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ドル安で金属セクター堅調
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年12月12日 第1657号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ドル安で金属セクター堅調」

【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は、非鉄金属や貴金属などの金属セクターが広く物色されたが、エネルギーなどは軟調に推移した。

非鉄金属は年末に向けての中国の公共投資期待やファイナンス関連統計の改善が投機の買戻しを誘っていること、貴金属はFOMC後のパウエル議長の発言を受け当面利上げがない、との見方が強まったことが材料となった。

原油は米石油統計が原油在庫・石油製品在庫が大幅な増加となったことが価格を下押ししている。

【本日の価格見通し総括】

本日は、予定されている経済統計では、ユーロ圏鉱工業生産(市場予想 前月比▲0.5%、前月+0.1%、前年比▲2.4%、▲1.7%)、米生産者物価指数(前月比+0.2%、+0.4%、前年比+1.3%、+1.1%。コア指数 前月比+0.2%、+0.3%、前年比+1.7%、+1.6%)に注目しているが、相場を大きく動かすような材料にはならないだろう。

恐らく本日については昨日のFOMCの結果を受けて、総じてリスク資産が堅調な推移になると予想される。

なお、英選挙の結果は日本時間の午前中に結果がわかるようであるため、材料としては明日以降の材料と考えられる。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日のFOMCは予想以上にハト派的な内容だった。FRBパウエル議長は比較的強く、「現在の経済環境が続くなら政策金利の変更はない」旨主張した。

実際、発表されたドット・チャートも前回から大きく変化し、今年から来年にかけて政策金利の変更はほぼない、ということが確認されている。このことは株などを含むインフレ系リスク資産価格を押し上げることになるだろう。

「大統領選を意識した、トランプ大統領のからの圧力がある場合や、米中対立の激化で景気底割れの可能性が顕在化する、といったイベントリスクの発生がなければしばらくは現在の政策金利が維持される、と見るのが妥当だろうか。

その他の材料で注目しているのは、ラガルド体制になってから初めてのECB会合が開催され、その後の記者会見でどのような発言をするかだろう。

ラガルド総裁はこれまでの発言を見るに、まず、ユーロ圏の南北中央銀行のスタンスの違いに伴う対立解消が最大の責務になると考えられる。

より重要なのが、「中期的に2%未満であるが、その近辺」とされている物価安定の定義を見直す事であり、それに関してどのような発言が出てくるかだろう。遮二無二2%を目指して緩和を行う政策は、日本での実験によってその効果がほとんどないことが明らかになっているため、恐らく見直しされることになるだろう。

また注目されるのは、金融政策に「環境問題を織り込む」ことに同氏が意欲的であることだ。理想論に走りやすい欧州では、環境対策が非常に急速に取り上げられ、政治・経済での主要テーマとなっている。

環境問題に取り組むこと時代は良いことだが、「短・中期的な物価の安定」が目標である中央銀行が、超長期の「世界の在り方」を考える環境問題に乗り出すのは相当おかしな話であるし、政治家が行うべきことである。

やはり出自が政治家ということもあって、政治と金融政策の敷居があいまいになっているとの印象は否めない。

ただ、環境問題が政策に織り込まれることはポジティブ、というよりも、金融政策のレバレッジが大きくかかるため、市場や経済活動が逆に大きく歪められるリスクを高めるもの、と整理するべきだろう。

より端的には、「二酸化炭素や温暖化ガスを出さないようにするため、金融引き締めを行って経済滑動を鈍化させよう」という政策を推し進めることと動議だ。

今日の発言によっては無視できないリスクとして認識せざるを得なくなる、と考えている。中央銀行総裁のメンバーは、別に環境問題の専門家ではない。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.2%→+3.0%)ている。2020年も+3.4%(▲0.1%)に引き下げた。

ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっている。あったとしても後1回程度(▲25bp程度)の利下げに留まる(金融面の価格下支え期待の後退)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商交渉は一進一退でどのような着地になるかよくわからないが、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護を中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。

通商面のみならず、資本フローの規制や、人権問題への制裁なども加わっており、通商面で妥協があったとしてもその他の分野での制裁発動の可能性は高い。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫していることで、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、サウジアラビアがイランに対して報復攻撃を行うなどのリスク。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。EUは英国のEU離脱期限延長で合意したが、議会の構成が変わらなければ英議会で離脱案が否決される可能性がある。

これを解消するため、ジョンソン首相は解散総選挙を実施するが、選挙結果によっては再びEUと離脱を巡って混乱が生じる可能性。ハードブレグジットの可能性は排除すべきではない(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・中国政府が「法律に基づき」過去のGDPの見直しを行うと発表しているが、この見直しによって統計が悪化する可能性は高く、景気循環銘柄価格の下落要因に。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は下落した。発表された米石油統計では原油在庫の予想以上の増加と石油製品在庫の増加で、需給緩和観測が広がったことが材料となった。

