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米国はマネーフローでも中国を締め上げるのか
  • MRA外国為替レポート

2019年9月30日号

◆先週の市場総括


先週は週初に欧州の弱い経済指標で世界景気全体のリスクが意識され、欧米の長期金利は上昇一服、株価の上昇が抑制される流れとなった。加えてトランプ大統領の弾劾に向けた動きが米市場に不安感をもたらした。

週を通じて米国株は上値の重い展開。日経平均も22,000円の大台を維持できずに週末取引を終えた。

一方、米中閣僚級通商協議の開催が具体化したことが安心感、リスク選好を支える状況が続いた。トランプ大統領は米中合意が予想よりも早まる可能性に言及。中国が米農産品の輸入を拡大したことが好感された。

ドルは総じて堅調。ユーロが軟調。ドル円相場は週初に107円台後半で始まり一時は107円ちょうど近辺に下落したが、その後は反発して週末に108円近辺に上昇して引けた。

月曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場は107円70銭近辺でもみ合い。ユーロ円相場は118円70銭中心に上下。ユーロドル相場は1.1020近辺で推移した。

しかし欧州時間に入るとユーロが下落。発表された欧州のPMI景況感指数(9月)で、ドイツ製造業の指数が41.4と前月43.5からさらに大きく悪化。2018年初から続く悪化傾向のなかで最低の数字。総合指数も51.7から49.1となり景況感の分かれ目である50を割り込んだ。

これを受けて欧州経済に対するネガティブな見方があらたになり長期金利は低下。ユーロ円相場は117円80銭割れ。ユーロドル相場も1.0970へ下落した。

欧州金利に連れて米国の長期金利も低下。米10年債利回りが一時1.7%を割ったことで、ドル円相場は107円40銭を下回った。

ただその後発表された米国のPMI景況感指数(9月)は製造業が51.0と前月50.3から回復して予想を上回り、サービス業も50.9と前月50.7からわずかながら改善。米国経済さらには世界経済に対しては安心感が広がり、米欧景況格差が意識された。

米10年債利回りは1.73%に持ち直し。ドル円相場は107円40銭~50銭で上下。米中閣僚級協議が10月7日の週に開催されることが明らかとなり、先般の中国代表の米農場訪問中止は米国側の要請であったことが判明。協議への期待が持ち直した。

ユーロ円相場は118円10銭~20銭に戻して上下。ユーロは対ドルでも1.099~1.100に反発して上下した。米国株はまちまちの値動き。

火曜日の東京市場のドル円相場は107円50銭で始まり底固い値動き。60銭中心に上下した。ユーロ円相場は118円20銭を中心に上下動。ユーロドル相場も1.099~1.100でもみ合いとなった。

3連休明けの日経平均は前週末と同水準、22,080円近辺で始まり、22,100円~150円でもみ合い。引けは22,100円近辺。昼頃に日米貿易協定の合意に目途、と報じられたことも支えとなった。

海外市場に入るとユーロがややしっかり。発表されたドイツのIFO景況感指数(9月)は94.6と前月94.3からやや改善。改善は6か月ぶり。ユーロドル相場は1.1020近辺へ、ユーロ円相場は118円20銭~50銭を上下した。ただその後は円高に。

米国の消費者信頼感指数(9月)が125.1となり前月135.1から大幅に悪化して予想を大きく下回った。加えて、民主党・ペロシ下院議長がウクライナ疑惑に関してトランプ大統領の弾劾に向けて正式に調査を開始すると表明。

これらを嫌気して米国株は下落。米長期金利は低下して10年債利回りは1.65%、2年債利回りは1.63%に。ドル円相場は107円ちょうど近辺に下落。107円割れは底固かったが引けは107円ちょうど近辺。ユーロ円相場も円高に振れて118円ちょうどを挟んで上下した。

