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米中合意の評価は商品ごとまちまち
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年12月16日 第1659号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米中合意の評価は商品ごとまちまち」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、米中通商協議が部分合意に至ったことで、景気への懸念が若干後退、景気循環銘柄が物色される流れになったが、商品ごとに今回の合意の評価はまちまちであり、週末を控えたポジション調整や、「材料出尽くし」と判断されて下落する商品も目立った。

米国の追加関税引き上げが見送られ、一部関税が引き下げられ、知的財産権や技術の強制移転も部分合意に織り込まれた。しかしこれらはすでに織り込み済みの材料であり、そこまで強く景気循環銘柄を押し上げる要因にはならなかった。

【本日の価格見通し総括】

週明け月曜日は、米中合意、英総選挙の結果を受けて安全資産需要が後退、総じて景気循環銘柄価格が上昇する流れになると予想されはするものの、ここまでこの材料は相当の時間をかけて織り込まれてきたため、影響はさほど大きくないと考える。

むしろ、週明け月曜日は欧米の製造業PMIや、ニューヨーク連銀製造業景況指数、中国の重要統計に注目したい。

独製造業PMIは44.6(前月44.1)、ユーロ圏製造業PMIは47.3(46.9)、米製造業PMIは52.6(52.6)と底堅い内容になると予想される。

米ISM製造業指数の先行指標であるニューヨーク連銀製造業景況指数は4.0(2.9)と改善見込みである。やはり総じて景気循環銘柄が物色される流れになるだろう。

また、減速感が強まっている中国の現状を把握する上で重要な固定資産投資(年初来累計前年比+5.2%、前月+5.2%)、工業生産(年初来累計前年比+5.5%、、前月+5.6%、11月+5.0%、+4.7%)、小売売上高(年初来累計前年比+8.0%、前月+8.1%、11月+7.6%、+7.2%)にも注目しているが、総じて減速感を確認する内容であり、特に非鉄金属をはじめとする鉱物資源価格を下押ししよう。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日発表された日銀短観は、大企業・中堅企業・中小企業とも景況感の悪化を示唆する内容であり、先行き見通しも悲観的だった。

ただ、悪い内容ばかりではなく業種別に見た場合、大企業製造業は先行き景況感が改善すると見通している業種もあり、設備投資計画も大企業製造業を中心に強気の数値、また、為替の想定レートが106円台とやや現在の水準よりも円高で想定しているため、輸出企業製造業の業績上振れがある可能性がある。

米中通商協議の合意があれば、来年の日本企業の業績は懸念していたほど悪い内容にならない可能性が出てきた。

昨日は英総選挙の結果が発表され、英保守党が圧勝、EUの秩序だった離脱への期待が高まる内容だった。結局、国民投票から3年間「何も進まなかったこと」に対して英国民が飽き飽きしており、ハング・パーラメント状態を脱したいと考えるようになったことが最大の要因と考えられる。決して心からEUを離脱したいと思っている国民が大多数になった、ということではないだろう。

しかし問題はこれからで、離脱移行期間中に細かい事務的な詰めを行わなければならない。これが不調に終わり、気が付けば2020年末にハードブレグジットになるという可能性もあり得る。

また離脱後は、英経済のけん引役だったシティの機能が低下し、各国との関税も引き上げられ英景気が減速する可能性は高いと考えている。

また、昨日はこの数ヵ月市場の混乱要因だった米中問題が「一旦終息」した。クリスマス前に片付けておきたい、という心理が米側にも働いたと見られる。しかし、大統領選に向けて一旦撃ち方止め、になるのは想定の範囲内であり、今後本当に中国側が体制を変更し、今後も関税が引き下げていくのかどうかがポイントとなる。

しかし、一部合意ですら2年近くかかっており、今後関税撤廃を認めるほどの譲歩、例えば国有企業への過剰な支援を中国が停止するとは思えず、やはり関税は個人消費への影響が直接的に及ばない部分で継続すると見るのが妥当である。

また、今回知的財産権や技術強制移転に関しても管理強化の方針であるが、「中国側が取り締まる」だけであり、米国が望むような内容になるとは考え難い。結果、関税を元に戻す「スナップバック条項」が発動される可能性もあり、引き続き予断を許さない状況が続くことになるだろう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.2%→+3.0%)ている。2020年も+3.4%(▲0.1%)に引き下げた。

ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっている。あったとしても後1回程度(▲25bp程度)の利下げに留まる(金融面の価格下支え期待の後退)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商交渉は部分合意。しかし関税が撤廃されたわけではなく、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護を中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。

