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統計悪化を受けた金融緩和観測で堅調
  • MRA商品市場レポート for PRO

2019年7月25日 第1578号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「統計悪化を受けた金融緩和観測で堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はエネルギーが米石油統計の製品出荷減少で下落したが、その他の商品は欧米統計の減速を受けた金利低下に伴う実質金利の低下や、それによる断続的なドル安進行で堅調だった。

【本日の価格見通し総括】

昨日発表された欧州の製造業PMIはドイツが43.1(市場予想45.2、前月 45.0)、ユーロ圏は46.4(47.7、47.6)と鈍化が確認された。

米中通商交渉が大きく材料として取り上げられているが、基本的には景気の循環的な減速によるものである(詳しくは、本日の「昨日の世界経済・市場のトピックス」をご参照ください)。

結果、金利が低下し、統計が悪いにも関わらずリスク資産価格が上昇する「金融相場入り」が意識される環境になりつつある。これまで以上に欧米中銀の政策動向が価格に与える影響が大きくなると予想される。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

一昨日だが、IMFが経済見通しを発表、2019年、2020年とも4月の見通しから下方修正された。想定しているよりも各国の経済活動が鈍化しており、これに米中通商戦争の影響が加わり、世界的に貿易取引が減速することが考慮されたためだ。

しかし2020年にかけては、1.金融市場心理の好転、2.ユーロ圏を中心に一時的なマイナス要因が解消される、3.アルゼンチン・トルコなどのストレスを抱える新興市場の安定化、4.イラン・ベネズエラなどの混乱回避、といった楽観を多く織り込み、2019前年比で改善する見通しとなっている。

毎度そうなのだが、IMFの経済見通しは特に景気減速局面で外れる傾向が強い。どうしても強気の見通しが発射台となり、実際の数字を後追いしていくという展開になりやすい。

これはメインのシナリオを描いている、アナリストの多くが欧米出身であることと無関係ではない(インフレや経済成長を強気に見すぎる傾向が強い)。

そうは言ってもリスクには目配せをしており、引き続き景気のリスクは下向きで、1.貿易面や技術面のサプライチェーンにおける混乱(関税や英国のEU離脱などの影響)、2.リスク選好の急激な後退、3.ディスインフレ圧力、4.気候変動・政治・紛争リスク、などをリスク要因として挙げていた。

自社でマクロ経済見通しを作成するセクションを持たないリサーチ会社や市場参加者の場合、IMFの見通しを元に商品需要見通しを作成することが多いため、この見通しの下方修正は価格下落につながりやすい。

ただ、原油と債券利回りの逆相関性が強まっていることを考えると、実体経済よりも金融政策に市場の目が移っている可能性が高く、年後半にかけては弱い統計が金融面でインフレ資産価格を支える傾向が強まると予想される。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標再びの減速(価格下落要因)。

・世界景気の減速観測。IMFは2019年の経済見通しを引き下げ(+3.5%→+3.3%)ており、米中対立の激化があった場合には▲0.5%程度の引き下げリスクも視野に入れている。リスク資産価格に対して下向きのリスク。

・FRBの利下げの可能性が再び高まる。米中協議の不透明感を背景にFRBは利下げ方向に舵を切っている。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q219の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.4%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・景気減速下での原油価格高止まりは、消費国から生産国への所得移転を通じて景気の下押し要因に。また、リスク回避のドル高進行も価格上昇を抑制。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・米中通商協議が再開で決定したが、通商協議そのものが合意をしたわけではなく、制裁は継続しており世界経済がさらに減速する場合(下落要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢の悪化を受けた域内景気の混乱と、それを受けた欧州景気への悪影響拡大(下落要因)

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。とりあえず10月末を期限として問題先送りしたが、メイ首相の後任が強硬派のジョンソン前外相である可能性が高く、ハードブレグジットの可能性が高まっている(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・米利下げ観測の高まりで長短金利逆転状況が解消し、金融株を中心に株が上昇、リスクテイク再開で景気循環系商品価格にプラスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油相場は下落した。米石油統計では原油在庫の減少があったものの、石油製品出荷の減少や経済統計の鈍化を受けて景気への懸念が強まったことが背景。

