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米中交渉の思惑錯綜、高安まちまち
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年11月9日 第1638号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米中交渉の思惑錯綜、高安まちまち」

【昨日の市場動向総括】

週末の商品市場は、米中交渉に関する報道を巡り、その内容が異なったことから結果的に強弱まちまちとなり方向性が出難かった。

しかし、中国への依存が高いものは売られそうでないものは買われる、簡単に言えば鉱物資源は売られ、エネルギーや農産品セクターがそれなりに物色されたという印象である。

中国商務省は、米国と段階的な関税引き下げで合意した(それが第一弾合意に含まれている)というニュアンスの声明を発表、それに対してホワイトハウス側は段階的な関税引き下げに強硬に反対、トランプ大統領も「中国とは合意していない、向こうは合意をしたがっている」と発言したことで、評価が分かれた。

【本日の価格見通し総括】

週明け月曜日は目立った材料がないが、引き続き米中の通商交渉の動向に注目せざるを得ない。結局、正式な合意がなされない限り日々売り材料にも買い材料にもなり得る。

ただ、米中の置かれている状況を勘案すると何らかの妥協をせざるを得ない状況になりつつあると考えられる。中国は米国の譲歩を得たいと考えているが、その対価として農産品の購入を表明している。

しかし、中国は豚コレラ禍が収束しておらず、豚は譲歩ではなく「実際に欲しいもの」であり、米国側からすれば譲歩とみなしていないはずだ。しかもそれを持ってして段階的に関税を引き下げろというのは、そもそも覇権争いを前提とした経済制裁を行っている米国からすれば飲める話ではない。

さらに、ディール前提のトランプよりも、人権問題でさらに中国に厳しい対応を迫ると考えられるウォーレンが次期大統領となった場合、さらに中国の置かれている状況は厳しくなる。そのため、トランプ政権のうちに妥協をしたいというのが中国の立場となりつつあるのではないだろうか。

米国側も、世論調査で50%がウクライナ問題でトランプ大統領は弾劾されるべきだ、という声が強まっている。支持率回復のためには中国との「ディール」をまとめた、という実績が欲しいというのがトランプ大統領の本音だろう。

と考えると、何らかの妥協があるというのがメインシナリオとなってもおかしくない。しかし同様に覇権争いであるためこの問題が一時的な解決があっても長期化する、というのもメインシナリオである。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日発表された中国の貿易統計は、輸入・輸出とも市場予想を上回る内容だった。ただし前年比マイナスの状態は続いており良好とはいえない。

貿易収支黒字は428.1億ドルと前月の391.9億ドルから拡大した。これは輸出の減速が比較的限定された(▲3.2%→▲0.9%)一方、内需の弱さから輸入の水準が低かった(▲8.3%→▲6.4%)ためである。

輸入の減速は製造業PMIなどに見られるように、国内景気の減速感が強いことが影響していると見られる。その一方で輸出は、米国・日本を除けば前月から改善している。特にアセアン諸国(+9.5%→+10.4%)向けの輸出が伸びる一方、景気減速が懸念される欧州向けは+5.1%→+5.1%と横ばいを維持、台湾や韓国向けも堅調に推移した。

米中の通商交渉が近々妥結するとの期待感が高まっているが、国内の景気に底入れ・回復の見通しは立っておらず、中国の交易量の伸びは輸出入合計で前年比ベースでの減速状態が続くものと予想される。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.2%→+3.0%)ている。2020年も+3.4%(▲0.1%)に引き下げた。

ただし2020年の回復はイランやトルコ、アルゼンチンなどの政治的に不安定な国の回復を想定しているため、先行き見通しも極めて不透明。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっている。トランプ大統領はヒートアップしているようだが、恐らく年内あったとしてお後1回程度(▲25bp程度)の利下げに留まる(金融面の価格下支え期待の後退)。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q219の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.4%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商交渉は一進一退でどのような着地になるかよくわからないが、完全に解決(米国が、中国が軍事技術に転用し、安全保障上の脅威となる可能性があるため、最も重要と考えている技術の強制移転や知的財産権保護を中国が確約)するまでは景気循環銘柄価格の下落要因となりやすい。

通商面のみならず、資本フローの規制や、人権問題への制裁なども加わっており、通商面で妥協があったとしてもその他の分野での制裁発動の可能性は高い。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫していることで、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、サウジアラビアがイランに対して報復攻撃を行うなどのリスク(原油は上昇要因、その他の景気循環銘柄には下落要因。ただしアラムコIPOを控えてその可能性はほとんどない)。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。EUは英国のEU離脱期限延長で合意したが、議会の構成が変わらなければ英議会で離脱案が否決される可能性が高い。

これを解消するため、ジョンソン首相は解散総選挙を目指しているが野党の合意が得られていない状況。選挙が行われなければ、過去の経緯を見るに再びEUと離脱を巡って混乱が生じる可能性。ハードブレグジットの可能性は排除すべきではない(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は上昇した。ミシガン大学消費者マインド指数の先行指数が改善、先行きの景気不安が後退したことが材料となった。

米中通商協議に関する各社報道が錯綜しているが、総じて市場は米中交渉の先行きを楽観しているようで、トランプ大統領の米中は合意していない発言に大きく反応しなかった。

昨日発表された中国の貿易統計では、原油の輸入が4,551.1万トン(1,086万バレル/日)と過去最高を更新。世界最大の原油輸入国となり、今後、特に中東・欧州原油価格動向に中国の景気動向が与えるリスクはさらに増すことが予想される。

