CONTENTSコンテンツ

米中協議の先行き観測を受けて行ってこい
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年8月27日 第1594号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米中協議の先行き観測を受けて行ってこい」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、非景気循環系商品が物色され、景気循環銘柄が水準を切り下げる動きとなった。米中通商交渉で相互制裁強化が決定されたことで、景気の先行きへの懸念から売りが先行したものの、米トランプ大統領が米中交渉の再開を示唆したことで、引けにかけて楽観的な見方が広がった。

昨日最も上昇したのがシカゴ豚。中国は豚コレラの影響が収束していないが、米中交渉再開への期待から豚の輸入需要増加観測が価格を押し上げた。

米天然ガス価格は北米の気温上昇と、トランプ大統領の「中国との交渉再開」発言を受けて大幅に上昇した。

【本日の価格見通し総括】

引き続き、不規則に行われる各国為政者の発言に左右され、神経質な展開が続くと考えられる。基本的に価格は景気が減速方向にあるため、景気循環銘柄を中心に下押し圧力がかかる展開に変化はない。

本日予定されている材料で注目は、米コンファレンスボード消費者信頼感指数(期待指数)だろう。同指標の前年比変化は高い確率で景気後退局面を言い当てているためだ。

消費者信頼感総合指数は129.0(前月135.7)と減速見込みであるが、期待指数にも注目したい。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日は週末の大混乱から一転、トランプ大統領が中国との交渉に関して楽観的な見方を示したことが市場の買い安心感を誘う形となった。

しかし、戻りを試したのは株が中心で商品価格への影響は比較的限定されたように見える。「発言程度」では期待需要が増加しない、と市場は判断しているようだ。

ここで押さえておくべきは、対中政策は長期的な視点では議会主導であるが、短期的な交渉は大統領権限で行っているということだ。つまり米議会も選挙は意識しているものの、トランプ大統領は長期的な話、というよりは目先の支持率しか考えていない、ともいえる。

現在米議会は夏休みであるため、トランプ大統領は自由に発言しているが、夏休みが終了すれば一転して「かせ」がはめられるため、米国側の発言が一転する可能性は、リスクとして考えておくべきだろう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.3%→+3.2%)ている。2020年は+3.5%(▲0.1%)に戻る楽観見通しであるが、米中交渉の決裂懸念など、引き続きリスクは下向きとしている。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる。世界経済の悪化懸念を材料にFRBは利下げ方向に舵を切っている。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q219の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.4%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議が再開されたが逆に、相互の制裁強化となってしまった。今後、仮に進捗があったとしても、通商協議の根本解決には複数年単位の時間が必要で、その間世界経済がさらに減速する場合(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。ジョンソン首相は「何が何でも10月末に離脱」としており、首相就任後の発言もハードブレグジットを前提としており、その可能性はさらに高まった(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油相場は上昇後下落した。欧州の経済統計は減速したものの、トランプ大統領が中国との通商交渉再開を表明したことや、米国の耐久財受注やコア資本財受注が好調だったことが価格を押し上げた。

同時にG7でトランプ大統領が「条件が整えばイランと会談する」仏マクロン大統領も両国の会談の仲介に意欲を見せたことが価格を押し下げた。

【原油価格見通し】

原油価格は、景気減速懸念が強まっていることが実需面で価格を下押しするものの、各国の経済対策や金融緩和観測が価格を下支えすると考えられるため、現状水準でのもみ合いになると考える。チャートを見るに上値は重い。

市場の注目は世界的な金融緩和動向に移っており、相場は金融相場に差し掛かっていると考える。今後は結果的に金融政策の価格への影響が大きくなり、価格への影響が無視できなくなると予想。

イラン問題の終息は、イラン・米国とも自身から歩み寄って解決するとは考えにくく、第三者の仲介が必要と考えられる。

ある意味予想通りだったが、G7にイランのザリフ外相が招かれており、仏マクロン大統領が米・イランの橋渡しをすると表明している。そもそもトランプ大統領はイラン攻撃に反対とみられるため、時機を見て両国の会談が開催されることになるだろう。

