米中対立激化で非鉄金属売られる
- MRA商品市場レポート for PRO
2019年11月21日 第1644号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「米中対立激化で非鉄金属売られる」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は、貴金属や穀物、畜産品、非鉄金属価格が下落し、エネルギーやその他の農産品などが上昇した。どちらかといえばテクニカルな売買による値動きという色彩が強い。
米中協議が進展するとの期待がたかまっていたが、昨日米上院は香港人権法案を満場一致で可決しており、それに対して中国が制裁を行うことを表明した。
これにより景気の先行きに再び黄色信号が灯ることになり、基本的に中国の消費シェアが高い商品が物色される流れとなった。
エネルギーもこの流れであれば売られてもおかしくないのだが、米石油統計前後でも然程下落しなかったため、一目均衡表の雲の下限でサポートされたことから、テクニカルに買戻しが入ったとみられる。
【本日の価格見通し総括】
本日も引き続き、米中協議を巡る発言に左右され、神経質な推移になると考える。重要な手がかり材料としては、本日発表されるOECDの景気見通し。
9月に公表された見通しでは2019年の経済見通しは2.9%、2020年は3.0%。貿易摩擦の激化で景況感と投資が悪化するため基本的には成長ペースは極めて緩慢なものになると予想している。
混迷を続ける米中協議や、香港情勢、欧州情勢をどのように評価するかに注目したい。
また小さいニュースであるが、中国国家統計局は法律に基づき2018年のGDPを修正するとし、過去のデータについても見直しを行うと報じられている。
実際に修正された場合、中国の統計が下方修正される可能性は高いと予想され、修正幅が非常に大きかった場合、多くのリスク資産、特に非鉄金属価格に下押し圧力が強くかかる展開が予想される。
なお、リスクが顕在化して信用リスクにまで波及、世界中でクレジットクランチが発生して不況入りが起きるとするならば、それはシングルファクターではなく、複数の材料が同時に発生することによるものと予想される。
その意味では、かねてから言われている中国の実態が、統計からは乖離していることが明らかになることが引き金になる可能性はあり得る。
【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】
昨日、10月の貿易統計が発表され、4ヵ月ぶりに貿易収支は黒字に転じた。ただし前向きな黒字確保というよりも、輸入が何日▲14.8%と大幅に減速したことによる黒字確保であり、どちらかといえば後ろ向きな貿易黒字である。
10月の輸入減少は10月の消費税上げの駆け込み需要の反動、台風などの被害、昨年9月に日本を襲った台風21号の影響で関西空港が閉鎖され、10月に再開したことによる反動で昨年の水準が高かったことによる。
地域別にみてみてもどこの地域が良い、ということもなく基本的に交易活動は低迷していると感がえられる。ただこれは米国の中国に対する制裁や保護主義政策の推進によるもの、というよりは景気の循環的な減速によるもの、と整理した方が適切だろう。
やや前向きな材料とすれば、アジア向けの半導体等電子部品の輸出に底入れ感が強まっている点である。在庫調整の一巡により緩やかながら回復基調が続くと期待される。
ただ、中国はルイスの転換点を迎えて以降、製造業向けの需要が増加し難い。基本的にはインフラ投資向けの需要がけん引していくと考えられるが、それに関しても公共投資の予算や規模も限定されることから、使途や規模は限定されると考えておくべきである。
【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】
(マクロ要因)
・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。
・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.2%→+3.0%)ている。2020年も+3.4%(▲0.1%)に引き下げた。
ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。
・FRBの利下げに打ち止め感が広がっている。トランプ大統領はヒートアップしているようだが、恐らく年内あったとしてお後1回程度(▲25bp程度)の利下げに留まる(金融面の価格下支え期待の後退)。
・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q219の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.4%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。
※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。
・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。
(特殊要因)
・米中通商交渉は一進一退でどのような着地になるかよくわからないが、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護を中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。
通商面のみならず、資本フローの規制や、人権問題への制裁なども加わっており、通商面で妥協があったとしてもその他の分野での制裁発動の可能性は高い。
・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。
・中東情勢が再度緊迫していることで、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、サウジアラビアがイランに対して報復攻撃を行うなどのリスク(原油は上昇要因、その他の景気循環銘柄には下落要因。ただしアラムコIPOを控えてその可能性は大きく低下)。
トルコのシリア侵攻により、域内経済並びに欧州経済(難民流入による混乱)が下押しされるリスク。
・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。ジョンソン首相は英議会の休会を決定、ハードブレグジットはほぼメインシナリオに。また、EUにブレグジットの影響が波及するリスク(下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。
