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材料とポジション両面から上値重いドル円相場
  • MRA外国為替レポート

2019年10月21日号

◆先週の市場総括


先週は月曜日の日本市場、米国の債券市場が休場。そうしたなか前週に米中通商交渉が部分合意の見込みとなったことを受けてリスク選好が強まった状態で始まった。

連休明けの日本株は日経平均が22,000円の大台を回復してさらに続伸。米国株は米中の部分合意を好感するなか発表された企業決算が概ね良好だったことで堅調に推移。

為替市場では、週央にイギリスとEUが離脱案に合意したと報じられさらに円安が進んだ。ポンド、ユーロが週末にかけて急騰。ユーロ円相場は121円台にのせ、ユーロドル相場は1.11台後半まで大きく上昇した。

ドル円相場は週初に108円40銭近辺で始まり、リスク選好の回復を背景に一時109円に迫った。しかしやや弱めの米経済指標に米長期金利の上昇が一服すると上値が重くなり、概ね108円後半を中心の推移となった。

その後は欧州通貨上昇の反面でのドル安に押されてドル円相場は108円40銭近辺で週末の取引を終えた。

日経平均は米国株の堅調や堅調なドル円相場を好感して週央にかけて年初来高値を更新。週末の引けは22,500円近辺。ただ週末の米国市場では一部決算を受けて米国株が下落し週初の水準に行ってこい。

月曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場は108円40銭近辺で始まりもみ合い、やや弱含み108円10銭近辺に下落。ユーロ円相場も119円60銭近辺から20銭近辺へ下落した。

ユーロドル相場は1.1030近辺で小動き。海外市場では米国債券市場が休場。米国株は小幅安。米中通商協議の部分合意は好感されながらも、なお長期的な課題は残り詳細が不明なことで楽観は一服。また企業決算の発表待ち。

ドル円相場は底固く108円40銭近辺に持ち直してもみ合いのなか引け。ユーロ円相場も119円50銭近辺でもみ合い。総じて動意がなかった。

発表された中国の貿易収支(9月)は輸出が前年比▲3%、輸入が▲9%とともに前年比マイナスで米中摩擦の影響を示した。

NY連銀製造業景気指数(10月)は4.0と前月2.0から改善して予想を上回った。

連休明け火曜日の東京市場のドル円相場は108円40銭で始まりじり安となり午後には108円20銭に下落。ユーロ円相場も119円50銭で始まり20銭中心のもみ合いとなった。

日経平均は22,100円で高寄り、一段高となり引けは22,200円近辺。前週からのリスク選好の流れに支えられた。

海外市場では米国株が大きく上昇。NYダウは前日比240ドル高。良好な企業決算が相次ぎ、加えてイギリスがEUと離脱合意に向け前進と報じられたことから、市場のリスク選好が強まった。

米長期金利も上昇。10年債利回りは1.77%、2年債利回りは1.62%。為替市場では円が軟調となり、ポンド、ユーロが上昇。ユーロ円相場は120円ちょうど~20銭に上昇して上下。

ドル円相場も108円80銭~90銭に上昇してもみ合いとなった。ユーロドル相場は1.10近辺に下落していたが、1.1080~90に上昇した。

水曜日の東京市場のドル円相場は108円80銭~90銭で始まり朝方にやや下落した108円70銭中心のもみ合いに。輸出企業の円買いに押された。ユーロ円相場も120円10銭から119円80銭に下落し120円手前でもみ合い。

日経平均は22,600円近辺で高寄りし、その後は22,550円中心にもみ合い、その後やや押されて22,500円近辺でもみ合い引け。米中摩擦が緩和するなか米企業の好決算、ドル円相場の上昇が支えとなった。

海外市場に入るとポンド、ユーロが上昇。イギリスとEUの間で離脱合意に向けた動きを好感。ユーロ円相場は120円40銭近辺でもみ合い。ユーロドル相場も1.1080に上昇してもみ合い引けは1.1070。ドル円相場は伸び悩み、108円70銭~80銭で上下して引けた。

米国株は決算待ちで動意なく小幅反落。米長期金利は小幅低下し10年債利回りは1.74%。

発表された米国の小売売上高(9月)が前月比▲0.3%と前月の+0.4%から一転マイナスとなり予想を下回ったことに反応した。

木曜日の東京市場のドル円相場は108円70銭台で始まり80銭中心にもみ合い小動き。ユーロは上昇一服。ユーロドル相場は1.1070~80でもみ合い横ばい。ユーロ円相場は120円40銭~50銭で上下。

日経平均は22,500円近辺で始まり小動きもみ合い、横ばい。引けはやや下げて22,450円近辺。

海外市場に入るとユーロが一段高。この日、イギリスとEUの離脱合意が正式にEU首脳会議で承認された。ユーロ円相場は121円30銭に上昇、ユーロドル相場は1.1130に。

ドルは軟調。ドル円相場は108円50銭に下落。その後は持ち直し108円60銭~70銭でもみ合い引けた。ユーロ円相場は反落。120円70銭に下落した後120円80銭~90銭で引けた。

