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リスク回避トレードの解消続くか
  • MRA外国為替レポート

2019年9月9日号

◆先週の市場総括


先週は週央にリスク回避が後退、リスク選好が強まり、株高・米長期金利上昇とともに円安となった。ドル円相場は週初に106円ちょうど近辺に下落してスタート。

月曜日は米国市場が休場で小動き。米国ISM製造業景気指数(8月)が49.1と3年ぶりに景況感の分かれ目である50割れ。米10年債利回りは1.5%を割り込んだ。

しかし水曜日に、アジア時間に香港政府が逃亡犯条例を撤回と報じられ、欧州ではイタリアで新内閣が発足へ。またイギリス下院が合意なきEU離脱しようとする政府の動きを阻止する法案を可決。不透明感が緩和。

さらに木曜日には米中両国が10月初旬に通商協議を開催することで合意。リスク回避が急速に後退。米国株を中心にグローバルに株価が大きく上昇。米長期金利も急上昇。10年債利回りは1.6%に迫った。

ドル円相場は107円を回復。ユーロ円相場は118円台半ばに上昇した。

週末の米雇用統計は非農業部門雇用者数の伸びが予想よりも弱かった一方、平均時給の上昇率は強めとまちまち。ドル円相場は一時106円60銭台に下落したが底固く106円90銭で引け。

米国株は堅調のまま週末の取引を終えた。日経平均も週初に20,600円近辺で始まり、週央に大幅高となって21,200円近辺で引け。

パウエル議長は米国や世界経済の景気後退は予想せず、米当局は著しいリスクを注視、景気拡大を維持するため引き続き適切に行動する、と述べ、市場の利下げ期待に変化はなし。

月曜日の東京市場では朝方やや円高に振れた。ドル円相場は106円ちょうど近辺に、ユーロ円相場は116円50銭近辺に下落してスタート。ただその後は持ち直し106円20銭中心にもみ合い。

日経平均は20,600円に安寄りしたが、その後は600円~650円で小動き、もみ合い引けた。

中国では財新・製造業PMI(8月)が発表され50.4と景況感の分かれ目である50を回復した。

海外は米国市場が休場。ただドルは堅調でドル円相場は106円30銭~40銭に小幅高。引けは106円20銭。

ユーロドル相場は1.0960~70にややユーロ安ドル高でもみ合い。ユーロ円相場は116円50銭。

火曜日のドル円相場は106円20銭で始まり40銭に上昇。ユーロドル相場は1.0940に、さらにドルが堅調。

日経平均は20,600円割れで始まったが底固く、600円~650円でもみ合い小動き引け。海外市場に入るとドルは反落。

発表された米ISM製造業景気指数(8月)が49.1と前月の51.2から悪化し予想も下回り、3年ぶりの50割れとなった。

米長期金利は低下して10年債利回りは1.47%、2年債利回りは1.46%。米国株は安寄り、下落したがその後は底固くもみ合い。

ドル円相場は105円80銭に下落したが、その後は106円を回復し引けは105円90銭~106円ちょうど。ユーロドル相場は1.0970~80に反発してもみ合い。

ボストン連銀総裁(7月会合で利下げに反対票)は、米中摩擦でリスクは高まったが大半の経済見通し、金融市場の指標は景気後退よりも成長持続を示唆している、と述べた。

一方セントルイス連銀総裁は、景気は想定よりも下振れするリスクがあり9月のFOMCで0.5%の利下げを検討すべき、とした。

水曜日の東京市場のドル円相場は106円ちょうど近辺でもみ合い、ユーロ円相場は116円20銭~30銭でもみ合い。

日経平均も20,600円~650円でもみ合い横ばい。後場には650円~700円にやや水準を切り上げてもみ合い、引けは20,650円。

ただ東証引け後に、香港政府が一連の混乱の原因である逃亡犯条例を撤回する、との報道があり、混乱収拾を期待してリスク回避が緩和。円が全面安に。ドル円相場は106円20銭~30銭に、ユーロ円相場は117円ちょうど~10銭に大幅上昇。またユーロドル相場も1.1010~20へ上昇した。