・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。
(投機・投資要因)
・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油市場動向総括】
原油価格は上昇した。米石油統計は市場予想よりも弱い内容だったものの、クッシング在庫の減少で過去5年平均を下回ったことや、チャート上の節目となる一目均衡表の下限でサポートされたことで、水準を切り上げた。どちらかといえばテクニカルな価格上昇だったといえる。
【原油価格見通し】
原油価格は、米主要統計の改善で米国の景気後退入り回避期待が高まっていることが価格の上昇要因となるが、米中の対立が通商面を越えて拡大する可能性があることが価格を下押しすること、欧米の景況感格差からドル高が進行しやすいことから、上値は重い展開になると予想する。
米中交渉の先行きや、英国の解散総選挙やブレグジットを巡る動向は最終合意に至るまでは買い材料にも、売り材料にもなる。トランプ大統領は米中合意は間近だが、合意しなければ関税を大幅に引き上げるとプレッシャーをかけている。このことは最終的には部分合意で妥結するとの見方を強める一方、交渉がそれほど簡単なものではないことを示唆している。
FOMCは、一旦利下げを打ち止めの方針のようだが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。
仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると見られる。財政出動は使途にもよるが、エネルギー価格の押し上げ要因になるだろう。
実際、11月12日には米クドロー国家経済会議委員長が、「トランプ大統領から第2弾の減税の指示があった」と発言しており、2020年度予算に減税が盛り込まれる可能性が高まった。財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。
なお、景気の減速に伴う価格下落(歳入確保のための増産)やサウジアラビアに対するドローン攻撃(テロの低コスト化・大規模化に伴う供給途絶)の影響で、供給側(特にOPECプラス)の動きが価格に与える影響は小さくなくなっている。
米中協議は一進一退が続いているため、短期的には売り材料にも、買い材料にもなるが、「どちらかが倒れるまで形を変えながら継続する」類のイベントであり、中国の覇権国への野望を挫くまで米国の制裁は続くと考えられるため、基本的には売り材料である。実際、今回の香港人権法案で制裁対象は拡大している。
通商協議が進捗したとしても、「景気にプラスではなく、制裁前の状態に戻るだけ」であり、世界景気が減速している中では合意があったとしても大きな価格上昇要因にはならないと考えている。
なお、ニュースでは材料にされているが、12月のOPEC総会で減産に積極的なのは、就任以降の実績が乏しく、IPOを控えているサウジアラビア程度であり、ロシアは減産継続で応分の協力はするだろうが、恐らく減産拡大は見送られ、売り材料になるとみている。
現在、エクアドルの脱退などを受けてブラジルをOPECに加盟させるよう、サウジアラビアは動いている。ブラジルの生産量は268万バレルであり、実際に加盟し、OPECの方針に従うならばその影響力は小さくはない。
【石炭市場動向総括】
石炭先物市場は小幅に上昇した。目立った手がかり材料はないが、季節的な需要増加で天然ガス価格も上昇していることや、中国の年内の輸入減速観測を受けて価格はもみ合っている。
【石炭価格見通し】
石炭価格はピークシーズン入りしていることから、上昇すると見るが、欧州地域の景況感悪化に伴う天然ガス価格の低迷、中国統計の減速、中国政府の石炭輸入制限(年間2億8,000万トン)を受けた輸入需要の減速を受けて低水準を維持する見込み。
バルチック海運指数は、予想通り下落傾向が顕著になってきた。中国政府が特に石炭に関して輸入量を前年並みにする目標であることが影響している。
10月の中国の貿易統計では、石炭輸入は燃料炭・原料炭合計で2,569万トンと前月から減速。ただし、依然として過去5年の最高水準を上回っている。
同時に10月の中国石炭生産が、同じ時期の過去5年の最高を上回る3,249万トンとなった。中国の国内供給は増加している状況であり、貿易市場は緩和する見込み。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・景気が減速する中でのOPECプラスの減産継続は、その効果が限定されはするものの一定の下支え効果をもたらす見込み。
しかし、現時点で減産に積極的なのは、IPOを控えてアラムコの評価額を上げたいと考えているサウジアラビア程度であり、最大のパートナーとなったロシアは減産継続では協力するだろうが、減産幅の拡大はないだろう。
むしろ価格が下落を始めた時に、歳入確保のために増産バイアスがかかることによる下落リスクを警戒したほうが良いかもしれない。
・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。
・世界2位の消費国である中国の輸入増加。10月の貿易統計では、原油の輸入が4,551.1万トン(1,086万バレル/日)と過去最高を更新。
今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。
・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。
・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。
・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。
(特殊要因)
・サウジアラビアの石油施設の修復は完了したと報じられているが、実際は完了していないとの報道もあり、供給面は実態が把握される中で上昇リスクになる可能性。
なお、サウジアラビアがイランに対して報復を行う可能性は、アラムコのIPOを控えていることもあり、現時点ではほぼゼロに近いと見る。
また、今回のドローン攻撃でテロが低価格化・大規模化することが分かったことは、中東の供給途絶リスクを従来よりも高めるものであり、従来以上に中東情勢は重要に。
