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不透明感・リスク回避・ドル円相場のリスク
  • MRA外国為替レポート

2018年10月29日号

◆先週の市場総括


先週は世界的に株価が大幅調整。米中摩擦が企業業績に影響をし始めたとの見方や、イタリア財政やイギリスのEU離脱、金融機関の業績懸念など欧州の不透明感、中東情勢不安定化への懸念などからリスク回避心理が広がった。

ドル円相場は112円台半ばではじまり、その後は株価急落、また欧州懸念が根強いなか、方向感なく上下する荒れ相場。

ただ株価大幅安でリスク回避が強まったのに比べドル円相場の下値は112円割れで2度跳ね返されるなど底固かったが、週末に米国株が一段安となると一時111円40銭に下落。それでも週末の引けは111円90銭。

ユーロ円相場は週初に一時130円をつけたが、その後は欧州発リスク回避で一貫して下落し、週末にかけて126円台へと沈んだ。ユーロは対ドルでも1.15台から1.13台後半へと下落。

ユーロ円相場からの円高圧力は大きかったが、ドルそのものはリスク回避のなかでは堅調で、ドル安円高のブレーキとなった。

米国株は週央から週末にかけて大幅安。年初来の上昇をすべて吐き出した。米中貿易摩擦・関税の悪影響が企業業績に実際に一部表れはじめたとの懸念や、欧州金融株の下落に対する懸念も。

米長期金利は株安・リスク回避傾向を受けて低下基調。米10年債利回りは週初3.2%近辺で始まったが週末は3.06%まで低下。

日経平均は22,500円近辺で始まり、その後は下げ止まらない米国株安の影響を受けて週後半に大幅安。金曜日には一時21,000円を割り込んだ。

月曜日の東京市場は112円50銭近辺で始まり底固い値動き。前週末に株価下落が一服したことで週初は市場全体にやや安心感が広がった。

ユーロ円相場は129円50銭から一時130円に上昇。ユーロは対ドルでも1.15から1.1550へ上昇。ただユーロ高は続かず押し戻された。

日経平均は22,300円で始まり上昇。22,600円近辺でもみ合い引け。中国株の上昇も支えとなった。

夕刻から海外市場にかけてドル円相場は112円80銭に上昇して80銭中心に上下動。ユーロは対円、対ドルで下落して、ユーロ円相場は129円40銭、ユーロドル相場は1.1450に。

イタリア予算を巡りイタリア政府とEUの対立が続き不安感を高めた。米国株はもみ合い小幅安、米10年債利回りも3.18%~3.20%で上下し方向感はなかった。

火曜日の東京市場のドル円相場は112円80銭で始まり夕刻にかけて112円20銭に下落した。円は全面高。ユーロドル相場が1.14台後半でもみ合うなか、ユーロ円相場は128円70銭に下落。

日経平均は22,400円割れで始まり22,000円ちょうどまげ下落して引け。この日は中国株が大幅反落し、アジア時間の市場のムードを悪化させた。

海外市場に入るとなおリスク回避が続いた。この日はサウジアラビアで投資会議が開催されたが、サウジアラビア記者殺害問題を巡る政治不安は収まらず。またイタリア財政を巡るEUとの対立は平行線。ユーロ円相場は128円20銭に、ドル円相場は112円ちょうどに下落、円高が進んだ。

米国株は大幅安スタート。ただその後は引けにかけて決算期待もあり持ち直し結局は小幅安。ドル円相場は112円40銭近辺に戻してもみ合い引け。ユーロ円相場も129円ちょうどに反発して引けた。

米10年債利回りは3.19%から3.12%に低下したが、株高につれて3.16%に戻した。

水曜日の東京市場のドル円相場は112円40銭で始まり50銭を中心に上下動。株価が落ち着きを取り戻したことから夕刻にかけては112円70銭に上昇した。

ユーロ円相場は129円ちょうど近辺でもみ合い、ユーロ安円高は一服。日経平均は22,200円で始まり22,000円ちょうどに下落したが、後場には寄り付き近辺に持ち直しもみ合い引け。

