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注目は金融政策から通商・財政政策へ
  • MRA外国為替レポート

2019年9月16日号

◆先週の市場総括


先週は前週からのリスク回避が後退する流れが続き、株価は堅調、米長期金利は大きく上昇し、円安傾向が続いた。米中通商問題は中国が米農産品など一部に対する追加関税の適用を除外、トランプ政権は中国からの一部輸入品に対する追加関税引き上げを10月15日に延期し、引き続き交渉進展期待が高まった。

ECBは金融緩和を実施。ただ追加緩和が想定しにくくなったとの見方もあり、ユーロは堅調に推移した。米10年債利回りは前週末の1.55%から週末には1.90%へと大幅上昇。2年債は1.53%から1.80%へ大きく上昇し、逆イールドは解消して金利差は広がった。

ドル円相場は週初106円80銭で始まり107円台後半で上下したのち108円台を回復したが上値重く、週末は108円10銭で引け。

ユーロ円相場は117円80銭で始まり週央には119円台に。ECB金融緩和で一時117円台に下落したが週末には120円に接近。引けは119円70銭台。

日経平均はリスク選好の回復、米国株の堅調、ドル円相場の上昇に支えられ堅調。週初21,200円で始まり週末は21,400円近辺に上昇して引けた。

月曜日の東京市場のドル円相場は106円80銭で始まり早々に107円をつけた。日経平均は21,200円台で寄り付き上昇、21,300円近辺でもみ合い横ばいとなり引けは300円台。前週からのリスク選好回復の流れが続き株高・円安傾向。中国株・上海総合指数は景気対策を好感して7月初以来の水準に上昇した。

海外市場では米長期金利がボトムアウト感からの上昇が続き、10年債利回りが1.65%、2年債利回りが1.59%に上昇。米国株はまちまちだったが、ディフェンシブ銘柄が調整。リスクへの備えを緩める動き。

ドル円相場は107円ちょうどを中心に上下した後、一段高。引けは107円20銭。ユーロ円相場は東京市場では117円80銭で始まり118円台に上昇すると海外市場では118円50銭で引けた。

火曜日の東京市場のドル円相場は107円20銭台で始まり一時50銭に上昇。その後は20銭~40銭で上下した。ユーロ円相場は118円50銭で始まり118円60銭中心にもみ合い。ユーロドル相場は1.1040~50近辺で概ね横ばいもみ合い。

日経平均は引き続き堅調。海外投資家の買いも支えとなり21,350円で始まり400円台に。350円~400円でもみ合い、引けは21,400円近辺。

海外市場では、米国株が引き続きまちまちの動き。セクターローテーション、入れ替えで業種によって上下動。そうしたなかリスク選好回復の流れのなか米長期金利はさらに大幅上昇。10年債利回りは1.74%、2年債利回りは1.68%。

円は一段安となり、ドル円相場は107円50銭~60銭、ユーロ円相場は118円70銭台に上昇して引けた。

水曜日の東京市場ではさらに小幅ながら円安が進んだ。ドル円相場は107円50銭~60銭で始まり午後には80銭近辺で上下。ユーロ円相場は118円70銭台で始まり一時119円台に上昇。ただその後はユーロが軟調となり118円50銭に押し戻された。ユーロドル相場は1.1050近辺から1.1020に下落。

日経平均は21,450円で始まり堅調。21,600円の高値引け。海外市場に入ると米国株は堅調な展開となり大幅高で高値引け。米中通商交渉の進展期待が株価を押し上げた。

中国が対米輸入品の一部に対する追加関税の見送りを発表。トランプ政権は中国からの一部輸入品に対する追加関税の適用を10月1日から15日に延期するとした。

ただ米長期金利は上昇一服。10年債利回りは1.74%、2年債利回りは1.68%で前日とほぼ同水準だった。ドル円相場は107円70銭~80銭で底固い値動き。ユーロ円相場は118円30銭に下落していたが持ち直し、引けは118円50銭。ユーロは翌日にECB理事会を控えて軟調となり、ユーロドル相場は1.10を割り込んだが引けは1.1010。

木曜日の東京市場ではさらに円安。ドル円相場は107円80銭で始まり108円10銭に上昇。ユーロ円相場も118円70銭から119円ちょうどに上昇してもみ合い。

日経平均は米国株高、堅調なドル円相場、に支えられ21,800円に一段高で寄り付き。その後は800円中心に上下し引けは21,760円近辺。ドル円相場は午後には押されて107円80銭~90銭で推移。その後は海外市場のECB理事会の結果待ち。