ただし、足元の市場はテクニカルに上値が重い状況が継続しており、徐々に金融相場入りを意識し始めていると考えられる。

【原油価格見通し】

原油価格はもみ合うものと考える。イランを巡る情勢は報道だけを見るに非常に悪化しており、ここまで加熱すると「どう落としてよいかもうよく分からない」状態にある一方、米中交渉が難航していることや中東情勢不安を背景とする景気への懸念の影響が大きく、価格を下押しするため。

テクニカルには一目均衡表の雲を下抜けしかかっていると指摘したが、昨日の下落でWTI・Brentとも雲を下抜けした。チャート的には来月の中頃まで頭の重い推移になりやすい。

イラン問題の終息は、イラン・米国とも自身から歩み寄って解決するとは考えにくく、第三者の仲介が必要と考えられる。恐らく欧州の仲介によって来年の米大統領選挙開始前までに問題が終息する、というのが「希望的観測を含めた」メインシナリオである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に上昇した。季節的な価格上昇と考えられるが、LNG余剰やエルニーニョ現象の影響でアジア地域の気温が低下していることが背景で軟調な推移が続いている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は欧州の気温上昇と、北半球の夏場を控えて上昇するとみているものの、アジア太平洋地区は気温が低下していることや、中国の電力会社の石炭在庫が記録的な高水準となっていること、欧州市場でのよりクリーンなエネルギーへのシフト、景気減速による電力需要の後退、中国の景況感の悪化を受け、上昇余地も限定されると考える。

中国の6大電力会社の石炭在庫は、同じ時期の過去5年レンジを大きく上抜けしており、国内需給は緩和している可能性が高い。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・原油価格の上昇に伴う北米の増産継続は、需給緩和で価格の下落要因。

・景気が減速する中での減産継続は、その効果が限定されはするものの、足元の価格下落を受けてOPECプラスの協調減産は2020年3月まで継続される見込みであり、一定の下支え効果をもたらす見込み。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・中国の石炭港湾在庫が減少傾向を強めていることは国内需要が季節的に増加していることを示唆(石炭)。

(特殊要因)

・米国とイランの関係はこの20年で最悪の状態。両国の国力を減ずる戦争のリスクは依然低いとみるが、現状では開戦の可能性も完全に否定できない状態。

・米朝首脳会談が電撃的に開催されたが、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

・米中情報戦争をめぐる華為技術排除の決定を受けて中国政府は豪州からの石炭輸入を規制、インドネシア炭にシフトしていることはNEWC価格の下落要因に(石炭CIF価格に対する影響は中立)。

(投機・投資要因)

・WTI・Brentともロングが増加。欧米中央銀行の金融緩和姿勢の強化で景気への楽観的な見方が広がっていることが背景。WTIはショートが増加、Brentはイラン情勢の悪化で減少している。

・直近の投機筋のポジションは、WTIはロングが545,484枚(前週比 +39,788枚)、ショートが121,722枚(+6,175枚)、ネットロングは423,762枚(+33,613枚)、Brentが341,220枚(前週比+22,202枚)、ショートが60,800枚(▲14,075枚)、ネットロングは280,420枚(+36,277枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は上昇した。欧州の経済統計や米国の経済統計はさえない内容だったが、それを受けて金利が低下し、実質金利が低下したことが投機の買戻しを誘ったためと考えられる。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は現状水準でもみ合うものと考える。中国の経済対策の効果が顕在化し始めているとみられること、FRBの利下げが▲25bpに留まるとみられることといった強弱材料が混在するため。

