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米中対立激化で景気循環系商品大幅下落
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年8月6日 第1586号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米中対立激化で景気循環系商品大幅下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は農畜産品などの非景気循環銘柄、貴金属などの安全資産が物色される流れとなり、景気循環系商品は軒並み水準を切下げる動きとなった。円やスイス・フランが物色されていることからも、リスク回避の動きが鮮明になっていることがわかる。

米国の中国に対する制裁強化に対し、中国が米国産の農産品の禁輸を国営企業に対して指示したと報じられたことで、世界景気への懸念が強まった。

また、極東では日本との対立を深める韓国が、北朝鮮と連携する方針を示したことで地政学的なリスクが意識された。

【本日の価格見通し総括】

本日は予定された手がかり材料としては企業決算があげられるが、米中の対立激化によってその見通しの信憑性も低下が予想され、基本的にリスク回避姿勢が強まる展開が継続し、景気循環銘柄価格には下押し圧力が強まる展開が予想される。

ただし、昨日のリスク資産価格の下落幅が大きいため、朝方は買戻しが優勢になると考える。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日は中国の米国に対する報復報道を受けて株価が下落、世界的な株安となった。しかし、昨日発表されたISM非製造業景況指数は悪化したとはいえ高い水準を維持しており、まだ米国の景況感が悪化していないことを示唆している。

株式市場における市場参加者のリスクテイクの度合いを示す指標の1つであるPERは急低下しているが、それでもまた米中対立が激化し、G20での両国首脳会談が行われないのでは、と懸念されて株価が下落した時の水準よりは高い。米中交渉が9月も行われる予定であり、まだ対話の余地が残されていることが意識されているため、と考えられる。

株価の下落は市場参加者のリスクテイク意欲の後退を促し、景気循環系商品価格の下落要因となる。折からの景気減速懸念もあり、しばらく原油や非鉄金属などの価格には下押し圧力がかかる展開が予想される。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.3%→+3.2%)ている。2020年は+3.5%(▲0.1%)に戻る楽観見通しであるが、米中交渉の決裂懸念など、引き続きリスクは下向きとしている。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる。世界経済の悪化懸念を材料にFRBは利下げ方向に舵を切っている。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q219の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.4%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・景気減速下での原油価格高止まりは、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議が再開されたが目立った進捗はない。仮に進捗があったとしても、通商協議の根本解決には複数年単位の時間が必要で、その間世界経済がさらに減速する場合(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。ジョンソン首相は「何が何でも10月末に離脱」としており、首相就任後の発言もハードブレグジットを前提としており、その可能性はさらに高まった(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油相場は下落した。米国の中国に対する制裁強化に対し、中国が国有企業に対して農産品の輸入停止を要請したと報じられたことで、景気への懸念が台頭、株価の急落を通じてリスクテイク意欲が後退したことが背景。

【原油価格見通し】

原油価格は、総じて軟調に推移すると考える。米ISM製造業指数の鈍化が米国の景況感の減速を示唆しているほか、米中の通商戦争が解決しない、との見方が強まっていることが市場参加者のリスクテイク意欲を削ぐため。チャート的にもまだ下値を試してもおかしくない状況。

ただしFRBが金融緩和モードに舵を切っていることから、下値余地も限定されると考える。

世界の景気が下りのエスカレーターに乗っていることに変わりはなく、今後は結果的に金融政策の価格への影響が大きくなり、価格への影響が無視できなくなると予想。

イラン問題の終息は、イラン・米国とも自身から歩み寄って解決するとは考えにくく、第三者の仲介が必要と考えられる。恐らく欧州の仲介によって来年の米大統領選挙開始前までに問題が終息する、というのが「希望的観測を含めた」メインシナリオである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は下落した。米中の対立激化懸念を受けて、中国の景気減速の懸念が強まったことが背景。

【石炭価格見通し】

石炭価格は下落基調を維持すると考える。ピークシーズンであり、需要がもう少し盛り上がってもおかしくないが、米中対立が深まっているほか、最大消費国である中国の6大電力会社の石炭在庫も高水準であり、国内生産も回復、石炭の港湾在庫も増加傾向を強めていることから。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は2020年3月まで継続される予定で、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭港湾在庫が減少傾向を強めていることは国内需要が季節的に増加していることを示唆(石炭)。

(特殊要因)

