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米10年債利回りは2%に戻せるか
  • MRA外国為替レポート

2019年9月23日号

◆先週の市場総括


先週は前週までの米長期金利の上昇は一服。リスク選好の回復を背景にした円安も一服し、ドル円相場は戻り高値を試したが反落した。

前週末に発生したサウジアラビア石油施設への攻撃、原油価格の急騰、中東の緊張感高まり、米国とイランの対立激化懸念、を受けて、リスク回避が急遽高まった状況で始まった。

月曜日の日本市場が休場となるなか、ドル円相場は107円40銭に下落してスタートした。ただその後は、トランプ大統領が戦争は望まないとのスタンスを示し、またサウジアラビアが比較的早期に生産回復が可能との見通しを示したことでリスク回避は緩和。原油価格は落ち着きを取り戻し、株価への影響も限定的となった。

ドル円相場は108円台を回復。注目はFOMCに。今回会合では市場予想通り0.25%の利下げを実施。しかし引き続きFRB内での意見は割れた。

輸出や設備投資の弱さを確認しながらも、雇用や消費を中心に米国経済は堅調との見方。景気ダウンサイドリスクを考慮しながらの予防的利下げにとどまり、今後の利下げはやや不透明となった。

市場ではややタカ派的との受け止めとなり、米長期金利は高止まり。ドル円相場は一時108円台半ばに上昇した。しかし週末には米中通商交渉への懸念が高まり株価が下落。米長期金利が低下。円高に揺り戻し。ドル円相場は107円50銭台に下落して取引を終えた。

リスク回避で円が買われるなかドルも堅調で、ドル円相場の下落は比較的限定的だったが、ユーロ円相場は118円50銭に下落、ユーロドル相場は1.10ちょうどを試す動きとなった。

米国株は週末にかけて調整色を強めたが、米中懸念が再燃する前に取引を終えた日経平均は週を通じて堅調。海外勢の買いにも支えられ22,200円台を回復しつつ、週末は22,100円手前で引けた。

月曜日の東京市場は祝日で休場。アジア時間のドル円相場は前週末の108円10銭近辺から107円60銭に、ユーロ円相場も119円70銭台から119円20銭近辺に、それぞれ下落して始まった。

ユーロドル相場は1.1070台で大きく変わらず。円が独歩高。週末にサウジアラビアの石油施設が爆破攻撃され、生産能力が半減。減少規模は世界消費量の約5%~6%にあたる日量570万バレルで、需給面への多大な影響からWTIは一時63ドル台、15%急騰。武力衝突への懸念も高まり市場全体にリスク回避が広がった。

ただドルは堅調でドル円相場の下落は限定的。一時107円50銭を割ったが、その後は70銭~90銭を上下。一方ユーロは対ドル、対円で軟調。

欧米市場に入るとドル円相場は108円ちょうど近辺で底固くもみ合い。ユーロは対ドルで1.10ちょうど近辺に下落。ユーロ円相場も118円80銭に下落して引けは119円ちょうど近辺。リスク回避で円が買われたものの、産油国通貨は原油高を受けてドルとともに堅調で全面的なリスク回避とはならず。

米国株は比較的冷静な値動きで、NYダウは9営業日ぶりに反落したが140ドル程度の下げにとどまった。

米長期金利は低下したがやはり小幅にとどまり、10年債利回りは前週末の1.90%から1.85%へ、2年債利回りは1.80%から1.76%へ。

この日発表された中国の小売売上高、工業生産、都市部固定資産投資(いずれも8月)は軒並み弱め。工業生産は2002年7月以来の弱い伸びとなった。

NY連銀井蛙王業景気指数(9月)は2.0と前月4.8から悪化して予想4.0を下回った。設備投資見通しを示す指数が大きく悪化した。

火曜日、3連休明けの東京市場は比較的落ち着いた値動き。ドル円相場は108円20銭を中心に上下動。ユーロ円相場も119円10銭を中心に上下した。

日経平均は21,900円で安寄りしたものの底固くしっかり。22,000円近辺でもみ合い小動き、横ばいとなった。日米通商交渉が暫定合意と報じられたことも支え。

原油価格の急騰が続かず、落ち着きを取り戻したことも一因。海外市場に入るとユーロが反発。ユーロドル相場は1.1070近辺へ、ユーロ円相場は119円70銭台に上昇してもみ合い。

