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米長期金利低迷もドルの全般的堅調さは不変
  • MRA外国為替レポート

2019年9月2日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は、前週末に米中通商対立が激化し関税報復合戦の様相を呈した流れを受け、月曜早朝にリスク回避の円高が進んだ。ドル円相場は一時104円50銭に下落。

しかし月曜日のうちに、トランプ大統領が米中通商交渉を再開するとし、中国サイドからも劉鶴副首相が冷静に協議・協力して問題を解決するとしたことで安心感が広がった。

前週末に急落した米国株は上昇。ドル円相場は106円台を回復。その後は米中対立の行方を見極めようと様子見が強まった。

米長期金利が大きく低下して10年債利回りが1.5%割れとなり、また2年債金利と逆転する逆イールドとなったが株価は底固い値動き。ドル円相場も106円前後で推移。

木曜日には米中交渉進展期待から米国株は上昇して前週の大幅安を取り戻し、ドル円相場も106円台後半に上昇した。

ただ米中交渉の不透明感はぬぐえず上値も重く、週末は106円30銭台で引け。ユーロは軟調が続き、週末には対ドルで2017年5月以来の1.10割れとなった。

日経平均は米国株の堅調やドル円相場の反発から週を通じて底固く、週末は20,700円台に上昇して高値引けとなった。

月曜日の東京市場は朝方からリスク回避の円高が急伸。トルコリラ/円相場などクロス円相場(ドル以外の通貨に対する円相場)での外為証拠金取引の損切り、強制的な円買い戻しに引っ張られ、ドル円相場は105円10銭近辺で安寄りの後104円半ばまで円高が進んだ。

ユーロ円相場は117円40銭から116円60銭近辺に下落。

日経平均は20,200円割れで大幅安寄り。ただ割安感もあり底固く、20,200円~300円で上下して引けた。円買い一巡後、ドル円相場は105円台を回復。

トランプ大統領が、中国の要請もあり通商交渉を再開する、としたことでリスク回避が後退。中国の劉鶴副首相も、冷静な地度で協議や協力を推し進め問題を解決する用意がある、と発言。市場に安心感が広がった。

海外市場に入ると欧米株が上昇。NYダウは前週末比270ドルほど反発。円安の流れが続き、ドル円相場は106円10銭近辺まで上昇して引け。ユーロ円相場は117円80銭中心の値動きで引けた。

ユーロドル相場はアジア時間に1.11台半ばで推移したが、NY引けは1.11ちょうど近辺にユーロ安ドル高。米10年債利回り、2年債利回り、ともに1.54%。

火曜日の東京市場のドル円相場は106円10銭で始まったが105円60銭~70銭に下落。ユーロ円相場も117円80銭から117円30銭~40銭に。ただ円高は続かずその後は底固い値動きでやや円安。ドル円相場は105円80銭中心に上下。

日経平均は米国株やドル円相場の反発を好感して20,400円台に反発して高寄り。20,400円~500円で上下。この日、中国は20項目の景気刺激策を発表した。

海外市場では米国株が中国の景気対策を好感して上昇したもののその後反落して前日比マイナス。米長期金利が低下し、2年債利回りが1.52%、10年債利回りが1.47%と逆イールドが大きくなったことでネガティブな反応が広がった。

ドル円相場は一時106円台に乗せたが反落して105円70銭~80銭でもみ合い。ユーロ円相場は117円70銭に上昇したが反落して30銭中心のもみ合い。

発表されたリッチモンド連銀製造業指数(8月)は+1と前月▲12から改善。消費者信頼感指数(8月)は135.1と予想より強く前月とほぼ同水準を維持した。

この日、元NY連銀総裁のダドリー氏は、トランプ大統領からの利下げ要求からFRBは決別すべき、と述べた。

水曜日の東京市場のドル円相場は105円70銭台で始まりそのまま小動き横ばい。ユーロ円相場も117円30銭中心に小動き。日経平均は20,450円~500円でもみ合い小動き、引けは20,480円近辺。米中対立を見極めようと様子見が広がった。

海外市場では米国株が上昇。NYダウは260ドル高。世界的な長期金利低下傾向が続き、イタリア国債10年債利回りが初の1%割れ。新政権発足に向け協議が進展し、大統領がコンテ首相に新政府樹立を指示したことが好感された。