・米国とイランの関係はこの20年で最悪の状態。両国の国力を減ずる戦争のリスクは依然低いとみるが、現状では開戦の可能性も完全に否定できない状態。

・米朝首脳会談が電撃的に開催されたが、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロングよりもショートの増加が顕著であり、ネットは売り越し幅を拡大している。ハリケーンの影響が過ぎ去り、増産観測が強まったことが背景。

Brentはロング・ショートとも増加したが、ロング増加が上回った。世界的な金融緩和傾向の方がより強く評価された形。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが540,238枚(前週比+2,298枚)、ショートが152,947枚(+12,858枚)、ネットロングは387,291枚(▲10,560枚)、Brentが344,378枚(前週比+21,603枚)、ショートが68,038枚(+1,582枚)、ネットロングは276,340枚(+20,021枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は総じて軟調な推移となった。米国の制裁に対して中国が農産品禁輸などの報復を行ったことで、米中の対立激化懸念が強まったことが背景。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は下値余地を探る動きになると考える。米中の対立激化を受けて、最大消費国である中国の景況感がさらに悪化するとの懸念が強まっていることから。また、英ハードブレグジット懸念も価格を下押しするとみる。

また、中国製造業PMIの改善は大企業に限られており、中堅・中小企業の景況感はまだ回復しておらず、世界の景気が(主に循環的に)下りのエスカレーターに乗る中で需要見通しが減速、中期的にも価格は下値余地を探りやすい。

ただし中国製造業PMIは総合数値はさえないものの、新規受注/在庫レシオが小幅に上昇しており、中国国内の需給タイト化が意識されていること、中国政府による経済対策の効果や、米国の利下げ観測を受けて下値余地も限定されると考える。

再び持続的な上昇に転じるのは、中国の公共投資が顕在化する年後半か、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは回復したものの閾値の50を下回り、中堅・中小企業の景況感は悪化している。ただし新規受注の増加と在庫の小幅な減少で、新規受注/完成品在庫レシオ、新規受注/原材料在庫レシオが小幅に上昇しており、非鉄金属価格の上昇要因に。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

ハイドロのアルノルテ アルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石輸出再開の可能性(2022年に実際に行われれば上昇要因に)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・7月26日付のLMEポジションは、まちまちとなった。ショートの買戻しは銅と鉛が続いているが、それ以外は一巡した感がありショートが再び積み上がっている。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲43.1億ドル(前週▲51.5億ドル)と売り越し幅を縮小。売り越し額の減少率は16.2%に。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,089千トン(前週▲1,191千トン)と売り越し幅を縮小。亜鉛と鉛、錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの減少率は8.6%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは大幅続落、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品市場は大幅に下落した。

米国の中国に対する制裁強に対して中国が報復を行う方針が示されたこと、人民元安の容認で国内需要向けの輸入が減少するとの見方が強まったことが背景。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、米中対立の激化を受けて下値余地を探る動きになると考える。また、一時急上昇していたバルチック海運指数も低下、生産調整などの影響で減少した在庫の再積み増しにめどが立ったためと考えられ、今後、中国国内在庫が積み上がるとの見方が強まったことも、価格を下押ししている。

しかし、中国政府の経済対策の効果が顕在化しつつあることや、ヴァーレの生産が完全に回復していないこと、リオの減産見通しといった供給面が引き続き意識されているため、下落余地も限定されると考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは47.9(前月48.2)と悪化した。主に新規受注(国内向け)が減速したことによるもの。またバルチック海運指数の押し上げに寄与していた原材料在庫も水準が切り上がり、完成品在庫も増加基調にある。

ヴァーレの供給減少は継続しているが、需要面で鉄鋼製品・鉄鉱原料の需給が緩和する可能性が出てきた。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比+44.6万トンの1,344.3万トン(過去5年平均1,025.4万トン)と例年を大きく上回っている。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比180万トンの1億2,105万トン(過去5年平均1億1,897.6万トン)、在庫日数は+0.4日の25.1日(過去5年平均 30.1日)と例年の水準を下回った状態が続いている。

絶対水準の増加は続いているが、まだ在庫日数ベースでは例年を大きく下回っている。ファンダメンタルズ面で鉄鉱石価格を下支えしよう。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・ヴァーレ、リオ・ティントの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・供給懸念などを通じて大連取引所は建玉を積み増しながら、価格を切り上げており、先々の下落リスクは高まっている状況。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金銀価格は大幅に上昇。米国と中国の経済対立が強まったことが材料となった。銀は金価格が高値圏で推移していることを受けて上昇。

