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米中貿易摩擦は重要な転換点を迎えるか~政治状況が後押し
  • MRA外国為替レポート

2019年11月9日号

◆先週の市場総括


先週は前週からのリスク選好回復の流れのまま、米中通商交渉の合意内容が一歩進んだものになるとの報道からリスク選好がさらに強まった。

株価は堅調。米株価指数は史上最高値を更新。日経平均も一時23,500円台を回復するなど年初来高値を更新する動き。米長期金利が大きく上昇してドルを押し上げた。

米10年債利回りは前週1.7%近辺だったが2.0%に迫る動きとなり週末は1.95%。

円はリスク選好が強まるなか軟調。ただユーロ円相場ではやや円高となった。ドル円相場は108円20銭で始まり火曜日の海外市場では109円台に上昇。その後も底固く上値を試す展開。一時109円50銭近辺に。引けは109円30銭近辺。ユーロドル相場は1.1170で始まり1.1020に下落して週末の取引を終えた。

米中通商交渉の第一段階の合意内容について情報が錯綜。今後の段階的な関税撤廃が盛り込まれるとの報道もあり市場の期待感は維持されているが、なお合意時期や場所も定まらず不透明さは残る。

トランプ大統領は、週末に対中関税の撤廃では合意していない、と述べ市場の期待に水を差した。

月曜日の東京市場は祝日で休場。アジア時間のドル円相場は108円20銭近辺で始まりそのまま小動き。ユーロも動意に欠け、ユーロ円相場は120円80銭~90銭、ユーロドル相場も1.1170近辺で方向感なくもみ合いとなった。

海外市場ではリスク選好が維持され米国株が上昇。NYダウは7月以来の年初来の史上最高値更新となった。米長期金利も上昇して雇用統計前の水準を回復。米10年債利回りは1.78%、2年債利回りは1.58%。

ドルがじり高。ドル円相場は108円60銭台。ユーロドル相場は1.1130へユーロ安ドル高。ユーロ円相場は121円10銭に上昇したものの120円80銭に押し戻された。

前週末の雇用統計がしっかりだったことで米国経済への信認が維持され、また米中交渉への期待が高まったことが支援材料となった。

ロス商務長官は、中国ファーウェイ社への米企業の販売許可を示唆し、また欧州自動車関税の見送りに言及した。

火曜日の東京市場でもドル円相場は堅調。全体として円が軟調。ドル円相場は昼にかけ108円80銭近辺に上昇してもみ合い。ユーロ円相場も121円20銭に上昇した。

日経平均は23,100円台後半で高寄りして前引けにかけ23,200円台に上昇。後場は23,300円を中心に上下して引けは23,250円近辺。堅調な米国株、ドル円相場、中国株の上昇が支えた。

海外市場では米国株がさらに上昇し最高値を更新。たださすがに勢いは鈍った。フィナンシャルタイムズ紙が9月に発動した対中関税の撤廃も検討、と報じたことが支援材料。

またISM非製造業景気指数(10月)は54.7と予想53.5を上回り前月52.6から改善。雇用指数、新規受注指数もそれぞれ前月から改善し、米国経済の堅調を裏付けた。

米長期金利は一段高。10年債利回りは1.85%、2年債利回りは1.63%。ドルは押し上げられ、ドル円相場は109円10銭~20銭を中心に上下。ユーロドル相場は1.1070近辺に下落してもみ合い。ユーロ円相場はユーロ安の勢いに押されて120円70銭台に下落したが、リスク選好、円安に支えられて120円80銭~90銭。

リッチモンド連銀総裁は、利下げを休止するのに良い時期、見極めに半年ぐらいは必要、と述べた。

水曜日の東京市場は総じて動意薄。ドル円相場は109円10銭近辺で始まり109円ちょうど近辺でもみ合い小動き。ユーロはやや上昇して同様にもみ合い。ユーロドル相場は1.1080~90で上下し、ユーロ円相場は120円90銭で小動き横ばい。

日経平均は23,300円近辺で寄り付き23,250円近辺にてもみ合い。引け際にやや上昇して23,300円。海外市場に入ると小幅ながら円高。ドル円相場、ユーロ円相場ともに反落した。

米政府高官が、米中合意の署名が12月にずれ込む可能性がある、条件・開催地を巡る協議が続いている、と述べたと報じられ、米中通商協議への期待感がやや圧迫された。

ドル円相場は108円80銭台に下落し、その後は持ち直して109円ちょうど近辺。ユーロ円相場は120円50銭に下落して引けは120円60銭。

ユーロドル相場は1.1070に下落してもみ合い小動きとなった。米国株は利食い売りで上値が重く横ばい、まちまち。米長期金利は小幅低下。10年債利回りは1.82%、2年債利回りは1.61%。