ただしこのことは、中国の景況感(工業生産や個人消費)の動向が、原油価格に与える影響が大きくなることを意味し、今までのような米国の経済動向が原油価格に対して最も説明力が高い、という状況は徐々に薄れていくものと思われる。

ただ、現時点でも米国は世界最大の原油消費国であり、米国経済の動向が原油価格に与える影響は最も大きい状態に変わりはない。

【原油価格見通し】

原油価格は、米主要統計の改善で米国の景気後退入り回避期待が高まっていることが価格の上昇要因となるが、欧米の景況感格差からドル高が進行しやすいため、もみ合うものと考える。

米中交渉の先行きや、英国の解散総選挙やブレグジットを巡る動向は最終合意に至るまでは買い材料にも、売り材料にもなる。週末は米中合意をトランプ大統領が否定したものの、米中の置かれている状況を勘案すると合意の方向に向かっていると市場は判断し始めている。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めの方針のようだが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めているとみられ、エネルギーセクターにおいても今後の大きなテーマとなると見られる。財政出動は使途にもよるが、エネルギー価格の押し上げ要因になると考える。

なお、景気の減速に伴う価格下落(歳入確保のための増産)やサウジアラビアに対するドローン攻撃(テロの低コスト化・大規模化に伴う供給途絶)の影響で、供給側(特にOPECプラス)の動きが価格に与える影響は小さくなくなっている。

米中協議は一進一退が続いているため、短期的には売り材料にも、買い材料にもなるが、「どちらかが倒れるまで形を変えながら継続する」類のイベントであり、中国の覇権国への野望を挫くまで米国の制裁は続くと考えられるため、基本的には売り材料である。

協議が進捗したとしても、「景気にプラスではなく、制裁前の状態に戻るだけ」であり、世界景気が減速している中では合意があったとしても大きな価格上昇要因にはならないと考えている。

なお、ニュースでは材料にされているが、12月のOPEC総会で減産に積極的なのは、就任以降の実績が乏しく、IPOを控えているサウジアラビア程度であり、ロシアは減産継続で応分の協力はするだろうが、恐らく減産拡大は見送られ、売り材料になるとみている。

現在、エクアドルの脱退などを受けてブラジルをOPECに加盟させるよう、サウジアラビアは動いている。ブラジルの生産量は268万バレルであり、実際に加盟し、OPECの方針に従うならばその影響力は小さくない。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅上昇。目立った手がかり材料はないが、季節的な需要増加で天然ガス価格も上昇していることや、中国の年内の輸入減速観測を受けて価格はもみ合っている。

週末発表の中国の貿易統計では、石炭輸入は減速した。燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、この減速はほぼ季節性通りで、2,569万トンとなった。ただし、以前として過去5年の最高水準を上回っている。

今後に関しては輸入規制が導入されると見られるため、11月以降の石炭輸入は減少すると予想される。

【石炭価格見通し】

石炭価格はピークシーズン入りしていることから、上昇すると見るが、欧州地域の景況感悪化に伴う天然ガス価格の低迷、中国統計の減速、中国政府の石炭輸入制限を受けた輸入需要の減速を受けて低水準を維持する見込み。

バルチック海運指数は小幅に上昇していたが、予想通り再び水準を切下げ始めた。冬場のピークシーズンに向けて輸入が増加していたが、中国政府が特に石炭に関して輸入量を前年並みにする目標であるため、昨年と同様、冬場にかけてはバルチック海運指数の低下とともに、石炭価格が季節性を無視して低迷すると予想される。

9月の中国石炭生産が同じ時期の過去5年の最高となる3,241万トンと高水準を維持、中国の国内供給は増加。中国政府は年間の石炭輸入量を2億8,000万トンに制限する目標を掲げている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・景気が減速する中でのOPECプラスの減産継続は、その効果が限定されはするものの一定の下支え効果をもたらす見込み。

しかし、現時点で減産に積極的なのは、IPOを控えてアラムコの評価額を上げたいと考えているサウジアラビア程度であり、最大のパートナーとなったロシアは減産継続では協力するだろうが、減産幅の拡大はないだろう。

むしろ価格が下落を始めた時に、歳入確保のために増産バイアスがかかることによる下落リスクを警戒したほうが良いかもしれない。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・サウジアラビアの石油施設の修復は完了したと報じられているが、実際は完了していないとの報道もあり、供給面は実態が把握される中で上昇リスクになる可能性。

なお、サウジアラビアがイランに対して報復を行う可能性は、アラムコのIPOを控えていることもあり、現時点ではほぼゼロに近いと見る。

また、今回のドローン攻撃でテロが低価格化・大規模化することが分かったことは、中東の供給途絶リスクを従来よりも高めるものであり、従来以上に中東情勢は重要に。

・ブラジルのOPEC加盟。ブラジルの生産量は2018年で268万バレルであり、世界供給の2.8%に達するため、実際に加盟し、サウジアラビアの意向に沿う生産を行うならば、OPECの価格支配能力は若干の改善が見込まれる。

・イエメンでの内戦が一時停戦となったことは、地政学的なリスクを低減させ、原油価格の下落要因に。

・トルコ軍のシリアへの侵攻は、ロシアの仲介でとりあえず終了。域内に「緩衝地帯」を設けることで合意した。ロシアの支援を受けているアサド政権側もこれを飲まざるを得なくなった模様。