イラン問題の終息は供給懸念を後退させ、価格の下落要因となるが現状それほど供給リスクが織り込まれているわけではないため、むしろ同問題解決が域内景気の安定につながると判断され、価格の上昇要因となるとみている。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は横ばい。特段目立った材料がない中、最大消費国である中国の景況感の減速やスポットLNG価格の低迷もあって低水準を維持している。

【石炭価格見通し】

石炭価格はピークシーズンということもあり、米中交渉再開への期待が「若干」高まっていることから一旦買戻しが入るものと考える。しかし、LNG価格の大幅下落が需要面で価格を下押しするため、上昇余地も限定されると考える。

また、7月の中国石炭生産が同じ時期の過去5年の最高となる3,289万トンに達するなど、中国の国内供給が増加していること、中国政府は年間の石炭輸入量を2億8,000万トンに制限する目標を掲げていること、中国の6大電力会社の石炭在庫も高水準であることを勘案すると、中国の石炭輸入が今後も著増するという展開は考え難い。

ただ、バルチック海運指数が再び上昇しており価格が下落していることもあって、石炭輸入の制限前の駆け込み需要の顕在化が価格を支える可能性はある。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は2020年3月まで継続される予定で、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭港湾在庫が増加に転じていることは、冬場の在庫減少を取り戻すための在庫積み増しの動きが強まっているためと考えられる(石炭)。

・競合燃料であるLNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・米国とイランの関係はこの20年で最悪の状態。両国の国力を減ずる戦争のリスクは依然低いとみるが、現状では開戦の可能性も完全に否定できない状態。

・米朝首脳会談が開催されたが、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロング・ショートとも減少したが、ショートの方が減少している。景気の先行き懸念と価格下落に伴う生産減少観測の高まりが影響したとみられる。

Brentはロング・ショートとも減少したが、欧州景気の先行き不安でロングの解消圧力の方が強かった。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが528,969枚(前週比 ▲18,071枚)、ショートが114,334枚(▲50,562枚)、ネットロングは414,635枚(+32,491枚)、Brentが297,119枚(前週比▲11,937枚)、ショートが76,920枚(▲5,369枚)、ネットロングは220,199枚(▲6,568枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は休場だった。

上海金属は総じて軟調な推移。人民元の上昇で輸入が減速するとの見方が強まったことが背景。CME銅は米統計の改善や米中協議の進捗期待で水準を切り上げている。

個別要因としては、2022年からと予定されていたインドネシアのニッケル未処理鉱石輸出規制が前倒しされ、今年から実施される、との報道があったが価格面でのアップサイドの影響は限定された。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、最大消費国である中国のみならず、欧州、米国の経済統計悪化を受けて軟調な推移になると考える。しかし、投機の売り越しが拡大しており、金融緩和や財政出動などの経済対策への期待が高まった場合、買戻し圧力が高まるため、一時的に高騰する可能性はあると考える。

中国製造業PMIの改善は大企業に限られており、中堅・中小企業の景況感はまだ回復しておらず、世界の景気が(主に循環的に)下りのエスカレーターに乗る中で需要見通しが減速、経済対策期待はあるものの、対策の効果が永続的ではないと予想されることから、中期的にも価格は下値余地を探りやすい。

10月末の英国のEU離脱も無秩序なものになる可能性が高いことも、一時的に価格を押し下げよう。

再び持続的な上昇に転じるのは、中国の公共投資が顕在化する年後半か、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは回復したものの閾値の50を下回り、中堅・中小企業の景況感は悪化している。ただし新規受注の増加と在庫の小幅な減少で、新規受注/完成品在庫レシオ、新規受注/原材料在庫レシオが小幅に上昇しており、非鉄金属価格の上昇要因に。

