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入りと払いを見直そう
  • ビジネスへのヒント
  • MRA商品市場レポート for MANAGEMENT(週末版)

【ビジネスへのヒント】第376号

購買山口課長「最近円高が進んで、輸出企業は大変なことになっている。早く円安に行って欲しいもんだ。政府もどんどん介入すればいいんだ」
田中主任「やっぱりそうですよね、為替が円安じゃないと株も上がりませんし」
山口課長「全くだ。でも円高のおかげでうちの原材料調達価格は下がっているな。悪いことばかりではない」
田中主任「その通りですね...」

この類の会話はこの数カ月、メディアを通じてのみならず、職場でも耳にするようになりました。このような「相場の大幅な変動」は通常業務を見直す良い機会であると言えます。少しこの円高の背景を整理すると、今回の円高進行の背景は、米国の景気先行き不透明感が強まっていることに伴うドル独歩安があります。つまり、日本の景気が良くないにも関わらず、ドルが相対的に弱くなってしまったために円が買われて円高が進行しているという構図です。そこだけを捉えると、「早く円安に戻って欲しい」という結論になるのはある意味当然と言えば当然です。

ですが、山口課長が発言している通り、円高の進行で円ベースの原材料価格が下がっているという事実も見逃せません。実はドル建ての銅の価格はリーマンショック後の3倍近い水準まで上昇してしまっているのですが、円高の進行がそれを相殺してくれているのです。つまり、現在の円ベースの価格水準の安定は為替が円高に進行したことによって支えられているものであり、政府の介入等でこれが反転した場合には、円建て価格が大幅に上昇する可能性が高いことを意味します。では仮に政府の介入等で大幅に円安が進行した場合、どんなことが起こるでしょうか?少なくとも購入する原材料の円建て価格は上昇することになるでしょう。

こんな時には何を考えればよいでしょうか?まずこの相場の大幅な変動に際し、ご自身の会社の製品の販売価格がどのように変化するのか?が重要だと考えられます。もし価格上昇分をスライドさせることができるのならば、この円建て価格の上昇はそれほど心配する必要はないと言えます(大幅に相場が変動して消費が減少した場合には話は別です。それはまた別の機会に解説します)。しかし、多くの場合、最終製品に近い製品を扱っている企業になればなるほど、購入原材料価格の変動率が、販売製品価格の変動率よりも高くなる傾向があります。結果、利益が圧迫されることになるわけです。まずは、「入りと払いの価格構造」を見直してみてください。具体的には販売製品価格と原材料価格をグラフにして比較してみましょう。そしてもし販売価格と購入原材料価格の変化率に大きな差があるようであれば、価格体系の見直しやリスクヘッジの実施を検討する必要があるでしょう。このように相場が極端に動いている状況では、「その状況が反転した場合に何が起きるか」を考えることが重要になります。特に今回のように為替の影響で円建て価格が比較的安定しているような状態は、次の一手を考えるいい機会であると言えます。

更に言えば、このような相場の急変が発生したとしても迅速に対応できるような社内体制づくり、例えば営業部門と調達部門がスムースに情報交換できる体制作り等、ができていることが理想です。