水曜日の東京市場のドル円相場は107円ちょうど近辺で始まり底固い値動き。反発して30銭~40銭でもみ合い。ユーロ円相場は118円ちょうど近辺を中心に上下、ユーロドル相場は1.1000近辺に小幅ユーロ安ドル高となってもみ合い。

日経平均は米国株下落やドル安円高を嫌気して22,000割れで始まり21,900円台前半に下落。ただ後場は持ち直して22,000円台を回復して引けた。

この日公表された日銀金融政策決定会合議事録(7月29日・30日開催分)では、経済物価の下振れリスクや欧米の金融緩和を踏まえ、予防的緩和の必要性が議論されたことが明らかとなった。

海外市場に入るとドルが堅調。トランプ大統領とウクライナ大統領の電話内容が公開されたが弾劾を決定づけるような内容ではないとみられた。

またトランプ大統領は、中国との合意が予想より早く実現する可能性がある、双方が配慮している、と述べた。米国株は前日の下げを取り戻し反発。

米長期金利は上昇。10年債利回りは1.73%、2年債利回りは1.68%。ドル円相場は107円80銭近辺に上昇してもみ合い引け。ユーロドル相場は1.094~1.095に下落してもみ合い引けた。ユーロ円相場は118円ちょうど近辺でもみ合い。

発表された米新築住宅販売(9月)は季節調整済み年率換算713千戸と前月635千戸から大きく増加した。注目の日米首脳会談では日米貿易協定が署名に至った。

木曜日の東京市場のドル円相場は107円80銭近辺で始まりじり安。夕刻には107円60銭。ユーロ円相場は118円近辺から117円50銭台へ。ユーロドル相場は1.094からやや上昇したが反落し1.093割れ。

日経平均は22,150円近辺で寄り付き22,100円~150円でもみ合い。その後はじり安となり22,000円ちょうど近辺に下落して引けは22,050円。

海外市場に入るとユーロがやや反発したが、その後はドル高円安。トランプ大統領弾劾にからみ、背景にある民主党バイデン氏にからむ疑惑でウォーレン候補が優勢との判断。国民皆保険制度を推していることから警戒感が浮上して米国株は下落した。

ただ中国が米国の農産物輸入を拡大したとの報道で米国株は持ち直し下落幅を縮めた。米長期金利はやや低下。10年債利回りは1.70%、2年債利回りは1.66%。

ドル円相場は107円50銭を一時割ったがその後上昇して107円80銭~90銭。ユーロ円相場も反発して117円80銭中心の値動き。ユーロドル相場は1.0960に上昇したが反落して1.0920。ドルはしっかり。

金曜日の東京市場のドル円相場は107円70銭中心にもみ合いの後夕刻から海外市場にかけて上昇。ユーロ円相場も同様に117円60銭~70銭でのもみ合いから上昇。ユーロドル相場も1.0920中心の上下の後、夕刻から海外市場にかけて上昇した。

日経平均は21,900円で安寄りしたのちに続落。21,700円~800円でもみ合い。引けにかけて持ち直して21,880円近辺で週末の取引を終えた。米国株の軟調を受けて調整した。

海外市場に入るとドル円相場は108円10銭中心にもみ合い。ユーロ円相場は118円20銭~30銭、ユーロドル相場は1.0940~50で上下した。米国株は続落。

トランプ大統領が、米国投資家による中国への投資、中国への資金流入を制限する方法の協議を開始することを決定。具体的には、中国企業による米市場での上場廃止や、政府年金基金を通じた中国市場への投資制限など。再び米中貿易摩擦が激化するのではないかとの懸念が株価を下押した。

米長期金利は概ね前日と変わらず。米10年債利回りは1.69%。発表された米国の個人所得消費支出は、所得の伸びは予想通りだったものの消費支出の伸びが予想を下回り減速。前月の+0.6%から+0.1%に。

7-9月期に消費が減速しているのではないか、との見方が強まった。ドル円相場は終盤に反落して107円90銭台で引け。ユーロ円相場は118円ちょうど近辺で引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

