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強まる不透明感 ~ドル堅調は持続可能か
  • MRA外国為替レポート

2018年11月26日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は、週初はドルの上値が重い展開。前週にFRB当局者が来年の景気に対して慎重な発言をしたこと、株価がハイテク株中心に大きく下落したことから、ドル金利先高感が後退、米長期金利が低下し、ドルを押し下げた。

ただリスク回避のなかで安全通貨としてのドルへの需要は根強くドル安も続かず。ドル円相場は112円台前半では底固く113円近辺に反発した。

米国株は週末に下落ペースが鈍ったものの安値引け。原油価格は大幅下落。供給不安の解消と景気減速による需要減退懸念から、WTIは週初の1バレル57ドルから週末には50.4ドルまで急落した。

欧州では依然としてイタリアの財政問題やイギリスのEU離脱問題の不透明感が漂うなか、弱い経済指標が加わり、ユーロが週末にかけて下落。ユーロドル相場は1.14台半ばから1.13台前半へ。ユーロ円相場も127円80銭に下落した。ユーロが下落する反面でドルは堅調。ドル円相場は112円90銭台で週末の取引を終えた。

月曜日の東京市場のドル円相場は112円70銭~80銭でもみ合い。日経平均は21,700円で寄り付き一時21,850円まで上昇したが、概ね750円~800円で上下。後場はじり高となり引けは21,800円台。海外市場に入ると米国株が大幅安。

アップルがiPhoneを生産縮小と報じられ、ハイテク株、ネット関連株が下落。ナスダックは3%安、NYダウ、S&P500も1%を超える下落となった。

米10年債利回りは3.06%から3.09%に上昇していたが、株価下落とともに3.06%に押されて引け。ドルは対円、対ユーロで下落。ドル円相場は112円50銭中心にもみ合い引け。ユーロドル相場は1.14から1.1450近辺にユーロ高ドル安となりもみ合い。

火曜日の東京市場のドル円相場は112円50銭で始まり60銭台に上昇。ただその後はじり安となり夕刻には112円50銭近辺でもみ合い。

日経平均は21,550円で安寄り、その後は21,650円~700円に持ち直し。ただ後場は21,500円台半ばに下落し、その後は21,500円台後半でもみ合い引けた。海外市場に入るとドル円相場は112円30銭台に続落。40銭を中心に上下動となった。

米国株は全面安でNYダウは一時600ドルを超える下落。アップルが続落しハイテク株が軟調となったほか小売関連株も下落。原油が大幅安となったことでエネルギー関連株も下落した。為替市場ではリスク回避、株安、資源安、から新興国通貨や資源国通貨が下落。

またイタリア・イギリス問題の不透明感をかかえる欧州通貨が下落した。ユーロドル相場は1.1470から1.1360へとユーロ安ドル高。ドルが全般的には堅調となったことでドル円相場は持ち直し112円70銭~80銭でのもみ合いとなり引け。

米長期金利10年債利回りは3.06%から3.03%へと低下したが、引けにかけて持ち直し前日と変わらず3.06%。原油価格WTIは景気減速懸念による先高感の後退や投機ポジションの手仕舞いもあり57ドルから53ドルへ急落した。

水曜日の東京市場のドル円相場は113円70銭で始まり、その後は上昇基調で、昼前後は90銭を中心とするもみ合いとなった。

日経平均は米国株の大幅安を受けて21,300円割れに下落して寄り付いたがその後は持ち直し。後場には21,500円台を回復して引けた。

海外市場に入るとやや円安の動き。欧州時間にはイタリア政府が財政計画の修正に前向きとの報道からユーロ円相場が128円20銭から129円へ上昇。ユーロドル相場は1.14にユーロ高となった。ドル円相場も113円台に上昇。

この日の米国株は下げ止まり。ハイテク株は持ち直し。ただ引けにかけては上げ幅を縮小させた。この日発表された耐久財受注(10月)は除く輸送機器で前月比+0.1%と予想+0.4%を下回り足元の設備投資の減速を想起させた。

景気先行指数、中古住宅販売は予想通り。ミシガン大学消費者マインド指数(11月確報)は97.5に速報から下方修正された。米10年債利回りは3.06%から一時3.08%に上昇したが押し戻されて3.06%、前日比変わらず。為替市場は小動きに。ドル円相場は113円ちょうど~10銭で、ユーロ円相場も128円80銭で、もみ合い引けた。

木曜日の東京市場のドル円相場は米国株式・債券市場が感謝祭で休場となることもあり小動き。終始113円ちょうど~10銭近辺でもみ合いとなった。ユーロ円相場も128円70銭~80銭でもみ合い。