通商面のみならず、資本フローの規制や、人権問題への制裁なども加わっており、通商面で妥協があったとしてもその他の分野での制裁発動の可能性は高い。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫していることで、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、サウジアラビアがイランに対して報復攻撃を行うなどのリスク。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。EUは英国のEU離脱期限延長で合意し、英総選挙では保守党が圧勝した。目先は無秩序離脱の可能性が後退するため価格の上昇要因。ただし、2020年12月末の移行期間までに条件で合意できなければ、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・中国政府が「法律に基づき」過去のGDPの見直しを行うと発表しているが、この見直しによって統計が悪化する可能性は高く、景気循環銘柄価格の下落要因に。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は上昇した。米中政府が貿易交渉で第一弾合意に至ったと発表したこと、英国の総選挙で保守党が圧勝したことで政治的なリスク要因がやや減ったことが価格を押し上げた。

この価格上昇でBrentは重要なレジスタンスラインを上抜けし、テクニカルにも上昇圧力が掛かりやすい地合いとなった。

【原油価格見通し】

原油価格は、米中が通商面で合意し、英国で保守党が勝利したことでリスク回避の動きが弱まることから、上昇すると考える。また、チャート上の重要な節目である200日移動平均線をBrentが上回ったことから、テクニカルにも上昇しやすい。

OPEC総会では現状追認の▲50万バレルの追加減産が決定され、さらにサウジアラビアが▲40万バレルの減産を決定した。これは市場の予想を上回るものであり、価格の上昇要因となる。この減産の持つ意味は小さくない。

これはサウジアラムコのIPOを円滑に進めるためということは当然だろうが、それ以上に懸念されるのが、実はドローン攻撃を受けたアブカイクの修理は、アブドルアジズ エネルギー相の言うように完了している訳ではない可能性がある点である。

サウジアラビアは修理完了後の設備の状況を公開していない。WSJでも指摘されているように、あの規模の設備を修復するのは通常1年掛かってもおかしくない(在庫があって容易に交換ができる設備ではない)。

もしそうであれば、景気が回復して需要が戻った場合、OPECの余剰生産能力が不足し、価格が給湯する可能性があることを示唆している。特に米国が「採算性のある油田のみ稼働させる」方針に傾斜しつつあることを考えると、このシナリオの可能性は今後、十分に注意して検証していく必要があるだろう。

ただし、今のところ追加減産は3月末までであること、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、OPEC減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオだ。

米中交渉は通商面で合意したと伝えられ、関税も一部引き下げられたが、香港やウイグル族の人権問題まで米国が対象を拡大して中国も報復、先行きが引き続き不透明。結局、部分的な合意には至るものの、長期的には米中いずれかがあきらめるまで継続するため、やはり景気循環銘柄価格の下落要因、と整理しておくべきだろう。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めの方針のようだが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。財政出動は使途にもよるが、エネルギー価格の押し上げ要因になるだろう。

実際、11月12日には米クドロー国家経済会議委員長が、「トランプ大統領から第2弾の減税の指示があった」と発言しており、2020年度予算に減税が盛り込まれる可能性が高まった。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

なお、景気の減速に伴う価格下落(歳入確保のための増産)やサウジアラビアに対するドローン攻撃(テロの低コスト化・大規模化に伴う供給途絶)の影響で、供給側(特にOPECプラス)の動きが価格に与える影響は小さくなくなっている。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落。特段材料がない中、ピークシーズン入りした需要の増加と天然ガス価格の上昇はあるも、中国の国内生産増加に伴う輸入の減少観測から価格はもみ合っている。

【石炭価格見通し】

石炭価格はピークシーズン入りしていることから、上昇すると見るが、欧州地域の景況感悪化に伴う天然ガス価格の低迷、中国統計の減速、中国政府の石炭輸入制限(年間2億8,000万トン)を受けた輸入需要の減速を受けて低水準を維持する見込み。

バルチック海運指数は、予想通り下落傾向が顕著になってきた。中国政府が特に石炭に関して輸入量を前年並みにする目標であることが影響している。

10月の中国の貿易統計では、石炭輸入は燃料炭・原料炭合計で2,569万トンと前月から減速。ただし、依然として過去5年の最高水準を上回っている。

同時に10月の中国石炭生産が、同じ時期の過去5年の最高を上回る3,249万トンとなった。中国の国内供給は増加している状況であり、貿易市場は緩和する見込み。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPEC総会では現状追認の▲50万バレルの追加減産が決定され、さらにサウジアラビアが▲40万バレルの自主減産を決定、原油価格の上昇要因に。

ただし、減産は3月末までであること、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、OPEC減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオ。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入増加。10月の貿易統計では、原油の輸入が4,551.1万トン(1,086万バレル/日)と過去最高を更新。

今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・サウジアラビアの石油施設の修復は完了したと報じられているが、実際は完了していないとの報道もあり、供給面は実態が把握される中で上昇リスクになる可能性。