今週は重要な経済指標が相次ぐ。製造業の悪化に歯止めがかかるのか。一方で、個人消費に陰りがみえつつあるのではないかとの懸念があるが、支えとなる雇用情勢はなお堅調さを示すのか。

月曜日 シカゴ購買部協会景気指数(9月、予想50.5、前月50.4)、ダラス連銀製造業活動指数(9月)

火曜日 ISM製造業景気指数(9月、予想50.4、前月49.1)

水曜日 ADP雇用報告(9月、雇用者数前月比、予想+153千人、前月+195千人)

木曜日 製造業新規受注、ISM非製造業景気指数(9月、予想55.8、前月56.4)

金曜日 雇用統計(9月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+162千人、前月+130千人、平均時給・前年同月比、予想+3.1%、前月+3.2%)

2.中国の経済指標

中国では景気対策が打たれているが景気の減速基調に変化があるのか。市場のリスク選好回復に寄与するか。

月曜日に製造業・非製造業PMI(9月、予想49.5・54.2、前月49.5・53.8)、財新製造業PMI(9月、予想50.2、前月50.4)が発表される。

3.日銀短観

10月1日火曜日に9月調査の日銀短観が公表される。景況感の悪化が顕著にみられるか。

大企業製造業の景況感は前回7から1に悪化予想。先行き判断は7から0への悪化予想。中小企業製造業の景況感も悪化予想(現況23→20、先行き17→16)。

また非製造業の指数も大企業、中小企業、ともに悪化が予想されている。設備投資の伸び悩みがみられるか。

大企業製造業の想定為替レートは109円30銭台だったが、実勢に合わせて変化するか。業績予想への影響はみられるか。

◆今週のMRA's Eye


米国はマネーフローでも中国を締め上げるのか

米中通商交渉の再開・継続が視野に入ったことで、9月以降はリスク選好が維持された状態が続いている。中国と米国、双方は追加関税の賦課見送りなどやや歩み寄りの姿勢を示した。

また中国が米国からの農産物購入を拡大し、ポジティブな動きと好感される。

一方で米国、とくにトランプ政権が高圧的・不安定な態度を続ける可能性があり、期待感のなかでも予断を許さない状況は続きそうだ。米中閣僚級協議の開催は10月10日・11日の2日間開催されることが決まった。

ただ先週末にトランプ政権が対中投資制限の協議にゴーサインを出したことがどのように影響するか。

長期的にみれば、中国の貿易収支悪化、経常収支悪化、赤字化が視野に入る。

中国は貿易黒字の大半を米国から稼いでおり、対米黒字を除けば赤字の状況。一連の通商交渉で対米黒字が大きく削減されることとなれば、貿易収支が赤字化する可能性も生じてくる。

中国政府が外需主導から内需主導型経済への舵切りを推進するなら、さらにその可能性が増す。中国景気が減速しているとはいえ、成長率は6%を維持している。先進国と比べれば高成長だ。その成長率を維持しつつ内需主導型になるなら、対外収支は大きく悪化するだろう。

仮に貿易収支そして経常収支が赤字となれば、その赤字を海外からの資本流入でファイナンスする必要が生じる。中国市場は海外からの資本流入を推進しなければならない。

現在は資本規制を維持しているが、それでは海外資本を呼び込むことはできない。資本移動の自由化、人民元の変動相場制への移行が必須となるだろう。ただ自由化が必ずしも資金流入につながるとは限らない。逆に国内から資金が流出するリスクもある。

米国が本気で中国への投資制限を行うとすれば、長期的な視点での中国の問題点を浮き彫りにすることになる。

まだ気の早い話ではあるが、貿易赤字国が資本流入・資金調達を制限されれば苦境に陥ることは目にみえている。

短期的にも中国にとってリスクが高まるかもしれない。現時点では、中国は経常黒字国であり対外債権国だ。

ただ対外債権よりも政府の外貨準備が上回っている。つまり民間部門は債務超過。海外からの資金調達に頼っている状態だ。

仮に中国に対する投資制限、エクスポージャー全体の制限で融資が抑制されることになれば、民間部門つまりは中国企業が資金面から窮する可能性がある。

ドルは基軸通貨であり、米国が投資制限を発動すれば、外貨調達=ドル調達に支障をきたすだろう。米国政府の狙いは、資金面からも、短期的に中国企業の活動を抑え込もうという戦略にみえる。

