イベント控え景気循環系商品軟調
- MRA商品市場レポート for PRO
2019年12月10日 第1655号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「イベント控え景気循環系商品軟調」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は、その他農産品や貴金属の一角が上昇したが、週末にかけての大きなイベントを控えていることや、中国統計がやや悪かったことから、その他の景気循環系商品は軟調な推移となった。
先週発表された米雇用統計が良好な内容だったが、週末に発表された中国の貿易統計で輸出が予想外に減速したことで景気への懸念が再び意識されたこと、12日には英総選挙、15日には米中関税引き上げの期限となることから様子見気分が強かった。
【本日の価格見通し総括】
本日は中国景気の先行指標である、中国生産者物価指数に注目している。市場予想は前年比▲1.5%(前月▲1.6%)と前年比マイナス幅が縮小はするが低迷する見込みであり、広く景気循環銘柄価格の下押し要因になると考える。
一方、消費者物価指数は+4.3%(+3.8%)と伸びが加速する公算。ただしこれは需要がけん引する形での物価上昇ではなく、豚肉など、主に食品関連の価格上昇によるものであり、あまり許容できる上昇ではない。
このほか、独IFO指数の先行指標である独ZEW景況感指数にも注目している。市場予想は現状指数が▲22.0(前月▲24.7)、期待指数が+0.3(▲2.1)と小幅ながら改善見込みである。
欧州の経済統計は今年の9月頃から「予想比で強い」数値が出るようになっており、サプライズ指数は0.3と水面上に復帰している。循環的にも欧州統計が改善する可能性はあり、特に非鉄金属価格を押し上げつつ、同時にドル安も進行させるため、ドル建て資産は底堅い推移になるだろう。
とはいえ、米中協議の行方が市場動向を左右するため、結局小動きになるだろう。
【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】
昨日発表された日本のGDP二次速報は、企業の設備投資が堅調で、前期比年率+1.8%(前期比+0.4%)と一次速報から上方修正された。このほか、家計最終消費支出や政府最終消費支出も上方修正された。
日本のGDPは保護主義政策に基づく外需の寄与度の低下(▲0.2%、前期▲0.3%)を、国内の設備投資や個人の住宅投資が支えるという構図であったが、企業設備投資は省力化投資に伴うものが大勢を占め、直近の統計でも有効求人倍率が頭打ちになっていることからもわかるように、「人手不足がピークアウト」した可能性が高く、今後も減速するシナリオが想定される。
消費税上げに伴う可処分所得への負担増加に伴い、今後個人消費に減速感が強まること、企業の設備投資が一巡すること、からやはり日本の景気には下押し圧力がかかる可能性が高いとみられる。
ただし、これまでGDP成長を下押ししてきた貿易関連の問題が、場合によると2020年に「一旦手打ち」になる可能性はあり、そうなれば国内の減速を外需が相殺する形となり、大規模な公共投資がまた予定されていることと相まって、来年の日本の景気は「良くもならないが、悪くもならない」という状態が続くと予想される。
しかし、1.場合によると来年の春頃に期待される世界景気の底入れがなく、2.米中が再び対立の色を強める展開となる、といったシナリオが顕在化すれば日本の景気は2021年以降、大きく減速することになると予想される。
まずは米中の合意があるかどうか。恐らく両国の覇権争いであるため、中長期的に両国の対立が解消するには時間が掛ると考えておくべきであり、基本的には景気の下押し要因である、と整理しておくのが妥当だろう。
また、週末には中国の貿易統計が発表されたが、輸出が予想外に減速(前年比▲1.1%、市場予想+0.8%、前月▲0.8%)し、輸入が予想外に増加(+0.3%、▲1.4%、▲6.2%)した。
中国の国別輸出を見ると米国が年初来累計で▲12.5%と減速しているが、実はその他の地域では年初来で前年比プラスとなっている。結局、米国の制裁が中国経済に大きく影響を及ぼしているといえ、やはり中国景気が回復するには米国の制裁解除が必要条件とみられる。
【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】
(マクロ要因)
・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。
・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.2%→+3.0%)ている。2020年も+3.4%(▲0.1%)に引き下げた。
ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。
・FRBの利下げに打ち止め感が広がっている。あったとしても後1回程度(▲25bp程度)の利下げに留まる(金融面の価格下支え期待の後退)。
・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。
※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。
・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。
(特殊要因)
・米中通商交渉は一進一退でどのような着地になるかよくわからないが、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護を中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。
通商面のみならず、資本フローの規制や、人権問題への制裁なども加わっており、通商面で妥協があったとしてもその他の分野での制裁発動の可能性は高い。
・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。
・中東情勢が再度緊迫していることで、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、サウジアラビアがイランに対して報復攻撃を行うなどのリスク(原油は上昇要因、その他の景気循環銘柄には下落要因。ただしアラムコIPOを控えてその可能性はほとんどない)。
・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。EUは英国のEU離脱期限延長で合意したが、議会の構成が変わらなければ英議会で離脱案が否決される可能性がある。
これを解消するため、ジョンソン首相は解散総選挙を実施するが、選挙結果によっては再びEUと離脱を巡って混乱が生じる可能性。ハードブレグジットの可能性は排除すべきではない(下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。