足元の価格上昇は金融相場入りが意識される中で、投機の買戻しが進んでいるためと考えられる。

再び持続的な上昇に転じるのは、中国の公共投資が顕在化する年後半か、インド需要が顕在化すると期待される2020年の春以降と見る。

なお、ニッケルに関してはインドネシアの未処理鉱石輸出制限再開の可能性が高まっており、その政策動向次第だが実行されるのであれば16,000ドルを目指す動きになるだろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは低調で、新規受注/完成品在庫レシオ、新規受注/原材料在庫レシオとも低下、需給環境が緩和していることを示唆。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は再開しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCも高止まり。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・銅の生産減少観測(環境問題によるインド、露天掘りから地下生産に変更するインドネシア)、ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響による供給減少(アルミやニッケルなどに波及する可能性)。

ハイドロのアルノルテ アルミナ精錬所の問題に象徴されるように、広く非鉄金属を含む鉱物セクターは、環境問題への高まりから供給が政府命令で急に停止してしまう可能性は低くない。

インドネシアのニッケル未処理鉱石輸出再開の可能性(実際に行われれば上昇要因に)。

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・7月12日付のLMEポジションは、利下げ観測でロングが増加、ショートの買戻しも進んだ。

投機筋のLME+CME銅ネット売り越し金額は▲67.1億ドル(前週▲67.4億ドル)と売り越し幅を小幅縮小。売り越し額の減少率は+0.5%に。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,561千トン(前週▲1,702千トン)と売り越し幅を縮小。亜鉛と錫以外はトン数ベースでネット売り越しのまま。ネット売り越しの減少率は▲8.3%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ市場は小幅下落、原料炭スワップ先物は変わらず、中国鉄鋼製品市場は小幅に下落した。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国政府の経済対策の効果が顕在化しつつあることや、ヴァーレの生産が完全に回復していないこと、リオの減産見通しといった供給面が意識されて高止まりすると考える。

ただし、米中通商協議は引き続き難航しており、価格面の下振れリスク要因との整理。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは48.2(前月50.0)と減速。新規受注が国内外とも低迷しており(新規受注 47.9(46.7)、輸出新規受注 40.7(45.9))、生産も49.1(56.0)閾値の50を下回った。

ただし、在庫は完成品が39.3(38.3)、原材料在庫が43.5(45.1)と低水準であることは事実であり、需要顕在化時(中国の公共投資など)に鉄鋼製品価格が急騰する可能性も。

・中国の鉄鋼製品在庫水準の高さは価格の下落要因。鉄鋼製品在庫は前週比+31.5万トンの1,258.9万トン(過去5年平均1,039.9万トン)と例年を大きく上回っている。

中国の鉄鉱石在庫水準の高さは徐々に低下し、価格の下支え要因となる可能性。鉄鉱石在庫は前週比+300万トンの1億1,835万トン(過去5年平均1億1,948.6万トン)、在庫日数は+0.6日の24.5日(過去5年平均 30.2日)と例年の水準を下回った状態が続いている。

・季節的に鉄鋼製品在庫の取り崩し時期であり、価格には下押し圧力がかかりやすい。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

・ヴァーレ、リオ・ティントの生産目標引き下げによる供給減速。

(特殊要因)

・中国政府がシャドーバンキングを含む、違法な資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは価格の上昇要因。

・ヴァーレの尾鉱ダム決壊の影響が拡大し、さらに供給減少が起きた場合(自社・他社ともにあり得る)、価格の上昇要因に。

ヴァーレの尾鉱ダム事故の影響で、今後、低品位鉱石価格にも上昇圧力がかかる公算。

(投機・投資要因)

・供給懸念などを通じて大連取引所は建玉を積み増しながら、価格を切り上げており、先々の下落リスクは高まっている状況。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金銀価格は上昇した。欧米統計の悪化を受けて金利が低下、実質金利が低下したこと、ドル安が進行したことが価格を押し上げた。