PGMは金銀価格の上昇を受けて上昇したが、より投機性の強いプラチナの上昇が、景気減速懸念で価格上昇が抑制されたパラジウムよりも大きな上昇となった。

【貴金属価格見通し】

金価格は再び上昇余地を探る動きになると考える。米中対立の激化を受けたリスク回避の動きに加え、世界的に製造業PMIが減速しており景気への懸念が強まっていることから。

イランと米国の対立が継続していることはもちろんのこと、イタリアの財政問題、ジョンソン首相誕生でハードブレグジットがほぼ規定路線となりつつあること、それを受けて再びスコットランドの独立話が持ち上がっていることなど、欧州不安が払しょくされていないことなどがあげられる。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の高止まりが金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

銀が通貨としての価値を有していたころの、過去の水準に金銀レシオが戻ることは難しいと考える。

PGM価格は金銀価格が高値圏でもみ合うものの、足元は米中対立の激化や、世界的な自動車販売の減速を受けて水準を切下げる動きになると考える。ただし、パラジウムの供給懸念は根強く、下値余地も限られると考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が高まっているが、FRBは7月のFOMCで▲25bpの利下げを実施。今後は9月の会合での利下げ有無。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト期待(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。ただし実際にシフトが起きるには相当の時間がかかる見込み。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は難航しており、米国は中国に対して追加制裁を発動、目先の買い材料となっている。また、この交渉は中国の知的財産権侵害や技術の強制移転などの解決が最終目標であり、長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの緊張はイランによるスパイ処刑やミサイル発射実験など、再び高まっている。開戦の可能性がなくなったわけではなく、対立が継続する以上は安全資産需要を高める。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・英国のEU離脱がハードになる可能性があること、それに伴いスコットランドの独立話が再燃していること、それがスペインのカタルーニャ地方に波及する懸念があることは安全資産需要を高める。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロングが増加、ショートが減少した。利下げ観測の強まりや、地政学的リスクの高まりが背景。

・プラチナはショートの減少が顕著。米金融緩和方針に伴う投機の買戻しが背景。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが312,214枚(前週比 +333枚)、ショートが57,826枚(▲2,805枚)、ネットロングは254,388枚(+3,138枚)、銀が111,282枚(+1,153枚)、ショートが46,985枚(▲8,383枚)、ネットロングは64,297枚(+9,536枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが46,584枚(前週比 ▲1,095枚)、ショートが20,816枚(▲5,973枚)、ネットロングは25,768枚(+4,878枚)、パラジウムが17,859枚(+370枚)、ショートが5,013枚(▲5枚)、ネットロングは12,846枚(+375枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は下落後上昇した。米国の制裁に対して中国が米国の農産品を輸入しない方針を示したことが穀物価格の下落要因となったものの、同時に株安・ドル安が進行したため、非景気循環系商品物色の流れを受けて上昇した。

【穀物価格見通し】

穀物価格は米国と中国の対立が再び意識され、米国の輸出減少観測の強まりから軟調な推移になると考える。

しかし、基本的には北米の作況が不良であること(トウモロコシ、大豆とも、生育状況に遅れ、作況も過去5年の最低水準をはるかに下回る)や、欧州の気温上昇による不作への懸念、世界景気の先行き懸念から、非景気循環銘柄の需要が増加すると予想されることから下値も堅いと考える。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産減少観測による需給タイト化観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・7月の米需給報告の生産見通し

トウモロコシ138億7,500万Bu(前月136億8,000万Bu)大豆 38億4,500万Bu(41億5,000万Bu)小麦 19億2,100万Bu(19億300万Bu)

・7月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ20億100万Bu(前月16億7,500万Bu)大豆 7億9,500万Bu(10億4,500万Bu)小麦 10億Bu(10億7,200万Bu)

・米緩和観測に伴う実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉は交渉再開で合意したが、覇権争いであり長期化の可能性は高い(価格の下落要因)。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は基本的には価格の下落要因だが、今年は洪水が発生しており、夏場の気温上昇や乾燥といった育成環境の悪化の可能性はあり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・トウモロコシはロングが減少、ショートは増加で供給懸念は後退。大豆は米中貿易交渉の難航懸念で一転ロングが減少、ショートが増加。

小麦はトウモロコシが軟調な中、ロングを切下げ、ショートも他穀物と同様増加した。総じて供給懸念は以前よりも後退している。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが433,096枚(前週比 ▲22,939枚)、ショートが191,437枚(+22,438枚)、ネットロングは241,659枚(▲45,377枚)、大豆はロングが137,762枚(▲6,970枚)、ショートが149,045枚(+8,433枚)、ネットロングは▲11,283枚(▲15,403枚)、小麦はロングが121,491枚(+3,449枚)、ショートが91,633枚(▲7,125枚)、ネットロングは29,858枚(+10,574枚)