・中国政府が「法律に基づき」過去のGDPの見直しを行うと発表しているが、この見直しによって統計が悪化する可能性は高く、景気循環銘柄価格の下落要因に。
・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。
(投機・投資要因)
・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油市場動向総括】
原油価格は上昇した。OPECプラス会合では予想外のサウジアラビアの自主減産が発表されたが、中国の貿易統計で輸出が減速したことを受けて、世界景気への懸念が強まったこと、12月15日の関税引き上げの期限を控えて様子見気分が強まったため。
なお、サウジアラビアが2020年の予算を発表したが、歳入見通しを2019年の9,170億リヤルから、8,330億リヤルに引き下げ(62~63ドル前提。弊社の試算では77ドル程度を想定)た。
ウチ、原油収入が5,130億リヤル(6,200億リヤル)、軍事費は1,820億リヤル(前年1,980億リヤル)だった。
【原油価格見通し】
原油価格は、米中合意の可能性とOPECプラスの追加減産+サウジアラビアの自主的減産、米雇用統計の改善によるファンダメンタルズ面の悪化懸念の後退から、高値圏を維持するものと考えられる。
ただし、米統計の改善を受けてドル高が進行しやすい地合いに再び入ったことから、金融面で原油価格の上昇は抑制されることになるだろう。
OPEC総会では現状追認の▲50万バレルの追加減産が決定され、さらにサウジアラビアが▲40万バレルの減産を決定した。これは市場の予想を上回るものであり、価格の上昇要因となる。しかし、この減産の持つ意味は小さくない。
これは11日に予定されているサウジアラムコのIPOを有利に進める、ということは当然だろうが、それ以上に懸念されるのが、実はドローン攻撃を受けたアブカイクの修理は、アブドルアジズ エネルギー相の言うように完了している訳ではない可能性がある点である。
サウジアラビアは修理完了後の設備の状況を公開していない。WSJでも指摘されているように、あの規模の設備を修復するのは通常1年掛かってもおかしくないのだ(在庫があって容易に交換ができる設備ではなく、特注品)。
もしそうであれば、景気が回復して需要が戻った場合、OPECの余剰生産能力が不足し、価格が給湯する可能性があることを示唆している。特に米国が「採算性のある油田のみ稼働させる」方針に傾斜しつつあることを考えると、このシナリオの可能性は今後、十分に注意して検証していく必要があるだろう。
ただし、今のところ追加減産は3月末までであること、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、OPEC減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオだ。
米中交渉は通商面で合意の可能性が出ているが、香港やウイグル族の人権問題まで米国が対象を拡大して中国も報復、先行きが引き続き不透明。結局、部分的な合意には至るものの、長期的には米中いずれかがあきらめるまで継続するため、やはり景気循環銘柄価格の下落要因、と整理しておくべきだろう。
なお、合意したとしても今までの関税を引き下げるわけではないため、「さらに悪くなることが回避される」だけであり、景気にプラスというわけではない。
FOMCは、一旦利下げを打ち止めの方針のようだが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。
仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。
財政出動は使途にもよるが、エネルギー価格の押し上げ要因になるだろう。
実際、11月12日には米クドロー国家経済会議委員長が、「トランプ大統領から第2弾の減税の指示があった」と発言しており、2020年度予算に減税が盛り込まれる可能性が高まった。
米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。
なお、景気の減速に伴う価格下落(歳入確保のための増産)やサウジアラビアに対するドローン攻撃(テロの低コスト化・大規模化に伴う供給途絶)の影響で、供給側(特にOPECプラス)の動きが価格に与える影響は小さくなくなっている。
【石炭市場動向総括】
石炭先物市場は小幅に下落。特段材料がない中、ピークシーズン入りした需要の増加と天然ガス価格の上昇はあるも、中国の国内生産増加に伴う輸入の減少観測から価格はもみ合っている。
【石炭価格見通し】
石炭価格はピークシーズン入りしていることから、上昇すると見るが、欧州地域の景況感悪化に伴う天然ガス価格の低迷、中国統計の減速、中国政府の石炭輸入制限(年間2億8,000万トン)を受けた輸入需要の減速を受けて低水準を維持する見込み。
バルチック海運指数は、予想通り下落傾向が顕著になってきた。中国政府が特に石炭に関して輸入量を前年並みにする目標であることが影響している。
10月の中国の貿易統計では、石炭輸入は燃料炭・原料炭合計で2,569万トンと前月から減速。ただし、依然として過去5年の最高水準を上回っている。
同時に10月の中国石炭生産が、同じ時期の過去5年の最高を上回る3,249万トンとなった。中国の国内供給は増加している状況であり、貿易市場は緩和する見込み。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・OPEC総会では現状追認の▲50万バレルの追加減産が決定され、さらにサウジアラビアが▲40万バレルの自主減産を決定、原油価格の上昇要因に。
ただし、減産は3月末までであること、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、OPEC減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオ。
・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。
・世界2位の消費国である中国の輸入増加。10月の貿易統計では、原油の輸入が4,551.1万トン(1,086万バレル/日)と過去最高を更新。
今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。
・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。
・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。
・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。
(特殊要因)
・サウジアラビアの石油施設の修復は完了したと報じられているが、実際は完了していないとの報道もあり、供給面は実態が把握される中で上昇リスクになる可能性。
なお、サウジアラビアがイランに対して報復を行う可能性は、アラムコのIPOを控えていることもあり、現時点ではほぼゼロに近いと見る。
