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為替レート-その1
  • ビジネスへのヒント
  • MRA商品市場レポート for MANAGEMENT(週末版)

【ビジネスへのヒント】第381号

商品価格動向を占う上で最も重要な指標の1つが「為替レート」です。殆どの商品がドルで取引されているため、ドルの動向が非常に重要になります。今日のビジネスへのヒントでは為替の影響について実需家と投機家の2種類の行動を例にして2回に分けて解説したいと思います。本日は実需家の動きです。

実需家には商品を購入して「消費してしまう人(消費者)」と「消費される商品を生産する人(生産者)」の2種類が存在します。消費者は定期的に商品を市場から購入します。どのサプライヤーから購入するかにもよりますが、最終的には必ずドルの決済が発生します(とある消費者が日本国内で現物を購入し円で決済したとしても、それを提供するサプライヤーは海外からドルベースで購入しなければならず、ドル資金調達が発生するという意味)。そのため、自国通貨で見た時にその商品が割安な時に買いを入れます。自国通貨で見た場合に価格が安くなるのは、その商品のドルベースの価格が易くなる場合、あるいは自国通貨が上昇したときです。もし商品価格が大きく動いておらず買いを入れるタイミングを見出し難い時等は、為替の自国通貨高は十分に買いのインセンティブとなります。結果、商品が購入されることでドルベースの商品価格にプラスの影響を及ぼすことになります(もしこの時に調達しなければならないドルが莫大な金額となった場合にはドル高が進行することになりますが、為替市場の規模と商品市場の規模を比較した場合、そのようになるケースは稀であると考えられます)。

次に生産者ですが、消費者と全く別の動きになり、自国通貨で見た時に高いレートで売却しようとします。そのため、ドルベースの価格が上昇するか自国通貨が安くなった時に売りを入れます。これによって商品価格にマイナスの影響を及ぼすことになります。生産者・消費者は定期的に商品の決済を行わなければならないため、この取引は定常的に発生し、商品相場を乱高下させます。しかし需給がタイトでなければこの実需の取引が商品相場を大きく変動させることは難しいと考えられます。

この時、「どの国の通貨を見れば良いのか?」という問題が発生します。例えばBrentの価格を見たければノルウェークローネと米ドルの動きをみなければならないでしょうし、銅の動きを見たければチリペソと米ドルの動きをみなければなりません。しかし消費者はいろいろな国に散らばっていますし、商品の生産国もまちまちです。そのためにこうした動きを一元してみることは非常に困難であると言えます。その時に便利なのが、ICEが提供している「ドルインデックス」です。この指標は500を超える金融機関から提示される米ドルと世界の主要通貨のクロスレートを平均したものです。この指標を用いることで、複数国通貨をチェックする必要が無くなります。