発表されたドイツのZEW景況感指数(9月)は期待指数が▲22.5と前月▲44.1から大きく改善し、予想▲38を上回った。

またサウジアラビアのエネルギー相が生産能力は今後2~3週間で回復する、として安心感が広がった。原油価格WTIは60ドル割れ。米国株は小幅上昇。

長期金利は小幅低下し10年債利回りは1.81%、2年債利回りは1.73%。ドル円相場は108円10銭~20銭で上下して引け。

この日からFOMCが2日間にわたり開催され様子見姿勢に。米国では鉱工業生産(8月)が発表され前月比+0.6%と強い伸び。設備稼働率も前月の77.5%から77.9%に上昇した。

水曜日の東京市場のドル円相場は108円20銭台に上昇した後、10銭台でもみ合い小動き。ユーロドル相場は1.1070から一時1.1040に下落したが持ち直し1.1060~70。ユーロ円相場は119円70銭~80銭でもみ合い。FOMC待ちで総じて小動き。

日経平均は22,000円台で始まりやや調整して21,900円台後半でもみ合い引けた。

注目のFOMCの結果は日本時間19日未明3:00に公表された。市場の予想通り0.25%の利下げを決定。FF金利誘導目標は1.75%~2.00%に。ただ決定は7対3。1名は0.50%の利下げを主張、2名は据え置きを主張。

声明では、消費は力強く伸びている、としつつ、輸出・設備投資は弱い、とした。また適切に行動する、との文言も維持。示されたメンバーの予測では、7人がもう1回の利下げを予測したが中央値は据え置き。

2020年も据え置きの後、2021年以降は利上げが予想されている。パウエル議長は会見で、景気が実際にして向けばより長期にわたり利下げが適切となる可能性がある、としつつも、現在の米経済はしっかりしている、労働市場は力強くインフレ率は2%の目標に回復する公算が大、とした。

今後はデータに大いに左右される、十分な措置を講じたと判断した時点で利下げを停止する、何かあれば適切に対応、利下げは予防的措置、と述べた。

結果はややタカ派的との受け止めが優勢となり米長期金利は上昇。10年債利回りは、1.75%に低下していたが1.80%に反発。ドルは堅調。ドル円相場は108円50銭近くに上昇、40銭台で引け。

ユーロドル相場は1.1020~40に下落して上下し1.1030で引け。ユーロ円相場は119円60銭~70銭で大きく変わらず。

米国株はまちまち。FOMC結果発表直後ダウは200ドルほど下落したが、パウエル議長が追加利下げに含みをもたせたことで持ち直した。

原油価格は供給不安が早期に解消するとの見方からWTIが58ドル近辺に続落。発表された米中宅着工件数(8月)は季節調整済み年率換算で1,364千戸と前月の1,191千戸から増加して2007年以来の高水準。

木曜日の東京市場は円高の動き。ドル円相場は108円40銭台で始まり107円80銭へ。ユーロ円相場は119円60銭から119円ちょうど近辺へ。

この日は日銀金融政策決定会合の2日目が開催され、結果発表前に円高に振れた。今回の会合では金融政策変更がないことが確実視されるなか、一部追加緩和を予想した向きのポジション調整の円買いが円を押し上げた。

日経平均は22,050円で高寄りし続伸。一時22,250円近辺に上昇。ただその後は押し戻されて22,050円近辺で上下して引けた。円は結果発表後には反落、円安方向に。ドル円相場は108円10銭、ユーロ円相場は119円50銭に戻した。

黒田総裁は会見で、金融緩和について前回会合より前向き、景気下振れリスクが高まっているのは事実、マイナス金利の深掘りもありうる、とした。

海外市場では米国株はまちまちの動き。ダウは小幅下落。米長期金利はやや低下気味ながら概ね横ばいで10年債利回りは1.79%。

米中次官級交渉が始まり、中国当局者が米農業地帯を視察、との報道、またクドロー国家経済会議委員長が米中の雰囲気は和らいでいる、と述べたことはリスク選好の支えとなった。ドル円相場は108円ちょうど近辺、ユーロ円相場は119円30銭近辺、ユーロドル相場は1.1040近辺で引け。

金曜日の東京市場のドル円相場は108円ちょうどで始まりもみ合いからじり安。夕方には107円80銭に下落。ドルはユーロに対しても軟調でユーロドル相場は1.1040から1.1060台にユーロ高ドル安。

日経平均は22,100円近辺で小幅高寄り、その後22,200円に上昇したが反落して週末の引けは22,080円近辺。

海外市場に入るとユーロが下落基調。ユーロドル相場は1.10ちょうど近辺へ、ユーロ円相場は119円ちょうど近辺へ。

さらに米中交渉への期待が後退すると全般的に円高が進み、ドル円相場が108円ちょうど近辺から107円50銭台へ、ユーロ円相場は118円50銭近辺へ下落して引けた。

中国代表団が米国中部の農場視察を一転して取りやめ帰国を前倒し。米国株は小幅高から下落に転じてダウは続落で引け。米長期金利は低下。10年債利回りは1.72%、2年債利回りは1.69%。前週までのリスク選好回復ムードに水を差された形で週末の取引を終えた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