・1-7月期の中国工業生産は前年比+5.8%(1-6月期+6.0%)、7月+4.8%(前月+6.3%)と減速(フロー需要の減速=価格下落要因)。

・1-7月期の中国固定資産投資は前年比+5.7%の34兆8,892億元(1-6月期+5.8%の29兆9,100億元)、公的 +7.1%(+6.9%)、民間 +5.4%(+5.7%)とやはり減速。民間セクターの減速の影響は大きい(ストック需要の減速=価格下落要因)

・1-7月期中国不動産開発投資は前年比+10.6%の7兆2,843億元(1-6月期+10.9%の6兆1,609億元)と高い水準を維持してはいるが、やはり減速傾向が強く、特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

ハイドロのアルノルテ アルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石輸出再開の可能性(2022年とされていたが、2019年中に実施されるとの報道も)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・8月16日付のLMEポジションは、まちまち。銅はロング・ショートとも減少したが、ロングの調整幅が大きくネット売り越し幅を拡大。

亜鉛はロング・ショートとも増加したがショートの積み上がりが大きく同様にネット売り越し幅を拡大した。

鉛・アルミはロング・ショートとも減少したが、ショートの買戻し圧力が強く、ネットロングは増加。

ニッケル・錫はロングが増加、ショートが減少しやや強気のポジション取りに。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲79.4億ドル(前週▲80.4億ドル)と売り越し幅を小幅に縮小。売り越し額の減少率は1.2%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲2,073千トン(前週▲2,073千トン)と売り越し幅を小幅に縮小した。鉛、錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの減少率は0.9%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品市場は下落した。

週末発表された鉄鉱石港湾在庫の水準の増加を受け、中国国内の需給が緩和しているとの見方が強まったことが背景。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は需要減速観測が強まる中で下押し圧力がかかりやすい状況が続くが、バルチック海運指数を見るに、再び鉄鋼原料の在庫積み増しの動きが見られるため一時的に強含む展開を予想する。

ただし中国の景気は減速しており、経済対策への期待はあるものの中期的には価格は下押しされると予想する。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは47.9(前月48.2)と悪化した。主に新規受注(国内向け)が減速したことによるもの。またバルチック海運指数の押し上げに寄与していた原材料在庫も水準が切り上がり、完成品在庫も増加基調にある。

ヴァーレの供給減少は継続しているが、需要面で鉄鋼製品・鉄鉱原料の需給が緩和する可能性が出てきた。

・1-7月期の中国工業生産は前年比+5.8%(1-6月期+6.0%)、7月+4.8%(前月+6.3%)と減速(フロー需要の減速=価格下落要因)。

・1-7月期の中国固定資産投資は前年比+5.7%の34兆8,892億元(1-6月期+5.8%の29兆9,100億元)、公的 +7.1%(+6.9%)、民間 +5.4%(+5.7%)とやはり減速。民間セクターの減速の影響は大きい(ストック需要の減速=価格下落要因)

・1-7月期中国不動産開発投資は前年比+10.6%の7兆2,843億元(1-6月期+10.9%の6兆1,609億元)と高い水準を維持してはいるが、やはり減速傾向が強く、特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比▲17万トンの1,325.8万トン(過去5年平均1,019.5万トン)と例年を大きく上回っている。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+150万トンの1億2,465万トン(過去5年平均1億1,607万トン)、在庫日数は+0.3日の26.3日(過去5年平均 29.7日)と在庫日数ベースでは例年の水準を下回った状態が続いている。

絶対水準の増加は続いているが、まだ在庫日数ベースでは例年を大きく下回っている。ファンダメンタルズ面で鉄鉱石価格を下支えしよう。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・ヴァーレ、リオ・ティントの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・供給懸念などを通じて大連取引所は建玉を積み増しながら、価格を切り上げており、先々の下落リスクは高まっている状況。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金銀価格は上昇後、下落した。週末から今週のかけての米中の対立を受け、リスク回避の動きが強まったことが価格を押し上げたが、トランプ大統領が米中交渉再開を示唆したことで、取引後半に向けて水準を切り下げた。