なお、サウジアラビアがイランに対して報復を行う可能性は、現時点ではほぼゼロに近いと見る。

また、今回のドローン攻撃でテロが低価格化・大規模化することが分かったことは、中東の供給途絶リスクを従来よりも高めるものであり、従来以上に中東情勢は重要に。

・ブラジルのOPEC加盟。ブラジルの生産量は2018年で268万バレルであり、世界供給の2.8%に達するため、実際に加盟し、サウジアラビアの意向に沿う生産を行うならば、OPECの価格支配能力は若干の改善が見込まれる。

仮に期待通り来年の世界景気が夏頃にかけて底入れした場合、生産制限は顕著な価格上昇要因となり得るため、その点は注意。

・トルコ軍のシリアへの侵攻は、ロシアの仲介でとりあえず終了。域内に「緩衝地帯」を設けることで合意した。ロシアの支援を受けているアサド政権側もこれを飲まざるを得なくなった模様。

トルコはこの地域にシリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロングが増加、ショートが減少、Brentはロング・ショートとも増加したが総じてネットロングが増加している。

景気の先行きへの懸念が後退、OPECの追加減産が意識されている状況。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが577,216枚(前週比 +46,096枚)、ショートが81,677枚(▲21,408枚)、ネットロングは495,539枚(+67,504枚)、Brentが438,443枚(前週比+44,832枚)、ショートが64,600枚(+1,977枚)、ネットロングは373,843枚(+42,855枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は軟調な推移となった。週末を控えてドルが買い戻されたことや、米中合意はこれまでその期待が織り込まれて上昇していた部分も否めず、一旦手じまい売り圧力が強まったためと考えられる。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は米国統計の改善や、米中対立の緩和、英総選挙で保守党が勝利したことを受けて投機の買戻しが入りやすく、上昇余地を探る動きになると考える。

ただし、中国の貿易統計や生産者物価指数が減速、米中が通商面で合意しても香港・新疆ウイグル自治区の人権法案を米国が可決する方向性であることが米中の対立を意識させること、ブラジル・アルゼンチンに対する関税復活による通商面への懸念から、上値も重いと考える。

米中交渉は通商面で合意したと伝えられ、関税も一部引き下げられたが、香港やウイグル族の人権問題まで米国が対象を拡大して中国も報復、先行きが引き続き不透明。結局、部分的な合意には至るものの、長期的には米中いずれかがあきらめるまで継続するため、やはり景気循環銘柄価格の下落要因、と整理しておくべきだろう。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めの方針のようだが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないと予想される。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めていることが、非鉄金属においても今後の大きなテーマとなると見られる。

財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。

実際、11月12日には米クドロー国家経済会議委員長が、「トランプ大統領から第2弾の減税の指示があった」と発言しており、2020年度予算に減税が盛り込まれる可能性が高まった。財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

中長期的にはインドの構造的な需要増加や、環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想されるが、より短期的には、中国、欧州の景気がどこで底入れするのか、米国経済の後退がいつから始まるのかに依拠する。

来年の大統領選挙を睨んで米国がどのような対応をしてくるかが不透明であるが、こうした政策期待効果を除けば、底入れ感が出てくるのは来年の春~夏にかけてになると見ている。中期的には現状水準でのもみ合いが続こう。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。

ニッケルに関しては、インドネシアの輸出規制は再び解除され、9社の輸出が認可された。これにより供給懸念が後退するため、景況感の悪化と相まってニッケル価格は下落余地を探る流れとなっている。

足元はチャートの節目である、14,000ドルの節目を割り込んだ。今後、目立ったチャートポイントがあるわけではないことから、13,000ドルを維持できるかが大きなポイントとなる。

来年1月以降は供給が停止されるが、前倒し輸出が加速したため、品薄感が意識されて価格が上昇するのは4月以降の可能性が高まった。というのも、今年9月までで2018年と同じ数量をすでに中国が輸入したためだ。

処理量に大きな変化がなければすでに3ヵ月分、余分に調達が済んでいることになる。ただし、実際にインドネシアの供給が止まれば、シェアはニッケル含有分ベースで25%であるため、原油に例えれば、サウジアラビアとロシアの供給が同時に停止するぐらいのインパクトがある話であり、やはり価格には上昇圧力が掛かりやすい。

2014年の規制開始後を参考にすると、輸出規制開始となる1月から価格が上昇し(価格がすでに大きく調整しており、割安感があることから上昇タイミングを前倒し)、来年7月頃(下期)からの下落が予想される。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは回復し、閾値の50を上回った。しかし、規模別でみた場合大企業は閾値の50を上回っているが、中堅・中小企業の景況感はまだ50を上回っていない。価格へのプラスの影響は緩やかなものに止まろう。

在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が回復しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-10月期中国工業生産は、前年比+5.6%(1-9月期+5.6%)、10月+4.7%(前月+5.8%)と月次ベースで急速に減速した(フロー需要の減少=価格下落要因)。

