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想定外の米長期金利上昇とリスク選好の後退
  • MRA外国為替レポート

2018年10月8日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は113円70銭近辺で始まりすぐに114円に上昇。その後はやや利食い売りに押されたものの、週央には米国株の史上最高値更新、米長期金利の大幅上昇に支えられて114円50銭台に急上昇した。

ただ週末にかけては米国株が長期金利上昇への懸念から大きく反落。リスク選好が後退したことでドル円相場は113円60銭台に押し戻された。

雇用統計は予想通りだったが長期金利の上昇、株価の軟調は続き、ドル円相場はそのまま113円70銭近辺で取引を終えた。

米国の長期金利はFOMC後に上昇が一服。10年債利回りは3.0%~3.1%でもみ合い推移していた。しかし週後半にかけて予想外に上昇。週
末の雇用統計は賃金の安定を示したが10年債利回りは上昇基調を続け3.23%で引けた。

米国株は週央にかけて強い経済指標やFRBパウエル議長の強気発言などから上昇し史上最高値を更新。しかし週末にかけて長期金利の上昇を嫌気して反落した。

日経平均は前週の勢いのままドル円相場の上昇を受けて週初には24,400円台に。しかしその後は高値警戒感やドル円相場の上昇一服、米国株の下落を受けて反落した。週末の引けは23,800円近辺。

月曜日の東京市場は113円70銭近辺で始まり堅調。夕方には114円ちょうど近辺でもみ合い、小動きとなった。ドルは全般に堅調。ユーロドル相場は1.1620から1.1580へユーロ安ドル高。

朝方発表された日銀短観(9月調査)では大企業製造業の景況感が3期連続で悪化、非製造業も8期ぶりに前期比悪化したが、貿易摩擦懸念や悪天候・地震の影響などとされ大きな影響はなし。

設備投資計画は前年比13%台と高水準を維持した。日経平均は下落して始まるも持ち直し続伸。24,250円で引け。アジア時間に米国とカナダがNAFTA再交渉に合意した、と伝えられた。

海外市場のドル円相場は113円90銭~114円でもみ合い小動き。米長期金利10年債利回りは3.07%~3.09%で上下。米国株はまちまち。

発表された米ISM製造業景気指数(9月)は59.8と予想をやや下回ったものの高水準。

IMFラガルド専務理事は、世界経済は依然として7年ぶりの高いペースで拡大しているが、貿易戦争を受けて見通しを下方修正する、と述べた。

火曜日の東京市場のドル円相場は114円ちょうど近辺でもみ合い。日経平均は24,350円~400円で寄り付き400円台に上昇。ただその後は利食い売りに押されて24,200円台後半に小幅高で引け。

その後夕方から海外市場にかけて大きくユーロ安円高に動いたことからドル円相場は113円60銭に連れ安となり60銭~80銭で上下動となった。

イタリアで下院予算委員長が、財政赤字目標3.1%を掲げるところだった(EUの目標は2%)、債務問題は自国通貨があれば解決できる(ユーロ圏離脱)、と述べたことからユーロが急落。欧州発リスク回避が強まった。

ユーロ円相場は132円近辺から131円割れに下落。ただその後首相らが火消しに回ったことでユーロ安に歯止めがかかった。

米国株は上昇。IT関連株は軟調だったがNYダウは終値で史上最高値を更新した。

FRBパウエル議長は、米経済見通しは際立って良好、一方インフレ率の急上昇を恐れる必要はない、と強気の見方を示した。米10年債利回りはリスク回避を受けてやや低下し3.05%~3.06%。ドル円相場の引けは113円60銭台。

水曜日の東京市場のドル円相場は113円50銭台に下落した後じり高。ユーロも持ち直し対ドルで1.1550から1.1580台中心のもみ合いへ。日経平均は24,200円で寄り付いた後は上下動して24,100円近辺で上下して引け。反落。

海外市場にかけてドル円相場は113円80銭~90銭で推移していたが、米長期金利の急上昇を受けて114円50銭台に急騰した。ドルは全面高。ユーロドル相場は1.1460台へとユーロ安ドル高が進んだ。

