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予想比強い中国統計を受けて上昇
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年8月9日 第1589号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「予想比強い中国統計を受けて上昇」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は一部の先進国債券や金銀などが下落したが、総じて堅調な推移となった。

注目されていた中国の貿易統計が市場予想程弱い内容ではなかったことで、景気への過剰な懸念が後退する中、世界各国の中央銀行が利下げモードに舵を切ったことで、金融面からリスク資産価格がサポートされる、との見方が強まったことが背景。

欧州天然ガス価格が上昇しているが、折からの猛暑に加えて風力発電からの供給が減少したことが指摘された。

特に上昇が顕著だったのが原油だが、チャート的にはまだ下落トレンドから脱してはいない。

ニッケルはインドネシアの鉱石輸出制限が材料視されたようだが、新しいニュースではなく、アルゴリズムトレードなどの要因が重なったためと考えられる。

【本日の価格見通し総括】

本日は昨日の流れを受けて多くの商品に買戻しがはいると考えられるが、週末ということもあり戻りも限定されると考える。

予定されている注目材料としては、中国の消費者物価指数(市場予想+2.7%、前月+2.7%)、生産者物価指数(▲0.1%、±0.0%)に注目している。

景気の先行指標である生産者物価指数の低下は継続する見込みであり、景気循環系商品価格の下落要因となる。しかし足元は景気減速の場合には金融緩和、という流れであり、逆に金融面が価格を下支えしよう。

直接商品価格への影響は大きくないと考えるが、日本のGDPは市場予想は前期比年率+1.8%(市場予想+0.5%、前期+2.2%)と市場予想に反して大幅な改善となった。企業設備投資が堅調に推移したことが背景。

ただし、年末にかけては消費税上げやオリンピックスタジアム建設一巡に伴う建設需要の減速が見込まれ、海外情勢不安の高まりも予想されることから減速する可能性が高いと考える。

仮に景気が減速した場合、景気拡大局面でも金融緩和と財政出動を続けたため、実際に景気が減速した時の打ち手はほとんどないことは、日本経済の最大のリスクの1つである。

そのほか、IEA月報が発表されるが、世界景気の減速を受けた需要見通しの下方修正有無、原油価格下落下の北米の生産動向に注目したい。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日発表された中国の貿易統計は、市場予想程弱い内容ではなく、輸出・輸入とも市場予想を上回った。輸出の増加は主に欧州とアジア諸国向けであり、米国向けは低迷している。人民元安誘導の影響で輸出競争力が増したためと考えられる。輸入増加も欧州、アジア諸国からの輸入増加によるものだ。

なお、輸入に関しては米国からの輸入も増加しているが、恐らく米中通商協議を控えて一時的に大豆などの輸入が増加したためと考えられる。しかし、報道されているように国有企業に対して米国産農産品の輸入停止指示が出ていること、豚コレラの影響で飼料向け需要が旺盛ではないと考えられることから持続可能かどうかは微妙だ。

また、今月非常に目を引いたのが鉄鉱石と石炭の輸入が急増している点である。豪州が中国向けの輸出を加速させたためと見られるが、いずれも冬場の生産調整や輸入規制の影響で、在庫水準が低下していたことに伴う在庫再積み増しの動きが顕在化したため、と考えられる。

ただし、すでにバルチック海運指数は下落トレンド入りしており、中国のテクニカルな輸入増加圧力は一巡したと考えた方が良く、今後も中国の輸入が増加するかどうかは予断を許さない。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.3%→+3.2%)ている。2020年は+3.5%(▲0.1%)に戻る楽観見通しであるが、米中交渉の決裂懸念など、引き続きリスクは下向きとしている。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる。世界経済の悪化懸念を材料にFRBは利下げ方向に舵を切っている。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q219の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.4%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議が再開されたが逆に、相互の制裁強化となってしまった。今後、仮に進捗があったとしても、通商協議の根本解決には複数年単位の時間が必要で、その間世界経済がさらに減速する場合(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。ジョンソン首相は「何が何でも10月末に離脱」としており、首相就任後の発言もハードブレグジットを前提としており、その可能性はさらに高まった(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油相場は上昇した。中国の貿易統計がさほど悪い内容ではなかったこと、それを受けて株価が上昇したことなどが材料となった。