・ブラジルのOPEC加盟。ブラジルの生産量は2018年で268万バレルであり、世界供給の2.8%に達するため、実際に加盟し、サウジアラビアの意向に沿う生産を行うならば、OPECの価格支配能力は若干の改善が見込まれる。
仮に期待通り来年の世界景気が夏頃にかけて底入れした場合、生産制限は顕著な価格上昇要因となり得るため、その点は注意。
・イエメンでの内戦が一時停戦となったことは、地政学的なリスクを低減させ、原油価格の下落要因に。
・トルコ軍のシリアへの侵攻は、ロシアの仲介でとりあえず終了。域内に「緩衝地帯」を設けることで合意した。ロシアの支援を受けているアサド政権側もこれを飲まざるを得なくなった模様。
トルコはこの地域にシリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も。
・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。
(投機・投資要因)
・WTIはロングが減少、ショートも減少したがショートの減少幅が大きかったためネットロングは増加している。Brentはロングが増加、ショートが減少している。
サウジアラビアの求心力は低下しているが、ブラジルのOPEC加盟の可能性がショートの買戻しを誘っているようだ。
・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが539,082枚(前週比 ▲25,944枚)、ショートが114,485枚(▲44,401枚)、ネットロングは424,597枚(+18,457枚)、Brentが380,460枚(前週比+20,229枚)、ショートが69,699枚(▲8,180枚)、ネットロングは310,761枚(+28,409枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属市場動向総括】
LME非鉄金属価格はアルミや錫などが上昇したが、その他は下落した。米中協議が12月中に妥決しない可能性がある、との報道や、米国上院が香港人権法案を全会一致で可決、これに対して報復を行う、と中国側が表明したことで、景気の先行き懸念が強まったことが背景。
また、目立っていないがLME指定倉庫在庫が増加に転じていることも、価格を下押しした。
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は、中国の重要統計の減速が鮮明となり、公共投資などの経済対策の効果が十分に顕在化していないことから、下値余地を探る動きになると考える。
米中交渉の先行きや、英国の解散総選挙やブレグジットを巡る動向は最終合意に至るまでは買い材料にも、売り材料にもなる。
トランプ大統領は米中合意は間近だが、合意しなければ関税を大幅に引き上げるとプレッシャーをかけている。このことは最終的には部分合意で妥結するとの見方を強める一方、交渉がそれほど簡単なものではないことを示唆している。
FOMCは、一旦利下げを打ち止めの方針のようだが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。
仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めていることが、非鉄金属においても今後の大きなテーマとなると見られる。財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。
実際、11月12日には米クドロー国家経済会議委員長が、「トランプ大統領から第2弾の減税の指示があった」と発言しており、2020年度予算に減税が盛り込まれる可能性が高まった。財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。
米中協議は一進一退が続いているため、短期的には売り材料にも、買い材料にもなるが、「どちらかが倒れるまで形を変えながら継続する」類のイベントであり、中国の覇権国への野望を挫くまで米国の制裁は続くと考えられるため、基本的には売り材料である。実際、今回の香港人権法案で制裁対象は拡大している。
通商協議が進捗したとしても、「景気にプラスではなく、制裁前の状態に戻るだけ」であり、世界景気が減速している中では合意があったとしても大きな価格上昇要因にはならないと考えている。
中長期的には非鉄金属価格は上昇すると予想されるが、結局、中国、欧州の景気がどこで底入れするのか、米国経済の後退がいつから始まるのか、に依拠する。
来年の大統領選挙を睨んで米国がどのような対応をしてくるかが不透明であるが、こうした政策期待効果を除けば、底入れ感が出てくるのは来年の春~夏にかけてになると見ている。中期的には現状水準でのもみ合いが続こう。
再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。
ニッケルに関しては、インドネシアの輸出規制は再び解除され、9社の輸出が認可された。これにより供給懸念が後退するため、景況感の悪化と相まって年内、ニッケル価格はむしろ下落余地を探る流れとなっている。
来年1月以降は供給が停止されるが、前倒し輸出が加速したため、品薄感が意識されて価格が上昇するのは4月以降の可能性が高まった。というのも、今年9月までで2018年と同じ数量をすでに中国が輸入したためだ。
処理量に大きな変化がなければすでに3ヵ月分、余分に調達が済んでいることになる。ただし、実際にインドネシアの供給が止まれば、シェアはニッケル含有分ベースで25%であるため、原油に例えれば、サウジアラビアとロシアの供給が同時に停止するぐらいのインパクトがある話であり、やはり価格には上昇圧力が掛かりやすい。
2014年の規制開始後を参考にすると、景気底入れ期待がたかまる4月頃から再び価格が上昇し、来年7月頃(下期)からの下落が予想される。
なお、足元はチャートの節目を次々と下抜けしており、14,200ドルの200日移動平均線が次の下値として意識されている。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・最大消費国である中国の製造業PMIは再び悪化し、閾値の50を下回る状態が続いている。規模別でみた場合、大企業と中小企業の景況感が悪化した(価格を下押し)。
在庫水準はやや低下しているものの、新規受注の落ち込みの影響で、新規受注/完成品在庫レシオは若干低下している。
・1-10月期中国工業生産は、前年比+5.6%(1-9月期+5.6%)、10月+4.7%(前月+5.8%)と月次ベースで急速に減速した(フロー需要の減少=価格下落要因)。