PGMはまちまち。プラチナは現物需給が緩和する中で水準を切下げ、パラジウムは米中対立緩和期待を受けた株価上昇で水準を切り上げた。

【貴金属価格見通し】

金価格は高値圏での推移になると考える。世界景気の先行き懸念の強まりから長期金利が低い水準で推移し、期待インフレ率を上回る低下となっているため実質金利が低下していることが背景。

また、北朝鮮のミサイル発射頻発や日韓の対立激化、イタリアの政情不安や、英国のハードブレグジット懸念といった欧州のリスク、米中対立の継続、香港デモの拡大を受けたリスク回避の動きは継続するとみられるため。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の高止まりが金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

銀が通貨としての価値を有していたころの、過去の水準に金銀レシオが戻ることは難しいと考える。

PGM価格は金銀価格が高値圏でもみ合う一方、景気への懸念とそれを受けた経済対策期待で株価が乱高下するとみられるため、神経質な推移になると予想する。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が高まっているが、FRBは7月のFOMCで▲25bpの利下げを実施。今後は9月の会合での利下げ有無とその規模(▲50bpの可能性も?)。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト期待(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。ただし実際にシフトが起きるには相当の時間がかかる見込み。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は難航しており、米中は相互に追加制裁発動を決定、目先の買い材料となっている。この交渉自体は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決が最終目標であり、長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの緊張は若干の緩和が見られている。そもそもトランプ大統領が戦争には後ろ向きであり、議会が休会であることもあって融和姿勢が強まっている。

ただし米議会はイランに対しては強硬姿勢を維持しており、収束するのは来年の大統領・議会選挙年にずれ込むと予想される。

・イタリアの財政不安や、連立解消に伴う政情不安の高まり。

・英国のEU離脱がハードになる可能性があること、それに伴いスコットランドの独立話が再燃していること、それがスペインのカタルーニャ地方に波及する懸念があることは安全資産需要を高める。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金はロングが増加、ショートが減少、再び明確にリスク回避に伴うポジションテイクが加速している。銀はロングが減少、ショートが減少、ネットロングは増加している。

・プラチナはロングが減少、ショートが増加、パラジウムはロング・ショートとも減少している。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが352,294枚(前週比 +6,071枚)、ショートが52,301枚(▲3,832枚)、ネットロングは299,993枚(+9,903枚)、銀が95,987枚(▲1,533枚)、ショートが49,273枚(▲8,978枚)、ネットロングは46,714枚(+7,445枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが45,654枚(前週比 ▲451枚)、ショートが26,039枚(+1,610枚)、ネットロングは19,615枚(▲2,061枚)、パラジウムが13,732枚(▲63枚)、ショートが3,908枚(▲716枚)、ネットロングは9,824枚(+653枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場はまちまち。大豆はトランプ大統領が、「中国は取引をしたがっている」と発言したことが材料となった。

トウモロコシと小麦は作況の改善はないものの、需給バランスの緩和期待の台頭で水準を切り下げている。

なお、日米貿易交渉で日本は米国の余剰トウモロコシ数百億円分を購入することで合意したと伝えられた。中国向けの輸出減速で余剰が発生しているとみられ、農業部門で若干米国に恩を売った形になる。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は現状水準でもみ合い推移すると考える。米国の作柄は全く良くないものの、当初見通しよりも生産見通しが上方修正されていることや、中国の米国に対する農産品禁輸措置によって需給緩和観測が強まるため。

米国の不作の影響は期末在庫の水準低下を促し、来年以降に起きる可能性が指摘されているラニーニャ発生時にその水準の低さが意識されることになるとみている(長期的には上昇の入り口か)。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産見通し上方修正による需給緩和観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・8月の米需給報告の生産見通し

