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高まるリスク回避、株価・金利動向と円相場
  • MRA外国為替レポート

2019年8月5日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は火曜日・水曜日の2日間にわたり開催されたFOMCの結果発表を前に週前半は108円台後半でもみ合い。

木曜日未明に公表された結果は0.25%の利下げ、資産売却・バランスシート縮小は2か月前倒しで終了、となった。

利下げ決定は8対2で反対票が2票。声明文では、適切に対応する、との文言は残され追加利下げの余地は残されたが、パウエル議長は今回の利下げは長いサイクルの一環ではないと、あくまでも調整・予防的な利下げと述べた。期待ほどハト派でなかった。

米国株は緩和期待の後退で下落。一方ドルは堅調な展開でドル円相場は109円台前半に上昇、ユーロドル相場は1.10台前半に下落した。

しかし木曜日にトランプ大統領が突如、対中関税第4弾、3,000億ドルに対する追加関税を9月1日に発動するとしたことから急速にリスク回避が拡大。

日経平均は金曜日に大幅安となり一時21,000円割れ。米長期金利は急低下。10年債利回りは週末にかけて1.84%に。米国株は大幅安。

為替市場ではドル安と同時に円が全面高となりドル円相場は106円60銭に下落した。ユーロ円相場も118円40銭に。ユーロドル相場は1.11台に上昇。

月曜日の東京市場は108円70銭で始まり一時40銭に下落したが持ち直して60銭~70銭でもみ合い。ユーロ円相場は120円90銭~121円ちょうどで始まり小幅円高に振れて120円80銭~90銭でもみ合い。

日経平均は21,600円台前半で寄り付いたが前場に500円台前半に下落して上下。引けは21,500円台後半戻して引け。

海外市場では米国株がまちまちの動き。FOMCや米中通商協議を前に方向感なく、大型ハイテク株には利食い売り。ダウは小幅続伸、S&Pとナスダックは反落。

米長期金利は概ね横ばいで10年債利回りは2.07%。ドル円相場は底固く108円90銭に上昇した後70銭~80銭で上下。ユーロ円相場も121円20銭~30銭に上昇してもみ合い。

トランプ大統領は、小幅な利下げでは不十分、と発言。欧州では合意なきEU離脱懸念からポンド安が続いた。発表されたダラス連銀製造業活動指数(7月)は▲6.3と3か月連続でマイナスとなったが生産と受注は改善した。

火曜日の東京市場では一時円高に振れた。この日は日銀金融政策決定会合の2日目で結果が昼頃に公表された。

先行き物価モメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には躊躇なく追加的な措置を講じると明記。ただ現在のフォワードガイダンス、当分の間少なくとも2020年春頃まで現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している、は維持された。

市場の一部にはフォワードガイダンスがより緩和寄りに強化されるとの思惑もあっただけに一時円高となった。ドル円相場は108円80銭~90銭で推移したが60銭に、ユーロ円相場も121円20銭~30銭で始まった後、121円ちょうどを中心とした上下に。

日経平均は21,600円台後半で高寄りし750円中心の値動き。ただ後場は伸び悩み、21,650円~700円で推移して引けは21,700円近辺。

黒田総裁は会見で躊躇なく追加的な措置を講じるとのスタンスを強調した。海外市場のドル円相場は108円50銭~70銭で上下し引けは108円60銭近辺。ユーロ円相場は121円10銭~20銭。ユーロドル相場は1.1150~60。

米国株は小動き、小幅安。この日、FOMCの初日が開催され翌日の結果待ちに。米長期金利は小動きで10年債利回りは2.06%。

米国の個人所得・消費支出(6月)は概ね予想通りで堅調。消費者信頼感指数(7月)は135.7と前月124.3から改善した。またこの日は米中協議が再開し上海で行われた。

水曜日の東京市場のドル円相場は108円60銭中心に小動き横ばい。ユーロ円相場も121円10銭~20銭で、ユーロドル相場も1.1150~60でもみ合い。その後海外市場にかけてややユーロ安となりユーロ円相場は120円80銭台、ユーロドル相場は1.1120台に下落。