ただし、OPECの減産やFOMCでの利上げが当分なさそうである、ということが価格を下支えした。

【原油価格見通し】

原油価格は、米中合意の可能性とOPECプラスの追加減産+サウジアラビアの自主的減産、米雇用統計の改善によるファンダメンタルズ面の悪化懸念の後退、FOMCでは当面利上げがないとの見方からドル安が進行していることから、高値圏を維持するものと考えられる。

OPEC総会では現状追認の▲50万バレルの追加減産が決定され、さらにサウジアラビアが▲40万バレルの減産を決定した。これは市場の予想を上回るものであり、価格の上昇要因となる。この減産の持つ意味は小さくない。

これはサウジアラムコのIPOを円滑に進めるためということは当然だろうが、それ以上に懸念されるのが、実はドローン攻撃を受けたアブカイクの修理は、アブドルアジズ エネルギー相の言うように完了している訳ではない可能性がある点である。

サウジアラビアは修理完了後の設備の状況を公開していない。WSJでも指摘されているように、あの規模の設備を修復するのは通常1年掛かってもおかしくない(在庫があって容易に交換ができる設備ではない)。

もしそうであれば、景気が回復して需要が戻った場合、OPECの余剰生産能力が不足し、価格が給湯する可能性があることを示唆している。特に米国が「採算性のある油田のみ稼働させる」方針に傾斜しつつあることを考えると、このシナリオの可能性は今後、十分に注意して検証していく必要があるだろう。

ただし、今のところ追加減産は3月末までであること、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、OPEC減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオだ。

米中交渉は通商面で合意の可能性が出ているが、香港やウイグル族の人権問題まで米国が対象を拡大して中国も報復、先行きが引き続き不透明。結局、部分的な合意には至るものの、長期的には米中いずれかがあきらめるまで継続するため、やはり景気循環銘柄価格の下落要因、と整理しておくべきだろう。

なお、合意したとしても今までの関税を引き下げが想定されている訳ではないため、「さらに悪くなることが回避される」だけであり、景気にプラスというわけではない。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めの方針のようだが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると予想される。財政出動は使途にもよるが、エネルギー価格の押し上げ要因になるだろう。

実際、11月12日には米クドロー国家経済会議委員長が、「トランプ大統領から第2弾の減税の指示があった」と発言しており、2020年度予算に減税が盛り込まれる可能性が高まった。

米国は財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

なお、景気の減速に伴う価格下落(歳入確保のための増産)やサウジアラビアに対するドローン攻撃(テロの低コスト化・大規模化に伴う供給途絶)の影響で、供給側(特にOPECプラス)の動きが価格に与える影響は小さくなくなっている。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に上昇。特段材料がない中、ピークシーズン入りした需要の増加と天然ガス価格の上昇はあるも、中国の国内生産増加に伴う輸入の減少観測から価格はもみ合っている。

【石炭価格見通し】

石炭価格はピークシーズン入りしていることから、上昇すると見るが、欧州地域の景況感悪化に伴う天然ガス価格の低迷、中国統計の減速、中国政府の石炭輸入制限(年間2億8,000万トン)を受けた輸入需要の減速を受けて低水準を維持する見込み。

バルチック海運指数は、予想通り下落傾向が顕著になってきた。中国政府が特に石炭に関して輸入量を前年並みにする目標であることが影響している。

10月の中国の貿易統計では、石炭輸入は燃料炭・原料炭合計で2,569万トンと前月から減速。ただし、依然として過去5年の最高水準を上回っている。

同時に10月の中国石炭生産が、同じ時期の過去5年の最高を上回る3,249万トンとなった。中国の国内供給は増加している状況であり、貿易市場は緩和する見込み。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPEC総会では現状追認の▲50万バレルの追加減産が決定され、さらにサウジアラビアが▲40万バレルの自主減産を決定、原油価格の上昇要因に。

ただし、減産は3月末までであること、非OPEC(ブラジルやノルウェーなど)の増産見通しもあることから、OPEC減産の影響は限定される、というのが引き続きメインシナリオ。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入増加。10月の貿易統計では、原油の輸入が4,551.1万トン(1,086万バレル/日)と過去最高を更新。

今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・サウジアラビアの石油施設の修復は完了したと報じられているが、実際は完了していないとの報道もあり、供給面は実態が把握される中で上昇リスクになる可能性。