トウモロコシ139億100万Bu(前月138億7,500万Bu)大豆 36億8,000万Bu(38億4,500万Bu)小麦 19億8,000万Bu(19億2,100万Bu)

・8月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ21億8,100万Bu(20億100万Bu)大豆 7億5,500万Bu(7億9,500万Bu)小麦 10億1,400万Bu(10億Bu)

・米緩和観測に伴う実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉は再び難航しており相互制裁強化となっている。この問題は覇権争いが根幹にあり長期化の可能性は高い(価格の下落要因)。

・エルニーニョ現象は収束に向かっているが、より、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・トウモロコシはロング・ショートとも増加したが、需給緩和観測が強まっているためショートが積み上がっている。大豆も同様。

小麦はロングが減少、ショートが増加し弱気なポジション取りに。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが415,713枚(前週比 +688枚)、ショートが321,629枚(+68,243枚)、ネットロングは94,084枚(▲67,555枚)、大豆はロングが153,047枚(+1,327枚)、ショートが174,787枚(+5,420枚)、ネットロングは▲21,740枚(▲4,093枚)、小麦はロングが112,957枚(▲5,449枚)、ショートが105,200枚(+3,109枚)、ネットロングは7,757枚(▲8,558枚)

◆本日のMRA's Eye


「米中対立激化のリスク」

週末から週明けにかけての市場は、中国の報復と米国の報復により、景気の先行きが強く意識される展開となり、基本はリスクオフとなった。

タイミング的に、中国の北載河会議が終了し「米国に対する強硬姿勢継続」の確認があったこと、台湾に対する武器売却決定、ほぼ陰謀論に近いものではあるが、香港のデモが反習近平勢力や場合によると米CIAなどが関与している可能性があると中国側が判断したこと(中国華春瑩報道局長、「香港で続く大規模デモや抗議活動は米国の作品」と発言。東欧やウクライナのカラー革命が米国主導だったことを受けた「想像の範囲」であるが当たらずとも遠からずだろう)、韓国が日本とのGSOMIAを破棄したことで、「韓国が中・朝寄りになった」との懸念が意識されたこと、などの要因が重なったためと考えられる。

しかし、トランプ大統領が「中国側が」交渉再開を連絡してきたと発言、一旦両国の対立は水入りとなっている。しかし、煎じ詰めると両国の覇権争いは容易に終了せず、今後も景気の下押し要因になり、市場が想定してないような制裁が今後も行われる可能性があることを示唆するものだったといえる。

ではこれがいつまで続くのか。

基本的には中国ないしは米国が「もうやめましょう」と言い出すまでこの問題は続くと考えられるため両者が積極的に自分から折れることはなく、少なくとも習近平が在任中は続くと考えられる。

しかし、資本主義国の米国は、選挙によって大統領や議会のメンバーが変更になることから、支持率が低下した時が「一旦撃ち方止め」の号令が出るタイミングである。

この時、米政権の支持率は株価動向に左右されていることは否めない。これは日本でも同じで、株価が下がると金融緩和や財政出動場合によっては為替市場への口先介入(最近は実弾が投入されることはない)が行われている。

トランプ大統領が金融緩和をFRBに対して強要していることは、「制裁によって株価が下落すると、攻撃ができなくなるから」であり、逆に言えば金融緩和の余地がなくなり、政策面で株価を支えられなくなった時が対中強硬策が一旦停止されるタイミングともいえる。

しかしここで考えるべきは、トランプ大統領やクドロー国家経済会議(NEC)委員長、ナバロ大統領補佐官が▲0.5%~▲1.0%の利下げを主張し、それを市場も「催促相場」として織り込んでいることのリスクである。

このことは、1.仮にそこまで利下げが行われなかった時の反動による相場の下落(これによりさらに追加利下げ圧力が強まる)、2.市場の期待通りに利下げを行った場合、「本当の危機」が顕在化した時に打てる手がほとんどなくなる、ことを意味する。