しかし海外市場に入ると米国株が大幅安となり、ここ最近の下落局面での安値を割り込み年初来の上昇分をついに失ったことから市場のセンチメントは一気に悪化した。

ハイテク、金融株が下落を主導し後場に下げを拡大。この日に明確な材料はなかったが、イタリア財政、イギリスEU離脱を巡る欧州の不透明要因や欧州金融株の下落、米中摩擦が企業業績へ悪影響を及ぼす懸念、サウジ問題、などが引き続き悪材料とされた。

ドル円相場は112円10銭まで下落。ユーロは対ドルで一時1.14割れ、対円で128円割れに下落した。米10年債利回りは3.16%から3.10%に低下。

木曜日の東京市場のドル円相場は112円10銭で始まり朝方111円80銭に下落。ユーロ円相場も128円割れとなり一時127円50銭。

日経平均は米国株の大幅安を受けて21,400円に急落して始まりさらに下落。中国株も大幅安でスタート。為替市場ではその後、ドル円相場は112円ちょうど、ユーロ円相場は128円台前半へ、ともに持ち直した。

中国株も寄り付きから持ち直し、結局は前日引け同水準まで戻したが、日経平均は引けにかけてじり安となり21,200円台後半で取引を終えた。

海外市場にかけてドル円相場は112円30銭に持ち直し。この日の米国株は買い戻しが優勢となり反発。イタリア国債が安定、欧州株が落ち着きを取り戻していたこともプラス材料。

ただユーロはその後下落した。この日はECB欧州中銀が理事会(金融政策決定会合)を開催。ドラギ総裁が定例会見を行った。総裁は、ユーロ圏経済の勢いは弱まったが景気が下向いたわけではない、としながらも、貿易に関する不透明感、イギリスのEU離脱、イタリア問題、金融市場の不安定、という一連の不確実性がある、と述べた。

ユーロは対ドルで1.1360~70へ、対円で127円80銭へ下落。ドルは反面しっかりとなったことからドル円相場は112円60銭に上昇した後、やや押して112円40銭近辺で引け。

米10年債利回りは3.10%から3.14%へ上昇し3.12%に押して引け。

この日講演した米FRBクラリダ副議長は、米国経済のリスクバランスは均衡しており、政策金利はさらにいくらかの漸進的な調整が適切となる可能性が高い、と楽観的な見方を示した。

金曜日の東京市場のドル円相場は112円40銭近辺で始まりじり安。夕方には112円を割り込んだ。

日経平均が21,400円近辺に前日引けから上昇して始まったものの、世界的な株安、貿易摩擦問題の決算への影響懸念などから上値重く下落。後場には一時21,000円を割り込んだことが不安感を高めた。リスク回避傾向が続き円高基調。

海外市場に入ると米国株が一段の大幅安で始まり市場の不安が高まった。ドル円相場は一時111円40銭をつけ、ユーロ円相場は126円60銭。ユーロドル相場は1.1350割れに下落した。

その後株価は持ち直し値動きの荒い展開。米10年債利回りは株価大幅下落を受けて一時3.06%に低下した後、やや持ち直して3.08%。

為替市場でも値動きは荒いまま、ただユーロ安、円高は一服して、ユーロは持ち直し、対ドルで1.14、対円で127円台半ばまで戻した。ドル円相場は112円に戻した後、111円90銭近辺で週末NYの取引を終えた。

発表された米国の7-9月GDP速報は、前期比年率+3.5%と予想+3.3%を上回った。個人消費が+4.0%と予想以上の強さで支えとなった。一方で設備投資が+0.8%とここ2年間で最も低い伸び。企業が不透明感から投資に慎重になっている可能性が懸念された。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

今週は米国で重要な経済指標の発表が多い。企業部門関連の指標が株価下落の歯止めとなりうるか。

月曜日 個人所得・消費支出(9月、前月比、予想+0.4%・+0.4%、前月+0.3%・+0.3%)、ダラス連銀製造業活動指数(10月、予想28.1、前月28.1)

火曜日 消費者信頼感指数(10月、予想136.0、前月138.4)