ECBは予想通り金融緩和を決定。中銀預金金利を現行の▲0.40%から▲0.50%に0.10%ポイント引き下げ。債券購入を再開(11月1日から毎月200億ユーロ)しインフレ目標に必要な限り継続、

一部超過準備についてマイナス金利を免除、フォワードガイダンスを変更し、2%弱としているインフレ目標にしっかりと見通しが収束していくまで現行またはそれ以下の水準にとどまる、とした(2020年半ばまで、から変更)。

結果を受けてユーロは大幅下落。ユーロドル相場は1.1020から1.0930へ、ユーロ円相場は119円ちょうど近辺から117円60銭へ。

米長期金利も低下し、10年債利回りは1.74%から1.70%割れとなりドル円相場も107円50銭台に小幅下落した。

しかし、債券購入に対してドイツ、オランダなど中核国が反対していたことが明らかに。またドラギ総裁が財政出動の必要性を強調したことでさらなる緩和への期待が後退。ユーロは急反発した。ユーロドル相場は1.1080へ、ユーロ円相場は119円80銭へ急上昇。

また発表された米国の消費者物価指数(8月)はコア指数が前年同月比+2.4%と前月+2.2%から上昇率加速して予想+2.3%を上回った。これらを受けて米10年債利回りは反発上昇して1.79%に、2年債利回りは1.73%に。ドル円相場は108円20銭に上昇し引けは108円10銭。

ユーロ円相場は上昇一服して引けは119円60銭台。ユーロドル相場は1.1060。そうしたなか米国株は続伸の後、頭打ち反落して小幅高。トランプ大統領が、中国との暫定的な合意に扉を開いているが、持続的な合意がより望ましい、とコメント。米中合意への楽観が株価を支えた。

金曜日の東京市場のドル円相場は108円10銭で始まり20銭を中心に上下。その後は108円ちょうど近辺でもみ合い。ユーロ円相場は119円60銭で始まり70銭中心に上下、さらに上昇して120円に接近し、その後は119円70銭~90銭で上下した。

日経平均は21,900円で高寄りした後、22,000円手前でもみ合い。利益確定売りに上値を押さえられたが堅調に推移した。引けは22,000円ちょうど近辺。

海外市場では米国株が引き続き堅調に推移。NYダウは8営業日続伸。小幅高もみ合い、横ばいで引け。その傍らで米長期金利はさらに大幅上昇。株価の上昇を抑制した。米10年債利回りは1.90%に、2年債利回りは1.80%に上昇した。

発表された米国の小売売上高(8月)は前月比+0.4%と前月の+0.7%から伸びは減速したものの予想+0.3%より強め。ミシガン大学消費者マインド指数(9月)は92.0と前月89.8から上昇し予想90.9を上回る強い数字だった。

ドル円相場は108円10銭中心に上下してそのまま引け。ユーロ円相場は119円70銭~80銭でもみ合い引け。ユーロドル相場は1.1070~80。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FOMC(米連邦公開市場委員会)

今週17日火曜日、18日水曜日の2日間にわたりFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催される。結果は日本時間19日木曜日未明3時に公表予定。今回の会合では0.25%の追加利下げ決定が市場予想の大勢。

トランプ大統領からの利下げ圧力が強まる一方、当局者のなかでは利下げに反対意見もある。米中交渉進展期待や長期金利持ち直し、株価堅調などもあり、追加緩和に対する意見も分かれそうだ。

注目はさらなる利下げの可能性がどうか。打ち止め感が漂えば、長期金利のさらなる上昇につながる可能性もある。株価への影響はどうか。

ドル円相場への影響は複雑だが、利下げでもドル安円高には振れないケース、逆にドル高円安が進むケースも。3時半からのパウエル議長の会見で、追加緩和の可能性についていかなる見解が示されるかも注目される。

2.日銀金融政策決定会合

FOMCと重なるかたちで、18日水曜日、19日木曜日の両日にわたり、日銀金融政策決定会合が開催される。かねてより日銀に追加緩和の余地が限られているとの見方が広がるなか、何らかの緩和スタンスを示すか。

ドル円相場が反発していることは日銀にとって安心材料。また市場全体のリスク選好が回復して株価も堅調に推移していることは、追加緩和の緊急性を後退させている可能性がある。

