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米中間選挙を終えて ~リスクバイアスは双方に高まる
  • MRA外国為替レポート

2018年11月12日号

◆先週の市場総括


先週は米国の中間選挙が市場の最大の関心事だった。選挙結果は事前の予想通り。下院は民主党が過半数を奪回したが、上院は共和党が過半数。

詳細をみると、民主党の圧勝とはならず、トランプ政権・共和党が善戦したかたち。ドル円相場は113円20銭で始まり選挙前は様子見。結果を受けて最終的にはドル高が進み、週末に一時114円台に乗せた。

ドルはユーロに対しても結果的に堅調。ユーロドル相場は1.14ちょうど近辺で始まり、選挙後は一時1.15にユーロ高となったが、その後週末にかけて1.13台前半に反落した。

FOMCでは新たな材料はみられず。景気に関しては特段の警戒は示さず、12月の追加利上げは確実視された。

一方、欧州ではイタリア財政をめぐるEUとイタリア政府の対立が続きユーロの悪材料となった。ただ週末にかけてはリスク選好が後退してドル円相場はやや押されて113円80銭台で引けた。

米国株は週初から米中通商摩擦の緩和期待からじり高。選挙後は、想定通りの結果による安心感、ひとまずの不透明材料を乗り越えたことで一段高となった。

ただその後は長期金利の上昇や中国経済に対する警戒感が上値を抑え週末にかけてはじり安。米長期金利は高止まり。中間選挙を無難にこなしFOMCで12月の追加利上げが確実視されるなか、米10年債利回りは年初来最も高い水準である3.2%台で概ね推移した。

日経平均は週前半は堅調に推移したものの後半は反落。22,250円近辺で引けた。

月曜日の東京市場のドル円相場は113円20銭近辺で始まりもみ合い。日経平均は前週末の米国株安を受けて22,000円割れで安寄りしたが、こちらもその後は小動き。21,900円近辺で引けた。

海外市場でも米中間選挙を前に引き続き動意に欠ける値動き。ドル円相場は113円20銭近辺、ユーロドル相場は1.1420近辺で、ともに小動きだった。

米国株は前週末に雇用統計を受けた長期金利の上昇で下落したが、この日は堅調、じり高。米10年債利回りは3.19%へ小幅低下した。発表されたISM非製造業景気指数(10月)は60.3と予想59.0よりも強めだったが前月61.6からは低下した。

火曜日の東京市場のドル円相場は113円20銭で始まりじり高。夕刻には113円40銭に小幅高。日経平均は22,000円で高寄りし22,100円台に上昇。底固くもみ合い引けた。

海外市場に入るとドル円相場は一旦113円20銭割れに押し戻されたが、米国株が堅調に推移し、米10年債利回りが3.2%台に上昇するにつれて反発。113円40銭~50銭でもみ合い引けた。

この日は米国で中間選挙が実施され、結果は日本時間の水曜日午前中から昼にかけて判明する予定となっており、その結果待ち。

水曜日の東京市場のドル円相場は113円40銭で始まり、開票速報に反応して大きく上下した。朝方に113円ちょうどに下落した後、急反発し、昼前には113円80銭に上昇。その後は概ね予想通りの結果に押し戻され、夕方には113円ちょうど~113円20銭で推移した。

日経平均は22,200円で寄り付き、一時22,400円手前まで上昇したが、その後上下。後場は22,300円台から引けにかけて下落し結局22,100円割れで取引を終えた。

アジア時間は選挙結果が予想通りだったものの、なお不透明要因が解消されたわけではない、との反応でリスク選好は回復しなかった。

海外市場に入っても当初はドルが軟調。ドル円相場は113円ちょうど近辺、ユーロドル相場は一時1.15近辺にユーロ高ドル安が進んだ。ただ米国株はイベントが無難に終わったことによる安堵感から大幅高。

米10年債利回りは3.18%から3.23%に上昇。これを受けドルは反発。ドル円相場は113円50銭~60銭へ。ユーロドル相場は1.1430へとユーロ安ドル高が進んだ。

木曜日の東京市場のドル円相場は113円50銭で始まり海外市場のドル高の流れのままに70銭台に上昇。日経平均は大幅高の22,500円台で寄り付き、その後はもみ合いながらじり安22,500円割れで引けた。

この日中国で発表された10月の貿易収支は、輸出、輸入、ともに予想を上回る伸びを示し、しっかりした数字だった。

ドル円相場は東証引けの時間帯にかけて113円60銭近辺に下落したがその後海外市場では持ち直し。113円70銭を中心にもみ合い。

欧州時間には再びイタリアの財政問題を巡る懸念が強まりユーロが下落。その反面でドルが上昇。欧州委員会とイタリア政府の来年の財政赤字見通し(対GDP比2.9%となるか2.4%となるのか)の見方の対立が再び顕在化。