木曜日の東京市場では全体的にクロス円相場中心にやや円高の動き。ドル円相場は109円ちょうど近辺で始まり軟調。108円70銭近辺でのもみ合いに。ユーロ円相場も120円60銭で始まり120円20銭近辺に下落した。ユーロドル相場は1.1060近辺に小幅安もみ合い。米中通商協議への進展を織り込んで円安一服。

日経平均は23,250円で小幅安寄り。ただ底固く250円~300円でもみ合い、引けにかけ上昇して23,300円台で取引を終えた。その後夕刻に、中国商務省が米中は段階的な関税撤廃に合意、と報じられた。ただし米側の確認はこの時点では未だ。

報道を受けて円安に。ドル円相場は109円ちょうど~10銭、ユーロ円相場は121円10銭に、ユーロドル相場は1.1090に上昇した。海外市場でもリスク選好の動きが継続。

米国株は一段高。NYダウは一時300円高。米10年債利回りは1.97%に上昇して2%に迫った。ただその後の報道が割れたため株高・金利上昇はやや水を差された。

ロイター社は、米政権内で意見が割れている、関税の段階的撤廃の合意は決定していない、と報じ、ブルームバーグ社は、米政府関係者が関税の段階的撤廃が第一弾の合意の一部だ、とのコメントを報じた。

なおコンウェイ大統領顧問は、トランプ大統領が合意署名を切望している、とコメントした。

米国株の上昇はやや抑制されNYダウは前日比+180ドル。米10年債利回りは1.92%、2年債利回りは1.68%。ドル円相場は一時109円50銭に上昇し、その後は20銭~30銭に下落。ユーロは下落。ユーロドル相場は1.1040~50。ユーロ円相場は120円70銭~90銭で上下した。

この日、欧州委員会はユーロ圏の成長率見通しを下方修正。2019年を1.2%から1.1%へ、2020年を1.4%から1.2%へ。今年の成長率は6年ぶりの低水準になるとしている。

金曜日の東京市場のドル円相場は109円30銭で始まり20銭~30銭でもみ合い横ばい。ユーロ円相場も120円70銭~80銭で動意に欠け横ばいとなった。ユーロドル相場は1.1050近辺で横ばい。

日経平均は23,550円近辺で高寄り。その後は利食い売りに押されて下落し23,350円近辺でもみ合いとなった。ただ底固い値動きは不変で引けにかけてやや上昇して23,400円近辺で引け。

米中交渉の行方を見極める流れのなか、為替市場は様子見、株式市場ではひとまずの利食い売りが上値を抑えた。

発表された中国の貿易収支(10月)は前月からやや黒字が拡大。輸出・輸入とも前年同月比は引き続きマイナスとなったがマイナス幅は前月から縮小した。

海外市場に入るとドルが堅調、一方でクロス円相場は軟調。ドル円相場は109円40銭台に上昇した一方、ユーロドル相場は1.1020に下落。

そうしたなか、トランプ大統領が、対中関税の撤廃で合意していない、中国が望んでいる、と発言。市場の期待感が水を差された。

米国株は一段高でスタートしたが反落。S&P500は終値ベースで史上最高値を更新したが小幅高。ドル円相場は一時109円10銭に下落。ユーロ円相場120円20台に下落。ただその後はともに持ち直し、ドル円相場は109円30銭近辺、ユーロ円相場は120円40銭近辺で週末の取引を終えた。ユーロドル相場はそのまま1.1020でもみ合い引け。

米10年債利回りは1.95%へ小幅上昇、2年債利回りは1.68%で概ね横ばい。

発表されたミシガン大学消費者マインド指数(11月)は95.7と前月95.5から小幅上昇。3か月連続の上昇となった。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米中通商合意の進展・内容

引き続き市場の最大の関心は米中通商合意の行方。第一段階の合意について、その先の段階的な関税撤廃が盛り込まれるのかどうか。

中国サイドの情報と米国サイドの情報が異なっているが真相が明らかになるのか。合意の時期や場所についてもなお明らかになっていない状況。

合意内容の確定と並行して詰めが行われているはずだが、合意内容で一致がなければ、これらは定まらないとみられる。新たな情報が得られ、市場のリスク選好が維持ないし強化されるか。頓挫のリスクはないか。

