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米中通商交渉は部分合意~最悪のシナリオは回避
  • MRA外国為替レポート

2019年10月11日号

◆先週の市場総括


先週は週末にかけての米中通商閣僚級会議での進展期待の高まりからリスク選好が回復。米国株は上昇、米長期金利が上昇するなか、円安が進んだ。

リスク選好が強まるなかドルは全体としてはやや軟調となったが、それでもドル円相場は週初の107円割れから米中協議の結果を前に108円ちょうど近辺を回復した。ユーロ円相場の上昇が目立ち117円台前半から119円に迫る動き。

日経平均は21,300円~400円で始まり週末にかけては米中通商交渉進展期待、堅調な米国株、ドル円相場の上昇、に支えられてしっかり。週末の引けは21,800円近辺。金曜日には米中通商閣僚級協議が終了。

トランプ大統領が、貿易戦争休戦につながる合意の第一段階に達した、と発表したことからリスク選好が強まった。

米国株は大きく上昇。米長期金利は上昇し10年債利回りは1.7%台を回復。為替市場では円が全面安となり、ドル円相場は108円60銭に、ユーロ円相場は120円に達した。リスク選好を背景にドルは対ユーロでは軟調。ドル円相場のNY引けは108円40銭、ユーロ円相場は119円70銭。

月曜日の東京市場では早朝にやや円高となった。ドル円相場は106円90銭で始まり一時60銭近辺へ、ユーロ円相場は117円40銭で始まり10銭へ下落。ただその後は持ち直してドル円相場は106円80銭~90銭でもみ合い。ユーロ円相場は117円30銭~40銭でもみ合いとなった。

日経平均は21,450円近辺で寄り付き350円~400円に下落してもみ合い小動き、そのまま引けた。

海外市場に入ると米中協議への期待がやや高まってリスク選好が回復し円が軟調。ユーロ円相場が117円90銭に上昇し、ドル円相場も107円40銭台に続伸した。ユーロは対ドルでもしっかりで1.10近辺へ。

中国商務省は、一部合意の準備がある、とした。ただ、肝心な項目の先送りをするのではないか、との見方からリスク選好も抑制的だった。

米長期金利は小幅上昇して10年債利回りは1.56%、2年債利回りは1.47%。米国株は上昇したものの買いが続かず前日比ではやや下落して引け。

クドローNEC(米国家経済会議)委員長は、中国企業の米上場廃止は検討していない、と述べた。

火曜日の東京市場のドル円相場は107円20銭~30銭で始まり40銭台に上昇。しかし夕刻にかけては再び円高の動きとなり106円80銭台に反落した。

アジア時間は107円をめぐる攻防。ユーロ円相場も117円70銭で始まり一時90銭台に上昇したが、海外市場にかけて20銭に反落した。

日経平均は21,500円で高寄り。その後もジリ高となり21,600円近辺でもみ合い引けた。海外市場ではリスク選好が後退、米国株は大きく下落した。

米国政府は中国のウイグル自治区の人権問題を理由に関与した当局者に対するビザの発給規制を表明。パウエル議長が追加利下げにオープンと述べたことは株価を下支えたが、中国への資本フロー制限の可能性、米政府年金基金による投資が焦点、と一部報道されたことが嫌気され下落した。

米中の溝は深いとの見方が強まり、中国の劉鶴副首相は成果がなければ11日中に帰国する可能性も、との見方が上値を抑制した。

米長期金利は小幅反落。10年債利回りは1.53%。ドル円相場は107円30銭に上昇していたが107円ちょうど近辺に押し戻されて引け。ユーロドル相場は1.099に上昇後、1.095に反落してもみ合い。

この日発表された米国の生産者物価指数(9月)は前月比▲0.3%と物価上昇圧力が弱まっていることを示した。

パウエル議長は、世界経済へのリスクを背景に追加利下げにオープンと述べた。短期金融市場の円滑化のため保有資産を再び拡大させる考えを示したが、量的緩和ではなく短期金融市場対策であることを強調した。経済見通しは引き続き好ましいとして、追加利下げについては明言しなかった。