この日発表されたADP雇用報告(9月)は雇用者数前月比+230千人と予想+185千人を上回り前月+163千人から伸びが加速。またISM非製造業景気指数(9月)は61.6とこちらも予想58.0、前月58.5を大きく上回った。

またパウエル議長はこの日も発言し、今は中立金利には程遠い、中立金利水準を超えて利上げを進める可能性がある、と述べた。他の当局者もこの日は発言が多く、従来今年の利上げを3回としていた地区連銀総裁が4回と12月の利上げに傾いたことを認めた。

米国株はNYダウが史上最高値を更新。米10年債利回りは3.18%に喰う上昇した。2年債利回りも上昇して2.87%。

木曜日の東京市場のドル円相場は114円40銭~50銭で始まり、リスク選好が後退して株価がグローバルに軟調に推移するなか上値の重い展開。30銭を中心に上下もみ合いとなった。

ユーロドル相場は1.14台後半で上下。ユーロ円相場は131円40銭~50銭で始まり131円ちょうどに下落し夕方に持ち直す上下動。

日経平均は米国株の下落や円安ドル高一服を受けて売り先行、続落。24,200円で寄り付き24,000円割れ。24,000円を中心に上下動して引けた。

海外市場に入るとドル円相場は下落して113円60銭台。円は対ユーロでも上昇しユーロ円相場は一時130円70銭に下落した。リスク選好の後退により円が全面高。

米国では10年債利回りが一時3.23%に上昇。株価は金利上昇を嫌気して大幅続落。リスク選好を後退させた。10年債利回りの引けは3.18%。ドル円相場は113円90銭近辺に戻して引けた。

金曜日の東京市場のドル円相場は113円90銭~114円で始まり90銭近辺でもみ合い。雇用統計待ち。

日経平均は23,800円割れで始まり800円~900円で上下して、週末の引けは23,800円近辺。海外市場のドル円相場はやや軟調。

発表された米雇用統計(9月)では非農業部門雇用者数前月比が+134千人と予想+185千人、前月+201千人を下回った。一方失業率は前月の3.9%から3.7%に低下。

注目された平均時給は前月比が+0.3%と予想通りで前月の+0.4%から上昇率は鈍化。前年同月比は+2.8%と予想通りで前月の+2.9%から上昇率は抑制された。

ドルは対ユーロでは横ばい1.1500~1.1520.ドル円相場は113円60銭~80銭での上下動となり週末NYの引けは113円70銭。米長期金利は上昇基調で10年債利回りは2.23%で週末の取引を終えた。

米国株は金利上昇を嫌気して続落。ドル金利上昇にもかかわらず、リスク選好の後退を要因にドル円相場は上値の重い展開となった。

◆今週の3つの注目ポイント


月曜日は日米ともに祝日で休場。

1.米国の経済指標

今週は物価関連統計が続く。水曜日に生産者物価指数(9月)、木曜日に消費者物価指数(同)、金曜日に輸入物価指数(同)。また金曜日にはミシガン大学消費者マインド指数(10月)が発表される。

賃金上昇率が安定しておりインフレ率が急騰する懸念は小さいが、長期金利が上昇基調を強めているなか、すこしでも強い数字となればさらなる想定外の金利上昇につながる可能性があり要注意。

2.G20財務相・中央銀行総裁会議、IMF・世銀総会

火曜日にIMFが世界経済見通し(WEO)を公表する。足元では世界経済が高水準の成長率で推移していることを認めつつ、貿易摩擦の激化とその影響で今後の減速を見込んでいる。

木曜日・金曜日の2日間にわたりG20財務相・中央銀行総裁会議が開催される。また金曜日から週末にかけてはIMF世銀年次総会が開催される。貿易摩擦問題や新興国問題についてどのような議論がされるのか。いかなるリスクを懸念し、何らかの対応が示されるか。