また、今回のドローン攻撃でテロが低価格化・大規模化することが分かったことは、中東の供給途絶リスクを従来よりも高めるものであり、従来以上に中東情勢は重要に。
・ブラジルのOPEC加盟。ブラジルの生産量は2018年で268万バレルであり、世界供給の2.8%に達するため、実際に加盟し、サウジアラビアの意向に沿う生産を行うならば、OPECの価格支配能力は若干の改善が見込まれる。
仮に期待通り来年の世界景気が夏頃にかけて底入れした場合、生産制限は顕著な価格上昇要因となり得るため、その点は注意。
・トルコ軍のシリアへの侵攻は、ロシアの仲介でとりあえず終了。域内に「緩衝地帯」を設けることで合意した。ロシアの支援を受けているアサド政権側もこれを飲まざるを得なくなった模様。
トルコはこの地域にシリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も。
・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。
(投機・投資要因)
・WTIはロングが減少、ショートが増加、Brentもロングが減少したがショートは減少した。
景気の先行きへの懸念が強まる一方、米国は増産の、BrentはOPECの減産が意識された。
・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが531,120枚(前週比 ▲22,617枚)、ショートが103,085枚(+20,284枚)、ネットロングは428,035枚(▲42,901枚)、Brentが393,611枚(前週比▲20,366枚)、ショートが62,623枚(▲1,867枚)、ネットロングは330,988枚(▲18,499枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属市場動向総括】
LME非鉄金属価格は高安まちまちとなった。米雇用統計の改善などで地合いが完全していたが、週末発表の中国貿易統計で輸出が減速したことが重石となった。
ただし「ドクターカッパー」は、精錬銅輸入は季節的に過去5年の最高水準を上回ったこと、中国政府による公共投資(電線網整備)期待、テクニカルに200日移動平均線を上抜けたことから投機の買戻しが入り、大幅な上昇となった。
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は、米国統計の改善や、米中合意の可能性が意識されて投機の買戻しが入りやすい(特に銅とアルミ、錫)が、同時にドル高が進行しやすいこと、中国の貿易統計で交易量の減速が確認されたこと、米中が通商面で合意が期待できても香港・新疆ウイグル自治区の人権法案を米国が可決する方向性であることが米中の対立を意識させること、ブラジル・アルゼンチンに対する関税復活による通商面への懸念から、上値も重いと考える。
米中交渉は通商面で合意の可能性が高まっているが、香港やウイグル族の人権問題まで米国が対象を拡大して中国も報復、先行きが引き続き不透明。結局、部分的な合意には至るものの、長期的には米中いずれかがあきらめるまで継続するため、やはり景気循環銘柄価格の下落要因、と整理しておくべきだろう。
なお、合意したとしても今までの関税を引き下げるわけではないため、「さらに悪くなることが回避される」だけであり、景気にプラスという訳ではない。
FOMCは、一旦利下げを打ち止めの方針のようだが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないと予想される。
仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めていることが、非鉄金属においても今後の大きなテーマとなると見られる。
財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。
実際、11月12日には米クドロー国家経済会議委員長が、「トランプ大統領から第2弾の減税の指示があった」と発言しており、2020年度予算に減税が盛り込まれる可能性が高まった。財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。
中長期的にはインドの構造的な需要増加や、環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想されるが、より短期的には、中国、欧州の景気がどこで底入れするのか、米国経済の後退がいつから始まるのかに依拠する。
来年の大統領選挙を睨んで米国がどのような対応をしてくるかが不透明であるが、こうした政策期待効果を除けば、底入れ感が出てくるのは来年の春~夏にかけてになると見ている。中期的には現状水準でのもみ合いが続こう。
再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。
ニッケルに関しては、インドネシアの輸出規制は再び解除され、9社の輸出が認可された。これにより供給懸念が後退するため、景況感の悪化と相まってニッケル価格は下落余地を探る流れとなっている。
足元はチャートの節目である、14,000ドルの節目を割り込んだ。今後、目立ったチャートポイントがあるわけではないことから、13,000ドルを維持できるかが大きなポイントとなる。
来年1月以降は供給が停止されるが、前倒し輸出が加速したため、品薄感が意識されて価格が上昇するのは4月以降の可能性が高まった。というのも、今年9月までで2018年と同じ数量をすでに中国が輸入したためだ。
処理量に大きな変化がなければすでに3ヵ月分、余分に調達が済んでいることになる。ただし、実際にインドネシアの供給が止まれば、シェアはニッケル含有分ベースで25%であるため、原油に例えれば、サウジアラビアとロシアの供給が同時に停止するぐらいのインパクトがある話であり、やはり価格には上昇圧力が掛かりやすい。
2014年の規制開始後を参考にすると、輸出規制開始となる1月から価格が上昇し(価格がすでに大きく調整しており、割安感があることから上昇タイミングを前倒し)、来年7月頃(下期)からの下落が予想される。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・最大消費国である中国の製造業PMIは回復し、閾値の50を上回った。しかし、規模別でみた場合大企業は閾値の50を上回っているが、中堅・中小企業の景況感はまだ50を上回っていない。価格へのプラスの影響は緩やかなものに止まろう。
在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が回復しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。
・1-10月期中国工業生産は、前年比+5.6%(1-9月期+5.6%)、10月+4.7%(前月+5.8%)と月次ベースで急速に減速した(フロー需要の減少=価格下落要因)。
・1-10月期中国固定資産投資は、前年比+5.2%の51兆880億元(1-9月期+5.4%の46兆1,204億元)、公的セクター+7.4%(+7.3%)、民間セクター+4.4%(+4.7%)と規模の大きな民間セクターの減速が鮮明になっている(ストック需要の減速=価格下落要因)。