銀は金価格の上昇を受けて上昇。金銀在庫レシオがジリジリ低下していることが金以上に価格を押し上げている。

PGMは金銀価格が上昇したことを受けて堅調に推移。株価の上昇もあって水準を大きく切り上げた。

【貴金属価格見通し】

金価格は高値圏でもみ合うものと考える。米国の過剰な利下げ観測が後退したがこれは週末で織り込み済みであるが、緩和姿勢は維持されていること、米中交渉への楽観が後退したことや、緩和するとの期待があったイランと米国の関係が再び悪化していることが材料。

足元、中東関連のニュース、米FOMCの動向をにらみ非常に神経質な推移となっている。

イタリアの財政問題や英国のEU離脱がハードになる可能性が高いこと、それを受けて再びスコットランドの独立話が持ち上がっていることなど、欧州不安が払しょくされていないことから一定の安全資産需要は継続するため、総じて堅調な推移になるだろう。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)の上昇が金銀レシオを押し上げているため対金で割安に推移。

銀が通貨としての側面を持っていた頃の金銀レシオに戻る可能性は低下している。ただし、足元金銀在庫レシオが低下しているため、銀は修正的に上昇する可能性が出てきた。

PGM価格は金銀価格が高値圏でもみ合うことから同様にもみ合うと考える。ただし、供給面の影響で需給がタイトなパラジウムは引き続き堅調な推移になると予想する。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRB・ECBの金融緩和期待が高まっており、7月のFOMCでの▲25bpの利下げは織り込んだ(金ベースで25ドル程度の上昇要因)。

しかし、逆に利下げ期待が高まりすぎているため、期待と金融当局の判断の乖離から、7月FOMCで下落に転じる可能性も。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や米中貿易戦争の合意、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト期待(パラジウムの上昇要因・プラチナの下落要因)。ただし実際にシフトが起きるには相当の時間がかかる見込み。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

(特殊要因)

・米中通商交渉は一旦追加関税引き上げなどが先送りになったが、基本的に難航している。知的財産権や技術の強制移転などの重要なポイントで妥結できておらず、長期化の見込み(価格の下支え要因)。

・米国とイランの緊張は一時的に低下している。しかし、開戦の可能性がなくなったわけではなく、対立が継続する以上は安全資産需要を高める。

・米国の債務上限問題の顕在化(8月~9月にデフォルトするリスク)。

・欧州議会選でのポピュリズム政党の躍進。それに伴うEU懐疑論の高まりによる域内の政情不安定化。

・英国のEU離脱がハードになる可能性があること、それに伴いスコットランドの独立話が再燃していること、それがスペインのカタルーニャ地方に波及する懸念があることは安全資産需要を高める。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・銀価格は金銀在庫レシオが銀在庫の減少、ないしは金在庫の増加、あるいは両要因によって低下した場合、金銀レシオが上昇するリスク(銀価格の上昇要因)。

・金銀はロングが増加、ショートが減少した。利下げ観測の強まりが背景。ただし過剰な利下げ期待が後退したことからこれらのポジションの巻き戻しが予想される。

・プラチナのポジションはロングが増加、ショートが減少。パラジウムはロングが減少、ショートが増加。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが309,535枚(前週比 +3,430枚)、ショートが64,034枚(+2,692枚)、ネットロングは245,501枚(+738枚)、銀が100,449枚(+4,369枚)、ショートが63,024枚(▲7,905枚)、ネットロングは37,425枚(+12,274枚)

・直近の投機筋のポジションは、プラチナはロングが45,373枚(前週比 +207枚)、ショートが29,781枚(▲8,692枚)、ネットロングは15,592枚(+8,899枚)、パラジウムが17,662枚(▲386枚)、ショートが5,227枚(+75枚)、ネットロングは12,435枚(▲461枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は高安まちまち、米中通商協議の再開がシカゴ需給観測をタイト化させていることが価格を押し上げたが、トウモロコシに関しては、小麦売り・トウモロコシ買いのスプレッド取引解消圧力が強まったことが指摘されている。