トルコはこの地域にシリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTI、Brentともロングが増加、ショートが減少している。ロングの増加は景気の先行きへの懸念が後退したこと、ショートの減少は、サウジアラビアなどの減産観測が意識されていることが影響したようだ。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが565,026枚(前週比 +12,784枚)、ショートが158,886枚(▲10,009枚)、ネットロングは406,140枚(+22,793枚)、Brentが360,231枚(前週比+24,500枚)、ショートが77,879枚(▲3,853枚)、ネットロングは282,352枚(+28,353枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は総じて堅調な推移となった。目立った手がかり材料がない中で、米統計の改善や米中交渉の先行きを懸念したドル高が価格を下押しした。

昨日発表された中国の貿易統計では、銅地金・製品の輸入量が43万1,000トンと、同じ時期の過去5年の最高水準となった。また、銅鉱石の輸入も191万4,000トンとやはり過去5年の最高水準を上回った。

現在中国の銅取引所在庫は急速に減少しており、需要が増加している可能性が高い。恐らく年後半に向けて行われる電線向け投資が徐々に顕在化し始めたためと考えられる。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、米重要統計の改善が価格を押し上げるものの、欧米景況感格差からのドル高進行が相殺するため、結局レンジワークになると考える。

米中交渉の先行きや、英国の解散総選挙やブレグジットを巡る動向は最終合意に至るまでは買い材料にも、売り材料にもなる。週末は米中合意をトランプ大統領が否定したものの、米中の置かれている状況を勘案すると合意の方向に向かっていると市場は判断し始めている。

FOMCは、一旦利下げを打ち止めの方針のようだが、仮に景気に減速感が強まれば速やかに利下げをする方針であり、下支え効果をもたらしつつも価格を大きく押し上げる材料にはならないだろう。

仮に景気が後退した場合、金融政策の効果が限定される中で各国とも、より直接的に景気を刺激する財政出動を検討し始めていることが、非鉄金属においても今後の大きなテーマとなると見られる。財政出動は使途にもよるが、非鉄金属価格の押し上げ要因となる見込み。

米中協議は一進一退が続いているため、短期的には売り材料にも、買い材料にもなるが、「どちらかが倒れるまで形を変えながら継続する」類のイベントであり、中国の覇権国への野望を挫くまで米国の制裁は続くと考えられるため、基本的には売り材料である。

協議が進捗したとしても、「景気にプラスではなく、制裁前の状態に戻るだけ」であり、世界景気が減速している中では合意があったとしても大きな価格上昇要因にはならないと考えている。

中長期的には非鉄金属価格は上昇すると予想されるが、結局、中国、欧州の景気がどこで底入れするのか、米国経済の後退がいつから始まるのか、に依拠する。

来年の大統領選挙を睨んで米国がどのような対応をしてくるかが不透明であるが、こうした政策期待効果を除けば、底入れ感が出てくるのは来年の春~夏にかけてになると見ている。中期的には現状水準でのもみ合いが続こう。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。

ニッケルに関しては、インドネシアの輸出規制は再び解除されることになった。

インドネシアの供給シェアはニッケル含有分ベースで25%であるため、原油に例えれば、サウジアラビアとロシアの供給が同時に停止するぐらいのインパクトがある話である。

しかし、景況感の悪化が強く意識されているため、今のところそこまでの上昇になっていない。徐々にその状況の厳しさが意識され上昇余地を試す動きになると考える。

2014年の規制開始後を参考にすると、来年7月頃(下期)からの下落が予想される。

なお、足元はチャート上のレジスタンスライン(50日移動平均線、17,000ドル)が上値として意識されている状況。ここを抜けた場合、再び20,000ドルが意識されることになる。一方、下値としては15,500ドル(100日移動平均線)が意識されることになるだろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは再び悪化し、閾値の50を下回る状態が続いている。規模別でみた場合、大企業と中小企業の景況感が悪化した(価格を下押し)。

在庫水準はやや低下しているものの、新規受注の落ち込みの影響で、新規受注/完成品在庫レシオは若干低下している。

・1-9月期中国工業生産は、前年比+5.6%(1-8月期+5.6%)、9月+5.8%(前月+4.4%)と月次ベースでは回復(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-9月期中国固定資産投資は、前年比?5.4%の46兆1,204億元(1-8月期+5.5%の40兆628億元)、公的セクター+7.3%(+7.1%)、民間セクター+4.7%(+4.9%)と規模の大きな民間セクターが減速(ストック需要の減速=価格下落要因)。

・1-9月期中国不動産開発投資は、前年比+10.5%の9兆8,008億元(1-8月期+10.5%の8兆4,589億元)と高い水準を維持してはいる。

しかし、中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、Valeの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

HydroのAlunorteアルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展し、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・11月1日付のLMEポジションは銅と錫がロング減少、ショートが増加、それ以外はロングが大幅に増加し、ショートも買戻しが進んだ。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲17.5億ドル(前週▲34.2億ドル)と売り越し幅を縮小。売り越し額の減少率は▲48.8%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲579千トン(▲1,072千トン)と売り越し幅を縮小した。鉛、亜鉛、ニッケル、錫はネット買い越し。ネット売り越しの減少率は▲46.0%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品先物価格は中心限月が横ばい、直近限月が下落した。