今回の動きは、表面的には米中対立の新たな火種として、10月の米中通商閣僚級会議への悪影響を懸念させる材料かもしれない。短期的には中国市場、中国株の下落や、人民元相場の下落を招き、市場のリスク回避を再燃させるリスクもある。

ただ10月の交渉が予定通り開催されるなら、そうした懸念は一時的なものとなるだろう。本当のリスクは長期的な問題であり、それが顕在化するのはまだ先となろう。

今週についていえば、米国で重要な経済指標の発表が相次ぐ。米国経済は製造業の景況感悪化、設備投資不振が懸念材料で、一方で雇用・消費が堅調なことから景気はなお堅調とみられている。

消費にも暗雲が漂うようなら懸念は強まるし、逆に企業部門とくに製造業の景況感に改善がみられれば、大きな安心感をもたらすだろう。

米長期金利が一段の上昇を示すかどうか。ISM景気指数と雇用統計は、市場のセンチメントにとって極めて重要だ。こうした材料や米中通商協議を前に、ひとまず対中投資制限の話は影響力を弱めるだろう。実際に発動されるかどうかはまだ不透明でもある。

ただ長期的なリスク、中国経済のリスク、弱点を顕在化させる材料として意識しておく必要はある。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :107.92(+0.09)
ユーロ :118.11(+0.33)
英ポンド :132.629(▲0.31)
豪ドル :73.01(+0.24)
カナダドル :81.435(+0.16)
スイスフラン :108.926(+0.40)
ブラジルレアル :25.9591(+0.10)
中国人民元 :15.176(+0.08)
韓国ウォン(日本円=100) :8.976(▲0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.094(+0.002)
英ポンド :1.2292(▲0.004)
豪ドル :0.6764(+0.002)
カナダドル :1.3247(▲0.002)
スイスフラン :0.9909(▲0.003)
ブラジルレアル :4.1587(▲0.011)
中国人民元 :7.1227(▲0.010)
韓国ウォン :1199.96(+1.16)

【主要国政策金利】
米国 :2.00
ユーロ :0.00
日本 :0.00


【主要国長期金利】
米10年債 :1.68(▲0.01)
米2年債 :1.63(▲0.02)
日本10年債利回り :▲0.24(+0.01)
日本2年債利回り :▲0.24(+0.01)
独10年債利回り :▲0.57(+0.01)
独2年債利回り :▲0.77(▲0.02)


【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,820.25(▲70.87)
NASDAQ :7,939.63(▲91.03)
S&P500 :2,961.79(▲15.83)
日経平均株価 :21,878.90(▲169.34)
ドイツ DAX :12,380.94(+92.40)
インド センセックス :38,822.57(▲167.17)
中国上海総合 :2,932.17(+3.08)
ブラジル ボベスパ :105,077.60(▲241.80)
英国FT250 :19,970.95(+152.34)
ビットコイン :8060.97(▲33.15)

【主要商品価格】
WTI :55.91(▲0.50)
Brent :61.91(▲0.83)
米ガソリン :165.14(▲0.98)
米灯油 :194.16(▲1.35)

金 :1497.01(▲7.77)
銀 :17.54(▲0.28)
プラチナ :931.03(▲0.37)
パラジウム :1684.41(+15.37)
銅 :5743.00(▲49:29C)
アルミニウム :1733.50(▲11:20.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セト
ル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :883.00(▲5.50)
シカゴ とうもろこし :371.50(▲1.00)
シカゴ小麦 :487.25(+3.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。