3.米国金融当局者発言

今週もFRB当局者、地区連銀総裁の発言が多い。このところ米国の長期金利が急速に上昇しているが、それについてどうみているか探ることはできるか。

上昇は当然との見方か、あるいは利上げと同様の効果があるため何らかの懸念ないし利上げペースの鈍化を支持する発言がみられるか

ないし長期金利上昇を牽制するような発言がみられるか、あるいは逆に上昇して当然との発言で上昇を加速するかたちとなるリスクはないか。

このほか、金曜日には中国の貿易収支(9月)が発表される。

◆今週のMRA's Eye


想定外の米長期金利上昇とリスク選好の後退

先週の市場は「虚を突かれた」かたちとなった。米10年債利回りが3.0%そこそこから3.2%台へ上昇。長期金利の上昇を嫌気して米国株が下落。グローバルに株価は軟調となりリスク選好が後退。

円は全面高となり115円を試すかにみえたドル円相場は113円70銭近辺に押されて週末NYの取引を終えた。

結果的に、米長期金利が上昇するなかでドル円相場が下落するという、米金利動向とドル円相場の相関からは説明がつきにくい状況となったが、これは年初の米長期金利上昇時にもみられた値動きだ。

まずは、今回の米長期金利の上昇がどこまで続くのか、また金利上昇かつドル安という状態が長引くものなのか、あるいはどの程度ドル円相場を下押すことになるのか、その可能性を点検する必要がある。

先週、パウエル議長は米国経済に対して極めて強気の見方を示した。インフレ見通しについても、賃金上昇は抑制されており、食料品やエネルギーを除くコアでの消費者物価上昇率が加速する状況にない、インフレを恐れる必要はない、と述べた。

現在の極めて緩やかな利上げの継続に自信を示した。それに先立つFOMCにおいても、委員の予測ではインフレ率は2%近辺で安定。利上げは3.5%で打ち止めとの見方が示された。

足元でISM景気指数が強い数字となり、雇用情勢も引き締まりが続いているが、ここにきて大きく状況が変化したことを示す証左はない。

通商摩擦はNAFTAの再交渉に米国とメキシコ、カナダが合意して明るい兆しがみえるものの、米中間の交渉には進展がない。これは引き続き景気にとって懸念材料だ。

IMFのラガルド専務理事は、貿易摩擦を踏まえて世界経済の成長率見通しを下方修正すると述べた。またFOMCでも、米国経済は足元の減税や歳出拡大が持続不可能として、今後は徐々に成長率が2%近辺に向けて鈍化すると予測している。

政策金利のピークが3.5%と認識されるなか、10年債利回りが3.2%台へと上昇加速したことは想定外だ。まずは、理由を探っておく必要がある。

ひとつは原油価格の急騰。エネルギー価格はコア指数には算入されないが物価全般に影響を及ぼす。これを材料として、FRBの見立てはともかく、10年債を売る動きが強まり金利が上昇した可能性がある。

もうひとつは投資家の動き。10年国債利回りは大きく上昇しないとの前提で保有してきたなか、より価格変動リスクの少ない2年債利回りがここにきて2.9%近くまで上昇。10年債への投資妙味が相対的に低下した。

あるいはFOMCで示された見通しやパウエル議長の発言によれば2年債と10年債の利回り逆転、逆イールドになる可能性が後退したとの見方から10年債の保有を落とした可能性もある。

加えて米国の歳出拡大・国債増発による影響がじわじわ顕在化しはじめたとの見方もある。

ただし、なぜ今か、という説明は難しい。

間接的には欧州財政を巡る混乱が影響した可能性もある。イタリアの財政悪化懸念からイタリア国債は大きく売られ、イタリア10年国債利回りは今月に入り、米10年債利回りを大きく上回って2.7%~2.8%近辺から3.5%近辺へと急上昇した。

政策金利はECBがゼロないしマイナス金利、FRBは2.5%へと利上げ実施。表面金利がイタリア国債優位になったのに加え、政策金利と10年国債利回りの格差はイタリアが3.5%、米国が0.5%。

