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米欧金融緩和の織り込みとリスク選好
  • MRA外国為替レポート

2019年7月29日号

◆先週の市場総括


先週はドルが週央から週末にかけて対ユーロ、対円で上昇した。ドル円相場は107円70銭近辺で始まり108円70銭に上昇して引け。

ユーロドル相場は1.1220近辺で始まり週末の引けは1.1130。ユーロ円相場は121円ちょうど近辺で始まり一時120円ちょうどに迫り下落したが、週末にかけて反発して121円近辺に戻して週初と同水準で引けた。

木曜日に開催されたECB理事会(金融政策決定会合)では政策金利は据え置きとなったが、2020年半ばまで現状かより低い水準に維持する、として追加利下げが示唆された。

明確な緩和スタンスが示されたことで欧米の長期金利は一時低下。ユーロは下落。ただ米国の経済指標が強かったことで米長期金利は週初に比べ上昇。ドルを支えた。

米国株は決算を受けてまちまちな値動き。長期金利の低下が一服したこともあり週末にかけて上値重く横ばい圏の値動きとなった。日経平均は21,400円近辺で始まり概ね堅調な展開で21,800円に上昇。ただ週末にかけては伸び悩み21,650円近辺で引けた。

月曜日の東京市場ではやや円安。ドル円相場は107円70銭台で始まった後上昇して108円を中心に上下。

ユーロ円相場は120円80銭~90銭で始まり上昇した121円ちょうど~10銭で上下した。ユーロドル相場は1.1220中心に方向感なく上下もみ合い。

日経平均は21,350円近辺で始まり350円~400円でもみ合い引けは21,400円。

海外市場では米国株が上昇。決算発表が佳境に入るなか、ハイテク・半導体関連の見通し引き上げでナスダックが大きく上昇した。米長期金利は横ばい、10年債利回りは2.05%。ドル円相場は107円90銭中心に方向感なく上下動のまま。

火曜日の東京市場のドル円相場は107円90銭で始まり底固い値動き。海外市場にかけて108円台に上昇し10銭~20銭でもみ合い。

アジア時間はドルが堅調。ユーロドル相場は1.1210から夕刻には1.1180へ下落。ユーロ円相場は120円90銭~121円ちょうど近辺でもみ合い。

日経平均は前日の米国株がハイテク中心に上昇したことを好感し、またドル高円安も支えとなり上昇。21,400円近辺で寄り付き21,600円近辺に上昇してもみ合い。後場は650円まで上昇し引けは21,620円。

海外市場では米国株が一部良好な決算を受けて続伸。米中通商交渉に関して来週にも閣僚級会合を開催と伝えられたことで、午後に上昇を拡大した。

米長期金利は小幅上昇し、2年債利回りは1.84%、10年債利回りは2.08%。為替市場ではユーロ安ドル高基調。ユーロドル相場は1.1150近辺に下落してもみ合い。ユーロ円相場は120円50銭に下落して引けは120円70銭。ドル円相場は堅調で108円20銭~30銭で引けた。

リッチモンド連銀製造業指数(7月)は▲12と前月3から大きく悪化。IMFは世界経済見通しを公表。世界全体の成長率は今年3.2%と4月時点の3.3%から0.1%ポイント下方修正。2020年は3.5%の見通しとしたが、その達成は心もとない、とダウンサイドリスクを示した。

水曜日の東京市場のドル円相場は108円20銭で始まりじり安。夕刻には108円ちょうど近辺。ユーロ円相場も120円60銭~70銭で始まりじり安。ユーロドル相場は1.1150で始まり40~60で上下。

日経平均は21,700円で小幅高寄りした後はもみ合い小動きでそのまま引け。海外市場に入ると欧州の弱い経済指標にユーロが下落。

欧州のPMI景況感指数(7月)はドイツの製造業が43.1と予想45.1、前月45.0を大きく下回った。欧州の長期金利が低下。ユーロ円相場は120円20銭近辺に一時下落した。

米国の長期金利も連れてやや低下。2年債利回りは1.82%、10年債利回りは2.05%。

米国のPMI景況感指数(7月)も製造業が50.0と景況感の分かれ目まで悪化した。米国株はまちまち。ハイテクは堅調でナスダックは上昇したが、一部決算が悪くダウは下落。ドルは堅調で、ドル円相場は108円20銭にじり高。ユーロ円相場は120円40銭~50銭でもみ合い。

木曜日のドル円相場は108円20銭で始まり10銭~20銭でもみ合い横ばい。ユーロドル相場は1.1130~40でもみ合い。ユーロ円相場は120円50銭で始まりじり安。欧州時間のECB理事会を前に様子見、動意に欠けながら、ややユーロが軟調。