なお、サウジアラビアがイランに対して報復を行う可能性は、現時点ではほぼゼロに近いと見る。

また、今回のドローン攻撃でテロが低価格化・大規模化することが分かったことは、中東の供給途絶リスクを従来よりも高めるものであり、従来以上に中東情勢は重要に。

・ブラジルのOPEC加盟。ブラジルの生産量は2018年で268万バレルであり、世界供給の2.8%に達するため、実際に加盟し、サウジアラビアの意向に沿う生産を行うならば、OPECの価格支配能力は若干の改善が見込まれる。

仮に期待通り来年の世界景気が夏頃にかけて底入れした場合、生産制限は顕著な価格上昇要因となり得るため、その点は注意。

・トルコ軍のシリアへの侵攻は、ロシアの仲介でとりあえず終了。域内に「緩衝地帯」を設けることで合意した。ロシアの支援を受けているアサド政権側もこれを飲まざるを得なくなった模様。

トルコはこの地域にシリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロングが減少、ショートが増加、Brentもロングが減少したがショートは減少した。

景気の先行きへの懸念が強まる一方、米国は増産の、BrentはOPECの減産が意識された。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが531,120枚(前週比 ▲22,617枚)、ショートが103,085枚(+20,284枚)、ネットロングは428,035枚(▲42,901枚)、Brentが393,611枚(前週比▲20,366枚)、ショートが62,623枚(▲1,867枚)、ネットロングは330,988枚(▲18,499枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格の引け水準は高安まちまちだったが、引き続き、総じて堅調な推移となった。中国のファイナンス関連統計の改善や、ドル安基調となっていること、中国の公共投資が年末にかけて増加しやすいことから、年末を控えたポジション整理の買戻しが入っているためと考えられる。

ややテクニカルな上昇とも言え、価格上昇が持続するかどうかは不透明。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は米国統計の改善や、英選挙で混乱がないとしてポンド高・ユーロ高・ドル安の地合いとなりやすいこと、米中合意の可能性が意識されて投機の買戻しが入りやすい(特に銅とアルミ、錫)ため、上昇余地を探る動きになると考える。

ただし、中国の貿易統計や生産者物価指数が減速、米中が通商面で合意が期待できても香港・新疆ウイグル自治区の人権法案を米国が可決する方向性であることが米中の対立を意識させること、ブラジル・アルゼンチンに対する関税復活による通商面への懸念から、上値も重いと考える。

米中交渉は通商面で合意の可能性が高まっているが、香港やウイグル族の人権問題まで米国が対象を拡大して中国も報復、先行きが引き続き不透明。結局、部分的な合意には至るものの、長期的には米中いずれかがあきらめるまで継続するため、やはり景気循環銘柄価格の下落要因、と整理しておくべきだろう。

なお、合意したとしても今までの関税を引き下げが想定されている訳ではないため、「さらに悪くなることが回避される」だけであり、景気にプラスという訳ではない。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めの方針のようだが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないと予想される。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めていることが、非鉄金属においても今後の大きなテーマとなると見られる。

財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。

実際、11月12日には米クドロー国家経済会議委員長が、「トランプ大統領から第2弾の減税の指示があった」と発言しており、2020年度予算に減税が盛り込まれる可能性が高まった。財政にゆとりはないため減税も形式的なものになろうが、「選挙戦モード入り」で景気に必要以上のアクセルが踏まれる可能性が高まっている。

中長期的にはインドの構造的な需要増加や、環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想されるが、より短期的には、中国、欧州の景気がどこで底入れするのか、米国経済の後退がいつから始まるのかに依拠する。

来年の大統領選挙を睨んで米国がどのような対応をしてくるかが不透明であるが、こうした政策期待効果を除けば、底入れ感が出てくるのは来年の春~夏にかけてになると見ている。中期的には現状水準でのもみ合いが続こう。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。

ニッケルに関しては、インドネシアの輸出規制は再び解除され、9社の輸出が認可された。これにより供給懸念が後退するため、景況感の悪化と相まってニッケル価格は下落余地を探る流れとなっている。

足元はチャートの節目である、14,000ドルの節目を割り込んだ。今後、目立ったチャートポイントがあるわけではないことから、13,000ドルを維持できるかが大きなポイントとなる。

来年1月以降は供給が停止されるが、前倒し輸出が加速したため、品薄感が意識されて価格が上昇するのは4月以降の可能性が高まった。というのも、今年9月までで2018年と同じ数量をすでに中国が輸入したためだ。

処理量に大きな変化がなければすでに3ヵ月分、余分に調達が済んでいることになる。ただし、実際にインドネシアの供給が止まれば、シェアはニッケル含有分ベースで25%であるため、原油に例えれば、サウジアラビアとロシアの供給が同時に停止するぐらいのインパクトがある話であり、やはり価格には上昇圧力が掛かりやすい。