限られた手段を温存し、緩和スタンスを示すにとどまるか。本来は検討すべきことではないが、米トランプ大統領が他国の金融緩和について苦言を呈していることからすれば、日銀としては現在の緊迫度合いが低くなった状況で緩和カードは切りにくいだろう。黒田総裁は定例会見でいかなる見解を示すか。

3.米国の経済指標

米国経済について、企業の景況感の悪化に改善を示す指標はみられないが、雇用や所得、個人消費は堅調で、米国経済の底固さが確認されている。今週の指標は米国経済の堅調さを示し、市場のリスク選好回復の流れを下支えするか。

とくに企業の景況感や生産が持ち直しているようならインパクトがある。

月曜日 NY連銀製造業景気指数(9月、予想4.0、前月4.8)

火曜日 鉱工業生産(8月、前月比、予想+0.2%、前月▲0.2%)、設備稼働率(同、予想77.6%、前月77.5%)

水曜日 住宅着工件数(8月、季節調整済み年率換算、予想1,250千戸、前月1,191千戸)

木曜日 フィラデルフィア連銀製造業景気指数(9月、予想11.0、前月16.8)、景気先行指数(8月)、中古住宅販売(8月、季節調整済み年率換算、予想537万戸、前月542万戸)

◆今週のMRA's Eye


注目は金融政策から通商・財政政策へ

先週ECBは金融緩和を実施した。しかしユーロは発表直後こそ下落したが、すぐに反発している。事前に緩和が予想されていたこと、ドイツほか中核国が量的緩和に反対していたこと、さらにドラギ総裁ほか参加者が財政政策の重要性を強調したこと、などから追加緩和に否定的な見方が広がったことが要因だろう。

今週はFRBが▲0.25%の追加利下げに踏み切ることが確実とみられている。ただこちらもFRB内部には利下げ反対派と推進派に意見が割れている。

今回利下げが実施された後、次の利下げについては不透明感が漂う。すでに米長期金利は底打ち、反転上昇しているが、利下げ打ち止め感がさらに強まり、長期金利を下支え、あるいは押し上げる要因となる可能性がある。

ECB、FRB、さらにIMFも、欧州景気、米国景気、世界景気について、景気後退を想定していない。利下げは予防的措置との位置づけだ。

さらに、その根源は米中通商摩擦から生じる景気減速リスク、下振れリスクへの対応。金融政策での対応に限界、ないし、政府の政策によって生じたリスクに対して、財政出動で対処すべき、との意見がみられる。

ECBドラギ総裁ほかは財政政策の重要性を指摘。米国ではNY連銀元総裁が政治の失敗の尻ぬぐいをFRBがすることを拒むべきとの意見を述べている。

米欧の追加利下げの可能性が後退し、当面据え置きとの見方となれば、金融政策は為替相場の変動要因から外れそうだ。

そもそも、この間の為替相場、さらに市場全体は米中通商摩擦を中心とするリスクオフの強弱で動いてきた。また金融政策も米中通商摩擦による景気下振れリスクに備えるべく金融緩和を実施してきた。

ただ金融当局と市場の動きには違いが生じた。市場参加者は景気後退を囃してそれをテーマに「リスクオフトレード」を過剰に推し進めてきた。

債券市場では買いとくに米国債に資金が流入し、米長期金利は利下げ織り込みでは説明できない水準まで金利が低下した。欧州でも国債利回りは低下して超長期のドイツ国債金利もマイナスとなった。

株式市場では株価全体が長期金利の低下で支えられながらも、利回り銘柄、ディフェンシブ銘柄が相対的に買われた。

為替市場ではリスク回避で買いが集まる円が独歩高。ただドルも安全通貨として米国債とともに買われ、ドル円相場の下落には歯止めがかかり、結果的に米債利回りの低下ほどにはドル安円高とならなかった。

一方、金融当局は、この間景気下振れリスクを警戒しつつも、景気後退までは見込んでいない。前提とする経済環境が当局と市場の間では異なっていた。

そうしたなか、米中通商交渉の進展期待が高まったことで、まず市場の「リスクオフトレード」に巻き戻しが生じた。米債利回りは急上昇。円相場は反転し円安に。

先走り過ぎた市場に調整が入る傍らで、金融当局は従来通り引き続き景気下振れリスクを警戒しつつ、予防的な金融緩和を一旦様子見とするかどうかを検討することになりそうだ。

市場とくに債券市場は、金融当局に緩和を催促するような動きとなっていたが、前提条件が崩れつつあるリスクに加え、当局の緩和打ち止めの可能性が浮上すれば、さらに長期金利には上昇圧力がかかりかねない。