ただしチャート的にはまだ下落トレンドからは脱していない。

【原油価格見通し】

原油価格は、一旦反発するものとみているが、総じて軟調な推移は続くものと考える。中国の統計の改善や世界的な金融緩和で買戻しがはいりやすい地合いになっているものの、景気の減速を反転させるほどの対策が打たれているわけではないため。チャート的にもまだ下値を試してもおかしくない状況。

市場の注目は世界的な金融緩和動向に移っており、相場は金融相場に差し掛かっていると考える。今後は結果的に金融政策の価格への影響が大きくなり、価格への影響が無視できなくなると予想。

イラン問題の終息は、イラン・米国とも自身から歩み寄って解決するとは考えにくく、第三者の仲介が必要と考えられる。恐らく欧州の仲介によって来年の米大統領選挙開始前までに問題が終息する、というのが「希望的観測を含めた」メインシナリオである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に反発した。中国の石炭輸入が増加したことを受けて、同国の景気への懸念が若干後退したことが背景。

【石炭価格見通し】

石炭価格はピークシーズンということもあり、貿易統計の内容を受けて一旦買戻しがはいるものと考える。しかし、米中対立が深まっていること、LNG価格の大幅下落が需要面で価格を下押しするため、上昇余地も限定されると考える。

また、6月の石炭生産が過去最高となる3億3,335万トンに達し、これを受けて中国政府は年間の石炭輸入量を2億8,000万トンに制限する目標を掲げており、中国の6大電力会社の石炭在庫も高水準であることを勘案すると、中国の石炭輸入が今後も増加する、という展開は考え難い。

すでにバルチック海運指数も低下しており、しばらく石炭価格には下押し圧力がかかりやすい地合いに。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は2020年3月まで継続される予定で、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭港湾在庫が減少傾向を強めていることは国内需要が季節的に増加していることを示唆(石炭)。

(特殊要因)

・米国とイランの関係はこの20年で最悪の状態。両国の国力を減ずる戦争のリスクは依然低いとみるが、現状では開戦の可能性も完全に否定できない状態。

・米朝首脳会談が電撃的に開催されたが、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロングよりもショートの増加が顕著であり、ネットは売り越し幅を拡大している。ハリケーンの影響が過ぎ去り、増産観測が強まったことが背景。

Brentはロング・ショートとも増加したが、ロング増加が上回った。世界的な金融緩和傾向の方がより強く評価された形。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが540,238枚(前週比 +2,298枚)、ショートが152,947枚(+12,858枚)、ネットロングは387,291枚(▲10,560枚)、Brentが344,378枚(前週比+21,603枚)、ショートが68,038枚(+1,582枚)、ネットロングは276,340枚(+20,021枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は総じて堅調な推移となった。中国の貿易統計が発表されたが、輸入・輸出とも市場予想程悪化していなかったことで、景気への過度な懸念が後退したため。

ただし、冬場の石炭や鉄鉱石の輸入減速に伴う在庫積み増し、といったテクニカルな要因であると考えられ、これが持続可能かどうかは微妙なところ。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、投機の買戻しに先導される形で一時、上昇余地を探る展開になると考える。中国の貿易統計が市場予想程弱い内容ではなかったことや、世界的な金融緩和で金融相場の様相を呈し始めていることから。

しかし中国製造業PMIの改善は大企業に限られており、中堅・中小企業の景況感はまだ回復しておらず、世界の景気が(主に循環的に)下りのエスカレーターに乗る中で需要見通しが減速、中期的にも価格は下値余地を探りやすい。

10月末の英国のEU離脱もハードなものになる可能性が高いことも、一時的に価格を押し下げよう。

再び持続的な上昇に転じるのは、中国の公共投資が顕在化する年後半か、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。