【穀物価格見通し】

穀物価格は当面、天候状況が価格を左右する展開となり、神経質な推移が続くと予想するが、生産地の状況改善で下落しやすい地合い。

しかし、基本的には北米の作付け状況が不良であること(トウモロコシ、大豆とも、生育状況に遅れ、作況も過去5年の最低水準をはるかに下回る)や、欧州の気温上昇による不作への懸念、FRBの利下げ期待の高まりがドル安を進行させることから、総じて下値は堅かろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・米国のトウモロコシ・大豆の生産減少観測による需給タイト化観測。

・豪州東部の大干ばつによる小麦生産の減少懸念。

・欧州・ロシアの気温上昇に伴う小麦生産の減少懸念。

・最終確定作付け面積動向(トウモロコシは増加、大豆は減少、小麦は横ばい)トウモロコシ 9,170万エーカー(市場予想8,703万エーカー、前年8,913万エーカー)大豆 8,004万エーカー(8,468万エーカー、8,920万エーカー)小麦 4,561万エーカー(4,561万エーカー、4,780万エーカー)

・7月の米需給報告の生産見通し

トウモロコシ138億7,500万Bu(前月136億8,000万Bu)大豆 38億4,500万Bu(41億5,000万Bu)小麦 19億2,100万Bu(19億300万Bu)

・7月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ20億100万Bu(前月16億7,500万Bu)大豆 7億9,500万Bu(10億4,500万Bu)小麦 10億Bu(10億7,200万Bu)

・米緩和観測に伴う実質金利の低下に伴うドル安の進行は、シカゴ穀物の輸出競争力を改善し、需給面で価格の上昇要因に。

(特殊要因)

・米中通商交渉は交渉再開で合意したが、覇権争いであり長期化の可能性は高い(価格の下落要因)。

・米政府はブッシェル当たり大豆2ドル、トウモロコシ0.04ドル、小麦0.63ドルの補助金を供給することを検討。生産減少を食い止めるため価格の下落要因に。

・エルニーニョ現象発生による北米の増産は基本的には価格の下落要因だが、今年は洪水が発生しており、夏場の気温上昇や乾燥といった育成環境の悪化の可能性はあり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

(投機・投資要因)

・トウモロコシはロングが減少、ショートも減少でネット買い越し幅を拡大。大豆はロング増加、ショートはトウモロコシと同様減少している。小麦はロングが減少し、買い越し幅を縮小した。

・直近の投機筋のポジションは、トウモロコシはロングが469,025枚(前週比 ▲532枚)、ショートが150,804枚(▲15,547枚)、ネットロングは318,221枚(+15,015枚)、大豆はロングが140,908枚(+2,230枚)、ショートが135,724枚(▲4,192枚)、ネットロングは5,184枚(+6,422枚)、小麦はロングが120,683枚(▲6,013枚)、ショートが92,714枚(+98枚)、ネットロングは27,969枚(▲6,111枚)

◆本日のMRA's Eye


「小さくないジョンソン首相誕生の影響」

英国でボリス・ジョンソン首相が誕生した。大言壮語のほら吹き、との評判だが国民の認知度は高く、ファンも多い。いろいろな報道を見るに、有権者に何をすれば好まれるかを察知する能力が、他の英国の政治家と比べてズバ抜けて長けているようだ。

キャメロン首相が英国のEU離脱投票の実施を決定した初期は、実はジョンソン首相はEU残留派だった。その理由は「EUはすぐ近くに市場であり、英企業はもっと開発することができる。しかしこうしたアクセスが良いわりに会費は安い。なぜそこまで頑固に離脱したがるのか」と発言していた。

ところが突如、EU離脱支持、むしろ強硬派に転じる。その理由は、「EUは公共政策のほとんどすべての領域に進出しており、ゆっくりと法的植民地支配が進んでいる」と、凡そ今までの発言とは整合性が取れない主張でその主義を変えている。

上述の通り、有権者の反応を見るに敏であり、残念ながら首相になるという目的のためにEU離脱が使われた、といっても言い過ぎではないように見える。言葉を変えると、第一目的のためには主義主張にはこだわらない、ともいえる。

