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米国の政策変更観測で工業金属高・エネルギー安
  • MRA商品市場レポート for PRO

2018年11月5日 第1430号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米国の政策変更観測で工業金属高・エネルギー安」

昨日の商品価格はここまで上昇してきた非景気循環銘柄とエネルギーが売られ、景気循環銘柄(鉱物資源セクター)が買われる展開となった。

11月の中間選挙や年末のG20を控え、政治的に「景気の先行きへの懸念を緩和させる動き」がみられたことで総じて景気循環系商品に買戻しが入る展開となった。

週末は大きなニュースが流れた。1.トランプ大統領が習近平国家主席と電話で対談、米中貿易合意の草案作成の指示があった、2.イランに対する制裁が今月5日から始まるが一部の国に制裁開始期限の延長を適用する、と報じられたのである。

1.2.とも明らかに米中間選挙での支持率向上を狙ったものであると考えられる。正直、選挙前の支持率アンケートはほとんど意味がないが、リアル・クリア・ポリティクスなどの調査ではトランプ政権の支持率は直近、42.7%まで上昇している。選挙を控えてダメを押しに来た形だ。

1.については雇用関連統計は良好なものの、景気に先行するISM製造業指数などの統計に減速感がみられており、これに配慮したものと考えられる恐らくこれだけでも株価は一時的に浮揚することになるだろう。

しかし、恐らく今回の米国の中国に対する制裁強化決定は、トランプ大統領のワガママというよりは、共和党・民主党のほぼ合意に近い制裁とみられるため、むしろ「緩和しよう」と言い出したほうがトランプ大統領の議会に対するワガママ、と見たほうが正確かもしれない。

本当のところは分からないが、中国に対する制裁は議会主導の制裁とみられ、知的財産や技術の強制移転を全く止めず、「経済制裁による実利」をほとんど得られていないため今回、解除があるならばナンセンスと言わざるを得ない。

(ひょっとすると米中首脳の間で「すみません、米国の言うことを聞きます」と習近平が折れた...のかもしれないが、それは当人同士しかわからないので下衆の勘繰りだ)。

2.についてはトランプ政権も想定外だったと考えられる。もちろん、日本や欧州などの同盟国が制裁見送りを政治的に要請してきたわけだが、それ以上にサウジアラビアのムハンマド皇太子に対する国際社会の信頼感が低下しており、サウジアラビアに対して制裁(恐らくやったとしても武器売却を一時見送り程度と思われるが)を課した場合の、「深刻な供給不足」に対応せざるを得なくなったためと考えられる。

弊社の試算でも、日韓欧の禁輸でとどまれば、もちろん有事の際のバッファはほとんどなくなるがサウジとUAEの余剰生産能力で代替が可能だった。しかし中東の一大産油国2国を相手取って戦うには、原油価格・石油製品価格の高騰という「しっぺ返し」が待っているため、米政権・共和党議会も配慮せざるを得なくなったということと考えられる。

ただし、180日間という期限を設けて問題を先送りしているため、この間、サウジが米国や世界に対して納得できる説明をできるかどうかが制裁が予定通り行われるかどうかのポイントとなる。

とはいえ、どの国に対して制裁免除があるかは明らかにされていないが、一部の国は11月5日から禁輸措置を発動するため、多少なりとも原油価格にとってはプラスに作用することになるだろう。

週明け月曜日は終末の米中合意期待、イラン制裁一部延期を受けて株高・原油安・工業金属高、の流れになると予想されるがそれでも市場は6日の選挙結果を見たいとする向きが多いと考えられるため、方向感が出難い展開になると予想する。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

昨日の原油価格はもみ合った結果、下落した。米国と中国が貿易面で合意に至るのではないか、との報道、米国がイランに対する禁輸措置開始を、一部の国や地域に対してしばらく免除する、と決定したことが強弱材料となった。

弊社は12月のOPEC総会では、OPEC諸国は足並みをそろえて減産を解除(除くイラン)すると見ているが、ここにきてサウジアラビアの立場が微妙になってきていること、またその中でのイランの立ち位置を考えると、足並みをそろえた減産解除があるかは微妙になってきた。

しかしその前に、イランに対する制裁延期は、同盟国からの要請があったことも判断材料になったと考えられるが、それ以上に大きいのはサウジアラビア・ムハンマド皇太子のジャーナリスト殺害疑惑だろう。

仮にムハンマド皇太子が関与しているような証拠が出てきた場合、米国はサウジに対して制裁をせざるを得なくなる、この場合、サウジとイランの2つの産油国と対峙しなければならず、原油価格高騰(=石油製品価格上昇で国民の不満上昇、支持率低下)という「しっぺ返し」を食らいかねない。

となると、疑惑が晴れていないサウジよりも、「同盟国から強い要請があったので仕方なく」という形が取れる、イラン制裁緩和に傾いてもおかしくはない。

そもそも弊社は、選挙終了後にフランスあたりの支援で米国とイランが交渉し、核放棄とともに制裁が緩和される展開をメインシナリオ賭していたためこの制裁緩和はあまり違和感がないのだが、制裁緩和の要因がまさかサウジの失点でもたらされるとは思っていなかった。

なお、サウジのジャーナリスト殺害に関する証拠をトルコは多数もっていると考えられるが、トルコはムハンマド皇太子の更迭を狙っているものと考えられる。この場合、恐らく前皇太子のナエフ皇子が皇太子に就任するだろう。

サウジの今後のシナリオとしては、1.ムハンマド皇太子への王位継承を急ぎ、より独裁的な色彩が強まる、2.ムハンマド皇太子が更迭され、ほかの皇子が王位を継承、従来通りの王族の合意制に体制が戻る、の大きく2つが考えられる。

1.の場合、周辺諸国との軋轢、とくにイランやトルコとの対立は深くなり中東情勢不安が原油価格を押し上げる構図がより強まると予想される。

2.の場合、ムハンマド皇太子の改革に対する期待を高めていた若年層が従来の体制に戻ることを嫌気して反発、国内が混乱する、といった展開が想定される。

結局、最も影響が小さいのが「ほかの人がやりました、皇子は関係ありません、皆さん納得してください」と有耶無耶にするケースだが、トルコが決定的な証拠を握っているとされる中ではこのようにすんなり行くとは思えない。

イラン以上にサウジアラビアのリスクを意識しなければならない状況になってきたといえる。

しかし、需給面の材料を整理すると価格には下向きバイアスがかかりやすい。そもそも景気が循環的に減速する可能性が高い中で米国の利上げが持続する見通しである上、米国発の中国制裁、同盟国への保護主義政策の拡大が景気を下押しすることになる。

中国に対する制裁は、米国の選挙の結果に関わらず長期化する可能性がある。先日のペンス副大統領の講演でのスピーチは、明確に経済面で中国に宣戦布告しているのと同じである。これはトランプ政権というよりも、議会共和党の意向と考えたほうが良い。

米国が中国と貿易で合意するとの報道があったが、選挙前のリップサービスであり、実際に合意するのは容易ではないだろう。というのも一連の制裁で米国は中国から、まだ何も得ていないからだ。

ではいつまで制裁が続くかといえば、具体的には、中国の景気拡大が失速して米国と覇権を争えるような状態になくなる、中国が世界シェアを取りに行こうとしているハイテク分野の内製化をあきらめる、人民元高を許容する(バブル崩壊時の日本と同じ)、といった明確な成果があるまで継続するのではないか。

ただし、利上げを継続する中で米国景気が失速し、国民からの不満が高まる可能性がある2019年末頃が、翌年に大統領選挙を控える「トランプ政権のリミット」と考えられ、制裁は継続しつつも来年春頃までに一部制裁が緩和されるのがメインシナリオだ。

なお、過去の可処分所得とエネルギー消費額の関係を分析してみると、WTIは107ドル程度までの上昇が許容できるため、まだ米政府には「ゆとり」があるともいえる(詳しくは2018年6月4日付MRA's Eye「米国の石油製品購買力」を参照ください)。

トランプ大統領弾劾裁判の可能性が高まっていたが、引き続き米国内では「トランプ礼賛本」がベストセラーの状態であり、「ウォーターゲート事件の再来」はなさそうというのがメインシナリオになりつつある。日本で報じられているほど、米国人はトランプのことを嫌いではない。