米国では5年債入札がしっかり。30年債利回りが一時1.90%と過去最低をつけた。2年債利回りは1.50%、10年債利回りは1.47%と逆イールド幅がやや縮小。

株価持ち直しにリスク回避は緩和して円は弱含み。ドル円相場は106円20銭に、ユーロ円相場は117円60銭に上昇。引けかけてはやや反落して、ドル円相場は106円10銭近辺、ユーロ円相場は117円50銭近辺。ユーロドル相場は1.1080~90で横ばい。

木曜日の東京市場のドル円相場は106円ちょうど~10銭で始まりやや下落して105円90銭近辺でもみ合い横ばい。ユーロ円相場も同様の値動きで117円50銭から30銭~40銭に下落してもみ合い。

日経平均は20,450円で始まり350円に下落したが、その後は持ち直し、午後にかけてジリ高。20,450円と前日引け同水準で引けた。夕刻にかけて円が軟調。ドル円相場は106円20銭~30銭に、ユーロ円相場は117円60銭~70銭に、それぞれ反発してもみ合い。

海外市場では米国株が上昇。NYダウは前日比+330ドル。前週末の大幅下落をすべて取り戻した。中国は報復関税の詳細を発表。一方で、9月に予定している米中閣僚級協議の準備を進める、貿易競争のさらなるエスカレートを防ぐことに注力、としたことからリスク選好が回復した。

この日発表された米国GDP4-6月期改定値では個人消費が上方修正され消費が堅調であることを改めて示した。また小売の一部決算では消費の堅調さが米中摩擦による影響を吸収していることが示された。

米長期金利は上昇して2年債は1.53%、10年債は1.52%。為替市場ではさらに円安が進み、ドル円相場は106円70銭、ユーロ円相場は117円90銭に一時上昇。ただその後反落して引けは106円50銭、117円80銭。

この日、ECBの次期総裁に就任する予定のラガルド氏はドラギ総裁を引き継ぎ、ユーロ圏のインフレ率を押し上げるため超緩和的な金融政策を維持する、とハト派スタンスを示した。

金曜日の東京市場のドル円相場は106円50銭で始まり、その後は106円40銭中心にもみ合い。ユーロ円相場は117円80銭で始まり117円40銭~60銭で推移した。

日経平均は20,600円台半ばで高寄りし700円台に上昇。その後は20,700円近辺でもみ合いそのまま引けた。ドル円相場が堅調に推移し米国株も上昇したことでしっかり。

海外市場に入るとユーロが下落。ユーロドル相場は。1.1040~50近辺から1.0960近辺に下落。1.10割れは2017年5月以来。その後やや戻したが引けは1.10割れのまま。

ユーロ円相場も一時116円60銭~70銭まで下落し、引けは116円80銭。とくに材料のないなか、このところのユーロ安基調の流れのなかでさらに売りに押された。

米国株はとくに方向感なく小幅高。米長期金利は小幅低下して2年債利回りは1.51%、10年債利回りは1.50%とほぼ同水準。

発表された個人所得はやや弱めだったが消費支出は堅調。シカゴ購買部協会景気指数(8月)は50.4と前月の44.0から持ち直し予想を上回るとともに景況感の分かれ目である50を辛うじて上回った。

一方、ミシガン大学消費者信頼感指数(8月確報)は89.8と速報の92.1から大きく下方修正された。米中摩擦の不確実性が高まったことで消費者の不安・悲観的な見方が強まったことが背景とみられる。

ドル円相場はユーロ円相場の下落に押され一時106円10銭台に下落したが持ち直し、引けは106円30銭台。

週末に発表された中国の製造業PMI景況指数(8月)は49.5と引き続き景況感の分かれ目である50を下回り前月49.7から悪化した。一方、非製造業PMIは53.8に前月53.1から改善した。

◆今週の3つの注目ポイント


月曜日は米国市場が祝日で休場

1.米国の経済指標

米中摩擦激化による景気悪化懸念が強まるなか、今週は重要な経済指標の発表が相次ぐ。雇用・所得・消費は堅調だが、企業の景況感悪化が深まるか。雇用統計に陰りはみえないか。

火曜日 ISM製造業景気指数(8月、予想51.2、前月51.2)

水曜日 貿易収支(7月)