昨日発表された貿易統計で鉄鉱石輸入が減少したこと、鉄鋼製品輸出が過去5年の最低水準に落ち込んだことが材料となった。

昨日発表された中国の貿易統計では、鉄鉱石の輸入量は前月からは減速したが9,290万トンと高い水準を維持した。

冬場の鉄鋼製品生産規制が予想ほど厳しくないと見られていることや、過去5年平均を下回っていた鉄鉱石在庫水準を考えると、生産減少期となる冬場に向けた調達意欲が旺盛であることを確認させるものだ。

鉄鋼製品の輸出は478万2,000トンと過去5年の最低水準を下回り、輸出需要が停滞していることを示唆。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入もほぼ季節性通り減少し、2,569万トンとなった。ただし、以前として過去5年の最高水準を上回っている。

今後に関しては輸入規制が導入されると見られるため、11月以降の石炭輸入は減少すると予想される。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、最大消費国である中国の公共投資に伴う需要増加が価格を押し上げるものの、冬場の鉄鋼製品生産規制が緩和される見通しであることから鉄鋼製品価格が横ばい推移すると予想される中(需要面)、Valeの鉱山生産が回復すると見られていること(供給面)が価格を下押しするため、結局レンジワークになると考える。

ただし、来年以降は生産者の生産回復が見込まれるものの、早ければ春~夏にかけて景気が底入れする可能性があるため、鉄鉱石価格は下落したのちに底堅い推移になると予想する。

米中協議に関しては合意に至るまで強弱材料両方になり得るが、米中の対立は覇権争いであり簡単に終了するわけではなく、やはり長期的な視点からは中国景気にマイナスとなり、売り材料と考えるべきだろう。

週末に関しては報道によって内容が異なったが、中国が通商合意を求める一方で米国はトランプ大統領がそれを否定する発言をしており、合意したい中国とそれを見透かしている米国、という構図に見える形だった。結果、鉱物資源には売り材料とされたようだ。

原料炭も鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、同様に下値余地を探りやすくなっている。回復があるとすれば、その他の景気循環系商品と同様、春~夏にかけてになるのではないか。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは41.3(前月44.2)と減速。新規受注の低迷(37.9→31.6)が続いていること、生産が減速したこと(43.2→42.3)が影響した。

生産減少の影響で、完成品在庫は45.6→36.8と大きく減少、原材料在庫も49.0→37.9と低下した。この結果、新規受注在庫レシオは完成品・原材料とも上昇しており、需要の減速がありながらも需給がタイト化していることを伺わせる内容。

しかし、Valeの生産は年末から年明けにかけて回復の見込みであり、供給面は需給緩和に寄与しやすく、鉄鋼製品・鉄鉱原料の需給は緩和方向に。

・中国の9月の鉄鉱石輸入実績は9,936万トンと同じ時期の過去5年の最高水準に迫った。生産調整や年初の鉄鋼製品価格の上昇を受けた増産で在庫水準が低下したことによる、在庫の再積み増しの動きであり、需要の回復に伴う輸入増加である可能性は高くない。

石炭も輸入は過去5年の最高水準を上回り、9月は3,029万トン。ただしこちらも冬場の生産調整や、今年も輸入制限が行われる可能性が高いことを背景とした、前倒し輸入と考えられる。

・1-9月期中国工業生産は、前年比+5.6%(1-8月期+5.6%)、9月+5.8%(前月+4.4%)と月次ベースでは回復(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-9月期中国固定資産投資は、前年比?5.4%の46兆1,204億元(1-8月期+5.5%の40兆628億元)、公的セクター+7.3%(+7.1%)、民間セクター+4.7%(+4.9%)と規模の大きな民間セクターが減速(ストック需要の減速=価格下落要因)。

・1-9月期中国不動産開発投資は、前年比+10.5%の9兆8,008億元(1-8月期+10.5%の8兆4,589億元)と高い水準を維持してはいる。

しかし、中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲56.9万トンの957.9万トン(過去5年平均939.1万トン)と例年を上回っている。しかしその上振れ幅は週を追うごとに縮小している。

しかし、冬場の生産規制がやや緩和される見通しであり、季節性を無視して鉄鋼製品在庫が増加する可能性はあるとみている。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+10万トンの1億3,175万トン(過去5年平均1億1,609万トン)、在庫日数は±0.0日の28.4日(過去5年平均 28.6日)と再び在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化している。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・Vale、Rio Tintoの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む金融市場の緩和を進めているほか、地方政府にも債券発行枠の拡大を認めるなど、景気テコ入れのため公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金・銀価格は下落した。米中協議が進捗するとの期待や、米ミシガン大学指数の改善などがリスク回避姿勢を弱めたことが材料。

PGMは金銀が下落したことを受けて水準を切り下げた。株高はあまり材料とならなかった。

【貴金属価格見通し】

金価格は、米国の経済統計の安定を受け、目先の米利下げ観測が後退したことからやや軟調な推移になると考える。

ただし、低金利低策は持続する見込みであること、米中交渉は解決したわけではないことや、英国のEU離脱の先行きが不透明なことから、下値余地も限定され、結果的に高値圏での推移になると予想する。

なお、米中の対立や英国のEU離脱がソフトであっても、ハードであっても景気を下押しすること、香港情勢、シリアを含む中東情勢の不安定さも価格押し上げに寄与すると予想する。

米中協議は一進一退が続いているが、「どちらかが倒れるまで形を変えながら継続する」類のイベントであり、中国の覇権国への野望を挫くまで米国の制裁は続くと考えられるため、基本的には金銀の買い材料となる。