2.米国の経済指標、パウエル議長発言

FRBは米国経済の堅調さを認識するなか予防的利下げ打ち止め・様子見に動いているが、指標が引き続きそのスタンスを後押しするか。逆に利上げはインフレ率が明確に上昇しなければ考えにくいとしてハードルが高いことを示したが物価動向はどうか。

水曜日 消費者物価指数(10月、前年同月比、予想+1.7%、前月+1.7%、コア指数、予想+2.4%、前月+2.4%)、FRBパウエル議長発言

木曜日 生産者物価指数(同、予想+1.8%、前月+1.4%)

金曜日 輸入物価指数(10月)、NY連銀製造業景気指数(11月、予想4.0、前月4.0)、小売売上高(10月、前月比、予想+0.3%、前月▲0.3%)、鉱工業生産(同、前月比、予想▲0.3%、前月▲0.4%)

3.中国の経済指標

中国経済はなお景気減速基調が続いているが景気対策で持ち直し期待も高まっている。経済指標に持ち直しないし下げ止まりの動きがみられるか。あるいはなおも減速を示すか。

木曜日 10月の主要経済指標、小売売上高(前年同月比、予想+7.8%、前月+7.8%)、工業生産(同、予想+5.4%、前月+5.8%)、都市部固定資産投資(同、予想+5.4%、前月+5.4%)

このほか、米国下院はトランプ大統領の弾劾に関する初の公聴会を実施する。

◆今週のMRA's Eye


米中貿易摩擦は重要な転換点を迎えるか~政治状況が後押し

米大統領選挙まで1年を切りってきた。選挙戦がいよいよ本格化するなか、米国内の政治情勢が米中通商交渉の合意に向けた追い風になりつつあるようにみえる。

米下院では民主党が過半数を占めるなか、トランプ大統領の弾劾に向けた調査の手続きなどを定めた決議案を10月31日に可決。今週、初の公聴会が実施されることとなった。

これが経済・市場にとってマイナス要因との見方もあるが逆かもしれない。間接的にプラスの材料ともなりうる。そもそも弾劾によって政治・行政・政策が停滞することは、国民・有権者にとってはマイナスに映る。

それを見越してトランプ政権は一段と実績重視でアピールするだろう。弾劾そのものを主導する民主党にマイナスのイメージを植え付けたいはずだ。

政策を推し進め実績を上げることでトランプ批判がトランプ歓迎となりうる。弾劾がトランプ政権の実績重視へのシフト・加速につながればプラスとなる。

ここにきて米国側が中国との通商交渉合意に向けて前向きに転じたのはそうした流れの一部であり、来年にかけてそれは続く可能性が高い。

一方で中国サイドの事情も通商合意にプラスに働いている。景気減速基調がなおも続くなか当面の景気下支えが必須となってきた。

民衆の不満を抑制することが一党独裁政権・体制の安定には欠かせない。

香港問題で反体制の動きが加速するなか、経済的な不満が広がれば致命傷となりかねない。米中通商摩擦・関税の影響で中国企業は大きな打撃を受けており一刻も早く関税撤廃を実現したいというのが切なる要望だろう。

トランプ大統領が、米国よりも中国サイドが望んでいる、としているのはあながち「はったり」や交渉戦術からの発言ではないだろう。

また米国サイドで弾劾への動きが具体化し、民主党のウォーレン候補が対抗馬として有力視されるなかでは中国サイドの危機感も高まっている。

人権問題を重視する民主党、とくにウォーレン候補の台頭は、香港問題を抱える中国にとって危険と映っているはずだ。ここでもトランプ懸念から歓迎へ。トランプ政権の経済重視姿勢、経済的な取引重視姿勢のほうがむしろ与しやすいだろう。

そして「ウォーレンリスク」が強まれば強まるほど、米中通商交渉をトランプ政権である間に早く決着しようという動きにつながる。これがトランプ政権への弾劾進捗が米中交渉の間接的加速要因となるメカニズムだ。

中国政権にとって、もうひとつ、全く別の要因が米中交渉の妥結に向けてドライバーになっている。中国国内では豚コレラが蔓延。豚肉の価格が高騰。民衆の不満、政府の対策への批判が高まっている。

物価上昇、インフレ率の高騰は、常に反政府運動の火種となり、政権にとって回避すべき事態だ。とくに中国にとって主菜でもある豚肉価格の高騰は民衆の死活問題であり政権にとって致命傷となりうる。

それに対して、米国から大量の豚肉を輸入し、またその際の関税を撤廃することは、中国政府にとって危機回避に向けた特効薬となる。確かにトランプ大統領の言うように、中国が切望している、ということはあろう。