また、「より与し難い」ペンスが大統領になるよりは、トランプのほうが良い、と民主党側も判断している可能性があり、弾劾にまでは至らないのではないかとの見方もある。

なお、対中東政策は、大統領が続投しようが、トランプ大統領が辞めてペンス副大統領になろうが、変わらないと見る。ペンス副大統領は敬虔なキリスト教福音派であり、トランプ大統領よりもより強力にイスラエルを支持するだろう。

イラン問題の今後の展開は複数考えられるが、今のところ180日は制裁の100%履行が延期された。

最もあり得そうなのが、中間選挙で共和党が勝利し、イランとの緊張緩和に動く(ユダヤ人票を意識する必要がなくなる場合。供給懸念緩和で原油価格の下落要因。ただしさらに苛烈になる可能性もある)、民主党が上下院とも過半数を確保しイラン制裁を緩和する場合(核協議再開による供給懸念緩和で原油価格の下落要因)、共和党勝利で「支持を得た」としてイランに対してさらに強硬な姿勢を取る(供給懸念がさらに強まり価格の上昇要因)あたりが想定される。

しかし、それまでは原油価格は供給を材料に高い水準を維持する可能性が高い。イランの原油供給が途絶すれば、それだけでOPECスペアキャパシティは「ゼロ」の状態になり、原油が100ドルを超える上昇になってもおかしくない。

仮に70ドル~80ドルの原油価格が続けば、景気の循環的な減速局面での原油価格高騰であるため、米国の増産とOPECの減産幅縮小(おそらく12月には解除される)と相まって、その後、大幅な価格下落がもたらされると予想する。

11月が相場の転換点になる可能性が高まっていると考えているが、需要の減速が明確ではない以上、少なくともWTIで50ドル、Brentで60ドルを割り込むのは難しくなったと考える。

北朝鮮問題はトランプ大統領からすればある意味「終わった材料(支持率上昇につながらない材料)」だった。

しかし、北朝鮮は核開発を停止しておらず、ICBMの開発も継続しているようだ。結局この問題が再び俎上に載せられることになるだろう。米朝首脳会談を金委員長が呼びかけたようだが、トランプ大統領は「近く」2回目があると発言している。何らかの進捗があるかもしれない。

ロシアとの距離を縮めているのは、イスラエルと敵対するイランを擁護しているロシアを懐柔することで、シリアからのイラン軍撤退を促す、という意図があるためと考えられる。

よってロシアとの関係改善は、ある程度中東情勢の緊張緩和に寄与すると期待される。原油の価格面では下押し材料となるだろう。

欧州はかつての最も親密な同盟地域だったが、民主主義の傾向が強く、リベラルな雰囲気が強いこの地区とトランプ大統領は反りが合わない。この地区との対立は貿易問題での対立を激化させ、需要面で価格にマイナスに作用すると予想される。

短期的には投機筋動向が価格に影響を与えやすいが、10月30日付のWTIの投機筋ポジションは、ロングが前週比▲19,741枚の565,671枚、ショートが+2,899枚の133,033枚、Brentはロングが▲29,378枚の378,555枚、ショートは+24,295枚の71,443枚となっている。

先週と同じ流れとなり、景気の減速懸念でロングが減少、ショートもサウジの増産報道などを受けて積み上がっている。今週からイランに対する制裁が再開されるため、一部の国の制裁は延期されたもののやはり需給面では価格の上昇要因となる。

ただし、すでにある程度の禁輸措置が行われているため、それが緩和されることから影響は限定されることになるだろう。

中長期的には中国の人口ボーナス期が2030年頃まで続く事、2020年頃からはインドも人口ボーナス期に入り需要の増加が見込まれることから強気である。

なお、EVが普及して原油需要は2035年~2040年頃にピークを迎えるとの見方が市場のコンセンサスとなりつつあるが、リチウムやコバルトの供給問題や、EV普及のための財政負担を考えると、補助金のサポート無しでは成立しないEV化が、市場の期待通りに進むとは考え難い。

同様に、補助金のサポートが必要なバイオ燃料が化石燃料に取って代わるシナリオも想定し難い。

これに加えて、軽量化目的の樹脂利用(化学製品向け需要の増加)なども期待できること、液体燃料は保存や輸送の観点からみて依然割安であり、アフリカなどの新興国では引き続き利用されると見られることから、2035年に「需要の伸びは鈍化」するものの、減少に転じると判断するのは早計ではないだろうか。

実際に減少に転じるのは世界的に人口伸びの鈍化が実感される頃(2050年頃か)になると見る。

この見通しの上昇・下落の両リスクとなり得る材料として、ジャーナリスト殺害に対する批判に反発して、ムハンマド皇太子が原油の輸出を停止して原油供給が途絶、価格も高騰する場合が考えられる(それは本当に最終手段なので発生の可能性は極めて低いが)。

原油供給が途絶すれば、まず原油価格が上昇するほか、モノの輸送ができなくなるため各地で商品価格が高騰することになる。そしてその価格高騰が需要を減少させ、最終的には景気後退に陥るというシナリオだ。

しかし、もしそこまでいきそうになったら、さすがにサルマン国王はムハンマド皇太子を更迭するだろう。

今まで、サウジアラビアはそのようなことをする国ではなかったはずだが、実務のトップが代われば方針も変わってしまうということなのだろう。そのリスクは意識しなければならない。

この見通しの上昇リスクを現物の需要・供給に分けてみてみると、需要面は原発事故などの突発事象で他のエネルギーを原油で代替せざるを得なくなった時がこれに当たるが、これはなかなか想定し難い。

供給面は、以下のようなものが上昇リスクと考えられる。

1.中東情勢不安の顕在化

2.PDVSA(ベネズエラ)の生産停止

3.上流部門投資の低迷(徐々に再開)

この中で顕在化の可能性が高まっているのが1.と2.だ。

1.については米国・サウジ・イスラエルvsロシア・イランの構図で考えると理解しやすい。トランプ政権がイランに対して強硬な態度を取っているのは、ユダヤ人ロビーとキリスト教福音派に配慮してのことであり、議会としてもロシアとの対決姿勢を強める構図となる。

そして、イラン産原油を一滴も買うな、という相当強硬な政策が採用されている。それが実際に可能とは思えないが、この結果、イランは核合意離脱並びにホルムズ海峡封鎖オプションを誇示せざるを得ず、それだけで価格は上昇している。

また、イランからすればこれは従来からこの地域に存在する、シーア派とスンニ派の争いである。今までと違うのが、サウジアラビアがイスラエルと一時的に連携する可能性があることだ。

これにクルド人vsトルコ・イラン・シリア・イラク、といった対立軸も入ってくると本当に理解が困難になる。基本、目の前の敵の敵は見方の構図がその時発生している問題を理解する上での手助けとなる。

さらに、東西分裂状態が続くリビアで原油生産が安定して増加する可能性が低いことも、供給不安を高めるだろう。

2.については5月の選挙でマドゥロ大統領が再選を果たし、国内の状況はさらに悪化している。

PDVSAの生産が完全に停止すれば恐らく原油価格は10ドル単位で上昇するとみるが、これが現在じわじわと顕在化している形。これはもはやメインシナリオとなっている(その後OPECの減産解除で大幅に下落する展開を予想)。

1.と2.の違いは、1.はホルムズ海峡の封鎖が意識されるため、供給途絶が長期にわたる可能性がある一方、2.が顕在化した場合湾岸諸国の増産が予想されるため、影響が一時的なものに止まる点である。

1.の場合、実際に封鎖が起きれば原油価格が100ドルを超えても何ら不思議はない。

金融面・政策面では、以下の要因が上昇リスクとなる。

1.米金融規制緩和

2.米国の金利上昇があまりに急であることを受け、FOMCが長期金利の上昇にブレーキをかける政策を採用する場合

3.2.に限らず長期金利が日欧の低金利政策の継続で低下する場合

2.はトランプ大統領が金融政策に介入を始めたため、俄かにその可能性が意識されている。そうでなくとも来年の春ごろまで利上げが継続されれば、そこから先は打ち止め(一旦様子見)となる可能性が高い。