・1-10月期中国不動産開発投資は、前年比+10.3%の10兆9,603億元(1-9月期+10.5%の9兆8,008億元))と高い水準を維持してはいるが伸びは減速している。
中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。
・11月の銅地金・製品の輸入量は43万3,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準。また、銅鉱石の輸入も215万7,000トンとやはり過去5年の最高水準を大きく上回っている。公共投資(電線網整備)などの公的需要が需要を下支えしているとみられ、中国の取引所在庫は過去5年平均を下回っている。
・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)
・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。
・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。
・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。
(特殊要因)
・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。
・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、Valeの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。
HydroのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。
インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。
・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展し、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)
・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。
(投機・投資要因)
・11月29日付のLMEポジションは銅・錫以外の非鉄金属でロングポジションが減少、銅に関してはショートも減少して相場水準を切り上げた。
銅は公共投資の増加期待とチリの暴動による供給減少が意識されているとみられる。
投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲29.4億ドル(前週▲31.8億ドル)と売り越し幅を小幅に縮小した。売り越し額の減少率は▲7.5%。
買い越し枚数はトン数換算ベースで▲791千トン(▲806千トン)と売り越し幅を小幅に縮小した。ネット売り越しの減少率は▲1.8%。
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料市場動向総括】
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は下落、中国鉄鋼製品先物価格は直近限月価格が大幅に上昇、中心限月価格が上昇した。
米中通商合意が近いとの見方が強まっていることや、中国政府による公共投資期待、冬場の減産で鉄鋼製品価格が上昇(在庫も減少)していることが、鉄鉱石価格を押し上げている。
なお、中国の鉄鉱石輸入は季節性を無視して減速しているが、それでも水準は高い。
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は、最大消費国である中国の公共投資に伴う需要増加や、冬場の鉄鋼製品生産規制から鉄鋼製品価格が上昇していること、Valeの販売調整観測で価格は底堅い推移になると考える。
目先、米中合意が近いとされておりこれ自体は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、実際に合意するまでは価格の下押し要因であり、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る対立を見るに、まだ両国関係は鉄鉱石価格の波乱要因になると見る。
なお、合意したとしても今までの関税を引き下げるわけではないため、「さらに悪くなることが回避される」だけと考えるべきで、景気にプラスというわけではない。
また、冬場の鉄鉱石価格は季節的には強含みやすいものの、冬場の鉄鋼製品生産規制により鉄鋼向け需要が減速するため(短期的には鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鉱石価格の上昇要因となる)、今年は例年よりは低い水準での推移になるのではないか。
原料炭も鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、同様に下値余地を探りやすくなっている。足元の価格は特に春以降、季節性を無視して水準を切り下げている。
価格の上昇があるとすれば、その他の景気循環系商品と同様、春~夏に掛けてになるのではないか。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・直近の中国鉄鋼業PMIは45.4(前月41.3)と回復。新規受注の回復(31.6→43.8)が大きく影響した。輸出向け新規受注の回復が緩慢(35.8→40.1)であることから、恐らく、政府主導のインフラ向けの投資需要が新規受注を支えていると考えられる。
需要回復で完成品在庫は減少(36.8→27.1)、原材料在庫は増加しているため(37.9→39.2)、製品とのスプレッドは拡大する可能性がある。結果、鉄鋼原料価格はファンダメンタルズ面で強含み推移しよう。
・1-10月期中国工業生産は、前年比+5.6%(1-9月期+5.6%)、10月+4.7%(前月+5.8%)と月次ベースで急速に減速した(フロー需要の減少=価格下落要因)。
・1-10月期中国固定資産投資は、前年比+5.2%の51兆880億元(1-9月期+5.4%の46兆1,204億元)、公的セクター+7.4%(+7.3%)、民間セクター+4.4%(+4.7%)と規模の大きな民間セクターの減速が鮮明になっている(ストック需要の減速=価格下落要因)。
・1-10月期中国不動産開発投資は、前年比+10.3%の10兆9,603億元(1-9月期+10.5%の9兆8,008億元))と高い水準を維持してはいるが伸びは減速している。
中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。
11月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は457万5,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。