ニッケル価格が暴騰し、一時17,000ドルを目指す展開となったが、固有の材料としてはインドネシアの未処理鉱石輸出規制強化の可能性ぐらいしかなく、どちらかといえば中国貿易統計が市場予想程弱くなかったことを受けて、供給懸念という材料があるため、必要以上に買戻し圧力が強まったため、と考えられる。

基本、景気が減速しているため、2012年の時と同様、実際に輸出規制が始まるまでは本格的な上昇にならず一旦下落すると考えている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは回復したものの閾値の50を下回り、中堅・中小企業の景況感は悪化している。ただし新規受注の増加と在庫の小幅な減少で、新規受注/完成品在庫レシオ、新規受注/原材料在庫レシオが小幅に上昇しており、非鉄金属価格の上昇要因に。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

ハイドロのアルノルテ アルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石輸出再開の可能性(2022年に実際に行われれば上昇要因に)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・8月2日付のLMEポジションは、米中対立の激化を受けて、総じてショートポジションが再び積み上がる流れとなり、アルミと鉛を除く金属では経済対策や金融緩和期待でロングの増加が確認された。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲56.2億ドル(前週▲43.1億ドル)と売り越し幅を再び拡大。売り越し額の増加率は30.2%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,511千トン(前週▲1,089千トン)と売り越し幅を拡大。亜鉛と鉛、錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの増加率は38.8%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは反発、原料炭スワップ先物は上昇、中国鉄鋼製品市場は小動きだった。

中国の貿易統計が発表され、鉄鉱石・石炭の輸入が大幅に増加したことを受けて、需要の回復期待が高まったことが背景。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は一旦上昇すると考える。ここまで、米中対立の激化を受けて下値余地を探る動きになってきたが、中国の貿易統計が予想よりも弱い内容ではなかったことを受けて、景気への過剰な懸念が後退するため。

しかし、中国の輸入増加は昨年からの輸入規制や、それに伴う在庫減少を受けた在庫積み増しの動きであると考えられ、すでにバルチック海運指数が低下していることを考えると、今後も輸入が増加基調を続けるとは考え難く、上昇余地も限定されるだろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは47.9(前月48.2)と悪化した。主に新規受注(国内向け)が減速したことによるもの。またバルチック海運指数の押し上げに寄与していた原材料在庫も水準が切り上がり、完成品在庫も増加基調にある。

ヴァーレの供給減少は継続しているが、需要面で鉄鋼製品・鉄鉱原料の需給が緩和する可能性が出てきた。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比+44.6万トンの1,344.3万トン(過去5年平均1,025.4万トン)と例年を大きく上回っている。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比180万トンの1億2,105万トン(過去5年平均1億1,897.6万トン)、在庫日数は+0.4日の25.1日(過去5年平均 30.1日)と例年の水準を下回った状態が続いている。

絶対水準の増加は続いているが、まだ在庫日数ベースでは例年を大きく下回っている。ファンダメンタルズ面で鉄鉱石価格を下支えしよう。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・ヴァーレ、リオ・ティントの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・供給懸念などを通じて大連取引所は建玉を積み増しながら、価格を切り上げており、先々の下落リスクは高まっている状況。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金銀価格は下落。中国の貿易統計が市場予想程弱い内容ではなかったことから株価が上昇したものの、イタリアの連立解消報道や米長期金利の低下、原油反発に伴う期待インフレ率の上昇が実質金利を押し下げたため、高値圏での推移となった。

銀は金銀在庫レシオや金銀レシオの水準で見た場合の割高感から、金よりも売られる流れとなった。

PGMは中国貿易統計がさほど弱い内容ではなかったことを受けた株高で上昇、前日比プラスで引けている。

【貴金属価格見通し】

金価格は高値圏での推移になると考える。トランプ大統領の発言を受けてFRBが「忖度」するのではとの見方や、世界的な金融緩和観測が実質金利を押し下げるほか、イタリアの政情不安や、英国のハードブレグジット懸念といった欧州のリスク、米中対立の継続を受けたリスク回避の動きは継続するとみられるため。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の高止まりが金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