水曜日 ADP雇用報告(10月、雇用者数前月比、予想+187千人、前月+230千人)、シカゴ購買部協会景気指数(10月、予想60.0、前月60.4)

木曜日 ISM製造業景気指数(10月、予想59.0、前月59.8)

金曜日 雇用統計(10月、非農業部門雇用者数前月比、予想+193千人、前月+134千人、平均時給、前年同月比、予想+3.2%、前月+2.8%)、製造業受注(9月)、貿易収支(9月)

2.中国の経済指標

中国経済の動向、株価動向は、世界経済全体のイメージや株価動向に影響する。不安定な中国株の動向がどうなるか。

水曜日 PMI景況感指数(10月、製造業、予想50.6、前月50.8、非製造業、予想54.9、前月54.9)

木曜日 財新製造業PMI景況感指数(10月、予想50.0、前月50.0)

3.企業決算・株価動向

前週に続き先週もグローバルに株価が大きく調整した。今週も内外で決算発表が相次ぐ。数々の不透明感が、企業業績に実際に影響し始めているとの見方、さらには経済全体に下押し圧力になるのではないかとの不安感が株価を押し下げている。

決算が過度な不安を抑制して株価下落に歯止めをかけられるか。

このほか、火曜日・水曜日の両日にわたり日銀金融政策決定会合が開催され、終了後に黒田総裁が定例会見を行う。目下の市場動向・景気動向にいかなる議論・判断となるか。

◆今週のMRA's Eye


不透明感・リスク回避・ドル円相場のリスク

先週も株価は大きく下落しグローバルに調整色は払拭されなかった。米中貿易摩擦、欧州でのイタリア・イギリスを巡る不透明感、サウジアラビアを巡る問題による中東情勢不安定化懸念、など不透明要因がここにきて増加。

米国経済はなお堅調に推移しており足元で安心感を支える材料が崩れたわけではないが、不透明要因の増加に市場心理が耐え切れなくなった結果か。

リスク選好が大きく後退し、株価が大幅安となったが、その結果、巨額の時価総額が失われたことで、さらに市場全体のリスク耐性、リスクテイク余力が損なわれた。

ここまでくると急速な市場心理の好転、株価反騰は難しく、安心材料がひとつずつ積み上がる、不透明要因がひとつずつ解消する、あるいはグローバルな協調姿勢が何らかのかたちで示され安心感がもたらされる、といったことが必要とみられる。

米国では、企業決算の発表シーズンとなったが株価の支えとはならず。逆に一部の企業に米中貿易摩擦の悪影響がみられたことから不安感が広がった。

そうしたミクロの動きが経済全体、マクロの動向に影響を与え始めるのではないか、との懸念につながっている。

FRB当局者の発言からは景気になお景気に強気の見方が示されている。雇用は堅調で企業の景況感も維持はされているが、企業の不透明感が設備投資の抑制につながるようなら、ミクロからマクロへ、悪影響が広がっていることになる。

ここからの米国の経済指標はより注目されることになろう。現在の市場心理は、良い材料よりも、悪い材料に反応しやすいことに留意する必要がありそうだ。

欧州では引き続きイタリアとイギリスが不透明感の源だ。イタリアの財政拡張的な予算に対し、EUは差戻し、容認しないとの意向を示し、イタリアとEUの対立は平行線をたどったまま。イタリアの「異例」の拡張的な財政政策を認めれば、南欧諸国を中心に同様の動きが広がりかねない。

EU内ではポピュリズムが広がり、移民に対するネガティブな姿勢を示す右派が台頭する傾向にある。EUを主導するドイツでさえ、先のバイエルン州議会選挙で与党が大敗し、右派が議席を伸ばすこととなった。

イギリスのEU離脱もEUからのいわば「独立」「自由の確保」を目指すもの。こうした分裂や対立がどのように緩和していくのか。

イタリア国債の下落(金利上昇)により欧州金融機関がどれほど痛手を受けているか、イギリスの秩序なき離脱の可能性により欧州金融機関がどれほどのコストを払うことになるのか。