FOMCの結果は予想通り0.25%の利下げ実施で終わった。今後の利下げについては、市場は0.25%を織り込んでいるものの、不透明感を増している。さらに米中交渉の動向や経済指標次第との様相が強まっている。

月曜日 PMI景況感指数(9月、製造業、予想50.3、前月50.3)

火曜日 ケースシラー住宅価格指数(7月、前年同月比、予想+2.2%、前月+2.1%)、リッチモンド連銀製造業指数(9月、予想1、前月1)、消費者信頼感指数(9月、予想94.6、前月94.3)

水曜日 新築住宅販売(8月、季節調整済み年率換算、予想660千戸、前月635千戸)

木曜日 4-6月期GDP確報、金曜日に耐久財受注(8月、前月比、予想▲1.2%、前月+2.1%)、個人所得・消費支出(8月、前月比、予想+0.4%・+0.3%、前月+0.1%・+0.6%)

2.欧州の経済指標

ECBは9月に入って複合的な金融緩和策を決定した。ただその後は策が限られてくるなか追加緩和期待が後退している。経済指標がさらに悪化を示し景気後退が現実のものとなるのか次第。

月曜日 PMI景況感指数(9月、ユーロ圏、製造業、予想47.5、前月47.0)

火曜日 ドイツIFO景況指数(9月、予想94.6、前月94.3)

木曜日 ドイツGfK消費者信頼感指数(9月、予想9.7、前月9.7)、ECB経済報告

3.金融当局者発言

欧米での追加緩和実施の後、さらなる追加があるのかどうか、一段と不透明になっている。当局者の発言からニュアンスが探れるか。米国ではすでにFOMC明けで発言がいくつかみられるが、欧州も含めて示唆が得られるか。今週は月曜日と木曜日にドラギ総裁が発言、金曜日にはデギンドス副総裁が発言予定。

◆今週のMRA's Eye


米10年債利回りは2%に戻せるか

FOMCでは予想通り0.25%の利下げが決定された。これでFF金利の誘導目標水準は1.75%~2.00%に。

足元の米景気動向は雇用情勢が引き締まり、所得環境が良好なことから、個人消費を中心に堅調に推移している。今のところ米中摩擦の影響で個人消費に悪影響が生じている状況はうかがえない。

また長期金利が大きく低下していたことで住宅関連も堅調だ。FOMCでの景気認識も、経済は堅調に推移している、とした。

ただし、輸出と設備投資が弱い、と指摘しており、米中摩擦の企業心理や実際的な悪影響が顕在化していることも認識している。パウエル議長は、現在の利下げはあくまでも予防的な利下げとの考えで一貫しており、事態が悪化して長期的・連続的な利下げ局面に入ったわけではない、と考えている。

また、今後の利下げはますますデータ次第であり、ダウンサイドリスクに対して十分に措置を講じたと考えれば利下げは停止する、としている。

これまでの利下げの根拠は、米中摩擦を主因とするダウンサイドリスクの台頭、輸出の低迷、企業とくに製造業の景況感の悪化、設備投資の鈍化、インフレ率の低迷、だった。

このうちインフレ率は緩慢ながら持ち直し傾向にある。直近の米国の消費者物価指数は、全体が前年同月比+1.7%だが、食料品とエネルギーを除くコア指数は+2.4%と前月の+2.2%から上昇率が加速した。

今回の利下げでFF金利の水準は明確にコアCPIを下回った。また消費支出データのもととなるデフレーターでは、コア指数は前年同月比+1.6%であり、今週発表される8月の数字では+1.8%に加速すると予想されている。

FF金利からインフレ率を差し引いた実質FF金利はいよいよマイナスになってくる。米国経済が家計部門を中心に堅調に推移するなか、金融政策はすでに明確に緩和的な領域が目前だ。

利下げに反対の意見はさらに強まろうし、利下げ賛成派も、ここからさらに大幅な利下げを要求するものでもなさそうだ。

米国の利下げは、年内、あと1回あるかないか。そして中期的に打ち止めとなる可能性が高い。米中交渉が進展するようならリスクの後退で追加利下げは微妙となる。

なおも製造業の不振が続いていることから、市場の慎重な見方、リスク選好に傾ききらない状況が続きそうだ。

トランプ政権は米中交渉を進展させたいと考えているようだが、まだ時間的な余裕があるとの認識だ。中国との交渉を優位に進めるため焦りをみせたくないからとも考えられるが、大統領選挙の前に合意に達するかどうかこだわりがないと述べている。

