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英国EU離脱 ~ドル円相場への影響はあるか
  • MRA外国為替レポート

2018年10月1日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は112円50銭近辺で始まり底固く週央には113円をつけた。FOMC直後にはややドル安となったが週末にかけて大きく反発し113円台後半に上昇。週末NYの引けは113円70銭近辺。

ユーロは軟調。対ドルでは1.17台後半でもみ合いとなったが、週末にかけてはイタリア財政への懸念を材料に下落した。ユーロドル相場は1.16台前半、ユーロ円相場は132円近辺で始まり133円に上昇、週末には131円20銭近辺へと大きく反落、132円近くまで戻して引け。

米長期金利はFOMCで0.25%の利上げが実施されたものの、長期的には利上げ打ち止めが視野に入り3.1%台に定着しきれず。週末は3.06%。

米国株は米中通商問題が一転して当面進展しない可能性が高まったことで前週の楽観ムードから調整へ。利上げ継続もやや重石に。

対照的に日経平均は大幅高。堅調なドル円相場、日米通商交渉、首脳会談が、とりあえず大過なく終わったことが好感された。一時24,200円台に上昇し27年ぶりの高値をつけ、週末の引けは24,100円台。

月曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場は112円50銭で始まり、その後は60銭を中心にもみ合い、小動き横ばい。ユーロ円相場は132円20銭近辺でもみ合い。

週末に米紙が、米中貿易協議は中止、11月の中間選挙終了まで再開せず、今週予定されていた劉副首相のワシントン訪問はキャンセル、米国による対中制裁発動でも交渉するのは侮辱的、と報じていた。

米国はこの日中国に対して2,000億ドルの関税を発動。米国株は再び懸念が強まったことで大きく下落して始まった。

欧州ではドラギECB総裁が講演し、基調的インフレ率のさらなる上昇を見込む、来年終盤の利上げに向け順調、と強気の発言。これをうけてユーロが大きく上昇。1.1720から1.1810台へ。ユーロ円相場も132円割れから133円へ。

ドル円相場は一時ドル安の勢いに押され112円40銭に下落したが底固く推移。ドルはその後全般的に反発した。

ユーロは反落して対ドルで1.1750へ、対円で132円台半ばへ。ドル円相場は112円70銭台に上昇して引けた。

米国では月曜日・火曜日の2日間にわたり開催されるFOMCの結果を前に金利が強含み。長期金利10年債利回りは3.07%から3.09%に上昇。2年債利回りも2.81%から2.83%に上昇。ドルを支えた。

火曜日の東京市場のドル円相場は112円80銭からやや強含み90銭中心でもみ合い。ユーロは1.1750中心に上下しつつ小幅上昇。ユーロ円相場も132円50銭から堅調に推移。

3連休明けの東京市場の日経平均は23,800円台前半で始まり900円台に上昇。後場も900円近辺で底固く、引けにかけて上昇して23,940円で引け。TOPIXは日経平均よりもさらに強く引けにかけて上昇した。

過度の通商懸念が和らいだこと、ドル円相場の堅調が支え。日銀の黒田総裁はこの日講演で、超低金利の継続を約束したフォワードガイダンスについて、今後変化していく可能性はあるが、「当分の間」は相当に長い期間のイメージだ、と述べた。

海外市場に入るとドルはやや下落する場面もあったが持ち直し堅調。円は全般的に軟調。ドル円相場は一時112円70銭台に下落した後、じり高、113円目前に上昇して引け。ユーロ円相場は133円目前に上昇して引け。

米国株は軟調。米10年債利回りは3.10%台で前日から小幅上昇して推移した。発表された米消費者信頼感指数(9月)は138.4と予想132.1、前月134.7を上回り、2000年9月以来の高水準。

また日米通商協議を終えた茂木大臣は、米国と基本認識は一致、詳細は日米首脳会談後に公表する、と述べた。

水曜日の東京市場のドル円相場は112円90銭台で始まり80銭近辺に小幅じり安。ユーロは小動き。FOMCの結果待ち。日経平均は23,800円台に小幅安で始まったがその後は堅調。24,000円台に乗せて引けた。

海外市場に入るとドルは上昇。ドル円相場は113円台に、ユーロドル相場は1.1730へとユーロ安ドル高が進んだ。

FOMCは2日目の会合を終えて日本時間木曜日未明3時に結果が公表された。事前予想通り0.25%の利上げを実施。

声明文では、労働市場が引き締まりを続け、経済活動が力強い速度で拡大していることを示している、とされた。

また、金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的、との文言が削除され、すでに政策金利が中立的な水準に近いことを示した。

同時に示されたメンバーによる予測は前回と概ね不変。今年はあと1回、来年は3回、2020年は1回、の利上げを予想。新に加わった2021年は利上げなしで、3.375%がピークとの予想が示された。

成長率は財政政策の後押しが減退することも加味して来年以降は鈍化する見通し。2020年の成長率は2.0%、21年は1.8%とされた。これにより長期金利には頭打ち感が強まり、10年債利回りは3.10%から3.05%に低下。