日経平均は21,500円台半ばで安寄りし500円割れ。後場は21,500円台半ばで上下し引けは21,500円台前半。

中国で発表された製造業PMI(7月)は49.7と引き続き景況感の分かれ目である50を下回ったが前月49.4からやや改善した。

米国の経済指標はADP雇用報告(7月)が雇用者数・前月比+156千人とややしっかり目の数字。一方シカゴ購買部協会景気指数(7月)は44.4と前月49.7から悪化した。

注目のFOMCの結果は日本時間木曜日の未明午前3時に公表。政策金利であるFF金利の誘導目標レンジを2.00%~2.25%へ0.25%引き下げることを決定。利下げ実施は10年半ぶり。また資産売却(バランスシート縮小)の終了を予定より2か月前倒しし8月1日で終えることとした。

結果は予想通りで直後の市場の反応は鈍かった。その後行われたパウエル議長の記者会見では、今回の利下げが中長期的な利下げサイクルの一環ではない、予防的な措置であると、とされ、今後の利下げに慎重な姿勢が示された。

2年債利回りは1.87%に上昇。一方で10年債利回りは低下して2.01%に。2年債と10年債の金利差は縮小した。

ドル円相場は一時109円をつけたが反落して108円70銭~80銭。ユーロドル相場は下落して1.1070近辺。ユーロ円相場は120円50銭に下落。米国株は金融緩和期待の後退で大幅下落。

木曜日の東京市場ではドル高円安基調。ドル円相場は108円70銭台で始まり109円20銭近辺に上昇してもみ合い。

ユーロ円相場は120円40銭台で始まり60銭中心にもみ合い。ユーロドル相場は1.1080で始まり1.1040中心に上下した。

日経平均は米国株の大幅下落を受けて21,300円で安寄りしたが、ドル円相場の堅調推移を受けて戻し21,500円中心にもみ合い引けた。上海で実施されていた米中通商閣僚級協議では明確な進展がないまま終了。海外市場に入るとトランプ大統領が対中追加関税の発動を発表したことが市場にショックを与えた。

米中協議が続くなか、トランプ大統領は対中関税第4弾、3,000億ドルの対中輸入品に対する追加関税を9月1日から発動することを突如発表。市場にリスク回避が急速に広がった。

じり高に推移していた米国株は大幅安。米長期金利は急低下。2年債利回りは1.74%。10年債利回りは1.90%。為替市場では円が全面高。ドル円相場は109円から107円40銭に急落。

ユーロ円相場も119円ちょうど中心に大幅安となり上下。ユーロドル相場は1.1180~90にユーロ高ドル安となった。また発表された米ISM製造業景気指数(7月)は51.2と前月51.7から悪化して2016年8月以来の低水準となった。

金曜日の東京市場のドル円相場は107円30銭台で始まり一時50銭に戻したが、午前中には107円割れ。107円ちょうど~10銭を中心に上下した。ユーロ円相場も119円ちょうどで始まり下落して118円60銭中心に上下。

日経平均は大幅安寄り。21,100円近辺で始まり軟調で21,000円割れ。後場は持ち直したが21,070円近辺で週末の取引を終えた。

海外市場に入ると円はさらに全面高。ドル円相場は106円80銭に、ユーロ円相場は118円40銭に下落。

一部報道で、トランプ大統領が対中制裁の発動の延期ないし中止にオープン、と報じられ一時107円をつける場面もあったがすぐに下落して106円60銭中心に上下して週末NYの取引を終えた。

ユーロドル相場は1.1110中心に上下。ユーロ円相場は118円40銭近辺で引け。米国株は続落。米長期金利はさらに低下。2年債利回りは1.71%、10年債利回りは1.84%。

発表された米雇用統計(7月)は、非農業部門雇用者数・前月比が+164千人と予想通り、失業率は3.7%で前月と変わらず、平均時給・前年同月比は+3.2%と前月+3.1%から小幅上昇してこれも予想通り。ただ米中通商摩擦への不安感が市場を支配した状況のまま週末の取引を終えた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米中通商交渉を巡る動静