となると、仮に英国民がEU離脱を望まないのであれば、方針を変更してEU残留を目指す可能性もある。しかしここまで強くEU離脱条件の見直し、それをEUが飲まなければ強硬離脱と主張してきたことを考えると、その可能性は低い。

今後のスケジュールを確認すると、10月17・18日にEU首脳会議が予定されており、その後10月31日が離脱期限だ。これまでにメイ首相がEUと合意した合意案を下院で可決できなければ、合意なし離脱が確定する。

恐らく合意なき離脱となった場合、現実的には「移行期間」が設けられ、それまでは今までと同じといったような激変緩和措置が採られる、と考えられるもののそれもあくまで期待の範囲だ。

在英企業の6割ほどは英国のEU強硬離脱への準備が終わっていないとされ、実際のビジネスフローに大きな影響が出ることは間違いがない上、英国で決済されている金融取引の大陸欧州への移管がスムースに進むとは思えない。

恐らく英中銀とECBは協力して市場の混乱回避に努めるだろうが、何が起きるか分からない状態であることから、合意なき離脱の場合多くのリスク資産価格が下落する可能性は高いと予想される。

混乱を回避するために期限を再度延長した場合、総選挙や国民投票の再度実施、といった選択が考えられるがジョンソン首相は以前から総選挙や国民投票の再度実施には強く反対しており、このシナリオの可能性は低い。

また、場合によるとジョンソン首相のスタンスに反旗を翻す保守党議員も多く、仮に野党労働党がジョンソン首相の不信任案を提出した場合、可決に投票する議員も出てくるだろう、そうなると再び首相不在の状態になり英国が混乱する可能性が高い。

メイ首相は確かに努力したが、ほとんど同じ案を下院に提出し続け、総選挙では議席を落とすなどの失敗もあり、首相交代は必須ではあったが、本当にボリス・ジョンソンでよかったかどうかの答えは、後3ヵ月ほどで答えが出ることになるだろう。

◆主要ニュース


・6月日本全国スーパー売上高 前年比 ▲0.5%の1兆26億円(前月▲0.7%の1兆228億円)

・6月日本全国百貨店売上高 前年比▲0.9%の4,790億円(前月▲0.8%の4,443億円)
 東京都区部百貨店売上高▲1.3%の1,388億円(▲1.6%の1,228億円)

・6月日本工作機械受注改定 前年比▲37.9%の989億円(前月▲27.3%の1,085億円)
 外需 ▲36.4%の612億円(▲23.8%の658億円)

・6月日本製造業PMI速報 49.6(前月改定 49.3)、サービス業 52.3(前月51.9)、コンポジット 51.2(50.8)

・7月ユーロ圏消費者信頼感速報 ▲6.6(前月改定 ▲7.2)

・7月独製造業PMI速報 43.1(前月改定 45.0)、サービス業 55.4(55.8)、コンポジット 51.4(52.6)

・7月ユーロ圏製造業PMI速報 46.4(前月改定 47.6)、サービス業 53.3(53.6)、コンポジット 51.5(52.2)

・6月ユーロ圏マネーサプライM3 前年比+4.5%(前月改定+4.8%)

・7月リッチモンド連銀製造業指数 ▲12(前月2)
 出荷 ▲13(5)
 新規受注 ▲18(▲2)
 受注残 ▲26(▲3)
 雇用者数 ▲3(4)
 賃金 20(25)

・6月米中古住宅販売 前月比▲1.7%の527万戸(前月+2.5%の534万戸)

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 ▲1.9%(前週▲1.1%)
 購入指数▲1.6%(▲3.8%)
 借換指数▲2.1%(+1.5%)
 固定金利30年 4.08%(4.12%)、15年 3.45%(3.48%)

・7月米製造業PMI速報 50.0(前月改定 50.6)、サービス業 52.2(51.5)、コンポジット 51.6(51.5)