下落リスクは需要面は何かしらの信用リスクが顕在化することが材料となる。

1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速

2.米国内インフレ発生による利上げペースの加速

3.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化

4.北朝鮮戦争の開戦や中東情勢悪化を受けたリスク回避の動きの強まり

5.株価の調整

6.トランプ政権の保護主義政策推進

7.価格上昇に因る需要の減少(レーショニング)

8.トルコ問題の新興国への拡大による、新興国需要の減少

9.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを見直すなど緩やかに調整が起きているが、景気をクラッシュさせるほどのものにはなっていない。

2.については原油高の進行に伴うインフレ懸念の高まりが顕在化していたが今のところ後退している。しかし、トランプ政権の関税強化が国内の物価を押し上げる可能性もあるため、このリスクが顕在化する可能性は以前よりも高い。

ただ、潜在成長率の低下もあってこれ以上長期金利は急騰しない、との見方もあり引き続き先行きはグレーだ。

4.はリスクシナリオであるが、米朝首脳会談の結果を受け、目先の開戦リスクは後退した。しかし、交渉は今後も継続する見込みであり、どのように転ぶかはわからない。1つ確実なのは、同問題の解決に向けて日本の負担は相当重くなるということだ。

中東についてはイランと米国は挑発の応酬となっている。しかし、石油製品価格の上昇が米国民からの支持率を押し下げる可能性があるため、ここにきてイランに対する米国のトーンは若干後退している。

しかし、イランは(国民向けのポーズもあってか)強気の姿勢を崩していないため、しばらく緊張状態は続くだろう。

イランと米国が欧州やロシアのとりなしで交渉のテーブルに着く、というのが希望的観測を含めたメインシナリオだが、この可能性は中間選挙終了まではほぼゼロなのではないか。

5.は株価は投機の動きを示す指標であり、ここに調整圧力が高まれば高値圏にあり記録的な水準まで積み上がっている投機の手仕舞い売りが加速する可能性がある。原油価格の上昇に伴う長期金利の上昇が、そのきっかけになる可能性はある。

6.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動きになりつつある。しかし選挙まで「戦う大統領」のポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決しないだろう。

7.は保護主義政策の拡大で世界的に景気の拡大ペースの鈍化が懸念されている中で原油価格が高騰していることは、消費者がこの価格高騰に耐えられない可能性が高まることを示唆している。顕在化の可能性が高いリスク要因となってきた。

9.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。

供給面は、以下の要因が主な下落リスクシナリオだ。

1.北米の増産加速

2.OPECの出口戦略が意識される

3.イスラエルを中心とした中東情勢絵不安でサウジアラビアやイランなどの足並みが揃わず、OPECの結束が崩壊する場合

1.は米国のパイプラインのキャパシティ問題もあり、増産ペースは鈍化している。原油価格が採算ラインに乗ってから増産が始まるまでの時間差や新しいパイプラインの稼働時期を考えると、再び増産ペースが加速するのはQ418になってからだろう。

足元、2.と3.が合わせ技で顕在化しつつある。価格高騰や財政悪化で増産にかじを切りたいロシアとサウジが出口について言及、さらにこの増産にはイスラエルを軸とする反イランの動きが絡んでいるため、今回のサウジの増産がOPEC諸国の規律を乱す可能性がある。

石炭価格はじりじりと水準を切り下げながら、高値圏での推移を続けている。中国の国内の生産が減少しているうえに北朝鮮の制裁が続いていることが影響している。価格の減速は、価格に対する説明力が高い、「中国の景況感の鈍化」が影響していると見る。

北朝鮮への制裁解除は当面ない見込みだが、中国が米国にゆさぶりをかける目的で解除する可能性もなくはない(この場合、さらに米国が中国に制裁を科す可能性がある上、米国と関税関連で共闘でき
ると考えていた欧州や日本の協力が得られなくなるため、その可能性は低いが)。

また、12月にCOP24(第24回気候変動枠組条約締結国会議)が開催される。米国はこの枠組みから脱退を表明しており欧州諸国は米国の引き留めに必死だ。

この状況で中国は脱退しない方針を打ち出しており、「対米協調」を目的として積極的に石炭使用や鉱山向け融資を絞る可能性もあり得る。このリスクは小さくなく石炭供給懸念を通じて石炭価格を高止まりさせるとみている。

---≪LME非鉄金属≫---

LME非鉄金属価格は上昇した。ここまで米国の中国に対する制裁が緩和されるのではとの見方が広がったことや、中国政府が民間セクターの支援をおこなう方針を表明したことが買戻しを誘った。

ここまで米国の中国に対する制裁の影響を強く織り込んで下落してきたため、比較的大きな価格の上昇となった。

非鉄金属の最大消費国である中国の構造的な景気減速、米国の利上げ継続を受けた実質金利上昇、並びに新興国からの資金流出観測が強まっていること、貿易統計では駆け込み需要が確認されたものの、米国の中国に対する追加制裁発動が外需を減速させ、非鉄金属価格を下押しすると予想される。

しかし、中国政府は景気を軟着陸させるために、預金準備率を引き下げたり、公共投資などの財政政策に傾斜せざるを得なくなってきていることが需要を押し上げること、LME指定倉庫在庫の減少は継続しており、足元の需給はまだタイトと考えられることが価格を下支えすると考えられる。

以上から、非鉄金属価格は軟調ながらもしばらくは底堅い推移になると考えている。

中国に対する制裁は、米国の選挙の結果に関わらず長期化する可能性がある。先日のペンス副大統領の講演でのスピーチは、明確に経済面で中国に宣戦布告しているのと同じである。これはトランプ政権というよりも、議会共和党の意向と考えたほうが良い。

米国が中国と貿易で合意するとの報道があったが、選挙前のリップサービスであり、実際に合意するのは容易ではないだろう。というのも一連の制裁で米国は中国から、まだ何も得ていないからだ。

ではいつまで制裁が続くかといえば、具体的には、中国の景気拡大が失速して米国と覇権を争えるような状態になくなる、中国が世界シェアを取りに行こうとしているハイテク分野の内製化をあきらめる、人民元高を許容する(バブル崩壊時の日本と同じ)、といった明確な成果があるまで継続するのではないか。

ただし、利上げを継続する中で米国景気が失速し、国民からの不満が高まる可能性がある2019年末頃が、翌年に大統領選挙を控える「トランプ政権のリミット」と考えられ、制裁は継続しつつも来年春頃までに一部制裁が緩和されるのがメインシナリオだ。

そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益は、年初来ベースで前年比+14.7%の4兆9,713億元(1-8月期+16.2%の4兆4,249億元)、9月は+4.1%の5,455億元(+9.2%の5,197億元)と大幅に伸びが減速している。構造的・循環的な景気減速に加え、米国の制裁の影響が徐々に顕在化していることの証左であろう。

結局、工業金属の最大消費国である中国への制裁は緩和はすれども継続する見込みであるため、非鉄金属需要にとってマイナスに作用することは避けえない。

また、中国の構造的な景気の減速、循環的な減速、保護主義政策に対抗するための人民元安誘導が資本流出を招き、その他の新興国にも影響が出ること、なども価格を下押ししよう。

トランプ大統領弾劾裁判の可能性が高まっていたが、引き続き米国内では「トランプ礼賛本」がベストセラーの状況であり、「ウォーターゲート事件の再来」はなさそうというのがメインシナリオになりつつある。日本で報じられているほど、米国人はトランプのことを嫌いではない。

また、「より与し難い」ペンスが大統領になるよりは、トランプのほうが良い、と民主党側も判断している可能性があり、弾劾にまでは至らないのではないかとの見方もある。

なお、構造的に工業金属需要が増加し、価格が上昇するのはおそらく次の需要のけん引役となるインドが人口ボーナス期入りする2020年頃からになるとみているため、長期的には強気の見通しである。

短期的には投機筋の動向が重要になるが、10月26日付のLMEポジションを見るとアルミのショート、ニッケルのショート、錫のロングを除くと軒並みポジション解消が進んでおり、錫を除くすべての金属のネット買い越し幅が縮小している。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は147.4億ドル(前週183.9億ドル)と買い越し額は減少に転じた。買い越し枚数もトン数換算ベースで4,072千トン(5,150千トン)と同様にポジション解消の動きが強まっている。