木曜日 ADP雇用報告(8月、雇用者数前月比増減、予想+140千人、前月+156千人)、SM非製造業景気指数(同、予想53.8、前月53.7)

金曜日 雇用統計(8月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+157千人、前月+164千人、平均時給、前年同月比、予想+3.0%、前月+3.2%)

2.ベージュブック(米地区連銀経済報告)

水曜日にベージュブックが公表される。米国経済の現状について、経済指標の数字によらず定性的な状況について、いかなる報告がなされるか。

引き続き米中貿易摩擦の影響が企業業績や景況感、設備投資スタンスへの悪影響を拡大させているか。悪化が深まっていることが確認されるようなら9月利下げ実施の可能性が高まる。

先々のリスクについて何らかの示唆が得られるか。一方、雇用・消費の力強さが再確認されれば、利下げ反対派の意見は容易に変わらないだろう。

3.パウエル議長発言

金曜日にパウエルFRB議長が経済見通しと金融政策について討論する予定。景気に対する見方は慎重度合いを増しているか。また金融政策、利下げによる対応をどの程度示唆するか。

7月会合やその後のコメントでも、あくまでも景気堅調のなかでの政策調整であり利下げ局面入りしたわけではない、とのスタンスだったが、そこに変化はないか。逆に踏み込んだコメントで0.5%の利下げ実施を想起させることになるか。

このほか中国で財新PMI企業景況感指数(8月)が発表される。米中摩擦激化のなかだけに弱い数字となれば市場がネガティブに反応する可能性がある。

◆今週のMRA's Eye


米長期金利低迷もドルの全般的堅調さは不変

引き続き米中通商交渉の行方を巡って市場心理が左右される展開が続いている。

基本的には不透明感からリスク回避が根強く、安全資産である米国債への資金流入が続いて米長期金利は低下。あるいは欧州での追加的な金融緩和期待から欧州の長期金利も低下。

投資家の利回り志向は続き、米30年債は史上最低の1.9%近辺で推移。イタリア国債も、新政権発足に向けた動きを好感して買い進まれ、10年債利回りは初の1.0%割れとなった。

引き続きリスク回避トレードが続いているが、一方で株価は底固い値動きとなっている。米国株の益回り(PERの逆数、1株利益/株価)はS&P500ベースで5%台前半を維持。

米10年債利回りが1.5%近辺に低下したことで利回り格差は3%台後半に拡大し、利回り面での魅力が上昇。リスク回避が進むなかでも下落しにくくなっている。

ドル建て資産は、米国債の安全性に加えて米国株の利回り面での魅力から資金を集めやすい。トランプ大統領のドル高懸念とは裏腹に、ドルだけをとってみれば、堅調に推移しているのが現実だ。

米中摩擦の激化から市場心理が悪化、一時的にリスク回避が強まる局面では円高シナリオが力を持つ。しかし米中双方が完全に決裂し、双方の景気後退が決定的となる事態は国内政治状況を踏まえれば考えにくい。

景気配慮の政策がいずれ景気を持ち直すというのがメインシナリオとなろう。短期的な展開と中長期的な展開、両者が異なる可能性に留意が必要だ。

足元ではダウンサイドシナリオが隆盛だが、そのまま来年まで弱気シナリオが継続する可能性は小さいのではないか。

投機筋は引き続き円先高感をもとに円買いを進めているようだ。シカゴ通貨先物のポジションは直近の公表データである8月27日現在の数字で33千枚を超えている。

8月6日に円ロング(買い越し)となってから3週連続で円買い越し幅は純増しており、7月下旬に売り越しを解消し始めてからは6週連続の円買いだ。

円買い越し幅が大きかったのは2016年秋だが、そのときのピークは68千枚。現在はそのおよそ半分だ。リスク回避が根強いなか、欧米の金融緩和を背景に円高シナリオは描きやすい。なお円を買い増す可能性がある。

現状は、政府による政策ミス(通商・外交政策)が景気悪化をもたらしている状態だが、それは本来政府によってしか改善できない。金融政策が尻ぬぐいをするのは無理だ。

それでも金融政策に景気下支えを押し付けて「危険なゲーム」を続けるのかどうか。いわばグローバルな「官製不況」が世界景気後退をもたらすなら、確かにG7あるいはG20の意義が問われる事態だろう。