仮に米政権の主張通り、▲1.0%の利下げを行えば、政策金利は1.25%に低下する。FOMCでは±25bpでしか政策金利を変化させない方針であるため、この後にショックが顕在化し、効果の少ないマイナス金利を許容しなければ、後5回しか利下げの機会はなくなってしまう。

こうなると、米大統領・議会選挙を意識して2020年の景気動向への懸念は後退するものの、むしろその先の2021年の景気へのリスクが無視できなくなってくる。

金融・財政政策は中長期的には中立(今、効果があってもそれは将来需要の前借に過ぎない)であることを考えると、来年ではなく再来年以降のリスクを意識したほうが良いかもしれない。

◆主要ニュース


・7月日本景気動向指数改定 先行指数 93.3(速報比変わらず、前月改定 94.9)、景気一致指数 100.4(±0.0、103.4)

・8月独IFO企業景況感指数 94.3(前月95.8) 期待指数 91.3(92.1)、現状指数 97.3(99.6)

・7月米新築住宅販売件数 前月比▲12.8%の64.5万戸(前月改定+20.9%の72.8万戸)

・7月シカゴ連銀製造業活動 ▲0.36(前月 +0.03)

・7月米製造業耐久財受注速報 前月比+2.1%(前月改定+1.8%)、除く輸送機器▲0.4%(+0.8%)
 製造業新規受注資本財非国防除く航空+0.4%(+1.5%)

・7月ダラス連銀製造業活動 2.7(前月▲6.3)
 生産 17.9(9.3)
 新規受注 9.3(5.5)
 受注残 ▲0.2(▲2.8)
 完成品在庫 ▲9.5(▲10.6)
 雇用 5.5(16.0)

・日米、貿易交渉で概ね合意。日本は農産品の輸入関税をTPP並みに下げることを了承。トランプ大統領、「今のところ日本車に対する追加関税は検討していない。」

・米トランプ大統領、「中国側から昨夜、交渉を再開したいと連絡があった。」

・インドネシア、東カリマンタン州に首都移転を決定。

・G7サミット閉幕。宣言通り首脳宣言を見送り。ロシアのG7復帰は先送り。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・米トランプ大統領、「イランロウハニ大統領とも適切な状況下であれば面談する。」

・イスラエル、レバノンのヒズボラ施設をドローンで攻撃か。

【メタル】
・中国ベースメタル貿易統計(7月)、単位:千トン、錫:トン

 精錬銅輸入 297.4(前月比 +80.4, 前年比 ▲25.0)
 銅精鉱 2,074.4(前月比 +607.3, 前年比 +229.3)
 銅スクラップ 127.5(前月比 ▲44.5, 前年比 ▲82.7)
 精錬銅輸出 32.1(前月比 +4.3, 前年比 +1.8)。

 精錬亜鉛輸入 48.0(前月比 ▲15.7, 前年比 ▲5.5)
 精錬亜鉛輸出 16.6(前月比 +7.9, 前年比 +13.8)

 精錬鉛輸入 16.6(前月比 +3.0, 前年比 ▲9.7)
 精錬鉛輸出 2.3(前月比 +2.0, 前年比 +1.9)

 ニッケル輸入 21.3(前月比 ▲0.3, 前年比 +8.8)
 ニッケル輸出 0.8(前月比 ▲0.6, 前年比 UC)

 錫輸入 217.0(前月比 ▲99.0, 前年比 ▲230.0)
 錫輸出 220.0(前月比 ▲165.0, 前年比 ▲128.0)