・6月米新築住宅販売件数 前月比+7.0%の64.6万戸(前月改定▲8.2%の60.4万戸)


・2019年7月 IMF世界経済成長見通し
 2019年 +3.2%(前回調査時比▲0.1%)、2020年+3.5%(▲0.1%)
 OECD諸国 +1.9%(+0.1%)、+1.7%(±0.0%)
 米国 +2.6%(+0.3%)、+1.9%(±0.0%)
 ユーロ圏 +1.3%(±0.0%)、+1.6%(+0.1%)
 日本 +0.9%(▲0.1%)、+0.4%(▲0.1%)

 非OECD諸国 +4.1%(▲0.3%)、+4.7%(▲0.1%)
 中国 +6.2%(▲0.1%)、+6.0%(▲0.1%)
 インド +7.0%(▲0.3%)、+7.2%(▲0.3%)
 ブラジル +0.8%(▲1.3%)、+2.4%(▲0.1%)
 ロシア +1.2%(▲0.4%)、+1.9%(+0.2%)
 ブラジル +0.8%(▲1.3%)、+2.4%(▲0.1%)
 サウジアラビア +1.9%(+0.1%)、+3.0%(+0.9%)
 ナイジェリア +2.3%(+0.2%)、+2.6%(+0.1%)
 南アフリカ +0.7%(▲0.5%)、+1.1%(▲0.4%)


・中国国防白書、「尖閣諸島は中国の領土。台湾統一に武力行使を放棄しない。米国の単独主義は世界の安定を損ねている。日本は軍事力を増強している。」

・米中閣僚級協議、29日から上海で開催。

・北朝鮮、単距離弾道ミサイルを発射。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計
 原油▲10.8MB(クッシング▲0.4MB)
 ガソリン▲0.2MB
 ディスティレート+0.6MB
 稼働率▲1.3%

 原油・石油製品輸出 7,829KBD(前週比▲345KBD)
 原油輸出 2,966KBD(▲120KBD)
 ガソリン輸出 610KBD(▲95KBD)
 ディスティレート輸出 1,237KBD(▲187KBD)
 レジデュアル輸出 92KBD(±0KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,151KBD(+21KBD)
 その他石油製品輸出 1,590KBD(+31KBD)


・イラン、28日に欧州の核合意当事国と緊急会合実施。

・イラン ハメネイ師、「米国といかなる状況でも交渉はせず、米国が先頭に突入するなら地域にあるすべての米軍基地が攻撃対象となる。」

【メタル】
・Vale、2019年の生産見通しをブラジルの生産減少で21万~22万トンに引き下げ。

・Q219Antofagasta
 銅年初来生産 前年比+22.2%の387.3千トン(前期まで+22.6%の188.6千トン、前年317.0千トン)
 金生産+107.1%の149.1千オンス(+92.6%の62.2千オンス、72.0千オンス)
 2019年の銅生産計画 75万トン~79万トン(前期75万トン~79万トン)

・Q219 Norsk Hydro
 ボーキサイト生産 前年比+20%の1,624千トン(前期▲41%の1,361千トン、前年1,348千トン)
 アルミナ生産 +12%の932千トン(▲37%の805千トン、829千トン)
 プライマリアルミ生産 ▲1%の486千トン(▲6%の485千トン、492千トン)

※Alunorteの停止の影響が継続。

・Q219 Freeport
 銅生産776千ポンド(前年835千ポンド)
 鉱山生産+輸送コスト 4,781ドル(4,362ドル、3,679ドル)
 ユニットキャッシュコスト 1.92ドル/ポンド(0.96ドル)
 金生産 130千オンス(676千オンス)
 CAPEX 629百万ドル(482百万ドル)