また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入もほぼ季節性通り減少し、2,078万1,000トンとなった。予想通り輸入は減速している。
今後に関しては輸入規制が導入されると見られる、国内生産も10月時点で3億2,487万トンと過去5年の最高水準を大きく上回っている。このことから、今後も輸入は減少すると予想される。
・中国の11月の鉄鉱石の輸入量は前月からは減速したが9,290万トンと高い水準を維持した。一方で、今年の鉄鉱石生産は3月以降漸増しており、7,804.8万トンに達しているため、冬場の鉄鋼製品生産規制がやはり実施される見込みであることを考えると、輸出市場における鉄鉱石需給は緩和する可能性が高い。
・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲9.3万トンの795万トン(過去5年平均861.7万トン)と例年を下回っている。
なお、10月の鉄鋼製品の輸出は478万2,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。
中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+10万トンの1億2,950万トン(過去5年平均1億1,710万トン)、在庫日数は+1.0日の29.3日(過去5年平均 31.6日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化している。
・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。
・Vale、Rio Tintoの生産目標引き下げによる供給減速。
(特殊要因)
・中国政府がシャドーバンキングを含む金融市場の緩和を進めているほか、地方政府にも債券発行枠の前倒しを認めるなど、景気テコ入れのため公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。
(投機・投資要因)
・特になし。
---≪貴金属≫---
【貴金属市場動向総括】
金・銀価格はもみ合った結果、前日比小幅高となった。米雇用統計の改善はあったものの、12日には英総選挙、米国の関税引き上げの期限を15日に控える中、様子見気分が強まった。
PGMはプラチナが前日比小幅安、パラジウムは小幅高となった。まだ明確に影響が出ていないが、南アフリカの計画停電の影響で供給が減少するとの見方が価格を支えるとみられる。
【貴金属価格見通し】
金価格は米雇用統計の改善に伴い、FOMCでの利下げ観測が後退していることが価格を下押しするが、12日の英総選挙、15日の米中関税引き上げ期限を控えて様子見気分強く、やや軟調地合いの中でもみ合うものと考える。
このほか、ブラジル・アルゼンチンに対する関税引き上げなどの通商問題は解決しておらず、何より米中交渉もまだ妥決していないこと、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡り、米中の対立が激化する可能性があることが一定の安全資産需要を喚起すること、同時に低金利政策の継続も間違いがなく、結果、高値圏でのもみ合いとなるだろう。
仮に地政学的リスクが解消した場合、実質金利を基にすれば、▲200ドル程度(地政学リスクプレミアム)金価格は下落することになる。
銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)が大幅に低下したが、再び上昇基調となっている。
そうだとしても現在の金銀レシオは在庫レシオで見た場合やや高すぎで、金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられる。
PGM価格は金銀価格が高値圏で推移するとみられることから、同様に高値圏での推移になると予想する。影響が明確に出ていないが、南アフリカの電力供給削減が、今後供給にも影響を与え価格を下支えしよう。
また、世界の自動車販売の前年比減速が底入れした感じが出てきていることから対金銀で割高に推移すると考える。
中国の自動車販売が15ヵ月連続のマイナスとなるなど、需給ファンダメンタルズ面は需要面の減速が懸念される状況。世界自動車販売も13ヵ月連続の前年比マイナス。
しかしいずれも前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていること、11月の米自動車販売は1,709万台(前月 1,655万台)と回復しており、需要面でも価格が押し上げられる可能性は高まっている。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・FRBは米統計の悪化懸念がやや後退していることから、追加利下げの可能性が大きく後退している。仮に追加利下げがあったとしても来年1回程度とみられるため、下支え効果は限定。
ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に向け、各国政府に働きかけを強めることになるだろう(これは中央銀行の権限外であるが)。
・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するにはまだ時間を要する)。
・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。
パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、
(特殊要因)
・米中通商交渉が一部進捗しているが、基本的に覇権争いであるためこの問題が簡単に片付くことはなく、安全資産需要を下支えする見込み。
米国は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決と、それによって民間技術が軍事転用されないようにすることが最終目標であり、根本的な解決には相当な時間がかかる見込み(価格の下支え要因)。
・サウジアラビアがイランに対して報復を行う可能性は、アラムコのIPOを控えていることもあり、現時点ではほぼゼロに近いと見る(金銀価格の下落要因)。
・トルコ軍のシリアへの侵攻は、ロシアの仲介でとりあえず終了。域内に「緩衝地帯」を設けることで合意した。ロシアの支援を受けているアサド政権側もこれを飲まざるを得なくなった模様。
トルコはこの地域にシリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も(金銀価格の上昇要因)。
・英国のEU離脱はEUが離脱期限延長で合意したが、選挙の結果によっては英議会で否決される可能性はあり、金価格の上昇要因に(無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。
(投機・投資要因)
・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。