ただFRBに対する過剰な利下げ要求や過激発言からは焦りも感じられ、本音は別のところにあるかもしれない。

交渉の下準備のため訪米していた中国代表団が、予定していた米国の農村地帯訪問をキャンセルして急遽前倒し帰国したが、交渉決裂とは限らず、具体的な提案を早急に本国・共産党と詰める必要があった可能性もあろう。

利下げ打ち止めが視野に入り、米景気が堅調に推移、米中交渉が予定通り10月に閣僚級で開催され何らかの進展がある、といった状況では、10年債利回りには引き続き上昇圧力がかかろう。

低金利や低信用スプレッドを背景とする社債発行の増加も、需給面での長期金利上昇圧力となる。

また足元で短期金融市場のドル金利がFF目標水準を上回って上昇しているが、これは米国債ほか債券購入資金需要が旺盛となったために、資金が逼迫しているためともいわれている。

ここから再び「リスクオフトレード」で債券利回りが低下していくことは考えにくくなってきた。

一方、上昇サイドはどうか。FF金利が2%に低下したことから、10年債利回りが2%を上回って大きく上昇するには、景気不透明感が解消しリスク選好が強まらない限り難しそうだ。

2%は8月に入ってからのリスクオフトレードの出発点。ここを切ってから利回り低下が加速した。それに伴い円高が進んだが、シカゴ通貨先物のポジション動向をみると、10年債利回りが2%を切るのと同時に円のポジションが中立から円買い持ち(=円ロング)に転じた。

投機的な円買いが原動力となって円高、ドル円相場の105円割れをもたらしたといえる。逆に2%を回復するかどうかが、109円ないし110円回復の鍵となろう。

FF金利が低位安定する限り、イールドカーブが立つ(長短金利差が拡大する)必要があるが、それにはよほどポジティブな材料・状況が必要だ。

現時点でドル円相場の想定レンジは106円台~109円近辺。米中交渉が決裂となれば再びリスクオフで105円を試す可能性があるが、そのリスクは依然よりも低下している。

109円に近づく局面では本邦企業のドル売りも多く想定される。そうした手口を上回る材料がなければ109円台定着はおぼつかない。直近の日銀短観における2019年度の想定レートが109円35銭。それもひとつの壁となる可能性がある。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :107.56(▲0.46)
ユーロ :118.53(▲0.76)
英ポンド :134.247(▲1.04)
豪ドル :72.776(▲0.61)
カナダドル :81.108(▲0.37)
スイスフラン :108.575(▲0.26)
ブラジルレアル :25.935(+0.01)
中国人民元 :15.222(▲0.00)
韓国ウォン(日本円=100) :9.008(▲0.03)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1017(▲0.002)
英ポンド :1.2478(▲0.005)
豪ドル :0.6766(▲0.003)
カナダドル :1.3263(+0.000)
スイスフラン :0.9909(▲0.002)
ブラジルレアル :4.1476(▲0.020)
中国人民元 :7.0909(▲0.006)
韓国ウォン :1188.18(▲5.49)

【主要国政策金利】
米国 :2.00
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.72(▲0.06)
米2年債 :1.68(▲0.05)
日本10年債利回り :▲0.21(+0.01)
日本2年債利回り :▲0.21(+0.00)
独10年債利回り :▲0.52(▲0.02)
独2年債利回り :▲0.72(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,935.07(▲159.72)
NASDAQ :8,117.67(▲65.21)
S&P500 :2,992.07(▲14.72)
日経平均株価 :22,079.09(+34.64)
ドイツ DAX :12,468.01(+10.31)
インド センセックス :38,014.62(+1921.15)
中国上海総合 :3,006.45(+7.17)
ブラジル ボベスパ :104,817.40(+478.20)
英国FT250 :20,169.40(+79.94)
ビットコイン :10135.94(▲122.91)

【主要商品価格】
WTI :58.09(▲0.04)
Brent :64.28(▲0.12)
米ガソリン :167.84(▲2.23)
米灯油 :198.63(▲1.86)

金 :1516.90(+17.87)
銀 :17.99(+0.20)
プラチナ :946.30(+7.89)
パラジウム :1642.58(+22.70)
銅 :5805.00(+15:27.5C)
アルミニウム :1792.00(±0.0:26C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :882.75(▲10.25)
シカゴ とうもろこし :370.75(▲2.00)
シカゴ小麦 :484.25(▲3.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。