・1-10月期中国固定資産投資は、前年比+5.2%の51兆880億元(1-9月期+5.4%の46兆1,204億元)、公的セクター+7.4%(+7.3%)、民間セクター+4.4%(+4.7%)と規模の大きな民間セクターの減速が鮮明になっている(ストック需要の減速=価格下落要因)。

・1-10月期中国不動産開発投資は、前年比+10.3%の10兆9,603億元(1-9月期+10.5%の9兆8,008億元))と高い水準を維持してはいるが伸びは減速している。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・11月の銅地金・製品の輸入量は43万3,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準。また、銅鉱石の輸入も215万7,000トンとやはり過去5年の最高水準を大きく上回っている。公共投資(電線網整備)などの公的需要が需要を下支えしているとみられ、中国の取引所在庫は過去5年平均を下回っている。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、Valeの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

HydroのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展し、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・12月6日付のLMEポジションは銅と錫がロング増加・ショート減少という強気のポジション取りとなったが、亜鉛、鉛、アルミに関してはロングが減少し、ショートも増加し弱気のポジション取りとなった。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲30.1億ドル(前週▲29.4億ドル)と売り越し幅を小幅に拡大した。売り越し額の増加率は+2.3%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲963千トン(前週▲791千トン)と売り越し幅を拡大した。ネット売り越しの増加率は+21.7%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は下落、中国鉄鋼製品先物価格は小動きだった。

米中が貿易交渉で第一弾合意に至ったことや、在庫の減少に伴うファンダメンタルズの強さから高値圏での推移となっている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、最大消費国である中国の公共投資に伴う需要増加や、冬場の鉄鋼製品生産規制から鉄鋼製品価格が上昇していること、Valeの販売調整観測で価格は底堅い推移になると考える。

米中が貿易交渉で部分合意、これ自体は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る対立を見るに、まだ両国関係は鉄鉱石価格の波乱要因になると見る。

また、冬場の鉄鉱石価格は季節的には強含みやすいものの、冬場の鉄鋼製品生産規制により鉄鋼向け需要が減速するため(短期的には鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鉱石価格の上昇要因となる)、今年は例年よりは低い水準での推移になるのではないか。

原料炭も鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、同様に下値余地を探りやすくなっている。足元の価格は特に春以降、季節性を無視して水準を切り下げている。

価格の上昇があるとすれば、その他の景気循環系商品と同様、春~夏に掛けてになると見る。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは45.4(前月41.3)と回復。新規受注の回復(31.6→43.8)が大きく影響した。輸出向け新規受注の回復が緩慢(35.8→40.1)であることから、恐らく、政府主導のインフラ向けの投資需要が新規受注を支えていると考えられる。

需要回復で完成品在庫は減少(36.8→27.1)、原材料在庫は増加しているため(37.9→39.2)、製品とのスプレッドは拡大する可能性がある。結果、鉄鋼原料価格はファンダメンタルズ面で強含み推移しよう。

・1-10月期中国工業生産は、前年比+5.6%(1-9月期+5.6%)、10月+4.7%(前月+5.8%)と月次ベースで急速に減速した(フロー需要の減少=価格下落要因)。

・1-10月期中国固定資産投資は、前年比+5.2%の51兆880億元(1-9月期+5.4%の46兆1,204億元)、公的セクター+7.4%(+7.3%)、民間セクター+4.4%(+4.7%)と規模の大きな民間セクターの減速が鮮明になっている(ストック需要の減速=価格下落要因)。

・1-10月期中国不動産開発投資は、前年比+10.3%の10兆9,603億元(1-9月期+10.5%の9兆8,008億元))と高い水準を維持してはいるが伸びは減速している。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。

11月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は457万5,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入もほぼ季節性通り減少し、2,078万1,000トンとなった。予想通り輸入は減速している。

今後に関しては輸入規制が導入されると見られる、国内生産も10月時点で3億2,487万トンと過去5年の最高水準を大きく上回っている。このことから、今後も輸入は減少すると予想される。

・中国の11月の鉄鉱石の輸入量は前月からは減速したが9,290万トンと高い水準を維持した。一方で、今年の鉄鉱石生産は3月以降漸増しており、7,804.8万トンに達しているため、冬場の鉄鋼製品生産規制がやはり実施される見込みであることを考えると、輸出市場における鉄鉱石需給は緩和する可能性が高い。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲9.3万トンの795万トン(過去5年平均861.7万トン)と例年を下回っている。

なお、10月の鉄鋼製品の輸出は478万2,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+10万トンの1億2,950万トン(過去5年平均1億1,710万トン)、在庫日数は+1.0日の29.3日(過去5年平均 31.6日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化している。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・Vale、Rio Tintoの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む金融市場の緩和を進めているほか、地方政府にも債券発行枠の前倒しを認めるなど、景気テコ入れのため公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は上昇した。米中交渉が部分合意したが、債券市場ではすでに織り込み済みとの評価で長期金利が急低下したことで実質金利が低下、金銀価格の押し上げ要因となった。