・金はロングが増加、ショートも増加した。統計の悪化や米中合意の期待など見方が交錯しているためとみられるが、総じてロングの方が大きく、リスク回避的な動きが強まった。しかし、週末の米統計を受けてしばらくはロングの解消売り圧力が強まると考えられる。
銀は景気への懸念からロングが小幅減少、ショートが増加した。
プラチナはロングショートとも増加しているが、金価格の上昇を受けてロングの増加の方が大きかった。パラジウムもロング・ショートとも増加だが、ネットロングは増加している。
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが346,525枚(前週比 +21,239枚)、ショートが55,820枚(+2,168枚)、ネットロングは290,705枚(+19,071枚)、銀が89,241枚(▲1,654枚)、ショートが39,014枚(+629枚)、ネットロングは50,227枚(▲2,283枚)
・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが56,747枚(前週比 +904枚)、ショートが11,218枚(+444枚)、ネットロングは45,529枚(+460枚)、パラジウムが17,915枚(+654枚)、ショートが5,604枚(+428枚)、ネットロングは12,311枚(+226枚)
---≪農産品≫---
【穀物市場動向総括】
シカゴ穀物は高安まちまち。大豆は中国の貿易統計でほぼ季節性通りであるが輸入が増加したことが材料視された。トウモロコシと小麦は小動きで前日比小幅安。
【穀物価格見通し】
シカゴ穀物価格は高安まちまちになると考える。米中合意が近いとの見方が価格を押し上げるが、米統計改善を受けたドル高進行が価格上昇を抑制するため。
米トウモロコシ・大豆の受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、供給に懸念は少なく、価格には下押し圧力が掛かりやすい地合い。
小麦は冬小麦の作況が悪化していることが買い材料視されており、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を下回っていることから、こちらには上昇圧力が掛かりやすい。
米中交渉の行方が穀物価格に大きな影響を与えることは間違いがなく、今後の進捗を見極める必要がある。ただ今のところは来年の選挙を控えて、一旦合意に至ると考えられ、2020年は価格の押し上げ材料になると予想される。
今週発表予定の米需給報告では、トウモロコシ在庫は18億6,119万Bu(前月 19億1,000万Bu)、大豆は4億7,381万Bu(4億7,500万Bu)、小麦は10億878万Bu(10億1,400万Bu)となっており、総じて在庫が減少する見通しとなっており、価格には上昇圧力となろう。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・米国のトウモロコシ・大豆の生産見通し上方修正による需給緩和観測。
・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。
・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。
・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)
・11月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億6,100万Bu(市場予想136億399万Bu、前月137億7,790万Bu)大豆 35億5,000万Bu(35億1,276万Bu、35億5,000万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億6,200万Bu)
・10月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ 19億1,000万Bu(市場予想17億9,989万Bu、前月19億2,900万Bu)大豆 4億7,500万Bu(4億3,189万Bu、4億6,000万Bu)小麦在庫 10億1,400万Bu(10億3,007万Bu、10億4,300万Bu)
・9月末の四半期在庫トウモロコシ 21億1,400万Bu(市場予想24億1,804万Bu)大豆 9億1,300万Bu(9億8,126万Bu)小麦 23億8,500万Bu(23億1,858万Bu)
(特殊要因)
・米中通商交渉は一部合意が近い、と伝えられており足元シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、長期化の可能性は高くシカゴ定期の下落要因に。
・エルニーニョ現象は収束したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。
・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。
・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。
(投機・投資要因)
・トウモロコシはロングが増加、ショートが減少、大豆はショートの積み上がりが顕著、小麦も同様だった。
・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが292,989枚(前週比 +19,391枚)、ショートが294,925枚(▲16,135枚)、ネットロングは▲1,936枚(+35,526枚)、大豆はロングが158,470枚(+4,036枚)、ショートが184,613枚(+44,046枚)、ネットロングは▲26,143枚(▲40,010枚)、小麦はロングが110,399枚(+8,980枚)、ショートが82,659枚(+1,678枚)、ネットロングは27,740枚(+7,302枚)
◆本日のMRA's Eye
「2020年アルミ価格見通し」
2019年のアルミ価格は、年初から春先にかけては中国の景気対策期待で上昇したものの、年末にかけて水準を切り下げる動きとなり、1,800ドルを下回って低迷した状態が続いている。
特に最大用途である中国の住宅セクターの減速が継続していることや、13ヵ月連続でマイナスとなった世界の自動車市場の減速懸念が価格を下押ししている。
このような状態だと需要動向というよりはコスト面が強く意識されるため、製造コストの約4割を占める電力価格動向が重要になってくる。
最大生産国である中国は発電に石炭を用いているため、まずそもそもの中国の景況感が悪化していること、競合燃料である天然ガスが供給過剰で下落していることから結果的にアルミ価格を押し下げる流れとなっている。
しかし、中国は景気テコ入れのために20の景気刺激策を打ち出しており、各地方政府に対して自動車保有規制の緩和ないしは撤廃を促進、資金繰り支援のための金融緩和を強化するなど、徐々に期待需要が回復、自動車販売も底入れ期待が高まっている状況(ただし住宅バブルに繋がる住宅セクターの規制緩和は見送り・凍結であるため、需要面での影響は限定)。