・1-10月期中国固定資産投資は、前年比+5.2%の51兆880億元(1-9月期+5.4%の46兆1,204億元)、公的セクター+7.4%(+7.3%)、民間セクター+4.4%(+4.7%)と規模の大きな民間セクターの減速が鮮明になっている(ストック需要の減速=価格下落要因)。
・1-10月期中国不動産開発投資は、前年比+10.3%の10兆9,603億元(1-9月期+10.5%の9兆8,008億元))と高い水準を維持してはいるが伸びは減速している。
中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。
・10月の銅地金・製品の輸入量は43万1,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準。また、銅鉱石の輸入も191万4,000トンとやはり過去5年の最高水準を上回った。公共投資(電線網整備)などの公的需要が需要を下支えしている模様。
・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)
・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。
・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。
・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。
(特殊要因)
・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。
・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、Valeの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。
HydroのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。
インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。
・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展し、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)
・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。
(投機・投資要因)
・11月15日付のLMEポジションは全ての金属でロングポジションが減少し、ショートポジションが増加し、明確に弱気なポジション取りとなっている。景気の先行きへの懸念と供給増加が意識された形。
投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲20.5億ドル(前週▲1.4億ドル)と売り越し幅を再び拡大した。売り越し額の増加率は+1,387.7%。
買い越し枚数はトン数換算ベースで▲472千トン(+36千トン)と再び売り越しに転じた。ネット売り越しの増加率は▲1,427.5%。
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料市場動向総括】
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は下落、中国鉄鋼製品先物価格は直近限月・中心限月とも上昇した。
大気汚染防止のための生産抑制による鉄鋼製品価格の上昇を受けて、鉄鉱石価格は強含み推移している。また、豪州の鉄鉱石週次輸出は1,730万トンに減少したことも材料視されたようだ。
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は、最大消費国である中国の公共投資に伴う需要増加や、冬場の鉄鋼製品生産規制から鉄鋼製品価格も上昇が予想されることValeの販売調整で価格は底堅い推移になると考える。
冬場の鉄鉱石価格は季節的には強含みやすいものの、冬場の鉄鋼製品生産規制により鉄鋼向け需要が減速するため(短期的には鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鉱石価格の上昇要因となる)、今年はやや軟調な推移になると予想される。
米中協議に関しては合意に至るまで強弱材料両方になり得るが、米中の対立は覇権争いであり簡単に終了するわけではなく、やはり長期的な視点からは中国景気にマイナスとなり、売り材料と考えるべきだろう。
原料炭も鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、同様に下値余地を探りやすくなっている。回復があるとすれば、その他の景気循環系商品と同様、春~夏にかけてになるのではないか。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・直近の中国鉄鋼業PMIは41.3(前月44.2)と減速。新規受注の低迷(37.9→31.6)が続いていること、生産が減速したこと(43.2→42.3)が影響した。
生産減少の影響で、完成品在庫は45.6→36.8と大きく減少、原材料在庫も49.0→37.9と低下した。この結果、新規受注在庫レシオは完成品・原材料とも上昇しており、需要の減速がありながらも需給がタイト化していることを伺わせる内容。
しかし、Valeの生産は年末から年明けにかけて回復の見込みであり、供給面は需給緩和に寄与しやすく、鉄鋼製品・鉄鉱原料の需給は緩和方向に。
・1-10月期中国工業生産は、前年比+5.6%(1-9月期+5.6%)、10月+4.7%(前月+5.8%)と月次ベースで急速に減速した(フロー需要の減少=価格下落要因)。
・1-10月期中国固定資産投資は、前年比+5.2%の51兆880億元(1-9月期+5.4%の46兆1,204億元)、公的セクター+7.4%(+7.3%)、民間セクター+4.4%(+4.7%)と規模の大きな民間セクターの減速が鮮明になっている(ストック需要の減速=価格下落要因)。
・1-10月期中国不動産開発投資は、前年比+10.3%の10兆9,603億元(1-9月期+10.5%の9兆8,008億元))と高い水準を維持してはいるが伸びは減速している。
中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。