水曜日の東京市場のドル円相場は107円ちょうど近辺で始まりジリ高。夕刻には107円40銭近辺でもみ合いとなった。ユーロ円相場も117円30銭で始まり夕刻には117円90銭中心にもみ合い。

ユーロは対ドルでも堅調。1.096中心に上下した後1.099に上昇した。日経平均は21,400円割れで安寄り。米国株安を嫌気。しかし底固く、その後は小幅ジリ高となり21,450円近辺で引けた。

海外市場では米中協議への楽観が強まりリスク選好が回復、株価が上昇。中国が米国の農産物輸入拡大を軸に部分合意を提案、15日に迫る関税発動を回避する可能性、と報じられた。

米長期金利は上昇。10年債利回りは1.59%、2年債利回りは1.47%。

パウエル議長はこの日も発言し、経済が良好な状況にあることを繰り返し、FRBはそうした状況をできる限り持続させるのが責務と述べた。また政治的な圧力からは保護されているとも述べた。

また利下げを決定した9月のFOMC議事録が公表され、大半のメンバーが利下げの必要性を支持した一方、政策の道筋については意見が割れたことも明らかになった。

ドル円相場は底固く、107円50銭中心に上下。ユーロ円相場は118円ちょうど近辺でもみ合い。

木曜日の東京市場では早朝にやや円高の動き。ドル円相場は107円50銭で始まり10銭に下落、ユーロ円相場も118円ちょうど近辺から117円60銭へ。ただその後は反発してドル円相場は107円70銭、ユーロ円相場は118円10銭台に上昇した。

日経平均は21,300円台前半に安寄りしたが、500円台に持ち直し。21,500円台前半で上下して引けた。海外市場にかけては、ドル円相場が107円40銭近辺でもみ合い推移。

この日から二日間にわたり注目の米中閣僚級通商協議が開催。会合を経て、トランプ大統領が、急遽、11日に中国・劉鶴副首相と会談する、と発言したことで、何らかの進展があるとの期待がさらに高まった。

欧州株は終盤に上昇。米国株は朝方から上昇。米長期金利も上昇し、10年債利回りは1.67%、2年債利回りは1.55%。為替市場では円安が顕著。

ドルもリスク選好が強まるなか軟調で、ユーロは上昇。ユーロ円相場が119円に迫る傍らでユーロは対ドルでも堅調に推移し1.097から一時1.1030へ上昇。ドル円相場は107円90銭~108円ちょうどに上昇した。

この日公表されたECB議事録は思ったほど緩和姿勢が強くないと受け止められた。量的緩和再開に異論があり意見が割れ、マイナス金利の悪影響からそもそも利下げに懐疑的な意見もみられた。

発表された米消費者物価指数(9月)は前年同月比+1.7%と前月+1.9%から上昇率が低下、コア指数は前月と変わらず+2.4%。

金曜日の東京市場のドル円相場は107円90銭台で始まり、そのまま108円手前でもみ合い小動き。ユーロ円相場も118円80銭で始まり底固いながら119円手前でもみ合い小動きとなった。

米中閣僚級協議の結果待ちで動意に欠ける展開。日経平均は米中協議での部分合意との見方を好感し、米国株の上昇、ドル高円安を支えに21,750円近辺で高寄り。

朝方は700円割れに押されたが、その後はジリ高で引けは21,800円近辺。夕刻から海外市場にかけてはユーロ円相場を中心に円が全面安。米中協議への期待からリスク選好が高まった。

注目の米中通商閣僚級協議が終了。トランプ大統領は、米中が貿易戦争休戦につながる合意の第一段階に達した、と発表。早ければ11月にも署名の可能性が高まった。

欧州株は引けにかけて上昇。米国株は高寄りして始まりその後も上昇、大幅高となった。

米長期金利も上昇。10年債利回りは1.73%、2年債利回りは1.60%。為替市場では円が全面安。ユーロ円相場は一時120円に上昇し、119円80銭中心に119円60銭~120円ちょうどで上下動。ドル円相場は108円60銭に上昇したのち、108円50銭を中心に40銭~60銭で上下した。