2020年のアルミ需給は中国の需要見通しが、前年比▲3.6%の3,799万9,000トンなることから、全体でも▲3.1%の6,734万トンへの減少が見込まれる。
その一方で供給は、中国の生産が▲6.8%の3,883万トンに減少、全体でも▲5.4%の6,834万4,000トンへの減少が見込まれている。結果、全体の需給は+100万4,000トンの供給過剰となる見込みであり、前年の▲63万トンの供給不足か大幅に需給が緩和する見込み。
インドネシア政府が2019年からニッケルの未処理鉱石の禁輸措置の再開を決定、ボーキサイトに関しても2022年から禁輸の対象となる予定であると報じられたことで供給懸念が生じた(なお直近の中国のインドネシアからの輸入シェアは12.8%)。
これらを受けて投機の買い戻しが入り価格が上昇してもおかしくないが、やはり世界景気が減速している状態はまだ続く見込みであること、地政学的な問題がそう簡単に解決するとは思えないことから、投機の買い戻しが一巡したところで頭重い推移になると予想する(年内~年明け)。
世界的に循環的な景気減速は恐らく2020年の春から夏頃までは続きそうであること、米大統領選が視野に入り始める春頃から、米大統領候補の減税や公共投資などの「リップサービス」が市場参加者のマインドを改善すると予想されること、中国・欧州の財政出動を伴う経済対策実施、などの影響からしばらく低迷した後、春先頃から緩やかながらも価格は上昇に転じると予想。
ただし、最大生産国である中国の主要発電燃料である石炭価格が、天然ガス・LNG価格の低迷で同様に低水準で推移すると予想されることから、上値も重く、価格回復の足取りは緩やかなものになると予想。
2020年のアルミ平均価格は1,831ドル/トン(前回見通し比▲156ドル/トン)と下方修正、2021年についても価格見通しは下方修正だが、供給不足状態が続く見込みであること、インドなどの新興国の構造的な需要増加から予想価格は1,938ドル/トン(▲213ドル/トン)と2020年比で上昇すると予想。
上記見通しのリスクは、上昇リスクが米中通商協議が予想外に合意(根本解決)する場合、生産過程で発生する環境汚染物質(赤泥)の問題で、アルミナの供給途絶が発生する場合、 インドネシアのボーキサイト輸出規制の前倒し実施、米景気のが予想以上に減少し米大統領選挙をにらんだ政権からの圧力で、米利下げが予想以上のペースで行われること、その余地はほとんどないが米国が財政出動に舵を切ること、中国・欧州の財政出動を伴う景気対策の規模拡大があった場合など。
下落リスクは米中通商協議がさらに悪化すること、欧州経済の混乱で中国の需要の減速が加速すること、中東で戦争が開戦となり、経済不安が拡大した場合などが想定される。
◆主要ニュース
・Q319日本実質GDP改定 前期比+0.4%(速報比+0.3%、前期確定+0.5%)、前期比年率+0.6%(+0.3%、+1.8%)
GDPデフレータ 前年比+0.6%(±0.0%、+0.4%)
民間消費支出 前期比+0.5%(+0.1%、+0.6%)
民間住宅+1.6%(+0.2%、+0.5%)
民間企業設備投資+1.8%(+0.9%、+0.9%)
公的需要+0.7%(+0.1%、+1.6%)
・10月日本経常収支(季節調整済) 1兆7,322億円(前月1兆4,852億円の黒字)
(季節調整前)1兆8,168億円の黒字(1兆6,129億円の黒字)
貿易収支 2,540億円の黒字(11億円の黒字)
輸出 6兆4,094億円(6兆2,699億円)
輸入 6兆1,902億円(6兆3,410億円)
サービス収支 825億円の黒字(12億円の黒字)
第一次所得収支 1兆5,386億円の黒字(1兆7,662億円の黒字)
・11月日本 銀行貸出動向 銀行計 前年比+2.3%(前月+2.2%)、含信金 +2.1%(+2.0%)
・11月日本景気ウォッチャー調査 現状判断DI 39.4(前月36.7)、先行き判断DI 45.7(43.7)
・11月中国貿易収支 387.3億ドルの黒字(前月435.4億ドルの黒字)
輸出総額 前年比▲1.1%(▲0.8%)
輸入総額+0.3%(▲6.2%)
輸出年初来ベース
対米国 前年比 ▲12.5%(▲11.3%)
対欧州 +4.5%(+5.1%)
対日本 ▲2.6%(▲2.1%)
対アセアン諸国 +11.5%(+10.4%)
輸入
対米国 前年比 ▲23.3%(▲25.4%)
対欧州 +0.3%(+0.1%)
対日本 ▲6.9%(▲7.6%)
対アセアン諸国 +2.8%(+1.9%)
・10月独経常収支 227億ユーロの黒字(前月249億ユーロの黒字)
貿易収支215億ユーロの黒字(212億ユーロの黒字)
輸出 前月比+1.2%(+1.5%)、輸入±0.0%(+1.2%)
・Q319独労働コスト 前期比+0.9%(前期+0.6%)、前年比+3.1%(+3.4%)
・12月ユーロ圏センティックス投資家信頼感 +0,7(前月▲4.5)
・中国・新疆ウイグル人自治区ショハラト・ザキル首席、「米国によるウイグル人権方案は、国際法に違反。」
・中国、3年以内に外国製のコンピュータとソフト撤去命令。2,000万~3,000万台の機器の切り替えが必要。
・北朝鮮 金英哲朝鮮労働党副委員長、「米トランプ大統領が不適切で危険な発言を続ければ、金正恩労働党委員長は、トランプ氏に対する評価を変える可能性がある。トランプ大統領をおおいぼれ、イライラした老人と呼ばざるを得ない時が来るかもしれない。」
・フランスのゼネスト、4日目に突入。
・中国政府、米国産の大豆や豚肉に対する追加関税免除を延期。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・サウジアラビア、2020年の歳入見通しを9,170億リヤルから、8,330億リヤルに引き下げ(62~63ドル前提)。原油収入5,130億リヤル(6,200億リヤル)、軍事費1,820億リヤル(前年1,980億リヤル)
・南アフリカEskom、6,000MWの供給を削減。Medupi発電所の計画停電。南アフリカの発電容量は2018年時点で51,309 MW(火力: 46,776 MW、水力: 661 MW、その他再生可能エネルギー: 3,872 MW)、6,000MWは11.7%に相当
・米国とイラン、拘束者をスイスで相互開放。
・11月中国石炭輸入 2,078.1万トン(前月2,568.5万トン)
輸出 79万トン(34万トン)
・11月中国原油輸入 4,574万トン、1,128万バレル/日(前月4,551万トン、1,086万バレル/日)
輸出 5万トン(NA)
精製石油製品輸入 240万トン(222万トン)
輸出 731万トン(500万トン)
※原油1トン=7.4バレルとして算出。石油製品は種類の内訳が不明のためバレル換算していない。
【メタル】
・11月の独電気自動車販売は57,533台と、ノルウェー(56,893台)を上回る。
・江西銅業股分有限公司、First Quantum Mineralsの株18%を取得へ。