先週トランプ政権が突如、対中制裁関税の追加実施を表明した。市場でリスク回避が一気に高まった。9月1日とされる制裁発動まで1か月弱。先週は発動の延期ないし中止に含みを残した報道もみられたが、何らかの修正はあるか。

中国サイドは対抗措置の検討をほのめかしているが、今週、対抗措置を打ち出し、対立が決定的となるか。

2.米国の経済指標、FRB当局者発言

7月の利下げ実施の後、雇用統計はまずまずだった。ただISM製造業景気指数は弱め。米中間の対立激化で懸念が高まるなか、足元の景気動向が少なくとも堅調さを示せるか。

今週は比較的経済指標は少なく、日本がお盆休みに入る翌週に重要指標が続く。

月曜日 ISM非製造業景気指数(7月)

金曜日 生産者物価指数(7月)

13日火曜日 消費者物価指数(7月、前年同月比、予想+1.6%)

水曜日 輸入物価指数、15日木曜日にNY連銀製造業景気指数(8月)、フィラデルフィア連銀製造業景気指数(8月)、小売売上高、鉱工業生産(ともに7月)

金曜日 住宅着工(7月)、ミシガン大学消費者信頼感指数(8月)

※FOMCが終わったことでFRB関係者の発言が解禁になることからその機会も注目。

3.中国の経済指標

米中通商摩擦が再び強まるなか、中国景気に悪化がみられれば市場のリスク回避の背中を押す可能性があり注意を要する。

月曜日 財新サービス業PMI(7月)

水曜日 ニュージーランド準備銀行、インド中銀がそれぞれ0.25%の利下げを実施の見込み。

木曜日 貿易収支(7月)

金曜日 消費者物価指数・生産者物価指数(7月)

14日水曜日 小売売上高、工業生産、都市部固定資産投資(いずれも7月)

◆今週のMRA's Eye


高まるリスク回避、株価・金利動向と円相場

先週のFOMCはほぼ市場の予想通りの結果となり、追加利下げ期待・ドル金利先安感が後退するなかドル円相場は支えられた。一方、トランプ大統領が突如対中制裁関税第4弾、3,000億ドルの発動を表明。虚を突かれた市場ではリスク回避が一気に広がった。

この間、FRB内で景気重視の現状維持と物価重視の利下げ推進で意見が対立するなか、予防的利下げ決定に至ったが、市場はその先を行く景気悪化による中長期的な利下げ局面入りを織り込みつつあった。

悲観的な市場の見方が修正されかけたところでの対中制裁関税発動だけに、180度ひねるかたちで悲観論を加速し、リスク回避を蔓延させた。

足元の経済指標はなお米国経済が堅調に推移していることを示しているが、良好な指標が続いたとしても、追加関税が実施されればタイムラグをもって景気悪化が顕在化する、との見方が当面は覆りそうにない。強い経済指標よりも弱い経済指標に反応しやすい状況が続く。

対中追加関税が撤回されない限り、リスク回避は容易に解消しそうにない。米国株はFRBの慎重な利下げ姿勢、ドル金利先安感の後退で下落し、さらに対中追加関税発動でさらに大きく下落した。

週末にかけては、市場の利下げ織り込み過ぎの修正、米長期金利の低下の調整による上昇が株価に悪影響を及ぼしたのではなく、景気見通しの悪化・リスク回避による米長期金利の低下と米株安が併存。ドル円相場にとっては最もドル安円高に振れる組み合わせとなった。

リスク回避・株安で円は全面高。スイスフランも堅調。米10年債利回りは1.84%まで低下したが、これはドル安の側面からドル円相場を106円へと押し下げる要因となる。株安・長期金利低下は、それぞれ円高・ドル安をもたらす。

当面の焦点は、米長期金利がさらに低下するか、株価がさらに下落するか。米長期金利のレベルは1.8%台前半。2年債利回りは1.7%近辺。FF金利は2.25%。利下げがあと0.5%プラスα織り込まれている。

中長期的な景気トレンドの転換、政策金利トレンドの転換となるのかどうか。これは短期的に判断できず、ここまでの長期金利低下は十分に景気悪化リスクを織り込んだといえる水準に低下した。