為替市場における円高ストーリーは、リスク回避と米欧の金融緩和に支えられてきた。

しかしリスク回避が後退、米欧の金融緩和も打ち止めの可能性が浮上、となると、円高ストーリーの維持は難しくなる。

なおも米中通商交渉は不透明であり、景気減速リスクが漂うなかでは、容易に円安ストーリーに転換することは難しい。円買いの解消、手仕舞いの範囲内での円安方向への揺り戻しが想定される。

米10年債利回りが2%を超えないなかでは109円台に到達することは難しいのではないか。

さらに留意すべきは、市場の関心が金融政策から従来の通商政策に加え財政政策に移行する可能性だ。

景気悪化の原因は政府、とくに米トランプ政権の通商政策だというのが大方の見方であり、金融当局の考え方だ。政府・政権が景気浮揚を図る必要があれば財政政策で対応するしかない。

今後変化が予想されるのは、金融政策ではなく財政政策となる。ECBは財政政策の必要性を強調。米国ではトランプ大統領がFRBに過剰な圧力をかけ続けているが、株価動向をみれば、自らの通商政策が左右していることは明らか。

大統領選挙を前に景気浮揚・株価浮揚を図る必要があれば、財政政策に手を出すことは容易に想定できる。

現に、先週、トランプ大統領は中流階級に対する大規模な減税策を発表すると発言。クドローNEC(国家経済会議)委員長も、来年半ばに中流階級に対する大幅減税策を提供すると述べた。

景気対策が金融政策から財政政策に転ずれば、為替相場への影響は通貨安から通貨高に180度転換する。

財政拡張は長期金利上昇につながり、通貨高要因となる、というのが定説だ。

このところの米長期金利の上昇は、米中摩擦の後退・リスク回避の緩和、依然として堅調な米経済、歴史的低金利を背景とした社債の大量発行という需給要因、がある。

それに財政拡大が本格的に加われば、米10年債利回りが2%を回復する可能性が生ずる。減税についてはなお先の話であり、また民主党が過半数を占める下院を通過するのは容易ではないとみられる。ただ十分に留意すべき材料だろう。

当面は108円~109円では上値が重く、107円割れが底固い状況とみられる。これまではドル安円高リスクが警戒されてきたが、その反転に加えて、さらなるドル高円安材料となれば、インパクトが大きくなる可能性もある。

不透明な通商・財政政策の展開だが、来年に110円を回復する可能性がやや出てきたことには留意したい。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.09(▲0.01)
ユーロ :119.72(+0.11)
英ポンド :135.155(+1.79)
豪ドル :74.371(+0.15)
カナダドル :81.362(▲0.47)
スイスフラン :109.138(▲0.02)
ブラジルレアル :26.452(▲0.15)
中国人民元 :15.27(+0.02)
韓国ウォン(日本円=100) :9.163(+0.02)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1073(+0.001)
英ポンド :1.2501(+0.017)
豪ドル :0.6879(+0.001)
カナダドル :1.3288(+0.008)
スイスフラン :0.9904(±0.0)
ブラジルレアル :4.0868(+0.023)
中国人民元 :7.0787(▲0.001)
韓国ウォン :1176.82(▲9.82)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.90(+0.12)
米2年債 :1.80(+0.08)
日本10年債利回り :▲0.15(+0.06)
日本2年債利回り :▲0.15(+0.03)
独10年債利回り :▲0.45(+0.07)
独2年債利回り :▲0.71(+0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :27,219.52(+37.07)
NASDAQ :8,176.71(▲17.76)
S&P500 :3,007.39(▲2.18)
日経平均株価 :21,988.29(+228.68)
ドイツ DAX :12,468.53(+58.28)
インド センセックス :37,384.99(+280.71)
中国上海総合 :休場( - )
ブラジル ボベスパ :103,501.20(▲869.70)
英国FT250 :20,195.75(+233.18)
ビットコイン :10270.67(▲60.40)

【主要商品価格】
WTI :54.85(▲0.24)
Brent :60.22(▲0.16)
米ガソリン :155.31(+0.01)
米灯油 :187.78(▲0.73)

金 :1488.53(▲10.73)
銀 :17.44(▲0.66)
プラチナ :948.55(▲2.87)
パラジウム :1611.08(▲8.60)
銅 :5896.00(+21:26C)
アルミニウム :1802.00(▲7:34C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :884.75(+1.75)
シカゴ とうもろこし :355.50(+1.00)
シカゴ小麦 :485.75(±0.0)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。