり原油価格が循環的な上昇を始めるのは4~6月頃になると予想される。ただし平均価格で見た場合、Q220の価格はQ120比で幾分低い水準になるのではないか。

しかし、このタイミングで米中の対立が再燃するといったようなイベントリスクが顕在化した場合、株の急落を通じて多くのリスク資産価格に下押し圧力が掛かる展開も想定され、同様にボラティリティは上昇することになるだろう。

ここを無事に乗り切れば、11月の大統領選挙の頃まで価格が上昇し、大統領選挙終了後には大統領選挙に向けての過熱感が一服、再び価格は下値余地を探る動きになると予想される。

米中問題、米イラン問題、OPEC動向は来年の原油価格動向を占う上で重要なイベントであるが、これ以外にも懸念されるリスクは多数存在する。特に気にしているのが、世界中で発生している反政府デモの動きである。

直近のニュースを見ると、中東・北アフリカにデモが集中している。これらのデモ発生の背景には、景気減速に伴う生活環境の悪化、雇用環境の悪化や権力者の汚職をはじめとする腐敗に対する不満などが主なところだ。

象徴的なのは公共交通機関の賃上げが原因でデモが発生したチリ、パンの価格値上げがきっかけとなったアルジェリアである。いずれも生活に困窮したことがデモ発生の要因だ。

これは2010年12月にアルジェリアで起きた、露天商の焼身自殺が切っ掛けて広がった「ジャスミン革命」、その後の「アラブの春」に状況が似る。原油価格が十分に高くない中、産油国の財政状況は厳しい状態が続いており、仮に食品価格が上昇した場合アラブの春に起きたような反政府行動の連鎖が広がるリスクは無視できない。中東情勢不安は供給途絶を通じて原油価格の上昇要因となる。

昨年はたまたま穀物が豊作だったため直ちにそのような状況になるとは言わないが、来年はラニーニャ現象の発生も予想され、すでに中国では豚コレラの影響で肉類の価格が高騰している。

仮に類似した状況が発生するとすれば、景気が底入れを試すと考えられる4~6月、穀物の収穫期に当たる秋口にかけて、そのリスクが高まる可能性があると予想される。

また、仮に米大統領選挙でトランプ大統領が敗北し、民主党政権が誕生した場合、中東への政策が変更され、国民の生活環境が悪化している中東地域での対立やテロが顕在化する可能性が高まることが予想される。

米中の対立激化が最大のリスク、と言いつつもその他の地政学的リスクも無視できない状況にあり、特にその他の市場への影響が大きい原油価格動向に影響を与えかねない中東情勢は、今後も注視していく必要があるだろう。

◆主要ニュース


・11月日本毎月勤労統計 現金給与総額 前年比▲0.2%(前月±0.0%)、実質賃金総額 ▲0.9%(▲0.4%)

・12月日本消費者態度指数 39.1(前月 38.7)

・12月東京都心オフィス空室率 1.55%(前月 1.56%)

・12月中国消費者物価指数 前年比+4.5%(前月+4.5%)
 生産者物価指数▲0.5%(▲1.4%)

・11月独製造業受注 前月比▲1.3%(前月+0.2%)、前年比▲6.5%(▲5.6%)

・12月ユーロ圏消費者信頼感改定 ▲8.1(速報比変わらず、前月改定 ▲7.2)

・11月独経常収支 249億ユーロの黒字(前月229億ユーロの黒字)
 貿易収支183億ユーロの黒字(215億ユーロの黒字)
 輸出 前月比▲2.3%(+1.5%)、輸入▲0.5%(+0.5%)

・11月独鉱工業生産 前月比+1.1%(前月改定▲1.0%)、前年比 ▲2.6%(▲4.6%)

・11月ユーロ圏失業率 7.5%(前月 7.5%)

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 +13.5%(前週▲13.2%)
 購入指数+3.0%(+2.2%)
 借換指数+24.6%(▲26.0%)
 固定金利30年 3.91%(3.95%)、15年 3.35%(3.37%)

・12月米ADP雇用統計 前月比+202千人(前月改定+124千人)

・11月米消費者信用残高 前月比+125億ドル(前月改定+190億ドル)
 回転信用▲24億ドル(+79億ドル)
 非回転信用+149億ドル(+111億ドル)

・米週間新規失業保険申請件数 214千件(前週223千件)、失業保険継続受給者数 1,803千人(1,728千人)

・中国劉鶴副首相、貿易合意署名のために訪米へ。

・ロシアとトルコ首脳、リビア停戦を要求。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油+1.2MB(クッシング▲0.8MB)
 ガソリン+9.1MB
 ディスティレート+5.3MB
 稼働率▲1.5

 原油・石油製品輸出 9,024KBD(前週比▲176KBD)
 原油輸出 3,639KBD(▲84KBD)
 ガソリン輸出 823KBD(▲27KBD)
 ディスティレート輸出 1,245KBD(+90KBD)
 レジデュアル輸出 208KBD(▲4KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,131KBD(▲137KBD)
 その他石油製品輸出 1,717KBD(▲55KBD)

・DOE天然ガス稼働在庫 3,148BCF(前週比▲45BCF)
 東部 756BCF(▲15BCF)
 中西部 885BCF(▲20BCF)
 山間部 166BCF(▲7BCF)
 太平洋地区244BCF(▲7BCF)
 南中央 1,097BCF(+4BCF)