ドルは反落してドル円相場は112円60銭~70銭で引け。ユーロドル相場は1.1750近辺で上下。

米国株は下落。パウエル議長が会見で、一部参加者は中立水準をやや超えた利上げを予想している、財政政策の経路は持続不可能、と述べた。

木曜日の東京市場のドル円相場は112円70銭中心に上下、上値重く60銭近辺に軟化。前日海外からの流れに加え株価の調整も足を引っ張った。

日経平均は反落。ドル高一服と短期過熱感から下落し23,800円近辺で引けた。

こうしたなか、ユーロが下落。イタリアで予算案会合が延期との報道で財政懸念からユーロ安に。ユーロドル相場は1.1750から1.17ちょうど近辺に下落した。

日米首脳会談では2国間で物品貿易協定の交渉を開始することで合意。年明けに本格交渉入りが決まった。その間は自動車等への追加関税は発動しないことが明記された。

海外市場に入るとドル円相場は大きく上昇し113円40銭に。発表された米耐久財受注(8月)が強めの数字だったことがきっかけだが、月末・四半期末の米国内への資金還流によるドル買いも要因とされた。その後はもみ合い引け。

ユーロはイタリア財政懸念を材料に大幅安。ユーロドル相場は1.1640へ、ユーロ円相場は132円割れへと下落した。2019年の赤字目標がEU加盟国目標値の2.0%を上回る2.4%に設定されたことが嫌気された。

米国株は反発、上昇。米10年債利回りは横ばい3.05%。

金曜日の東京市場のドル円相場は113円40銭近辺で始まり堅調、60銭台に上昇した。ユーロ円相場は持ち直し。ただその後ユーロは引き続きイタリアの財政問題を嫌気して下落。対ドルで海外市場にかけて1.1570まで、対円で131円20銭近辺まで下げた。

日経平均は大幅高。堅調な米国株、ドル円相場の上昇、日米通商交渉に対する警戒感が後退し、前場にバブル崩壊後27年ぶりの高値、24,200円台まで上昇した。引けは24,100円台。

海外市場にかけてドル円相場は113円40銭中心にもみ合い。海外市場に入ると再び上昇基調が強まりじり高。113円70銭近辺の高値引けとなった。

ユーロは対ドルで1.16ちょうど近辺まで戻して引け。ユーロ円相場は132円ちょうど近辺まで持ち直した。米国で発表された経済指標はしっかり。

個人消費は前月比+0.3%と予想通り。一方、インフレ圧力は抑制されている。米国株はハイテク株中心にやや軟調。10年債利回りは概ね横ばいの3.06%。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

今週は重要な経済指標の発表が相次ぐ。今後の利上げペースは先日のFOMCで概ね市場に織り込まれたが、景気堅調・物価安定の適温経済がさらに確認されるか。良好なファンダメンタルズがドルを引き続き支えるか。

月曜日 ISM製造業景気指数(9月、予想60.1、前月61.3)
水曜日 ADP雇用報告(9月、雇用者数前月比、予想+185千人、前月+163千人)、ISM非製造業景気指数(9月、予想58.0、前月58.5)
木曜日 製造業新規受注(8月)、金曜日に雇用統計(9月、非農業部門雇用者数前月比、予想+188千人、前月+201千人、
平均時給、前年同月比、予想+2.8%、前月+2.9%)

このほか、貿易収支(8月)が発表されるが関税引き上げの影響がみられるか。

2.日銀短観

月曜日に日銀短観(9月調査)が発表される。良好な景況感が示されて、日経平均をさらに押し上げることができるか。市場のリスク選好を支え結果的にドル円相場を支えることとなるか。

予想は、大企業製造業の景況判断は現状が22と前回の21から若干の改善見込み、大企業の設備投資計画は前年比+13.9%と高水準が維持
される見通し。

3.イタリア財政不安の行方、イギリスのEU離脱を巡る議論の行方

先週はユーロが大きく反落した。これがドルを間接的に支えた面もある。イタリア財政問題に対する懸念がユーロ売りを促した。そうした流れが今週も続くか。

またイギリスのEU離脱を巡ってはなお確たるプロセスが定まっていない。イギリス国内ではEUとの妥協を嫌って強硬派が「秩序なき離脱」を支持する動きもあり、混乱が生じるとの懸念は根強い。今週は水曜日にメイ首相が保守党大会で演説する。

◆今週のMRA's Eye


英国EU離脱~ドル円相場への影響はあるか

イギリスのEU離脱を巡っては、なおイギリス・EU間で交渉が続いており最終決着に至っていない。EU側との離脱条件すり合わせはなお続いている。

イギリスとEUが経済的な結びつきを維持しつつ離脱することができるのか。

EU側としては、これまでポンドをユーロに統合することなくイギリスの自由度を確保したうえでユーロ圏・EU加盟国として認めてきた。ここでEU離脱したうえに、いいとこ取り、をさらにさせることには心理的なハードルは高いだろう。