リスク選好を背景にドルはユーロに対して軟調。ユーロドル相場は1.1020から1.1060に上昇し、1.1050中心に上下した。週末NYの引けは、ドル円相場が108円40銭、ユーロ円相場が119円70銭、ユーロドル相場が1.1040。

発表されたミシガン大学消費者マインド指数(10月)は96.0と予想92.3より強く、前月93.2から上昇した。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米経済指標、ベージュブック(地区連銀経済報告)

月初に発表されたISM景気指数は製造業・非製造業ともに予想以上に悪化し、景気悪化リスクをあらためて想起させた。一方、雇用統計は引き続き堅調な雇用情勢を示している。

企業部門の景況感悪化が雇用や消費にも悪影響を及ぼすような状況にあるのか。あるいは個人消費は堅調で景気動向は引き続き問題ないか。

経済指標とともに水曜日に発表されるベージュブック(地区連銀経済報告)における定性的な判断が気になるところ。

火曜日 NY連銀製造業景気指数(10月、予想0.0、前月2.0)水曜日 小売売上高(9月、前月比、予想+0.3%、前月+0.4%)木曜日 住宅着工(9月)、鉱工業生産(同)、フィラデルフィア連銀製造業景気指数(10月、予想8.5、前月12.0)

2.企業決算

先週のISM景気指数では景況感の悪化が示された。問題は企業業績そのものがどの程度悪化しているか。今週から決算発表が佳境に入るので注目される。この先の業績見通しはどうか。

米中通商交渉の部分合意で株価は週末にかけて支えられているが、決算発表が株価上昇に水を差すおそれはあるか。あるいは市場の安心感をさらに後押しできるか。最終的には株価が堅調に推移するかどうかがポイント。

3.中国の経済指標

米中交渉が続くなか中国は景気悪化を防ぐため景気対策を打っている。その効果か経済指標には悪化に歯止めがかかった様子もみられるが、最新の指標はどうか。市場に安心感をもたらす内容となるか。

月曜日 貿易収支(9月)火曜日 生産者物価指数、消費者物価指数(9月)金曜日 工業生産、小売売上高、都市部固定資産投資(いずれも9月)、7-9月期GDP

◆今週のMRA's Eye


米中通商交渉は部分合意~最悪のシナリオは回避

注目の米中通商閣僚級協議は部分合意で決着することとなった。二日目にはトランプ大統領と中国・劉鶴副首相が予定外に会談。知財問題などやっかいな長期的な問題は先送りとされたようだが、トランプ大統領に言わせれば、貿易戦争休戦につながる合意の第一段階に達した、という。

11月のAPECサミットの前に予定される中国での貿易協議に、ライトハイザーUSTR代表、ムニューシン財務長官を招いた。それを経て一連の交渉に署名がされるとみられる。現在課されている関税が撤廃されるわけではなく、半歩前進に過ぎないが、ポジティブな方向感を出すことができたとみられる。

今回の部分合意で市場のリスク回避が緩和され、今後のスケジュールを踏まえれば、少なくとも11月の次回米中会合までは懸念が台頭する可能性は小さくなった。

11月にはヘッジファンドの決算を迎えるが、ここからあらためてリスク回避にかけたポジションを構築するのは難しくなったのではないか。

一方、長期的な解決、最終合意にはなおほど遠く、既存の関税の撤廃には至っていないことからリスク選好にポジションを傾けることも難しい。

円相場に関しては、リスク回避シナリオによる円高リスクはもう一段後退したとみられる。シカゴ通貨先物の投機ポジションは直近先週の火曜日時点でなおもやや買い越しとなっていたことから、今少し円安が進む可能性もある。