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CME木材 ( その他農産品 )/ +3.25%/ +3.31%
2.プラチナ ( 貴金属 )/ +2.48%/ +10.28%
3.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ +2.36%/ ▲16.98%
4.CBT小麦 ( 穀物 )/ +2.16%/ ▲1.09%
5.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ +2.14%/ +36.50%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲6.53%/ ▲54.74%
69.ビットコイン ( その他 )/ ▲4.69%/ +163.23%
68.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲3.48%/ ▲24.49%
67.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲2.08%/ +17.91%
66.NYM WTI ( エネルギー )/ ▲1.57%/ +23.06%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :27,269.97(▲79.22)
S&P500 :3,019.56(+14.09)
日経平均株価 :21,709.57(+88.69)
ドル円 :108.19(▲0.04)
ユーロ円 :120.52(▲0.17)
米10年債利回り :2.04(▲0.04)
独10年債利回り :▲0.38(▲0.02)
日10年債利回り :▲0.15(▲0.01)
中国10年債利回り :3.16(+0.01)
ビットコイン :9,671.71(▲476.22)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :26.55(▲0.07)
エネルギー :31.01(▲0.73)
ベースメタル :20.55(+0.18)
貴金属 :18.72(+0.33)
穀物 :22.72(+0)
その他農畜産品 :31.09(▲0.05)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :33.42(+0.42)
Brent :30.98(▲1.03)
米天然ガス :40.63(▲3.02)
米ガソリン :33.07(▲0.28)
ICEガスオイル :23.10(▲0.4)
LME銅 :15.35(▲0.04)
LMEアルミニウム :11.78(▲1.15)
金 :18.12(+0.08)
プラチナ :20.16(+1.5)
トウモロコシ :32.40(▲0.03)
大豆 :18.12(+0.08)

【エネルギー】
WTI :55.88(▲0.89)
Brent :63.18(▲0.65)
Oman :62.88(▲0.42)
米ガソリン :185.51(▲0.54)
米灯油 :190.87(▲1.30)
ICEガスオイル :592.50(+7.50)
米天然ガス :2.22(▲0.08)
英天然ガス :27.64(▲1.93)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :63.18(▲0.65)
SPO380cst :390.93(+2.81)
SPOケロシン :77.56(▲1.10)
SPOガスオイル :77.49(▲0.97)
ICE ガスオイル :79.53(+1.01)
NYMEX灯油 :191.72(▲0.53)

【貴金属】
金 :1425.86(+8.03)
銀 :16.60(+0.20)
プラチナ :877.44(+21.27)
パラジウム :1540.58(+16.11)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,001(+2:21C)
亜鉛 :2,458(+38:1.5C)
鉛 :2,063(+38:5.5B)
アルミニウム :1,827(+6:31.5C)
ニッケル :14,480(+130:5C)
錫 :17,625(▲10:25B)
コバルト :27,695(▲4)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5999.00(+15.00)
亜鉛 :2454.50(+9.00)
鉛 :2076.00(+41.00)
アルミニウム :1824.50(+3.50)
ニッケル :14530.00(+305.00)
錫 :17935.00(+235.00)
バルチック海運指数 :2,165.00(▲26.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :119.58(▲0.15)
NYMEX鉄鉱石 :120.25(▲0.17)
NYMEX原料炭スワップ先物 :183(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :4,031(▲6)
上海鉄筋中心限月 :3,901(▲48)
米鉄スクラップ :292(±0.0)

【農産物】
大豆 :891.00(+5.25)
シカゴ大豆ミール :306.30(▲0.10)
シカゴ大豆油 :28.30(+0.29)
マレーシア パーム油 :1947.00(+15.00)
シカゴ とうもろこし :424.00(▲1.50)
シカゴ小麦 :497.75(+10.50)
シンガポールゴム :173.00(+0.30)
上海ゴム :10555.00(▲105.00)
砂糖 :12.06(+0.08)
アラビカ :101.00(▲1.30)
ロブスタ :1326.00(▲11.00)
綿花 :63.89(+0.60)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :86.55(+0.38)
シカゴ生牛 :108.90(▲0.15)
シカゴ飼育牛 :142.83(+0.63)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。