また中国国務院(内閣に相当)は、経済が妥当なレンジで成長することを確実にする必要がある、として、時宜を得た方法で預金準備率を引き下げていく意向を示した。

海外市場に入るとさらにリスク回避が緩和。イタリアでは、コンテ首相が組閣名簿を提出し大統領が承認したことから新内閣が発足する運びとなった。

イギリスでは下院が10月31日に合意なきEU離脱をしようとする首相の動きを阻止する法案を可決。3か月の離脱延期をEUに要請することを政府に強制する法案。

一方、首相が持ち出した10月15日に総選挙実施を求める提案は否決された。

ドル円相場は106円40銭近辺に上昇。ユーロドル相場は117円30銭~40銭でもみ合い引け。ユーロドル相場は1.1030近辺。

米国株は高寄り後もみ合い、前日の下げを取り戻して引け。一方、米10年債利回りは上昇後に反落して概ね前日比同水準の1.47%。2年債は小幅低下して1.43%。

この日公表されたベージュブック(米地区連銀経済報告)では、米国経済は緩やかに拡大している、製造業・農業・輸送業で減速が目立つ一方で雇用・消費・住宅は底固い、とされた。

NY連銀総裁は、米景気減速の回避に向け適切に行動する用意がある、今のところ米経済は良好な状態にある、とした。

木曜日の東京市場では前日の流れのまま一段の円安が進んだ。中国商務省は。米中通商担当閣僚が電話会議を行い非常にうまくいったとの認識を示し、米中両国が10月初旬にワシントンで通商協議を開催することで合意した、とした。

ドル円相場は106円40銭から70銭台に上昇、その後は40銭~50銭で推移したが底固い値動き。ユーロ円相場も117円30銭台から70銭に上昇、その後は30銭に押し戻された。

日経平均は前日からのリスク選好回復の流れのままに寄付きは20,800円。その後も一段高となり21,100円を回復し、後場には一時前日比500円超の上昇となった。引けは21,100円近辺。

海外市場でも米国株が大幅高。米長期金利が大幅上昇。2年債利回りは一時0.1%以上上昇して1.58%をつけ引けは1.54%。10年債利回りも同様に1.58%に上昇した後1.56%。ドル円相場は106円70銭から107円20銭に上昇し、引けにかけては押されて107円ちょうど近辺。

ユーロ円相場は大幅に上昇して一時118円60銭をつけ、引けは118円ちょうど近辺。ユーロドル相場は1.1080に上昇したが押されて1.1030~40で引けた。

米国のADP雇用報告(8月)では雇用者数前月比が+195千人と予想+140千人を上回り、ISM非製造業景気指数(8月)は56.4と前月53.7から大きく改善し予想53.8を上回ってともに強い数字だった。

金曜日の東京市場は米国の雇用統計の発表、パウエル議長の発言を待とうというなか総じて小動きとなった。ドル円相場は107円中心に小動き横ばい。ユーロ円相場も118円ちょうど~20銭近辺。

夕刻にかけては弱いドイツ鉱工業生産の数字からややユーロが軟調となった。

注目の米雇用統計(8月)は、非農業部門雇用者数・前月比が+130千人と前月+164千人から減速して予想+157千人を下回った。一方、平均時給の上昇率は前月比+0.4%と前月+0.3%から加速、前年同月比も+3.2%と前月と同水準で予想+3.0%を上回って明るさを示した。

非農業部門雇用者数の数字を受けてドル円相場は一時106円60銭台に下落。ユーロドル相場も1.1050台にユーロ高ドル安となった。

しかし米国株が小幅高、もみ合いとなり堅調さを示し、米長期金利が上昇し10年債利回りが一時1.60%をつけるなどしたことからドルは支えられ、ドル円相場はじりじりと106円90銭に戻して引け。

ユーロドル相場も反落して1.1030近辺。米10年債利回りはその後1.55%に戻して引け。2年債利回りは1.53%でともに前日とほぼ同水準。

パウエル議長は、米国および世界経済は緩やかな成長の持続が最も可能性の高い見通しであり、ともにリセッション(景気後退)は予想していない、労働市場は非常に力強く8月の雇用統計はそうした状況と整合的な数字、当局は著しいリスクを注視している、景気拡大を維持するため引き続き適切に行動する、と述べた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.ECB理事会

この間、米欧の利下げ・金融緩和が円高シナリオを支えてきた。まず今週木曜日に開催されるECB理事会(金融政策決定会合)でいかなる金融緩和が決定されるか。すでに7月の会合で、2020年半ばまで現状かより低い水準に維持する、と文言を変更している。

今回は、利下げ(中銀預金金利▲0.40%の引き下げ)、金融機関への悪影響を抑制するための金利階層化、フォワードガイダンスの強化、債券買い入れ再開、などからいかなる合わせ技で実施するか。