ユーロドル相場は1.1420から1.1360へ下落。ユーロ円相場は130円近辺から129円40銭~60銭に下落。

ドル円相場は堅調でFOMCの結果が判明する前に114円近辺に上昇した。米国株はまちまち。米10年債利回りは前日に上昇したまま3.24%で引け。

FOMCの結果はとくに新味なし。景気に関して特段の警戒感が示されなかったことで市場は12月の利上げを確実視した。

金曜日の東京市場のドル円相場は114円ちょうどで始まり114円10銭に強含み。しかしドル高も続かずその後は夕方にかけてじり安となり113円90銭に小反落した。

日経平均は22,400円台後半にやや下落して寄付きさらに下落。後場には22,300円近辺でもみ合いとなり引けは22,250円近辺。

海外市場のドル円相場は113円80銭を中心にもみ合い。

米国株はハイテク株中心に反落した。この日発表された中国の生産者物価指数(10月)は前年同月比+3.3%と前月の+3.6%から低下。4ヵ月連続で上昇率が鈍化した。米国の自動車販売台数も4ヵ月連続の減少。冴えない経済指標に株価は軟調となった。

米10年債利回りは小幅低下して3.19%。リスク選好が後退するなか、安全通貨としてドルは堅調だったが、円もなおしっかりで、ドル円相場は113円80銭台で週末NYの取引を終えた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

先週のFOMCでは景気動向に警戒感は示されなかった。ただ足元で設備投資の勢いがやや緩んでいることは認めている。

今週の指標が引き続き安心感をもたらすか、とくに企業部門において米中摩擦の影響を感じさせるか。

水曜日 消費者物価指数(10月、コア指数、前年同月比、予想+2.2%、前月+2.2%)、FRBパウエル議長講演

木曜日 小売売上高(10月、前月比、予想+0.5%、前月+0.1%)、NY連銀製造業景気指数(11月、予想19.5、前月21.1)、フィラデルフィア連銀景況指数(11月、予想21.0、前月22.2)

金曜日 鉱工業生産(10月、前月比、予想+0.2%、前月+0.3%)

2.中国の経済指標

米中通商摩擦の懸念が燻るなか、引き続き中国の景気動向は注目される。今週水曜日に10月の主要指標が発表される。これらが安定した景気動向を示すか。

小売売上高(年初来累計・前年同月比、予想+9.3%、前月+9.3%)、工業生産(同、予想+6.3%、前月+6.4%)、都市部固定資産投資(同、予想+5.5%、前月+5.4%)。

3.欧州問題と経済指標

欧州ではイタリアの財政を巡ってなおEUとイタリア政府の対立が続いている。13日火曜日にEUへの予算案再提出期限を迎えるが、イタリアには応じる構えがない。EUは制裁をほのめかしている。この問題がどうなるか。

また景気動向については勢いに陰りがみえるなか経済指標も気になるところ。火曜日にドイツZEW景況感指数(11月)、水曜日にユーロ圏GDP7-9月期改定値、ドイツGDP7-9月期速報、が発表される。

このほか、日本では決算発表が続き、水曜日には7-9月期のGDP速報が発表される。

◆今週のMRA's Eye


米中間選挙を終えて ~リスクバイアスは双方に高まる

注目の米国の中間選挙の結果は事前の予想通りとなった。民主党は下院の過半数を奪還したが、「ビッグブルーウェーブ」での圧勝とはならず、一方で上院は共和党が民主党から議席を奪い過半数を維持し議席を増やした。

知事選でも大票田の州知事を共和党が押さえるなど、むしろ共和党が善戦した。

米国の株式市場は、この結果をひとまず好感した。予想通りの結果に安堵し、選挙結果が判明したことそのものによる不透明感が後退したととり、あるいは下院が民主党多数派になったことよる大統領の暴走抑制が働いて良い方向に行くのではないかとの期待、また共和党が善戦したことでトランプ大統領が過激なポピュリズム政策に傾くリスクが低下したのではないかという期待、など。

確かにトランプ大統領からは下院民主党に対して協力を要請するようなコメントもみられた。

今回の選挙結果に基づく新たな議会、新体制は1月からだ。選挙前後では直ちに何かが変わるわけではない。

この間の市場のセンチメントを大きく左右してきたのは米中通商摩擦問題だが、これに選挙結果が現時点で直接影響を与えることはない。

選挙結果にかかわらず、中国が米中間選挙までは米国と交渉しない、としていたこと、トランプ大統領が選挙前に交渉を前に合意案の草案を準備するように指示したこと、などの条件や動きはあった。