日経平均は21,750円で小幅高寄りして750円~800円でもみ合い引けた。

発表されたドイツのIFO景況感指数(7月)は95.7と前月の97.4から悪化。ECB理事会では、従来2020年半ばまで政策金利を現状かより低い水準に維持する、として追加緩和を示唆した。インフレ目標についても、中期的に2%弱、としていた文言を削除。2%超を容認する「目標の対称性」にコミットするスタンスへ。量的緩和の拡大と利下げによる金融機関への副作用を検討するように指示された。

市場では9月の利下げを織り込む展開。欧州長期金利は低下。これを受けてユーロは下落。ユーロドル相場は1.1110へ、ユーロ円相場は120円ちょうどに迫る下落。

ただドラギ総裁が現時点で景気後退のリスクは少ないとしたことでユーロは下げ止まり。ユーロドル相場は1.1140~50。米国の長期金利も欧州に連れて低下して10年債利回りは一時2.02%に。

しかしその後発表された強い米国の耐久財受注の数字を受けて2.08%に急反発した。

耐久財受注(6月)は前月比+2.0%と予想を大きく上回る伸び。設備投資が失速するとの見方が後退し、利下げが予防的にとどまるとの見方が広がった。ドル円相場は上昇して108円70銭中心に上下。

ユーロ円相場も急速に持ち直し121円10銭~20銭で引け。米国株は米中摩擦の影響を受けた決算が重しとなり下落。ナスダックも史上最高値から下落した。

金曜日の東京市場の為替相場は小動き。ドル円相場は108円60銭~70銭近辺でもみ合い。ユーロはやや軟調で、ユーロドル相場は1.1150から1.1130へ、ユーロ円相場は121円10銭から121円ちょうど近辺へじり安。

日経平均は21,600円台後半で安寄りし軟調。21,600円台前半でもみ合い引けは21,650円。海外市場では米国株が反発。S&P500指数やナスダック指数は史上最高値を更新。NYダウは上値の重い展開。

発表された米国のGDP(4~6月)は前期比年率+2.1%と前期の+3.1%から減速したが予想+1.7%より強め。個人消費は前期比+4.3%と強い数字だった。

ただ米長期金利は横ばいで10年債利回りは2.07%。ドル円相場は108円70銭中心に小動き。ユーロドル相場は1.1130近辺、ユーロ円相場は120円90銭~121円ちょうどで引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FOMC(米連邦公開市場委員会)、パウエル議長会見

今週は注目のFOMCが火曜日・水曜日の2日間にわたり開催される。結果は日本時間木曜日未明3時に公表される。パウエル議長の会見は同3時30分。市場予想では0.25%の利下げが大勢。

景気認識と利下げスタンスの詳細はどうか。市場の利下げ期待は根強いものの、足元の景気は堅調であり予防的な利下げにとどまるとみられる。

そのあたり、パウエル議長が今後の利下げについてどのようなスタンスを示すか。市場の過剰な利下げ期待が後退するか。なおも維持されるか。9月の利下げを織り込む見方も多いが、それを示唆する発言がみられるか。

2.米国の経済指標

7月の利下げは概ね確定としても、経済指標の強さが続くなかでは大幅あるいは数字におよぶ利下げは見込みにくい。今週はFOMCを挟んで重要な経済指標が続く。

月曜日 ダラス連銀製造業活動指数(7月)

火曜日 個人所得・消費支出(6月)、ケースシラー住宅価格指数(5月)、消費者信頼感指数(7月)、中古住宅販売(6月)

水曜日 ADP雇用報告(7月、前月比雇用者数増減、予想+150千人、前月+102千人)、シカゴ購買部協会景気指数(7月)

木曜日 ISM製造業景気指数(7月、予想52.0、前月51.7)

金曜日 雇用統計(7月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+170千人、前月+224千人、平均時給・前年同月比、予想+3.2%、前月+3.1%)

3.日銀金融政策決定会合

米国でFOMCが開催される直前、月曜日・火曜日の2日間にわたり日銀金融政策決定会合が開催される。市場では米欧当局に比べて日銀の緩和スタンスが消極的ないし緩和手段が限られている、との見方が多く、それが円高を見込む要因の一部となっている。

FOMCを前にどの程度、追加緩和に前向きなスタンスを示すのか。ここからの追加緩和の具体的な手段はどのようなものとなるのか、検討はされるか。

◆今週のMRA's Eye


米欧金融緩和の織り込みとリスク選好

今週のFOMCでは利下げが0.25%にとどまることがほぼ確実な情勢。関心は次第にもう少し長い目でみたFRBのスタンスに移っていくことになりそうだ。

7月会合のその次の利下げはいつになるのか。利下げは合計でどれほどになるのか。現状9月にその次の利下げが実施されるとの見方が有力だが、果たしてそのタイミングで実施されるのか。