2014年の規制開始後を参考にすると、輸出規制開始となる1月から価格が上昇し(価格がすでに大きく調整しており、割安感があることから上昇タイミングを前倒し)、来年7月頃(下期)からの下落が予想される。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは回復し、閾値の50を上回った。しかし、規模別でみた場合大企業は閾値の50を上回っているが、中堅・中小企業の景況感はまだ50を上回っていない。価格へのプラスの影響は緩やかなものに止まろう。

在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が回復しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-10月期中国工業生産は、前年比+5.6%(1-9月期+5.6%)、10月+4.7%(前月+5.8%)と月次ベースで急速に減速した(フロー需要の減少=価格下落要因)。

・1-10月期中国固定資産投資は、前年比+5.2%の51兆880億元(1-9月期+5.4%の46兆1,204億元)、公的セクター+7.4%(+7.3%)、民間セクター+4.4%(+4.7%)と規模の大きな民間セクターの減速が鮮明になっている(ストック需要の減速=価格下落要因)。

・1-10月期中国不動産開発投資は、前年比+10.3%の10兆9,603億元(1-9月期+10.5%の9兆8,008億元))と高い水準を維持してはいるが伸びは減速している。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・11月の銅地金・製品の輸入量は43万3,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準。また、銅鉱石の輸入も215万7,000トンとやはり過去5年の最高水準を大きく上回っている。公共投資(電線網整備)などの公的需要が需要を下支えしているとみられ、中国の取引所在庫は過去5年平均を下回っている。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、Valeの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

HydroのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展し、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・12月6日付のLMEポジションは銅と錫がロング増加・ショート減少という強気のポジション取りとなったが、亜鉛、鉛、アルミに関してはロングが減少し、ショートも増加し弱気のポジション取りとなった。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲30.1億ドル(前週▲29.4億ドル)と売り越し幅を小幅に拡大した。売り越し額の増加率は+2.3%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲963千トン(前週▲791千トン)と売り越し幅を拡大した。ネット売り越しの増加率は+21.7%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅上昇、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品先物価格は小動きだった。

米中合意への期待や、在庫の減少に伴うファンダメンタルズの強さから高値圏での推移となっている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、最大消費国である中国の公共投資に伴う需要増加や、冬場の鉄鋼製品生産規制から鉄鋼製品価格が上昇していること、Valeの販売調整観測で価格は底堅い推移になると考える。

目先、米中合意が近いとされておりこれ自体は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、実際に合意するまでは価格の下押し要因であり、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る対立を見るに、まだ両国関係は鉄鉱石価格の波乱要因になると見る。

なお、合意したとしても今までの関税を引き下げが想定されている訳ではないため、「さらに悪くなることが回避される」だけと考えるべきで、景気にプラスというわけではない。

また、冬場の鉄鉱石価格は季節的には強含みやすいものの、冬場の鉄鋼製品生産規制により鉄鋼向け需要が減速するため(短期的には鉄鋼製品価格の上昇で、鉄鉱石価格の上昇要因となる)、今年は例年よりは低い水準での推移になるのではないか。

原料炭も鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、同様に下値余地を探りやすくなっている。足元の価格は特に春以降、季節性を無視して水準を切り下げている。

価格の上昇があるとすれば、その他の景気循環系商品と同様、春~夏に掛けてになるのではないか。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは45.4(前月41.3)と回復。新規受注の回復(31.6→43.8)が大きく影響した。輸出向け新規受注の回復が緩慢(35.8→40.1)であることから、恐らく、政府主導のインフラ向けの投資需要が新規受注を支えていると考えられる。

需要回復で完成品在庫は減少(36.8→27.1)、原材料在庫は増加しているため(37.9→39.2)、製品とのスプレッドは拡大する可能性がある。結果、鉄鋼原料価格はファンダメンタルズ面で強含み推移しよう。

・1-10月期中国工業生産は、前年比+5.6%(1-9月期+5.6%)、10月+4.7%(前月+5.8%)と月次ベースで急速に減速した(フロー需要の減少=価格下落要因)。

・1-10月期中国固定資産投資は、前年比+5.2%の51兆880億元(1-9月期+5.4%の46兆1,204億元)、公的セクター+7.4%(+7.3%)、民間セクター+4.4%(+4.7%)と規模の大きな民間セクターの減速が鮮明になっている(ストック需要の減速=価格下落要因)。

・1-10月期中国不動産開発投資は、前年比+10.3%の10兆9,603億元(1-9月期+10.5%の9兆8,008億元))と高い水準を維持してはいるが伸びは減速している。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。

11月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は457万5,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入もほぼ季節性通り減少し、2,078万1,000トンとなった。予想通り輸入は減速している。

今後に関しては輸入規制が導入されると見られる、国内生産も10月時点で3億2,487万トンと過去5年の最高水準を大きく上回っている。このことから、今後も輸入は減少すると予想される。