銀が通貨としての価値を有していたころの、過去の水準に金銀レシオが戻ることは難しいと考える。

PGM価格は金銀価格が高値圏でもみ合う中、世界的な金融緩和観測を受けて株が一時的に上昇するとみられることから、対金銀で割高に推移するものと思料。

ただし、世界景気の減速で自動車販売も減速する可能性は高く、実需面はマイナスに作用しよう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が高まっているが、FRBは7月のFOMCで▲25bpの利下げを実施。今後は9月の会合での利下げ有無とその規模。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト期待(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。ただし実際にシフトが起きるには相当の時間がかかる見込み。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は難航しており、米国は中国に対して追加制裁を発動、目先の買い材料となっている。また、この交渉は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決が最終目標であり、長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの緊張はイランによるスパイ処刑やミサイル発射実験など、再び高まっている。開戦の可能性がなくなったわけではなく、対立が継続する以上は安全資産需要を高める。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・英国のEU離脱がハードになる可能性があること、それに伴いスコットランドの独立話が再燃していること、それがスペインのカタルーニャ地方に波及する懸念があることは安全資産需要を高める。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロングが増加、ショートが減少した。利下げ観測の強まりや、地政学的リスクの高まりが背景。

・プラチナはショートの減少が顕著。米金融緩和方針に伴う投機の買戻しが背景。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが312,214枚(前週比 +333枚)、ショートが57,826枚(▲2,805枚)、ネットロングは254,388枚(+3,138枚)、銀が111,282枚(+1,153枚)、ショートが46,985枚(▲8,383枚)、ネットロングは64,297枚(+9,536枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが46,584枚(前週比 ▲1,095枚)、ショートが20,816枚(▲5,973枚)、ネットロングは25,768枚(+4,878枚)、パラジウムが17,859枚(+370枚)、ショートが5,013枚(▲5枚)、ネットロングは12,846枚(+375枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は上昇した。中国の大豆輸入が急速に回復したことで、中国向けの需要回復期待が強まったことが価格を押し上げた。

ただし、どちらかといえば中国の大豆在庫水準の低さを受けた在庫積み増しの動きと考えられ、需要の増加があったわけではないと考えられる。

【穀物価格見通し】

穀物価格は中国の貿易統計での大豆輸入増加を材料とした買戻しで上昇すると考えられるが、基本的に中国政府は米国の農産品の輸入停止措置を取っていることから、上昇は一時的と考える。

それ以上に、北米の作況が不良であること(トウモロコシ、大豆とも、生育状況に遅れ、作況も過去5年の最低水準をはるかに下回る)や、欧州の気温上昇による不作への懸念、世界景気の先行き懸念から、非景気循環銘柄の需要が増加すると予想されることから下値も堅いと考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産減少観測による需給タイト化観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・7月の米需給報告の生産見通し

トウモロコシ138億7,500万Bu(前月136億8,000万Bu)大豆 38億4,500万Bu(41億5,000万Bu)小麦 19億2,100万Bu(19億300万Bu)

・7月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ20億100万Bu(前月16億7,500万Bu)大豆 7億9,500万Bu(10億4,500万Bu)小麦 10億Bu(10億7,200万Bu)

・米緩和観測に伴う実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉は再び難航しており相互制裁強化となっている。この問題は覇権争いが根幹にあり長期化の可能性は高い(価格の下落要因)。

・エルニーニョ現象は終息に向かっているが、より、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に来年以降にかけて価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・トウモロコシはロングが減少、ショートは増加で供給懸念は後退。大豆は米中貿易交渉の難航懸念で一転ロングが減少、ショートが増加。

小麦はトウモロコシが軟調な中、ロングを切下げ、ショートも他穀物と同様増加した。総じて供給懸念は以前よりも後退している。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが433,096枚(前週比 ▲22,939枚)、ショートが191,437枚(+22,438枚)、ネットロングは241,659枚(▲45,377枚)、大豆はロングが137,762枚(▲6,970枚)、ショートが149,045枚(+8,433枚)、ネットロングは▲11,283枚(▲15,403枚)、小麦はロングが121,491枚(+3,449枚)、ショートが91,633枚(▲7,125枚)、ネットロングは29,858枚(+10,574枚)