一方のイギリス側でも保守派中心に強硬論は根強い。条件交渉など不要。EU側の条件など受け入れずに離脱してしまえばよいではなか、と。いわゆる、秩序なき離脱、だ。

市場は、秩序なき離脱、を織り込みつつある。シカゴ通貨先物のポンドのポジション動向をみると、今年、年初にかけては買戻しが進んで一時は買い越しになっていたものの、6月以降は売り越しに転じ、急速に売り越し幅が拡大している。秩序なき離脱に対する警戒感を反映している。

EUとの合意に至り、イギリスの経済的なダメージが抑制されれば、ポンドの買戻しが進む可能性がある。一方、合意に至らず離脱となれば、経済的なダメージがどれほどになるのか不透明となり、さらにポンド売りが進む可能性がある。金融政策のかじ取りは非常に難しくなるだろう。

ポンド安に伴う物価上昇、経済的なダメージよる景気悪化、その両方に対処する難しさは、足元で一部の新興国がかかえている問題と同様となる。

問題はそれがイギリス一国の話で収まるのかどうか。イギリスだけの問題であれば、為替市場においてはポンド安が進むだけで、他の通貨には基本的に大きな影響は及ばない、ということになる。

ただ欧州経済全体に影を落とすようになれば、ユーロがドルや円に対して軟調となる可能性がある。

イタリアの財政問題、南欧諸国の政治的不安定性、そこにイギリスの離脱と経済不安が重なれば、欧州発リスク回避、というテーマが台頭してグローバル市場全体に不安感が蔓延する可能性もある。

ポンド安のみならず、ユーロ安円高が進むことによって、円全面高となり、ドル円相場にもドル安円高圧力がかかることも考えられる。

実体経済面のみならず金融市場、金融機関の問題についても留意が必要かもしれない。とくに欧州金融機関についてはオペレーション上、重大な変更を余儀なくされる可能性が大。

市場のポンド売りにもかかわらず、体制としては、まだ秩序なき離脱に十分に備えができているとはいえない。欧州金融機関の負担増、業績悪化が生じるようなら、さらに欧州発リスク回避が強まる可能性がある。この点は、欧州金融株の動向を今後も注意深くみていく必要がある。

一方で、両者が合意に至る、という楽観シナリオに振れる場合も想定される。

この場合には、秩序なき離脱を織り込んでいる悲観論、あるいはポンド売り、ポンド先安感、が修正され、リスク回避の後退が生じる可能性がある。

ポンド高となるなか、どちらかといえば円安に動くことが考えられ、ドル円相場には幾分の上昇圧力となる可能性もある。

基本的には英国経済、ポンドにかかわる要因で影響はとくにドル円相場に対しては限定的ないし間接的ではあるが、ある程度リスクの方向感やチェックポイントは念頭においておく必要はあろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :113.7(+0.32)
ユーロ :131.93(▲0.06)
英ポンド :148.155(▲0.13)
豪ドル :82.129(+0.41)
カナダドル :88.09(+1.15)
スイスフラン :115.823(▲0.20)
ブラジルレアル :28.063(▲0.20)
中国人民元 :16.514(+0.08)
韓国ウォン(日本円=100) :10.241(+0.06)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1604(▲0.004)
英ポンド :1.3031(▲0.005)
豪ドル :0.7224(+0.002)
カナダドル :1.2908(▲0.014)
スイスフラン :0.9817(+0.004)
ブラジルレアル :4.0504(+0.039)
中国人民元 :6.8688(▲0.022)
韓国ウォン :1109.3(▲3.40)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :3.06(+0.01)
米2年債 :2.82(▲0.01)
日本10年債利回り :0.13(+0.01)
日本2年債利回り :0.13(+0.00)
独10年債利回り :0.47(▲0.06)
独2年債利回り :▲0.52(▲0.03)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,458.31(+18.38)
NASDAQ  :8,046.35(+4.39)
S&P500 :2,913.98(▲0.02)
日経平均株価 :24,120.04(+323.30)
ドイツ DAX :12,246.73(▲188.86)
インド センセックス :36,227.14(▲97.03)
中国上海総合 :2,821.35(+29.58)
ブラジル ボベスパ :79,342.42(▲657.67)
英国FT250 :20,307.04(▲67.17)
ビットコイン :6643.42(▲50.66)

【主要商品価格】
WTI :73.25(+1.13)
Brent :82.72(+1.00)
米ガソリン :210.12(+1.88)
米灯油 :235.18(+2.87)

金 :1190.88(+8.05)
銀 :14.66(+0.40)
プラチナ :815.95(+5.82)
パラジウム :1075.00(▲10.23)
銅 :6180.00(▲45:0B)
アルミニウム :2034.00(▲18:22.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セト
ル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :845.50(▲9.50)
シカゴ とうもろこし :356.25(▲8.50)
シカゴ小麦 :509.00(▲4.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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