協議が進捗したとしても、「景気にプラスではなく、制裁前の状態に戻るだけ」であり、世界景気が減速している中では合意があったとしても大きな価格下落要因にはならないと考えている。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)が低下しており、金銀レシオの低下(銀は対金で割高に)を肯定する状況になっている。

PGM価格は金銀価格が下値余地を探る見通しであるが、足元の地政学的リスクの低下や、世界の自動車販売の前年比減速が底入れした感じが出てきていることから対金銀で割高に推移すると考える。

中国の自動車販売が15ヵ月連続のマイナスとなるなど、需給ファンダメンタルズ面は需要面の減速が懸念される状況。世界自動車販売も13ヵ月連続の前年比マイナス。

しかしいずれも前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めており、需要面でも価格が押し上げられる可能性は高まっている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が高まっているが、FRBは10月のFOMCで▲25bpの利下げを実施。当面利下げは行われない見込み。さらなる追加利下げはあっても後1回程度とみられるため、下支え効果は限定か。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するにはまだ時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・米中通商交渉が一部進捗しているが、基本的に覇権争いであるためこの問題が簡単に片付くことはなく、安全資産需要を下支えする見込み。

米国は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決と、それによって民間技術が軍事転用されないようにすることが最終目標であり、根本的な解決には相当な時間がかかる見込み(価格の下支え要因)。

・サウジアラビアがイランに対して報復を行う可能性は、アラムコのIPOを控えていることもあり、現時点ではほぼゼロに近いと見る(金銀価格の下落要因)。

イエメンでの内戦が一時停戦となったことも、地政学的なリスクを低下させ、金銀価格の下落要因に。

・トルコ軍のシリアへの侵攻は、ロシアの仲介でとりあえず終了。域内に「緩衝地帯」を設けることで合意した。ロシアの支援を受けているアサド政権側もこれを飲まざるを得なくなった模様。

トルコはこの地域にシリア難民数百万人を送り込み、さらにこの地域を管理する方針であり、民族間の対立が強まる可能性も(金銀価格の上昇要因)。

・英国のEU離脱はEUが離脱期限延長で合意したが、英議会で否決される可能性はあり、金価格の上昇要因に(無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀とも、ロング・ショートとも増加しているが、金はロング増加が顕著だったためネット買い越し幅を拡大、銀はショートの増加が大きかったため買い越し幅を縮小している。

地政学的リスクの高まりと、利下げ打ち止め観測の綱引きが続いている状況。

プラチナはロング・ショートとも増加し、ネットロングが増加、パラジウムはロングが減少、ショートが増加し、弱気に転じている。

ただし自動車販売の前年比減少に底打ち感が広がっていることから、特に供給が制限されるパラジウムは、徐々に持ち直すと予想される。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが344,591枚(前週比 +9,168枚)、ショートが64,763枚(+5,855枚)、ネットロングは279,828枚(+3,313枚)、銀が97,174枚(+1,806枚)、ショートが49,177枚(+7,487枚)、ネットロングは47,997枚(▲5,681枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが60,204枚(前週比 +3,479枚)、ショートが14,509枚(+81枚)、ネットロングは45,695枚(+3,398枚)、パラジウムが17,931枚(▲719枚)、ショートが5,641枚(+249枚)、ネットロングは12,290枚(▲968枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は高安まちまち。トウモロコシは米需給報告で単収や生産見通しが下方修正されたことが回材料視された。

大豆は在庫見通しが上方修正されたこと、小麦は生産見通し、在庫見通しとも引き下げられたがむしろドル高が意識された。

昨日発表された中国の貿易統計では、大豆の輸入が急速に減速し、過去5年の最高水準を下回った。

前月からの急減は季節性によるものだが、米中合意で輸入が増加するとの見方はあったが、結局豚コレラの影響が大きく、そこまで大豆が必要な状況ではない、ということだろう。実際、中国の大豆在庫はまだ過去5年の最低水準を下回っている。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は高値圏でもみ合うものと考える。かねてから米国の生産は下振れリスクが意識されてきたが、生産地の天候条件が不安定で収穫に遅れが出ていること、米中交渉の進捗期待が再び高まっていることが価格を押し上げるが、ハーベスト・プレッシャーが価格を下押しするため。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産見通し上方修正による需給緩和観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・11月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億6,100万Bu(市場予想136億399万Bu、前月137億7,790万Bu)大豆 35億5,000万Bu(35億1,276万Bu、35億5,000万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億6,200万Bu)

・10月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ 19億1,000万Bu(市場予想17億9,989万Bu、前月19億2,900万Bu)大豆 4億7,500万Bu(4億3,189万Bu、4億6,000万Bu)小麦在庫 10億1,400万Bu(10億3,007万Bu、10億4,300万Bu)

・9月末の四半期在庫トウモロコシ 21億1,400万Bu(市場予想24億1,804万Bu)大豆 9億1,300万Bu(9億8,126万Bu)小麦 23億8,500万Bu(23億1,858万Bu)

(特殊要因)

・米中通商交渉は一部合意が近い、と伝えられており足元シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、長期化の可能性は高くシカゴ定期の下落要因に。