10月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は478万2,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。
また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入もほぼ季節性通り減少し、2,569万トンとなった。ただし、以前として過去5年の最高水準を上回っている。
今後に関しては輸入規制が導入されると見られるため、11月以降の石炭輸入は減少すると予想される。
・中国の10月の鉄鉱石の輸入量は前月からは減速したが9,290万トンと高い水準を維持した。一方で、今年の鉄鉱石生産は3月以降漸増しており、7,804.8万トンに達しているため、冬場の鉄鋼製品生産規制がやはり実施される見込みであることを考えると、輸出市場における鉄鉱石需給は緩和する可能性が高い。
石炭輸入は燃料炭・原料炭合計で季節性通り減少し、2,569万トンとなった。ただし、以前として過去5年の最高水準を上回っている。
今後に関しては輸入規制が導入されると見られる、国内生産も10月時点で3億2,487万トンと過去5年の最高水準を大きく上回っている。このことから、11月以降の石炭輸入は減少すると予想される。
・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲58.4万トンの899.5万トン(過去5年平均913.9万トン)と例年を下回った。
なお、10月の鉄鋼製品の輸出は478万2,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。
中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲140万トンの1億3,035万トン(過去5年平均1億1,643万トン)、在庫日数は▲0.3日の28.1日(過去5年平均 28.7日)と再び在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化している。
・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。
・Vale、Rio Tintoの生産目標引き下げによる供給減速。
(特殊要因)
・中国政府がシャドーバンキングを含む金融市場の緩和を進めているほか、地方政府にも債券発行枠の拡大を認めるなど、景気テコ入れのため公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。
(投機・投資要因)
・特になし。
---≪貴金属≫---
【貴金属市場動向総括】
金・銀価格はもみ合い、ほぼ前日と変わらず。米中協議の進捗期待と同時に、米上院が香港人権法案を可決したことで、安全資産需要が高まったことが相殺しあった形。PGMも強弱材料が混在する形でもみ合った。
【貴金属価格見通し】
金価格は、中国の経済統計の悪化や、米中交渉の停滞、香港人権法案可決などを材料に再び買い戻されると考える。
ただし現在の経済環境では米国が追加利下げを行う可能性は高くなく、利下げを決定したFOMC議事録でも追加利下げに関しては慎重なスタンスであることが確認されたことから、上昇余地も限られる。
同時に低金利政策の継続も間違いがなく、下値余地も限定され、結果的に高値圏での推移になると考える。
米中の対立や英国のEU離脱がソフトであっても、ハードであっても景気を下押しすること、香港情勢、シリアを含む中東情勢の不安定さも価格押し上げに寄与すると予想する。
米中協議は一進一退が続いているため、短期的には売り材料にも、買い材料にもなるが、「どちらかが倒れるまで形を変えながら継続する」類のイベントであり、中国の覇権国への野望を挫くまで米国の制裁は続くと考えられるため、基本的には売り材料である。実際、今回の香港人権法案で制裁対象は拡大している。
通商協議が進捗したとしても、「景気にプラスではなく、制裁前の状態に戻るだけ」であり、世界景気が減速している中では合意があったとしても大きな価格下落要因にはならないと考えている。
仮に地政学的リスクが解消した場合、実質金利を基にすれば、200ドル程度(地政学リスクプレミアム)金価格は下落することになる。
銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)が再び上昇を始めており、金銀レシオの上昇圧力(銀は対金で割安に)となりやすい状況になっている。
それでも現在の金銀レシオは在庫レシオで見た場合やや高すぎで、金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられる。
PGM価格は金銀価格が高値圏で推移するとみられることから、同様に高値圏での推移になると予想する。ただし、世界の自動車販売の前年比減速が底入れした感じが出てきていることから対金銀で割高に推移すると考える。
中国の自動車販売が15ヵ月連続のマイナスとなるなど、需給ファンダメンタルズ面は需要面の減速が懸念される状況。世界自動車販売も13ヵ月連続の前年比マイナス。
しかしいずれも前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めており、需要面でも価格が押し上げられる可能性は高まっている。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・FRB・ECBの金融緩和期待が高まっているが、FRBは10月のFOMCで▲25bpの利下げを実施。当面利下げは行われない見込み。さらなる追加利下げはあっても後1回程度とみられるため、下支え効果は限定か。
・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するにはまだ時間を要する)。
・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。
パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、
(特殊要因)
・米中通商交渉が一部進捗しているが、基本的に覇権争いであるためこの問題が簡単に片付くことはなく、安全資産需要を下支えする見込み。
米国は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決と、それによって民間技術が軍事転用されないようにすることが最終目標であり、根本的な解決には相当な時間がかかる見込み(価格の下支え要因)。