PGMは金銀価格が上昇したが、この数日、南アフリカの電力問題などを材料に大きく上昇していたため、週末をを控えて利益確定の売り圧力が強まったため。

【貴金属価格見通し】

金価格はFOMCでの政策金利変更観測が後退したことが価格を下支えするが、米中問題、英国の総選挙結果が価格を下押しすると予想されるため、安全資産需要の減速から一旦下値余地をさぐることになると予想する。

ただし、ブラジル・アルゼンチンに対する関税引き上げなどの通商問題は解決しておらず、米中問題も完全に解決したわけではないこと、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡り、米中の対立が激化する可能性があることが一定の安全資産需要を喚起すること、同時に低金利政策の継続も間違いがなく、結果、高値圏でのもみ合いとなるだろう。

仮に地政学的リスクが解消した場合、実質金利を基にすれば、▲200ドル程度(地政学リスクプレミアム)金価格は下落することになる。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)が大幅に低下したが、再び上昇基調となっている。

そうだとしても現在の金銀レシオは在庫レシオで見た場合やや高すぎで、金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられる。

PGM価格は金銀価格が高値圏で推移するとみられることから、同様に高値圏での推移になると予想する。影響が明確に出ていないが、南アフリカの電力供給削減が今後、供給にも影響を与え価格を下支えしよう。

また、世界の自動車販売の前年比減速が底入れした感じが出てきていることから対金銀で割高に推移すると考える。

中国の自動車販売が15ヵ月連続のマイナスとなるなど、需給ファンダメンタルズ面は需要面の減速が懸念される状況。世界自動車販売も13ヵ月連続の前年比マイナス。

しかしいずれも前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていること、11月の米自動車販売は1,709万台(前月 1,655万台)と回復しており、需要面でも価格が押し上げられる可能性は高まっている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBは米統計の悪化懸念がやや後退していることから、追加利下げの可能性が大きく後退している。仮に追加利下げがあったとしても来年1回程度とみられるため、下支え効果は限定。

ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に向け、各国政府に働きかけを強めることになるだろう(これは中央銀行の権限外であるが)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するにはまだ時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・米中通商交渉が部分合意したが、基本的に覇権争いであるためこの問題が簡単に片付くことはなく、安全資産需要を下支えする見込み。

米国は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決と、それによって民間技術が軍事転用されないようにすることが最終目標であり、根本的な解決には相当な時間がかかる見込み(価格の下支え要因)。

・トルコ軍のシリアへの侵攻は、ロシアの仲介でとりあえず終了。域内に「緩衝地帯」を設けることで合意した。ロシアの支援を受けているアサド政権側もこれを飲まざるを得なくなった模様。

トルコはこの地域にシリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も(金銀価格の上昇要因)。

・英国のEU離脱はEUが離脱期限延長で合意、選挙でも保守党が勝利したため合意離脱の可能性が高まったことは、金価格の下落要因に(ただし、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金・銀共にロングが減少、ショートが増加した。景気への懸念が後退し、米利下げ観測が遠のく中、安全資産需要が後退したことが背景。

プラチナはロングが増加、ショートが減少。パラジウムはロング・ショートとも増加している。米中通商部分合意と、南アフリカの電力問題などを背景に、今後はロング増加・ショートが減少すると見る。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが329,169枚(前週比 ▲17,356枚)、ショートが58,249枚(+2,429枚)、ネットロングは270,920枚(▲19,785枚)、銀が85,617枚(▲3,624枚)、ショートが44,875枚(+5,861枚)、ネットロングは40,742枚(▲9,485枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが60,246枚(前週比 +3,499枚)、ショートが10,669枚(▲549枚)、ネットロングは49,577枚(+4,048枚)、パラジウムが18,456枚(+541枚)、ショートが5,949枚(+345枚)、ネットロングは12,507枚(+196枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物は小動き。米中通称合意したとの報道を受けて上昇したが、ある程度織り込み済みであり、チャート上のテクニカルなレジスタンスラインが意識されて引けにかけて水準を切り下げる動きとなった。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は堅調な推移になると考える。米中が通商面で合意したことで、米国産穀物の輸出増加観測が強まること、英選挙結果を受けてユーロ高・ドル安が進行しやすいことが金融面で価格を押し上げるため。

米トウモロコシ・大豆の受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、供給に懸念は少なく、価格には下押し圧力が掛かりやすい地合い。

