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サウジアラビアへのドローン攻撃の影響
  • MRA商品市場レポート for PRO

◆本日のMRA's Eye


「サウジアラビアへのドローン攻撃の影響」

サウジアラムコの2施設がフーシ派の攻撃を受けて(フーシ派はすでに犯行声明)停止、約530万バレルの原油生産に影響が出る可能性が出てきた。530万バレルは世界の消費量の約5%に相当する。

アブカイクはサウジアラビア東部習に位置する、世界最大の原油前処理施設(700万バレル/日)を有している。ここでは原油から塩分などの不純物を取り除き、製油所で処理可能な原油に加工する設備であり、製油所ではない。

またここからは紅海に続くペトロラインの始発点でもあり、この供給にも影響が出る可能性がある。

つまりここはサウジアラビアにとって重要な拠点であり、軍が防衛していたわけだが低空で飛行してレーダーにも映らないドローン攻撃を防ぐのは困難、ということだろう。

今回の事件が原油価格に影響を及ぼす可能性は高い。

現在、OPECの有するスペア・キャパシティ(30日以内に安定的に増産できる能力)は500万バレル程度だが、この規模ですでに530万バレルをカバーすることはできない。

さらに、今回の事件は最大の供給能力を有するサウジアラビアでの事故であり、同国のスペアキャパシティ、200万バレルは活用できないと考えるべきである。

非OPEC生産が基本は設備の生産能力をフル稼働させていることを考えると、非OPEC供給の増産余力は今回の協調減産の対象数量である40万バレル程度。結果的に全世界で見た時に340万バレル程度しか増産能力がないことになる。

これにより、スペアキャパシティ率はマイナスに沈み、原油価格が上昇する可能性は高い。ちなみにこの20年、OPECスペアキャパシティ率がマイナスとなったことはない。

ただし、サウジアラビアは原油備蓄を輸出にあて(前処理済みの備蓄)、市場に影響は出ないとしているうえ、被害の規模がよくわからないこともあり、調べてみればそれほどの被害ではなかった、ということになるかもしれない。

基本的には在庫を取り崩し、同時に修復を進め、1週間程度で修復できますというのであれば影響は限定されるだろう。しかしそれも原油備蓄が枯渇すればとたんにフローベースの供給不足に陥ることになる。

この場合、攻撃からの復帰に時間がかかるという前提に立てば、原油価格はまずは70ドルを目指す展開になると予想され、次に今年の高値である75ドルが意識されると考えられる。まずはショートの買戻しが先行することになるが、このような「供給の実際が不透明」な状況であれば、どこまで上昇するかを議論してもあまり意味がない。当然、原油コストの上昇が世界景気にマイナスに作用することになる。

問題は、これをだれが指示したのか、ということである。早速米ポンペオ国務長官は、「イランは世界のエネルギー供給源に前例のない攻撃を仕掛けた」とフーシ派の単独行動ではなく、イランの攻撃によるものと決めつけている。トランプ大統領はムハンマド皇太子に連絡し、サウジアラビアの自衛に協力すると発言している。

証拠がないので何とも言えないが、今回の攻撃はフーシ派の末端に情報が届かず、単独で行ったのではないだろうか。というのもイラン強硬派のボルトンを更迭、9月に国連総会での米・イラン首脳会談が開催される可能性があったからだ。

しかしこれによってその道が断たれ、ヘタをするとサウジとイランの武力衝突、という最悪の事態になる可能性も十分にあり得る。この混乱にイスラエルが相乗りする可能性も十分にあり得る。

この最悪シナリオの場合、ホルムズ海峡航行の安全が担保されないことになり、原油価格は100ドルを超える上昇になるだろう。

いずれにしてもサウジアラビアからの続報待ちの状態であるが、一旦、落ち着くと期待された中東情勢が一転緊迫の度合いを高めていることは憂慮すべき状況である。

非鉄金属をはじめとする工業金属への影響も小さくない。まず供給面に関していえば、中東の依存度が高まるアルミニウム価格には、上昇圧力がかかることになるだろう。また、原油価格の上昇を受けた実質金利低下が、金融面で非鉄金属価格を押し上げる可能性は排除できない。

問題は、1.原油価格の上昇が世界景気にマイナスに作用するか、2.エネルギーは明確な供給リスクが意識されるが、非鉄金属にとってはむしろ「リスクオフ」と捉えられる可能性がある点だ。リスクオフの判断材料としては、まず月曜日の株価がどのように反応するか、だろう。