米国株は小幅高。まちまち。設備投資関連の決算が良好だったがIBMの決算が不芳で足を引っ張った。

米長期金利はイギリス・EU合意でリスク選好が強まったことで10年債利回りが一時1.8%に上昇したが、弱めの経済指標で押し戻されて1.75%。

発表された米住宅着工(9月)は季節調整済み年率換算で125.6万戸と前月136.4万戸から減少し予想を下回った。フィラデルフィア連銀製造業景気指数(10月)は5.6と前月12.0から悪化。ただし新規受注、雇用、先行き判断は良好だった。

鉱工業生産(9月)も前月比▲0.4%と前月の+0.6%から一転してマイナスとなった。GMのストの影響が反映されたとみられる。

金曜日の東京市場ではやや円高の動き。ドル円相場は108円60銭~70銭で始まり50銭~60銭でのもみ合いに。ユーロ円相場は120円80銭~90銭で始まり70銭近辺へ。

日経平均は22,550円で寄り付き550円~600円でもみ合い。その後は下落して22,500円近辺でもみ合い引けた。海外市場ではユーロがさらに堅調。ユーロ円相場は121円台を回復。ユーロドル相場は1.1170へじり高となって引けた。

ドルが軟調となったことでドル円相場はじり安。108円40銭で週末の取引を終えた。米国株は下落。NYダウは250ドル超の下げとなった。

決算を受けたボーイングの下落が重石となったほか、マイクロソフトなどテクノロジー関連株も軟調だった。米長期金利は前日比変わらず。10年債利回りは上下。1.77%に上昇したのち1.73%に低下、その後反発して1.75%で引けた。

FRBクラリダ副議長は、米成長見通しは好ましいがリスクがあるなかで景気拡大を支えるため当局は適切に行動する、と述べた。

◆今週の3つの注目ポイント


22日火曜日は東京市場が祝日で休場。

1.企業決算

引き続き企業決算の発表が続く。ここまでのところは、ISM製造業・非製造業指数に示された景況感の悪化ほどには企業業績・収益の悪化はみられず、全体として良好な決算が示されている。

今週発表の決算も引き続き市場に一定の安心感をもたらすか。米中通商交渉部分合意への動き、イギリスとEUの合意、でリスク選好が維持されるなか、株価の下支えで市場のセンチメントを良好に保てるか。円高リスクを軽減する材料となるか。

2.米国の経済指標

先週発表された米国の9月の経済指標には弱い数字も散見された。小売売上高、鉱工業生産、ともに弱く、特殊要因はあったものの、弱い数字が続くようならあらためて先行き懸念が広がる可能性もある。

今週は、火曜日にリッチモンド連銀製造業指数(10月)、中古住宅販売(同、季節調整済み年率換算、予想545万戸、前月549万戸)、木曜日にPMI景況感指数(10月)、新築住宅販売(9月)、設備投資の先行指標である耐久財受注(9月)が発表される。

3.ECB理事会

木曜日にECB理事会が開催されドラギ総裁が定例会見を行う。ドラギ総裁は今月任期満了を迎えることから、今回が最後の理事会、会見となる。前回会合で総合的な緩和に踏み切ったことから次の一手を打つことはないとみられるが、追加緩和スタンスに変化はあるか。

次期ラガルド総裁へどのようにバトンタッチするか。先週ユーロはドルに対して上昇したが、当局者のなかで景気への悪影響、懸念が台頭しないか。

◆今週のMRA's Eye


材料とポジション両面から上値重いドル円相場

先週にかけてリスク選好を回復させる材料が相次いだ。米中通商交渉の部分合意がみえてきたことに加えて、イギリスとEUが離脱に関して合意された。イギリス議会の承認を要するが、事態が悪化しなかったという意味で大きな前進だ。

株価は堅調に推移し、為替市場ではポンド、ユーロが大きく上昇。円は軟調となった。ただリスク選好が強まったときに多く生じるようにドルもまた軟調に推移した。

ユーロドル相場はドルインデックスの大きな構成要素であり、その動向を左右するが、週初の1.1040から週末には1.1170へと上昇した。ユーロ円相場も121円台で取引を終えている。一方でドル円相場は109円を試したが届かず、108円40銭で引けた。

この先のドル円相場は、米国発のポジティブな材料がなければ、また投機ポジションの面からも、109円台の上値は一段と重い状況が続きそうだ。

足元では、リスク回避を主導してきた米中通商問題とイギリスのEU離脱問題に関する不透明感が緩和している。それを踏まえてドル円相場は現状の108円台だ。

これらリスク回避要因が緩和したことで円高リスクは着実に後退したことは間違いない。ドル円相場が105円を割る可能性、さらには107円割れを試す可能性も後退したとみられる。

ただポジティブな材料が概ね消化されたことは、さらなる円安ドル高が難しいことを意味する。ユーロ円相場は121円台に上昇した。

リスク選好が強まった場合にクロス円相場、ドル以外の通貨の対円相場が上昇する。ドルはリスク回避で買われ、リスク選好で売られる、円と同じ性質の通貨であることも、足元のドル円相場の上昇を抑制している。