両者の利回りが逆転、さらには政策金利とのギャップの格差が3%に達したために、資金が米国債からイタリア国債へと流れた可能性もある。

こうした背景だとすれば、米長期金利上昇はポジション調整が主要因であり、基本的には急騰が長引く可能性は小さいと考えられる。

しかし、逆にいえば、ポジション調整には理屈がないために、想定外の金利上昇が続く可能性も否定はできない。その場合は年初のような長期金利上昇、株安、ドル安円高が想定よりも続くこともありうる。

さらに、長期金利上昇による株価へのダメージがリスク選好の後退、リスク回避をもたらしたが、これが長期化するかどうか。

米国株が長期金利対比で相対的に割高であることは、これまでも多く指摘されてきた。米長期金利が想定外に急速に上昇したことは、米国株投資家にとって警戒感を強めたことは間違いない。

ただ企業業績や景気動向を踏まえれば、年初のように株価調整が長期化する理由はないが、一方で、史上最高値を更新するまで持ち直してきただけに、上値が重くなるのも事実だろう。

長期金利が急騰しないまでも利上げに応じてじり高となれば、株価へのプレッシャーも徐々に強まる。

ポジション調整という点では円についても同様。このところ円売りポジションが積み上がっていたことから、足元のような円買戻しが生じるのは自然だ。

とくに大きくドル買い円売りを進める理由がないなか、ドル円相場が114円を超えて115円に迫る展開は時期尚早ではある。

米国の短期金利が上昇していることから、年初のように大幅な円高ドル安が進む理由は後退しており、113円割れでは底固くなっているとみられる。

円高が進む理由は円売りの手仕舞い、一時的な日本の輸出企業のドル売りの強まり以外には理由が見出しにくい。

日銀の出口戦略への思惑が高まって年初のような円急騰となるかどうかについては、フォワードガイダンスが機能している限り、可能性は小さいだろう。またリスク選好が後退するなかではドルも堅調だ。

円全面高となるほどの事象が生じていないなか、ポジション調整による円高が主因だとすれば、ドル円相場の下値は固いとみられる。ただ引き続き米国株の調整深度については目配せしておく必要がある。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :113.72(▲0.19)
ユーロ :131(▲0.14)
英ポンド :149.217(+0.91)
豪ドル :80.203(▲0.41)
カナダドル :87.888(▲0.26)
スイスフラン :114.652(▲0.21)
ブラジルレアル :29.612(+0.22)
中国人民元 :16.55(▲0.02)
韓国ウォン(日本円=100) :10.044(▲0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1524(+0.001)
英ポンド :1.312(+0.010)
豪ドル :0.7052(▲0.002)
カナダドル :1.2939(+0.002)
スイスフラン :0.992(+0.000)
ブラジルレアル :3.8398(▲0.035)
中国人民元 :休場( - )
韓国ウォン :1130.5(+0.68)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :3.23(+0.05)
米2年債 :2.89(+0.02)
日本10年債利回り :0.16(▲0.00)
日本2年債利回り :0.16(+0.01)
独10年債利回り :0.57(+0.04)
独2年債利回り :▲0.51(+0.00)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,447.05(▲180.43)
NASDAQ  :7,788.45(▲91.06)
S&P500 :2,885.57(▲16.04)
日経平均株価 :23,783.72(▲191.90)
ドイツ DAX :12,111.90(▲132.24)
インド センセックス :34,376.99(▲792.17)
中国上海総合 :休場( - )
ブラジル ボベスパ :82,321.52(▲631.29)
英国FT250 :19,918.03(▲170.67)
ビットコイン :6539.04(▲6.97)

【主要商品価格】
WTI :74.34(+0.01)
Brent :84.16(▲0.42)
米ガソリン :208.61(▲1.43)
米灯油 :239.23(▲0.74)

金 :1203.63(+3.71)
銀 :14.63(+0.04)
プラチナ :822.53(▲2.38)
パラジウム :1071.74(+14.79)
銅 :6188.00(▲124:5.5C)
アルミニウム :2150.50(▲101:10.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :869.00(+9.75)
シカゴ とうもろこし :368.25(+0.75)
シカゴ小麦 :521.00(+3.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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