このコラムでの予想通り、売り圧力が強まる形となった。やはり、追加材料がなければ投機的な観点で非鉄金属を買い続けるのは難しい、ということだろうか。

中長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は2030年頃まで続く事、2020年頃からインドが人口ボーナス期に入ることから構造的な需要増加はまだ継続すると見ており、強気のスタンスを崩していない。

なお、アジア開発銀行は2016年~2030年のアジアのインフラ投資規模は26兆ドル(3,000兆円、年間1兆7,000億円)に達すると試算している。

一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとなった。

現実は、貧困国に資金を貸し出し、返済がなければ担保としてその土地や港湾を召し上げる、というバブルのころに日本で問題になったことを国家として行っている。老練なマハティールは中国の戦略の意味を理解しているということだ。

また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,069億元と大幅に積み増しされており、中国が軍事的に周辺国を支配しようとしているのは明らかだ。

しかし、10月の米中首脳会議で安倍首相は透明性を高めることなどを前提に、一帯一路構想への協力を約束した。中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を欲しがっている、とも考えられる。

一帯一路構想が、中国の軍事的支配権拡大に用いられないよう、日本が監視できるかどうか。非常に重要な決断だったといえる。

この見通しの上昇・下落の両リスクとなり得る材料として、ジャーナリスト殺害に対する批判に反発して、ムハンマド皇太子が原油の輸出を停止して原油供給が途絶、価格も高騰する場合が考えられる(それは本当に最終手段なので発生の可能性は極めて低いが)。

原油供給が途絶すれば、まず原油価格が上昇するほか、モノの輸送ができなくなるため各地で商品価格が高騰することになる。そしてその価格高騰が需要を減少させ、最終的には景気後退に陥るというシナリオだ。

しかし、もしそこまでいきそうになったら、さすがにサルマン国王はムハンマド皇太子を更迭するだろう。

今まで、サウジアラビアはそのようなことをする国ではなかったはずだが、実務のトップが代われば方針も変わってしまうということなのだろう。そのリスクは意識しなければならない。

この見通しの上昇リスクは需要面では、

1.中国の財政出動並びに住宅価格上昇容認

2.環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台が使われる)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

3.トランプ政権のインフラ投資計画実施

などが考えられる。

1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セクターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。

市場はEVブームに沸いているが、コバルトの壁に加え、EV普及のための補助金負担は好景気時しか難しいこと、道路財源問題などを考えると市場が期待しているほどのペースで普及するとは見ていない

ここまでのニッケル価格の上昇はEVブームというよりは中国の住宅セクターの減速が明確でない事や、EVブームを材料にした投機買いの側面が強く、実際の需要に影響を及ぼすのは順調に行ったとして2020年頃以降になるのではないか。

供給面は個別性が強いが、以下が上昇リスク要因として挙げられる。

1.大規模鉱山の減少に伴う安価な資源確保環境の悪化(コストを掛ければ採掘できる。リサイクルの充実は必須)

2.中国の環境規制強化に伴う減産の継続

3.石炭価格上昇による生産コスト(電力コスト)の高止まり

4.労使交渉動向

5.Rusalに対する制裁が長期化し供給懸念が強まる場合

4.についてはEscondidaのストが終結しておりその影響は後退している。

5.はすでに顕在化してしまったリスクだが、特にアルミ・ニッケル・パラジウムへの影響が大きい。Rusalに対する制裁は米財務省が一部緩和する趣旨のコメントをしており、事前予想ほどの影響が出ない可能性が出てきた。

金融面・政策面では、以下が主な上昇リスク要因だ。

1.米金融規制緩和

2.米国の金利上昇があまりに急であることを受け、FOMCが長期金利の上昇にブレーキをかける政策を採用する場合

3.2.に限らず長期金利が日欧の低金利政策の継続で低下する場合

2.はトランプ大統領が金融政策に介入を始めたため、俄かにその可能性が意識されているが、日銀の政策変更によってむしろ米長期金利に上昇圧力がかかっており、その影響は限定されている。

下落リスクは多く、以下があげられるが主に信用リスクの拡大が要因の軸となる。

1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速

2.米国内インフレ発生による利上げペースの加速

3.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化

4.北朝鮮戦争の開戦や中東情勢悪化を受けた、リスク回避の動きの強まり

5.長期金利の上昇

6.5.に付随するが株価の調整

7.米輸入規制強化並びにそれに対する報復

8.トルコ危機や米利上げの影響を受けた新興国需要の減少

9.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェクトを見直すなど緩やかに調整が起きているが、景気をクラッシュさせるほどのものにはなっていない。

2.については原油高の進行に伴うインフレ懸念の高まりが顕在化していたが今のところ後退している。しかし、トランプ政権の関税強化が国内の物価を押し上げる可能性もあるため、このリスクが顕在化する可能性は以前よりも高い。

ただ、潜在成長率の低下もあってこれ以上長期金利は急騰しない、との見方もあり引き続き先行きはグレーだ。

4.はリスクシナリオであるが、米朝首脳会談の結果を受け、目先の開戦リスクは後退した。しかし、交渉は今後も継続する見込みであり、どのように転ぶかはわからない。1つ確実なのは、同問題の解決に向けて日本の負担は相当重くなるということだ。

中東については今のところ落ち着いているが、イランが米制裁に対してどのように反応するかに今後の動向は依拠することになる。欧州やロシアのとりなしでイランと米国が交渉のテーブルに着く、というのが希望的観測を含めたメインシナリオだが、この通りになるかどうかは正直五分五分だろう。

6.は株式市場は投機の動きを示す指標であり、ここに調整圧力が高まれば高値圏にあり記録的な水準まで積み上がっている投機の手仕舞い売りが加速する可能性がある。

7.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探る動きになりつつある。しかし選挙まで「戦う大統領」のポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得るまで関税問題は解決しないだろう。

8.はトルコ危機を発端に新興国通貨安となり、米利上げ継続観測や中国に対する制裁による中国景気減速懸念を受け、新興国通貨安が加速していることはこれらの国の財政状況を悪化させ、インフラ投資などの減速を誘発するが、このリスクは顕在化しつつある状況。

9.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。

---≪鉄鋼原料≫---

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ価格は小幅下落、原料炭スワップ先物は下落、鉄鋼製品価格は小幅安となった。

米国が中国政府と貿易合意の草案作成、との報道があったが恐らく選挙前のリップサービスであり、制裁は継続するだろう。

なお、中国政府は米国との貿易戦争の影響を受ける民間セクターへの減税などの対策を指示した。鉄鋼分野では輸出のリベート率を9%から10%に引き上げる決定がなされたようだが、影響は軽微だった。

鉄鉱石価格は高値圏でもみ合うものと考える。そもそも季節的に中国の生産が減少、輸入が増加する時期に当たること、米国の制裁はあるものの国内需要の刺激や冬場の鉄鋼生産抑制継続による鉄鋼製品価格の高止まりが、投機的な観点での鉄鉱石買いを誘うと考えられることが背景(詳しくは2018年10月31日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

ただし、インフラ投資バブルを誘発するほどの公共投資を中国が継続することは、国内の評価的にも、資金繰り的にも困難と考えられること、米国は中国に対する制裁をさらに強化する方針であること、構造的な需要の減速の可能性の高さから、中期的に鉄鋼製品・鉄鉱石価格に下押し圧力がかかる、との見方に変更はない。

しかし、減産は冬の間続くため、政治的なイベントリスクの顕在(Brexitなど)がなければ、下落は春になってからになるのではないか。

中国に対する制裁は、米国の選挙の結果に関わらず長期化する可能性がある。先日のペンス副大統領の講演でのスピーチは、明確に経済面で中国に宣戦布告しているのと同じである。これはトランプ政
権というよりも、議会共和党の意向と考えたほうが良い。米国が中国と貿易で合意するとの報道があったが、選挙前のリップ
サービスであり、実際に合意するのは容易ではないだろう。というのも一連の制裁で米国は中国から、まだ何も得ていないからだ。