米中通商交渉の部分合意は、米中にとってプラス、というよりも、グローバル経済にとってプラスとの受け止め方が多い。

またイギリスの離脱問題が混乱なく進むことは欧州発のリスク回避後退・リスク選好の回復要因であり、ユーロにプラスとなり、その反対側に立つドルにはマイナスとなりやすい。

リスク選好の回復が米国発であること、米国経済の優位性や勢いをあらためて示す材料、明確なドル金利先高感の回復などがなければ、かつてみられたようなドル独歩高とはなりにくい。

米国経済が突出した強さを示すかどうか。米企業決算の発表が続いているが、景況感と実際の業績のギャップがみられるか。業績は良好で今後の見通しも、ISM景気指数で示された景況感の分かれ目を下回る状況に反して、強い味方が示されるか。

米国経済を足元で支える個人消費、その背景にある雇用・所得の堅調は続くか、さらには持ち直すか。

最低限の強気材料として年末商戦が交渉さを示し、小売業の決算がそれを裏づけるか。そして製造業が持ち直しを示すか。そしてFRBが予防的利下げを打ち止めとし、さらには次の一手が利上げとなる状況となるか。米10年債利回りが2%を回復するか。

全般的なリスク選好の回復、とくに足元の材料だけでは、ドル円相場の上値の重さ、109円台での不安定さは払しょくできないだろう。

またリスク選好の回復のなかで円安が進む勢いにも次第に陰りがみえよう。最新のシカゴ通貨先物のポジションは、先週火曜日15日時点で、6,600枚の売り越しとなった。

売り越し幅はわずかだが、ついにこの間の円買い越しが売り越しに転じたことが示された。週末にかけてのユーロ円相場の上昇、円安の進行からみれば、円売りがさらに増加した可能性がある。

ドル円相場はそれでも109円に乗せることができなかった。リスク回避を背景とする円買いポジションの解消が終わり、リスク選好に基づく円売りに転じたとなれば、円安方向への力は弱まる。

リスク選好がさらに明確に強まり、積極的な円売りが強まって、はじめてドル円相場も円安要因によって上昇することになる。

ただ短期的にはイギリスの離脱を好感してポンド円相場、ユーロ円相場が大きく上昇しただけに、むしろここからの円売りが難しいことが想定される。利食いの円買い戻しが生じて円高方向に押し戻される可能性もある。

大きな流れとしてリスク回避が緩和し、リスク選好が強まっていることは間違いない。たださらなる円安にはなおリスク選好を強化する追加的な材料が必要だろう。

さらにドル高円安となると、米国サイドにあらたな強気材料が必要となる。そうした状況になる可能性は以前より強まっているが、なお実現までは時間がかかりそうだ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.45(▲0.21)
ユーロ :121.07(+0.17)
英ポンド :140.777(+0.70)
豪ドル :74.355(+0.20)
カナダドル :82.599(▲0.12)
スイスフラン :110.1(+0.12)
ブラジルレアル :26.3544(+0.28)
中国人民元 :15.323(▲0.02)
韓国ウォン(日本円=100) :9.195(▲0.02)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1167(+0.004)
英ポンド :1.2984(+0.009)
豪ドル :0.6856(+0.003)
カナダドル :1.3127(▲0.001)
スイスフラン :0.9854(▲0.003)
ブラジルレアル :4.1133(▲0.052)
中国人民元 :7.0817(+0.004)
韓国ウォン :1181.46(▲5.47)

【主要国政策金利】
米国 :2.00
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.75(+0.00)
米2年債 :1.57(▲0.03)
日本10年債利回り :▲0.13(+0.02)
日本2年債利回り :▲0.13(+0.02)
独10年債利回り :▲0.38(+0.03)
独2年債利回り :▲0.66(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,770.20(▲255.68)
NASDAQ :8,089.54(▲67.31)
S&P500 :2,986.20(▲11.75)
日経平均株価 :22,492.68(+40.82)
ドイツ DAX :12,633.60(▲21.35)
インド センセックス :39,298.38(+246.32)
中国上海総合 :2,938.14(▲39.19)
ブラジル ボベスパ :104,728.90(▲286.90)
英国FT250 :20,228.53(+7.42)
ビットコイン :7947.7(▲98.79)

【主要商品価格】
WTI :53.78(▲0.15)
Brent :59.42(▲0.49)
米ガソリン :162.30(+0.05)
米灯油 :194.71(▲0.10)

金 :1490.05(▲1.82)
銀 :17.55(+0.00)
プラチナ :890.22(+2.95)
パラジウム :1755.96(▲5.96)
銅 :5775.00(+17:24C)
アルミニウム :1731.00(+1:2C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セト
ル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :934.00(+2.50)
シカゴ とうもろこし :391.00(▲3.75)
シカゴ小麦 :532.25(+6.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。