・米ペンス副大統領、「イランのミサイル攻撃が、米国人の殺害を目的としたものであることを裏付ける情報を、我々は持っている。」

・イラク バグダッドのグリーンゾーンにロケット弾が数発着弾。

・ノルウェー石油総局、原油生産見通しを上方修正。今年+25%となったのち、2024年までにさらに+15%増加の見込み。

・米当局、イランでの航空機墜落は、ミサイル被弾が原因との見方。

・米クラフト国連大使、国連安保理に、「イランと前提条件なしで話し合う用意が在る」とする書簡を送付。

・国連独立調査委員会、9月のサウジアラビアのアブカイク攻撃はイエメンのフーシ派によるものではなかったと結論。

【メタル】
・SMM、12月中国亜鉛生産 前年比+19.8%の53万7,000トン、ステンレス鋼生産+9.1%の240万トン、精錬鉛生産+3%の28万トン、アルミナ生産 587万トン、プライマリアルミ生産+1.5%の304万トン、銅生産+2.4%の80万5,500トン。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ニューキャッスル炭 ( エネルギー )/ +2.76%/ +1.85%
2.欧州排出権 ( 排出権 )/ +2.54%/ +0.24%
3.SHFニッケル ( ベースメタル )/ +2.43%/ ▲0.76%
4.日経平均 ( 株式 )/ +2.31%/ +0.35%
5.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +2.30%/ +2.20%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.TCM原油 ( エネルギー )/ ▲3.15%/ +2.24%
69.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲2.95%/ ±0.00%
68.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲2.90%/ ▲6.16%
67.TCM灯油 ( エネルギー )/ ▲2.84%/ ▲0.76%
66.ビットコイン ( その他 )/ ▲2.72%/ +8.78%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :28,956.90(+211.81)
S&P500 :3,274.70(+21.65)
日経平均株価 :23,739.87(+535.11)
ドル円 :109.52(+0.40)
ユーロ円 :121.63(+0.46)
米10年債利回り :1.85(▲0.02)
独10年債利回り :▲0.18(+0.03)
日10年債利回り :0.01(+0.01)
中国10年債利回り :3.12(▲0.02)
ビットコイン :7,786.84(▲217.42)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :21.97(+0.07)
エネルギー :23.15(+0)
ベースメタル :16.15(▲0.46)
貴金属 :17.08(+0.29)
穀物 :16.59(+0.27)
その他農畜産品 :27.66(+0.18)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :24.48(▲0.03)
Brent :26.62(+0)
米天然ガス :30.79(▲0.94)
米ガソリン :25.47(+0.07)
ICEガスオイル :20.69(+1.35)
LME銅 :9.40(▲2.03)
LMEアルミニウム :12.22(▲0.38)
金 :11.53(+0.23)
プラチナ :20.78(+0.47)
トウモロコシ :24.48(▲0.17)
大豆 :11.53(+0.23)

【エネルギー】
WTI :59.59(▲0.02)
Brent :65.43(▲0.01)
Oman :66.02(+0.02)
米ガソリン :165.74(+0.86)
米灯油 :195.32(▲0.50)
ICEガスオイル :594.25(▲12.00)
米天然ガス :2.17(+0.03)
英天然ガス :31.03(+0.57)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :65.43(▲0.01)
SPO380cst :316.92(+7.00)
SPOケロシン :79.82(▲0.48)
SPOガスオイル :78.03(▲0.44)
ICE ガスオイル :79.77(▲1.61)
NYMEX灯油 :201.65(▲0.21)

【貴金属】
金 :1552.32(▲4.10)
銀 :17.90(▲0.20)
プラチナ :967.03(+13.18)
パラジウム :2113.08(+4.84)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,186(+11:30C)
亜鉛 :2,407(+21:12.5B)
鉛 :1,912(▲14:10C)
アルミニウム :1,800(▲7:28.5C)
ニッケル :14,200(+300:75C)
錫 :17,275(+300:25C)
コバルト :32,568(+1,245)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6164.00(▲25.00)
亜鉛 :2365.00(▲26.00)
鉛 :1930.50(+20.00)
アルミニウム :1804.00(+3.50)
ニッケル :14120.00(+50.00)
錫 :17205.00(+75.00)
バルチック海運指数 :773.00(▲18.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :93.36(▲1.27)
NYMEX鉄鉱石 :93.57(▲1.04)
NYMEX原料炭スワップ先物 :149.79(▲0.85)
上海鉄筋直近限月 :3,764(+5)
上海鉄筋中心限月 :3,587(▲15)
米鉄スクラップ :293(±0.0)

【農産物】
大豆 :933.75(▲4.50)
シカゴ大豆ミール :296.20(▲0.70)
シカゴ大豆油 :34.35(+0.08)
マレーシア パーム油 :3108.00(+70.00)
シカゴ とうもろこし :383.25(▲1.00)
シカゴ小麦 :562.25(+9.50)
シンガポールゴム :167.50(▲1.10)
上海ゴム :12730.00(▲75.00)
砂糖 :13.71(+0.24)
アラビカ :117.35(▲1.80)
ロブスタ :1312.00(▲5.00)
綿花 :70.69(+0.73)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :67.03(▲2.00)
シカゴ生牛 :126.73(+0.38)
シカゴ飼育牛 :146.93(+0.10)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。