・中国の11月の鉄鉱石の輸入量は前月からは減速したが9,290万トンと高い水準を維持した。一方で、今年の鉄鉱石生産は3月以降漸増しており、7,804.8万トンに達しているため、冬場の鉄鋼製品生産規制がやはり実施される見込みであることを考えると、輸出市場における鉄鉱石需給は緩和する可能性が高い。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲9.3万トンの795万トン(過去5年平均861.7万トン)と例年を下回っている。

なお、10月の鉄鋼製品の輸出は478万2,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+10万トンの1億2,950万トン(過去5年平均1億1,710万トン)、在庫日数は+1.0日の29.3日(過去5年平均 31.6日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化している。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・Vale、Rio Tintoの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む金融市場の緩和を進めているほか、地方政府にも債券発行枠の前倒しを認めるなど、景気テコ入れのため公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は上昇した。注目のFOMCでは「当面利上げがないこと」を確認する内容だったことから、実質金利の低下を通じて価格が押し上げられた。

PGMは金銀価格の上昇に加え、株価が上昇したこと、南アフリカの電力問題を背景に水準を大きく切り上げた。

【貴金属価格見通し】

金価格はFOMCでの政策金利変更観測が後退したことが価格を下支えするが、12日の英総選挙、15日の米中関税引き上げ期限を控えて様子見気分強く、やや軟調地合いの中でもみ合うものと考える。

このほか、ブラジル・アルゼンチンに対する関税引き上げなどの通商問題は解決しておらず、何より米中交渉もまだ妥決していないこと、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題を巡り、米中の対立が激化する可能性があることが一定の安全資産需要を喚起すること、同時に低金利政策の継続も間違いがなく、結果、高値圏でのもみ合いとなるだろう。

仮に地政学的リスクが解消した場合、実質金利を基にすれば、▲200ドル程度(地政学リスクプレミアム)金価格は下落することになる。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)が大幅に低下したが、再び上昇基調となっている。

そうだとしても現在の金銀レシオは在庫レシオで見た場合やや高すぎで、金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられる。

PGM価格は金銀価格が高値圏で推移するとみられることから、同様に高値圏での推移になると予想する。影響が明確に出ていないが、南アフリカの電力供給削減が今後、供給にも影響を与え価格を下支えしよう。

また、世界の自動車販売の前年比減速が底入れした感じが出てきていることから対金銀で割高に推移すると考える。

中国の自動車販売が15ヵ月連続のマイナスとなるなど、需給ファンダメンタルズ面は需要面の減速が懸念される状況。世界自動車販売も13ヵ月連続の前年比マイナス。

しかしいずれも前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていること、11月の米自動車販売は1,709万台(前月 1,655万台)と回復しており、需要面でも価格が押し上げられる可能性は高まっている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBは米統計の悪化懸念がやや後退していることから、追加利下げの可能性が大きく後退している。仮に追加利下げがあったとしても来年1回程度とみられるため、下支え効果は限定。

ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に向け、各国政府に働きかけを強めることになるだろう(これは中央銀行の権限外であるが)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するにはまだ時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・米中通商交渉が一部進捗しているが、基本的に覇権争いであるためこの問題が簡単に片付くことはなく、安全資産需要を下支えする見込み。

米国は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決と、それによって民間技術が軍事転用されないようにすることが最終目標であり、根本的な解決には相当な時間がかかる見込み(価格の下支え要因)。

・サウジアラビアがイランに対して報復を行う可能性は、アラムコのIPOを控えていることもあり、現時点ではほぼゼロに近いと見る(金銀価格の下落要因)。

・トルコ軍のシリアへの侵攻は、ロシアの仲介でとりあえず終了。域内に「緩衝地帯」を設けることで合意した。ロシアの支援を受けているアサド政権側もこれを飲まざるを得なくなった模様。

トルコはこの地域にシリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も(金銀価格の上昇要因)。

・英国のEU離脱はEUが離脱期限延長で合意したが、選挙の結果によっては英議会で否決される可能性はあり、金価格の上昇要因に(無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金はロングが増加、ショートも増加した。統計の悪化や米中合意の期待など見方が交錯しているためとみられるが、総じてロングの方が大きく、リスク回避的な動きが強まった。しかし、週末の米統計を受けてしばらくはロングの解消売り圧力が強まると考えられる。