欧州金融株指数は下落に歯止めがかかっていない。金融株が下げ一服、底打ち反転となれば、市場の不安感も払拭されるが、それが近々確認できるのかどうかがポイントだろう。

イタリア財政問題やイギリス離脱問題は、すでにある程度リスクが織り込まれているものの、まだしばらくは、欧州発リスク回避、が市場全体のテーマとして継続しそうだ。

株式市場が大きく混乱しているが、為替市場は比較的安定している。根本的なリスク回避要因が生じていない、景気後退や金融システムの悪化などが生じていない、ためだ。

不透明要因は多いが決定的ではない。経済全体が崩れて失速しているわけではなく、金融機関とくにメジャープレーヤーが苦境に陥っているわけでもない。

シカゴ通貨先物のポジション動向をみると、積み上がった円売りが緩やかに減少、ユーロは売り越しが増加しつつある。リスク回避が決定的であればポジションは一気に中立方向の動きとなるが、まだ「材料に基づく動き」となっている。

欧州発リスク回避、がテーマであれば、ユーロ売り円買い、ユーロ売りドル買い、となる。ポジション動向はその通りの動きを示している。

ドル円相場は週末に一時111円台前半にドル安円高が進んだが、結局は112円を大きく離れることはなかった。足元の不透明感の増大でも米国経済への信認が保たれ、結果としてドルへの信認が維持されていることが大きい。

逆にいえば、米国経済に変調がみられFRBの漸進的な利上げスタンスに変化があるようなら、ドル円相場は110円割れに下落する可能性がある。

ただ今のところはそうした状況にない。株価動向と実体経済の動向は、別物、であり、そうである限り、為替市場は株式市場の動きと乖離した値動きを続けよう。

ドル円相場の上値は重いものの、大幅なドル安円高を見込む要因は生じていない。ただ、市場のストレスが最高潮にあることは間違いない。

実体経済の悪化を示すごく小さな兆しでも大きな反応となり、今度は為替市場も混乱に巻き込まれる、大幅かつ急速に円高が進むリスク、ドル円相場が110円を割って円高となるリスクも否定できず、当面は留意が必要だろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :111.91(▲0.51)
ユーロ :127.6(▲0.28)
英ポンド :143.573(▲0.52)
豪ドル :79.354(▲0.24)
カナダドル :85.388(▲0.61)
スイスフラン :112.24(▲0.31)
ブラジルレアル :30.7195(+0.38)
中国人民元 :16.066(▲0.14)
韓国ウォン(日本円=100) :9.812(▲0.07)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1403(+0.003)
英ポンド :1.2828(+0.001)
豪ドル :0.709(+0.001)
カナダドル :1.3106(+0.003)
スイスフラン :0.997(▲0.002)
ブラジルレアル :3.6421(▲0.063)
中国人民元 :6.9435(▲0.005)
韓国ウォン :1141.85(+3.74)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :3.08(▲0.04)
米2年債 :2.81(▲0.04)
日本10年債利回り :0.11(▲0.00)
日本2年債利回り :0.11(+0.00)
独10年債利回り :0.35(▲0.05)
独2年債利回り :▲0.63(▲0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :24,688.31(▲296.24)
NASDAQ  :7,167.21(▲151.12)
S&P500 :2,658.69(▲46.88)
日経平均株価 :21,184.60(▲84.13)
ドイツ DAX :11,200.62(▲106.50)
インド センセックス :33,349.31(▲340.78)
中国上海総合 :2,598.85(▲4.95)
ブラジル ボベスパ :85,719.87(+1,636.36)
英国FT250 :18,352.90(▲178.63)
ビットコイン :6401.99(+1.55)

【主要商品価格】
WTI :67.59(+0.26)
Brent :77.62(+0.73)
米ガソリン :181.50(+0.21)
米灯油 :230.30(+2.49)

金 :1233.53(+1.36)
銀 :14.70(+0.05)
プラチナ :832.71(+5.27)
パラジウム :1105.69(+1.46)
銅 :6130.00(▲70:29B)
アルミニウム :1978.00(▲21:17C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セト
ル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :845.00(+3.25)
シカゴ とうもろこし :367.75(+6.75)
シカゴ小麦 :505.25(+18.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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