ではいつまで制裁が続くかといえば、具体的には、中国の景気拡大が失速して米国と覇権を争えるような状態になくなる、中国が世界シェアを取りに行こうとしているハイテク分野の内製化をあきらめる、人民元高を許容する(バブル崩壊時の日本と同じ)、といった明確な成果があるまで継続するのではないか。

ただし、利上げを継続する中で米国景気が失速し、国民からの不満が高まる可能性がある2019年末頃が、翌年に大統領選挙を控える「トランプ政権のリミット」と考えられ、制裁は継続しつつも来年春頃までに一部制裁が緩和されるのがメインシナリオだ。

そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益は、年初来ベースで前年比+14.7%の4兆9,713億元(1-8月期+16.2%の4兆4,249億元)、9月は+4.1%の5,455億元(+9.2%の5,197億元)と大幅に伸びが減速している。構造的・循環的な景気減速に加え、米国の制裁の影響が徐々に顕在化していることの証左であろう。

結局、工業金属の最大消費国である中国への制裁は緩和はすれども継続する見込みであるため、工業金属需要にとってマイナスに作用することは避けえない。

今年の鉄鉱石価格の上昇は、鉄鋼製品価格の上昇によるものであり、さらに製鉄所の稼働率の上昇が実需を押し上げたことも影響している。

実際、中国最大の鉄鋼生産地区である河北省の高炉稼働率は昨年後半から急速に落ち込み60%まで低下、その後85%まで上昇したが直近の稼働率は72.6%と上昇している。ただしこの稼働率は過去5年平が89.8%であることを考えると著しく低い。

鉄鋼製品価格の上昇が鉄鉱石価格を押し上げる構図が続いていたが、足元の両者の関係を見ると鉄鋼製品価格の変動と、鉄鉱石価格の関係性はほぼ無相関となっている。

鉄鋼製品が上下と、鉄鉱石の上下が連動しておらず各々の需給が価格を決定している可能性が高い。となれば、冬場に向けた国内生産の減速時期に突入していることから、季節的に鉄鉱石価格は高止まりするだろう。

直近の統計では、鉄鉱石在庫が前週比▲220万トンの1億4,165万トン、(過去5年平均1億269万トン)、在庫日数前週比▲1.6日の31.3日(過去5年平均27.3日)と、例年よりも高い水準を維持している。

鉄鋼製品価格につられて水準を切り上げていたが、やはり徐々に下押し圧力が掛かるのではないか。

鉄鋼製品価格の動向は国内の経済対策動向次第であるが、冬場で建設需要が減速すること、冬場の高炉の稼働低下から大きく値を動かさないものと予想される。

ただ、鉄鋼製品在庫が前週比▲50.3万トンの955.3万トン(過去5年平均1,062.8万トン)であり鉄鋼製品価格は例年よりも高い水準を維持しそうだ。

結果、鉄鋼製品・鉄鉱石スプレッドは鉄鉱石価格が下落する形で、拡大すると予想される。

長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期は2030年頃まで続く事、2021年からインドが人口ボーナス期に入ることから構造的な需要増加はまだ継続すると見ており、強気である。

なお、アジア開発銀行は2016年~2030年のアジアのインフラ投資規模は26兆ドル(3,000兆円、年間1兆7,000億円)に達すると試算している。

一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れるかは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道案件も先送りとなった。

現実は、貧困国に資金を貸し出し、返済がなければ担保としてその土地や港湾を召し上げる、というバブルのころに日本で問題になったことを国家として行っている。老練なマハティールは中国の戦略の意味を理解しているということだ。

また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,069億元と大幅に積み増しされており、中国が軍事的に周辺国を支配しようとしているのは明らかだ。

しかし、10月の米中首脳会議で安倍首相は透明性を高めることなどを前提に、一帯一路構想への協力を約束した。中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を欲しがっている、とも考えられる。

一帯一路構想が、中国の軍事的支配権拡大に用いられないよう、日本が監視できるかどうか。非常に重要な決断だったといえる。

この見通しの上昇・下落の両リスクとなり得る材料として、ジャーナリスト殺害に対する批判に反発して、ムハンマド皇太子が原油の輸出を停止して原油供給が途絶、価格も高騰する場合が考えられる(それは本当に最終手段なので発生の可能性は極めて低が)。

原油供給が途絶すれば、まず原油価格が上昇するほか、モノの輸送ができなくなるため各地で商品価格が高騰することになる。してその価格高騰が需要を減少させ、最終的には景気後退に陥るというシナリオだ。

しかし、もしそこまでいきそうになったら、さすがにサルマン国王はムハンマド皇太子を更迭するだろう。

今まで、サウジアラビアはそのようなことをする国ではなかったはずだが、実務のトップが代われば方針も変わってしまうということなのだろう。そのリスクは意識しなければならない。

上昇リスクについては、以下のようなものが考えられる。

1.中国の財政出動並びに住宅価格上昇容認

2.一帯一路構想が市場予想を上回るペースで実施される場合

3.米国のインフラ投資計画が実際に実施される場合

1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すには内需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セクターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。

2.はそのプロジェクトの質の悪さから導入を見送る国が増えており、中国自体の資金繰りの問題もあって以前ほど高いリスクではなくなってきた。

3.は支持率低下に喘ぐトランプ政権が人気取りのために実施する見込みだ。しかし、そもそも好調な米景気をさらに過熱させるものであり、将来の価格下落幅を拡大することが予想される。

下落リスクは信用リスク系のものが多いが以下が主なところだ。

1.中国の住宅バブル崩壊

2.中国のインフラ投資が財政悪化で規模が期待ほどにはならない場合

3.米利上げぺースの加速によるドル高で新興国からの資金流出が加速した場合

4.何らかの理由で北朝鮮に対する制裁が解除され、原料炭価格が下落する場合

5.北朝鮮、中東情勢不安が世界的にリスク回避姿勢を強め、金融市場の混乱が実態経済に悪影響を及ぼす場合

6.世界的な株価の調整によるリスク回避の動きの強まり

7.米国の進める保護主義政策の拡大

8.トルコの政情不安が新興国通貨安(資本流出)を通じて、新興国需要の減速につながる場合

9.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト

10.ジャーナリスト殺害に対する批判に反発して、ムハンマド皇太子が原油の輸出を停止して原油調達ができなくなる、原油価格が高騰する場合

4.の可能性は出てきたが、核放棄を行わない限り制裁は継続の方針である。しかし、米国が体制保証を認めた以上、今後は北朝鮮が国際社会に復帰する方向性に進む可能性が高く、時期は不明だが、制裁が解除される可能性は高まっているとみている。

首脳会談のスケジュールを見るに、年明け以降の解除の可能性が高いと考える(逆に言えば年内は解除はなしか)。

5.はリスクシナリオであるが、米朝首脳会談の結果を受け、目先の開戦リスクは後退した。しかし、交渉は今後も継続する見込みであり、どのように転ぶかはわからない。1つ確実なのは、同問題の解決に向けて日本の負担は相当重くなるということだ。

中東については今のところ落ち着いているが、イランが米制裁に対してどのように反応するかに今後の動向は依拠することになる。欧州やロシアのとりなしでイランと米国が交渉のテーブルに着く、というのが希望的観測を含めたメインシナリオだが、この通りになるかどうかは正直五分五分だろう。

7.は常識的な落としどころを探る動きになる、とみていたが結局、米中の貿易戦争は開戦となった(その他の地域に対する関税引き上げはこれとは別に存在)。

関税引き上げは消費税引き上げのような緊縮財政と同様の経済効果をもたらすため、景気には明らかにマイナスだ。今のところ、中間選挙を睨んだ対策であるため、目に見える効果が上がらない限りは解除はしないだろう。

結果、中国国内の鉄鋼製品価格を押し下げ鉄鉱石価格の押し下げ要因となるだろう。

9.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしていると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。

10.は鉄鉱石・鉄鋼原料に限った話ではない。原油供給が途絶すれば世界経済に与える影響は当然小さくない。そして、サウジアラビアはそのようなことをする国ではなかったはずだが、実務のトップが代われば方針も変わってしまうということなのだろう。そのリスクは意識しなければならない。