ただ週末にかけて円売戻しがすでに生じていれば円売り余力はないだろう。積極的に円売りを構築するほどポジティブな材料はなお欠いている。

リスク選好で上昇しやすいユーロ円相場がすでに120円近くに到達していることからも、さらなる円安が難しいことが想定される。

リスク選好の回復はドルにとってもマイナスに働くため、ドル円相場の上昇が抑制される面もある。105円は一段と遠くなり、107円割れの底固さが確認されたものの、109円台への定着にはなお追加的なポジティブな材料、とくに米国にとってポジティブな材料が必要だろう。

ひとつは米国企業部門の景況感の回復や良好な業績見通しだ。

今回の米中部分合意だけでは企業の景況感が容易に改善しそうにない。すでに賦課されている関税が撤廃されるわけではなく、新規の関税が回避されただけで、悪影響は継続したままだ。

企業のセンチメントがどれほど改善するかは未知数で、頼みの雇用・消費がどれほど景気全体を支え、その間に米中交渉がさらに進展、ないし半導体サイクルが持ち直し局面入り、するなどで製造業部門が回復できるかどうか。

まもなく佳境に入る7-9月期の決算発表が安心できる内容となるか。米国経済の後退懸念、減速懸念が一服しなければ、ドル金利先安感の解消や米長期金利の反発も望めない。

それなくしては10年債利回りが2%を回復することは容易ではない。結果、ドル円相場が110円を回復することも難しい。

ダウンサイドシナリオは、米中交渉が今回の部分合意で「満足」したまま、さらなる進展をみせない場合。それが景気にダメージを与え続けるケース。

ひとまず安堵感が漂ったが、その賞味期限が来年に向けて継続するかどうか難しい。

一方、アップサイドシナリオは、トランプ政権がさらなる景気浮揚策、市場のセンチメントの改善に注力する場合。減税策の具体化など、野党の反対は想定されるものの、具体的な動きに出るかどうか。

大統領選挙を控えた来年のシナリオを明確な証拠なくダウンサイドシナリオに想定しにくい面もある。上下双方のリスクバランスがやや均衡してきつつある、というのが現状だろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :107.98(+0.50)
ユーロ :118.83(+0.90)
英ポンド :134.356(+3.17)
豪ドル :73.002(+0.73)
カナダドル :81.245(+0.64)
スイスフラン :108.304(+0.38)
ブラジルレアル :26.2865(+0.13)
中国人民元 :15.168(+0.11)
韓国ウォン(日本円=100) :9.074(+0.11)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1005(+0.003)
英ポンド :1.2443(+0.024)
豪ドル :0.6761(+0.004)
カナダドル :1.3291(▲0.004)
スイスフラン :0.997(+0.001)
ブラジルレアル :4.108(▲0.002)
中国人民元 :7.1163(▲0.017)
韓国ウォン :1196.03(▲1.86)

【主要国政策金利】
米国 :2.00
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.66(+0.08)
米2年債 :1.54(+0.07)
日本10年債利回り :▲0.20(▲0.00)
日本2年債利回り :▲0.20(+0.00)
独10年債利回り :▲0.47(+0.08)
独2年債利回り :▲0.71(+0.04)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,496.67(+150.66)
NASDAQ :7,950.78(+47.04)
S&P500 :2,938.03(+18.63)
日経平均株価 :21,551.98(+95.60)
ドイツ DAX :12,164.20(+69.94)
インド センセックス :37,880.40(▲297.55)
中国上海総合 :2,947.71(+22.85)
ブラジル ボベスパ :101,798.70(+549.90)
英国FT250 :19,235.72(+64.12)
ビットコイン :8595.54(+5.38)

【主要商品価格】
WTI :53.55(+0.96)
Brent :59.10(+0.78)
米ガソリン :162.33(+3.62)
米灯油 :192.08(+0.15)

金 :1493.89(▲11.68)
銀 :17.51(▲0.23)
プラチナ :898.11(+5.78)
パラジウム :1700.76(+18.11)
銅 :5732.00(+40:33.5C)
アルミニウム :1743.00(+5:5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :923.50(▲0.25)
シカゴ とうもろこし :380.25(▲14.00)
シカゴ小麦 :493.00(▲7.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。