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政治外交リスクのなかでの為替相場
  • MRA外国為替レポート

2018年10月22日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は112円ちょうど近辺で始まった。日米通商交渉において為替条項を盛り込む、とのムニューシン米財務長官の発言が伝わると、前週末にかけて落ち着くかとみえた日経平均が大きく下落。ドル円相場も111円60銭台までドル安円高が進んだ。

ただその後は株価動向が米国株も含め落ち着きを取り戻し、ドル円相場は112円割れが底固い展開。

週央に公表されたFOMC議事録(9月25日・26日開催分、利上げ実施)がややタカ派的との見方から米長期金利が上昇。株価は比較的落ち着いた値動きとなったことで、ドル円相場はドル金利先高感に支えられ112円台半ばに上昇した。

しかし木曜日にはイタリアとEUが財政政策を巡り対立し、またサウジアラビア問題への懸念からリスク回避が広がり米国株が大幅反落。ユーロ円相場が129円台後半から128円台半ばに下落するなか、ドル円相場も一時112円ちょうどに下げた。

ただリスク回避は長引かず、週末には米国株も落ち着き、ユーロ円相場も129円台半ばに持ち直し。ドル円相場はじり高となり112円50銭を中心に上下してNYの取引を終えた。

結局、米国株は週前半に持ち直したものの週末にかけて軟調となり本格的な反発までは確認できず。日経平均も底固めの範囲内。リスク回避が緩和するなか米長期金利10年債利回りは3.1%台でしっかり、3.2%に戻そうという動きとなった。

月曜日の東京市場は、週末に、米国のムニューシン財務長官が日米通商交渉に為替条項を盛り込む、と発言したと報じられたことを受けて円高が進捗。

ドイツ・バイエルン州議会選挙でメルケル首相率いるCDUと与党連合を組むCSUが大敗し極右が躍進。欧州政治不安もリスク回避を強めた。

ドル円相場は112円割れとなり、日経平均も22,500円に下落して始まり軟調。引けは22,300円割れ。ドル円相場は夕刻には一時111円60銭台に下落した。

海外市場に入ると米国株はもみ合い横ばいで落ち着き。米長期金利10年債利回りは3.15%近辺で横ばい。ドル円相場は111円80銭中心に上下して引けた。そうしたなかユーロは1.15台前半から1.16へと持ち直し。

火曜日の東京市場のドル円相場は111円80銭台で始まり112円台を回復。日経平均は22,300円台で始まり後場に反発・上昇基調を強めて22,500円台に戻して引けた。

海外市場に入っても米国株が本格的に反発しじり高。リスク回避が緩和した。株価上昇のわりに米長期金利はさほど反応せず。為替市場ではリスク選好の回復に反応して新興国通貨がしっかり。ドル円相場もじり高となり112円30銭近辺で引けた。

水曜日の東京市場のドル円相場は112円30銭で始まり上値をうかがうものの112円40銭近辺で押し戻され20銭台でのもみ合いに。日経平均は22,800円で大幅高寄り、一時22,900円台に乗せたが、その後は急騰の後だけに反落して結局22,800円台で引けた。

海外市場に入るとドル円相場は引き続き上値が重く112円ちょうど近辺に押された。

米国ではFOMC議事録(9月25日・26日開催分)が公表された。

この会合では利上げが実施されたが、全員が金利の誘導目標を引き上げ段階的に金融政策を引き締めるアプローチが適切との見解で一致した、と記されていたことから、あらためてタカ派的な内容と解釈された。

米10年債利回りは3.16%から3.20%に上昇。2年債利回りも2.87%から2.89%に。ドル円相場は112円60銭台に上昇して引けた。

米国株は小幅安でスタートしたが戻してもみ合いに。米財務省は半期為替報告書で中国の為替操作国認定を見送った。

木曜日の東京市場のドル円相場は112円60銭で始まった後、50銭~60銭で上下。日経平均は22,800円で始まった後はじり安となり22,650円で引けた。

海外市場に入るとリスク回避が再び高まり米国株が大幅安、傍らで円が堅調となった。欧州では、イタリアとEUが財政政策を巡り対立を強めた。

欧州委員会はイタリアの政府予算について、EUのルールからの逸脱規模は前例にない、と批判。ユーロは対ドルで1.1450へ下落。対円でも129円台後半から128円台半ばへ下落。ドル円相場は112円ちょうど近辺を試した。

米長期金利は低下。10年債利回りは3.20%近辺から3.16%~3.18%に。

サウジアラビアによる記者殺害疑惑が広がるなか、米国のサウジアラビアに対する対応も懸念され、リスク回避心理を強めた。

金曜日の東京市場のドル円相場は112円20銭で始まり底固い値動き。日経平均は米国株安を受けて22,300円割れの大幅安で始まったが、その後は反発してじり高、持ち直し、22,500円台を回復して引けた。