---≪貴金属≫---

金銀価格は下落。米雇用統計を受けた利上げ観測を受けて長期金利が上昇、実質金利の上昇とドル高進行が価格を下押しした。

PGMは金銀価格の下落や株価の調整が重石となったものの、米中貿易合意期待や米統計の改善が素直に材料視され、ほぼ一貫して水準を切り上げる形となった。

金価格は再び上昇余地を探る動きになると考える。サウジアラビアのジャーナリスト殺害問題やイタリアの財政問題、英国のEU離脱などのリスク、北朝鮮問題などに再び焦点が当たっていること、好調だった企業決算に市場はマイナスに反応するようになっており、「株安→債券高・金高」の流れになりやすいことも、価格を押し上げると考える。

なお、金価格は、地政学がフルに影響すれば1,400ドル程度までの上昇はあると考えていたが、現在の実質金利水準や、過去の実質金利からの乖離(いわゆるリスクプレミアム)が2018年2月15日時点で過去最大となる284ドル(回帰分析の結果、妥当と考えられる価格と実際の価格の差)となったが、足元は230ドル程度まで上昇していることを考えると、足元からのリスクプレミアムが加わることによって上昇する余地は50ドル程度ではないだろうか(詳しくは2018年10月18日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

ただし、米国の利上げが来年の春に終了し、原油価格も高止まりを続けるようであれば実質金利が低下し、ベース価格が上昇することになるため米金融政策、原油価格動向に価格が左右される環境にあることは変わりない。

なお、地政学的リスクの影響がないとすれば、実質金利で説明可能な水準である1,050ドル程度までの下落はあると考える。

銀は、Silver Instituteなどの分析では供給の減少と電気製品向けの需要増加で供給不足になっていると指摘されているが、それよりは金価格動向や貿易戦争の影響が強く意識され、対金で軟調な推移となっている。

今後についても金価格が軟調に推移することから水準を切り下げる動きになると考える。現在の金銀レシオは80に大きなチャートポイントが重なり、底堅い推移となりつつ過去最高水準を維持している。

足元、COMEXの金銀在庫レシオの金銀レシオに対する説明力が高く、記録的な水準まで積み上がった銀の取引所在庫の影響で、しばらくはこの80越えの水準を維持するだろう(詳しくは2018年10月19日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

しかし、相関性の高い中国鉱工業生産との回帰分析結果は、現在のレシオが75程度であることを示唆しており、投機筋のショート積み上がりによって下落してきたことから、むしろここからは銀が買い戻される可能性のほうが高いとみる。

仮にその水準までの低下があるとするとチャート的にはさらにレシオの下げが予想されるため、この場合銀価格には対金で上昇圧力が強まることになる。

金銀レシオが80である前提であれば、地政学的リスクがフルに影響して1,300ドルになった場合、リスクプレミアムがはげ落ちて1,150ドルまで下落した場合に対応する銀価格は、16.25ドル、14.4ドルとなる。

金銀レシオが74であれば、17.6ドル、15.5ドルとなる。

短期的な価格動向を占う上で参考になる投機筋の売買動向は、10月30日時点で金のロングが▲23,824枚の168,754枚、ショートが▲7,630枚の155,560枚、銀のロングが+1,037枚の76,053枚、ショートが+4,328枚の84,523枚となっている。

PGM価格は金銀価格が上昇余地を試す中、同様に上昇余地を試すと考えるが、金銀価格の上昇の要因が株価の下落によるものであるため、株価の調整圧力の高まりを受けて対金銀では割安に推移するとみている。

また、ディーゼル自動車比率の高い欧州景気の減速(プラチナ需要減速)、ガソリン自動車比率の高い米国景気の拡大継続(パラジウム需要加速)で、プラチナ・パラジウムレシオはしばらく低下を続けると予想される。

ただ、需給がタイトなパラジウムは投機商品的な色彩が強いプラチナに比べると割高に推移するだろう。

米国の自動車販売は、9月が米自動車販売は1,740万台(市場予想 1,683万台、前月1,660万台)と急に回復した。

8月の米消費者信頼感は回復、6ヵ月以内に自動車を購入すると答えた人の比率も12.3と前月の+11.1からはさらに改善したが、依然として水準は低い。

FRBの利上げも継続する見込みであり、自動車メーカーのディーラー向けのインセンティブ負担も重くなることが予想され、自動車関税引き上げが宣言通り実施されるのであれば、自動車販売は減速する可能性が高く、PGM価格を下押しすると予想される。

中国の9月の自動車販売(工場出荷台数)は前年比▲11.55%の239万4,100台(前月▲3.75%の210万3,400台、前々月▲4.02%の188万9,100台)と3ヵ月連続でマイナス成長となった。

弊社は需給面の見通しに関しWPICの見通しを参考にしているが、直近の見通しでは2018年のプラチナの需給は29万5,000オンスの供給過剰と、2017年の29万5,000オンスの供給過剰水準から横ばいの見通しとなっている。

自動車向けの触媒需要が前年比▲21万オンスとなるものの、南アフリカ(▲5万オンス)、ジンバブエ(▲2万オンス)、ロシア(▲4万オンス)などの影響で鉱山生産が▲15万5,000オンスとなることが相殺した。

この結果、地上在庫は249万5,000オンスに増加する見込みで、在庫日数は118.0日(+16.0日)と増加見込みであり、在庫の顕著な増加が価格上昇を抑制することになろう。

なお、南アフリカのPGM生産指数は8月時点で91.2(季節調整前)と過去5年平均を下回っている。価格の下落や同国の景気後退入りで生産コスト割れの鉱山生産の調整が進んでいるためとみられる。

10月30日現在、CFTCのプラチナポジションはロングが+2,011枚の43,509枚、ショートが▲1,050枚の28,786枚、パラジウムはロングが▲1,497枚の17,287枚、ショート▲389枚の5,144枚となっている。

プラチナのロングポジションはリーマンショック後の金価格上昇を受けて積み上がってきたが、欧州のディーゼル不正を切っ掛けに需要観測が減速、さらに米保護主義政策の推進を受けた需要減少観測で減少し、低迷している。

プラチナのネットロングは、過去5年で初めてマイナス圏に沈んでいたが買戻しが進みプラス圏に復帰している。

パラジウムのロングポジションは減少を続け、この5年の最低水準まで低下していたが、足元買いが積み上がっている。ショートポジションも積み上がっており、過去5年平均を回復した。今後は景気自体や主な用途である自動車の販売動向にポジション動向が左右されると予想されるが、米利上げや米国・中国の自動車販売減速から見通しはそれ程強気ではない。

---≪農産品≫---

シカゴ穀物市場は上昇した。選挙向けのリップサービスの可能性が高いもののトランプ大統領が中国との貿易合意の草案作成を指示した、と伝えられたことで、米国内需給のタイト化観測が強まったため。

穀物価格は引き続き政治動向に振らされる形となるが、トランプ政権がエタノールの規制緩和に動く方針であるため、トウモロコシのエタノール向け需要が増加すると見られていることが他穀物価格をけん引し、上昇余地を探る動きになると考える。ただし、北米が総じて豊作であること、ハーベストプレッシャー、リスク回避のドル高進行から頭重い推移になると考える。

トウモロコシの収穫率は63%(前週49%)とほぼ5年平均程度、大豆の収穫率は72%(53%)と先週から大幅に進捗したが、同じ時期の過去5年の最低水準の進捗率である。

なお、冬小麦の作付けが始まったが、78%(72%)と過去5年の最低水準を下回った。収穫量は春小麦よりも冬小麦のほうが圧倒的に大きく、2018-2019穀物年度への影響が意識される。

ただ、「小麦は雑草」の格言通り世界のどこかで生産がされるため、最終的に供給は足りることになると考えるが、供給が足りて価格が下落するまでに価格が高騰するリスクは存在する。

また、穀物ではないが綿花の収穫は44%(39%)と過去5年平均程度まで低下、作況は35%(34%)と過去5年の水準を大きく下回り受け渡し適格品の供給が減少する可能性がある。

10月の米需給報告では、トウモロコシの生産見通しが147億7,800万ブッシェル(市場予想148億5,941万ブッシェル)、大豆が46億9,000万ブッシェル(47億2,376万ブッシェル、46億9,300万ブッシェル)、小麦が18億8,400万ブッシェル(前月18億7,700万ブッシェル)と、総じて「期待ほどの生産」にはならない見通しが示された。