・サウジアラビアがイランに対して報復を行う可能性は、アラムコのIPOを控えていることもあり、現時点ではほぼゼロに近いと見る(金銀価格の下落要因)。
イエメンでの内戦が一時停戦となったことも、地政学的なリスクを低下させ、金銀価格の下落要因に。
・トルコ軍のシリアへの侵攻は、ロシアの仲介でとりあえず終了。域内に「緩衝地帯」を設けることで合意した。ロシアの支援を受けているアサド政権側もこれを飲まざるを得なくなった模様。
トルコはこの地域にシリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も(金銀価格の上昇要因)。
・英国のEU離脱はEUが離脱期限延長で合意したが、英議会で否決される可能性はあり、金価格の上昇要因に(無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。
(投機・投資要因)
・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。
・金はロング・ショートとも減少しているが、ロングの減少幅の方が大きい。利下げの打ち止め感や景気の底入れ期待、米中協議の進捗期待が材料となった。銀はよりネガティブでショートは増加している。
ただし、米中協議はやはり進捗していないと考えられるため、今週末の統計ではロングが増加すると予想される。
PGMはパラジウムにロングの手仕舞いが起きているが、プラチナの方がより弱気に傾いている。
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが323,189枚(前週比 ▲21,402枚)、ショートが56,123枚(▲8,640枚)、ネットロングは267,066枚(▲12,762枚)、銀が89,327枚(▲7,847枚)、ショートが51,963枚(+2,786枚)、ネットロングは37,364枚(▲10,633枚)
・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが56,377枚(前週比 ▲3,827枚)、ショートが17,918枚(+3,409枚)、ネットロングは38,459枚(▲7,236枚)、パラジウムが16,595枚(▲1,336枚)、ショートが5,489枚(▲152枚)、ネットロングは11,106枚(▲1,184枚)
---≪農産品≫---
【穀物市場動向総括】
シカゴ穀物はトウモロコシと大豆が下落した。米国上院が満場一致で香港人権法案を可決、中国はこれに対して報復すると発言したことで、結局穀物輸出が停滞すると見られたことが材料。
小麦は冬小麦(HRW、SRW、DNS、NS)の作況が悪化していることが買い材料視されている。シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を下回っており、需給はタイト化、カンザス小麦(HRW)とのスプレッドは拡大している。
【穀物価格見通し】
シカゴ穀物価格は高値圏でもみ合うものと考える。かねてから米国の生産は下振れリスクが意識されてきたが、生産地の天候条件が不安定で収穫に遅れが出ていることが価格を押し上げるが、やはり米中協議が難航していると伝えられていることが価格を下押しするため。
小麦は冬小麦の在庫水準が低いため、過去5年の最高水準で推移すると予想される。年末にかけては6ドル台の可能性も排除できない。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・米国のトウモロコシ・大豆の生産見通し上方修正による需給緩和観測。
・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。
・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。
・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)
・11月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億6,100万Bu(市場予想136億399万Bu、前月137億7,790万Bu)大豆 35億5,000万Bu(35億1,276万Bu、35億5,000万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億6,200万Bu)
・10月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ 19億1,000万Bu(市場予想17億9,989万Bu、前月19億2,900万Bu)大豆 4億7,500万Bu(4億3,189万Bu、4億6,000万Bu)小麦在庫 10億1,400万Bu(10億3,007万Bu、10億4,300万Bu)
・9月末の四半期在庫トウモロコシ 21億1,400万Bu(市場予想24億1,804万Bu)大豆 9億1,300万Bu(9億8,126万Bu)小麦 23億8,500万Bu(23億1,858万Bu)
(特殊要因)
・米中通商交渉は一部合意が近い、と伝えられており足元シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、長期化の可能性は高くシカゴ定期の下落要因に。
・エルニーニョ現象は収束したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。
・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。
・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。
(投機・投資要因)
・トウモロコシはロング、ショートとも増加したが、ショートの増加が顕著だったため、ネットロングは減少、大豆は米中協議への懸念からロングが減少し、ネットロングも大幅な減少となった。
小麦はロング・ショートとも増加、ネットロングが小幅に増加している。
・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが304,283枚(前週比 +3,452枚)、ショートが336,269枚(+9,451枚)、ネットロングは▲31,986枚(▲5,999枚)、大豆はロングが166,948枚(▲11,368枚)、ショートが98,614枚(+12,231枚)、ネットロングは68,334枚(▲23,599枚)、小麦はロングが103,304枚(+4,559枚)、ショートが91,925枚(+4,298枚)、ネットロングは11,379枚(+261枚)