中国では主要経済指標が発表され、7-9月期GDPは前年同期比+6.5%と前期の+6.7 %から減速。9月の指標はほぼ予想通り。年初来累計・前年同月比で、小売売上高は+9.3%、工業生産は+6.4%、都市部固定資産投資は+5.4%だった。

生産と投資がやや減速。海外市場でもドル円相場は底固く112円50銭を中心に上下してそのままNYの取引を終えた。

全体的に市場は落ち着きを取り戻し、米国株は小反発もみ合い。米長期金利は上昇し、2年債利回りは2.90%~2.91%、10年債利回りは3.17%から3.19%~3.20%に。ユーロは持ち直し、対ドルで1.14台半ばから1.15台を回復。対円で128円台半ばから129円50銭に反発した。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標、ベージュブック(地区連銀経済報告)

引き続き米国株が落ち着きを取り戻した状態を維持できるかどうか。堅調な景気動向の確認が株価を支えるか。一方で長期金利に上昇圧力がかかるようだと株価にはネガティブとなるため、適温経済シナリオ、が著変ないかが重要となる。

月曜日 シカゴ連銀全米活動指数(9月、予想0.22、前月0.18)
火曜日 リッチモンド連銀製造業指数(10月、予想24、前月29)
水曜日 PMI景況感指数(10月、製造業、予想55.5、前月55.6)、
新築住宅販売(9月、年率換算、予想625千戸、前月629千戸)
木曜日 耐久財受注(9月、前月比、予想▲1.5%、前月+4.4%)
金曜日 7-9月期GDP速報(前期比年率、予想+3.4%、前期+4.2%)、
個人消費(予想+3.2%、前期+3.8%)、コア個人消費物価指数(前期比、予想+1.6%、前期+2.1%)

また水曜日(日本時間・木曜日未明3時)にベージュブック(米地区連銀経済報告)が公表される。米国景気の定性的な判断が示されることから重要で、関税の悪影響や雇用情勢などがどのように判断さえているか。

2.ECB理事会、ドラギ総裁会見

木曜日にECB理事会(金融政策決定会合)が開催され、ドラギ総裁が定例記者会見を実施する。足元で欧州政治は揺れており、またイギリスの離脱問題も決着していない。

これに対してどのような判断が下されるか。より慎重姿勢が強まり、ユーロの上値が重さを確認するか。裏側でドルを支えることとなるか。

3.国際会議外交イベント

先週はサウジアラビアによる記者殺害疑惑が外交問題に発展。米国とサウジアラビアの関係が悪化する懸念や中東情勢全般に対する懸念も広がった。

火曜日にサウジアラビアでフューチャー・インベスト・イニシアチブ(通称「砂漠のダボス会議」)が開催されるが(25日まで)、米ムニューシン財務長官ほか相次いで不参加が表明されている。

この問題の落としどころが早期に決着してリスク回避が緩和するか。水曜日・木曜日の両日にわたりWTO閣僚会合が開催されるが、通商問題・貿易摩擦緩和への糸口が議論されるか。

木曜日には安倍首相が訪中し、習近平主席、李首相らと会談する。総じてリスク選好にどのような影響を与えるかが注目点。

このほか企業決算発表が国内外で本格化するが株価安定・持ち直しに寄与するか。

◆今週のMRA's Eye


政治外交リスクのなかでの為替相場

米国経済は引き続き堅調に推移しているとみられる。今週のベージュブック(米地区連銀経済報告)では、堅調な景気動向、雇用情勢、一方でインフレが抑制された状態が確認されそうだ。

ドル金利先高感が維持されるなか、米長期金利には上昇圧力がかかるとみられるが、利上げペースは緩慢であり、利上げのピーク水準もみえることから、上昇ペースは緩慢だろう。

長期金利上昇をきっかけとして米国株は大きく調整したが、グローバルに株式市場は徐々に落ち着きを取り戻している。ただ不透明要因がなおリスク選好を抑制した状態が続きそうだ。

こうした状況では円安が大きく進む可能性は小さい。

一方でグローバルな金融市場の混乱を招くような大きなショック、さらにはグローバルな景気動向に影響するような事態にならなければ円高リスクは限定的。ポジション調整による一時的な円高にとどまる。

ドルは、米国経済が堅調に推移しており、緩慢なドル金利先高感が維持されているもとでは、リスク選好が緩慢ないしリスク回避が強まる局面でも安全通貨としてしっかりとなる。