銀は景気への懸念からロングが小幅減少、ショートが増加した。

プラチナはロングショートとも増加しているが、金価格の上昇を受けてロングの増加の方が大きかった。パラジウムもロング・ショートとも増加だが、ネットロングは増加している。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが346,525枚(前週比 +21,239枚)、ショートが55,820枚(+2,168枚)、ネットロングは290,705枚(+19,071枚)、銀が89,241枚(▲1,654枚)、ショートが39,014枚(+629枚)、ネットロングは50,227枚(▲2,283枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが56,747枚(前週比 +904枚)、ショートが11,218枚(+444枚)、ネットロングは45,529枚(+460枚)、パラジウムが17,915枚(+654枚)、ショートが5,604枚(+428枚)、ネットロングは12,311枚(+226枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物は総じて軟調な推移となった引き続き収穫懸念が強く、米中合意への期待も高まり、ドル安が進行していることから価格は上昇しやすいが、エタノール在庫の増加を受けてエタノール価格が下落していることでトウモロコシ価格が下落したことが、全体に売り圧力を強める形となった。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は高安まちまちになると考える。米中合意が近いとの見方が価格を押し上げるが、景気への楽観から景気循環系商品が物色されやすい地合いにあることが上昇を抑制するため。

米トウモロコシ・大豆の受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、供給に懸念は少なく、価格には下押し圧力が掛かりやすい地合い。

小麦は冬小麦の作況が悪化していることが買い材料視されており、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を下回っていることから、こちらには上昇圧力が掛かりやすい。

米中交渉の行方が穀物価格に大きな影響を与えることは間違いがなく、今後の進捗を見極める必要がある。ただ今のところは来年の選挙を控えて、一旦合意に至ると考えられ、2020年は価格の押し上げ材料になると予想される。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産見通し上方修正による需給緩和観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・12月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億6,100万Bu(前月136億6,100万Bu)大豆 35億5,000万Bu(35億5,000万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・12月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ 19億1,000万Bu(市場予想18億6,119万Bu、前月19億1,000万Bu)大豆 4億7,500万Bu(4億7,381万Bu、4億7,500万Bu)小麦在庫 9億7,400万Bu(10億878万Bu、10億140万Bu)

・9月末の四半期在庫トウモロコシ 21億1,400万Bu(市場予想24億1,804万Bu)大豆 9億1,300万Bu(9億8,126万Bu)小麦 23億8,500万Bu(23億1,858万Bu)

(特殊要因)

・米中通商交渉は一部合意が近い、と伝えられており足元シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、長期化の可能性は高くシカゴ定期の下落要因に。

・エルニーニョ現象は収束したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・トウモロコシはロングが増加、ショートが減少、大豆はショートの積み上がりが顕著、小麦も同様だった。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが292,989枚(前週比 +19,391枚)、ショートが294,925枚(▲16,135枚)、ネットロングは▲1,936枚(+35,526枚)、大豆はロングが158,470枚(+4,036枚)、ショートが184,613枚(+44,046枚)、ネットロングは▲26,143枚(▲40,010枚)、小麦はロングが110,399枚(+8,980枚)、ショートが82,659枚(+1,678枚)、ネットロングは27,740枚(+7,302枚)

◆本日のMRA's Eye


「2020年ニッケル価格見通し」

ニッケルの価格は他の工業金属と同様、最大消費国である中国の景況感に左右されやすいが、インドネシアが再び未処理鉱石の輸出に規制を掛ける(2019年10月)との報道を受けて高騰した。

これは2012年にインドネシアが未処理鉱石輸出を規制する、という方針を示したときの反応とほぼ同じである。その後インドネシア政府は、2019年10月から前倒しでニッケル鉱石輸出規制を開始したため、ニッケル需給は高値圏を維持した。

しかし、インドネシア政府が基準を満たした業者に対して、輸出を認めたこと、最大消費国である中国のニッケル鉱石の輸入が相当前倒しされ、港湾在庫にも積み上がりがみられたこと、中国の景況感に目立った改善がみられていないことから、ニッケル価格は14,000ドルを割り込むに至った。

実際に2020年1月から禁輸措置が始まれば、2014年の時と同様、再び価格は上昇すると予想される。ただし、現物調達にとりあえず目処が立っていることから、当初想定していたような大幅な上昇にはならないと予想される。

2014年は景気の減速が続いたため、この価格上昇は6月頃で終了、長続きしなかった(ステンレス価格も下落に)。来年の世界景気は春から夏にかけて底入れが予想されるため、価格は下落後、徐々に水準を切り上げる展開になると予想される。

中期的にはインドネシアからの「処理済み鉱石ないしはニッケル銑鉄やニッケル製品の輸出増加」で徐々に上値は重くなると予想する。

なお、2020年のニッケル需給は、中国の需要見通しが前年比▲3.1%の130万2,000トンになることから、全体でも▲2.8%の250万6,000トンに減少すると予想される一方、供給は、中国の生産が▲2.7%の78万トンに減少、全体でも▲3.7%の246万トンへの減少が見込まれている。