◆本日のMRA's Eye
「2020年非鉄金属見通し総括」
非鉄金属の最大消費国である中国は、経済統計を見るに2010年~2011年頃、ちょうど人口ボーナスがピークを迎えたタイミングで、地方の農村に存在した過剰労働力が都市部の工場などに吸収された時点を指す、「ルイスの転換点」に達したとみられる。
ルイスの転換点に達すると、労働者の賃金が上昇して生活水準が向上、消費が増加する一方、資本家(経営者など)の取り分が減少し、さらに投資効率が低下することで中国への投資が減少、周辺のより収益性の高い国に投資が切り替わる、という正常化の動きがみられるようになる。
中国は積極的な投資に支えられる形で成長を続けてきたが、成長から減速までの過程は日本と類似しており、今後中国の投資需要は減少し、結果、非鉄金属需要の伸びは鈍化する、というのが基本的な考え方だ。
恐らく人口オーナス期入りする2032年頃まで消費量は増加すると考えるが、それ以降は減少に転じるだろう。
足元、こうした構造的な成長ペースの鈍化に、米国の経済制裁が加わっており、中国が置かれている環境は想定している以上に良くない可能性が高い。
この状況を打破するため、中国政府は金融緩和や財政出動などによる景気刺激策を行っているが、住宅バブルに寄与する住宅セクターを景気刺激に用いない、という中国共産党中央政治局の方針であり、従来型の景気刺激は難しい。
結果、電線網の整備や、鉄道向け投資の拡大などといった方面への投資が増加するものと思われ、政府支出も前年比ベースで伸びを加速させている。しかし同時に歳入の伸びが減速しており、国内の景況感が悪化していることが伺える。
金融緩和や預金準備率の引き下げなどの対策を行ってはいるものの、そもそもルイスの転換点を迎えて海外への工場流出が続く中では影響は限定される見込み。
この間強化、中国の製造業セクターの中心である工業セクターの利益の伸び率は2017年頃をピークに明確に減速している。LMEインデックスの前年比上昇率と、工業セクター利益の伸び率の間には高い相関がみられるが、もしこのまま製造業セクターの景況感に改善がなければ、LME非鉄金属価格は「期待需要の減少観測の強まり」を受けて前年比で低迷する可能性が高い。
しかし、上述の経済対策の影響などで、LMEインデックスに対する説明力の高い、「新規受注・在庫レシオ」は上昇しており、世界的に半導体セクターに底入れ期待が強まっていることを考えると、来年の春~夏頃にかけて反発する可能性は高い。
しかし、非鉄金属価格に対する説明力が高い投機筋の売買動向を見ると、今年の5月のGW以降にネット売りポジションに転じてから価格が下落。現在は買戻しが進んだが、まだ銅とアルミは大きな売り越しを維持している。
恐らく、米中対立の緩和などを材料に、年末にかけて買戻しが入ることになるだろう。ただし、その価格上昇は投機の一時的な買戻しによるテクニカルな上昇であるため、一時的な上昇に留まると考えている。
◆主要ニュース
・10月日本貿易収支季節調整前 173億円の黒字(前月▲1,248億円の赤字)
輸出 前年比▲9.2%の6兆5,774億円(▲5.2%の6兆3,683億円)
輸入 ▲14.8%の6兆5,601億円(▲1.5%の6兆4,931億円)。
米国向け
輸出 ▲11.4%の1兆2,676億円(▲7.9%の1兆1,874億円)
輸入▲17.2%の7,101億円(▲11.5%の6,235億円)
欧州向け
輸出▲8.4%の7,436億円(▲0.5%の7,288億円)
輸入▲10.8%の7,900億円(+13.2%の8,564億円)
アジア向け
輸出▲11.2%の3兆5,361億円(▲7.8%の3兆4,460億円)
輸入▲14.0%の3兆2,365億円(+0.3%の3兆1,863億円)
中国向け
輸出▲10.3%の1兆3,230億円(▲6.7%の1兆1,770億円)
輸入▲15.4%の1兆5,929億円(▲1.0%の1兆6,185億円)
・10月日本コンビニエンスストア売上高 前年比+1.8%(前月▲1.1%)
・中国1年短期貸出プライムレート 4.15%(変更前4.20%)、5年長期貸出プライムレート 4.80%(4.85%)
・10月独生産者物価指数 前月比▲0.2%(前月+0.1%)、前年比+1.8%(▲1.1%)
・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 ▲2.2%(前週+9.6%)
購入指数+6.7%(+5.1%)
借換指数▲7.7%(+12.9%)
固定金利30年 3.99%(4.03%)、15年 3.40%(3.43%)
・10月FOMC議事要旨、米経済に対するリスクが引き続き高いとの認識を示したが、この3回の利下げ後は金利を維持することに大半が賛同。世界の成長減速が国内経済への一層の重石になるリスクにも言及。
・みずほ銀行など、ソフトバンクGに対して3,000億円程度の融資を協議。
・ホワイトハウス関係者、「米中貿易協議の第一段階、年内にまとまらない可能性も。」
・米議会上院、全会一致で香港人権方案を可決。中国は報復を宣言。
・中国国家統計局、法律に基づき、2018年と過去のGDPデータを修正へ。
・香港の英領事館元職員、「中国政府に拘束・拷問された。」
・米駐EU大使、「トランプ大統領の指示で、ウクライナ工作を行った。」
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・DOE米石油統計
原油+1.4MB(クッシング▲2.3MB)
ガソリン+1.8MB
ディスティレート▲1.0MB
稼働率+1.7%
原油・石油製品輸出 7,898KBD(前週比▲52KBD)
原油輸出 2,840KBD(▲164KBD)
ガソリン輸出 841KBD(+66KBD)
ディスティレート輸出 1,084KBD(+11KBD)
レジデュアル輸出 148KBD(±0KBD)
プロパン・プロピレン輸出 1,186KBD(+102KBD)
その他石油製品輸出 1,609KBD(▲79KBD)
・サウジアラビア サルマン国王、2兆ドルを下回る金額でのアラムコIPOに合意。
・イスラエル軍、シリアのイラン軍事施設を攻撃。
【メタル】
・シティ、「2020年は銅は、亜鉛やアルミなどほかの金属が供給過剰であることから相対的に良いパフォーマンスになる可能性。」
・WBMS 1-9月期銅需給 ▲20万3,000トンの供給不足
(前年▲28万4,000トン)
鉛需給 ▲31万トン(▲24万3,000トンの供給不足)