◆主要ニュース


・7月東京都心オフィス空室率 1.71%(前月 1.72%)

・7月日本 銀行貸出動向 銀行計 前年比+2.5%(前月+2.4%)、含信金 +2.3%(+2.3%)

・6月日本経常収支(季節調整済) 1兆9,419億円(前月1兆3,057億円の黒字)
 (季節調整前)1兆2,112億円の黒字(1兆5,948億円の黒字)
 貿易収支 7,593億円の黒字(▲6,509億円の赤字)
 輸出 6兆4,524億円(5兆9,180億円)
 輸入 5兆6,931億円(6兆5,690億円)
 サービス収支 509億円の黒字(1,372億円の黒字)
 第一次所得収支 4,273億円の黒字(2兆2,574億円の黒字)

・7月日本企業倒産 前年比+14.24%(前月+6.37%)

・7月日本景気ウォッチャー調査 現状判断DI 41.2(前月44.0)、先行き判断DI 44.3(45.8)

・7月中国貿易収支 450.6億ドルの黒字(前月509.8億ドルの黒字)
 輸出総額 前年比+3.3%(▲1.3%)、輸入総額▲5.6%(▲7.4%)
 輸出年初来ベース
 対米国 前年比 ▲7.8%(▲8.1%)
 対欧州 +6.1%(+6.0%)
 対日本 ▲1.5%(▲1.1%)
 対アセアン諸国 +9.1%(+7.9%)

 輸入
 対米国 前年比 ▲28.3%(▲29.9%)
 対欧州 +2.3%(+3.3%)
 対日本 ▲7.5%(▲6.4%)
 対アセアン諸国 ▲0.1%(▲0.2%)

・米週間新規失業保険申請件数 209件(前週217千件)、失業保険継続受給者数 1,684千人(1,699千人)

・6月米卸売在庫 前月比±0.0%(速報比▲0.2%、前月+0.4%)、小売売上高▲0.3%(▲0.6%)

・米トランプ大統領、「米金融当局の政策が維持する強いドル、私はうれしくない。」

・イタリア サルビーニ副首相、同盟と五つ星運動との連立解消を発表、総選挙実施の可能性高まる。

・パキスタン政府、インド大使追放を発表。インドのカシミール地方の自治権はく奪を受けて。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE天然ガス稼働在庫 2,688BCF(前週比+54BCF)
 東部 613BCF(+16BCF)
 中西部 701BCF(+24BCF)
 山間部 161BCF(+5BCF)
 太平洋地区272BCF(+2BCF)
 南中央 941BCF(+7BCF)

・7月中国石炭輸入 3,288.5万トン(前月2,709.8万トン)、輸出 66万トン(33万トン)

・7月中国原油輸入 4,104万トン、980万バレル/日(前月3,958万トン、936万バレル/日)、輸出 18万トン(13万トン)
 精製石油製品輸入 163万トン(199万トン)、輸出 549万トン(543万トン)

※原油1トン=7.4バレルとして算出。石油製品は種類の内訳が不明のためバレル換算していない。

・7月中国天然ガス輸入 789万トン(前月752万トン)

・サウジアラビア、9月積み原油輸出量を700万バレル未満に設定。

【メタル】
・7月中国銅輸入 42万トン(前月 33万トン)
 銅鉱石・精鉱 207万トン(147万トン)
 アルミ(未加工品含む) 輸出 49万トン(51万トン)

・7月中国鉄鉱石輸入 9,102万トン(前月7,518万トン)