・エルニーニョ現象は収束したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・全ての穀物が、ロングが減少し、ショートが増加している。米中交渉への不安にハーベスト・プレッシャーがかかった形。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが300,831枚(前週比 ▲2,619枚)、ショートが326,818枚(+15,315枚)、ネットロングは▲25,987枚(▲17,934枚)、大豆はロングが178,316枚(▲4,432枚)、ショートが86,383枚(+6,318枚)、ネットロングは91,933枚(▲10,750枚)、小麦はロングが98,745枚(▲2,326枚)、ショートが87,627枚(+3,413枚)、ネットロングは11,118枚(▲5,739枚)

◆本日のMRA's Eye


「2020年の主要リスク」

2020年の世界景気は、景気の循環的な回復や、米国の予防的な利下げの影響で春から夏にかけて底入れし、大統領選が意識される中で緩やかに回復する展開をメインシナリオとしている。

しかし。リーマンショック以降の世界的な大規模金融緩和の影響や、日本が先頭ランナーであるが、財政の大盤振る舞いの影響で、景気を刺激するための手段が世界的に限られているのが実情。

景気が回復したとしてもその回復ペースは緩慢なものに留まると予想される。

米国国債利回りの前年比とISM製造業指数を比較してみると、興味深いことが分かる。利回りの前年比の悪化=景気が昨年よりも悪いことを意味しているが、現在の長期金利の前年変化の水準は、過去データを元にすると、「回復するか、リセッション入りするか」の瀬戸際である。

過去7回、同様の水準まで長期金利の前年比が低下したことがあるが、そのうち4回、リセッション入りしている。その観点からすると、来年、景気がリセッション入りする可能性は50:50といったところだろう。

本日のMRA's Eyeでは、そのリセッション入りする可能性があるリスク要因の内、主要なものを検討したい。なお、意識しておくべきリスクが複数あるが、概ね政治に関連するものである。

1.米中対立の激化

大統領選挙や国内経済の減速を背景に通商面で何らかの合意がある、というのがコンセンサスとなっているが、米中対立の本質は軍事面での対立であり、米国の技術を民間を通じて軍事転用しようとしている中国共産党の封じ込めと、それに抵抗する中国共産党の争いである。

そのため、形を変え、範囲を変え、この対立が継続すると見るべきであり、基本的には景気の下押し要因となる。

仮に合意する、あるいは制裁範囲が緩和すると期待されている通商面で合意に至らなかった場合、世界経済の下押し要因となることは間違いがない。

2.英国の無秩序離脱の可能性

EUが離脱期限を1月末まで延長したが、12月の総選挙の結果いかんで1月末の合意離脱が成功しない可能性が出てくる。

また、仮に1月末までに合意したとしても来年末までの移行期間中に調整がつかず、2020年末に無秩序離脱、ないしは再びEUと交渉で混乱、というシナリオは十分にあり得る話だ。

3.中国企業・州政府のデフォルト

この可能性は高くはないが、米国が中国に対する制裁に関し、資本規制まで踏み込んできた場合、ない話ではなくなってくる。

少なくとも現在の中国は民間部門の資金繰りが厳しい状態が続いており、デフォルトしそうな企業は大企業(国営企業)が買収して救済する、という流れになっている。

まだ中国政府の体力はあるため、このリスクが直ちに顕在化するとは考え難い。しかしすでに人口動態的にピークを越えた中国の景気は、バブル崩壊後の日本と同じ状況にあるといえこのリスクは無視できない。

4.米大統領選挙の熱狂と沈静化

トランプ大統領のウクライナ問題を巡り、弾劾調査が始まった。これまでの報道を見るに米大統領がウクライナに圧力をかけた可能性が高そうだ。そうであっても米国の上院でトランプ大統領を「クロ」と判断しない限りは、弾劾は成立しない。

しかし、国民の50%がトランプ大統領は弾劾されるべきとしており、世論の風向きによっては予想外の弾劾、ということもあり得る。この場合、ペンス副大統領が大統領に昇格となるが、良かれ悪しかれ「トランプ支持者なので共和党を支持している」有権者も多いため、ペンス副大統領が求心力を維持して、選挙戦を戦えるかどうかは疑問だ。

そうなった場合、民主党が大統領選・議会選に勝利することになるが、対中政策や中東、特にサウジアラビアに対する対応がより強硬になる可能性がある。ただでさえ中東情勢はサウジアラビアの求心力低下と、トルコのシリア侵攻、それに伴うイスラム国兵士の逃亡で、不安定さを増している状況である。

また、ウォーレン氏が民主党候補となり勝利した場合、リベラル派に多く見られるように、社会主義的な政策が推進され企業業績にマイナスになる可能性は高い。選挙戦結果を受けた2021年に向けての景気後退のリスクは無視できない。

5.世界各地で頻発するデモ

香港のデモがメディアでも取り上げられているが、実は世界中でデモが発生している。商品の分野では、チリで発生しているデモや暴動、イラクやレバノンで起きているデモは無視できないと考えている。

チリは地下鉄運賃の引き上げをきっかけに発生したデモだ。これはそれがきっかけになっただけであり、根本には国内の所得格差の拡大や失業、各種公共サービスへの不満といった大きな問題がある。

イラクのデモも原油価格が下落する中で財政状況が悪化、政治家の汚職や失業率の問題が背景。

懸念されるのが、トルコのシリア侵攻で、多くのイスラム国戦闘員が脱獄していること。再びイラクやシリアでイスラム国が台頭するリスクは無視できない。

この場合、多数の難民が発生して欧州に流入、ただでさえ景気が減速している同地域が混乱する可能性は高い。このほかにも地図にするとこれだけのデモが世界で発生している。2020年はこうしたリスクが各所で顕在化すると考えておいた方が良いだろう。