緩和実施がユーロ安につながるか。逆に回復しつつあるリスク選好の背中をさらに押し円軟調の地合いを維持するか。

2.米国の経済指標

週末のパウエル議長発言からは景気に対する信認の一方で追加緩和への柔軟な政策スタンスがうかがわれた。利下げの主な理由はインフレ率の低迷だが、最新の数字はどうか。

米長期金利は反発・上昇しているが、その動きに歯止めがかかるか。

水曜日 生産者物価指数(8月、前年同月比、予想+1.7%、前月+1.7%、コア、予想+2.2%、前月+2.1%)

木曜日 消費者物価指数(同、予想+1.7%、前月+1.8%、コア、予想+2.3%、前月+2.2%)

金曜日 小売売上高(8月、前月比、予想+0.3%、前月+0.7%)、ミシガン大学消費者マインド指数(9月、予想90.0、前月89.8)

3.中国の経済指標

中国金融当局は政府と一体となり目下の景気減速に対して景気下支え策を打ちつつある。米中交渉の悪影響が続くなか金融緩和で痛みを和らげつつ交渉を続ける方針とみえる。

中国株式市場は政府・当局の動きを好感。グローバルな市場のセンチメントにもプラスの影響を与えている。これに経済指標の持ち直しを伴うことができるか。

今週は週初に貿易統計、火曜日に消費者物価指数、生産者物価指数、が発表される。物価の低迷が引き続き足元の景気減速を示すか。

◆今週のMRA's Eye


リスク回避トレードの解消続くか

先週は期せずして政治・外交・通商を巡りリスク回避を緩和する材料が目白押しとなった。香港では混乱の元凶となった逃亡犯条例の正式撤回を政府が表明。デモが鎮静化して都市機能が回復するのではないか、との期待が高まった。

イタリアでは反EUの右派ポピュリズム政党を含む連立政権が瓦解し政局が不安定化した。しかし、辞任したコンテ首相に新政権の組閣が一任され、新たな閣僚名簿が大統領に承認されて政局が安定する見込みとなった。

イギリスではEU離脱を強力に推進するジョンソン首相に対し、合意なき離脱を阻止すべくEUへの離脱延期交渉を政府に義務付ける法案を下院が議決した。合意なき離脱が織り込まれていたことから、市場にとっては安心材料のひとつとなった。

さらに最も大きかったのは、なんといっても米中通商交渉が10月初旬に再開される運びとなったことだ。双方はすでに発表された通り、関税率を引き上げた。

関税報復合戦が交渉を頓挫させるリスクが嫌気されて米中景気の悪化、世界景気の後退リスクが意識されていた。しかし交渉継続によって事態悪化に歯止めがかかる可能性が浮上した。

市場は景気後退リスクをテーマに、リスク回避トレード、を活発化させていた。アセットクラスのなかでは債券買いを強め、とくに安全資産である米国債へ資金流入が強まった。

その結果、米債券価格は上昇、米長期金利は大幅に低下。先行きの利下げ予想では説明がつかないレベルにまで金利が低下していた。

為替市場では安全通貨である円買いが強まった。投機筋は円買い持ちを徐々に増加させている。もっともドルも安全通貨であるため、米国債への資金流入=米長期金利低下とともにドルは堅調に推移し、ドル円相場の下落には歯止めがかかった。

その傍らで大きく下落したのがユーロ円相場だ。こうしたリスク回避戦略では通常は株価も下落するが、米国株はすでに調整し、長期金利が大きく低下したために利回り(1株当たり利益/株価=PERの逆数)でみた米国債対比での相対的な魅力から底固い値動きとなった。

これは日本でも同様で、日経平均は軟調に推移したが20,000円に近づくレベルでは底固さを示した。

そうしたなか相次ぐリスク回避要因が後退したことで、市場で流行りのこうしたトレード、値動きが揺さぶられることとなった。リスク回避トレード、は、修正・手仕舞いを余儀なくされている。

最も影響が大きかったのが債券利回りだ。米長期金利は利下げ織り込み以上に低下していただけに、その反動もあって大幅に上昇した。

為替市場においても変化がみられる。週末に発表されたシカゴ通貨先物における円の投機ポジションは、数週間にわたり連続して円売り持ちの減少、円買い持ちの増加が続いたが、最新の9月3日時点の持ち高は円買い越しが27.7千枚と前週8月27日時点の33.6千枚から減少。投機的な円買いが減少した。問題はそうした流れが続くのかどうか。

為替市場における円買い戦略は2つの要因に支えられてきた。

景気後退懸念にともなうリスク回避による円買い、米欧の金融緩和による金利差縮小を材料とする円買い、だ。

そもそもは政治・外交・通商政策、とくにトランプ政権の政策に起因する景気悪化リスクに対して、米国FRBを中心として当事者の中国や欧州などが利下げ・金融緩和による対処を強めようとしている、という構図が根底にある。