・インドネシア政府、2022年から開始予定のニッケル鉱石の輸出規制を今年に前倒しする可能性を示唆。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ +7.59%/ +4.63%
2.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +3.49%/ ▲24.25%
3.SHF 金 ( 貴金属 )/ +3.22%/ +25.56%
4.SHF 銀 ( 貴金属 )/ +3.14%/ +17.96%
5.欧州排出権 ( 排出権 )/ +2.95%/ +4.41%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲5.92%/ +6.26%
69.日経平均 ( 株式 )/ ▲2.17%/ +1.23%
68.DME Oman ( エネルギー )/ ▲2.05%/ +9.18%
67.TCM灯油 ( エネルギー )/ ▲1.92%/ ▲0.29%
66.CBTエタノール ( エネルギー )/ ▲1.67%/ +2.45%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,898.83(+269.93)
S&P500 :2,878.38(+31.27)
日経平均株価 :20,261.04(▲449.87)
ドル円 :106.12(+0.73)
ユーロ円 :117.81(+0.37)
米10年債利回り :1.54(±0.0)
独10年債利回り :▲0.67(+0.01)
日10年債利回り :▲0.26(▲0.03)
中国10年債利回り :3.05(▲0.02)
ビットコイン :10,265.73(▲95.79)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :25.84(+0.1)
エネルギー :35.84(+0.17)
ベースメタル :17.95(▲0.14)
貴金属 :20.54(+0.7)
穀物 :23.35(+0.4)
その他農畜産品 :27.50(▲0.13)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :48.38(+0.54)
Brent :43.92(+0.04)
米天然ガス :36.27(+0.03)
米ガソリン :44.57(+0.1)
ICEガスオイル :31.39(+0.35)
LME銅 :12.50(▲0.28)
LMEアルミニウム :8.38(▲0.35)
金 :17.43(+0.63)
プラチナ :14.06(▲0.01)
トウモロコシ :35.33(+0)
大豆 :17.43(+0.63)

【エネルギー】
WTI :53.80(▲0.37)
Brent :58.84(▲0.50)
Oman :58.42(▲1.22)
米ガソリン :162.36(▲1.92)
米灯油 :179.92(▲1.64)
ICEガスオイル :554.00(▲2.00)
米天然ガス :2.23(+0.08)
英天然ガス :休場( - )

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :58.84(▲0.50)
SPO380cst :325.66(+5.42)
SPOケロシン :73.02(▲0.16)
SPOガスオイル :72.44(▲0.02)
ICE ガスオイル :74.36(▲0.27)
NYMEX灯油 :180.75(▲0.52)

【貴金属】
金 :1527.31(+0.35)
銀 :17.67(+0.24)
プラチナ :856.11(▲1.68)
パラジウム :1480.86(+18.76)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :休場( - )
亜鉛 :休場( - )
鉛 :休場( - )
アルミニウム :休場( - )
ニッケル :休場( - )
錫 :休場( - )
コバルト :32,273(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :休場( - )
亜鉛 :休場( - )
鉛 :休場( - )
アルミニウム :休場( - )
ニッケル :休場( - )
錫 :休場( - )
バルチック海運指数 :2,168.00(+50.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :91.38(▲0.58)
NYMEX鉄鉱石 :92.45(▲0.43)
NYMEX原料炭スワップ先物 :154(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,728(▲42)
上海鉄筋中心限月 :3,407(▲30)
米鉄スクラップ :280(±0.0)

【農産物】
大豆 :853.75(+10.50)
シカゴ大豆ミール :293.00(+3.10)
シカゴ大豆油 :28.33(▲0.01)
マレーシア パーム油 :2213.00(+3.00)
シカゴ とうもろこし :358.50(▲1.25)
シカゴ小麦 :473.00(▲2.25)
シンガポールゴム :147.40(▲1.80)
上海ゴム :10340.00(▲25.00)
砂糖 :11.43(▲0.04)
アラビカ :94.15(+1.55)
ロブスタ :休場( - )
綿花 :57.66(▲0.31)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :63.80(+4.50)
シカゴ生牛 :105.48(+0.85)
シカゴ飼育牛 :138.65(+1.30)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。