・10月のCodelcoの銅生産 前月比+6.3%の154,500トン。ほぼすべての部門で増産。
・Rio Tinto、Alcoa、ゼロ・carbonアルミをアップルに提供。
・インドネシア加工・製錬事業者協会(AP3I)、来年1月1日から政府がニッケル鉱石の輸出を禁止することに伴い、5年以内にインドネシアがニッケル銑鉄(NPI)やフェロニッケルなど、各種ニッケル製品の最大の生産国になると予測。
・11月中国銅輸入 48万トン(前月 43万トン)
銅鉱石・精鉱 216万トン(191万トン)
アルミ(未加工品含む) 輸出 45万トン(43万トン)
・11月中国鉄鉱石輸入 9,065万トン(前月9,286万トン)
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ +4.11%/ +29.63%
2.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +2.91%/ +24.99%
3.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ +2.10%/ ▲22.37%
4.TCM天然ゴム ( その他農産品 )/ +1.79%/ +2.67%
5.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +1.63%/ +39.82%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲4.03%/ ▲23.81%
69.ビットコイン ( その他 )/ ▲2.22%/ +98.79%
68.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲1.97%/ ▲37.32%
67.SHF 銀 ( 貴金属 )/ ▲1.86%/ +11.25%
66.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲1.84%/ ▲1.60%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :27,942.56(▲72.50)
S&P500 :3,140.60(▲5.31)
日経平均株価 :23,430.70(+76.30)
ドル円 :108.63(+0.05)
ユーロ円 :120.19(+0.10)
米10年債利回り :1.83(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.31(▲0.02)
日10年債利回り :▲0.00(+0.00)
中国10年債利回り :3.20(+0.00)
ビットコイン :7,303.77(▲165.71)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :20.88(▲0.02)
エネルギー :29.99(+1.24)
ベースメタル :15.87(▲0.28)
貴金属 :12.88(▲1.79)
穀物 :16.09(+0.18)
その他農畜産品 :23.47(▲0.02)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :33.32(+0.04)
Brent :26.04(▲0.07)
米天然ガス :55.34(+8.25)
米ガソリン :31.47(+0.03)
ICEガスオイル :18.65(▲0.45)
LME銅 :11.36(+0.75)
LMEアルミニウム :14.03(▲0.03)
金 :12.79(+0.46)
プラチナ :16.97(▲0.67)
トウモロコシ :14.76(▲0.2)
大豆 :12.79(+0.46)
【エネルギー】
WTI :59.01(▲0.19)
Brent :64.20(▲0.19)
Oman :64.60(▲0.51)
米ガソリン :165.53(+0.79)
米灯油 :194.45(▲0.76)
ICEガスオイル :586.25(▲1.00)
米天然ガス :2.24(▲0.09)
英天然ガス :38.28(▲0.77)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :64.20(▲0.19)
SPO380cst :248.01(+2.18)
SPOケロシン :76.39(▲0.31)
SPOガスオイル :75.96(▲0.43)
ICE ガスオイル :78.69(▲0.13)
NYMEX灯油 :194.36(▲0.43)
【貴金属】
金 :1460.32(+0.15)
銀 :16.59(+0.02)
プラチナ :895.15(▲1.57)
パラジウム :1882.11(+2.16)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,012(+112:27C)
亜鉛 :2,227(▲15:6B)
鉛 :1,880(▲19:14C)
アルミニウム :1,762(+21:4B)
ニッケル :13,275(▲205:75C)
錫 :17,080(+250:40B)
コバルト :34,331(▲17)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6081.50(+56.50)
亜鉛 :2238.00(▲1.00)
鉛 :1897.00(+8.00)
アルミニウム :1760.50(▲2.00)
ニッケル :13320.00(▲170.00)
錫 :17100.00(+55.00)
バルチック海運指数 :1,558.00(▲17.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :92.19(+3.64)
NYMEX鉄鉱石 :92.04(+3.48)
NYMEX原料炭スワップ先物 :139(▲1.00)
上海鉄筋直近限月 :4,000(+200)
上海鉄筋中心限月 :3,492(+75)
米鉄スクラップ :272(▲1.00)
【農産物】
大豆 :897.25(+7.75)
シカゴ大豆ミール :296.70(▲0.70)
シカゴ大豆油 :31.36(+0.35)
マレーシア パーム油 :2802.00(+45.00)
シカゴ とうもろこし :365.75(▲0.75)
シカゴ小麦 :532.00(▲0.50)
シンガポールゴム :165.90(▲0.20)
上海ゴム :12940.00(+35.00)
砂糖 :13.38(+0.20)
アラビカ :127.30(+3.60)
ロブスタ :1409.00(+7.00)
綿花 :65.38(+0.38)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :60.00(▲1.13)
シカゴ生牛 :120.18(▲0.03)
シカゴ飼育牛 :141.53(▲0.03)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。