9月に実施されるとしても利下げ幅は0.25%が有力だが、合計0.50%の利下げが実施された後に、なおも追加利下げは見込まれるのか。9月の利下げ織り込みは容易には高まらず、また利下げ打ち止めの可能性を多少ながら織り込んでいくことになりそうだ。

FOMCの結果が示された後、今週末にかけて、ISM製造業景気指数や雇用統計など重要指標の発表が控える。短期的には、これらの指標が強かった場合には、追加利下げの織り込みが後退する可能性があろう。

米10年債利回りは現在2.0%~2.1%で推移しているが、米国独自の理由で長期金利が低下して2.0%を割り込む可能性は低い。

欧州では先週ECBが金融緩和に踏み込んだ姿勢を示した。追加利下げを明確に示唆して金融正常化を正式に断念。量的緩和の強化も検討するなど政策の180度転換を明らかにしている。

ただ欧州においても、すでにマイナス金利となっていることから、さらなる利下げには限界がある。金融機関への副作用を警戒し日本と同様に金利構造の階層化なども検討されている。こうした状況では欧州においても長期金利の低下は限定的となりそうだ。

景気悪化懸念・製造業の不振を背景に米欧の金融政策が緩和に傾くなか、日本経済にもダウンサイドリスクが増しており、日銀の金融政策も自ずと緩和バイアスに傾かざるをえない。

グローバルな金融緩和の流れ、当局が景気ダウンサイドリスクを共有して緩和バイアスに傾くなかでは、リスク選好、株価は支えられる。この面では円高になりにくい。

米欧の金融緩和期待に比べ日銀の緩和余地に限界がある、との見方はあるが、緩和の織り込み度合いという観点でみればすでに差はない。欧米において利下げは十分に織り込まれ利下げが実施されたとしても長期金利は低下余地が限られる。長期金利差縮小による円高が大きく進む可能性は小さい。

シカゴ通貨先物のポジションをみても、依然として若干の円ショート、円売り越しポジションとなっているが、ほぼ中立で、何らかのショック、リスク回避によるポジション手仕舞いによる円買い戻し、それによる円高リスクも限定的だ。

結果、ドル円相場はこの間107円台の底固さを確認した後、今後は108円~109円中心の値動きとなりそうだ。米国の利下げ実施後にドル安円高となるリスクは、想定外の雇用統計の悪化や株価の調整だが、可能性としては低い。

逆にドル高円安となるリスクは、ISMや雇用統計が強く、現状9月に期待されている追加利下げに疑念が生じるケース。その場合は109円台を試す可能性がある。

ただ本邦輸出企業によるドル売り円買いが待ち構えているため、ドル高円安が進むのは容易ではない。また景気不透明感が払しょくできないなかでは円安は限定的だ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.68(+0.05)
ユーロ :120.95(▲0.16)
英ポンド :134.595(▲0.75)
豪ドル :75.117(▲0.40)
カナダドル :82.559(+0.04)
スイスフラン :109.387(▲0.25)
ブラジルレアル :28.766(+0.02)
中国人民元 :15.797(+0.00)
韓国ウォン(日本円=100) :9.173(▲0.00)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1128(▲0.002)
英ポンド :1.2384(▲0.007)
豪ドル :0.6911(▲0.004)
カナダドル :1.3166(+0.000)
スイスフラン :0.9932(+0.002)
ブラジルレアル :3.7778(▲0.002)
中国人民元 :6.8805(+0.008)
韓国ウォン :1184.88(+3.45)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.07(▲0.01)
米2年債 :1.86(▲0.00)
日本10年債利回り :▲0.15(+0.00)
日本2年債利回り :▲0.15(+0.00)
独10年債利回り :▲0.38(▲0.01)
独2年債利回り :▲0.75(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :27,190.49(+49.51)
NASDAQ  :8,331.31(+92.77)
S&P500 :3,027.10(+23.43)
日経平均株価 :21,658.15(▲98.40)
ドイツ DAX :12,419.90(+57.80)
インド センセックス :37,882.79(+51.81)
中国上海総合 :2,944.54(+7.18)
ブラジル ボベスパ :103,000.20(+345.60)
英国FT250 :19,857.94(+37.59)
ビットコイン :9868.8(▲5.25)

【主要商品価格】
WTI :56.15(+0.13)
Brent :63.34(▲0.05)
米ガソリン :187.93(▲0.10)
米灯油 :190.62(▲0.81)

金 :1416.81(+2.23)
銀 :16.35(▲0.06)
プラチナ :864.55(▲2.49)
パラジウム :1531.48(+0.09)
銅 :5966.00(▲69:21C)
アルミニウム :1804.50(▲21:26.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :883.25(+0.75)
シカゴ とうもろこし :414.50(▲4.00)
シカゴ小麦 :496.00(▲3.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。