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +7.22%/ ▲44.52%
2.CBT大豆油 ( 穀物 )/ +3.58%/ +5.12%
3.NYM WTI ( エネルギー )/ +2.84%/ +15.70%
4.ICE Brent ( エネルギー )/ +2.79%/ +7.43%
5.LME鉛 3M ( ベースメタル )/ +2.77%/ +3.21%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ビットコイン ( その他 )/ ▲2.26%/ +215.60%
69.TCM原油 ( エネルギー )/ ▲1.15%/ ▲4.52%
68.銀 ( 貴金属 )/ ▲1.01%/ +9.28%
67.SHF亜鉛 ( ベースメタル )/ ▲0.95%/ ▲11.22%
66.ICEココア ( その他農産品 )/ ▲0.85%/ ▲8.73%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,378.19(+371.12)
S&P500 :2,938.09(+54.11)
日経平均株価 :20,593.35(+76.79)
ドル円 :106.07(▲0.20)
ユーロ円 :118.59(▲0.43)
米10年債利回り :1.72(▲0.02)
独10年債利回り :▲0.56(+0.02)
日10年債利回り :▲0.19(▲0.00)
中国10年債利回り :3.05(▲0.00)
ビットコイン :11,595.78(▲267.99)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :24.94(+0.24)
エネルギー :33.58(+1.08)
ベースメタル :21.12(+0.87)
貴金属 :21.05(▲0.21)
穀物 :20.76(▲0.16)
その他農畜産品 :25.78(▲0.1)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :43.02(+1.98)
Brent :40.08(+2.13)
米天然ガス :37.38(▲0.35)
米ガソリン :39.16(+1.12)
ICEガスオイル :29.66(+1.69)
LME銅 :15.26(▲0.19)
LMEアルミニウム :9.24(+0.43)
金 :17.82(+1.61)
プラチナ :17.55(▲0.11)
トウモロコシ :22.55(▲2.68)
大豆 :17.82(+1.61)

【エネルギー】
WTI :52.54(+1.45)
Brent :57.80(+1.57)
Oman :57.56(+1.39)
米ガソリン :164.57(+2.54)
米灯油 :177.66(+2.34)
ICEガスオイル :546.00(+12.25)
米天然ガス :2.13(+0.05)
英天然ガス :33.88(+2.28)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :57.80(+1.57)
SPO380cst :306.18(+4.38)
SPOケロシン :72.16(+0.60)
SPOガスオイル :72.13(+0.68)
ICE ガスオイル :73.29(+1.64)
NYMEX灯油 :179.36(+1.44)

【貴金属】
金 :1500.95(▲0.21)
銀 :16.93(▲0.17)
プラチナ :865.46(+0.74)
パラジウム :1422.38(+4.04)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,748(+43:25C)
亜鉛 :2,279(+12:6.5C)
鉛 :2,056(+61:14B)
アルミニウム :1,769(+12:31C)
ニッケル :15,495(+750:0B)
錫 :16,900(▲95:50B)
コバルト :28,066(+196)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5780.00(+34.00)
亜鉛 :2303.00(+28.00)
鉛 :2075.00(+56.00)
アルミニウム :1781.00(+22.00)
ニッケル :15830.00(+380.00)
錫 :16870.00(+85.00)
バルチック海運指数 :1,712.00(▲22.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :95.89(+1.32)
NYMEX鉄鉱石 :97.37(+0.81)
NYMEX原料炭スワップ先物 :157(+2.00)
上海鉄筋直近限月 :3,990(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :3,714(+3)
米鉄スクラップ :293(±0.0)

【農産物】
大豆 :865.00(+16.25)
シカゴ大豆ミール :294.80(+1.80)
シカゴ大豆油 :28.96(+1.00)
マレーシア パーム油 :2073.00(+33.00)
シカゴ とうもろこし :411.00(+4.50)
シカゴ小麦 :498.50(+10.25)
シンガポールゴム :148.00(±0.0)
上海ゴム :10480.00(+130.00)
砂糖 :11.43(+0.09)
アラビカ :97.40(+0.50)
ロブスタ :1312.00(+10.00)
綿花 :59.54(+0.96)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :77.35(▲0.38)
シカゴ生牛 :107.95(+0.35)
シカゴ飼育牛 :139.85(+0.30)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容
赦ください。