欧州では域内の政治外交リスクがなお強まったままだ。イギリスのEU離脱交渉は進展がみられない。EUとの合意内容が国内で承認されない可能性を踏まえてイギリスサイドは交渉に及び腰だ。

このまま時間切れとなり、離脱条件・関税の取り扱いが整わないまま、いわゆる秩序なき離脱に陥るリスクが高まっている。

またイタリアの財政問題について、EUは財政赤字抑制ルールから大幅に逸脱したレベルとなることからこれを非難し、対立が強まっている。

イタリアにルールの逸脱を認めれば、なし崩し的に他の国の財政赤字拡大を容認する流れに陥りかねないが、EUからの財政抑制圧力が強まれば、国内で再び離脱論が強まる可能性もある。

ドイツではバイエルン州議会選挙で与党が大敗した。右派政党の躍進がみられ、こちらもEUに対して遠心力として働きかねない。

こうしたリスク要因が欧州経済の先行き見通しに懸念をもたらせば、ECBの金融正常化、来年夏以降とされている利上げが怪しくなってくる。これがユーロの上値を抑制すれば、その反対側でドルを支えることになる。

また懸念が広がっているのがサウジアラビアによるジャーナリスト殺害疑惑。サウジアラビア政府の関与が疑われており、これに対する国際世論、制裁の動きが今後どうなるのか。

米国はイランと対立し制裁を主導しているが、そのイランとサウジアラビアは対立。従来からの米国とサウジアラビアの関係からは、米国はサウジアラビアに強硬な姿勢は取りにくい。こうした状況から事件がうやむやに終わる可能性は高い。

重要なのは、この問題が経済にどのような影響をもつか。結局のところ原油価格がどうなるか、ということに帰結する。原油価格が上昇基調を強めれば世界経済全体にマイナスとなる。

原油価格の上昇は原油輸入国から産油国への所得移転となり、輸入国の景気を圧迫する。日本ではエネルギー価格全般の上昇が輸入金額の増加となり貿易収支の悪化につながる。

すでに足元の原油価格の上昇は貿易黒字の抑制に効いている。この問題については不透明感によるリスク回避の強まりという切り口よりも、原油価格がどうなるか、それにより景気物価動向がどうなるか、貿易収支がどうなるか、という角度からみておく必要がある。

円高材料なのか円安材料なのか、判別が難しいが、少なくとも中東情勢の不安定化は日本経済にとって重大なリスクであることは間違いない。原油価格の上昇は日本においても物価上昇圧力となるが、それで日銀が金融正常化に動けるかは疑問だ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :112.55(+0.34)
ユーロ :129.58(+1.07)
英ポンド :147.163(+1.10)
豪ドル :80.111(+0.46)
カナダドル :85.905(+0.15)
スイスフラン :112.996(+0.30)
ブラジルレアル :30.3362(+0.21)
中国人民元 :16.235(+0.06)
韓国ウォン(日本円=100) :9.942(+0.09)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1514(+0.006)
英ポンド :1.3076(+0.006)
豪ドル :0.7119(+0.002)
カナダドル :1.3104(+0.002)
スイスフラン :0.996(+0.000)
ブラジルレアル :3.7108(▲0.012)
中国人民元 :6.929(▲0.009)
韓国ウォン :1132.09(▲2.94)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :3.19(+0.01)
米2年債 :2.90(+0.03)
日本10年債利回り :0.15(▲0.00)
日本2年債利回り :0.15(+0.00)
独10年債利回り :0.46(+0.04)
独2年債利回り :▲0.58(+0.04)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :25,444.34(+64.89)
NASDAQ  :7,449.03(▲36.11)
S&P500 :2,767.78(▲1.00)
日経平均株価 :22,532.08(▲126.08)
ドイツ DAX :11,553.83(▲35.38)
インド センセックス :34,315.63(▲463.95)
中国上海総合 :2,550.47(+64.05)
ブラジル ボベスパ :84,219.74(+372.62)
英国FT250 :18,795.75(▲165.60)
ビットコイン :6384.37(▲7.85)

【主要商品価格】
WTI :69.37(+0.72)
Brent :80.10(+0.81)
米ガソリン :191.67(+2.56)
米灯油 :230.88(+1.39)

金 :1226.49(+0.68)
銀 :14.62(+0.04)
プラチナ :830.94(+3.14)
パラジウム :1082.93(+9.85)
銅 :6190.50(+44:1B)
アルミニウム :2024.00(+12:1.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セト
ル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :856.75(▲6.75)
シカゴ とうもろこし :367.00(▲3.75)
シカゴ小麦 :514.75(+1.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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