6.異常気象の発生リスク

2018年に英保険大手のロイズが発表した、「都市リスクレポート」では、災害発生時の経済的損失(GDPに対するリスク量)が最も大きい都市に東京が選ばれた。

理由として、台風(33.5億ドル)、洪水(19.4億ドル)、地震(18.9億ドル)、リーマンショックなどによる市場の崩壊リスク(18.2億ドル)、津波(3.9億ドル)が挙げられた。

また地政学的に朝鮮半島を巡る国際的な対立のリスクが最も大きく、潜在的に年間89.8億ドルに相当するリスクとなる。朝鮮半島有事は、政治的な対応によって軽減が可能であるため、対処や予期が困難なリスクは台風や、市場崩壊のリスクの方が大きいと考えるべきか。

2020年はラニーニャ現象の発生が懸念されている。ラニーニャ現象が発生した場合、一般に日本では夏から秋の初めにかけて全国的に高温となり、冬場は逆に厳冬となることが多い。

ラニーニャ発生時は台風の勢力が弱くなるとされており、今年や昨年に見られたような、国内での大規模被害の影響は大きくないと考えられる。

しかし、近年ラニーニャ発生時には豪雨が発生しており、冬場は豪雪となっているため秋~冬場の災害リスクが高まるためこの点にも注意が必要だ

7.株価の急落リスク現在、米中合意への期待や経済統計の底入れ期待に、米国の予防的な利下げが重なり、株価は水準を切り上げている。しかし今年1月からの価格上昇を見るに、「実体経済の状況を反映しやすい」原油や銅の価格は、株ほど上昇していない。このことは、株が実力以上に上昇していることを示唆するものだ。

株は世界的に「スタートアップ・バブル」で、海のものとも、山のものともわからない企業に対しても巨額の資金が流入するようになった。しかも巨額の投資が行われるのが定常化している。これはそれだけ、余剰資金が向かう先がないことを示している。

原油や銅との価格乖離を見るに、現在の株価は実体経済から乖離している可能性が高い。すでに株価は景気の先行指標ではなくなっていると考えるべきであり、株価の急落に伴う投資マインドの悪化や、それに伴うポートフォリオの棄損が金融市場に大きな影響を与えるリスクは無視できない。場合によると信用リスク顕在化の引き金となる可能性もあるため、無視できないリスクといえるだろう。

株価と商品価格の乖離については、今後も注意深くウォッチしていく必要があると考える。

◆主要ニュース


・9月日本家計支出 前年比+9.5%(前月+1.0%)

・9月日本毎月勤労統計 現金給与総額 前年比+0.8%(前月▲0.1%)
 実質賃金総額 +0.6%(▲0.5%)

・9月日本家計支出 前年比+9.5%(前月+1.0%)

・9月日本景気動向指数速報 先行指数 92.2(前月改定 91.9)、景気一致指数 101.0(99.0)

・10月中国貿易収支 428.1億ドルの黒字(前月391.9億ドルの黒字)
 輸出総額 前年比▲0.9%(▲3.2%)
 輸入総額▲6.4%(▲8.3%)

 輸出年初来ベース
  対米国 前年比 ▲11.3%(▲10.7%)
  対欧州 +5.1%(+5.1%)
  対日本 ▲2.1%(▲1.5%)
  対アセアン諸国 +10.4%(+9.5%)

 輸入
  対米国 前年比 ▲25.4%(▲26.4%)
  対欧州 +0.1%(+0.3%)
  対日本 ▲7.6%(▲7.6%)
  対アセアン諸国 +1.9%(+1.6%)

・9月独経常収支 255億ユーロの黒字(前月173億ユーロの黒字)
 貿易収支211億ユーロの黒字(164億ユーロの黒字)
 輸出 前月比+1.5%(▲0.9%)、輸入+1.3%(+0.1%)

・9月米卸売在庫改定 前月比▲0.4%(速報比▲0.1%、前月±0.0%)、卸売売上高 ±0.0%(▲0.1%)

・11月米ミシガン大学消費者マインド指数速報 95.7(前月95.5)
 現況指数 110.9(113.2)
 先行指数 85.9(84.2)
 1年期待インフレ率 2.5%(2.5%)
 5年期待インフレ率 2.4%(2.3%)

・アトランタ連銀ボスティック総裁(投票権なし・中間派)、「施策金利据え置きに満足。投票権があったなら、10月の利下げに反対していただろう。米金融政策当局は、政策手段を温存していく必要があるからだ。」

・米トランプ大統領、「米国は中国と関税の撤回で合意していない。中国は撤回を望むだろうが、私は何にも同意していない。」

・仏マクロン大統領、「同盟関係に関する米国の無関心が原因で、NATOは脳死状態に近い。」

・トルコ エルドアン大統領、「外国軍がシリアに駐留するなら軍撤退しない。」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数684(前週比▲7)、 ガスリグ 130(前週比±0)。

・10月中国石炭輸入 2,568.5万トン(前月3,028.8万トン)、輸出34万トン(24万トン)

・10月中国原油輸入 4,551万トン、1,086万バレル/日
(前月4,124万トン、1,017万バレル/日)
 輸出 NA(8万トン)
 精製石油製品輸入 222万トン(14万トン)
 輸出 500万トン(568万トン)