小麦は冬小麦の作況が悪化していることが買い材料視されており、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を下回っていることから、こちらには上昇圧力が掛かりやすい。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産見通し上方修正による需給緩和観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・12月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億6,100万Bu(前月136億6,100万Bu)大豆 35億5,000万Bu(35億5,000万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・12月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ 19億1,000万Bu(市場予想18億6,119万Bu、前月19億1,000万Bu)大豆 4億7,500万Bu(4億7,381万Bu、4億7,500万Bu)小麦在庫 9億7,400万Bu(10億878万Bu、10億140万Bu)

・9月末の四半期在庫トウモロコシ 21億1,400万Bu(市場予想24億1,804万Bu)大豆 9億1,300万Bu(9億8,126万Bu)小麦 23億8,500万Bu(23億1,858万Bu)

(特殊要因)

・米中通商交渉は合意したと伝えられており、足元シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、長期化の可能性は高くシカゴ定期の下落要因に。

・エルニーニョ現象は収束したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・投機のポジションは、すべての穀物で売りポジションが増加している。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが297,845枚(前週比 +4,856枚)、ショートが315,666枚(+20,741枚)、ネットロングは▲17,821枚(▲15,885枚)、大豆はロングが150,801枚(▲7,669枚)、ショートが194,298枚(+9,685枚)、ネットロングは▲43,497枚(▲17,354枚)、小麦はロングが113,468枚(+3,069枚)、ショートが89,231枚(+6,572枚)、ネットロングは24,237枚(▲3,503枚)

◆本日のMRA's Eye


「2020年金銀価格見通し」

2019年の金価格は、米景気が減速、同時に激化した米中の通商戦争の影響でFRBに対する利下げ期待が高まったこと、英国のEU離脱や中東情勢不安の顕在化などの地政学的リスクが重なり、年半ばから堅調な推移となった。

対金で割安に推移していた銀も、金の取引所在庫減少を切っ掛けに買いが入り、長らく続いた割安感が解消した。

金価格は実質金利(米10年変動債利回り=10年債利回りー10年期待インフレ率)との連動性が高く、日々の値動きはほぼ実質金利の動向に左右されている(市場規模の違い)。

また、この数年で期待インフレ率は、原油価格動向に影響を受けるようになったため、原油価格の変化が金価格に及ぼす影響は大きくなった。

足元は、これまで金の買い材料だった、1.米中通商戦争、2.英ブレグジットを巡る懸念、3.中東情勢不安(米・サウジ・イスラエルvsイラン)、がいずれも「若干緩和」したため、安全資産需要はやや後退している。

しかし実質金利と金価格の回帰分析結果(2016年データを使用)との乖離を見るに、これまでの足元の下落は、長期金利上昇に伴う実質金利上昇の影響の方が大きいと考えられる。

金の基準金利が高止まりするためには、更なる金融緩和期待が高まることが必要であることを意味しているが、1.大統領選挙を控えた景気刺激のために低金利を維持したいとの圧力がFRBにかかること、2.景気回復力の弱さから、財政出動を伴う景気刺激が過度になる場合などを除けば、米長期金利は比較的低水準で推移する可能性が高いこと、から金価格を高値で維持する見込み。

単純な回帰分析の結果を元にすると、米政策金利の±25bpの変化で、金価格は±15ドル程度変化し、原油価格の±10ドルの変化で±55ドル程度変化すると考えられる。

2020年の金価格は1,469ドル/オンス(前回見通し比+150ドル/オンス)と見通しを引き上げた。2021年は大統領選挙終了後に一旦景気が下振れする展開が予想されるが、徐々に持ち直すと考えられることから、結果、2020前年比横ばいの1,469ドル/オンス(+193.75ドル/オンス)と大幅に引き上げた。

銀価格と金価格の関係を図る上で「金銀レシオ分析」が従来から用いられてきたが、明らかに水準が以前と変化している。

これは金銀の本位通貨としての性格が薄れる中で、同じ安全資産に分類される貴金属の中での需給バランスが意識されているためと考えられる。

金銀在庫レシオと金銀レシオの説明力は2011年以降高まっているが、足元、金の取引所在庫増加を受けて金銀在庫レシオは上昇(金在庫の水準が、銀に対して相対的に増えている状態)しており、金銀レシオの低下を肯定している。

しかし、そうはいっても銀の取引所在庫は歴史的な高水準にあること、これまでの価格上昇がETFに主導されるものであることから、仮に金銀在庫レシオが低下した場合や、銀価格の高値推移の背景である金価格の上昇が反転した場合(実質金利の上昇や、地政学的リスク、信用リスクの低下など)には、急落する可能性は排除できず。

銀価格は金の取引所在庫増加に伴い、金銀レシオの低下が肯定されやすい地合いにあること、金価格が高値圏を維持する見込みであることから、2020年の銀価格は17.93ドル/オンス(+2.11ドル/オンス)と従来見通しを引き上げた。