結果、全体の需給は▲4万6,000トンの供給不足となるが、前年の▲6万5,000トンからは供給不足幅を縮小させる見込み。

以上から、2020年のニッケル平均価格は15,375ドルを予想。2021年については、インドネシアからの「処理後製品の供給増加」が見込まれることと、人口ボーナス期入りしたインドの需要増加などが相殺される形となるが、EVをはじめとする蓄電向けの需要増加が見込まれることから2020前年比で下落し、15,0000ドルとした。

上記見通しのリスクは、上昇リスクが米中通商協議が予想外に合意(根本解決)する場合、環境問題などを背景とする減産が増加する場合、米景気のが予想以上に減少し米大統領選挙をにらんだ政権からの圧力で、米利下げが予想以上のペースで行われること、その余地は限定されるが米国が財政出動に舵を切ること、中国・欧州の財政出動を伴う景気対策の規模拡大があった場合など。

下落リスクは米中通商協議がさらに悪化すること、欧州経済の混乱で中国の需要の減速が加速すること、中東で戦争が開戦となり、経済不安が拡大した場合などが考えられる。

◆主要ニュース


・11月日本国内企業物価指数 前月比+0.1%(前月+1.1%)、前年比+0.1%(▲0.4%)

・日本企業景況判断BSI Q220/Q419/Q319
 大企業製造業 1.0/0.7/▲7.8
 大企業非製造業 1.1/2.6/▲5.3
 中堅企業全産業 ▲0.8/▲0.9/▲10.7
 中小企業全産業 ▲6.5/▲9.6/▲16.3

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 +3.8%(前週▲9.2%)
 購入指数▲0.4%(+0.9%)
 借換指数+8.7%(▲15.6%)
 固定金利30年 3.98%(3.97%)
 15年 3.37%(3.37%)

・11月米消費者物価指数 前月比+0.3%(前月+0.4%)、前年比 +2.1%(+1.8%)
 コア 前月比+0.2%(+0.2%)、前年比+2.3%(+2.3%)

・11月米実質平均賃金 前年比+1.1%(前月+1.1%)、実質平均時給 +1.1%(+1.4%)

・FOMC、政策金利であるFFレートの誘導目標を1.50%~1.75%で据え置き。超過準備預金金利への付利も1.55%に据え置き。

・FOMC要旨、「10月会合以降に取得したデータでは、労働市場は力強さを維持し、経済活動は緩やかなペースで拡大したことが確認された。家計支出は堅調だが企業の設備投資と輸出は低いまま。インフレ率は2%を下回っている。今後の政策金利変更には、インフレ期待の指標、郎等市場の状況を示す指標のほか、国際・金融情勢についても考慮する。」

・FRBパウエル議長、「利上げは著しくて持続性のあるインフレ加速が必要。現在の金利が今後も適切になるだろう。」

・FOMC経済予測、2019年(前回予想)/2020年(前回予想)/2021年(前回予想)
 実質GDP予測中央値 2.2.0-2.2%(2.1-2.3%)/2.0-2.2%(1.8-2.1%)/1.8-2.0%(1.8-2.0%)

 失業率中央値 3.5-3.6%(3.6-3.7%)/3.5-3.7%(3.6-3.8%)/3.5-3.9%(3.6-3.9%)

 PCE価格指数 1.4-1.5%(1.5-1.6%)/1.8-1.9%(1.8-2.0%)/2.0-2.1%(2.0-2.0%)

 PCEコア指数 1.6-1.7%(1.7-1.8%)/1.9-2.0%(1.9-2.0%)/2.0-2.1%(2.0-2.0%)

 政策金利予想中央値  1.625%(1.875%)/1.625%(1.875%)/1.875%(2.125%)

・トルコのチャブシオール外相、ロシア製ミサイル防衛システムS400の購入を巡り、米国がトルコに制裁を科せば、トルコは報復すると表明。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油+0.8MB(クッシング▲3.4MB)
 ガソリン+5.4MB
 ディスティレート+4.1MB
 稼働率▲1.3%

 原油・石油製品輸出 8,612KBD(前週比+303KBD)
 原油輸出 3,261KBD(+192KBD)
 ガソリン輸出 903KBD(+25KBD)
 ディスティレート輸出 1,139KBD(▲6KBD)
 レジデュアル輸出 172KBD(+6KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,262KBD(+106KBD)
 その他石油製品輸出 1,673KBD(+1KBD)

・サウジアラムコ上場、値幅制限いっぱいの10%上昇。

・OPEC月報 世界石油需要 Q120:99.8、Q220:99.8、Q320:101.8、Q420:102.1、2020:100.9
 非OPEC供給(含むNGLs) Q120:65.8、Q220:66.1、Q320:66.5、Q420:67.5、2020:66.5
 Call on OPEC Q120:34.0、Q220:33.7、Q320:35.3、Q420:34.6、2020:34.4