FF金利が市場金利低下の後追いで0.5%以上低下するかどうかは依然として不透明だ。10年債利回りの水準からはドル円相場が105円に下落することは想定しにくい。

リスク回避による積極的な円買いが強まるほどには米国経済は混乱ないし弱体化していない。短期的に、あるいは、投機的に、ドル円相場が106円割れを試す可能性があるが、ドル安円高がトレンドとして長期化するには、現時点では材料不足だ。

シカゴ通貨先物のポジションがなお円売りに傾いていなかったことが、大幅な円高の可能性を抑制している。先週末にかけての円全面高は、米中追加関税や米長期金利の大幅低下に機械的に反応した動きによる可能性が大きい。

当面は106円程度で底固めするというのがメインシナリオだ。

これに対してリスクシナリオは季節要因。来週は日本がほぼ1週間、お盆休みとなるため、本邦の市場参加者が大きく減少する。個人投資家の逆張りによるドル買い円売りが機能しにくく、また円高による損切りが生じる可能性もある。

輸出勢はこの水準でドル売り円買いに動きにくいはずだが、お盆休み前に一部リスクヘッジのドル売りに動く可能性も皆無ではない。

海外投機筋は日銀が追加緩和に慎重とみて円買いに動くチャンスを狙っていたようだが、一連の材料で動きやすくなった可能性もある。

日本勢が不在のなか円買いを仕掛けることで円高をもたらし、日本の個人投資家の損切りによる円買いを誘発し、急速かつ一時的に円高に振れる可能性は通常よりも大きいので注意を要する。

なお年初はグローバルに参加者が少ない状況だったが、今回は日本勢だけが不在という点で、市場の流動性(売買のしやすさ、市場参加者のボリューム)の低下によるリスクは相対的に小さいだろう。

引き続き、本格的なドル安円高リスクは、米国経済の悪化が本格的に示されてから。市場の思惑先行ですでにドル安円高となっているが、米国経済の悪化が十分に織り込まれつつあり、それに実体が追いつくかどうか。その局面はなお年末以降来年に入ってからとなりそうだ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :106.59(▲0.75)
ユーロ :118.39(▲0.61)
英ポンド :129.637(▲0.58)
豪ドル :72.495(▲0.50)
カナダドル :80.698(▲0.55)
スイスフラン :108.445(+0.06)
ブラジルレアル :27.413(▲0.54)
中国人民元 :15.368(▲0.32)
韓国ウォン(日本円=100) :8.847(▲0.13)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1108(+0.002)
英ポンド :1.2162(+0.003)
豪ドル :0.6801(+0.000)
カナダドル :1.3207(▲0.001)
スイスフラン :0.9824(▲0.008)
ブラジルレアル :3.8886(+0.048)
中国人民元 :6.9405(+0.042)
韓国ウォン :1197.6(+9.05)

【主要国政策金利】
米国 :2.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.85(▲0.05)
米2年債 :1.71(▲0.02)
日本10年債利回り :▲0.16(▲0.03)
日本2年債利回り :▲0.16(+0.02)
独10年債利回り :▲0.50(▲0.05)
独2年債利回り :▲0.79(▲0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :26,485.01(▲98.41)
NASDAQ  :8,004.07(▲107.05)
S&P500 :2,932.05(▲21.51)
日経平均株価 :21,087.16(▲453.83)
ドイツ DAX :11,872.44(▲380.71)
インド センセックス :37,118.22(+99.90)
中国上海総合 :2,867.84(▲40.93)
ブラジル ボベスパ :102,673.70(+547.80)
英国FT250 :19,253.17(▲381.14)
ビットコイン :10399.38(▲12.59)

【主要商品価格】
WTI :55.66(+1.71)
Brent :61.89(+1.39)
米ガソリン :178.15(+3.16)
米灯油 :189.02(+3.73)

金 :1440.83(▲4.35)
銀 :16.20(▲0.13)
プラチナ :844.90(▲9.12)
パラジウム :1409.28(▲21.38)
銅 :5793.00(▲110:24C)
アルミニウム :1777.50(▲8:28.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :850.25(+3.25)
シカゴ とうもろこし :399.50(+6.75)
シカゴ小麦 :490.75(+15.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。