選挙前から市場の期待を高める流れは続いており、選挙結果とは無関係に、選挙後もその延長線上で相場が動いている、リスク選好がやや高まる方向の流れにある。

ただしトランプ大統領のこと、引き続きどうでるのかは予想がつかない。注目は今月末のG20に際して行われる米中首脳会談。果たして何らかの合意に至るのか。合意に至ることができずに交渉継続となるのか。交渉が決裂して関税強化の動きとなるのか。

市場が合意への期待感を抱いているとすれば、リスクはダウンサイド。交渉継続ならまだ良いが、決裂となった場合のショックは大きくなるだろう。

米中通商交渉もさることながら、このところ関税の悪影響を受ける米国および中国の経済指標に対する市場の反応が大きくなっているようにみえる。

とくに株式市場は敏感に、とくにダウンサイドの証左に反応しやすいようにみえる。米国ではISM景気指数から企業の景況感の頭打ちが、GDPからは設備投資の鈍化が、うかがえる。

中国でもPMI企業景況感指数が急速に悪化している。生産者物価指数の上昇率が低下傾向にあることも、とくに製造業を中心として企業の景況感が悪化していることを示している。

また中国企業のデフォルトも急速に増加するリスクがあるようだ。

そうした状況で米中通商交渉決裂となれば、実際の悪影響がタイムラグをもってさらに顕在化するとみられ、その前に市場心理の悪化によるさらなる株価下落を招きかねない。

先週のFOMCでは景気判断に特段の警戒感は示されなかった。しかし追加関税の導入に至った場合には、さすがにリスクバイアスがダウンサイドに傾く可能性がある。

利上げのペースダウンが前倒しとなる可能性もある。となればドルの信認そのものも揺らぎ、ドル円相場は想定外にドル安円高に振れる可能性もあろう。

逆に米中通商交渉に何らかの進展があれば、市場のムードは一転してリスク選好が高まる可能性がある。経済指標に好影響が表われるには時間がかかるだろうが、期待先行で株価はこの間の下落幅を取り戻しに行く可能性がある。

この場合はドル円相場に上昇圧力がかかるだろう。

ただ、リスク選好の強まりはドルにネガティブに働く。リスク資産や新興国通貨などに再び資金が流入しドルにはマイナスに働く。110円を試す可能性も否定はできない。

現時点での中心レベルは113円台で、ダウンサイドリスク、アップサイドリスク、双方あり、以前よりも振れ幅が大きくなる可能性が高まっているのではないか。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :113.83(▲0.24)
ユーロ :128.99(▲0.62)
英ポンド :147.645(▲1.34)
豪ドル :82.243(▲0.53)
カナダドル :86.153(▲0.56)
スイスフラン :113.174(▲0.22)
ブラジルレアル :30.5008(+0.17)
中国人民元 :16.359(▲0.04)
韓国ウォン(日本円=100) :10.064(▲0.18)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1336(▲0.003)
英ポンド :1.2972(▲0.009)
豪ドル :0.7226(▲0.003)
カナダドル :1.3212(+0.006)
スイスフラン :1.0056(▲0.000)
ブラジルレアル :3.7299(▲0.031)
中国人民元 :6.9567(+0.022)
韓国ウォン :1128.13(+11.47)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :3.18(▲0.06)
米2年債 :2.92(▲0.04)
日本10年債利回り :0.12(+0.00)
日本2年債利回り :0.12(+0.00)
独10年債利回り :0.41(▲0.05)
独2年債利回り :▲0.60(▲0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :25,989.30(▲201.92)
NASDAQ  :7,406.90(▲123.98)
S&P500 :2,781.01(▲25.82)
日経平均株価 :22,250.25(▲236.67)
ドイツ DAX :11,529.16(+1.84)
インド センセックス :35,158.55(▲79.13)
中国上海総合 :2,598.87(▲36.76)
ブラジル ボベスパ :85,641.21(+21.08)
英国FT250 :19,106.61(▲150.47)
ビットコイン :6326.2(▲93.30)

【主要商品価格】
WTI :60.19(▲0.48)
Brent :70.18(▲0.47)
米ガソリン :162.14(▲2.29)
米灯油 :217.28(+0.45)

金 :1209.65(▲14.35)
銀 :14.16(▲0.29)
プラチナ :853.11(▲11.06)
パラジウム :1116.69(▲10.78)
銅 :6070.00(▲46:18B)
アルミニウム :1971.50(▲11:7C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セト
ル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :875.25(+7.75)
シカゴ とうもろこし :369.75(▲3.75)
シカゴ小麦 :502.00(▲5.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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