亜鉛需給 ▲9万3,000トン(+10万9,000トン)
アルミ需給 ▲53万トン(▲63万1,000トン)
ニッケル需給 ▲6万6,900トン(▲10万2,900トン)
錫 ▲4,100トン(+28万4,800トン)
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +6.82%/ +7.71%
2.TGE小豆 ( 穀物 )/ +3.86%/ +32.84%
3.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ +3.53%/ ▲10.42%
4.NYM WTI ( エネルギー )/ +3.44%/ +25.77%
5.NYM RBOB ( エネルギー )/ +3.39%/ +25.26%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.原料炭スポット ( 鉄鋼原料 )/ ▲3.27%/ ▲41.49%
69.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲2.74%/ ▲0.86%
68.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲2.59%/ +21.11%
67.SHFニッケル ( ベースメタル )/ ▲2.17%/ +32.91%
66.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ ▲2.12%/ +34.62%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :27,821.09(▲112.93)
S&P500 :3,108.46(▲11.72)
日経平均株価 :23,148.57(▲144.08)
ドル円 :108.61(+0.07)
ユーロ円 :120.26(+0.02)
米10年債利回り :1.74(▲0.04)
独10年債利回り :▲0.35(▲0.01)
日10年債利回り :▲0.11(▲0.03)
中国10年債利回り :3.17(+0.00)
ビットコイン :8,087.79(▲20.30)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :21.68(+0.43)
エネルギー :27.31(+0.37)
ベースメタル :16.32(▲0.01)
貴金属 :18.76(▲0.61)
穀物 :14.90(+0.03)
その他農畜産品 :25.30(+1.11)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :26.66(+0.16)
Brent :21.49(+0.19)
米天然ガス :44.41(+0.35)
米ガソリン :22.75(+1.25)
ICEガスオイル :22.81(+0.22)
LME銅 :11.14(+0.31)
LMEアルミニウム :14.47(+0.2)
金 :12.89(+0.17)
プラチナ :19.06(▲2.25)
トウモロコシ :12.43(+0.19)
大豆 :12.89(+0.17)
【エネルギー】
WTI :57.11(+1.90)
Brent :62.49(+1.58)
Oman :63.35(+1.89)
米ガソリン :165.81(+5.44)
米灯油 :189.42(+3.68)
ICEガスオイル :571.50(+4.00)
米天然ガス :2.56(+0.05)
英天然ガス :40.81(+0.75)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :62.49(+1.58)
SPO380cst :225.79(+13.50)
SPOケロシン :74.64(+1.72)
SPOガスオイル :73.50(+1.56)
ICE ガスオイル :76.71(+0.54)
NYMEX灯油 :189.22(+1.54)
【貴金属】
金 :1471.61(▲0.85)
銀 :17.15(±0.0)
プラチナ :917.29(+6.42)
パラジウム :1766.56(+1.55)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,898(+55:25C)
亜鉛 :2,336(▲4:24.5B)
鉛 :2,001(+23:3.5C)
アルミニウム :1,741(+7:7.5B)
ニッケル :14,375(▲105:65C)
錫 :16,020(+95:5B)
コバルト :35,676(▲6)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5854.00(▲26.00)
亜鉛 :2308.50(▲35.50)
鉛 :1985.50(▲7.50)
アルミニウム :1744.00(+7.00)
ニッケル :14330.00(▲310.00)
錫 :16020.00(+70.00)
バルチック海運指数 :1,304.00(▲34.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :83.99(+0.13)
NYMEX鉄鉱石 :83.35(+0.16)
NYMEX原料炭スワップ先物 :133(▲4.50)
上海鉄筋直近限月 :3,804(+84)
上海鉄筋中心限月 :3,660(+70)
米鉄スクラップ :265(±0.0)
【農産物】
大豆 :905.00(▲6.50)
シカゴ大豆ミール :299.80(▲2.20)
シカゴ大豆油 :31.20(+0.24)
マレーシア パーム油 :2588.00(+69.00)
シカゴ とうもろこし :366.75(▲3.25)
シカゴ小麦 :515.50(+3.50)
シンガポールゴム :156.20(+4.20)
上海ゴム :12380.00(+295.00)
砂糖 :12.75(+0.06)
アラビカ :109.70(+7.00)
ロブスタ :1349.00(+46.00)
綿花 :62.24(▲1.20)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :60.45(▲1.70)
シカゴ生牛 :119.30(+0.53)
シカゴ飼育牛 :146.60(±0.0)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。