関税報復合戦は財政緊縮と同様に景気引き締め要因となり、それに対応する金融緩和との組み合わせは、通貨安要因となる。

ただリスク回避となれば円も買われるがドルも買われる。グローバル経済がリスクとなれば、ドルは基軸通貨であるがゆえに、単純にはこうした通貨安にはつながらない。

NY連銀元総裁のダドリー氏は、トランプ大統領の相次ぐ利下げ要請発言、FRBへの攻撃に対して、貿易政策について選択を誤り続ける政府を救済する考えはない、と当局は明確に述べる必要がある、と述べた。

政権からの利下げ要求に屈して対応するかたちとなることに強い警戒感を示した。これに対し、クドローNEC(国家経済会議)委員長はこの発言を酷評。ただそこには政権の焦りも伺える。

トランプ政権が景気減速リスクにFRBが十分に対処すべきと非難しようとも、株価が米中交渉の動静で上下していることは明らかだ。トランプ政権が起因となるリスクに対して、FRBも受け身であり、中国も受け身だ。

米中は通商交渉を再開することとなった。米国では大統領選挙に向けて来年初に向けて景気浮揚を図る必要があろう。対中強硬姿勢だけでは支持は得られない。

中国は受け身だが習主席としても香港の混乱が続くなか、景気減速が明確とり不振が広がれば国民の不満から政治的な不安定性が増す恐れがある。

景気対策でしのぎつつトランプ政権の急所を突いて対立を鎮静化したいだろう。米中双方の政権の思惑をベースとすれば、リスク回避トレードにはそもそも限界がある。欧米の金融緩和をテーマにした円高シナリオにも無理がある。

すでにドル円相場は反発しており、105円割れのリスクは後退したようにみえる。当面はリスク回避トレードの修正がどこまで続くか。

欧米の金融緩和・利下げが続くなかではドルやユーロの上値は重い。しかしリスク回避の解消が強まれば円高が修正される可能性がある。ただそれではドル円相場の上値は108円程度がせいぜいだろう。

一方、なお実現するとしても時間を要するシナリオだが、リスク回避の主要因である政治サイドが政策ミスである通商摩擦の激化を修正し、あるいは財政出動などによって対応する動きとなれば、ダウンサイドリスクに備える金融緩和が進んだ後だけに、リスク選好が強まって、米長期金利がさらに一段高となり、また円安が進む可能性も生じてくるので留意が必要だ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :106.92(▲0.02)
ユーロ :117.89(▲0.12)
英ポンド :131.322(▲0.59)
豪ドル :73.202(+0.33)
カナダドル :81.161(+0.33)
スイスフラン :108.264(▲0.21)
ブラジルレアル :26.3211(+0.31)
中国人民元 :15.008(+0.05)
韓国ウォン(日本円=100) :8.964(+0.04)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1029(▲0.001)
英ポンド :1.2283(▲0.005)
豪ドル :0.6846(+0.003)
カナダドル :1.3173(▲0.006)
スイスフラン :0.9875(+0.002)
ブラジルレアル :4.0621(▲0.049)
中国人民元 :7.1164(▲0.033)
韓国ウォン :1196.95(▲3.35)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.56(+0.00)
米2年債 :1.54(+0.01)
日本10年債利回り :▲0.24(+0.02)
日本2年債利回り :▲0.24(+0.01)
独10年債利回り :▲0.64(▲0.04)
独2年債利回り :▲0.87(▲0.00)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,797.46(+69.31)
NASDAQ :8,103.07(▲13.75)
S&P500 :2,978.71(+2.71)
日経平均株価 :21,199.57(+113.63)
ドイツ DAX :12,191.73(+64.95)
インド センセックス :36,981.77(+337.35)
中国上海総合 :2,999.60(+13.74)
ブラジル ボベスパ :102,935.40(+692.40)
英国FT250 :19,705.52(+55.96)
ビットコイン :10356.88(▲161.22)

【主要商品価格】
WTI :56.52(+0.22)
Brent :61.54(+0.59)
米ガソリン :157.42(+2.82)
米灯油 :190.03(+1.18)

金 :1506.82(▲12.23)
銀 :18.18(▲0.47)
プラチナ :951.22(▲8.84)
パラジウム :1542.09(▲20.98)
銅 :5814.00(+12:26.5C)
アルミニウム :1787.50(+10:26C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :845.00(▲4.75)
シカゴ とうもろこし :342.50(▲4.00)
シカゴ小麦 :460.25(▲3.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。