こうして米中双方の政治的状況・国内情勢が米中交渉の合意に向けた後押しとなりつつあるが、問題は、これが貿易摩擦の解消に向けた本格的な転換点となるのかどうか。

追加関税の回避・延期により悪化に歯止めがかかる「底ばい・L字」にとどまるのか。

あるいは既存の関税の段階的撤廃につながる「明確な改善・V字」となるのか。

第一段階の合意でいよいよ貿易摩擦緩和の工程表が示されるのか。いかなる内容となるのかは極めて重要だ。

現時点で情報は錯そうしている。中国商務省は第一段階の合意には段階的な撤廃が含まれると報じた。一方、米国側からはこれを追認する発言と、まだ合意に至っていないという発言がみられる。

ホワイトハウス内外からは段階的撤廃に強い反対意見もあるようだ。

現時点で市場は「段階的撤廃」を織り込みつつある。米株価指数が史上最高値を更新し、米10年債利回りが2%に迫るまで急速に上昇した。

長期金利のV字反発は、貿易摩擦のV字改善を先取りしている可能性もある。

また為替市場においても、シカゴ通貨先物における投機的な円ポジションが円買い越しから円売り越しに転じて、V字で円売りが増加している。確かに、実際に段階的撤廃が合意されれば、追って米国経済、中国経済、さらには世界経済全体が、V字とまでクリアにならないとしても、持ち直しを明確にする可能性がある。

ただそれにはまだ時間がかかり、第一段階の合意内容も含めて、明確な証拠は整っていない。

市場のメインシナリオの変化、景気後退懸念から景気持ち直し期待へ、は、逆に市場としてのリスクを徐々に増すことになる。

交渉が「ちゃぶ台返し」になることは最大のリスクだが、交渉が想定よりも長期化することも目先の失望につながる可能性がある。

トランプ政権としては的確なタイミングで効果的な実績の一打を打ちたいところで、それが今なのか、もう少し先なのか、読めない部分もある。メインシナリオを180度転換してよいのか、その蓋然性を巡っての紆余曲折、右往左往はまだ続く可能性がある。

短期的には、楽観サイドを織り込み過ぎ、先走り、早すぎるペースでの楽観へのシフトに水を差される可能性がある。どこまで先々の楽観的な状態を先読みして走ってよいのか、市場としては難しい局面に入りつつある。

米10年債利回りが2%を越えて上昇することができるのか、現時点ではやや懐疑的で、一旦頭打ち、楽観の停滞局面となるリスクはあろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :109.2(▲0.08)
ユーロ :120.36(▲0.39)
英ポンド :139.599(▲0.49)
豪ドル :74.878(▲0.51)
カナダドル :82.549(▲0.40)
スイスフラン :109.454(▲0.37)
ブラジルレアル :26.2291(▲0.42)
中国人民元 :15.613(▲0.03)
韓国ウォン(日本円=100) :9.42(▲0.04)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1021(▲0.003)
英ポンド :1.2783(▲0.003)
豪ドル :0.6857(▲0.004)
カナダドル :1.3229(+0.006)
スイスフラン :0.9977(+0.003)
ブラジルレアル :4.1637(+0.062)
中国人民元 :6.9928(+0.014)
韓国ウォン :1157.33(▲2.05)

【主要国政策金利】
米国 :1.75
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.94(+0.02)
米2年債 :1.67(+0.01)
日本10年債利回り :▲0.05(+0.01)
日本2年債利回り :▲0.05(+0.01)
独10年債利回り :▲0.26(▲0.03)
独2年債利回り :▲0.62(▲0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :27,663.38(▲11.42)
NASDAQ :8,465.42(+30.91)
S&P500 :3,087.69(+2.51)
日経平均株価 :23,391.87(+61.55)
ドイツ DAX :13,228.56(▲60.90)
インド センセックス :40,323.61(▲330.13)
中国上海総合 :2,964.19(▲14.53)
ブラジル ボベスパ :107,449.30(▲2,131.30)
英国FT250 :20,357.63(▲75.59)
ビットコイン :8803.85(▲406.02)

【主要商品価格】
WTI :57.44(+0.29)
Brent :62.65(+0.36)
米ガソリン :163.52(▲0.03)
米灯油 :192.09(+0.06)

金 :1460.35(▲8.13)
銀 :16.83(▲0.28)
プラチナ :888.25(▲21.55)
パラジウム :1747.81(▲54.18)
銅 :5965.50(+17:14C)
アルミニウム :1820.00(+12:7.5B)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :919.50(▲5.50)
シカゴ とうもろこし :377.25(+2.00)
シカゴ小麦 :510.25(▲2.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。