2021年については、金価格が高値圏で推移することが予想されること、景気回復に伴う工業需要の増加などで比較的高値を維持する見込みで、18.31ドル/オンス(+2.36ドル/オンス)を予想。

ただし、取引所在庫の高さを考慮すると、金価格急落時の下落リスクは無視できず、リスクは下向き。

◆主要ニュース


・12月日銀短観業況判断DI(3ヵ月後見通し/現状/前回)
 大企業製造業 0/0/5
 中堅企業製造業 ▲4/1/2
 中小企業製造業 ▲12/▲9/▲4
 大企業非製造業 18/20/21
 中堅企業非製造業 7/14/1
 中小企業非製造業 1/7/10

 雇用人員判断DI(過剰-不足)
 大企業全産業 ▲21/▲21/▲21
 中堅企業全産業 ▲34/▲31/▲32
 中小企業全産業 ▲38/▲34/▲36

 需給判断DI(需要超-供給超)
 大企業製商品サービス ▲11/▲10/▲8
 中小企業製商品サービス ▲25/▲23/▲23
 大企業海外向け ▲11/▲12/▲8
 中小企業海外向け ▲20/▲20/▲16

 在庫判断DI(過大-不足、現状/前回)
 大企業製商品在庫 14/12
 中小企業在庫 16/17
 大企業流通在庫 11/12
 中小企業流通在庫 19/18

 価格判断DI(上昇-下落)
 大企業販売価格 ▲8/▲6/▲4
 中小企業販売価格 ▲3/▲4/▲2
 大企業仕入 8/6/5
 中小企業仕入 28/24/26

 生産・営業設備判断DI(過剰-不足)
 大企業製造業 1/2/0
 中堅企業製造業 ▲1/0/1
 中小企業製造業 ▲1/1/▲3

 設備投資計画前年比(前年度)
 大企業製造業 +11.3%(+7.0%)
 中堅企業製造業 ▲2.8%(+6.4%)
 中小企業製造業 +0.1%(+17.2%)
 大企業非製造業 +4.3%(+7.4%)
 中堅企業非製造業 ▲3.8%(▲4.4%)
 中小企業非製造業 ▲3.8%(▲4.4%)

・10月日本鉱工業生産改定  前月比▲4.5%(速報比▲0.3%、前月改定+1.7%)、前年比▲7.7%(▲0.3%、+1.3%)
 出荷▲4.5%(▲0.2%。+1.5%)、▲7.3%(▲0.2%、+2.2%)
 在庫+1.3%(+0.1%、▲1.4%)、+2.6%(+0.1%、+0.9%)

・11月独卸売物価指数 前月比▲0.1%(前月▲0.1%)、前年比▲2.5%(▲2.3%)

・11月米輸入物価 前月比 +0.2(前月▲0.5%)、前年比▲1.3%(▲3.0%)
 輸出物価 前月比+0.2%(▲0.1%)、前年比▲1.3%(▲2.3%)

・11月米小売売上高 前月比 +0.2%(前月+0.4%)
 除く自動車+0.1%(+0.3%)
 除く自動車ガソリン±0.0%(+0.2%)
 除く自動車・建材+0.1%(+0.3%)

・11月インド貿易収支 ▲121億2,000万ドルの赤字(前月▲110億1,000万ドルの赤字)、輸出 前年比▲0.3%(▲1.1%)、輸入 ▲12.7%(▲16.3%)

・10月米企業在庫 前月比+0.2%(前月▲0.1%)、企業売上高▲0.1%(▲0.4%)、売上高在庫比率 1.40ヵ月(1.40ヵ月)

 製造業在庫+0.1%(+0.3%)、製造業売上高±0.0%%(▲0.4%)、売上高在庫率1.40ヵ月(1.40ヵ月)

 小売在庫+0.3%(+0.1%)、小売売上高+0.5%(▲0.6%)、小売売上高在庫率 1.45ヵ月(1.45ヵ月)

 卸売在庫+0.4%(+0.8%)、卸売売上高▲0.7%(▲0.1%)、在庫率 1.37ヵ月(1.36ヵ月)

・米政府、12月15日からの中国の関税引き上げを取りやめ。2019年9月に発動した1,200億ドルへの関税を15%から7.5%に引き下げ。合意内容は農畜産品の輸入拡大、知的財産権保護、技術移転、金融サービス、為替、紛争解決などの9項目に及ぶ。

・トランプ大統領の弾劾決議、下院で可決。

・英総選挙、保守党が過半数を確保し圧勝。

・アルジェリア テブン元首相が大統領選に勝利。一般市民は政治を支配し続
けるエリート層の一掃を要求、デモは継続。

・インド国会上院でイスラム教徒を除く不法移民に国籍を与える国籍法改正案が可決、イスラム教徒への差別だとの訴えに加え、バングラディシュからの移民が増えるとデモが発生。外出禁止やインターネット遮断などの措置が取られている。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数667(前週比+4)、ガスリグ 129(前週比▲4)。