10月30日付のCFTC投機筋ポジションは、トウモロコシのロングが▲11,120枚の420,905枚、ショートが▲10,304枚の298,441枚、大豆のロングが▲19,666枚の135,247枚、ショートが+13,010枚の199,462枚、小麦のロングが+2,689枚の160,903枚、ショートが+15,248枚の153,134枚となっている。

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◆本日のMRA's Eye
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「景気の局面と政治」

株価の調整圧力が強まり景気の先行きに対する懸念が強まってきた。実際、各地の選挙でポピュリズム政党や、極右政党が勝利したり、財政支出拡大といった対策が国民の喝采を以って迎えられていることを見ると、やはり景気は後退局面に差し掛かっていると考えるのが妥当だろう。

政治家の主な仕事はその国で上がった利益の配分であり、利益が上がっていなければ負担の配分である。現在の政権を否定して野党に票が集まる、ということはそれだけ現在の政策に納得がいっていないことを意味する。

そして、多くの場合それは人権問題や宗教問題、といったことよりも生活に直結する経済的な要因の方が大きいといえる。移民問題や宗教問題も、もし景気が良くて職が足りない状態であれば、それほど問題にはならないだろう。

職を取られた、職を移民に奪われている、と感じるその国を出生地とする人々の不満が結果的に移民や宗教といった問題でまとめられていると考える方がすっきりする。

イスラエルとパレスチナの問題にしても、出だしはそれほど問題にならなかったが、実際にユダヤ人の入植が進み、土地や職が奪われる中でパレスチナ人の不満が爆発した、という意味においてはやはり経済問題の1つである。

つまり、こうした動きが出るときは、低所得者層の生活が厳しくなり景気が減速局面入りしている可能性が高いということだ。

このように海外情勢の話が多く、「日本はアベノミクスでオリンピックまで大丈夫」といわれていたが、足元の経済統計を見るに、減速感が強まっている可能性は高い。

日本のGDPの推移を見ていると、2017年頃から個人消費が回復、GDPに対するプラス寄与が目立つようになったが、それ以上に景気を押し上げたのは(円安というよりは)海外の景気回復に伴う輸出の増加が影響したとみられる。

しかし、輸出の寄与度は伸びは昨年の12月頃に減速を始めており、14日に発表されるQ318のGDPでもマイナス寄与となる可能性が高いと見られている。これは海外景気の循環的な減速に加えて、トランプ政権が主導している対中政策が影響したとみられる。

月次の鉱工業生産と同時に経済産業省から発表されている「アニマルスピリッツ指標」を見ると、「不況入りの基準」となる▲5を同指数が下回った。

アニマルスピリッツ指標は、鉱工業生産の前月に立てた翌月の生産計画を、今月下方修正した企業、上方修正した企業がどれだけいたかを基準に算出されるが、足元下方修正している企業が増えてきている。恐らくこの流れは続くと考えられる。

さらに、国内では来年消費税上げが予定されている。今後、高齢者の増加で社会保障負担が増える中では消費税上げは不可避であるが、海外景気の減速時の消費税上げは、少なからず国内消費にマイナスに作用するだろう。

そして、その消費税上げが行われる前2019年夏に参議院選が行われる。今のところ日本経済に目立った減速感は見られていないが、海外情勢や上記の国内情勢を考えると、その時期に景気が減速している可能性は高い。

冒頭のコメント通り、景気が減速する局面では与党の議席が野党に移ることは多く、そして多くの過去の日本の政権が消費税上げや景気の後退時期での選挙で参院で議席を減らし、退陣に追い込まれていることが多い。

安倍政権の政策手法に関してはいろいろな意見が出ているが、海外情勢が不安定な状態、特にトランプ政権率いる米国と、覇権への野心を隠さない中国との対立が激化する中で、「経験の少ない首相」が誕生すると、それ自身がリスクとなる可能性は高い。

こういった局面での政治の不安定さは、必要以上に景気の下押し圧力を強めるために要注意である。

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◆主要ニュース
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・10月日経日本製造業PMI改定 52.9(速報比▲0.2、前月52.5)

・10月日本国内自動車販売 前年比+13.0%(前月▲3.1%)

・10月日本マネタリーベース 前年比+5.9%の506.9兆円(前月+5.9%の505.0兆円)

・10月日経韓国製造業PMI 51.0(前月51.3)

・10月中国財新製造業PMI 50.1(前月改定50.0)

・10月日経インド製造業PMI 53.1(前月52.2)

・9月独輸入物価指数 前月比+0.4%(前月±0.0%)、前年比+4.4%(+4.8%)

・10月独製造業PMI改定 52.2(速報比▲0.1、前月改定 53.7)、ユーロ圏 52.0(▲0.1、前月改定 53.2)

・10月米チャレンジャー社解雇者数 前年比 +153.6%(前月+70.9%)

・Q318米非農業部門労働生産性速報 前期比年率+2.2%(前期確定+3.0%) 単位当たり労働コスト+1.2%(▲1.0%)

・米週間新規失業保険申請件数 214千件(前週216千件)
 失業保険継続受給者数 1,631千人(1,638千人)

・10月米製造業PMI改定 55.7(速報比▲0.2、前月改定 55.6)

・9月米建設支出 前月比 ±0.0%(前月改定+0.8%)

・10月米ISM製造業景況指数 57.7(前月59.8)
 仕入れ価格 71.6(66.9)
 生産 59.9(63.9)
 新規受注 57.4(61.8)
 受注残 55.8(55.7)
 在庫 50.7(53.3)
 顧客在庫 43.3(40.5)
 輸出 52.2(56.0)
 輸入 54.3(54.5)

・10月米自動車販売年率 1,750万台(前月 1,740万台)

・10月米雇用統計 非農業部門雇用者数 前月比+250千人(前月改定+118千人(速報比▲16千人)) 民間部門雇用者数 +246千人(+121千人) 製造業雇用者数 +32千人(+18千人)

・10月米失業率 3.7%(前月 3.7%)、不完全雇用率 7.4%(7.5%)、労働参加率 62.9%(62.7%) 時間当たり平均賃金 前月比+0.2%(+0.3%)、前年比+3.1%(+2.8%) 週平均労働時間 34.5時間(34.5時間)

・9月米製造業耐久財受注改定 前月比+0.7%(速報比+0.1%、前月改定+4.6%) 除く輸送機器±0.0%(速報比▲0.1%、+0.3%)
 製造業新規受注資本財非国防除く航空▲0.1%(±0.0%、▲0.2%)

・9月米製造業新規受注 前月比+0.7%(前月改定+2.6%)、製造業受注除く輸送機器+0.4%(+0.4%)

・9月ブラジル鉱工業生産 前月比▲1.8%(前月改定 ▲0.7%)、前年比▲2.0%(+1.6%)

・10月ブラジル製造業PMI 51.1(前月50.9)

・10月ブラジル自動車販売 254,732台(前月213,338台)

・10月ブラジル貿易収支 61億2,100万ドルの黒字(前月49億7,100万ドルの黒字)。輸出 222億2,600万ドル(190億8,700万ドル)。輸入 161億500万ドル(141億1,600万ドル)

・習近平国家主席、民間企業支援で具体策提示。減税や資金難緩和など。民間企業はレバレッジ解消野影響や貿易摩擦にさらされる。

・米国、トルコ高官2人に対する制裁を解除。

・米トランプ大統領、米中の貿易摩擦に終止符を打つために想定される合意条件の草案開始を指示との報道。ライトハイザー通商代表は難色を示す。

・EUユンケル委員長、「イタリアがEUを離脱するのは自殺行為。」


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◆エネルギー・メタル関連ニュース
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【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数874(前週比▲1)、 ガスリグ 193(前週比±0)。

・米政権、原油高を懸念し、8ヵ国に対して条件付きながら一時的にイランからの原油輸入継続を認める。ただし先行き輸入量をゼロにさせる方針は変えず。適用除外は180日間でそれ以降の延長は認めない。