目下のところその可能性も否定できないところが最大の問題。投機筋はそのあたりを見切って「リスク回避トレード」に傾斜し、投資家は悪いニュースに不安心理を強め、またそうした動きに煽られて動いているのだろう。

ただリスク回避トレードがかなり進捗し、欧米の長期金利が大幅に低下。欧米の金融緩和にも次第に打ち止めや限界がみえてくるなか、円高が思いのほか進まなければ、円買い戦略を進める投機筋はどこかで手仕舞い=円売戻しを強いられる可能性もあろう。

とくに、政治的な側面から、景気悪化を防ぐため、金融政策から財政政策・通商政策へ、減税や通商交渉の妥結へ、スタンスがシフトすれば、状況が一転する可能性がある。

トランプ政権は、米国景気は堅調、と主張している。実際に雇用・所得・消費動向はしっかりしている。ここに本格的な悪化、陰りがみられる前に、政治的に、何らかの動きがみられるかどうか。

FRBは9月に追加緩和を実施する可能性が高いが、すでにある利下げに対する反対意見や足元の景気動向、企業景況感悪化の背景を踏まえれば、その後の追加利下げを支持する論理はさらに困難に直面しよう。

まずは9月のECB、FRBの利下げまでは円高シナリオは容易には解消しないだろう。ただその後については微妙だ。

11月にはヘッジファンドの決算を迎える。年初あるいは足元まで数か月に及ぶリスク回避トレードの利食い、手仕舞いが生じる可能性が次第に高まる。

とくに来年の景気見通しについて、政府サイドの政策対応の有無が重要となるが、政治的にも景気持ち直しを図る必要がある、といういわば「性善説」に立てば、円高は一服。ドル円相場は反発するシナリオが描ける。

景気を犠牲にして政治的・外交的成果を求めるようなら世界景気悪化のリスクシナリオ。米国景気が後退するなら、FRBの利下げは調整ではなく利下げ局面入りとなり、ドル円相場は102円あるいは100円を目指すリスクシナリオとなる。

ただその可能性は依然としてかなり低いのではないか。

105円~108円での低迷が3か月ほどなお続き、その後はややレンジをドル高となるとの見方がメインシナリオだ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :106.28(▲0.24)
ユーロ :116.83(▲0.95)
英ポンド :129.27(▲0.49)
豪ドル :71.587(▲0.09)
カナダドル :79.841(▲0.33)
スイスフラン :107.303(▲0.67)
ブラジルレアル :25.6363(+0.10)
中国人民元 :14.843(▲0.07)
韓国ウォン(日本円=100) :8.779(▲0.03)

【対ドルレート】
ユーロ :1.0982(▲0.008)
英ポンド :1.2156(▲0.003)
豪ドル :0.6733(+0.001)
カナダドル :1.3311(+0.002)
スイスフラン :0.9904(+0.004)
ブラジルレアル :4.1455(▲0.025)
中国人民元 :7.1565(+0.012)
韓国ウォン :1211.35(▲5.15)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.50(+0.00)
米2年債 :1.50(▲0.02)
日本10年債利回り :▲0.27(+0.02)
日本2年債利回り :▲0.27(+0.01)
独10年債利回り :▲0.70(▲0.01)
独2年債利回り :▲0.93(▲0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,403.28(+41.03)
NASDAQ  :7,962.88(▲10.51)
S&P500 :2,926.46(+1.88)
日経平均株価 :20,704.37(+243.44)
ドイツ DAX :11,939.28(+100.40)
インド センセックス :37,332.79(+263.86)
中国上海総合 :2,886.24(▲4.68)
ブラジル ボベスパ :101,134.60(+610.20)
英国FT250 :19,393.63(+101.13)
ビットコイン :9626.18(+100.15)

【主要商品価格】
WTI :55.10(▲1.61)
Brent :60.43(▲0.65)
米ガソリン :161.34(▲7.13)
米灯油 :182.82(▲3.58)

金 :1520.38(▲7.25)
銀 :18.38(+0.11)
プラチナ :933.76(+16.66)
パラジウム :1533.56(+57.96)
銅 :5696.00(▲43:18C)
アルミニウム :1741.50(▲1:29C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :857.00(+0.75)
シカゴ とうもろこし :358.00(▲1.75)
シカゴ小麦 :451.25(▲18.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。