※需要見通しが下方修正、非OPEC北米生産見通しが下方修正。

・米国、大量破壊兵器を輸送したとして、イランの海運・空運会社を制裁。

・イラン ロウハニ大統領、「制裁の迂回や交渉を通じて米国の制裁に打ち勝つ。対米交渉で越えてはならない一線を越えることはない。」

【メタル】
・米Nucuor Steel、鉄鋼製品価格を値上げ。

・Rio Tinto、Turquoise Hill、モンゴルのOyu Tolgoi鉱山の進捗を再確認。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ +3.21%/ +30.06%
2.プラチナ ( 貴金属 )/ +1.96%/ +18.13%
3.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +1.36%/ +31.42%
4.SHFニッケル ( ベースメタル )/ +1.21%/ +20.80%
5.銀 ( 貴金属 )/ +1.19%/ +8.83%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.LIFFEココア ( その他農産品 )/ ▲5.57%/ +5.55%
69.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ ▲5.17%/ ▲6.18%
68.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲3.90%/ ▲41.05%
67.NYM灯油 ( エネルギー )/ ▲1.87%/ +14.75%
66.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲1.84%/ ▲1.01%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :27,911.30(+29.58)
S&P500 :3,141.63(+9.11)
日経平均株価 :23,391.86(▲18.33)
ドル円 :108.56(▲0.16)
ユーロ円 :120.83(+0.24)
米10年債利回り :1.79(▲0.05)
独10年債利回り :▲0.32(▲0.03)
日10年債利回り :0.00(+0.02)
中国10年債利回り :3.19(▲0.01)
ビットコイン :7,191.95(▲30.14)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :21.19(+0.4)
エネルギー :30.17(+0.09)
ベースメタル :16.20(+0.44)
貴金属 :13.74(+0.26)
穀物 :15.55(▲0.12)
その他農畜産品 :24.03(+0.78)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :33.31(+0.13)
Brent :26.16(+0.16)
米天然ガス :55.75(▲0.3)
米ガソリン :31.40(+0.44)
ICEガスオイル :18.92(+0.12)
LME銅 :11.75(▲0.08)
LMEアルミニウム :12.05(▲0.01)
金 :12.05(+0.37)
プラチナ :20.14(+0.82)
トウモロコシ :14.41(▲0.1)
大豆 :12.05(+0.37)

【エネルギー】
WTI :58.76(▲0.48)
Brent :63.89(▲0.45)
Oman :64.38(▲0.66)
米ガソリン :162.61(▲2.64)
米灯油 :192.88(▲3.67)
ICEガスオイル :581.25(▲9.00)
米天然ガス :2.24(▲0.02)
英天然ガス :36.00(▲1.46)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :63.89(▲0.45)
SPO380cst :255.25(▲7.02)
SPOケロシン :75.84(▲1.09)
SPOガスオイル :75.28(▲1.09)
ICE ガスオイル :78.02(▲1.21)
NYMEX灯油 :193.10(▲1.37)

【貴金属】
金 :1474.88(+10.49)
銀 :16.86(+0.20)
プラチナ :939.94(+18.04)
パラジウム :1912.91(+13.95)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,109(+22:26C)
亜鉛 :2,224(+2:2C)
鉛 :1,917(+9:14C)
アルミニウム :1,758(+6:6.5C)
ニッケル :13,640(+550:105C)
錫 :17,375(+50:50B)
コバルト :34,320(▲6)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6144.50(+52.50)
亜鉛 :2227.00(+2.50)
鉛 :1934.00(+18.00)
アルミニウム :1759.50(+6.50)
ニッケル :13845.00(+430.00)
錫 :17125.00(▲285.00)
バルチック海運指数 :1,528.00(▲23.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :92.96(+0.90)
NYMEX鉄鉱石 :92.05(+0.69)
NYMEX原料炭スワップ先物 :139(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :4,000(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :3,528(+15)
米鉄スクラップ :休場( - )

【農産物】
大豆 :893.50(▲7.75)
シカゴ大豆ミール :293.30(▲3.60)
シカゴ大豆油 :31.23(▲0.24)
マレーシア パーム油 :2802.00(▲18.00)
シカゴ とうもろこし :357.75(▲5.50)
シカゴ小麦 :530.75(▲4.00)
シンガポールゴム :167.70(+1.30)
上海ゴム :12865.00(▲60.00)
砂糖 :13.42(▲0.04)
アラビカ :133.85(+1.80)
ロブスタ :1413.00(▲77.00)
綿花 :65.88(▲0.05)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :60.70(+0.23)
シカゴ生牛 :120.58(+0.70)
シカゴ飼育牛 :142.78(+1.13)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。