・ムハンマド皇太子、米高官に対し、「殺害されたカショギ氏は危険なイスラム原理主義者だ。」

・トルコエルドアン大統領、「我々は、カショギ氏の殺害はサウジアラビアのの最高レベルから指示が出されたものだと知っている。ただし、サルマン国王は関わっていない。」

・Q318Chevron
 石油換算総生産量295万6,000バレル(前期282万6,000万バレル、前年271万7,000バレル)
 液体石油生産 178万7,000バレル(172万3,000バレル、171万9,000バレル)
 米国 65万4,000バレル(57万5,000バレル、52万5,000バレル)
 天然ガス生産 7,012MCFD(6,616MCFD、5,985MCFD)
 米国 1,061MCFD(980MCFD、932MCFD)
 CAPEX 51億2,400万ドル(48億1,600万ドル、44億5,600万ドル)
 ※いずれも日量

・Q318ExxonMobile
 石油換算総生産量378万6,000バレル(前期364万7,000バレル、前年387万8,000バレル)
 液体石油生産 228万6,000バレル(221万2,000バレル、228万バレル)
 米国 55万5,000バレル(54万3,000バレル、50万バレル)
 天然ガス生産 9,001MCFD(8,613MCFD、9,585MCFD)
 米国 2,549MCFD(2,591MCFD、2,899MCFD)
 CAPEX 65億8,600万ドル(66億2,700万ドル、59億8,700万ドル)、上流部門投資 53億3,000万ドル(48億5,500万ドル、31億7,500万ドル)
 ※いずれも日量。

・Q318Total 石油換算総生産量 280万4,000バレル(前期271 万7,000バレル、前年258万1,000バレル)。液体石油生産 161万1,000バレル(158万2,000バレル、139万2,000バレル)。天然ガス生産 6,557BCF(6,176BCF、6,427BCFD) ※いずれも日量。CAPEX 64億8,400万ドル(37億8,700万ドル、39億1,000万ドル)、上流部門投資 27億9,600万ドル(29億8,000万ドル、32億2,800万ドル)

【メタル】
・9月日本伸銅品生産 前年比▲1.1%の6万7,066トン

・Q318
 Southern Copper 銅鉱山生産(自社生産・第三者生産合計) 前年比▲0.9%の230,072トン(前期+2.0%の219,962トン、前年232,201トン)
 亜鉛鉱山生産 ▲4.9%の17,469トン(+0.9%の17,983トン、18,377トン)、精錬亜鉛生産+18.9%の23,832トン(+2.1%の28,392トン、20,046トン)
 銀鉱山生産 +1.4%の4,231千オンス(+16.1%の4,635千オンス、4,173千オンス)
 精錬銀 +2.6%の3,414千オンス(▲2.6%の3,400千オンス、3,328千オンス)

・Q318
 MMG 銅カソード生産 前年比+4%の34,839トン(前期+6%の37,457トン)
 銅生産(含有量ベース)▲24%の87,087トン(▲7%の99,941トン)
 亜鉛生産 +234%の57,595トン(+216%の58,090トン)
 鉛生産 +83%の11,827トン(+110%の12,943トン)

・Q318 Teck
 原料炭生産 640万トン(前期630万トン、前年680万トン)、生産コスト(含む輸送コスト)79ドル(73ドル、67ドル)
 銅生産 72千トン(75千トン、75千トン)、マージン考慮前キャッシュコスト 3,855ドル(3,900ドル、3,657ドル)
 亜鉛精鉱 180千トン(188千トン、184千トン)、マージン考慮前キャッシュコスト 1,058ドル(1,212ドル、1,058ドル)、精錬亜鉛 74千トン(75千トン、75千トン)

・Q318 FirstQuantum
 銅生産 151,241トン(前期150,950トン、前年145,376トン)、オールインコスト4,032ドル(前年3,855ドル)、2018年生産計画595千トン(2019年595千トン)
 金生産 44,979オンス(46,467オンス、47,213オンス)、生産計画180千オンス(200千オンス)
 亜鉛 6,545トン(5,227トン、6,538トン)、生産計画25千トン(17千トン)。

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◆主要商品騰落率
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【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.欧州排出権 ( 排出権 )/ +9.35%/ +109.57%
2.CME木材 ( その他農産品 )/ +4.36%/ ▲24.11%
3.中国CSI300 ( 株式 )/ +3.56%/ ▲18.37%
4.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +2.78%/ +19.71%
5.LME銅 3M ( ベースメタル )/ +2.70%/ ▲13.05%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
68.TCM灯油 ( エネルギー )/ ▲1.64%/ +9.17%
67.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲1.43%/ +6.27%
66.TCM原油 ( エネルギー )/ ▲1.38%/ +17.50%
65.NYM灯油 ( エネルギー )/ ▲1.27%/ +4.69%
64.ICEガスオイル ( エネルギー )/ ▲1.09%/ +12.99%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

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◆主要指標
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【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,270.83(▲109.91)
S&P500 :2,723.06(▲17.31)
日経平均株価 :22,243.66(+556.01)
ドル円 :113.20(+0.48)
ユーロ円 :128.91(+0.32)
米10年債利回り :3.21(+0.08)
独10年債利回り :0.43(+0.03)
日10年債利回り :0.13(+0.01)
中国10年債利回り :3.54(+0.03)
ビットコイン :6,351.1(+15.74)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :22.93(+0)
エネルギー :22.31(+0.04)
ベースメタル :22.51(+0.01)
貴金属 :17.49(+0.22)
穀物 :19.56(▲0.17)
その他農畜産品 :26.38(▲0.01)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :24.23(▲0.18)
Brent :25.81(+0.09)
米天然ガス :26.47(▲0.11)
米ガソリン :26.70(+0.04)
ICEガスオイル :19.35(+0.15)
LME銅 :24.28(+1.56)
LMEアルミニウム :16.15(▲5.81)
金 :21.57(▲0.22)
プラチナ :15.06(+0.16)
トウモロコシ :16.50(+0.58)
大豆 :21.57(▲0.22)

【エネルギー】
WTI :63.14(▲0.55)
Brent :72.83(▲0.06)
Oman :71.78(▲0.02)
米ガソリン :170.83(▲0.82)
米灯油 :217.28(▲2.80)
ICEガスオイル :678.25(▲7.50)
米天然ガス :3.28(+0.05)
英天然ガス :67.55(+1.83)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :72.83(▲0.06)
SPO380cst :460.93(+1.03)
SPOケロシン :88.17(▲1.11)
SPOガスオイル :86.57(▲1.02)
ICE ガスオイル :91.04(▲1.01)
NYMEX灯油 :216.25(▲1.40)

【貴金属】
金 :1232.89(▲0.54)
銀 :14.71(▲0.03)
プラチナ :868.21(+8.89)
パラジウム :1118.82(+24.11)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,233(+185:22.5B)
亜鉛 :2,591(+66:62.5B)
鉛 :2,012(+59:17C)
アルミニウム :1,985(+7:18C)
ニッケル :12,040(+405:60C)
錫 :19,180(+105:5C)
コバルト :58,000(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6305.00(+166.00)
亜鉛 :2549.00(+4.50)
鉛 :2008.00(+50.50)
アルミニウム :1987.00(+11.00)
ニッケル :11935.00(+105.00)
錫 :19130.00(+10.00)
バルチック海運指数 :1,490.00(▲23.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :73.41(▲1.06)
SGX鉄鉱石 :72.76(▲0.13)
NYMEX鉄鉱石 :72.92(▲0.07)
NYMEX原料炭スワップ先物 :218(▲2.00)
上海鉄筋直近限月 :4,540(▲6)
上海鉄筋中心限月 :4,050(▲49)
米鉄スクラップ :399(±0.0)

【農産物】
大豆 :875.25(+6.25)
シカゴ大豆ミール :311.00(▲2.40)
シカゴ大豆油 :28.20(▲0.12)
マレーシア パーム油 :1985.00(+9.00)
シカゴ とうもろこし :371.25(+4.50)
シカゴ小麦 :508.75(+0.75)
シンガポールゴム :139.50(+0.30)
上海ゴム :10160.00(+75.00)
砂糖 :13.44(+0.25)
アラビカ :120.05(+2.25)
ロブスタ :1711.00(+17.00)
綿花 :78.79(▲0.24)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :58.13(▲0.08)
シカゴ生牛 :117.08(▲0.05)
シカゴ飼育牛 :152.50(▲0.80)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。