日経平均は21,500円台で寄り付き、前場は上昇したものの行って来い。ただ後場はじり高となり21,650円近辺で引けた。

海外市場は米国が感謝祭の祝日で株式・債券市場が休場。為替市場も動意薄。ドル円相場は113円手前で小動きもみ合いそのまま112円90銭台で引けた。

金曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場は112円80銭台にやや下落。その後欧州市場にかけて112円70銭に下落した。

欧州で発表されたPMI景況感指数(11月)が弱い数字。ドイツの製造業PMIは2016年春以来の低水準。弱い欧州の経済指標を受けてユーロは下落。ユーロドル相場は1.1420から1.1330台へ、ユーロ円相場は128円80銭から127円80銭台へ下落した。

米国のPMI景況感指数(11月)も弱めの数字。製造業は55.4と予想56.0を下回り前月55.7から小幅悪化した。サービス業PMIも54.4とやや弱め。

こうしたなか原油価格が大幅下落。WTIは50.4ドル。潤沢な供給に景気減速による需要の緩和見通しが重なり大きく下げた。この日の米国市場は13時までの短縮取引。米国株は小幅下落。米10年債利回りは3.04%に小幅低下した。

ドル円相場はユーロ円相場の急落に一時112円70銭台に押されたが、その後は全般的なドル高に支えられて112円90銭台に戻して週末NYの取引を終えた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

このところドル金利先高感後退、ドル先高感の後退は、米国経済の減速シナリオをあらためて織り込んだことが背景。足元の経済指標の強さがそうした懸念を緩和するか。弱い数字で懸念を助長するか。

月曜日にシカゴ連銀全米活動指数(10月)、ダラス連銀製造業活動指数(11月)、火曜日に消費者信頼感指数(11月)、水曜日にGDP(7-9月期、2次速報)、木曜日に個人所得・消費支出(10月)、金曜日にシカゴ購買部協会景気指数(11月)が発表される。 

2.FOMC議事録、パウエル議長発言

先週、FRBのパウエル議長、クラリダ副議長、が来年の米国経済に対する向かい風についてコメントしたことで、当局が利上げに慎重なスタンスとの印象が広がり、ドル軟調の一因となっている。

今週金曜日にFOMC議事録(11月7日・8日開催分)が公表される。声明文には特段の警戒シグナルは記されていなかったが、慎重な意見が垣間見えないか。

これに先立ち、火曜日にクラリダ副議長、水曜日にパウエル議長が、それぞれ講演する。慎重なスタンスと受け止められた先日の発言に何らかの修正はあるか。

3.米中首脳会談、G20

11月30日金曜日、12月1日土曜日、2日間にわたり、アルゼンチンでG20首脳会議が開催される。その機に、かねてより計画されている米中首脳会談が設定されている。米中通商摩擦解決に向けた糸口がつかめるか。

先日のAPECでは深まる対立に声明が出せず。トランプ政権に対し中国は140項目に上る対応リストを手渡したようだが、その内容は米国側が満足するものではないようだ。

交渉決裂は両者とも望まないだろうが、交渉継続となり進展ないまま終わるか、あるいは想定外の合意に至るか。市場のセンチメントを大きく左右するとみられ、来週月曜日にまずアジア市場がどのように反応するか。

◆今週のMRA's Eye


強まる不透明感 ~ドル堅調は持続可能か

このところ市場ではリスク回避心理が強まっている。APEC首脳会議において米中間の応酬が激しく共同声明の発表に至ることができない異例の事態に。米中首脳会談が今週末に予定されているが、ここにきて、通商交渉は進展しないのではないか、との不安が高まってきた。

また経済指標に弱い数字が散見され、またFRB当局者から景気減速を見込む慎重な発言がみられたことから、市場の警戒感が強まった。

株価はハイテク株を中心に成長期待で買われた銘柄が下落。また原油価格が大幅安となって市場心理の悪化に拍車をかけている。こうした市場心理が早急に改善するのは難しそうだ。

米中通商交渉については、政権は双方とも「決裂」は望んでいないとみられる。景気動向も踏まえれば、米国が追加関税に踏み切り、双方でさらに景気が悪化する流れは避けたいところだ。

ただ安易な妥協は双方とも国内政治情勢から許されないという難しいバランスを保つ必要もある。

米国では予想された結果とはいえ下院で民主党が過半数となった。共和党は元来、自由貿易主義を支持し政府の役割は最小限にしようという不介入主義が党是。これに対し民主党は市場介入、政府の役割強化が党是であり、共和党に比べより保護貿易主義的で、中国に対して強硬派が多い。