※原油1トン=7.4バレルとして算出。石油製品は種類の内訳が不明のためバレル換算していない。

・10月中国天然ガス輸入 652万トン(前月821万トン)

・サウジアラムコ、IPOの目論見書を公表。ブックビルディングを17日から開始。1-9月期のアラムコの純利益は682億ドル(前年831億ドル)。

・イラン、南部フージスターン州のマフシャフル上空でドローンを撃墜と報道。米国は関与を否定。

【メタル】
・10月中国銅輸入 43万トン(前月 45万トン)
 銅鉱石・精鉱 191万トン(158万トン)
 アルミ(未加工品含む) 輸出 43万トン(44万トン)

・10月中国鉄鉱石輸入 9,286万トン(前月9,936万トン)

・チリ、港湾、鉱山、建設、小売り、教育、医療などの分野の労働組合、11月12日から24時間のストライキを呼びかけ。

・フィリピン Tampakan金鉱山、稼働停止。

・チリの10月の非鉄金属輸出、この2年で最低の25億ドルに

・SMM、「10月の中国亜鉛生産 前年比+2.64%の529,300トン。調査による精錬キャパシティは608.5万トン/年。」

・ICBCスタンダードバンク、非鉄金属と株式部門を閉鎖。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICEココア ( その他農産品 )/ +2.58%/ +3.60%
2.LIFFEココア ( その他農産品 )/ +2.18%/ +9.06%
3.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +1.85%/ +26.05%
4.ICE粗糖 ( その他農産品 )/ +1.45%/ +4.49%
5.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ +1.30%/ ▲22.25%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ビットコイン ( その他 )/ ▲4.41%/ +139.61%
69.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲3.01%/ +38.52%
68.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ ▲2.70%/ +12.60%
67.TGEトウモロコシ ( 穀物 )/ ▲2.45%/ ▲9.55%
66.プラチナ ( 貴金属 )/ ▲2.37%/ +11.64%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :27,663.38(▲11.42)
S&P500 :3,087.69(+2.51)
日経平均株価 :23,391.87(+61.55)
ドル円 :109.21(▲0.07)
ユーロ円 :120.36(▲0.39)
米10年債利回り :1.94(+0.02)
独10年債利回り :▲0.26(▲0.03)
日10年債利回り :▲0.05(+0.01)
中国10年債利回り :3.27(±0.0)
ビットコイン :8,803.85(▲406.02)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :20.36(▲0.37)
エネルギー :25.57(▲0.53)
ベースメタル :16.98(▲0.36)
貴金属 :17.57(+1.67)
穀物 :13.20(▲2.24)
その他農畜産品 :23.44(▲0.09)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :25.25(▲0.86)
Brent :20.72(▲1.38)
米天然ガス :40.48(▲0.43)
米ガソリン :19.86(▲0.29)
ICEガスオイル :22.95(▲0.21)
LME銅 :11.30(▲0.51)
LMEアルミニウム :12.18(▲0.77)
金 :9.12(▲1.1)
プラチナ :19.02(+2.06)
トウモロコシ :11.03(▲9.07)
大豆 :9.12(▲1.1)

【エネルギー】
WTI :57.44(+0.29)
Brent :62.65(+0.36)
Oman :62.76(+0.56)
米ガソリン :163.52(▲0.03)
米灯油 :192.09(+0.06)
ICEガスオイル :583.00(▲0.25)
米天然ガス :2.79(+0.02)
英天然ガス :41.94(▲0.56)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :62.65(+0.36)
SPO380cst :239.51(+1.29)
SPOケロシン :79.82(+0.27)
SPOガスオイル :79.18(+0.09)
ICE ガスオイル :78.26(▲0.03)
NYMEX灯油 :191.54(+0.03)

【貴金属】
金 :1460.35(▲8.13)
銀 :16.83(▲0.28)
プラチナ :888.25(▲21.55)
パラジウム :1747.81(▲54.18)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,966(+17:14C)
亜鉛 :2,466(▲20:41B)
鉛 :2,091(▲14:10.5B)
アルミニウム :1,820(+12:7.5B)
ニッケル :16,120(▲170:70B)
錫 :16,675(+65:0B)
コバルト :35,567(▲1)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5923.00(▲78.00)
亜鉛 :2494.00(+3.00)
鉛 :2111.00(▲1.50)
アルミニウム :1807.50(▲3.00)
ニッケル :16180.00(▲35.00)
錫 :16775.00(+200.00)
バルチック海運指数 :1,428.00(▲105.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :80.08(▲2.22)
NYMEX鉄鉱石 :80.36(▲2.19)
NYMEX原料炭スワップ先物 :137(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,700(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :3,412(▲28)
米鉄スクラップ :休場( - )

【農産物】
大豆 :919.50(▲5.50)
シカゴ大豆ミール :304.90(▲0.70)
シカゴ大豆油 :31.50(+0.07)
マレーシア パーム油 :2526.00(+46.00)
シカゴ とうもろこし :377.25(+2.00)
シカゴ小麦 :510.25(▲2.25)
シンガポールゴム :150.90(+0.10)
上海ゴム :11130.00(▲45.00)
砂糖 :12.57(+0.18)
アラビカ :109.45(+0.35)
ロブスタ :1354.00(+5.00)
綿花 :64.72(+0.37)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :64.13(▲0.18)
シカゴ生牛 :119.25(+0.25)
シカゴ飼育牛 :147.00(+0.23)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。