◆本日のMRA's Eye


「高まる極東の地政学的リスク」

昨日の報道では中国政府が国営企業に対して、米国からの農産品の輸入を停止するよう要請があったとされた。これを受けて米中の対立が激化しているとの見方が強まり、アジア時間から株式市場を中心にリスク資産が売られる流れとなった。

商品価格もこの影響を回避できず、景気循環系商品を中心に水準を切り下げる動きとなっている。

同時に、中国人民銀行は、10年ぶりに人民元の水準が1ドル7元台になったことを受けて、「米国が中国製品に対して新たな関税を課す方針を示したことが影響した」と発表した。

関税引き上げに伴う輸出価格の上昇の影響を回避するために、人民元安誘導を行ったと考えるのが妥当だろう。ただしこれは、1.資本流出を促す、2.輸入物価を押し上げる、というマイナス面も無視できない。

仮に農産品の輸入を停止し、人民元安誘導を行った場合、特に中国で懸念されるのは豚の輸入が十分ではなくなる、ということだろう。中国において豚肉が重要な肉類であることは、各方面で指摘されている通りである。

豚コレラの影響が終息せず1年以上継続しており、中国の豚肉輸入も大幅に増加している。そして同時に消費者物価指数の内、食品部門は上昇を続け、直近6月のデータでは前年比+8.3%となっている。

しばらくは鶏肉などの安価な肉類へのシフトが起きようが、この状態が継続すれば人民の不満も高まりかねない。直接的には関係ないが、香港のデモがさらに激化することもあり得よう。

台湾問題は直接中国と米国の問題ではないが、中国政府は「米国の企み」と公式に発表しており、香港問題に関する国内の不満を国外に向けるよう仕向けている。これは今までも見られた手法だ。

こうなると、より国内の不満を海外に向けようとするため、トランプ大統領就任時から懸念が強まっている、台湾問題に波及する可能性も否定できなくなってきた。

中国政府は台湾問題が深刻化した場合、武力行使も厭わないとしており、局地的な米中の衝突の可能性も全くあり得ない、と否定できない状況になってきている。

また、これに加えて、それこそ米中問題と関係ないものの、韓国と日本の対立がさらに激化し、日韓が軍事協力を行わないと決断した場合の影響は恐らく小さくない。

仮に、韓国が米国の支援を受けない、という決断を下せば中国の庇護を受けることは必至で、中国側も喜んでこれを受け入れるだろう。場合によると文在寅大統領が望む南北統一と同時に、中国の傘下入りということも起きかねない。実際、昨日、文在寅大統領は北朝鮮との連携を表明しており、「あり得ないシナリオ」ではなくなった。

これは発生の確率が5%もない最悪シナリオであるが、これまでの各国の感情的な対応を見ていると、「発生の可能性が低いテールリスク」はもはや無視できないリスクシナリオである、と考えるべきである。この結果、アジア地域で最も影響を受けるのは、実は日本になるかもしれない。

◆主要ニュース


・7月日本サービス業PMI改定 51.8(速報比▲0.3、前月改定51.9)、コンポジット 51.2(±0.0、50.8)

・7月中国財新サービス業PMI 51.6(前月 52.0)、コンポジット 50.9(50.6)

・7月インドサービス業PMI 53.8(前月49.6)、コンポジット 53.9(50.8)

・7月独サービス業PMI改定 54.5(速報比▲0.9、55.8)、コンポジット 51.7(▲0.4、52.6)

・7月ユーロ圏サービス業PMI改定 53.2(速報比▲0.1、53.6)、コンポジット 51.5(±0.0、52.2)

・8月ユーロ圏センティックス投資家信頼感 ▲13.7(前月▲5.8)

・7月米サービス業PMI改定 52.6(速報比+1.0、前月改定51.5)、コンポジット 52.6(+1.0、51.5)

・7月米ISM非製造業景況指数 53.7(前月 55.1)
 新規受注 54.1(55.8)
 受注残 53.5(56.0)
 在庫増減 50.0(55.0)
 在庫景況感 60.5(58.5)
 雇用 56.2(55.0)

・中国、国有企業に対して米国産農産品輸入停止を要請。

・米トランプ大統領、「中国の人民元安は為替操作だ。」

・北朝鮮、飛翔体を発射。

・文在寅大統領、日本に対抗するため北朝鮮と経済連携を示唆。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・イラン、外国船籍の石油タンカー1隻を拿捕。