・ニジェール軍の基地、ISISが攻撃。兵士71名が死亡。

・サウジアラムコ、アラビアンライトのプレミアム、12月1日から3.7ドルに(+0.3ドル)、スーパーライトは8.45ドル(+1.70ドル)、ミディアムは2.05ドル(▲0.1ドル)、ヘビーはディスカウントに。

【メタル】
・ザンビア、Kariba水力発電所、渇水の影響で電力局級が途絶するリスク。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICEガスオイル ( エネルギー )/ +2.81%/ +16.54%
2.日経平均 ( 株式 )/ +2.55%/ +20.03%
3.CME肥育牛 ( 畜産品 )/ +2.19%/ ▲2.13%
4.NYM RBOB ( エネルギー )/ +2.14%/ +25.65%
5.中国CSI300 ( 株式 )/ +1.98%/ +31.81%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲7.79%/ ▲42.41%
69.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ ▲4.75%/ +27.10%
68.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲4.19%/ ▲2.87%
67.LIFFEココア ( その他農産品 )/ ▲3.39%/ +1.64%
66.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ ▲2.30%/ ▲6.91%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :28,135.38(+3.33)
S&P500 :3,168.80(+0.23)
日経平均株価 :24,023.10(+598.29)
ドル円 :109.38(+0.07)
ユーロ円 :121.64(▲0.02)
米10年債利回り :1.82(▲0.07)
独10年債利回り :▲0.29(▲0.02)
日10年債利回り :▲0.02(▲0.01)
中国10年債利回り :3.20(+0.01)
ビットコイン :7,240.62(+40.00)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :21.61(+0.39)
エネルギー :31.00(+0.77)
ベースメタル :17.17(+0.49)
貴金属 :13.34(▲0.32)
穀物 :16.23(+0.13)
その他農畜産品 :24.15(+0.48)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :33.57(+0.17)
Brent :26.32(▲0.04)
米天然ガス :57.57(+1.82)
米ガソリン :31.70(+0.52)
ICEガスオイル :21.17(+2.09)
LME銅 :11.77(+0.02)
LMEアルミニウム :11.51(▲0.33)
金 :12.69(+0.52)
プラチナ :21.21(+1.09)
トウモロコシ :17.43(▲0.02)
大豆 :12.69(+0.52)

【エネルギー】
WTI :60.07(+0.89)
Brent :65.22(+1.02)
Oman :66.12(+1.12)
米ガソリン :166.32(+3.49)
米灯油 :198.64(+3.56)
ICEガスオイル :595.25(+16.25)
米天然ガス :2.30(▲0.03)
英天然ガス :35.17(▲2.97)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :65.22(+1.02)
SPO380cst :257.39(+0.32)
SPOケロシン :78.03(+0.29)
SPOガスオイル :77.35(+0.16)
ICE ガスオイル :79.90(+2.18)
NYMEX灯油 :198.07(+1.29)

【貴金属】
金 :1476.33(+6.53)
銀 :16.93(+0.00)
プラチナ :928.73(▲16.11)
パラジウム :1932.59(▲8.08)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,177(+58:23C)
亜鉛 :2,277(+43:2B)
鉛 :1,955(+23:21C)
アルミニウム :1,775(+8:11C)
ニッケル :14,195(+335:50C)
錫 :17,150(+50:50B)
コバルト :34,308(▲6)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6143.00(▲18.50)
亜鉛 :2257.00(▲3.00)
鉛 :1907.00(▲21.00)
アルミニウム :1764.50(▲7.00)
ニッケル :14215.00(+205.00)
錫 :17195.00(+65.00)
バルチック海運指数 :1,388.00(▲72.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :86.24(+0.47)
SGX鉄鉱石 :93.04(+0.30)
NYMEX鉄鉱石 :92.27(+0.23)
NYMEX原料炭スワップ先物 :137(▲2.00)
上海鉄筋直近限月 :4,240(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :3,524(▲9)
米鉄スクラップ :300(+9.00)

【農産物】
大豆 :907.50(+9.25)
シカゴ大豆ミール :295.50(+2.90)
シカゴ大豆油 :32.27(+0.24)
マレーシア パーム油 :2816.00(±0.0)
シカゴ とうもろこし :366.25(▲0.75)
シカゴ小麦 :539.25(±0.0)
シンガポールゴム :168.20(±0.0)
上海ゴム :12945.00(+30.00)
砂糖 :13.50(▲0.02)
アラビカ :129.45(▲6.45)
ロブスタ :1402.00(▲33.00)
綿花 :66.80(▲0.37)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :60.48(▲0.53)
シカゴ生牛 :122.38(+1.95)
シカゴ飼育牛 :145.68(+3.13)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。