トランプ政権の保護貿易主義はむしろ民主党の考え方に近いが、それがさらに強化されるリスクがある。1月の新議会が始まるまでになんらかの決着に辿り着けるか。

中国側は景気下支えに躍起になっている。景気の悪化は政権基盤を揺るがしかねないことから、交渉決裂・さらなる関税報復合戦は避けたいという事情があることから米国にとってはチャンスではあるが、対中政策においては超党派で強硬論者も多く、合意はそう簡単ではなさそうだ。

こうした状況から想定されるメインシナリオは、合意に至らないまま継続交渉、というところではないか。そもそも、何ら進展が見込めない状況で米中首脳会談が開催されるのかどうか、懸念もされる。

こうした状況ではリスク選好が回復するのは難しい。逆に想定外に何らかの進展があればポジティブサプライズだろう。

もちろん、交渉決裂、追加関税の賦課、中国の報復、となれば、ネガティブサプライズだ。

このところのリスク選好の後退は、株価下落、原油価格大幅安、とスパイラル的な市場心理の悪化により生じている。FRB当局者、パウエル議長やクラリダ副議長、あるいは他の連銀総裁から景気に慎重な発言が相次いだことも大きい。

12月の利上げは実施されると見込まれるが、一部にはそれが怪しくなってきたとの見方もある。また来年の利上げ回数も、FOMC出席メンバーの予想では3回とされているが、利上げ打ち止めが前倒しになるのではないか、との見方も出てきた。

当局者が米国経済の現状あるいは先行きにどの程度自信を示すかも重要となる。

また経済指標、とくに企業部門の景況感や設備投資動向にしっかりした数字がみられるか。休暇シーズンによるリスクポジションの調整一服と相まって、軟調に推移している米国株の底打ち、持ち直しがリスク選好につながるか。

ただ現状からすれば、甘い期待は禁物だろう。リスク資産価格、株価、原油価格、などの下落は止まるにしても、反発上昇する材料が、にわかには見当たらない。FRB当局者から慎重な発言がなおも続けば、市場心理の回復に水を差すことになる。

さらにFOMCで委員による今後の予測、成長率見通しや利上げ回数が下方修正されることになればショックは大きい。この間は、FRBの強気・実際の景気が堅調推移してきたのに対して、市場の弱気・慎重スタンス、という構図・取り組みが続いてきた。

仮にFOMCが予測を下方修正するようなことがあれば、今回の景気拡大局面においては初めてのことになろう。

市場がリスク回避サイドに過剰反応するリスクがある。FRBとしては政策の自由度を確保するために慎重な見方を示したとしても、意図が誤解される可能性がある。

12月にかけて、なおもリスクポジション調整が生じやすいなかでは、想定外にリスク回避的な値動きとなる可能性があり注意を要する。ドル堅調が思わぬ揺らぎに遭う可能性も皆無ではない。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :112.96(+0.01)
ユーロ :128.06(▲0.75)
英ポンド :144.736(▲0.71)
豪ドル :81.693(▲0.24)
カナダドル :85.339(▲0.30)
スイスフラン :113.245(▲0.27)
ブラジルレアル :29.506(▲0.18)
中国人民元 :16.229(▲0.07)
韓国ウォン(日本円=100) :9.965(+0.02)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1337(▲0.007)
英ポンド :1.2814(▲0.006)
豪ドル :0.7233(▲0.002)
カナダドル :1.3238(+0.005)
スイスフラン :0.9974(+0.002)
ブラジルレアル :3.828(+0.024)
中国人民元 :6.9485(+0.017)
韓国ウォン :1130.45(+1.32)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :3.04(▲0.02)
米2年債 :2.81(▲0.00)
日本10年債利回り :0.10(±0.0)
日本2年債利回り :0.10(+0.00)
独10年債利回り :0.34(▲0.03)
独2年債利回り :▲0.58(▲0.00)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :24,285.95(▲178.74)
NASDAQ  :6,938.98(▲33.27)
S&P500 :2,632.56(▲17.37)
日経平均株価 :休場( - )
ドイツ DAX :11,192.69(+54.20)
インド センセックス :休場( - )
中国上海総合 :2,579.48(▲65.95)
ブラジル ボベスパ :86,230.22(▲1,247.22)
英国FT250 :18,533.01(+3.01)
ビットコイン :4260.57(▲167.26)

【主要商品価格】
WTI :50.42(▲4.21)
Brent :58.80(▲3.80)
米ガソリン :139.13(▲11.94)
米灯油 :187.62(▲9.40)

金 :1223.05(▲5.59)
銀 :14.29(▲0.22)
プラチナ :843.50(▲3.98)
パラジウム :1120.75(▲34.45)
銅 :6188.00(▲36:22B)
アルミニウム :1934.50(▲19:12C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :881.00(▲2.00)
シカゴ とうもろこし :359.00(▲2.75)
シカゴ小麦 :499.75(+1.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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