・イラン ザリフ外相、「ホワイトハウスに招待されていたが、断ったら制裁するといわれ、2週間後に本当に制裁となった。」

【メタル】
・特になし。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ビットコイン ( その他 )/ +12.73%/ +219.08%
2.SHF 銀 ( 貴金属 )/ +4.36%/ +9.05%
3.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ +2.59%/ +39.60%
4.SHFニッケル ( ベースメタル )/ +2.26%/ +31.52%
5.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ +2.07%/ +27.68%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ ▲5.86%/ +41.73%
69.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲3.67%/ ▲48.39%
68.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲3.56%/ +29.79%
67.ICE Brent ( エネルギー )/ ▲3.36%/ +11.17%
66.DME Oman ( エネルギー )/ ▲3.27%/ +11.14%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,717.74(▲767.27)
S&P500 :2,844.74(▲87.31)
日経平均株価 :20,720.29(▲366.87)
ドル円 :105.95(▲0.64)
ユーロ円 :118.70(+0.30)
米10年債利回り :1.71(▲0.14)
独10年債利回り :▲0.52(▲0.02)
日10年債利回り :▲0.19(▲0.03)
中国10年債利回り :3.06(▲0.03)
ビットコイン :11,723.69(+1324.31)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :25.13(▲0.35)
エネルギー :33.59(▲0.39)
ベースメタル :19.87(+0.68)
貴金属 :20.57(+0.41)
穀物 :21.10(+0.33)
その他農畜産品 :26.79(▲1.28)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :41.58(+0.12)
Brent :38.75(+1.22)
米天然ガス :38.42(▲7.49)
米ガソリン :40.38(+1.22)
ICEガスオイル :26.50(+1.57)
LME銅 :16.94(+1.12)
LMEアルミニウム :10.71(+0.06)
金 :17.33(▲0.08)
プラチナ :18.19(+0.25)
トウモロコシ :25.57(+0.34)
大豆 :17.33(▲0.08)

【エネルギー】
WTI :54.69(▲0.97)
Brent :59.81(▲2.08)
Oman :59.47(▲2.01)
米ガソリン :171.80(▲6.35)
米灯油 :183.56(▲5.46)
ICEガスオイル :564.75(▲13.25)
米天然ガス :2.07(▲0.05)
英天然ガス :31.52(▲1.20)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :59.81(▲2.08)
SPO380cst :328.43(▲24.81)
SPOケロシン :74.37(▲1.12)
SPOガスオイル :74.27(▲1.32)
ICE ガスオイル :75.81(▲1.78)
NYMEX灯油 :184.14(▲1.76)

【貴金属】
金 :1463.70(+22.87)
銀 :16.40(+0.19)
プラチナ :855.56(+10.66)
パラジウム :1422.74(+13.46)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,678(▲115:31C)
亜鉛 :2,324(▲36:3C)
鉛 :1,942(▲20:3C)
アルミニウム :1,772(▲6:32.5C)
ニッケル :14,880(+355:20C)
錫 :16,850(▲470:20C)
コバルト :25,645(▲18)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5684.00(▲38.00)
亜鉛 :2322.50(▲28.00)
鉛 :1960.00(+7.00)
アルミニウム :1766.00(▲7.00)
ニッケル :14860.00(+375.00)
錫 :16875.00(▲230.00)
バルチック海運指数 :1,788.00(▲24.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :100.8(▲6.28)
NYMEX鉄鉱石 :100.34(▲6.17)
NYMEX原料炭スワップ先物 :156(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :4,003(▲54)
上海鉄筋中心限月 :3,778(▲27)
米鉄スクラップ :293(±0.0)

【農産物】
大豆 :850.25(±0.0)
シカゴ大豆ミール :294.90(+2.50)
シカゴ大豆油 :27.76(▲0.43)
マレーシア パーム油 :2027.00(+14.00)
シカゴ とうもろこし :405.25(+5.75)
シカゴ小麦 :494.50(+3.75)
シンガポールゴム :147.00(▲2.60)
上海ゴム :10165.00(▲120.00)
砂糖 :11.82(▲0.20)
アラビカ :95.65(▲2.50)
ロブスタ :1297.00(▲15.00)
綿花 :57.91(▲1.03)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :77.85(+1.58)
シカゴ生牛 :107.80(+0.15)
シカゴ飼育牛 :140.53(+0.90)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。